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pragmatics - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2022-07-02 10:43

2022-06-06 Mon

#4788. 英語の同音異義語および付加疑問の謎 [homonymy][polysemy][sound_change][semantic_change][lexicology][youtube][tag_question][pragmatics][voicy][homophony][homography][sobokunagimon]

 本日は直近の YouTube と Voicy で取り上げた話題をそれぞれ紹介します.

 (1) 昨日,YouTube の「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の第29弾が公開されました.「英語と日本語とでは同音異義語ができるカラクリがちがう!」です.



 英語にも日本語にも同音異義語 (homonymy) は多いですが,同音異義語が歴史的に生じてしまう経緯はおおよそ3パターンに分類される,という話題です.1つは,異なっていた語が音変化により発音上合一してしまったというパターン.もう1つは,同一語が意味変化により異なる語とみなされるようになったというパターン.さらにもう1つは,他言語から入ってきた借用語が既存の語と同形だったというパターンです.
 英語の同音異義語の例をもっと知りたいという方は「#2945. 間違えやすい同音異綴語のペア」 ([2017-05-20-1]),「#4533. OALD10 が注意を促している同音異綴語の一覧」 ([2021-09-24-1]) の記事がお薦めです.第2パターンの例として挙げた flowerflour については Voicy 「#2. flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」をお聴きください.
 また,対談内でも出てきた,故鈴木孝夫先生による「テレビ型言語」か「ラジオ型言語」かという著名な区別については「#1655. 耳で読むのか目で読むのか」 ([2013-11-07-1]),「#2919. 日本語の同音語の問題」 ([2017-04-24-1]),「#3023. ニホンかニッポンか」 ([2017-08-06-1]) でも触れています.
 今回の話題に関心をもたれた方は,本チャンネルへのチャンネル登録もよろしくお願いします.

 (2) 今朝,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 にて,リスナーさんからいただいた付加疑問 (tag_question) に関する質問に回答してみました.「#371. なぜ付加疑問では肯定・否定がひっくり返るのですか? --- リスナーさんからの質問」です.なかなかの難問で,当面の不完全な回答しかできていませんが,ぜひお聴きください.



 どうやら主文の表わす命題の肯定・否定を巡る単純な論理の問題ではなく,話し手の命題に関する前提と,話し手が予想する聞き手の反応との組み合わせからなる複雑な語用論の問題となっているようです.あくまで前者がベースとなっていると考えられますが,歴史的にはそこから後者が派生してきたのではないかとみています.未解決ですので,今後も考え続けていきたいと思います.なお,放送で述べていませんでしたが,今回参考にしたのは主に Quirk et al. です.
 上記の Voicy 放送はウェブ上でも聴取できますが,以下からダウンロードできるアプリ(無料)を使うとより快適に聴取できます.Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のフォローも合わせてよろしくお願いいたします! また,放送へのコメントや質問もお寄せください.

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 新しい一週間の始まりです.今週も楽しい英語史ライフを!

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

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2022-03-24 Thu

#4714. 発話行為とは何か? [youtube][terminology][speech_act][pragmatics][sociolinguistics][philosophy_of_language]

 井上逸兵さんとの YouTube の第8弾が公開されました.英語の大人な謝り方---でも、日本人から見るとなんだかなー【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル #8 】です.前回からの続きものとなります.
 謝罪「ごめんなさい」→誓い・意志「二度としません」→意志を問う Will you . . . ? について→Will you . . . ? は本当に丁寧か,のようにアチコチに話しが飛んでいきました.まさに雑談という感じですので.肩の力を抜いて気軽にご視聴ください.



 過去数回の動画で,発話行為 (speech_act) が話題の中心となっています.発話行為とは何なのでしょうか.
 専門的な語用論 (pragmatics) の立場からいえば「話し手と聞き手のコミュニケーション上の振る舞いとの関連からみた発話の役割」ほどです.しかし,これではよく分かりませんね.
 一般には,発話行為には3種類あるとされています.1つは,話し手による発話そのもの (locutionary act;狭い意味での「発話行為」) .2つめは,話し手の意図,あるいは話し手が発話によって行なっていること (illocutionary act;「発話内行為」) .3つめは,話し手が発話を通じて聞き手に及ぼす効果 (perlocutionary act;「発話媒介行為」) です.
 いくつかの用語辞典で "speech act (theory)" を調べてみました.比較的わかりやすくて短めだった2点を引用しましょう.

speech act theory A theory associated with the work of the British philosopher J. L. Austen, in his 1962 book How to do things with words, which distinguishes between three facets of a speech act: the locutionary act, which has to do with the simple act of a speaker saying something; the illocutionary act, which has to do with the intention behind a speaker's saying something; and the perlocutionary act, which has to do with the actual effect produced by a speaker saying something. The illocutionary force of a speech act is the effect which a speech act is intended to have by the speaker. (Trudgill 125)


speech act A term derived from the work of the philosopher J. L. Austin (1911--60), and now used widely in linguistics, to refer to a theory which analyses the role of utterances in relation to the behaviour of speaker and hearer in interpersonal communication. It is not an 'act of speech' (in the sense of parole), but a communicative activity (a locutionary act), defined with reference to the intentions of speakers while speaking (the illocutionary force of their utterances) and the effects they achieve on listeners (the perlocutionary effect of their utterances). Several categories of speech act have been proposed, viz. directives (speakers try to get their listeners to do something, e.g. begging, commanding, requesting), commissives (speakers commit themselves to a future course of action, e.g. promising, guaranteeing), expressives (speakers express their feelings, e.g. apologizing, welcoming, sympathizing), declarations (the speaker's utterance brings about a new external situation, e.g. christening, marrying, resigning) and representatives (speakers convey their belief about the truth of a proposition, e.g. asserting, hypothesizing). The verbs which are used to indicate the speech act intended by the speaker are sometimes known as performative verbs. The criteria which have to be satisfied in order for a speech act to be a successful are known as felicity conditions. (Crystal 446)


 関連して本ブログより以下の記事もご参照ください.

 ・ 「#2665. 発話行為の適切性条件」 ([2016-08-13-1])
 ・ 「#2674. 明示的遂行文の3つの特徴」 ([2016-08-22-1])
 ・ 「#2831. performative hypothesis」 ([2017-01-26-1])
 ・ 「#1646. 発話行為の比較文化」 ([2013-10-29-1])

 ・ Trudgill, Peter. A Glossary of Sociolinguistics. Oxford: Oxford University Press, 2003.
 ・ Crystal, David, ed. A Dictionary of Linguistics and Phonetics. 6th ed. Malden, MA: Blackwell, 2008. 295--96.

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2022-03-17 Thu

#4707. 依頼・勧誘の Will you . . . ? はいつからある? [youtube][pragmatics][historical_pragmatics][politeness][interrogative][auxiliary_verb][speech_act][sobokunagimon]

 昨晩18:00に YouTube の第6弾が公開されました.Would you...?などの間接的な依頼の仕方は英語特有--しかもわりと最近の英語の特徴【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル #6 】です.今回は話題が英語のポライトネスから英語史へとダイナミックに切り替わっていきますので,知的興奮を覚える方もいらっしゃるのではないかと.



