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2026-04-22 Wed
■ #6204. 「いのほた言語学チャンネル」最新回で『英語史新聞』第13号と『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』をご紹介 [inohota][hel_herald][khelf][kochushoho][kenkyusha][notice]
4月19日に配信された「いのほた言語学チャンネル」の回は,「#413. ニッチな英語史を人が集まるマーケットをにした男」です.内容としては,khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第13号発行のお知らせ,およびその1面記事で大々的に取り上げている新刊の『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)のご紹介となっています.
さて,今回の動画でご紹介した『英語史新聞』第13号は,実に9ヶ月ぶりの発行となりました.khelf のゼミ生たちが編集から企画まで主体的に関わって作り上げた力作です.
第1面では,2026年2月に研究社より新装復刊された名著,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を紹介しています.この本は90年以上前に書かれた原稿を下敷きにしており,途中で大きな改編がなされながらも,日本における古英語・中英語の入門書の先駆けとも言える存在です.最近の語学書のような手取り足取りの親切さはありませんが,自ら辞書(グロッサリー)を引いて読み解くという,質実剛健な独学自習のスタイルが貫かれています.この媚びない潔さが,若い世代の読者にはかえって新鮮に映り,没入感を生むという可能性があります.
第2面以降も,現役の学生たちによるフレッシュな記事が満載です.
・ foot の複数形がなぜ feet になるのかという素朴な疑問への歴史的アプローチ
・ 聖書翻訳の比較から見える言葉の意味の変遷
・ 福元広二先生(法政大学)へのインタビュー(英語研究者のキャリアパス紹介)
・ 英語の始まりは何年か,という問いに迫るクイズとその回答・解説
古英語や中英語という一見ニッチな分野であっても,そこには現代の英語を理解するためのヒントが驚くほど詰まっています.ぜひ直接『英語史新聞』第13号をお読みください.
今回の「#413. ニッチな英語史を人が集まるマーケットをにした男」という標題については,井上逸兵さんが,『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を激推ししている私のことをこのように評してくださっているということなのですが,実際上はマーケットになっているのかは分かりません.ただ,新聞作りに関わった学生たちの熱意や,伝説的入門書を復刊させた出版社のご尽力,そして何より日々ブログや動画をチェックして英語史分野に関心を寄せてくださる読者の皆さんの支持があってこそ,この分野が息づいているのだとは感じています.関心をお持ちの方が少ないながらもいらっしゃれば,一緒に楽しんで行ければよいな,というつもりで「hel活」している次第です.
ぜひ『英語史新聞』第13号にアクセスし,英語史の奥深い世界に触れてみてください.そして,関心を持たれた方はぜひ『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)で英語史や古英語・中英語への第一歩を踏み出していただければ幸いです.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
2026-04-21 Tue
■ #6203. 英語史概説書等の書誌(2026年度版) [bibliography][hel_education][link]
毎年度初めの恒例記事です.過年度のものに,何点かを付け加えた書誌の最新版を公表します.
初学者にお薦めの図書に◎を,初学者を卒業した段階のお薦めの図書に○を付してあります.各図書の巻末などには,たいてい解題書誌や参考文献一覧が含まれていますので,さらに学習を続けたい方は芋づる式にたどっていってください.
印刷用のPDFをこちらに用意しましたので,自由に閲覧・印刷・配布していただいて結構です.英語史の学習・研究に役立ててください.
関連して以下の記事,および bibliography の記事群もご参照ください.
・ 「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1])
・ 「#4731. 『英語史新聞』新年度号外! --- 英語で書かれた英語史概説書3冊を紹介」 ([2022-04-10-1])
・ 「#4870. 英語学入門書の紹介」 ([2022-08-27-1])
・ 「#5237. 大阪大学総合図書館発行の「英語史について調べる」」 ([2023-08-29-1])
・ 「#6150. 「英語史の塔」が建っています」 ([2026-02-27-1])
[英語史(日本語)]
◎ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 宇賀治 正朋 『英語史』 開拓社,2000年.
・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.
○ 唐澤 一友 『多民族の国イギリス --- 4つの切り口から英国史を知る』 春風社,2008年.
◎ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉,2026年.
○ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
◎ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 島村 宣男 『新しい英語史 --- シェイクスピアからの眺め ---』 関東学院大学出版会,2006年.
・ 宗宮 喜代子 『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』 開拓社,2024年.
◎ 寺澤 盾 『英語の歴史』 中央公論新社〈中公新書〉,2008年.
○ 寺澤盾(著)『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』〈中公新書〉,2026年.
・ 高橋 英光 『英語史を学び英語を学ぶ --- 英語の現在と過去の対話』 開拓社,2020年.
・ 中尾 俊夫,寺島 廸子 『図説英語史入門』 大修館書店,1988年.
・ 橋本 功 『英語史入門』 慶應義塾大学出版会,2005年.
◎ 堀田 隆一 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』 中央大学出版部,2011年.
○ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
○ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.
・ 松浪 有(編),小川 浩・小倉 美知子・児馬 修・浦田 和幸・本名 信行(著) 『英語の歴史』 大修館書店,1995年.
・ 柳 朋宏 『英語の歴史をたどる旅』 中部大学ブックシリーズ Acta 30,風媒社,2019年.
・ 渡部 昇一 『英語の歴史』 大修館,1983年.
[英語史(英語)]
○ Algeo, John, and Thomas Pyles. The Origins and Development of the English Language. 5th ed. Thomson Wadsworth, 2005.
◎ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.(7版も刊行されています)
・ Blake, N. F. A History of the English Language. Basingstoke: Macmillan, 1996.
◎ Bradley, Henry. The Making of English. London: Macmillan, 1955.
○ Bragg, Melvyn. The Adventure of English. New York: Arcade, 2003.
○ Brinton, Laurel J. and Leslie K. Arnovick. The English Language: A Linguistic History. Oxford: OUP, 2006.
・ Bryson, Bill. Mother Tongue: The Story of the English Language. London: Penguin, 1990.
・ Crystal, David. The Stories of English. London: Penguin, 2005.
◎ Fennell, Barbara A. A History of English: A Sociolinguistic Approach. Malden, MA: Blackwell, 2001.
○ Gelderen, Elly van. A History of the English Language. Amsterdam, John Benjamins, 2006.
・ Görlach, Manfred. The Linguistic History of English. Basingstoke: Macmillan, 1997.
○ Gooden, Philip. The Story of English: How the English Language Conquered the World. London: Quercus, 2009.
・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.
・ Hogg, R. M. and D. Denison, eds. A History of the English Language. Cambridge: CUP, 2006.
○ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
◎ Horobin, Simon. How English Became English: A Short History of a Global Language. Oxford: OUP, 2016.
・ Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Chicago: U of Chicago, 1982.
○ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.
・ McCrum, Robert, William Cran, and Robert MacNeil. The Story of English. 3rd rev. ed. London: Penguin, 2003.
・ Mugglestone, Lynda, ed. The Oxford History of English. Oxford: OUP, 2006.
・ Smith, Jeremy J. An Historical Study of English: Function, Form and Change. London: Routledge, 1996.
○ Strang, Barbara M. H. A History of English. London: Methuen, 1970.
○ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006.
[英語史関連のウェブリソース]
・ 家入 葉子 「英語史全般(基本文献等)」 https://iyeiri.com/569 .
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「YouTube 井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」 2022年2月26日~,https://www.youtube.com/channel/UCth3mYbOZ9WsYgPQa0pxhvw .
・ 菊地 翔太 「菊地翔太 (Shota Kikuchi) のHP」 https://sites.google.com/view/shotakikuchi .
・ khelf (慶應英語史フォーラム) 「Keio History of the English Language Forum のHP」 https://sites.google.com/view/khelf-hotta .
・ 寺澤 志帆 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」 2025年5月1日~,https://sites.google.com/keio.jp/s-terasawa/contents/英語語源辞典でたどる英語綴字史 .
・ ヘルメイト 「月刊 Helvillian ハロー!英語史」 2024年10月8日~,https://note.com/helwa/m/m82eb39986f24 .
・ 堀田 隆一 「hellog~英語史ブログ」 2009年5月1日~,http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog .
・ 堀田 隆一 「連載 現代英語を英語史の視点から考える」 2017年1月~12月,http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/history_of_english/series.html .
・ 堀田 隆一 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 2021年6月2日~,https://voicy.jp/channel/1950 .
・ 堀田 隆一 YouTube 「heltube --- 英語史チャンネル」 2022年7月3日~,https://www.youtube.com/channel/UCG4a3V4jvVQ8ebujHeQzN6Q .
・ 三浦 あゆみ 「A Gateway to Studying HEL」 https://sites.google.com/view/gatewaytohel .
・ 矢冨 弘 「矢冨弘 homepage」 https://yadomi1989.wixsite.com/my-site-1 .
[英語史・英語学の参考図書]
・ 荒木 一雄・安井 稔(編) 『現代英文法辞典』 三省堂,1992年.
・ 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.
・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.
・ 大泉 昭夫(編) 『英語史・歴史英語学:文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
・ 大塚 高信・中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
・ 小野 茂(他) 『英語史』(太田 朗・加藤 泰彦(編) 『英語学大系』 8--11巻) 大修館書店,1972--85年.
・ 佐々木 達・木原 研三(編) 『英語学人名辞典』,研究社,1995年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語史・歴史英語学 --- 文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語学要語辞典』 研究社,2002年.
・ 寺澤 芳雄・川崎 潔 (編) 『英語史総合年表 --- 英語史・英語学史・英米文学史・外面史 ---』 研究社,1993年.
・ 服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』 朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.
・ 松浪 有・池上 嘉彦・今井 邦彦(編) 『大修館英語学事典』 大修館書店,1983年.
・ Bergs, Alexander and Laurel J. Brinton, eds. English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012.
・ Bergs, Alexander and Laurel J. Brinton, eds. The History of English. 5 vols. Berlin/Boston: Gruyter, 2017.
・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan, eds. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.
・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. Cambridge: CUP, 1995. 2nd ed. 2003.
・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. Cambridge: CUP, 1995. 2nd ed. 2003. 3rd ed. 2019.
・ Hogg, Richard M., ed. The Cambridge History of the English Language. 6 vols. Cambridge: CUP, 1992--2001.
・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum, eds. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.
・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.
・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
・ van Kemenade, Ans and Bettelou Los, eds. The Handbook of the History of English. Malden, MA: Blackwell, 2006.
2026-04-20 Mon
■ #6202. 古英語 beon 系列の be 動詞の使われ方 [be][oe][aspect][oe_dialect][suppletion][imperative][infinitive]
古英語の be 動詞については「#2600. 古英語の be 動詞の屈折」 ([2016-06-09-1]) をはじめ,多くの記事で話題を取り上げてきた.古英語 be 動詞のパラダイムは,補充法 (suppletion) の典型例であり,様々な語根に基づく語形が並列的に用いられていたという事情がある.とりわけともに直説法現在時制を担っていた eom 系列と bēo 系列とが,用法の点でどのように異なるのかが問題となる.相 (aspect) の点で相違があると言われることが多いが,今回は Campbell (§768; p. 350--51) の記述を読んでみることにする.
The distinction of the pres. indic. tenses eom and bēo is fairly well preserved in OE: bēo expresses what is (a) an invariable fact, e.g. ne bið swylċ cwenliċ þeaw 'such is not a queenly custom', or (b) the future, e.g. ne bið þe wilna gad 'you will have no lack of pleasure', or (c) iterative extension into the future, e.g. biþ storma ȝehwylċ aswefed 'every storm is always allayed' (i.e. on all occasions of the flight of the Phoenix, past and to come); eom expresses a present state provided its continuance is not especially regarded, e.g.wlitiġ is se wong 'the plain is beautiful'.
基本的な用法としては,eom 系列は「特に継続を意識せずに捉えられている現在の状態」を表わすのに対し,bēo 系列は「不変の事実」「未来」「反復」を表わす.文脈上,この差が明確に出ない事例もあることは確かだが,概ね2つの系列の用法が区別されていたと捉えてよいだろう.
ほかに命令法や不定詞の形態についても,bēon 系列と他の系列が並んで行なわれていた.しかし,以下の Campbell (§768; p. 51) の説明の通り,用法の違いというよりは方言の差異と捉えるべきものだという.
The distinction of the imperatives bēo and wes is one of dialect, not of meaning. Broadly bēo is W-S and Merc., wes (woes, wæs) North.; but while bēo is never North., wes is found in W-S and Merc. . . .
