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hellog〜英語史ブログ

2025円10月26日 堀田によるhel活ポータル The HEL Hub (= helhub) がオープンしました!

日々発信される英語史系コンテンツの新着情報がリアルタイムで更新されていきます.数時間に一度,ほぼ定期的に更新されていくことになります.この hellog がストック型の情報源だとすれば,helhub はフロー型の発信源です.ぜひ訪れて,お気に入りにご登録ください.こちらからどうぞ!

2025年10月15日に「いのほたなぜ」が出ました!

同僚の井上逸兵さんと毎週水・日にお届けしている「いのほた言語学チャンネル」が書籍化されました.井上 逸兵・堀田 隆一(著)『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』(ナツメ社),通称「いのほたなぜ」として10月15日に刊行されています.発売前の Amazon 新着ランキングの「英語」部門にて第2位を獲得しています.ぜひこちらの Amazon ページ(あるいは以下のQRコード)などよりご注文ください.新しい言語学・英語学・英語史への導入となる本です!

合わせて本書の特設HP(各章から動画へのリンクも集あり)もご覧ください.ハッシュタグ,平仮名6文字で #いのほたなぜ からもご意見,ご感想などもお寄せください!

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『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』の Amazon リンク


堀田隆一(ほったりゅういち)による,英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログです(note のプロフィールはこちら)."History of the English Language Blog" ということで,略して "hellog".英語史と関連する英語学・言語学一般の話題も扱っています.本ブログで紹介・推薦する書籍などについて,特別に表記しない限り,すべて自主的な言及です.また,堀田は Amazon のアソシエイトとして適格販売により収入を得ています.

まずは,
  1. 英語史の学び始め/続けには,まず以下の記事からスタート!
  2. アクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事
  3. 英語に関する素朴な疑問に関する記事群
  4. 全記事の標題の一覧 (Archives)
  5. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio)
  6. Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」(heldio)
  7. 知識共有サービス「Mond」での,英語に関する素朴な疑問への回答
  8. 慶應英語史フォーラム (khelf) のツイッターアカウント @khelf_keio
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をご覧ください.

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その他のお知らせ

お知らせ 英語史トーク動画の第2弾です! 8月21日,YouTube 「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」にて,英語史トーク第2弾の前編が公開されました.「【英語の謎 goの過去形はなぜwentなのか】古英語時代は-edよりも不規則動詞がデフォルト|なぜ「あなた」も「あなたたち」もyouで表すのか|He likes...三単現にはなぜsを付ける?」および「【flower(花)とflour(小麦粉)は同じ語源!】help,aid,assistance…「助け」の類義語は何が違う?|同音異義語が多いのはなぜか|「イギリス英語は保守的」は本当か】」です.今回もフリーアナウンサーの近藤さや香さんとお話ししています.2025/08/21(Thu)

お知らせ 英語史トーク動画の前編が9.8万回視聴されています! 5月30日,YouTube 「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」にて,英語史トーク動画の前後編が公開されました.「【know の K はなぜ発音しない?「英語史」で英語のナゼがわかる】国内唯一慶應だけの必修科目|古代英語はもはや別言語|500通り以上の綴りがある英単語|憧れと威信が英語を変化させた」および「【ややこしい英語が世界的言語になるまで】文法が確立したのはたった250年前|an appleのanは「発音しやすくするため」ではない|なぜ複数形はsばかりなのか|言語の"伝播"=権力」です.フリーアナウンサーの近藤さや香さんとともに,英語史入門を念頭にお話ししています.hellog の関連記事はこちら.2025/05/31(Sat)

再重版がかかっています! 皆さんにご好評,ご愛読いただいています!(2025年9月23日現在)

2025年6月18日(水),唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力)『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されました.5月21日以来,刊行日までの歴代最高記録として,Amazon 新着ランキングで「英語」部門にて第1位,「語学・辞事典・年鑑」部門にて第2位を獲得しています.また,刊行後の4日間で紀伊國屋書店新宿本店の語学部門の週間売り上げランキングで第1位,丸善丸の内本店では第4位を記録しました.リアル書店やこちらの Amazon ページ(あるいは以下のQRコード)より,ぜひご入手ください.英語学習・教育に関わる皆さんにとっての必携書!

合わせて本書のランディングページもご覧ください!