 井上逸兵(著)『英語の思考法 ー 話すための文法・文化レッスン』(筑摩書房〈ちくま新書〉,2021年)では,英語の思考法の根幹には「独立」「つながり」「対等」の3本柱があると主張されています(「#4526. 井上逸兵(著)『英語の思考法 ー 話すための文法・文化レッスン』」 ([2021-09-17-1]) を参照).
 その1つの現われとして,英語では,相手に何かを依頼・勧誘する際に,相手のプライバシーになるべく踏み込まないよう,法助動詞を用いた疑問文の形でポライトに表現するという傾向があります.動画でも取り上げられた Would you . . . ? が典型ですが,他にも Will you . . . ?, Could you . . . ?, Can you . . . ? などがありますし,Won't you . . . ? などの否定バージョンもあります.それぞれの丁寧度は異なりますし,イントネーションや文脈によっては,むしろ失礼となる場合もあるので,実はなかなか使いにくいところもあります.しかし,背景にある基本的な考え方は,相手に直接命令するのではなく,相手の意向・能力を問う疑問文の体裁をとっているということです.相手にイエスかノーかを答える自由を委ねている,相手の独立を尊重してあげている,という点に英語流のポライトネスがあるのだ,ということです.
 ただし,英語史的にみると,このような英語的なポライトネス表現がどれだけ古くからあったのかを見極めることは,必ずしも簡単ではありません.近代以降の意外と新しい表現である可能性もあるのです.
 今回は Will you . . . ? に対象を絞ってみます.それらしき例文は後期古英語から挙がってきますし,中英語でもチラホラとみられます.OED の will, v.1 の語義8bより抜粋しましょう.

 b. Expressing a request in the second person, in the interrogative or in a subordinate clause after a verb such as beg.
     Such a request is usually courteous, but when given emphasis, it is impatient.
     This construction implies a first person response: 'I beg that you will excuse this' implies 'I will excuse it'.

   . . . .
   lOE St. Margaret (Corpus Cambr.) (1994) 166 Wilt þu me get geheran and to minum gode þe gebiddan?
   ?a1300 Fox & Wolf l. 186 in G. H. McKnight Middle Eng. Humorous Tales (1913) 33 Þou hauest ben ofte min I-fere, Woltou nou mi srift I-here?
   c1390 Pistel of Swete Susan (Vernon) l. 135 Wolt þou, ladi, for loue, on vre lay lerne?
   1485 Malory's Morte Darthur (Caxton) i. vi. sig. aiiiiv Sir said Ector vnto Arthur woll ye be my good & gracious lord when ye are kyng.
   . . . .


 MEDwillen v.(1)の語義18aのもとにも,いくつかの例が挙げられています.
 このように見てくると,依頼・勧誘の Will you . . . ? は古英語や中英語のような古い時期からあったと考えられそうですが,これらの例が現代と同等の依頼・勧誘の発話行為を表わしていたかどうかは,一つひとつ文脈に戻って慎重に確かめる必要があります.純粋に相手の意志を問う疑問文ではなく,話者による依頼・勧誘の発話行為を表わす文であることを,文脈を精査して認定する必要があるのです.そして,疑問か依頼・勧誘かは語用論的にグラデーションをなしているので,一方ではなく他方だと断言することは,イントネーションなどが復元できない文献資料ベースの研究にあっては,なかなか困難なことなのです.
 このように慎重な姿勢を取るならば,現代的な依頼・勧誘の Will you . . . ? は,その種こそ中英語(あるいはさらに遡って古英語)に求められそうですが,本格的に用いられ出したのはもっと後のことであるという可能性が残ります.この問題については,すでに「#3632. 依頼を表わす Will you . . . ? の初例」 ([2019-04-07-1]),「#3637. 依頼を表わす Will you . . . ? の初例 (2)」 ([2019-04-12-1]) でも論じてきましたので,そちらも参照ください.

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2022-03-10 Thu

#4700. 英語史と社会言語学 [youtube][sociolinguistics][pragmatics][history_of_linguistics][variation]

 昨日,井上逸兵さんとの YouTube の第4弾が公開されました.pleaseの使いすぎはキケン!?ーコミュニケーションの社会言語学【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル #4 】と題するおしゃべりですが社会言語学 (sociolinguistics) という分野について概観してみました.



 社会言語学は井上氏と私が関心を共有する分野です.そもそも英語史研究は伝統的に,扱う時代の社会的・文化的な背景を考慮するのが一般的です.言語と社会の関係を考察する社会言語学とは本質的に相性がよいのです.20世紀後半より社会言語学が理論的に成熟してくると,英語史研究もその成果を取り込み,新たな可能性が開かれてきました.とりわけ言語項の社会的な変異の存在を前提とする "variationist" な言語観は,社会言語学から生み出されたもので,昨今の英語史研究でも一般的に採用されています.
 社会言語学の取り上げる話題は多岐にわたります.「#2545. Wardhaugh の社会言語学概説書の目次」 ([2016-04-15-1]) などを概観すると,カバーする範囲の広さが分かると思います.言語と方言,標準化,地域方言,社会方言,レジスター,リンガ・フランカ,ピジン語,クレオール語,ダイグロシア,2言語使用,多言語使用,コードスイッチング,アコモデーション,言語変化,サピア=ウォーフの仮説,プロトタイプ,タブー,婉曲表現,おしゃべり,呼称,ポライトネス,発話行為,協調の原理,ジェンダー,言語差別,言語権,言語計画など,キーワードを挙げ始めると止まりません.英語史でも,これらの各々を念頭において研究することが可能です.
 今回の YouTube では,ミクロとマクロの社会言語学に触れました.ミクロな社会言語学では,例えば典型的に2人の間の相互行為 (interaction) に注目するようなアプローチが取られます.語用論にも接近することが多いです.一方,マクロな社会言語学では,2人にとどまらず言語共同体というより大きな単位で言語と社会の関係をとらえようとします.しかし,井上氏も私も,両者は地続きだという考え方をしています.
 社会言語学のミクロとマクロについては,以下の記事も参照してください.

 ・ 「#1380. micro-sociolinguistics と macro-sociolinguistics」 ([2013-02-05-1])
 ・ 「#1623. セネガルの多言語市場 --- マクロとミクロの社会言語学」 ([2013-10-06-1])
 ・ 「#2005. 話者不在の言語(変化)論への警鐘」 ([2014-10-23-1])
 ・ 「#3204. 歴史社会言語学と歴史語用論の合流」 ([2018-02-03-1])

 社会言語学に関心をもった方は,ぜひ「#1480. (英語)社会言語学概説書の書誌」 ([2013-05-16-1]) よりいずれかの概説書を手に取ってみてください.

