hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新    

mongolian - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-02-26 07:08

2023-11-24 Fri

#5324. Voicy 対談「モンゴル語周辺について学ぶ回 --- 梅谷博之先生との対談」 [mongolian][voicy][heldio][altaic][comparative_linguistics]

 一昨日 Voicy heldio にて「#905. モンゴル語周辺について学ぶ回 --- 梅谷博之先生との対談」を配信しました.馴染みのない方も多いと思われるモンゴル語に関する話題です.対談のお相手は,本ブログでも先日「#5320. 「モンゴルの英語」 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第12章」 ([2023-11-20-1]) でご紹介した梅谷博之先生(明海大学)です.30分ほどの肩の凝らない対談となっていますので,ぜひ時間のあるときにお気軽にお聴きください.



 対談は,モンゴル語族の話題に始まり,モンゴル語の文字事情を経由し,モンゴル語の言語学的なトピックへと移り変わっていきます.梅谷先生がいかにしてモンゴル語を専攻するに至ったかのお話しもうかがいました.もっとお話しを続けていたいほど楽しい対談でした.
 とりわけ興味深く思ったのは,私が学生時代に言語学の教科書等でよく目にした「アルタイ語族」という大きな括りが,(異なる意見はあるにせよ)目下は前提とされていないことです.今回の対談で紹介された「モンゴル語族」は,アルタイ大語族説の下では「モンゴル語派」と呼ばれていましたが,最近では独立した語族としてみなされるようになっているようです(cf. 「#1548. アルタイ語族」 ([2013-07-23-1])).比較言語学の難しさとおもしろさ,手堅さと危うさを感じさせる話題ですね.
 梅谷先生,貴重なお話をありがとうございました!

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-11-20 Mon

#5320. 「モンゴルの英語」 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第12章 [voicy][heldio][review][notice][world_englishes][hel_education][we_nyumon][variety][mongolian]

 本ブログでたびたび紹介している,この10月に昭和堂から出版された『World Englishes 入門』より,第12章「モンゴルの英語」というユニークな話題を紹介します.モンゴルの言語事情や英語学習・教育事情は,多くの日本人にとって未知の領域ではないでしょうか.私自身も,まったくといってよいほど知りませんでした.
 先日,この章を執筆された梅谷博之先生(明海大学)と Voicy heldio にて対談する機会を得ました.初めてお目にかかっての対談でしたが,あまりに楽しくおもしろいおしゃべりとなり,いろいろな意味で目を開かれました.梅谷先生,ありがとうございました.そして,今後ともどうぞよろしくお願いいたします.「#901. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 梅谷博之先生とのモンゴルの英語をめぐる対談」です.本編で20分ほどの音声コンテンツとなっています.



 今回取り上げた本書の第12章「モンゴルの英語」 (pp. 189--99) は,以下の構成となっています.



1 モンゴル国の地理・歴史と民族構成
   (1) 地理と歴史
   (2) 民族構成
   コラム モンゴル国外に分布するモンゴル語族の諸言語
2 モンゴル国の言語事情とモンゴル語の特徴
   コラム モンゴル国でのラテン文字の使用
3 モンゴル国の英語教育事情
   コラム モンゴル国における日本語学習
4 モンゴル語母語話者の英語の特徴
   (1) 発音
   (1) 文法・語彙




 とりわけコラムのおもしろさが光ります.他の章と同様に,写真や図表が豊富で,章末には「研究テーマ」と題する演習問題,および参考文献が付されています.梅谷先生とは,上記の heldio 収録と別に,アフタートーク的な(しかし,なかなか専門的な)回も収録しており,そちらも近日中に公開予定です.どうぞお楽しみに.
 これまでの『World Englishes 入門』関連 heldio 配信回を以下にまとめておきます.関連の hellog 記事については we_nyumon よりどうぞ.

