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phrase - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-04-23 07:12

2014-02-22 Sat

#1762. as it were [phrase][subjunctive][ormulum]

 標記は「いわば」の意味で用いられる,よく知られた成句である.成句なので共時的には統語分析するのも無意味だが,歴史的な関心からいえば無意味ではない.were が仮定法過去を表わしているということは想像がつくかもしれないが,as という接続詞の導く節内で仮定法が使われるというのも妙なものではないだろうか.
 結論を先に述べれば,この asas if の代用と考えてよい.以下の OED の as, adv. and conj. の P2 の語義説明にあるとおり,"as if it were so" ほどの表現が原型となっていると考えられる.

P2. a. as it were: (as a parenthetic phrase used to indicate that a word or statement is perhaps not formally exact though practically right) as if it were so, if one might so put it, in some sort.


 句としての初出は,1200年辺りの Ormulum (l. 16996) で,"Þatt lede þatt primmseȝȝnedd iss..iss all alls itt wære ȝet I nahhtess þessterrnesse." とある.
 as = as if としての用法は,OED の語義6にも挙げられているし,近現代英語でも「〜ように」と訳せるようなケースにおいて意外とよく現れている.後続するのは節の完全な形ではなく,省略された形,しばしば前置詞句などとなることが多い.細江 (446--47) の挙げている例文を示そう.

 ・ It lifted up it head and did address / Itself to motion, like as it would speak.---Shakespeare.
 ・ And all at once their breath drew in, / As they were drinking all.---Coleridge.
 ・ Our vast flotillas / Have been embodied as by sorcery.---Hardy.
 ・ Boadicea stands with eyes fixed as on a vision.---Binyon.
 ・ She is lost as in a trance.---ibid.
 ・ I have associated, ever since, with the sunny street of Canterbury, dozing as it were in the hot light.---Dickens.
 ・ He fixes it, as it were in a vice in some cleft of a tree, or in some crevice.---Gilbert White.
 ・ Every man can see himself, or his neighbour, in Pepy's Diary, as it were through the back-door.---George Gordon.


 例えば "She is lost as in a trance." を厳密に展開すれば,"She is lost as (she would be if she were) in a trance." となるだろう.このくどさを回避する便法として,as = as if の用法が発達してきたものと思われる.
 なお,"as (it would be as if) it were (so)" においては,it は漠然とした状況の it と考えられる.対応する直説法の成句 as it is (= as it happens) も参照.

 ・ 細江 逸記 『英文法汎論』3版 泰文堂,1926年.

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2013-12-26 Thu

#1704. a great many years [syntax][phrase]

 標記の句は現代英語でも用いられるが,文法的にどのように分析されるのだろうか.many years というつながりだと解釈すると,多さを強調するのになぜ形容詞 great が用いられるのか説明できないし,さらに不定冠詞 a が先行するのも解せない.全体が「かなり多くの年」の意となることは予想できるとしても,文法的にはどうなっているのか.手元の複数の辞書では,分析せずに,a great [good] many 全体として,やや略式に「かなり多くの」を表わす熟語ととらえている.例文は少なからず挙げることができる.

 ・ There were a great many people present there.
 ・ I've known her for a great many years.
 ・ A great many people who voted for her in the last election will not be doing so this time.
 ・ Most of the young men went off to the war, and a great many never came back.
 ・ We've both had a good many beers.


 この many は「多数」を意味する名詞ととらえられる.名詞なのだから,a great で修飾されているのも不思議はない.類例として a great multitude もあれば,a large number もある.しかし,a great many years の場合には,複数名詞 years が直接後続しているのが妙だということである.*a great many of years のように of が介在していれば理解しやすいが,a great manyyears が直接に接続するのはどういうわけか.強いて共時的に分析しようとすれば,a great manyyears は同格と解釈するほかない.
 歴史的には,標記の句は「a great many of + 複数名詞」のような構造から of が脱落したものではないか.OED の many, adj., pron., and n., and adv. の語義 6.a によると,「a great many of + 複数名詞」の型は16世紀前半から現れる.現在では of の後には冠詞,指示詞,所有形容詞を伴った名詞,あるいは代名詞が来るのが原則だが,古くは名詞の複数形単体で現れることもあった.一方,語義 6.b では,of を伴わずに a many が直接複数名詞を後続させる用法が挙がっている.「a many + 複数名詞」の型は16世紀後半から文証され,強調した「a great many + 複数名詞」のような表現も,OED の例文としては18世紀から現れている(もちろん実際にはもっと早かった可能性もある).また,語義 6.c では a great many が単体で名詞句として用いられる用法が記述されているが,こちらの初例は16世紀半ばである.
 共時的な立場から統語的に分析しようとすると妙であるという感覚は否めないが,通時的な立場で考えれば違和感は多少なりとも解消するだろう.なお,few を使った同様の表現として She must have cooked a good few dinners over the years. のような例もある.

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2012-11-17 Sat

#1300. hypostasis [hypostasis][sign][function_of_language][semiotics][phrase][rhetoric]

 Bloomfield (148) の用語で,言語形式をあたかも名詞であるかのように扱うこと.実体化,hypostatization とも呼ばれる.以下に,例を挙げよう.

 ・ That is only an if.
 ・ There is always a but
 ・ The word normalcy
 ・ The name Smith
 ・ the suffix -ish in boyish[2009-09-07-1]の記事「#133. 形容詞をつくる接尾辞 -ish の拡大の経路」を参照)

 最後の -ish は,独立して Ish. 「みたいな.」のように一種の副詞として独立して用いられるようになっており,接辞の実体化の例といえるだろう.ほかにも,isms (諸諸の主義), ologies (諸学問)などの例がある.
 ほかに,成句を字義通りにとらえる realization (現実化)という種類の hypostasis もある.kick the bucket は成句で「死ぬ」の意だが,あえて字義通りに「バケツを蹴る」と解するとき,hypostasis が生じている.他者の発言を繰り返す引用 (quotation) も,機能的には hypostasis にきわめて近いと考えられる.よく知られた例としては,Lewis Carroll の Through the Looking-Glass の次の一節における nobody の実体化が挙げられる.「言葉じり」にも通ずる概念だろう.

"I see nobody on the road," said Alice. "I only wish I had such eyes," the king remarked in a fretful tone. "To be able to see Nobody! And at that distance too! Why, it's as much as I can do to see real people, by this light!"


 hypostasis はメタ言語的用法の1つととらえてよいが,これが言語学的な関心の対象となるのは,結果として生じた実詞が普通名詞なのか,形容詞になれるのか,どの性に属することになるのかなどの問題が生じるからである.また,日常のなかに豊富に例があり,意味変化や造語などの創造的な言語活動にも広く関わってくる過程として重要だ.修辞法とも関わりが深い.
 hypostasis と関連して,メタ言語の機能については,「#1075. 記号と掛詞」 ([2012-04-06-1]) で取り上げた Barthes の記号の2次使用としての meta language や,「#1071. Jakobson による言語の6つの機能」 ([2012-04-02-1]) を参照.

 ・ Bloomfield, Leonard. Language. 1933. Chicago and London: U of Chicago P, 1984.
 ・ 大塚 高信,中島 文雄 監修 『新英語学辞典』 研究社,1987年.
 ・ 寺澤 芳雄(編)『英語学要語辞典』,研究社,2002年.298--99頁.

Referrer (Inside): [2017-01-12-1]

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