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『英語語源ハンドブック』の Amazon リンク


お知らせ ヘルメイト有志によるhel活を紹介する月刊 Helvillian の最新号2025年8月号が7月28日にウェブ公開されました.こちらよりご覧ください.2025/07/29(Tue)

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お知らせ 2025年6月18日(水)に,唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著)『英語語源ハンドブック』(研究社)が発売予定! 研究社公式HPの近刊紹介はこちらからどうぞ.hellog のこちらの記事,および heldio のこちらの配信回でも本書を紹介しています.2025/05/17(Sat)

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お知らせ 2025年7月7日に khelf による『英語史新聞』第12号がウェブ上に一般公開されました.こちらからPDFでご覧になれます.heldio のこちらの配信回,および hellog のこちらの記事でも第12号公開についてお知らせしています.公開後は khelf の X (旧ツイッター)アカウント @khelf_keio より関連情報をお伝えしますので,ぜひフォローをお願いします.2025/07/09(Wed)

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お知らせ Voicy でお届けしている「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の Video Podcast 版を開始しました.Spotify より,同名の Podcast チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」として視聴できます.フォローをよろしくお願いします.最新回はコチラです↓ 2025/03/13(Thu)

お知らせ 2025年2月28日に,私の所属する慶應義塾大学の 公式 YouTube チャンネル「慶應義塾 Keio University」内の「研究者紹介動画」というシリーズの1回として「英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」慶應義塾大学文学部・堀田隆一教授」が公開されました.4分22秒ほどの公式動画です.2025/03/01(Sat)

お知らせ 新年度2024年の4月より khelf による「英語史コンテンツ50+」が始まっています.休日を除く毎日,khelf メンバーより英語史の話題が1つ上がってきます).日々,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio からも関連情報を発信しています.2024/04/19(Fri)

お知らせ 知識共有サービス「Mond」にて英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています.最新の質問&回答はこちらよりご覧ください.2024/09/30(Mon)

Mond Latest

お知らせ 2023年7月より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にて「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズを展開しています.Baugh and Cable の A History of the English Language (6th ed.) を1回1セクションずつ精読していくというシリーズです.週に1,2回程度のペースで続けています.有料配信ですが冒頭チャプターは試聴可となっていますので,ぜひ聴いてみてください.バックナンバー一覧はこちらの記事よりどうぞ.2024/02/09(Fri)

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お知らせ 2022年2月26日に,同僚の井上逸兵さんと YouTube チャンネル「いのほた言語学チャンネル(旧:井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル)」 (inohota) を始めています.毎週(水)(日)の午後6時に更新予定です.チャンネルの趣旨としては,こちらの hellog 記事あるいは Voicy でのアナウンスをご一読・ご視聴ください.直下(↓)は最新の YouTube 放送となります.本ブログの関連記事もお読みください.2022/03/10(Thu)

お知らせ 2024年7月より,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の再放送という趣旨で,YouTube チャンネル「heltube」 にて日々配信しています.直下(↓)は最新公開の回となります.2024/08/10(Sat)

お知らせ 2025年3月6日より5月6日まで,heldio の前身である「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) として2020--2021年に配信していた62回の配信を,こちらの YouTube にて再放送していました.2025/05/07(Wed)

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お知らせ 2021年6月2日より,英語史の音声コンテンツを配信する「英語の語源が身につくラジオ」(通称 heldio)を始めています.本ブログの姉妹版という位置づけで,音声配信プラットフォーム Voicy を通じて,英語史に関する音声コンテンツを提供しています.企画の趣旨として,こちらの hellog 記事をご一読ください.直下(↓)は最新の Voicy 放送となります.2024/07/20(Sat)

お知らせ 2023年6月2日より,上記 heldio にプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) が加わりました.毎週火木土の18:00よりお届けしています.helwa は有料配信となりますが,開設趣旨としてこちらの hellog 記事をお読みください.直下(↓)は最新の helwa 放送となります.2023/09/09(Sat)

お知らせ 2023年10月6日より,stand.fm にて「英語史つぶやきチャンネル」 を始めています.英語史の話題を不定期でカジュアルにお届けします.直下(↓)は最新の配信回となります.2025/01/28(Tue)

お知らせ 2023年1月中旬に家入葉子先生(京都大学)と堀田の共著となる,英語史研究のハンドブック『文献学と英語史研究』が開拓社より発売となります.本書についてはこちらのページで,著者が様々に紹介しています.2023/01/05(Thu)