 ・ 「#865. 世界英語のお薦め本の紹介 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)
 ・ 「#869. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 和田忍さんとの対談」
 ・ 「#883. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 今村洋美先生とのアメリカ・カナダ英語をめぐる対談」
 ・ 「#901. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 梅谷博之先生とのモンゴルの英語をめぐる対談」


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

Referrer (Inside): [2023-11-24-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2019-11-22 Fri

#3861. 「モンゴルの大征服」と「アラブの大征服」の文字史上の意義の違い [history][writing][religion][arabic][mongolian]

 鈴木 (149) が標題の2つの世界史上の大征服を比較し,次のように評している.

 七世紀中葉から八世紀中葉の一世紀間に進行した「アラブの大征服」では,その征服地中,イベリアを除く殆どすべてが,一四〇〇年余をへた今日でもイスラム圏に属し,少なくとも一九〇〇年頃まではそのすべてが「アラビア文字圏」にとどまった.それに対してモンゴル帝国の場合は,モンゴル語も,またモンゴル文字も定着せず,モンゴル文化も,極めて断片的にしか痕跡が認められない.このこともまた,念頭におく必要があろう.
 確かに「モンゴルの大征服」は,その覆った空間としては,まさに世界史上最大の征服活動であった.しかし,この活動はモンゴル人の機動力と瞬発力という軍事的「比較優位」により「津波」のように広がりはしたが,その支配は各地域の在地のシステムの上にのったものであり,定着化しうる「支配組織」を形成するには至らなかったし,また文化的側面においても,浸透し同化させていくだけの文化的核をつくり出せなかったのではあるまいか.


 別の箇所 (74) でも,同趣旨の主張がなされている.

「モンゴルの大征服」とちがうところは,「アラブの大征服」で征服された空間のうち,のちにキリスト教徒のレコンキスタで奪回されたイベリア半島を除けば,ほぼすべてがムスリム(イスラム教徒)の支配下に残ったことである.そこではイスラムが定着し,その聖典『コーラン』のことばであるアラビア語が共通の文化・文明語として受容され,その文字たるアラビア文字が,母語を異にする人々にも受容された.さらにモロッコからシリアにいたるローマ帝国の南半では,住民の大多数がアラビア語を母語として受けいれ,アラブ圏の中核地域になりさえしたのである.


 2つの大征服(およびその他の世界史上の大征服)は様々な観点から比較し得るが,文字史の観点からみると,確かに著しい違いがみられる.実際には文字のみならず言語,宗教,民族などの要素が絡み合わざるを得ない複合的な観点というべきだが,「文字」は2つの大征服を読み解くための鮮やかな補助線となっているように思われる.

 ・ 鈴木 董 『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』 山川出版社,2018年.

Referrer (Inside): [2019-11-23-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2019-06-23 Sun

#3709. アラム文字 [aramaic][writing][alphabet][mongolian]

 アラム文字 (Aramaic) は,アルファベット史のなかでも大変重要な位置を占めている.「#2398. 文字の系統 (3)」 ([2015-11-20-1]) で示したアルファベット系統図より,関連する箇所を抜き出して拡大すると次の通り.

Aramaic

 アラム文字は北セム文字から派生しており,文字史上きわめて重要なフェニキア文字 (Phoenician) とも密接な関係にある.これらを含めた種々のアルファベット間の派生関係は研究者間でも意見が分かれているが,『世界の文字の図典 普及版』に基づいた上の系統図に依拠するならば,アラム文字は,ウィグル文字,モンゴル文字,満州文字,シリア文字,アラビア文字,ヘブライ文字,そしてブラーフミー文字などの共通の母となっている.文明史上,きわめて重要な位置づけにあることが分かるだろう.
 アラム文字は,紀元前11--8世紀にシリアで栄えたアラム人が,その母語アラム語を表記するために北セム文字を改良したものである.アラム語自体は,アフロ=アジア語族のセム語派に属する言語である.紀元前5世紀にはペルシア帝国の共通語であったばかりか, 旧約聖書の原典のいくつかはアラム語で書かれている.その一方言であるガリラヤ方言は,イエスの母語であったともされる.このような言語を書き記すための文字だったため,アラム文字は古代オリエント世界における共通文字という地位を獲得した.アラム語は日常語としては8世紀以降にアラビア語に取って代わられたが,現在でもシリアのアンチ・レバノン山脈の山村などで現代アラム語として話されている.
 『世界の文字の物語』 (34) より「アラム文字の成立と発展」の記述を引用しよう.