Referrer (Inside): [2022-04-29-1]

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2022-03-07 Mon

#4697. よくぞ言語学に戻ってきた意味研究! [history_of_linguistics][semantics][youtube][cognitive_linguistics][pragmatics]

 昨日,井上逸兵さんとの YouTube の第3弾が公開されました.今回は井上編です.いかにして若き井上青年は言語に関心をもったのか? 必殺営業トークは言語学のネタになるのか?!・「英語学への入り口(井上編)」をご覧ください.



 今回のおしゃべりのキーワードは「意味の復権」だと思っています.言語やコミュニケーションの要諦は,意味を伝え合うことのはずです.ところが,近代言語学においては意味の研究は避けられきたのです.発音や文字は耳に聞こえ目に見えるので調べようがあります.ところが,意味はどうにも捉えどころがないので,研究したいとしても方法がなく,後回しになってしまうのです.
 言語学の歴史をひもとくと,やはり意味の扱いは常に弱かったことが分かります.しかし,言語にとって本質的である「意味」の議論がなくなったら,言語学もおしまいのはずです.ですので,低調ではあれ,やはり意味の議論は続いていました.「#1686. 言語学的意味論の略史」 ([2013-12-08-1]) を読んでいただきたいのですが,低調ながらも,形に対する意味の側からの主張は抵抗は,確かに存在し続けました.
 その我慢の結果といってよいのでしょうか,アンチの台頭といってよいのでしょうか,ついに1970年代くらいから,形ではなく意味を本拠とする言語理論が次々と現われてきました.認知意味論 (cognitive_linguistics) や語用論 (pragmatics) といった,新しいタイプの意味論 (semantics) です.こうして,意味研究が復権してきました.
 「意味論」は英語で semantics と言います.複数形の -s が語尾についています.私は常々思うのですが,19世紀以来,低調ながらも様々な「意味論s」が生まれてきたわけですが,古い意味論の上に新しい意味論が乗っかって累積してきたという形での発展というよりは,古い意味論と新しい意味論が横並びになって発展してきたように思うのです.文字通りの複数形の「意味論s」です.
 こうして意味研究が言語学に(よくぞ)戻ってきたわけですが,私の趣味としては,様々な「意味論s」が併存していることが非常におもしろいなぁと思って眺めています.

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2021-12-31 Fri

#4631. Oxford Bibliographies による意味・語用変化研究の概要 [hel_education][history_of_linguistics][bibliography][semantic_change][semantics][pragmatics]

 分野別に整理された書誌を専門家が定期的にアップデートしつつ紹介してくれる Oxford Bibliographies より,"Semantic-Pragmatic Change" の項目を参照した(すべてを読むにはサブスクライブが必要).この分野の重鎮といえる Elizabeth Closs Traugott による選で,最新の更新は2020年12月8日となっている.副題に "Your Best Research Starts Here" とあり入門的書誌を予想するかもしれないが,実際には専門的な図書や論文も多く含まれている.  *
 今回はそのイントロを引用し,この分野の研究のあらましを紹介するにとどめる.

Semantic change is the subfield of historical linguistics that investigates changes in sense. In 1892, the German philosopher Gottlob Frege argued that, although they refer to the same person, Jocasta and Oedipus's mother, are not equivalent because they cannot be substituted for each other in some contexts; they have different "senses" or "values." In contemporary linguistics, most researchers agree that words do not "have" meanings. Rather, words are assigned meanings by speakers and hearers in the context of use. These contexts of use are pragmatic. Therefore, semantic change cannot be understood without reference to pragmatics. It is usually assumed that language-internal pragmatic processes are universal and do not themselves change. What changes is the extent to which the processes are activated at different times, in different contexts, in different communities, and to which they shape semantic and grammatical change. Many linguists distinguish semantic change from change in "lexis" (vocabulary development, often in cultural contexts), although there is inevitably some overlap between the two. Semantic changes occur when speakers attribute new meanings to extant expressions. Changes in lexis occur when speakers add new words to the inventory, e.g., by coinage ("affluenza," a blend of affluent and influenza), or borrowing ("sushi"). Linguists also distinguish organizing principles in research. Starting with the form of a word or phrase and charting changes in the meanings of that the word or phrase is known as ???semasiology???; this is the organizing principle for most historical dictionaries. Starting with a concept and investigating which different expressions can express it is known as ???onomasiology???; this is the organizing principle for thesauruses.


 意味・語用変化の私家版の書誌としては,3ヶ月ほど前に「#4544. 英単語の意味変化と意味論を研究しようと思った際の取っ掛かり書誌(改訂版)」 ([2021-10-05-1]) を挙げたので,そちらも参照されたい.
 皆様,今年も「hellog?英語史ブログ」のお付き合い,ありがとうございました.よいお年をお迎えください.

Referrer (Inside): [2022-04-21-1]

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2021-12-18 Sat

#4618. 際立ちのためのイタリック体の起源と発達 [writing][printing][alphabet][grammatology][pragmatics][punctuation][bible][pragmatics]

 ローマン・アルファベットを用いる言語では,引用箇所や強調部分など,ある部分を特別に際立たせるためにしばしばイタリック体 (italics) が用いられる.通常のローマン体で書かれた文字列のなかで細身のイタリック体はよく目立つからである.書体の語用論的使用法といってよいだろう(cf. 「#574. punctuation の4つの機能」 ([2010-11-22-1])).
 イタリック体は,1501年に当時の写本書体に基づく新書体としてベネチアで現われた.紙が高価だった当時,細身で経済的な書体として生み出されたのである.しかし,イタリック体は当初から際立ちを与えるために用いられたわけではない.際立ちのために使用は,16世紀後半のフランスでの新機軸という.それがイングランドにも伝わり,1611年の欽定訳聖書 (Authorised Version) において挿入文の書体として用いられるに及び,広く受け入れられるに至った.後期近代にはイタリック体の使いすぎに不満を漏らす者も現われたようで,それほどまでに使用が一般化していたということになる.
 上記は Daniels (68--69) を読んで初めて知ったことである.欽定訳聖書が英語書記におけるイタリック体使用の慣習確立に一役買っていたいう事実には,特に驚かされた.同聖書の英語史上の意義の大きさを改めて確認した次第である.

 ・ Daniels, Peter T. "The History of Writing as a History of Linguistics." Chapter 2 of The Oxford Handbook of the History of Linguistics. Ed. Keith Allan. Oxford: OUP, 2013. 53--69.

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2021-12-18 Sat

#4618. 際立ちのためのイタリック体の起源と発達 [writing][printing][alphabet][grammatology][pragmatics][punctuation][bible][pragmatics]

 ローマン・アルファベットを用いる言語では,引用箇所や強調部分など,ある部分を特別に際立たせるためにしばしばイタリック体 (italics) が用いられる.通常のローマン体で書かれた文字列のなかで細身のイタリック体はよく目立つからである.書体の語用論的使用法といってよいだろう(cf. 「#574. punctuation の4つの機能」 ([2010-11-22-1])).
 イタリック体は,1501年に当時の写本書体に基づく新書体としてベネチアで現われた.紙が高価だった当時,細身で経済的な書体として生み出されたのである.しかし,イタリック体は当初から際立ちを与えるために用いられたわけではない.際立ちのために使用は,16世紀後半のフランスでの新機軸という.それがイングランドにも伝わり,1611年の欽定訳聖書 (Authorised Version) において挿入文の書体として用いられるに及び,広く受け入れられるに至った.後期近代にはイタリック体の使いすぎに不満を漏らす者も現われたようで,それほどまでに使用が一般化していたということになる.
 上記は Daniels (68--69) を読んで初めて知ったことである.欽定訳聖書が英語書記におけるイタリック体使用の慣習確立に一役買っていたいう事実には,特に驚かされた.同聖書の英語史上の意義の大きさを改めて確認した次第である.

 ・ Daniels, Peter T. "The History of Writing as a History of Linguistics." Chapter 2 of The Oxford Handbook of the History of Linguistics. Ed. Keith Allan. Oxford: OUP, 2013. 53--69.

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2021-11-23 Tue

#4593. 語用論的な if you like 「こう言ってよければ」の発展 [pragmatics][discourse_marker][lmode][construction_grammar][politeness][comment_clause][syntax][constructionalisation]

 if you like/choose/prefer/want/wish/will という表現は,if you wish it to be so called 「こう言ってよければ」ほどの意味で,挿入句として口語でよく用いられる.形式的には if を用いた条件節だが,論理的に帰結節の内容と結びつくわけではなく,あくまでメタ言語的に用いられる.3つほど例文を挙げてみよう.

 ・ It was, if you like, an error of judgment.
 ・ He, or She, if you prefer, could do better than that.
 ・ Music, if you will, is medicine.

 このような語用論的な使い方の「if you + 選択動詞」構文を,Brinton (273) は "if-EC" (= if-elliptical clause) と呼んでいる.この構文の発生は比較的新しく,後期近代英語のことらしい.その原型として Call it cruelty if you like, not mercy. のような "call it X" 構文があったのではないかと提案している.構文化 (constructionalisation) を念頭に置いた議論だが,Brinton (290) の論考の結論部を引用しよう.

In conclusion, elliptical if-ECs --- if you choose/like/prefer/want/wish --- all serve metalinguistic and politeness functions in PDE; like and prefer are particularly common in these functions. The clauses make their appearance in the LModE period. Semantically the metalinguistic meanings of if-ECs can be seen as developing from the concrete propositional meaning 'if you choose to do X'. The syntactic derivation of these clauses is problematic, however, because it is impossible to trace their origin back to bipartite (protasis-apodosis) structures where the valency of the verbs is complete. Reconstruction of the complement of the verb in the if-clause proves difficult because of the varied complement structures found historically and the rarity of such structures with metalinguistic meaning. While if-ECs in their propositional meaning typically occur with an explicit apodosis (if you want, open the window), apodoses never occur when the if-ECs function metalinguistically (it's large, even gargantuan, if you wish [*you may say so]). Despite its rather late attestation, a more plausible source for the if-EC is the 'call it X' pattern, which is inherently metalinguistic. Metalinguistic if-ECs may result from constructionalisation of the 'call it X' pattern in conjunction with explicitly metalinguistic if you V- clauses.


 語用論と統語論の接点に関する問題の好例というべき話題である.

 ・ Brinton, Laurel. "If you choose/like/prefer/want/wish: The Origin of Metalinguistic and Politeness Functions." Late Modern English Syntax. Ed. Marianne Hundt. Cambridge: CUP, 2014. 271--90.

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2021-11-14 Sun

#4584. or が表わす3種の意味 [pragmatics][semantics][speech_act][cognitive_linguistics][performative_hypothesis][conjunction][conceptual_metaphor][punctuation]

 「#4569. because が表わす3種の理由」 ([2021-10-30-1]) と「#4575. and が表わす3種の意味」 ([2021-11-05-1]) に引き続き,接続詞 (conjunction) の意外な多義性 (polysemy) に関する第3弾.or という基本的な接続詞にも「現実世界の読み」「認識世界の読み」「発話行為世界の読み」の3種の用法が確認される (Sweetser (93--95)) .

 (1) Every Sunday, John eats pancakes or fried eggs.
 (2) John will be home for Christmas, or I'm much mistaken in his character.
 (3) Have an apple turnover, or would you like a strawberry tart?

 上記 (1) は「現実世界の読み」の例である.or の基本義といってよい論理的な二者択一の例となる.毎日曜日にジョンがパンケーキ,あるいは目玉焼きを食べるという命題だが,現実にはたまたまある日曜日にパンケーキと目玉焼きをともに食べたとしても,特に矛盾しているとは感じられないだろう.ただし,毎日曜日に必ず両者を食べるという場合には,or の使用は不適切である.
 (2) は「認識世界の読み」となる.話者はジョンがクリスマスに帰ってくることを確実であると「認識」している.もしそうでなかったら,話者はジョンの性格を大きく誤解していることになるだろう.文の主旨は,ジョンの帰宅それ自体というよりも,それに関する話者の確信の表明にある.
 (3) は「発話行為世界の読み」の例となる.話者はアップルパイかイチゴタルトを勧めるという発話行為を行なっている.いずれかを選ぶように迫っている点で,一見すると論理的な二者択一のようにもみえるかもしれないが,そもそも or で結ばれた2つの節は何らかの命題を述べているわけではない.形式としては命令文,疑問文で表現されていることから分かるとおり,勧誘という発話行為(=勧誘)が行なわれているのである.
 or の多義性について上記のような観点から考えたことはなかったので,とても興味深い.

 ・ Sweetser, E. From Etymology to Pragmatics. Cambridge: CUP, 1990.

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2021-11-05 Fri

#4575. and が表わす3種の意味 [pragmatics][semantics][speech_act][cognitive_linguistics][performative_hypothesis][conjunction][conceptual_metaphor][iconicity][punctuation]

 「#4569. because が表わす3種の理由」 ([2021-10-30-1]) でみたように,because という1つの接続詞に「現実世界の読み」「認識世界の読み」「発話行為世界の読み」の3種があり,英語話者はそれらを半ば無意識に使い分けていることをみた.3つの世界の間を自由自在に行き来しながら,同一の接続詞を使いこなしているのである.
 まったく同じことが,さらに基本的な接続詞である and についてもいえるという.Sweetser (87--89) より,3つの世界の読みを表わす例文を引用しよう.

 (1a) John eats apples and pears.
 (1b) John took off his shoes and jumped in the pool.
 (2) Why don't you want me to take basketweaving again this quarter?
  Answer: Well, Mary got an MA in basketweaving, and she joined a religious cult. (...so you might go the same way if you take basketweaving).
 (3) Thank you, Mr Lloyd, and please just close the door as you go out.