『文献学と英語史研究』

お知らせ 2022年11月8日に『ジーニアス英和辞典』第6版が発売となりました.新版で初めて導入されたコラム「英語史Q&A」を執筆させていただいていますので,ぜひ辞典手に取って開いてみていただければと思います.コラムについては hellog でもこちらの記事群で関連する話題を取り上げています.2022/11/15(Tue)

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お知らせ 堀田ゼミの紹介ページがゼミ生により立ち上げられました.入ゼミを希望する学生は必見です.堀田による公式のゼミ紹介はこちらの記事からどうぞ.2022/11/04(Fri)

お知らせ ご愛読ありがとうございます,9刷が発行されています.2022年9月より電子書籍としても配信開始です.本ブログの内容を多く取り込んだ拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』が2016年に研究社より出版されました.本の趣旨や補足情報のために,コンパニオン・サイト (naze) を用意していますので,そちらも是非ご覧ください.また,本ブログ内の「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」にも紹介があります.2024/08/10(Sat)

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お知らせ このたび様々な言語における標準化の歴史を題材とした本が出版されました.高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
本ブログ内でも本書の紹介記事をいくつか書いていますので,そちらもご覧ください.さらに,7月9日と8月1日には2回にわたって3編者対談を Voicy で配信しましたので,ぜひこちらこちらより各々お聴きください.

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お知らせ 本ブログベースの拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』の第4刷が出ています.本書のコンパニオン・ページ及び著者による紹介ページをご覧ください.また,本書の内容に沿ったブログ記事へのリンク (hogusu) はおすすめです.2018/09/02(Sun)hogusu_front_cover_small

お知らせ 「手軽に英語史を」というコンセプトで,地味に「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) を始めています.1つ数分以内のコンテンツです.これまでのコンテンツ一覧よりどうぞ.2020/07/09(Thu)

お知らせ 大修館『英語教育』の2020年3月号に,連載「英語指導の引出を増やす 英語史のツボ」の第12回(最終回)の記事が掲載されています.今回の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.どうぞご一読ください.2020/02/14(Fri)eigokyouiku_rensai_12_20200214_front_cover_small.jpg

お知らせ 1月5日発売の英語学習誌『CNN English Express』2月号に「歴史を知れば納得! 英語の「あるある大疑問」」と題する拙論が掲載されています.英語史の観点から素朴な疑問を解くという趣向の特集記事で,英語史の記事としては珍しく8頁ほどの分量を割いています.どうぞご一読ください.hellog 内の紹介記事もどうぞ.2019/01/07(Mon)cnn_ee_201902_front_cover_small

お知らせ 私も一部執筆している服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.が2018年3月に出版されました.日本語史と比較対照しながら英語史や英語の歴史的変化について学べます.本ブログ内の#3283の記事にも簡単な紹介がありますのでご覧ください.2018/04/23(Mon)

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お知らせ Simonn Horobin 著 Does Spelling Matter? の拙訳『スペリングの英語史』が早川書房よりより出版されました.紹介記事として,本ブログ内の「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」「#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要」もご覧ください.2017/10/01(Sun)

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お知らせ 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』に関連する研究社ベースの連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」が始まっています(そして12回で終わりました).2017/12/21(Thu)


最近 7 日分を以下に表示中 / 今月の一覧

2025-11-22 Sat

#6053. 11月29日(土),朝カル講座の秋期クール第2回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」が開講されます [asacul][notice][verb][old_norse][kdee][hee][etymology][lexicology][synonym][hel_education][helkatsu][loan_word][borrowing][contact]


asacul_20251025.png



 今年度は月1回,朝日カルチャーセンター新宿教室で英語史講座「歴史上もっとも不思議な英単語」シリーズを開講しています.その秋期クールの第2回(今年度通算第8回)が,1週間後の11月29日(土)に迫ってきました.今回取り上げるのは,現代英語のなかでも最も基本的な動詞の1つ take です.
 take は,その幅広い意味や用法から,英語話者にとってきわめて日常的な語となっています.しかし,この単語は古英語から使われていた「本来語」 (native word) ではなく,実は,8世紀半ばから11世紀にかけてブリテン島を侵略・定住したヴァイキングたちがもたらした古ノルド語 (old_norse) 由来の「借用語」 (loan_word) なのです.
 古ノルド語が英語史にもたらした影響は計り知れず,私自身,古ノルド語は英語言語接触史上もっとも重要な言語の1つと考えています(cf. 「#4820. 古ノルド語は英語史上もっとも重要な言語」 ([2022-07-08-1])).今回の講座では take を窓口として,古ノルド語が英語の語彙体系に与えた衝撃に迫ります.
 以下,講座で掘り下げていきたいと思っている話題を,いくつかご紹介します.

 ・ 古ノルド語の語彙的影響の大きさ:古ノルド語からの借用語は,数こそラテン語やフランス語に及ばないものの,egg, leg, sky のように日常に欠かせない語ばかりです(cf. 「#2625. 古ノルド語からの借用語の日常性」 ([2016-07-04-1])).take はそのなかでもトップクラスの基本語といえます.
 ・ 借用語 take と本来語 niman の競合:古ノルド語由来の take が流入する以前,古英語では niman が「取る」を意味する最も普通の語として用いられていました.この2語の競合の後,結果的には take が勝利を収めました.なぜ借用語が本来語を駆逐し得たのでしょうか.
 ・ 古ノルド語由来の他の超基本動詞:take のほかにも,getgivewant といった,英語の骨格をなす少なからぬ動詞が古ノルド語にルーツをもちます.
 ・ タブー語 die の謎:日常語であると同時に,タブー的な側面をもつ die も古ノルド語由来の基本的な動詞です.古英語本来語の「死ぬ」を表す動詞 steorfan が,現代英語で starve (飢える)へと意味を狭めてしまった経緯は,言語接触と意味変化の好例となります.
 ・ shethey は本当に古ノルド語由来か?:古ノルド語の影響は,人称代名詞 shethey のような機能語にまで及んでいるといわれます.しかし,この2語についてはほかの語源説もあり,ミステリアスです.
 ・ 古ノルド語借用語と古英語本来語の見分け方:音韻的な違いがあるので,識別できる場合があります.

 形態音韻論的には単音節にすぎないtake という小さな単語の背後には,ヴァイキングの歴史や言語接触のダイナミズムが潜んでいます.今回も英語史の醍醐味をたっぷりと味わいましょう.
 講座への参加方法は,前回同様にオンライン参加のみとなっています.リアルタイムでのご参加のほか,2週間の見逃し配信サービスもありますので,ご都合のよい方法でご受講ください.開講時間は 15:30--17:00 です.講座と申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.
 なお,次々回は12月20日(土)で,これも英語史的に実に奥深い単語 one を取り上げる予定です.

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2025-11-21 Fri

#6052. 「いのほた」で冠詞に関する回がよく視聴されています [inohota][inoueippei][notice][youtube][article][grammaticalisation][sobokunagimon][demonstrative][information_structure]



 11月16日(日)に YouTube 「いのほた言語学チャンネル」にて「#387. 英語にはなぜ冠詞があるの?日本語には冠詞がないが,英語の冠詞の役割と似ているのは日本語のあれ」が公開されました.テーマが「冠詞」 (article) という大物だったからでしょうか,おかげさまでよく視聴されています.今朝の時点で視聴回数が1万回を超えており,コメント欄も活発です.
 冠詞 (the, a/an) は英語学習者にとって永遠の課題です.冠詞というものがない日本語を母語とする者にとって,とりわけ習得の難しい項目です.私も,なぜ英語にはこのような厄介なものがあるのだろうか,とずっと思っていました.今思うに,これは根源的な問いなのでした.
 なぜ冠詞があるのか.この問いは,英語史の観点から紐解いてみると,まず驚くべき事実から始まります.定冠詞 the に相当する要素は,英語を含む多くのヨーロッパ語において,必ずしも最初から存在していたわけではないのです.歴史の途中で,それも比較的後になってから用いられるようになった「新参者」なのです.
 古英語の時代にも,the に相当する形式は確かに存在しました.ただし,それは現代的な確立した用法・品詞として使われていたわけではなく,その前駆体というべき存在にとどまっていました.もともと「あれ」「それ」といった意味を表わす指示詞 (demonstrative) だったものが,徐々にその指示力を失い,単に既知のものであることを標示する文法的な要素へと変化していった結果として生まれたものです.このような,もともとの意味が薄まり,文法的な機能をもつようになる変化を「文法化」 (grammaticalisation) と呼んでいます.これは英語の歴史において非常に重要なテーマであり,本ブログでも度々取り上げてきました.
 この歴史的な経緯を知ると,最初の素朴な疑問「なぜ冠詞があるのか」は,「なぜ英語は,わざわざ指示詞を冠詞に文法化させる必要があったのか」という,より深い問いへと昇華します.なぜなら,冠詞のない日本語話者は,冠詞のない世界が不便だとは感じていないからです.
 この問いに対する1つの鍵となるのが,日本語の助詞「が」と「は」です.動画では,この「が」「は」の使い分けが,英語の冠詞の役割と似ている側面があることを指摘し,情報構造 (information_structure) の観点から議論を展開しました.
 冠詞の最も基本的な役割は,話し手と聞き手の間ですでに共有されている情報(=旧情報)か,そうでない新しい情報(新情報)かを区別することにあります.この機能は,日本語の「が」「は」が担う役割と見事にパラレルなのです.日本の昔話を例にとってみましょう.

