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english_linguistics - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2022-12-02 14:05

2022-08-27 Sat

#4870. 英語学入門書の紹介 [english_linguistics][2022_summer_schooling_english_linguistics][bibliography][review]

 今週の月曜日に始まった慶應義塾大学通信教育課程の「英語学」夏期スクーリングが本日で終了します.暑い最中の集中講義でしたが,充実した1週間となりました.講義と連動して,毎日 hellog と heldio でも英語学の基本的な話題を導入してきましたが,最終日の締めくくりとして,改めて英語学入門書をコメント付きで何点か紹介します.英語学を学び始める/続けるための参考になればと思います.

 ・ 平賀 正子 『ベーシック新しい英語学概論』 ひつじ書房,2016年.
   「新しい」概論と謳っている通り,新規さが目立つ入門書.章立ての順序が伝統的な概説書とは逆で,英語変種,社会言語学,語用論から始まり,語彙と文法を経て,音声学で終わっています.今後,このような順序がスタンダードになっていくのかもしれません.記述は易しいです.

 ・ 井上 逸兵 『グローバルコミュニケーションのための英語学概論』 慶應義塾大学出版会,2015年.
   英語史と世界英語から始まり,基本6部門(音声学,音韻論,形態論,統語論,意味論,語用論)が続き,著者の専門である相互行為の社会言語学や談話分析などで締めくくられています.章ごとに参考文献も付されており有用です.

 ・ 長谷川 瑞穂(編著),大井 恭子・木全 睦子・森田 彰・高尾 享幸(著) 『はじめての英語学 改訂版』 研究社,2014年.
   言葉の起源や英語の諸変種という話題から始まり,伝統的な切り口での標準的記述が続き,文化・社会・国家・教育と英語の関係についての考察で終わっています.英語を広く見渡した概説書です.

 ・ 三原 健一・高見 健一(編著),窪薗 晴夫・竝木 崇康・小野 尚久・杉本 孝司・吉村 あき子(著)『日英対照 英語学の基礎』 くろしお出版,2013年.  *
   伝統的な基本6部門のみを扱う理論言語学的な色彩の濃い概説書で,言語学の入門書としても有用です.「日英対照」とある通り一貫して両言語比較がなされているので,日本語の関心から英語学に入っていくことができます.

 ・ 西原 哲雄(編) 『言語学入門』朝倉日英対照言語学シリーズ 3 朝倉書店,2012年.
   タイトルに言語学とあるものの,日英対照言語学シリーズの第1巻として,日本語の考察も交えた英語史入門書となっています.音声学から始まって語用論で終わる伝統的な章立てです.章ごとに演習問題や文献一覧も付されています.英語学の学びには,このシリーズの他の巻もお薦めです.

 ・ 安藤 貞雄・澤田 治美 『英語学入門』 開拓社,2001年.
   伝統的な順序で章立てが組まれており,他の入門書と比べて記述が詳しめです.最終章「日英語の比較」は有用です.

 ・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.
   英書の入門書を1冊だけ紹介します.300頁ほどで英語学の基本6部門のみならず,英語の変種,言葉遊び,歴史までを広くカバーします.英語に関する話題と実例の宝庫です.

 楽しく実りある英語学の学びを!

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2022-08-26 Fri

#4869. 協調の原理と会話の含意 --- 通信スクーリング「英語学」 Day 5 [english_linguistics][pragmatics][semantics][implicature][cooperative_principle][tautology][voicy][2022_summer_schooling_english_linguistics]

 語用論 (pragmatics) は,意味論 (semantics) とともに,言葉の意味を研究する領域ですが,言葉そのものの意味というよりも話者の意味・意図に注目します.辞書的な意味ではなく,話者が言葉を使っている現場において立ち現われてくる生の意味です.会話においては,話し手と聞き手は語用論的に高度な意味作用をライヴで取り交わしているのです.
 語用論は英語学でも発展の著しい領域で話題は豊富ですが,Day 5 では「協調の原理」と「会話の含意」に絞って語用論の考え方の基本を概説します.