 (1a) と (1b) は,and の最も普通の解釈である「現実世界の読み」となる例文である.(1a) と (1b) の違いは,前者はリンゴと梨を単純に接続しており,通常の読みでは順序を反転させても現実の命題に影響を与えないのに対して,後者は and で結ばれている2つの節の順序が重要となる点だ.(1b) においては,ジョンは靴を脱いだ後にプールに飛び込んだのであり,プールに飛び込んだ後に靴を脱いだのではない.この and は,時間・順序の観点から現実と言語の間の図像性 (iconicity) を体言しているといえる.だが,現実世界における何らかの接続が and によって示されている点は,両例文に共通している.
 (2) では,答えの文においてコンマに続く and が現われている.メアリーは楽ちん分野の修士号を取り,(私が考えるところでは,それが原因となって)カルト宗教団体に入団した,という読みとなる.メアリーは楽ちん分野の修士号を取り,その後でカルト宗教団体に入団した,という時間的順序は,確かに (1b) と同様に含意されるが,ここでは時間的順序に焦点が当てられているわけではない.むしろ,話者が2つの節の間に因果関係をみていることが焦点化されている.話者は(コンマ付き) and により認識上のロジックを表現しているのだ.
 (3) では,感謝と依頼という2つの発話行為 (speech_act) が and (やはりコンマ付き)で結びつけられている.ここでは現実世界や認識世界における何らかの接続が言語化されているわけではなく,あくまで発話行為の接続が表わされている.

 前回の because のケースに比べると,and の「3つの世界の読み」の区別は少々分かりにくいところがあるように思われるが,それぞれ and の「意味」が異なっていることは感じられるのではないか.Sweetser の狙いは,1つの接続詞で「3つの世界の読み」をまかなえることを because だけではなく and でも例証することによって,この分析の有効性を高めたいというところにあるのだろう.

 ・ Sweetser, E. From Etymology to Pragmatics. Cambridge: CUP, 1990.

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2021-11-03 Wed

#4573. Peterborough Chronicle のテキストの後半における文体や言語の変容 [anglo-saxon_chronicle][pchron][pragmatics][history]

 英語史研究において,古英語の The Anglo-Saxon Chronicle の伝統を引くテキストの中でも The Peterborough Chronicle (pchron) というヴァージョンの存在意義は大きい.古英語の最も遅い時代(実際,後半部分は中英語にさしかかっている)のテキストであるということ,そして後半部分に書かれている英文は必ずしも後期ウェストサクソン標準語に縛られておらず,同時代の英語を表わしているという点で,言語変化の著しかった当時の言語を反映しているとされる希少なテキストであるということが,その理由である.詳しくは「#721. The Peterborough Chronicle の英語史研究上の価値」 ([2011-04-18-1]),「#722. The Peterborough Chronicle の統語論の革新性と保守性」 ([2011-04-19-1]) を参照されたい.
 実際に Peterborough Chronicle を読んでいると,いわゆる "The First Continuation" と "The Second Continuation" と呼ばれる全体の後半部分については,前半部分である "The Copied Annals" と比べて,英語のモードがガラッと変わったという印象を強く受ける.写本上の筆跡,文体,英語の体系が目に見えて変わるのだが,それだけではない.記述されている内容や,書き手のテキストに対する関心や態度という根幹部分までもが大きく変化している.
 このギャップと違和感の原因について,Watt が丁寧に議論している.Watt (80) は,Peterborough Chronicle の "The First Continuation" と "The Second Continuation" をとりわけ念頭に置きつつ,中英語への過渡期にあって,古英語期から続く The Anglo-Saxon Chronicle の伝統が変容したことを,テキストに観察される次の事実に基づいて指摘している.

 - longer and less easily memorised annals
 - a move towards more narrative structure with the increasing use of metapragmatic linguistic expressions to effect narrative evaluation: that is, an increase in inscribed orality ending, as we have seen, in the narrator-centred history of the Second Continuation
 - an increase, particularly in the Peterborough Chronicle, in the focus on local rather than national topics
 - an empathetic, critical narrative persona, particularly in the First and Second Continuations of the Peterborough Chronicle
 - an overt sympathy for common people, especially in the Second Continuation


 原文を読んだことのある者にとって,たいへん納得できる指摘ではないだろうか.ここで述べられているのは,2つの "The Continuations" が,その前に置かれている "The Copied Annals" とは異なり,国の公式な記録であることをやめ,地域の個人的な記録へと変容しているということだ.これ以降の中英語期には,国としての歴史は原則として大陸諸国と同様にラテン語で書かれることになり,英語では書かれなくなるのだが,公式言語としての英語の衰退が,このテキスト後半部分から匂い立つ私的な性格に予見されているように思われる."The Continuations" は形式的には前時代からの惰性として英語で書かれており,一見すると継続性を認めることができそうだが,その内容も文体も言語も本質的に私的な方向へ変容しており,むしろそこに見られるのは断絶であると Watts は主張する.
 上で「私的」という言い方をしたが,正確にいえば Watts (58) が持ち出しているのは,「#230. 話しことばと書きことばの対立は絶対的か?」 ([2009-12-13-1]) で紹介した Koch and Oesterreicher の理論でいうところの「近いことば」 (Sprache der Nähe; immediacy) である.「遠いことば」で書かれていた古英語の The Anglo-Saxon Chronicle が,The Peterborough Chronicle の後半分にあっては「近いことば」に変容している,というのが Watts の主張である.

 ・ Watts, Richard J. Language Myths and the History of English. Oxford: OUP, 2011.
 ・ Koch, Peter and Wulf Oesterreicher. "Sprache der Nähe -- Sprache der Distanz: Mündlichkeit und Schriftlichkeit im Spannungsfeld von Sprachtheorie und Sprachgeschichte." Romanistisches Jahrbuch 36 (1985): 15--43.

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2021-10-30 Sat

#4569. because が表わす3種の理由 [pragmatics][semantics][speech_act][cognitive_linguistics][performative_hypothesis][conjunction][conceptual_metaphor]

 because は理由を表わすもっとも普通の接続詞だが,具体的な用例を観察してみると,そこに表わされている理由の種類にも様々なものがあることが分かる.ここで因果関係の哲学に入り込むつもりはないが,語用論や認知言語学の観点に絞って考察してみるだけでも,3種類は区別できそうだ.Sweeter (77) からの例文を挙げよう.

 (1) John came back because he loved her.
 (2) John loved her, because he came back.
 (3) What are you doing tonight, because there's a good movie on.

