有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 9月号が,8月28日に公開されました.通算第23号となります.
今号は,Galois さんによる秋の涼しさを感じさせる見出し画像とともに,早速本編の寄稿ラインナップが始まります.
今号も圧倒的な記事量を誇る ari さんからスタートです.犬に絡めたシリウスの話題に始まり,ベルギーの街ブリュッヘと結びつけた英語史のネタ,チーズフォンデュをめぐる一件(タイトルからは何のトピックか分かりませんが,そこは読んでのお楽しみ)など,いつもの通り縦横無尽です.拙著『なぜさんたんげん』と関連付けた記事や,heldio や Helvillian に注目したファンサイト「Helvillain Heal」を公開されたとの報告までなされ,まさに八面六臂のhel活振りです.
mozhi_gengo さんは今号でも多作です,迂言的な do の文法化から,turnstile と urchin の語源,ヴェルネルの法則とグリムの法則を絡めたヒンディー語探訪まで,比較言語学的な視点が冴えわたっています.「青椒肉絲の美味しい店」と関連づけたトピックも要注目です.
辞書通読勢も健在です.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンの dice, dictionary, die まで到達しています.あまねちゃんはこの1ヶ月で通読ノートを第6弾から第9弾まで一気に4本更新し,ひそかに同辞典の「読み解き」にまで手を広げています.August の語源を遡る回や古英語 guma に迫る回も見逃せません.
教育現場からは,sorami さんの中学生向け語源クイズが第14弾,第15弾を数え,和製英語や不定冠詞 a/an,interested と interesting の使い分けといった実践的なテーマを取り上げています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」も引き続き絶好調で,kendama_player さんも英語史におけるヴァイキングの位置づけに関する仮説の紹介や,服部義弘先生への heldio オープンマイク企画の予告など,教育と研究の橋渡し役を果たしてくれています.
ドイツ語と英語史の定点観測を続ける ykagata さんは,rain と salad の語源記事に加え,連載「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語」が開始から1年を迎えたことを報告しています.ドイツ語 gleich 「同じ,すぐに」と英語 alike が同語源であること,そして Zum Wohl 「乾杯」の Wohl と古英語 Wes hal 「乾杯」の hal が実は別語源だという指摘と考察は刺激的でした.川上さんは「英語と歴史」シリーズを続けられ,「英語のなぜ」やってます通信も積み重ね,地道な連載の強みを見せつけています.
Grace さんは festival という語の成り立ちと「花子」の記号論を論じ,Lilimi さんは仏検準1級の2次試験を振り返り,しーさんは「1000年前にタイムトラベルするなら何を持っていくか」というユニークな視点から「たべっ子どうぶつ」を語り,佐久間さんは梅毒がかつて「フランス病」と呼ばれた歴史を紹介するなど,語学と歴史のはざまを行き来する寄稿が並びます.こじこじ先生の3篇のオリジナル曲も,今号に彩りを添えています.
umisio さんは今号も多く寄稿しています.学校教育での英語史導入の可能性を論じた記事に始まり,「伏線(未)回収」論シリーズも展開しています.酷暑のなかで頻発する「ボケ」への対処法を熱く語る一篇も,umisio さんらしい肩の力の抜けた味わいです.巻末は,Grace さんによる「あゆみ(2026年9月)」と,umisio さんによる「編集後記(2026年9月)」で締めくくられています.
今号もまた,寄稿者それぞれの視点から英語史の奥深さを味わえる充実の号に仕上がっています.ぜひ Helvillian 9月号をじっくりとお楽しみください.そして,この hel活の輪に加わりたいと思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」へお越しください.
(以下,後記:2026/09/02(Wed))
今回紹介した Helvilian 9月号については,heldio 配信回「#1921. Helvillian 9月号公開 --- Helvillian 校了後の編集室からで,編集委員のお2人が直々に紹介していますので,ぜひそちらもお聴きください.
8月9日に,Voicy heldio で「#1897. heldio オープンマイク」と題する配信回をお届けした.
英語史をお茶の間に届けるべく,2021年6月に開始した Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5年を超え,1日も休まず毎朝の配信を続けてこられた.本ブログ「hellog~英語史ブログ」については,2009年5月以来,かれこれ17年以上にわたって毎日更新を継続している.この間,各種メディアでの発信,YouTube「いのほた言語学チャンネル」,雑誌連載,書籍の執筆,市民講座の開講など,英語史の裾野を広げるアウトリーチ活動,すなわち「hel活」 (helkatsu) に注力してきた.
しかしながら,率直に告白すれば,私ひとりの力で毎日休まず新たなコンテンツを生み出し続けることには,物理的・時間的な限界が訪れつつある.近年は各種プロジェクトが目白押しで,日々の発信に追われるあまり,インプットが枯渇し,カラカラの状態になっているのである.アウトプット過多による質の低下は,何より私自身が日々痛感している.heldio について番組の継続を断念するか,あるいは配信頻度を下げるか,悩む日々が続いていた.
そこで heldio について思いついたのが,マイクをコアリスナーの皆さんに開放する「オープンマイク企画」である.折しも Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や月刊ウェブマガジン Helvillian では,熱心なリスナー(「ヘルメイト」と呼んでいる)の皆さんが主に note などのプラットフォームで自主的なhel活を繰り広げてくださっている.私ひとりで抱え込むのではなく,英語史を愛するリスナーの皆さんに番組制作の一翼を担っていただく体制へと移行できないかと考えたのである.
当初は向こう1,2年をかけた中長期的なマイク委譲計画を思い描いていたのだが,7月下旬に helwa 内で協力を呼びかけたところ,わずか数週間のうちに驚くべきスピードで企画が動き出した.ヘルメイトの皆さんが自発的に対談やインタビューなどの音声コンテンツを次々と制作・提供してくださり,瞬く間にチャンネルを支えていただく体制が整ったのである.この熱気と実行力には,ただただ圧倒され,感謝の念に堪えない.
オープンマイク企画には,大きく3つの狙いがある.第1に,私自身にかかっていた負担を適度に緩和すること.第2に,ヘルメイトの皆さんのフレッシュな熱量と多彩な知見を番組に吹き込むこと.そして第3に,発信者の多様化によってリスナーにとっても飽きのこない,より重層的で魅力的なチャンネルへと進化させることである.
Voicy に代表される音声配信は,本来誰もが発信者となりうるウェブ時代のメディアである.英語史のアウトリーチ活動も,研究者からの一方通行の啓発という段階を終え,コミュニティ全体で楽しみながら知を共有するフェーズに入りつつあると考えている.私自身もメインのパーソナリティとして発信を継続しつつ,ヘルメイトの皆さんとともにこの場をサステイナブルに育てていきたい.日頃お聴きいただいているリスナーの皆さんにも,ぜひコメントなどでオープンマイク企画を応援していただき,さらには helwa への参加を通じてチャンネル制作の輪に加わっていただければ.よろしくお願いします.

昨今,hel活の熱気が各所で高まりを見せているが,また1つ,まことにありがたく貴重なウェブサイトが誕生した.8月14日,heldio/helwa のコアリスナーでhel活界隈でも精力的に活動されている ari さん さんが,heldio/helwa のファンサイト「Helvillain Heal」を開設してくださった.ari さん,ありがとうございます!
このサイトは,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」,およびプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を応援する有志(= ari さん)によって編集・公開されているポータルサイトである.サイトトップの案内にもある通り,リスナーコミュニティ「Helvillian の中でも,こっそりと行動する Helvillain の館」というコンセプトだそうだ.Helvillian ではなく Helvillain であるところに注目である(ダジャレなのだが,一応これを述べておかないと,微妙すぎて読者が混乱する恐れがある).
サイトを覗いてみると,現時点で大きく分けて2つの主要コンテンツが整理されている
・ Voicy heldio での古英語・中英語音読回へのリンク集:heldio で配信してきた古英語・中英語のテキストを読み上げる「音読回」が,学びやすいように整理されている.素朴に古英語や中英語の音声に触れてみたい学習者にとって,絶好のガイドとなる.
・ 月刊ウェブマガジン Helvillian 各号へのリンク集:有志ヘルメイトの皆さんが制作してくださっている英語史とhel活に関する月刊ウェブマガジン Helvillian について,創刊号から最新号に至るまでの表紙画像および各記事へのリンクがずらりと並んでいる.
過去の記事でも触れてきた通り,Helvillian の毎号の充実ぶりには目を見張るものがある.このようにバックナンバーも含めて一覧・アクセスできる環境を整えていただき,hel活コミュニティ全体にとっても大きな財産となる.まさに「英語史をお茶の間に」広めるhel活の真骨頂だ.
有志ヘルメイトの ari さんによ自発的な広報・アーカイブ活動が,こうして素晴らしい形を取って立ち上がったことに,身近な者として深い感謝と敬意を表したい.このような仲間の情熱に支えられながら英語史の輪が広がっていくのを実感するのは,本当に嬉しい.
このサイトの今後の更なる展開やコンテンツの拡充も,大変楽しみにしている.hellog 読者の皆さんも,ぜひ「Helvillain Heal」を訪問し,ブックマークの上,日々の英語史の学びに活用していただければ.
7月28日,有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 8月号が公開されました.通算第22号となります.
まず,編集委員の Galois さんによる素晴らしい表紙デザインが目を引きます.今号の「表紙のことば」を担当されたのは,佐久間さん(helwa のハンドルネーム「無職さん」)です.上海の外灘(ワイタン)に建つ旧中国税関の時計塔を取り上げ,イギリス帝国の領土拡大と英語の世界進出の歴史を重ね合わせて解説してくれています.ロンドンの Big Ben をモデルとし,かつて「ウェストミンスターの鐘」を響かせていた時計塔が,現在では革命歌「東方紅」を奏でているという歴史の皮肉は,まさに英語史が世界史の一部であることを思い出させてくれます.専門家である佐久間さんは,日本歯科医史学会や救急蘇生法教育の歴史に関する記事も寄稿されています,
今号の収載記事も,多種多様で魅力的なラインナップが揃っています.前号に引き続き熱を帯びているのが『なぜさんたんげん』関連の記事です.ari さんによる「英子さんたんげん」や「3単現」関連の記事,しーさんによる「日本語で読もう!『なぜさんたんげん』」,あまねちゃんさんによる「載りそうで載らなかったトピックを想像してみた」シリーズなど,多角的なアプローチで『なぜさんたんげん』を盛り上げています.
語源や英語史の深掘り記事も百花繚乱です.mozhi gengo さんは plaster, pairing, bear などいつもながらに様々な語源を取り上げられていますが,他のヘルメイトのhel活と互いに影響を与え合う話題選びも目立ち,「hel活の輪」を体現しています.同じように,ykagata さんの house や ghost やドイツ語に絡めた多様なコンテンツも,「hel活の輪」を回し続ける動力源です.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート D」は職人技の域に達していますね.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」,川上さんの「homework と housework の違い」をはじめとする素朴な疑問系のトピック,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,教育現場や日常に即したコンテンツが目白押しです.
さらに,Lilimi さんの『古文と漢文』読書記,rei さんの ghost から spirit への「helwa 論」,こじこじ先生によるオリジナル曲の披露,kendama_player さんによる英語史講座報告など,ヘルメイト個々の関心と創造性が炸裂しています.
新刊書,宮嵜 由美・八木橋 宏勇(編)『響き合うことばと社会』(開拓社)を記事で紹介された Grace さんは,「helwa のあゆみ」も執筆されています,北千住オフ会での Baugh and Cable 精読会や,急遽開催され大盛況となった「ダブリン・ギネス収録会」の熱気が記録されています.
そして,研究者論や helwa 論にも関心の強い umisio さんによる「編集後記」は必読です.井上逸兵先生の「ゆる言語学ラジオ」出演に端を発した酷暑の「ボケ」大ブームと,ari さんの極上 note 記事「青椒肉絲の美味しい店」をめぐりリスナーや私の大混乱をユーモアたっぷりに語ってくれています.
今号の目次を取りまとめてくださった Lilimi さん,そして編集委員の Galois さん,Grace さん,umisio さん,本当にありがとうございました.
hellog 読者の皆さんも,ぜひ Helvillian 8月号を開いて,この熱気あふれる学びの場を体験してみてください.そして,この熱いhel活の輪に加わりたいと思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」 へお越しください.その日からあなたもヘルメイトです!
Baugh and Cable の精読シリーズ,第65節を読み進め,議論を重ねています.helwa の仲間たちとともにテキストを念入りに読み解いた北千住オフ会での音声を,Voicy heldio にて公開しております.今回もナビゲーターとして全体を引っ張ってくださったのは,お馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)です.「#1889. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (65-3) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」をぜひお聴きください.
今回は,キリスト教的な「説教する」「祈る」といった宗教的行為を表わす動詞・名詞において,ラテン語からの直接の借用を避け,アングロサクソン人が元々持っていた本来語の意味を転用させたが扱われています.精読した本文の該当箇所は1文のみで,以下の通りです(Baugh and Cable, p. 86).
Instead of borrowing the Latin word praedicāre (to preach), the English expressed the idea with words of their own, such as lǣran (to teach) or bodian (to bring a message); to pray (L. precāre) was rendered by biddan (to ask) and other words of similar meaning, prayer by a word from the same root, gebed.
今回注目したのは1文のみですが,the English の定冠詞がもつ意味・意義に注目し,著者の英語史や言語変化に対する姿勢を読み解くというエキサイティングな議論が展開しました.改めてキリスト教の布教と用語の問題,それから読書会に立ち会われたヘルメイトからの質問などについても検討し,豊かな議論の時間を過ごすことができました.
これまでの B&C 超精読会のアーカイブは,体系的にまとめられており,いつでもさかのぼって学習することができます.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) に全回へのリンクが整備されておりますので,未聴の回がある方はぜひご参照ください.原書を手元に用意し,音声を副読本のように活用することで,英語史の原典購読の醍醐味を味わっていただけるはずです(使用テキストは最新の第7版ではなく第6版となっております).また,このような精読の輪の中に加わり,一緒に学びを深めたいとお考えの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へお越しください.8月の helwa もちょうど本日からスタートです.刺激的で充実した学びの時間が待っています!

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
Baugh and Cable の第6版をじっくりと読み解いていく「超」精読シリーズの続編です.前日に引き続いて,helwa のオフ会で収録した熱気あふれる音声を Voicy heldio にて共有いたします.今回も解説の進行役を務めてくださっているのは,helwa/heldio でお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)です.ぜひ「#1886. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (65-2) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」をお聴きいただければと思います.
今回の該当箇所では,ラテン語のキリスト教概念を導入するにあたり,英語がどのような本来語を用いてこれらを表現しようとしたのか,その具体例が多数挙げられています.外来語をそのまま取り入れるのではなく,すでにある自言語の語彙を組み合わせて翻訳借用したり,意味を拡張させたりする手法が観察されます.今回精読した英文3文を提示します(Baugh and Cable, p. 86).
Patriarch was rendered literally by hēahfæder (high father), prophet by wītega (wise one), martyr often by the native word þrōwere (one who suffers pain), and saint by hālga (holy one). Specific members of the church organization such as pope, bishop, and priest, or monk and abbot represented individuals for which the English had no equivalent and therefore borrowed the Latin terms; however, they did not borrow a general word for clergy but used a native expression, ðæt gāstlice folc (the spiritual folk). The word Easter is a Germanic word taken over from a pagan festival, likewise in the spring, in honor of Eostre, the goddess of dawn.
キリスト教宣教団にとって,イングランドの布教のためには,ラテン語の用語を使わずに,土着の人々の言語である古英語を最大限に活用する必要があったにちがいありません.精読会では,この観点を踏まえて突っ込んだ議論が繰り広げられました.皆さんにも一緒にお考えいただき,heldio のコメント欄よりご意見やご質問を寄せていただければと思います.
この B&C 精読会配信回のバックナンバーは,すべて整理されて保存されています.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) に過去の配信回がリスト化されていますので,復習や聞き返しにご活用ください.テキストを片手に音声を聴き進めることで,英語史の理解が着実に深まっていきます(読書会では最新の第7版ではなく第6版を使用していますので,お持ちの版をご確認ください).
さらに,「この濃密な読書会の空間に直接参加してみたい」という方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討ください.皆さんとともに英語史を深掘りする有意義な時間を共有できます.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
英語史の名著,Baugh and Cable のテキスト(第6版)を,helwa のメンバーと「超」精読していくシリーズです.先日土曜日の午後に開催された豊かな読書会の音声を,そのまま Voicy heldio でお届けします.いつものように helwa/heldio の盛り上げ役の Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に読書会をリードしていただいています.「#1884. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (65-1) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」をお聴きください.
今回は,"The Application of Native Words to New Concepts" と題する節を読み始めています.前節までにみてきたように,古英語期にはラテン語からの借用語が多く流れ込んできました.しかし,ラテン語の影響の大きさはは,そのような直接の借用語だけをみているだけでは,正確につかめません.ラテン語は,英語本来語にも目に見えにくい間接的な影響を少なからず与えているのです.精読対象となった英文を以下に掲げます(Baugh and Cable, pp. 85--86).最初5文をじっくり読んでいきます.
The words that Old English borrowed in this period are only a partial indication of the extent to which the introduction of Christianity affected the lives and thoughts of the English people. The English did not always adopt a foreign word to express a new concept. Often an old word was applied to a new thing and by a slight adaptation made to express a new meaning. The Anglo-Saxons, for example, did not borrow the Latin word deus because their own word God was a satisfactory equivalent. Likewise, heaven and hell express conceptions not unknown to Anglo-Saxon paganism and are consequently English words.
この B&C 超精読シリーズの過去回は,すべてアーカイヴに保存されており,いつでもお聴きいただけます.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) にリンクがまとまっているので,ご参照ください.バックナンバーみ聴いた上で,この英語史の古典的テキストを一緒に読んでみたいという方は,ぜひ本書をお手元にご用意ください(最新版は第7版ですが,読書会では第6版を読み進めているので,ご注意ください).また,「超精読会に自分も加わりたい」という方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」へお越しください.限りなく豊かな時間を過ごすことができます.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
標題の記事が掲載されていることを heldio リスナーの ykagata より教えていただき,記事全文を読んでみました.記事のリード文は次の通りです.