 アラム文字は古代オリエント世界で最も多くの人々に利用されたアルファベットであろう.前1000年頃からシリアを中心に活発な活動を始めたアラム人が用いていた文字である.北西セム文字の一種で,前8世紀以降,字形が実用化・簡略化をたどりながら,フェニキア文字から次第に成立していったと考えられている.子音中心のアルファベット,文字数は22であり,右から左に書かれる.これらの特徴は,アラム文字がさまざまに分化して生じたアラム系の各文字にも基本的に受け継がれている.アラム人の母語アラム語は,アッシリア語やフェニキア語,ヘブライ語,アラビア語などと同じセム語派に属する.
 アラム人は政治的にはアッシリア帝国に敗れるが,その領内ではアラム語・アラム文字は広まり,アッシリア語に次ぐ第二の行政言語となった.アラム文字の使用はイラン西部にまで及んだ.その後,前6世紀末,アカイメネス朝ペルシアのダレイオス1世によってアラム語が第一行政言語となり,古代オリエント全域でアラム文字が使用されるようになった.年度版に刻まれる楔形文字と違い,アラム文字は主にインクで羊皮紙やパピルスに記される.


 アラム文字は,紀元前1千年紀のオリエント世界に時めいた scriptura franca だったといってよい.
 アルファベット史と関連して,以下の記事も参照.

 ・ 「#422. 文字の種類」 ([2010-06-23-1])
 ・ 「#423. アルファベットの歴史」 ([2010-06-24-1])
 ・ 「#1849. アルファベットの系統図」 ([2014-05-20-1])
 ・ 「#1834. 文字史年表」 ([2014-05-05-1])
 ・ 「#1822. 文字の系統」 ([2014-04-23-1])
 ・ 「#1853. 文字の系統 (2)」 ([2014-05-24-1])
 ・ 「#2398. 文字の系統 (3)」 ([2015-11-20-1])
 ・ 「#2416. 文字の系統 (4)」 ([2015-12-08-1])
 ・ 「#2389. 文字体系の起源と発達 (1)」 ([2015-11-11-1])
 ・ 「#2390. 文字体系の起源と発達 (2)」 ([2015-11-12-1])
 ・ 「#2399. 象形文字の年表」 ([2015-11-21-1])
 ・ 「#2414. 文字史年表(ロビンソン版)」 ([2015-12-06-1])
 ・ 「#2888. 文字史におけるフェニキア文字の重要性」 ([2017-03-24-1])
 ・ 「#2448. 書字方向 (1)」 ([2016-01-09-1])
 ・ 「#2449. 書字方向 (2)」 ([2016-01-10-1])
 ・ 「#2482. 書字方向 (3)」 ([2016-02-12-1])
 ・ 「#2483. 書字方向 (4)」 ([2016-02-13-1])

 ・ 『世界の文字の図典 普及版』 世界の文字研究会(編),吉川弘文館,2009年.
 ・ 古代オリエント博物館(編)『世界の文字の物語 ―ユーラシア 文字のかたち――』古代オリエント博物館,2016年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-09-08 Sun

#1595. 消えゆく満州語 [altaic][language_death][language_shift][map][mongolian]

 一昨日,9月6日(金)の朝日新聞朝刊15面に「消えゆく満州語守れ」と題する記事があった.満州語 (Manchu) は,中国東北地方に住まう満州族(清朝建国より前には女真族と呼ばれた)の言語であり,17世紀から3世紀にわたって中国大陸を支配した清朝の公用語として栄えた言語である(以下の清朝の歴史地図を参照).現在,満州族の1千万人以上いる人口の半分は中国の遼寧省に集中しているが,中国語への言語交替 (language_shift) が著しく,満州語は2009年,UNESCO により消滅危機言語に指定された.EthnologueManchu を参照すると,言語状況は "Nearly extinct" と見積もられている. *