Similarly inf. bēon (bīon, bīan) is W-S and Merc., wosa North.; but Ru.1 has once wesa, Li. once bīan.
The subj. forms bēo and sīe (sēo) are also dialectally distinguished: sīe is eW-S, Kt., VP, North., bēo is Ru.1 But already in eW-S bēo appears, and in lW-S it is the prevailing form (it does not appear, however, in KG). In North, it only appears in Li. (twice).
・ Campbell, A. Old English Grammar. Oxford: OUP, 1959.
2026-04-19 Sun
■ #6201. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第2回 --- 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze][variation][voicy][heldio]

*
4月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の5月号が発売されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.今回は連載第2回となり,井上さんがメインとなり「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」と題して,社会学の入門となる文章を書かれています.最後に,私も少しコメントしています.
前回の4月号(第1回)は,イントロとして「いのほた」対談形式でお届けしましたが,今月号からは交互にメインライターを務める趣向です.今月は井上さんが「社会言語学」 (sociolinguistics) のエッセンスを鮮やかに切り出しており,来月は私が「英語史」の観点から主筆を担当し,お互いに数行のコメントを寄せ合うという,まさに YouTube チャンネルの空気感を紙面に再現するような構成になっています.
今回の井上さんの記事の白眉は,「3つの扉」という切り口です.社会言語学という広大な領域を,(私流の解釈によれば) (1) 変異,(2) 人間関係,(3) 空気という3点で整理されています.人はことば「を」どう使うかという受動的な記述にとどまらず,副題にある通り,人はことば「で」何をしているのかという能動的・積極的な側面を強調されているのが,実に井上さんらしい視点だなと感じます.
とりわけ第1の扉である「変異」 (variation) は,言語変化を扱う歴史言語学や英語史と極めて親和性が高い領域です.歴史的に見れば,ある時代の「変異」が積み重なり,やがて「変化」へと結びついていくからです.この点については語りだすと止まらなくなるのですが,ぜひ本誌をお手に取っていただければと思います.
実をいえば,この連載は YouTube の「いのほた言語学チャンネル」と同様,あえてガチガチに12回分の計画を固めすぎないようにしています.もちろん大まかな構想はありますが,読者の皆さんの反応や,相方の出方を伺いながら,その都度フレキシブルにテーマを選んでいくという,ライブ感を大切にするスタイルをとっています.井上さんがこう来たならば,次は私はこう返そう……というインタラクションこそが,この連載の醍醐味と言えると思います.次回の6月号では私が主役を務める番ですが,今回の井上さんの「3つの扉」に触発されて,その英語史版をパロディとして書いてみようと思っています.社会言語学と英語史がどのように交差し,響き合うのか.まずは発売中の5月号にて,井上さんによる社会言語学の切り方を堪能してください.
本連載に関連して,heldio でも「#1783. 『英語教育』の「いのほた連載」第2弾」としてお話ししています.あわせてお聴きいただければ.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第2回 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」『英語教育』2026年5月号,大修館書店,2019年4月14日.44--45頁.
2026-04-18 Sat
■ #6200. 今年度の朝カル英語史シリーズが始まります --- 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』も参照します [asacul][notice][kdee][etymology][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio][middle_english][old_english]

新年度が始まりました.今年度も「英語史をお茶の間に」広げていく活動「hel活」 (helkatsu) を精力的に展開してまいります.hellog 読者の皆様も,ぜひそれぞれの現場でhel活を推進していただければ幸いです.
昨年に引き続き,今年度の私のhel活の柱の1つとなるのが,恒例の朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座です.シリーズ全体のタイトルは昨年のものを継承し「歴史上もっとも不思議な英単語」のままですが,少なくともこの春期クールについては「語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」という副題を添えて,少々装いを新たにスタートします.
昨年度は,1つの単語を掘り下げることで英語史のパノラマを展望するというスタイルでした.今期もその精神は受け継ぎつつ,そこに「原文の味読」という付加価値を加えたいと考えています.具体的には,去る2月25日に研究社より刊行された伝説的入門書,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとして活用します.
春期クールの公式の案内文は以下の通りです.