大学などの研究者がポッドキャストを配信する動きが広がっている。高度な内容を平明に伝える番組にはファンも付く。専門知の伝達チャネルとして音声メディアが存在感を増している。」
記事は,犯罪学・刑事政策をテーマとする丸山泰弘さん(立正大学教授)のポッドキャストチャンネル「丸ちゃん教授のツミナハナシ」の紹介に始まり,研究者によるいくつかのポッドキャストが言及されていきます.その他,記事には「研究者がパーソナリティの番組」の一覧表が掲げられているのですが,そのトップに私のチャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」が挙げられており,驚きました.ありがたいことです.

記事は次のように締めくくられています.
音声広告会社オトナル(東京・中央)の調査では月1回以上ポッドキャストを聴く人の割合は25年に18%で、増加傾向が続く。アカデミックナポッドキャストはこれからさらに広がっていきそうだ。
この記事を読んで,そして heldio やそのプレミアム版「英語史の輪 (helwa)」の音声配信に日々携わっている身として,とても感慨深いものがあります.「知の伝達,活字から声へ」という視点は,長年目指してきた「英語史をお茶の間に」というモットーの実現とも深く関わってくるからです.
活字離れが叫ばれる現代において,文字情報としての本ブログ「hellog~英語史ブログ」を毎日更新し続ける一方で,2021年からは毎朝の音声配信 heldio を開始しました.これは私にとってもひとつの大きな実験でした.今では,文字による深い解説と,声による平明で血の通った解説.今では,この2つのメディアは,決して対立するものではなく,お互いを補完し合う強力なペアになり得るという確信があります.
実際,heldio のリスナーコミュニティであるヘルメイトの皆さんとの繋がりや,そこから生まれる様々な「hel活」 (helkatsu) は,まさに「声」のメディアが媒介となって生まれたものです.音声を通じて,学問に近づくためのハードルを下げ,双方向の知的コミュニケーションの触媒になっているのです.
専門知をアカデミアの内部だけに閉じ込めておくのではなく,いかにして社会へアウトリーチしていくか.これは現代の研究者に課された重要な課題です.ポッドキャストというパーソナルで親密なメディアは,そのための最も強力な武器のひとつと言えます.
これからも,hellog による「文字」の蓄積と,heldio による「声」のダイナミズムの両輪で,英語史の魅力を発信し続けていきます.読者の皆さん,リスナーの皆さん,引き続きお付き合いのほど,よろしくお願いします.
ykagata さんによる7月16日公開の関連 note 記事「日本経済新聞が紹介した7つの「研究者配信のポッドキャスト」まとめ」もお読みください.

一昨日の土曜日,7月11日の午後,アイルランドはダブリンの地より Zoom で繋ぎ,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」のメンバー(ヘルメイト)の皆さんとともに半日を費やすオンラインでの「ダブリン・ギネス収録会」を敢行しました.急な呼びかけであったにもかかわらず,入れ替わり立ち替わりで延べ20名近くのヘルメイトの皆さんにお集まりいただき,盛況のうちに幕を閉じることができました.ご参加くださった方々,そしてチャット等で場を盛り上げてくださったギャラリーの皆さんに,この場を借りて心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
滞在先のダブリンでは朝の6時(日本時間の午後2時)からスタートし,気がつけば日本時間の夜11時まで,実にみっちり9時間にわたる濃密な時間でした.もともとは少人数での小さな対談会を調整していたのですが,オープンなオンラインイベントとして企画を立ち上げたところ,驚くべきフットワークの軽さで多くのヘルメイトのご都合がカチリと噛み合い,嵐のような収録会の決行に至りました.前々から周到に準備された企画よりも,こうした突発的なお祭りのほうが不思議とうまくいくケースがあるのですが,今回はまさにその例でした.
今回の収録会では良質な対談回をたくさん収録することができましたが,その「取れ高」以上に私にとって貴い財産となったのは,ヘルメイトの皆さんと深く歓談し,親睦を深めることができたことです.結果として,今回の収録会の最大の意義はそこにあったと思っています.
収録会のメニューを時系列で振り返っておきましょう.まず午後2時過ぎのオープニングに続き,kendama_player さんの英語史講義報告の対談から始まりました.3時過ぎからは,khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんをゲストに迎え,『英語語源辞典』 (kdee) の bear の項目をじっくりと読み解く対談を行ないました.普段は私自身が解説する側に回ることが多いのですが,寺澤さんの明快な語り口を,ひたすら聞き役に回って味わうという体験は,たいへんに新鮮な時間でした.解説を聴くうちに次々と新しいアイディアが湧き出し,大いに知的好奇心が刺激されました.