 3文における because が表わす理由の種類は明らかに異なる.(1) はもっとも普通で,現実世界の因果関係が表わされている.ジョンは彼女のことを愛していた,だからジョンは戻ってきたのだ.これを仮に「現実世界の読み」と呼んでおこう.
 しかし,(2) の because の役割は,現実世界の因果関係を表わしているわけではない.ジョンが戻ってきた,そのことが理由でジョンが彼女を愛するようになったという読みは成り立たない.この文の言わんとするところは,ジョンが戻ってきた,そのことを根拠としてジョンが彼女を愛していたのだと話者が悟った,ということだ.because 節は,話者がジョンの愛を結論づける根拠となっている.この趣旨でもとの文を拡張すれば,"I conclude that John loved her, because he came back." ほどとなろうか.これを仮に「認識世界の読み」と呼んでおこう.
 (3) は,主節が命題を表わす平叙文ですらなく疑問文なので,because が何らかの命題に対する理由であると解釈することは不可能だ.そうではなく,「今晩何してる?」と私が尋ねている理由は,いい映画が上映されているからであり,映画に誘おうと思っているからだ.もとの文を拡張すれば,"I am asking you what you are doing tonight, because there's a good movie on." ほどとなる.主節が表わす発話行為 (speech_act) を行なっている理由が because 以下で示されているわけだ.これを仮に「発話行為世界の読み」と呼んでおこう.
 3文において because 節が何らかの理由を表わしているとはいっても,その理由が属する世界に応じて「現実世界の読み」「認識世界の読み」「発話行為世界の読み」と各々異なるのである.3つのパラレルワールドがあると考えてよいだろう.because は3つの世界を股にかけて活躍している接続詞であり,この語を混乱せずに使いこなしている話者もまた3つの世界を股にかけて言語生活を営んでいるのである.

 ・ Sweetser, E. From Etymology to Pragmatics. Cambridge: CUP, 1990.

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2021-09-17 Fri

#4526. 井上逸兵(著)『英語の思考法 ー 話すための文法・文化レッスン』 [review][politeness][japanese][face][pragmatics][sociolinguistics][t/v_distinction][heldio]

 去る7月に,ちくま新書より井上逸兵(著)『英語の思考法 ー 話すための文法・文化レッスン』が出版されました.著者は私の慶應義塾大学文学部英米文学専攻の同僚です(井上さん,ご献本いただきましてありがとうございます!).
 著者の井上氏には本日,私が6月から放送している「英語の語源が身につくラジオ」(heldio) に特別ゲストとして出演していただいています(←同僚としての役得に甘えました).新書についてのおしゃべりです.10分×2本の収録となっていますので,2本目もお聞き逃しなく! しかも,2本目の最後は5秒ほど時間が足りなくてお尻が切れています(泣).



 日本語(文化)には厄介なタテマエとホンネがありハッキリとものを言いにくいのに対して,英語(文化)ではそういうものがないのでハッキリ主張することが好ましい.これは,日本人の英語学習者の多くが感じていることではないでしょうか.しかし,井上氏が本書で軽妙なオヤジギャグと豊富な用例により次々と明らかにしていくのは,そうではないということです.英語(文化)にもタテマエとホンネはちゃんとある.ただし,日本語(文化)のそれとは違った形で存在している,ということです.
 では,どう違っているのかといえば,英語(文化)の基盤には「独立」「つながり」「対等」への志向があるということです.「個人として対等な関係を保ちながらつながりを求める」のが英語流ということですね.個性や独立心が比較的弱く,上下関係のつながりを重視する伝統的な日本語(文化)の発想とは,確かに大きく異なります.
 私が英語史の観点から抱いた関心は,英語的な「独立」「つながり」「対等」への志向は,いつ生まれたのだろうかということです.中世まではさほど強くなかったように思われるからです.おそらく近代に入ってからではないかと.社会的上下関係を内包する2人称代名詞の you/thou の区別が解消していくのも,近代期(17世紀以降)だった事実が思い出されます.
 本書の中心テーマは日英語文化比較やポライトネスといったところだと思いますが,英語学研究者としての著者の真骨頂は,副題の「文法・文化レッスン」に現われているように思われます.文法という言語学的な堅い代物にも,その担い手の社会に特有の文化や思考回路が色濃く反映されているのだという点です.
 一方,本書はすぐに使える英語の用例が豊富で,実用書的に読むこともできます.実際,私も英語を話したり書いたりするときに,早速いくつかの語法を活用しています.You lost me. とか Let me share with you . . . . とか.ですが,褒められたときに Can you tell my wife that? と返すのは,私には歯が浮いて言えなさそうです.
 笑いながら読める英語本です.ぜひご一読ください.

 ・ 井上 逸兵 『英語の思考法 ー 話すための文法・文化レッスン』 筑摩書房〈ちくま新書〉,2021年.

Referrer (Inside): [2022-03-17-1]

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2021-07-10 Sat

#4457. 英語の罵り言葉の潮流 [swearing][slang][asseveration][lexicology][semantic_change][taboo][euphemism][pc][sociolinguistics][pragmatics]

 英語史における罵り言葉 (swearing) を取り上げた著名な研究に Hughes がある.英語の罵り言葉も,他の言葉遣いと異ならず,各時代の社会や思想を反映しつつ変化してきたこと,つまり流行の一種であることが鮮やかに描かれている.終章の冒頭に,Swift からの印象的な2つの引用が挙げられている (236) .

   For, now-a-days, Men change their Oaths,
   As often as they change their Cloaths.
                                                               Swift

Oaths are the Children of Fashion.
                                                               Swift


 英語の罵り言葉の歴史には,いくつかの大きな潮流が観察される.Hughes (237--40) に依拠して,何点か指摘しておきたい.およそ中世から近現代にかけての変化ととらえてよい.

 (1) 「神(の○○)にかけて」のような byto などの前置詞を用いた誓言 (asseveration) は減少してきた.
 (2) 罵り言葉のタイプについて,宗教的なものから性的・身体的なものへの交代がみられる.
 (3) C. S. Lewis が "the moralisation of status word" と指摘したように,階級を表わす語が道徳的な意味合いを帯びる過程が観察される.例えば churl, knave, cad, blackguard, guttersnipe, varlet などはもともと階級や身分の名前だったが,道徳的な「悪さ」を含意するようになり,罵り言葉化してきた.
 (4) 「労働倫理」と関連して,vagabond, beggar, tramp, bum, skiver などが罵り言葉化した.この傾向は,浮浪者問題を抱えていたエリザベス朝に特徴的にみられた.
 (5) 罵り言葉と密接な関係をもつタブー (taboo) について,近年,性的なタイプから人種的なタイプへの交代がみられる.

 英語の罵り言葉の潮流を追いかける研究は「英語歴史社会語彙論」の領域というべきだが,そこには実に様々な論題が含まれている.例えば,上記にある通り,タブーやそれと関連する婉曲語法 (euphemism) の発展との関連が知りたくなってくる.また,典型的な語義変化のタイプといわれる良化 (amelioration) や悪化 (pejoration) の問題にも密接に関係するだろう.さらに,近年の political correctness (= pc) 語法との関連も気になるところだ.slang の歴史とも重なり,社会言語学的および語用論的な考察の対象にもなる.改めて懐の深い領域だと思う.

 ・ Hughes, Geoffrey. Swearing: A Social History of Foul Language, Oaths and Profanity in English. London: Penguin, 1998.