「なぜこの英単語は,こんな意味や使い方をするのか」.その答えは,現代英語の外にあります.春期は,古英語・中英語の短い原文を入口として,英単語の不思議な歴史を探ります.名名文を丁寧に読み解いたうえで,そこから英語史の話題へと縦横に広げていきます.原文に構えず,英語史の物語として楽しめる講座です.(注:市河三喜・松浪有『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとし,そこから原文を選んで味読します.)
本講座の最大の特徴は,単なる語源解説にとどまらず,その語が実際に過去の文献でどのように息づいていたのかを,実際のテキストを通じて体験していただく点にあります.もちろん,これまで通り『英語語源辞典』や『英語語源ハンドブック』も頻繁に参照しながら,語源の深淵に迫っていきます.
春期クールは毎月1回,土曜日の 15:30--17:00 に開講されます.オンライン限定の講義ですので,全国どこからでもご参加いただけますし,2週間の見逃し配信もございます.予定されているラインナップは以下の通りです.
1. 4月25日(土):knight を探って中英語原文の世界へ
2. 5月23日(土):again を探って中英語原文の世界へ
3. 6月27日(土):ghost を探って古英語原文の世界へ
1週間後に開講される第1回は,中世騎士道でおなじみの knight を取り上げます.元々は「少年」や「従者」を意味していたこの語が,いかにして高貴な身分を指すようになったのか,中英語の原文に触れながらその意味変化を辿ります.
第2回は,日常語の again です.何の変哲もないように見えるこの語には,副詞や前置詞としての用法にとどまらず,多くの話題が隠されています.中英語期のテキストではどのように綴られ,用いられていたのでしょうか.
第3回は,現代では「幽霊」を指す ghost です.古英語期には「精神」や「魂」を意味していたこの語の変遷を,当時の格調高い原文とともに味わいましょう.
古英語や中英語の原文と聞くと,難しそうに聞こえるかもしれませんが,心配は無用です.「英語史の物語」を楽しむための材料として,私がナビゲートします.講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.
本シリーズの開講に向けて,Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1778. 4月25日(土)『古中初歩』による新年度の朝カルシリーズが始まります」をお聴きください.新年度,皆様と一緒に,原文とともに英語史の森を散策していくことを楽しみにしています.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
2026-04-17 Fri
■ #6199. khelf 寺澤志帆さんが A を完走 --- 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」シリーズ [khelf][kdee][helkatsu][spelling_pronunciation_gap][terasawashiho][etymological_respelling][spelling][orthography][helwa]

khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーであり,英語綴字史を専門とする寺澤志帆さんから,なんとも喜ばしい,そして驚くべきニュースが届きました.
昨年5月1日からご自身のウェブサイトで公開されている連載企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」が,ついにアルファベットの最初の文字である A の項目をすべて読み終え,完走を果たしたとのことです.まずは寺澤さん,A のコンプリート,おめでとうございます!
この企画がどれほど希有で無謀(?)なものであるかは,以前の hellog 記事(末尾のリンク参照)でも示唆してきました.私が「世界一の英語語源辞典」と公言して推しに推している『英語語源辞典』 (kdee) を1ページ目から通読しようと試み,綴字史的に興味深いトピックを拾い上げて解説するという,まさに苦行ともいえるチャレンジです.
当初の予定では3年ほどで通読を目指していたとのことですが,蓋を開けてみれば A だけで約1年を要したという事実に,この辞典の奥深さと,寺澤さんの学究的な執念が象徴されています.ご自身が先日4月15日付の note 記事 「約1年かけて『英語語源辞典』のAで始まる語を通読してみた」でその道のりを振り返っていますが,A だけで 307 もの記事を積み上げてきたというのは,本当に驚きです.
私から寺澤さんの最新 note 記事に寄せたコメントを,ここでも共有したいと思います.
1年かかって A のコンプリート,おめでとうございます.hel活の新たな地平を築かれたことに感服です.何よりも,一つひとつの話題がおもしろいですね.副題に表れる「視点」にも,いつも注目しています.イニシャルごとの様々な風景も楽しみです.これからも日々のトピックを楽しみにしています.