4時過ぎからは上智大学の小河舜さんにお越しいただき,昨日の記事でも触れた「地球ことば村オンラインサロン」より配信された最新動画に絡めて「英国地名×英語史」をテーマに熱く語り合いました.さらに5時過ぎからは,刊行から1年が経ち,物書堂さんからアプリ版もリリースされた『英語語源ハンドブック』 (hee) の使用感について,ご参加されているヘルメイトの皆さんにマイクを回しながら語り合うコーナーを設けました.
6時からは,本日の目玉企画である川上さん持ち込みの「聞かせて!『なぜさんたんげん』のなぜ」の heldio 生配信を90分枠で敢行しました.私の側の機器の不調により,途中で生配信が途切れるというトラブルがありましたが,『なぜさんたんげん』をご担当いただいたNHK出版の編集者・田中菜乃香さんにもご出演いただくことができました.著者に向けられた鋭いツッコミに対し,著者は頭をフル回転させ,言葉を整理しながら喋る,きわめて消耗的ながらも価値のある時間となりました.後半の生配信未配信部分は別途録音してあるため,後日,アーカイヴ配信したいと思っています.ぜひご期待ください.
その後は主にギネスビールを片手に,ヘルメイトの皆さんとの Zoom 上での懇親会へと移りましたが,ari さん や ykagata さんを中心とした「なぜさんたんげんカウントダウン企画」(そして,ari さんによる4コマ漫画シリーズ「英子さんたんげん」)を振り返る回顧展の対談も収録しました.最後には,ヘルメイトの皆さんから総括のコメントをいただきました.
半日の収録会を通じて私が確信したのは,このコミュニティ「英語史の輪 (helwa)」が,単なるクローズドな音声配信のチャンネルではなく,「学びと継続をお互いに支援し合う最強の環境」に育ってきているという事実です.毎日記事を書く方,独自の新しい勉強法を開発される方,そして何より,対談収録中に驚異的な集中力を発揮して体系的なライヴ議事録を書き残してくださった orangemorishita さんのような存在.各メンバーによる活動が有機的に結びつき,お互いの学びのモチベーションを高め合う文化が形成されてきています.寺澤志帆さんが最後に投げかけてくれた「純度100パーセント」というキラーフレーズが,まさにこのコミュニティの本質を言い当てていました.
今回の「ダブリン・ギネス収録会」で収録した濃密な対談や振り返りの数々は,今後の heldio 通常回で配信していく予定です.第1弾は,すでに昨日の朝に「#1869. コアリスナー kendama_player さんが,前橋市立図書館で英語史講座を開かれました」としてお届けしました.ぜひ hellog 読者の皆さんも,今後の配信にご期待いただければ.
そして,もしこの「純度100パーセント」の学びの熱気や,お互いに刺激を与え合うコミュニティの空気を直に体験してみたいと思われた方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討いただければと思います.毎週火・木・土の午後6時に,heldio レギュラー配信とは一味違うテイストの話題をお届けしています.月額800円のサブスクリプション配信ですが,初月無料のサービスも用意されていますので,一歩足を踏み入れ,数週間その環境に浸っていただければ,なぜこれほどまでに今「hel活」(helkatsu) が盛り上がっているのか,その理由が必ずお分かりいただけるはずです.hellog 読者の皆さんを helwa でもお待ちしています!
前回の関連記事 ([2026-06-19-1]) に引き続き,Voicy heldio の収録会の形をとりながら,英語史の名著,Baugh and Cable のテキスト(第6版)を,helwa の志高き仲間たちとともに徹底的に精読していく会の記録をお届けします.この熱気あふれる読書会の音声をそのままお届けする heldio 配信シリーズは,コアなリスナーの皆さんの応援に支えられて,ゆっくりとではありますが順調に進んでいます.
今朝配信の heldio 最新回では,引き続き第64節の精読を進めています.本日のブログ記事はこの音声配信とリンクした内容となります.今回も,helwa/heldio のコミュニティを熱く盛り上げてくださっているヘルメイトであり,コアリスナーの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に,精読をリードしていただきました.
前回の heldio 配信「#1846. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (64-1) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」では,ベネディクト改革がもたらした宗教関係のラテン借用語に焦点を当てました.今回はさらにその外側に広がる書物的・学術的な語彙へと突入します.古英語期の借用語といえば,キリスト教伝来に伴う初期の日常的・一般的なラテン借用語が想起されますが,ベネディクト改革期にラテン語から流入した語彙の性質はそれらとは一線を画しています.きわめて学術的な専門用語が目立つようになるのです.今回の精読のターゲットとなった英文を以下に掲げます (p. 85) .植物名や医学用語,動物の名称など,当時の知識階級が本を通じて導入した語彙の数々を味わいました.
But we miss the group of words relating to everyday life characteristic of the earlier period. Literary and learned words predominate. Of the former kind are accent, brief (the verb), decline (as a term of grammar), history, paper, pumice, quatern (a quire or gathering of leaves in a book), and term(inus), title. A great number of plant names are recorded in this period. Many of them are familiar only to readers of old herbals. Some of the better known include celandine, centaury, coriander, cucumber, ginger, hellebore, lovage, periwinkle, petersili (parsley), and verbena.9 A few names of trees might be added, such as cedar, cypress, fig, laurel, and magdala (almond).10 Medical terms, like cancer, circulādl (shingles), paralysis, scrofula, plaster, and words relating to the animal kingdom, like aspide (viper), camel, lamprey, scorpion, and tiger, belong apparently to the same category of learned and literary borrowings.
9 A number of interesting words of this class have not survived in modern usage, such as aprotane (wormwood), armelu (wild rue), caric (dry fig), elehtre (lupin), mānrūfie (horehound), nepte (catnip), pollegie (pennyroyal), and hymele (hop-plant).
10 Most of these words were apparently bookish at this time and had to be reintroduced later from French.
この B&C 超精読シリーズの過去の足跡については,すべてアーカイヴに網羅されており,いつでもバックナンバーにアクセス可能です.各回へのナビゲーションは,「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.この超精読シリーズを通じて知的好奇心をくすぐられた方は,ぜひ本書をお手元にご用意の上,この音声を道しるべに精読体験を味わっていただければ幸いです.さらに,「ただ聴くだけでなく,自分も対面やオンラインの現場に飛び込んでリアルタイムに議論の輪に加わりたい!」という熱量をお持ちの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討ください.月額800円,初月無料のサブスクです.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,素晴らしい注目度を集めつつ継続しています.隔週土曜日に新作が公開されていますが,最新は6月27日に公開された第12弾です.
今回のクイズは,目下開催中の FIFA World Cup を睨んで,サッカーやスポーツに関連する言葉の特集となっており,非常にタイムリーな企画です.
毎回のことながら,相変わらずの良質の出題と丁寧な解説には脱帽するばかりです.あまり細かく書いてしまうとネタバレになってしまうので,ここではいくつかのおもしろい問いを厳選して紹介していきましょう.
まずは基本となる soccer というスポーツ名についてです.日本やアメリカでは soccer と呼びますが,実はサッカー発祥の地であるイギリスでは soccer とは呼ばない,というナゾから始まります.イギリスでは football なのですが,ではなぜ soccer という語が生まれたのかという語源のストーリーが解説されています.日常的な英単語の背景に,意外と知られていない語形成の歴史が隠されているのを知ると,ニヤリとしてしまうはずです.
さらにクイズは英語にとどまらず,日中語スポーツ名比較へと展開します.中国語で野球を「○球」,テニスを「○球」と別の呼び方をするなど,同じスポーツを翻訳するにしても言語によって着眼点が異なるという指摘は,対照言語学的に興味深い視点です.また,ある球技で「0点」のことを love と呼ぶのはなぜかという問いや,大谷翔平選手が所属するドジャースのチーム名とも深く関わる dodgeball の語源など,知的好奇心をくすぐる良問が目白押しです.
嬉しいことに,作者の sorami さん自ら「今回のスポーツ関連クイズも,授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と言ってくださっています.pdf 形式の印刷用資料も用意されていますので,英語の教材として学校の授業やサークルなどで,すぐにでも活用できます.
さて,この出題のベースとなっている『英語語源ハンドブック』(研究社)ですが,2週間前の6月18日に,めでたく刊行1周年を迎えました.また,3日前の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ (iOS) が発売されました.7月21日までセール販売とのことですので,こちらより詳細をご覧ください.
この1年間,本当に多くの読者の皆様に温かく迎えられ,愛用されてきたことは,著者陣・関係者一同にとって大きな喜びです.心より御礼申し上げます.読者の皆さん,今後とも本書を末永くご愛用いただけますよう,よろしくお願いいたします.
今回の sorami さんのクイズ記事を通じて,1人でも多くの方が英単語の奥深い世界に触れ,英語史のロマンを感じていただければ幸いです.ぜひ過去号も含め sorami さんの note へと足をお運びください!
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
去る6月28日,「英語史をお茶の間に」届けようと日々奮闘している有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 7月号が公開されました.通算第21号となります.