Map of Manchu

 満州語については「#1548. アルタイ語族」 ([2013-07-23-1]) の記事で少しだけ触れたにすぎないが,比較言語学的にはアルタイ語族ツングース語派の1言語と分類される.モンゴル文字を改良した文字体系をもち,アルタイ語族に特徴的な母音調和を示すほか,母音交替によって男性語と女性語を区別する一群の語彙をもつのが特異である.なお,互いに通じるほど近いシボ語 (Xibe or Sibo) は,地理的に孤立しており,新疆ウイグル自治区にていまだ3万人ほどの話者を擁している.
 さて,「消えゆく満州語守れ」の記事では,満州族文化の研究者が,民族文化の消失を防ぎ,継承するために,満州語教育制度を充実する必要があることを訴えている.とりわけ満州語を解読できる研究者の育成が急務であることが説かれている.清朝前期の公文書や民間史料は満州語で書かれているが,それを読みこなせる研究者は国内に10人ほどしかいない.また,清朝の発祥地とされる遼寧省撫順市の洞窟に多くの古文書が保管されているが,軍事的な理由でアクセスするのが容易でないことも頭の痛い問題だという.
 満州語の衰退には,政治史的な要因も関わっている.満州族は,1911年の辛亥革命による清朝崩壊後に排斥を受け,1949年の新中国成立後も他の少数民族とは異なり,自治が認められてこなかった.1980年代に自治が認められ始めたが,その頃にはすでに母語話者の高齢化と漢族への同化が進んでしまっていた.
 このような状況にある言語は世界中にごまんとある.UNESCO が消滅危機の警鐘を鳴らしたとしても,人々に復興の意思があるとしても,現実的には守り得る言語の数には限りがある.記事のなかで瀋陽師範大学の曹萌教授曹教授が力説しているとおり,危機にある言語の「継承も研究も,時間との勝負」である.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-07-23 Tue

#1548. アルタイ語族 [altaic][family_tree][japanese][language_family][map][mongolian]

 「#496. ウラル語族」 ([2010-09-05-1]) と合わせてウラル・アルタイ大語族の仮説を構成するアルタイ語族 (Altaic) について,バーナード・コムリー他 (46--47) より紹介する.アルタイ語族は,実証されてはいないものの朝鮮語や日本語が所属するとも提案されてきた重要な語族である.コムリーの与えているアルタイ語系統図を見てみよう.

Altaic Family Tree

 この語族の故地はアルタイ山脈付近(下図参照)にあるとされ,西のチュルク語派 (Turkic),中央のモンゴル語派 (Mongolian),東のツングース語派 (Tungus) が区分される.その後,担い手である遊牧民によって拡散し,現在ではトルコからシベリア北東部にいたる大草原地帯に広く分布する.

Map of the Altaic Mountains

 アルタイ諸語のあいだの系統関係は,語彙よりも文法上の類似に基づくものが多く,研究者間で必ずしも意見の一致を見ているわけではない.共通する特徴として指摘されるのは,語順が SOV であること,膠着語であること,母音調和をもっていることが挙げられるが,後者2点についてはウラル語族の特徴とも一致する.日本語の所属が提案されているのも,これらの特徴ゆえである.主流派の見解によれば,日本語はアルタイ語族とオーストロネシア語族の混成語とも言われるが,証明は難しい.
 満州語は,中国最後の皇帝の言語であり,清王朝 (1644--1911) のもとで優遇されたが,現在では大多数の話者が中国語へ言語交替したため,消滅の危機に瀕している.
 アルタイ語族の各言語の詳細については,Ethnologue report for Altaic を参照.

 ・ バーナード・コムリー,スティーヴン・マシューズ,マリア・ポリンスキー 編,片田 房 訳 『新訂世界言語文化図鑑』 東洋書林,2005年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow