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syllabary - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2020-10-30 11:00

2019-12-07 Sat

#3876. トップ50言語における文字体系の種別 [writing][grammatology][alphabet][syllabary]

 Cook (9) が,話者人口によるランキングでトップ50に入る言語で使用されている文字体系を調査し,その種別ごとの割合をはじき出している.15年ほど前の統計なので解釈には若干の注意を要するが,参考になる.
 文字体系のオーソドックスな分類は,「#422. 文字の種類」 ([2010-06-23-1]) でみたとおりだが,ここでは表語文字 (Character-based) および3種の表音文字へと大雑把に分類されている.後者の3種とは,音素文字 (Alphabet-base),音節文字 (Syllable-based),子音文字 (Consonant-based) のことである.

Writing Systems in the Top 50 Languages


 最も多いのは,世界中で12億3200万人以上の人々に用いられている音素文字,いわゆるアルファベットである.次に来るのが,漢字に代表される表語文字 (Character-based) である.ここには9億3千万人を超える中国語使用者(実際には1億2500万人の日本の漢字使用者も含む)が含まれる.3番目に来るのは,3億2900万人以上に用いられている音節文字である.ここにはインド系文字や日本語の仮名が含まれる.そして,ヘブライ語やアラビア語を話す4500万人以上によって用いられる子音文字が続く.
 もちろんこの割合はトップ50の言語に限って計算されたものにすぎないが,他の多数の諸言語を考慮に入れたとしても,おそらく分布が大きく変動することはないかと思われる.粗くいって表音文字系列が2/3,表語文字系列が1/3を占めるととらえておけばよいだろう.

 ・ Cook, Vivian. The English Writing System. London: Hodder Education, 2004.

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2015-12-20 Sun

#2428. チェロキー音節文字とクリー音節文字 [writing][grammatology][syllabary]

 19世紀前半にローマ字を参考に作られた2種類の表音文字がある.いずれもアメリカ先住民の言語を表記するのに考案された音節文字だ.
 1つめは,チェロキー・アルファベットと呼ばれる文字である.これは,チェロキー族 (Cherokee) のセコイヤ (Sequoyah; 1760--1843) が,母語であるイロクォイ語 (Iroquoian) を表記するために1821年に考案したもので,「アルファベット」と呼ばれこそするが,実際には音節文字 (syllabary) である.85の記号により,6つの母音,22の子音,200ほどの音素群や音節を表わす.セコイヤは英語を知らなかったが,英語話者の開拓者と接触するなかで,母語を表記する文字体系を作ろうと思い立った.当初は表語文字の考案を目指していたが,数千の記号が必要となることを知って諦めざるをえず,音節文字の考案へと転向した.はじめ文字の種類は200近くあったが,最終的には85文字へ絞った.字形はギリシア文字やヘブライ文字の影響も受けつつラテン文字を基礎としているが,与えられている音価はラテン語や英語などとはまったく異なる.
 チェロキー文字が提案されると,それは数年のうちに多くのチェロキー族の人々によって習得された.まずは発祥地 North Carolina で,さらに1830年以降はチェロキー族の多くが移住した Oklahoma でも用いられることになった.1827年には,チェロキー文字はボストンでデザインされた活字により印刷・出版されもした.やがてチェロキー族の90%がこの文字を読めるようになったというから,民族の識字率向上に相当の効果があったことになる.チェロキー文字は後に衰退したが,私信,聖書翻訳,インディアンの医学的記述などには残ったものがある.また,近年,復活の試みもなされているようだ.以下にその文字表を示そう(Comrie et al. 206; ロビンソン 224--25 も参照).

Cherokee Syllabary

 一方,19世紀半ばに James Evans なる宣教師が,カナダ西部で行われていたアルゴンキン語群 (Algonquin) に属するクリー語 (Cree) を表記する文字を考案した.基本的には12組の音節文字だが,語尾に現われる短子音を綴ることもできた.1833年までに,この言語と文字により聖書翻訳がなされた.また,同じ文字は Choctaw, Chippewa, Slave などのアメリカ先住民の言語を表記するのにも用いられた.クリー文字もチェロキー文字と同様に,民族の識字率の向上に訳だったようだ.以下に,Comrie et al. (205, 207) より文字表を示そう.

Cree Syllabary

 両文字体系については,Omniglot: Writing Systems & Language of the World より Cherokee language, writing system and pronunciation および Cree syllabary, pronunciation and language も要参照.

 ・ ロビンソン,アンドルー(著),片山 陽子(訳) 『文字の起源と歴史 ヒエログリフ,アルファベット,漢字』 創元社,2006年.
 ・ Comrie, Bernard, Stephen Matthews, and Maria Polinsky, eds. The Atlas of Languages. Rev. ed. New York: Facts on File, 2003.

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