寺澤さんの解説の魅力は,単なる辞典の要約にとどまらず,専門家としての視点,特に副題によく現わているスペリング観にあります.毎日の定点観測があるからこそ,一つひとつの記事に重みが出るのだと思います.
hellog 読者の皆さんには,ぜひこの稀有な連載を日々追いかけていただければと思います.更新頻度も高いですし,読むたびに新しい発見があるはずです.寺澤さんの連載サイト より RSS をフォローしていただければと思います.また,寺澤さんの note 記事 も合わせてチェックを!
『英語語源辞典』通読といえば,heldio/helwa のコアリスナーである lacolaco さんによる 「英語語源辞典通読ノート」 も要注目です.専門的な綴字史に特化した寺澤さんと,総合的なおもしろさを追求する lacolaco さん,このお2人の競演によって,現在『英語語源辞典』をめぐるhel活は,かつてない盛り上がりを見せています.お2人の対談回として,「#1718. 『英語語源辞典』を通読しているあの2人が初対談 --- helwa 新年会より」も,ぜひお聴きください.英語の見方が,大きく変わると思います.
辞典は「引く」ものではなく「読む」ものだ,という文化がこれほど根付いているコミュニティも珍しいと思います.出版元の研究社さんも,きっと草葉の陰ならぬ編集部で喜んでくださっているのではないでしょうか.
khelf や helwa を通じたhel活の輪がどんどん広がっています.読者の皆さんも,ぜひこれらの活動を応援したり,あるいは自ら参加したりして,英語史の世界をともに盛り上げていきましょう.
寺澤さんは,昨日より B の領域に突入していますね.B の初回は「308. B, b ―小文字ができるまで―」です.これからも楽しみです.
以下,関連する記事も合わせてお読みください.
・ 寺澤さん note 「helwaはまさに「英語史の輪」だった!~helwaオフ会潜入記~」(2025年5月18日公開)
・ 寺澤さん note 「約1年かけて『英語語源辞典』のAで始まる語を通読してみた」(2026年4月15日公開)
・ hellog 「#5861. khelf 寺澤志帆さんが「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」シリーズを開始しています」 ([2025-05-14-1])
・ hellog 「#6034. khelf 寺澤志帆さんの「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」が開始から半年」 ([2025-11-03-1])
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
2026-04-16 Thu
■ #6198. あまり知られていない母語英語変種 [toc][variety][world_englishes][enl][lesser-know_varieties][caribbean][inohota][youtube]
先日公開された「いのほた言語学チャンネル」の動画では,「#411. 日本でピジン英語が話されていたのはあの島」と題して,小笠原群島の英語に焦点を当てた.関連する話題は,hellog としても「#2559. 小笠原群島の英語」 ([2016-04-29-1]),「#2596. 「小笠原ことば」の変遷」 ([2016-06-05-1]),「#3353. 小笠原諸島返還50年」 ([2018-07-02-1]) で取り上げてきたので,そちらも参照されたい.
動画で紹介した本では,小笠原群島の英語についての言及は軽くなされているのみだが,それに類する世界であまり知られていない英語母語変種 (lesser-know_varieties) が多く紹介されている.目次がそのままそれらの変種の一覧となっているので,それを挙げておきたい.
1. Introduction
Part I: The British Isles
2. Orkney and Shetland
3. Channel Island English
Part II: The Americas and the Caribbean
4. Canadian Maritime English
5. Newfoundland and Labrador English
6. Honduras/Bay Islands English
7. Euro-Caribbean English varieties
8. Bahamian English
9. Dominican Kokoy
10. Anglo-Argentine English
Part III: The South Atlantic Ocean
11. Falkland Islands English
12. St Helenian English
13. Tristan da Cunha English
Part IV: Africa
14. L1 Rhodesian English
15. White Kenyan English
Part V: Australasia and the Pacific
16. Eurasian Singapore English
17. Peranakan English in Singapore
18. Norfolk Island and Pitcairn varieties
英語は大言語であるとはいえ,母語変種に限っても広く知られていないものが多々あることがわかるだろう.

・ Schreier, Daniel, Peter Trudgill, Edgar W. Schneider, and Jeffrey P. Williams, eds. The Lesser-Known Varieties of English: An Introduction. Cambridge: CUP, 2010.
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| 最終更新時間 | 2026-04-22 01:05 |
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