昔々あるところに,おじいさん(=新情報)とおばあさん(=新情報)がいました.おじいさん(旧情報)は山へ芝刈りに,おばあさん(=旧情報)は川へ洗濯に行きました.


 英語にすると,第1文では不定冠詞が,第2文では定冠詞が用いられるはずです.それぞれ日本語の助詞「が」「は」に対応します.
 この日本語の「が」「は」の使い分けにみられる新旧情報の区別をしたいというニーズは,言語共同体にとって普遍的なものです.しかし,そのニーズを満たすための手段は,言語ごとに異なっている可能性が常にあります.日本語はすでに発達していた助詞というリソースを選び,英語はたまたま手近にあった指示詞の文法化という道を選んだ,というわけです.
 この事実は,英語の冠詞の習得に苦労する私たちに,ある洞察を与えてくれます.英語の冠詞の使い分けを理解するには,その背景にある情報の流れ,すなわち情報構造を理解する必要がある,ということです.英語の冠詞の感覚は,日本語母語話者が無意識のうちに「が」「は」を使い分けている,あの感覚と繋がっているのです.
 言語は,その話者たちのコミュニケーションのニーズと,その時代に利用可能な言語資源が複雑に絡み合って形作られていきます.ある意味では実に人間くさい代物なのです.ぜひこの議論を動画でもおさらいください.

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2025-11-20 Thu

#6051. NZE の起源をめぐる4つの説 [new_zealand_english][australian_english][cockney][dialect_contact][dialect_mixture][koineisation]

 連日参照している Bauer に,ニュージーランド英語の起源をめぐる4つの学説が紹介されている (420--28) .いずれもオーストラリア英語を横目に睨みながら,比較対照しながら提唱されてきた説である.なお,両変種を指す便宜的な用語として Australasian が用いられていることに注意.

1. Australasian as Cockney

 オーストラリア英語は18世紀のロンドン英語(Cockney の前身)にルーツがあるのと同様に,ニュージーランド英語は19世紀のロンドン英語にルーツがある.両変種に差異がみられるとすれば,それは18世紀と19世紀のロンドン英語の差異に起因する.(しかし,ニュージーランド移民は Cockney ではなく,むしろ Cockney を軽蔑していたとも考えられており,この説の信憑性は薄いと Bauer は評価している.)

2. Australasian as East Anglian

 Trudgill が示唆するところによれば,オーストラリア英語とニュージーランド英語の発音特徴は,ロンドン英語ではなく East Anglian に近いという.ただし,Trudgill は,直接 East Anglian から派生したと考えているわけではなく,ロンドン英語を主要素としつつ,East Anglian を含むイングランド南東部の諸方言英語が混合してできた "a mixed dialect" だという意見だ.(Bauer は,取り立てて East Anglian を前面に出す説に疑問を呈している.他の方言も候補となり得るのではないか.)

3. The mixing bowl theory

 オーストラリア英語やニュージーランド英語は,諸方言が合わさってできた方言混合 (dialect_mixture) である,という説.Bauer は,もっともらしい説ではあるが,ランダムな混合だとすれば両変種が非常に類似しているのはなぜか疑問が残ると述べている.一方,Trudgill は koineisation の用語で,両変種の類似性を説明しようとしている.