Referrer (Inside): [2021-07-22-1]

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2021-06-11 Fri

#4428. hedge と prototype の関係 [hedge][prototype][semantics][pragmatics][logic]

 連日「#4426. hedge」 ([2021-06-09-1]) と「#4427. 様々な hedge および関連表現」 ([2021-06-10-1]) のように hedge の話題を取り上げている.今回も Lakoff の論文を参照して考察を続けたい.
 論文を読んで hedge の理解が変わってきた.昨日の記事の最後でも述べたが,単なる「ぼかし言葉」ではなく「ある命題を真たらしめる条件を緩く指定・制限する方略」と理解すべきだろう.少なくとも Lakoff の考える hedge はそのようなものらしい.そうすると,議論は必然的に意味論から語用論の方面に広がっていくことになるだろうし,意味に関する検証主義という言語哲学の問題にもつながっていきそうだ.
 hedge と prototype の深い関係も明らかになった.例えば,sort of という hedge は,プロトタイプから少々逸脱したものを許容する方向に作用する意味論・語用論上の「関数」とみることができる.実際,Lakoff はファジー集合を提唱した Lofti Zadeh の研究よりインスピレーションを受け,論理学・代数学的な関数を利用して tall, very tall, sort of tall, pretty tall, rather tall の意味分析を行なっている.Lakoff 論文 (482) より,以下の図を見てもらいたい.

Lakoff's Hedges

 この図の見方は次の通りだ.「ある人が tall, very tall, sort of tall, pretty tall, rather tall である」という命題がある場合,実際にどれくらいの背の高さであれば,その命題は真であると考えられるかについて多数の人にアンケートを取った結果のサマリーと読める.つまり,5'3" (5フィート3インチ≒160cm)で tall とみなす回答者はほぼ0%だろうが,6'3" (6フィート3インチ≒190cm)であればほぼ100%の回答者が tall を妥当な形容詞とみなすだろう.6'3" であれば,very tall ですら100%に近い高い値を示すだろう.しかし,rather tall は 6'3" に対しては,大方かえって不適切な表現と判断されるだろう,等々.
 要するに,5種類の表現に対して描かれた各曲線の形状が,その表現の hedge としての効果である,と解釈できる.これらは曲線であるから,代数的には関数として表現できることになる.もちろん Lakoff とて何らかの定数を与えた厳密な意味での関数の立式を目指しているわけではないのだが,hedge と prototype の関係がよく分かる考え方ではある.
 この点について Lakoff 自身の要約 (492--93) を引用しておこう.

6.5. Algebraic Functions Play a Role in the Semantics of Certain Hedges

Hedges like SORT OF, RATHER, PRETTY, and VERY change distribution curves in a regular way. Zadeh has proposed that such changes can be described by simple combinations of a small number of algebraic functions. Whether or not Zadeh's proposals are correct in all detail, it seems like something of the sort is necessary. . . .

6.6. Perceptual Finiteness Depends on an Underlying Continuum of Values

Since people can perceive, for each category, only a finite number of gradations in any given context, one might be tempted to suggest that fuzzy logic be limited to a relatively small finite number of values. But the study of hedges like SORT OF, VERY, PRETTY, and RATHER, whose effect seems to be characterizable at least in part by algebraic functions, indicates that the number and distribution of perceived values is a surface matter, determined by the shape of underlying continuous functions. For this reason, it seems best not to restrict fuzzy logic to any fixed finite number of values. Instead, it seems preferable to attempt to account for the perceptual phenomena by trying to figure out how, in a perceptual model, the shape of underlying continuous functions determines the number and distribution of perceived values.


 いつの間にかファジー集合という抜き差しならない領域にまで到達してしまったが,そもそも hedge =「ぼかし(言葉)」という認識から始まったわけなので,遠く離れていないようにも思えてきた.

 ・ Lakoff, G. "Hedges: A Study in Meaning Criteria and the Logic of Fuzzy Concepts." Journal of Philosophical Logic 2 (1973): 458--508.

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2021-06-10 Thu

#4427. 様々な hedge および関連表現 [hedge][prototype][semantics][pragmatics][intensifier]

 昨日の記事で「#4426. hedge」 ([2021-06-09-1]) を取り上げた.英語についていえば sort of が hedge の代表例として挙げられることが多いが,実際のところ hedge の種類は多様である.
 昨日の引用文で触れた Lakoff の論文を読んだ.p. 472 に "SOME HEDGES AND RELATED PHENOMENA" と題する表が掲げられている.英語の hedge (関連)表現の具体例として,以下に掲載しておこう.

sort of
kind of
loosely speaking
more or less
on the _____ side (tall, fat, etc.)
roughly
pretty (much)
relatively
somewhat
rather
mostly
technically
strictly speaking
essentially
in essence
basically
principally
particularly
par excellence
largely
for the most part
very
especially
exceptionally
quintessential(ly)
literally
often
more of a _____ than anything else
almost
typically/typical

as it were
in a sense
in one sense
in a real sense
in an important sense
in a way
mutatis mutandis
in a manner of speaking
details aside
so to say
a veritable
a true
a real
a regular
virtually
all but technically
practically
all but a
anything but a
a self-styled
nominally
he calls himself a ...
in name only
actually
really
(he as much as ...
-like
-ish
can be looked upon as
can be viewed as
pseudo-
crypto-
(he's) another (Caruso/Lincoln/ Babe Ruth/...)
_____ is the _____ of _____ (e,g., America is the Roman Empire of the modern world. Chomsky is the DeGaulle of Linguistics. etc.)


 一覧して分かるように,「#4236. intensifier の分類」 ([2020-12-01-1]) で挙げた広い意味での強意語 (intensifier) は,いずれも hedge の一種とみなすことができる.これまで hedge を単純に「ぼかし言葉」くらいに認識していたが,そうでもないことが分かってきた.ある命題を真たらしめる条件を緩く指定・制限する方略と理解しておくのがよさそうだ.

 ・ Lakoff, G. "Hedges: A Study in Meaning Criteria and the Logic of Fuzzy Concepts." Journal of Philosophical Logic 2 (1973): 458--508.

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2021-06-09 Wed

#4426. hedge [hedge][pragmatics][terminology][cooperative_principle][cooperative_principle][prototype][sociolinguistics][cognitive_linguistics][semantics]

 hedge (hedge) は,語用論の用語・概念として広く知られている.一般用語としては「垣根」を意味する単語だが,そこから転じて「ぼかし言葉」を意味する.日本語の得意技のことだと言ったほうが分かりやすいだろうか.
 『ジーニアス英和辞典』によると「(言質をとられないための)はぐらかし発言,ぼかし語句;〔言語〕語調を和らげる言葉,ヘッジ《◆I wonder, sort of など》.」とある.
 また,Cruse の意味論・語用論の用語集を引いてみると,たいへん分かりやすい説明が与えられていた.

hedge An expression which weakens a speaker's commitment to some aspect of an assertion:
   She was wearing a sort of turban.
   To all intents and purposes, the matter was decided yesterday.
   I've more or less finished the job.
   As far as I can see, the plan will never succeed.
   She's quite shy, in a way.


 述べられている命題に関して,それが真となるのはある条件の下においてである,と条件付けをしておき,後に批判されるのを予防するための言語戦略といってよい.一般には「#1122. 協調の原理」 ([2012-05-23-1]) を破ってウソを述べるわけにもいかない.そこで言葉を濁すことによって,言質を与えない言い方で穏便に済ませておくという方略である.これは私たちが日常的に行なっていることであり,日本語に限らずどの言語においてもそのための手段が様々に用意されている.
 私も hedge という用語を上記のような語用論的な意味で理解していたが,言語学用語としての hedge はもともと認知意味論の文脈,とりわけ prototype 理論の文脈で用いられたものらしい.Bussmann の用語集から引こう (205) .

hedge
Term introduced by Lakoff (1973). Hedges provide a means for indicating in what sense a member belongs to its particular category. The need for hedges is based on the fact that certain members are considered to be better or more typical examples of the category, depending on the given cultural background (→ prototype). For example, in the central European language area, sparrows are certainly more typical examples of birds than penguins. For that reason, of these two actually true sentences, A sparrow is a bird and A penguin is a bird, only the former can be modified by the hedge typical or par excellence, while the latter can be modified only by the hedges in the strictest sense or technically speaking.


 この言語学用語自体が,この半世紀の間,意味合いを変えながら発展してきたということのようだ.ところで,個人的には hedge という用語はどうもしっくりこない.なぜ「垣根」?

 ・ Cruse, Alan. A Glossary of Semantics and Pragmatics. Edinburgh: Edinburgh UP, 2006.
 ・ Bussmann, Hadumod. Routledge Dictionary of Language and Linguistics. Trans. and ed. Gregory Trauth and Kerstin Kazzizi. London: Routledge, 1996.
 ・ Lakoff, G. "Hedges: A Study in Meaning Criteria and the Logic of Fuzzy Concepts." Journal of Philosophical Logic 2 (1973): 458--508.

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2021-06-07 Mon

#4424. 英語新聞記事見出しの通時的変化 [newspaper][syntax][genre][pragmatics]

 英語新聞に関する言語学的研究の歴史について,Fries の概説を読んだ.コンパクトながらも要点がまとまっており,この分野に本格的な関心を寄せたことはなかったものの,改めておもしろそうな分野だと認識することができた.特に関心をもったのは見出し (headline) の通時的変化である.以下に,Fries (1070--71) の内容を紹介したい.
 新聞の見出し研究は70年を超える歴史を有する.「見出し」といっても,日々私たちが見慣れているタイプの見出し (headline proper) のほかにもいくつかの種類がある.17世紀から18世紀初頭にかけては,記事の出所と日時 (dateline) をもって見出しとする慣習がごく普通だった.
 また,国名・都市名・話題名などを1, 2語で端的に表現する項見出し (section heading) も一般的だった (ex. "LONDON", "AUSTRIA", "BIRTHS", "SHIP NEWS") .現代の新聞でいえば,ページの上部に1語で印刷されているテーマに相当するものと考えられる.
 20世紀の初めからは,続く段落を際立たせる中見出し (crosshead) も現われてきた.
 私たちが見慣れている通常の見出し (headline proper) は,実は古くから当然のようにあったわけではない.18世紀までは上記のように見出しといえば dateline が原則であり,headline proper が広く使われるようになってきたのは19世紀に入ってからである.その後,着実に分布が広がっていき,平均語数も1,2語程度から7語の長さにまで成長した.
 headline proper は,統語的にいえば名詞的見出しと動詞的見出しに分けられる.名詞的見出しとは The earthquakes, The Russian epidemic, Surrender of General Johnston, Brazil and Portugal, Russian and India のようなタイプを指す.
 一方,動詞的見出しには,To cease fire, Normal life returning to Krefeld, Recall suggested のように非定形動詞を用いるものもあれば,German Cabinet resigns のように定形動詞を用いるものもある.いずれも19世紀まではほとんど現われず,動詞的見出しはすぐれて現代的な特徴といってよい.
 統語的というよりは意味的な観点から見出しを分類すると,Arrival of the La Plata, Destructive Fires, Prices up のような "relational" なタイプと,A Scotch Ghost のような純粋に場所に関する(名詞的な)"regional" なタイプに分けられる.
 新聞は,メディアとしての発展とともに,その言語的特徴をも大きく変化させてきた.近代英語期の重要なジャンルとして,新聞英語の歴史的研究には大きな可能性がありそうだ.

 ・ Fries, Udo. "English and the Media: Newspapers." Chapter 68 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 1063--75.

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2021-05-18 Tue

#4404. 日本語由来の敬称 san [vocative][honorific][pragmatics][japanese][loan_word][title][khelf_hel_intro_2021]

 昨日「英語史導入企画2021」に公表されたコンテンツは,大学院生による「意味深な SIR」でした.伝統的な英語学・英語史研究では,呼びかけ語 (vocative) は周辺的な話題にとどまり,主要な調査対象とはなり得ないとみなされてきました.しかし,(歴史)語用論の台頭により,今では重要な研究テーマととらえられています.今回のコンテンツは,男性に対する敬称 (honorific) の呼びかけ語 sir (と対応する女性版の madam)について,歴史語用論の観点から紹介するものです.呼びかけ語の歴史を追究する魅力に気づいてもらえればと思います.
 コンテンツ内で,日本の学校での英語の授業で,英語で学生を呼ぶときにどのような敬称を使うのがふさわしいかという悩みが綴られています.確かに難しいですね.伝統的かつ典型的には Mr.Miss (or Mz.?) でしたが,昨今様々な事情で使いにくくなっています.私個人としては日本語由来の san 「さん」の使用がふさわしいと思っており,一般の英語使用においても,もっと流行ってくれればよいと期待しています.敬称としての san は,OED でも san, n.3 として見出し語が立てられており,今やれっきとした英単語です.

   A Japanese honorific title, equivalent to Mr., Mrs., etc., suffixed to personal or family names as a mark of politeness; also colloquial or in imitation of the Japanese form, suffixed to other names or titles (cf. mama-san n.).
      When suffixed to a female personal name, and in more polite endearment, san is often coupled with the prefix O- (see quot. 1922).

   1878 C. Dresser in Jrnl. Soc. Arts 26 175/1 Mr. Sakata, or, as they would say Sakata San, who was appointed..as one of my escort through Japan.
   . . . .
   . . . .
   1922 J. Joyce Ulysses ii. xii. [Cyclops] 313 The fashionable international world attended en masse this afternoon at the wedding... Miss Grace Poplar, Miss O Mimosa San.
   . . . .
   . . . .
   1972 J. Ball Five Pieces Jade xiv. 188 It would make me the greatest pleasure, Nakamura san.


 san は,大学の同僚等,日本(語)事情に精通した英語母語話者と英語で話すときには,ごく普通に使えます.老若男女問わず一般的に利用できる敬称でもあり,その点でも都合がよいのです.これがもっと国際的に流行ってくれれば,単語としても語用としても,日本語からの大きな貢献になるだろうと思っています.
 なお,日本語の「さん」自体は,敬意の高い「さま」の短縮した異形で,その点でも敬意が高すぎず低すぎずちょうどよい位置づけにあります.一方,もっと転訛した異形「ちゃん」は愛称形 (hypocorism) ですね.

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