1. 協調の原理 (cooperative_principle)
  1.1 「#1122. 協調の原理」 ([2012-05-23-1])
  1.2 「#1133. 協調の原理の合理性」 ([2012-06-03-1])
  1.3 「#1134. 協調の原理が破られるとき」 ([2012-06-04-1])
  1.4 「#4851. tautology」 ([2022-08-08-1])
2. 会話の含意 (conversational implicature)
  2.1 「#1976. 会話的含意とその他の様々な含意」 ([2014-09-24-1])
  2.2 「#3402. presupposition trigger のタイプ」 ([2018-08-20-1])
  2.3 「#3403. presupposition の3つの特性」 ([2018-08-21-1])
6. 本日の復習は heldio 「#452. 協調の原理」,およびこちらの記事セットより




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2022-08-25 Thu

#4868. 英語の意味を分析する様々なアプローチ --- 通信スクーリング「英語学」 Day 4 [english_linguistics][semantics][prototype][metaphor][metonymy][cognitive_linguistics][polysemy][voicy][2022_summer_schooling_english_linguistics][history_of_linguistics][lexicology][semantic_field]

 言葉の意味とは何か? 言語学者や哲学者を悩ませ続けてきた問題です.音声や形態は耳に聞こえたり目に見えたりする具体物で,分析しやすいのですが,意味は頭のなかに収まっている抽象物で,容易に分析できません.言語は意味を伝え合う道具だとすれば,意味こそを最も深く理解したいところですが,意味の研究(=意味論 (semantics))は言語学史のなかでも最も立ち後れています(cf. 「#1686. 言語学的意味論の略史」 ([2013-12-08-1])).
 しかし,昨今,意味を巡る探究は急速に深まってきています(cf. 「#4697. よくぞ言語学に戻ってきた意味研究!」 ([2022-03-07-1])).意味論には様々なアプローチがありますが,大きく伝統的意味論と認知意味論があります.スクーリングの Day 4 では,両者の概要を学びます.



1. 意味とは何か?
  1.1 「#1782. 意味の意味」 ([2014-03-14-1])
  1.2 「#2795. 「意味=指示対象」説の問題点」 ([2016-12-21-1])
  1.3 「#2794. 「意味=定義」説の問題点」 ([2016-12-20-1])
  1.4 「#1990. 様々な種類の意味」 ([2014-10-08-1])
  1.5 「#2278. 意味の曖昧性」 ([2015-07-23-1])
2. 伝統的意味論
  2.1 「#1968. 語の意味の成分分析」 ([2014-09-16-1])
  2.2 「#1800. 様々な反対語」 ([2014-04-01-1])
  2.3 「#1962. 概念階層」 ([2014-09-10-1])
  2.4 「#4667. 可算名詞と不可算名詞とは何なのか? --- 語彙意味論による分析」 ([2022-02-05-1])
  2.5 「#4863. 動詞の意味を分析する3つの観点」 ([2022-08-20-1])
3. 認知意味論
  3.1 「#1961. 基本レベル範疇」 ([2014-09-09-1])
  3.2 「#1964. プロトタイプ」 ([2014-09-12-1])
  3.3 「#1957. 伝統的意味論と認知意味論における概念」 ([2014-09-05-1])
  3.4 「#2406. metonymy」 ([2015-11-28-1])
  3.5 「#2496. metaphor と metonymy」 ([2016-02-26-1])
  3.6 「#2548. 概念メタファー」 ([2016-04-18-1])
4. 本日の復習は heldio 「#451. 意味といっても様々な意味がある」,およびこちらの記事セットより




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2022-08-24 Wed

#4867. 英語の文構造を見る2つの視点 --- 通信スクーリング「英語学」 Day 3 [english_linguistics][syntax][generative_grammar][word_order][voicy][2022_summer_schooling_english_linguistics][cognitive_linguistics]

 「英語学」スクーリングの Day 3 では,英語の統語論 (syntax) に注目します.1950年代後半に Noam Chomsky が現われて以来,それまではさほど注目されていなかった統語論研究が,とみに活発化しました.生成文法 (generative_grammar) が一世を風靡すると,次いでそのアンチとして George Lakoff と Ronald W. Langacker が主導する形で1980年代後半より認知文法が興隆しましたが,統語論はそこでも注目され続けました(cf. 「#3532. 認知言語学成立の系譜」 ([2018-12-28-1])).
 とりわけ英語は「語順の言語」なので統語論は重要です.英語統語論という膨大な領域を短時間で一望しようとするのも無理があるのですが,具体的な問題の扱いを通じて統語論の力を味わってみたいと思います.



1. 生成文法
  1.1 統語ツリーを描く
  1.2 「#1820. c-command」 ([2014-04-21-1])
  1.3 「#2136. 3単現の -s の生成文法による分析」 ([2015-03-03-1])
  1.4 「#4860. 生成文法での受動文の作られ方」 ([2022-08-17-1])
2. 機能的構文論
  2.1 情報構造と冠詞: 「#3831. なぜ英語には冠詞があるのですか?」 ([2019-10-23-1])
  2.2 「#4641. 副詞句のデフォルトの順序 --- 観点,過程,空間,時間,付随」 ([2022-01-10-1])
  2.3 「#4864. 相互動詞と視点」 ([2022-08-21-1])
3. 英語の語順とその歴史: 「#4527. 英語の語順の歴史が概観できる論考を紹介」 ([2021-09-18-1])
4. 本日の復習は heldio 「#450. 英語学・英語史と統語論」,およびこちらの記事セットより