4. New Zealand English as Australian

 ニュージーランド英語は,オーストラリア英語から派生した変種である.きわめて分かりやすい説で,Bauer は "The influence of Australia in all walks of life is ubiquitous in New Zealand" (427) と述べつつ,この説を推している.ただし,ニュージーランド人の感情を考えると慎重にならざるを得ないようで,"it is politically not a very welcome message in New Zealand. I shall thus try to present this material in a suitably tentative manner" (425) とも述べている.それでも,結論部では次のように締めくくっている (428) .

 I do not believe that the arguments are cut and dried, but it does seem to me that, in the current state of our knowledge, the hypothesis that New Zealand English is derived from Australian English is the one which explains most about the linguistic situation in New Zealand.


 この話題は先日 heldio でも要約して「#1632. ニュージーランド英語はどこから来たのか?」として配信したので,ぜひお聴きいただければ.また,関連して,hellog 「#5974. New Zealand English のメイキング」 ([2025-09-04-1]) と「#1799. New Zealand における英語の歴史」 ([2014-03-31-1]) も要参照.



 ・ Bauer L. "English in New Zealand." The Cambridge History of the English Language. Vol. 5. Ed. Burchfield R. Cambridge: CUP, 1994. 382--429.

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2025-11-19 Wed

#6050. ニュージーランドはアメリカ英語と距離を置きたい? [new_zealand_english][ame][sociolinguistics][americanisation]

 ニュージーランドはオーストラリアとともに歴史的にイギリスとの結びつきが強く,話されている英語変種についても,明らかにイギリス系変種からの派生であり,アメリカ変種と比べると差がある.しかし,世界における米国(の英語)の圧倒的な影響力のもと,ニュージーランド英語もご多分に漏れず,主に語彙などで americanisation の気味がみられる.
 ニュージーランド人にとって,英語のアメリカ化は現実としては受け入れざるを得ないところがあるだろうが,心情としてはあまり好ましく思っていない向きもありそうだ.アメリカ英語への嫌悪感や,あるいは逆に憧れは,世代によっても異なるだろう.Bauer は,ニュージーランド人の対アメリカ英語感情について,次のように述べている.

. . . there exists in New Zealand (as in Britain) an anti-American linguistic chauvinism which is entirely surprising in the light of the general use in the community of a number of forms which are American in origin. It is not clear how widespread these attitudes are in the community, but the fact that they exist is shown by the following extracts from Letters to the Editor of New Zealand periodicals:

Most of our worst grammatical or pronunciatory [sic] errors stem from America. (The Listener, 10 November 1973)


Why don't we improve our English instead of adopting a worse speech from a culture which branched off from England several centuries ago? (The Listener, 25 November 1978)


We are not Americans, and I know I for one do not like the way this country is trying to carbon copy itself with American influence. (The Otago Daily Times, 12 September 1984)


 Bauer がニュージーランド英語を概説的に記述したのは30年以上も前のことでもあり,現状がどうなっているのか詳しくは分からない.ただし,とりわけ年配の人々が若者のアメリカンな言葉遣いを嘆かわしく思っている,という事情は今でも変わらずあるようである.関連して,heldio 配信回「#1631. アメリカ英語は嫌われ者?」もどうぞ.



 ・ Bauer L. "English in New Zealand." The Cambridge History of the English Language. Vol. 5. Ed. Burchfield R. Cambridge: CUP, 1994. 382--429.

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2025-11-18 Tue

#6049. タスマン海をまたいでアチコチ移動する等語線 [dialectology][dialect][isogloss][new_zealand_english][australian_english][variety][geography][dialect_continuum]

 ニュージーランド英語とオーストラリア英語の関係については,通時的に共時的にも様々な議論があり,考察すべき問題が多い.特にニュージーランド英語のほうは,オーストラリア英語にどれほど依存しているのか,あるいはむしろ独立しているのかという論点において,アイデンティティ問題と関わってくるので,議論が熱くなりやすいのだろう.両国の間に横たわるタスマン海 (the Tasman Sea) は,両サイドの英語変種を結びつけている橋のか,あるいは隔てている壁なのか.
 この議論と関連して,興味深い事実がある.通常,海や川や山などの自然の障壁は人々の往来を阻みやすいため,そこが言語境界や方言境界となることが多い.とりわけ単語・語法の分布で考えるならば,等語線 (isogloss) が自然の障壁を越えていくことはあまりない,と言ってよい.タスマン海のような地理的に明らかに大きな断絶は,オーストラリア英語とニュージーランド英語を隔てる自然の障壁となるはずだ.
 ところが,おもしろいことに,個々の単語・語法によって様相は異なるものの,両変種においては等語線が自然の障壁を越えている例がある.ニュージーランド側から見れば,等語線が国内にはなくタスマン海を西に渡ったオーストラリア側にある,という奇妙な現象が起こっている.
 Bauer の挙げている例を見てみよう (413) .