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2022-08-23 Tue

#4866. 英語の音と形と2重分節 --- 通信スクーリング「英語学」 Day 2 [english_linguistics][phonetics][phonology][voicy][reference][double_articulation][2022_summer_schooling_english_linguistics]

 「英語学」スクーリングの Day 2 です.いよいよ本格的に中身に入っていきますが,今日のキーワードは2重分節 (double_articulation),音素 (phoneme),形態素 (morphology) です.「語とは何か?」という抜き差しならない議論でも盛り上げたいと思います.開口一番の早口言葉はネタです(笑).



1. 英語の早口言葉: 「#3093. 早口言葉と tongue twisters」 ([2017-10-15-1])
2. 音声学,音韻論,形態論
  2.1 2重分節: 「#767. 言語の二重分節」 ([2011-06-03-1])
  2.2 形態素と音素 (morpheme vs phoneme)
  2.3 音素と音 (phoneme vs phone): 音韻論と音声学の違い
3. 音素
  3.1 母音: 「#19. 母音四辺形」 ([2009-05-17-1])
  3.2 子音: 「#1813. IPA の肺気流による子音の分類」 ([2014-04-14-1])
  3.3 英語と日本語の音素: 「#1021. 英語と日本語の音素の種類と数」 ([2012-02-12-1])
  3.4 韻律 (prosody): 様々な韻律的特徴
4. 形態素
  3.1 語の定義を巡って: 語とは何か?
  3.2 屈折形態論と派生形態論: 「#2653. 形態論を構成する部門」 ([2016-08-01-1])
  3.3 複合語を巡って: 様々な複合語
5. 本日の復習は heldio 「#449. 言語の2重分節とは何か?」,およびこちらの記事セットより




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2022-08-22 Mon

#4865. 英語学入門の入門 --- 通信スクーリング「英語学」 Day 1 [english_linguistics][linguistics][sobokunagimon][voicy][reference][2022_summer_schooling_english_linguistics][bibliography]

 今週(月)~(土)の午前中は,慶應義塾大学通信教育課程にて「英語学」の夏期スクーリングが対面で開講されます.1コマ105分の授業を計12回という短期決戦の集中講義です.ということで,今週は hellog や heldio の話題も概ね集中講義と連動させる形にし,「英語学入門ウィーク」をお届けしようと思います.集中講義の初日は受講者の顔を眺めながら空気作りをしつつ,以下のような導入的なメニューを展開する予定です.受講される方,どうぞよろしくお願いします.そうでない方も,まだであれば英語学を学び始めてはいかがでしょうか.



1. 英語学の入門書
  ・ 三原 健一・高見 健一(編著),窪薗 晴夫・竝木 崇康・小野 尚久・杉本 孝司・吉村 あき子(著)『日英対照 英語学の基礎』 くろしお出版,2013年.  *
  ・ 井上 逸兵 『グローバルコミュニケーションのための英語学概論』 慶應義塾大学出版会,2015年.
  ・ 平賀 正子 『ベーシック新しい英語学概論』 ひつじ書房,2016年.
  ・ 長谷川 瑞穂(編著),大井 恭子・木全 睦子・森田 彰・高尾 享幸(著) 『はじめての英語学 改訂版』 研究社,2014年.
  ・ 安藤 貞雄・澤田 治美 『英語学入門』 開拓社,2001年.
  ・ その他「#4727. 英語史概説書等の書誌(2022年度版)」 ([2022-04-06-1]) を参照

2. 堀田が提供する英語学・英語史に関するウェブリソース
  ・ 「hellog~英語史ブログ」: http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/
  ・ Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」: https://voicy.jp/channel/1950
  ・ YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」: https://www.youtube.com/channel/UCth3mYbOZ9WsYgPQa0pxhvw
  ・ 詳しくはこちらのプロフィール (note)を参照: https://note.com/chariderryu/n/na772fcace491

3. 英語に関する素朴な疑問から始める「英語学」
  ・ 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1])
  ・ 「#1442. (英語)社会言語学に関する素朴な疑問を募集」 ([2013-04-08-1])

4. 英語学・言語学の6つの基本構成部門
  ・ 音声学 (phonetics)
  ・ 音韻論 (phonology)
  ・ 形態論 (morphology)
  ・ 統語論 (syntax)
  ・ 意味論 (semantics)
  ・ 語用論 (pragmatics)

5. 本日の復習は heldio 「#448. 言語学の6つの基本構成部門」(14分程度),およびこちらの記事セットより




Referrer (Inside): [2022-10-23-1]

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