Interestingly enough, some of the isoglosses distinguishing New Zealand English regional dialects cross the Tasman into Australia. Turner . . . comments that the construction boy of O'Brien is also found in Newcastle, New South Wales. Crib is also found meaning 'lunch' in Australia. Small red-skinned sausages are called cheerios in New Zealand, as they are in Queensland, but not elsewhere in Australia . . . . Polony, mentioned above as an Auckland word, is also found in Western Australia . . . . Slater, which is a widespread New Zealand English word, though originally from the South Island, is also found in New South Wales . . . . Blood nose 'nose bleed' is normal in New Zealand, but restricted to Victoria and South Australia in Australia . . . . New Zealand can thus be seen as part of a larger Australasian dialect area in more ways than just sharing vocabulary with Australia.


 ちなみに引用内にある polony は「香辛料をたっぷりきかせた豚肉の燻製ソーセージ」,slater は「フナムシ,ワラジムシ」を意味する.食物や動物などの日常語は一般に方言差が出やすく,その点で上記の例も方言学の一般的な傾向を示しているといえるだけに,等語線が海を飛び越えている様が興味深い.

 ・ Bauer L. "English in New Zealand." The Cambridge History of the English Language. Vol. 5. Ed. Burchfield R. Cambridge: CUP, 1994. 382--429.

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2025-11-17 Mon

#6048. 大学ジャーゴン --- オタゴ大学の大学案内より [university_of_otago][slang][register][sociolinguistics][abbreviation]

 オタゴ大学の図書館に,新入生のための案内のパンフレットがあり,ふと手に取ってみた.そのなかに,UNIVERSITY JARGON と題するコラムがあった.大学での修学の仕方を手短かに教える内容だ.

UNIVERSITY JARGON

Starting to research your study options and already feeling lost in the jargon? Here are some common terms you're likely to come across.
A DEGREE is the qualification you complete at university. This is your overall PROGRAMME. Your degree will have an abbreviation such as BA, BSc or BCom. That's code for Bachelor of Arts, Bachelor of Science, or Bachelor of Commerce, and so on.
Some PROGRAMMES, such as Health Sciences First Year (HSFY), will lead on to many other degrees.
The SUBJECT you specialise in within your degree is called your Major. When you start your first year at university, choose three or four subjects you'd like to try. One will become your major.
In many degrees you can choose to have a MINOR as well. This is a subject you have stuided at each level, but not in as much depth as your major.
Each subject has LEVELS (100, 200, 300). The first courses youtake are called 100-level papers or beginner papers.
Each subject is divided into PAPERS. They are like topics within each subject --- the building blocks of your degree. They have codes like HIST 104, PSYC 201 and MART 304. The papers you choose each year are your course of study.
When you pass each paper, you get POINTS towards your degree. Papers are generally worth 18 points and a three-year degree needs 360 points. This usually consists of 20 papers, an average of 7 papers per year.
A DOUBLE DEGREE is when you study two degrees at the same time. There are also options to combine two majors from different degrees in a single four-year degree. These COMBINED DEGREES include Arts and Business, Arts and Science, and Business Science.


 かなり複雑な履修システムをコンパクトに解説している文章だと思うが,新入生にとって初見で理解するのは容易ではないだろう.読み手の私は大学のシステムを理解しているので,これだけで分かるのだが,実際には凝縮しすぎているように思われる.たとえば majorspecialise という jargons の意味は,相互に規定されるものであるから,同じ文に共起することによって,一方でともに理解しやすくなるという事情もあるかもしれないが,他方でいずれもチンプンカンプンとなってしまう恐れがある.
 この文章は,個々の jargon を新入生のために解説している文章として読むのが普通だろうが,実は新入生に jargon とは何かを教える文章となっているのではないかとも解釈でき,おもしろい.つまり,ここで新入生を意味不明な jargon の羅列にさらすことによって,大学という特有の世界に誘い,仲間意識を醸成しようとしているのだ,と.
 jargon の役割は,その意味が一見して自明ではないところに存する.jargons の羅列やその語彙体系は,独特で魅惑的な世界をちらつかせ,そこに引き寄せられる者のみに入会を許可する社会言語学的な機能をもっている.
 関連して「#2410. slang, cant, argot, jargon, antilanguage」 ([2015-12-02-1]) を参照.

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2025-11-16 Sun

#6047. yam 「ヤムイモ」の食レポ from NZ --- n の異分析の事例か? [metanalysis][etymology][loan_word][food]


yam.jpg



 NZ の食レポシリーズ.スーパーの野菜コーナーで,ボコボコした朱色の親指のような物体が箱に詰められているのが気になっていた(写真左).yam 「ヤムイモ,ヤマノイモ」だ.ヤムイモの名前は知っており,おそらくどこかで食べてきていると思うが,収穫された原型を見たことがなかったので,未知の食物を目にした感じがしていたのである.先日,いくつか買ってみた.
 調べてみると,ローストしたり,ゆでて粉状にしたり,食べ方は多々あるようだが,他の野菜と炒めるのが簡単そうなので,野菜炒めでいただくことにした.皮がけっこう固く,しかも小さいものは親指大で小さめなので,包丁で剥くのが難しい.ジャガイモのように簡単にはいかないのだ.剥いてみると,白い可食部分が現われる(写真左).ジャガイモのようなさわり心地で,デンプン質であることが分かる.そのまま生でかじってみると固くてえぐい.スライスしたらますます小さくなり,炒めてみたは良いが,他の野菜に紛れて探さないと見つけられないほどに存在感が薄くなってしまった.十分に火を通すと柔らかくなり,えぐみも消えてうっすらと,サツマイモのような甘みが出る.だが,それ以上の感想は出てこず,今回はサツマイモの下位互換という評価にとどまった.もっとワイルドに行ったほうが良かったかもしれない.
 yam は,日本ではあまり見ないが,世界の(亜)熱帯で広く分布しており,数百種類が確認されるという.大きさも色も味も異なるというので,今回食したのはどんな種類だったのだろうかと思っている.西アフリカ,インドア大陸,ベトナム南部,南太平洋に産する特定の種が美味だというが,これがそうだったのだろうか.味がサツマイモに近いので,アメリカ南部の英語ではサツマイモを指して yam というようだが,種としては別である.一方,私の好きなナガイモやトロロイモは仲間だという.
 yam は,ミクロネシアやメラネシアにおいては,食物としてのみならず文化的にも重要で,大量に保有する者は社会的名声を得られるといい,収穫儀礼も盛大に行なわれるという.そんなに大事な作物だったのか,スマン.
 気を取り直して yam の語源を『英語語源辞典』で調べてみた.西アフリカの現地語に由来するとされ,セネガル語で「食べる」を意味する nyami が参照されているが,よくは分かっていないようだ.ヨーロッパに入って,スペイン語では ñame (古くは†igñame),ポルトガル語 ihname,フランス語 igname となった.英語でも,1588年の以下の初例を含め初期の例は,現代の yam にはみられない語頭音節が加えられた形で現われ,inamy, nnames, iniamos など様々な綴字で文証される.

1588 A fruite called Inany [Italian Ignami]: which fraite is lyke to our Turnops, but is verye sweete and good to eate. (Hickock, translation of C. Federici, Voyage & Trauaile f. 18)


 ところが,英語でも17世紀半ばからは,もともとの語頭音節が脱落した形が現われてくる.Yeams, jamooes, Yames, Yams, Jammes, Jambs, Guams などエキゾチック感が満載な綴字が次から次へと出現し,516通りの through とは別の意味で壮観といってよい.
 発音上の問題は,なぜオリジナルの語頭音節が脱落したかである.『英語語源辞典』も OED もこれには触れていない.n の脱落が関わっている点で,すぐに思いつくのは,異分析 (metathesis) である.ひとまず他言語は考えず英語のみを念頭にシミュレーションしてみよう.例えば */iniam/ の語頭母音が曖昧化した */əniam/ のような原型を想定する.聞き手が,これを不定冠詞 an /ən/ が前置されたものと誤って解釈し,語幹を /iam/ として切り出してしまった,というそんなシナリオだ.いかだろうか.
 本記事には heldio 版もあります.「#1629. yam を食べたけれど,語源のほうがおいしかった --- NZ食レポ」よりお聴きいただければ.



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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最終更新時間2025-11-22 11:01

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