今号のキャッチコピーは「まだまだ続く,#なぜさんたんげん そしてhel活の波」です.6月10日に世に送り出された新著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)に関連する記事や熱い応援記事が,前号に引き続き,誌面を埋め尽くしています.
まずは ykagata さんによる「表紙のことば」から覗いてみましょう.瀬戸内海から四国をめぐる旅の記憶とともに,ドイツ語の "Straße von Hormus" (ホルムズ海峡)が英語 street に対応するという興味深い話題を展開してくれています.広い海峡を「ストリート」と呼ぶ言語的なおもしろさを,旅の実感と結びつける筆致はさすがです.ykagata さんは他にも「[古英語]名詞屈折表が stān で始まる本,始まらない本」など,英語史に直接・間接に関わる魅力的な記事を多数寄稿されています.
今号の収載記事をいくつかカテゴリー別に紹介していきましょう.
何といっても今号のお祭りの中心は『なぜさんたんげん』です.ari さんによる「英子さんたんげんシリーズ」は,普段のユーモアとダジャレのセンスが凝縮された4コマ漫画で,『なぜさんたんげん』のエッセンシャル版としての期待が集まっています.Grace さんの「『なぜさんたんげん』目撃の巻」は,書店での劇的な「昇格」の瞬間を淡々と描き出し,多くのリスナーの涙を誘う秀逸なドキュメンタリー「石巻の奇跡」を世に送り出しました.さらに umisio さんは「告白・懺悔」と題して,自身が過去に「3単現の s」に疑問を抱かなかった理由を深く掘り下げるシリーズを連載されています.
一方,お祭りの熱気の中でも淡々と学びを進めるレギュラー陣の記事も輝いています.その代表格が,listener kawakami さんによる「Prologue to Eneydos を読むシリーズ」です.Caxton の印刷技術と英語史の深淵に迫るこの硬派な連載は,編集委員の umisio さんをして「浮かれた頭を冷やしてくれる,ウェーランドの経済学言論の講義のようだ」と言わしめるほどのシリーズとなっています.私自身も,専門家の観点から,これが貴重な中英語精読シリーズになっているものと評価しています.
語源やクイズの分野も百花繚乱です.mozhi gengo さんは「Beryl と同語源の日本語は○○」やヒンディー語の借用語コラムなど,圧倒的な知識量で独自の深掘りを展開されています.lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート D」は,着実に歩みを進める職人技の鑑です.『英語語源辞典』の読み方解説も加わり,ますます有用性が高まっています.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」は,学校の授業ですぐに使える実践的な内容とすぐれた出題センスが相変わらず光っています.
さらに,前橋市での英語史講座を満員御礼のなかで終えられた kendama_player さんの熱い報告記事や,あまねちゃんによる「オフ会感想」と『英語語源ハンドブック』1周年記念記事,こじこじ先生の楽曲「不規則動詞戦争」,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,各世代や地域におけるhel活のリアルな息吹が伝わってきます.佐久間さんの「日本語由来の医学英語」も専門家らしい視点を与えてくれます.
巻末の「あゆみ」では,Grace さんが北千住オフ会の定着や helwa 開設3周年の軌跡をきれいにまとめてくださいました.そして umisio さんによる「編集後記」は,今号の多様な熱量をユーモアたっぷりに総括してくれています.
最後になりますが,今号を編み上げてくださった編集委員の Lilimi さん,Galois さん,Grace さん,umisio さんには深く感謝いたします.そして,素晴らしいコンテンツを寄稿してくださったヘルメイトの皆さんも,本当にありがとうございました.
hellog 読者の皆さんも,ぜひこの熱気溢れる Helvillian 7月号のページを訪れて,じっくりと味わってみてください.そして,自分も日頃のhel活の成果をこのウェブマガジンに載せてみたい,英語史の輪に加わりたい,と思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への参加をご検討いただければと思います.helwa にお入りになった瞬間から,あなたもヘルメイトです.一緒に英語史をお茶の間に届けていきましょう!
英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) の周辺が実に熱くなっています.本ブログでも要注目としてたびたび紹介してきた,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの lacolaco さんが,「英語語源辞典通読ノート」シリーズにて,目下 D の項目をひた走っています.
驚くべきは,その圧倒的な継続力のみならず,そこに込められた「hel活」スピリットの進化にあります.最新の2つの記事,すなわち6月13日公開の desire -- desk,および6月20日公開の despite, develop, device を拝読し,胸が熱くなりました.
この最新の2回において,lacolaco さんは貴重で有用な,新しい試みを始められています.前者では desk を,後者では device をサンプルとして取り上げ,『英語語源辞典』初心者に向けて,同辞典の読み方をきわめて丁寧に解説してくれているのです.同辞典特有の専門記号,略称,句読点などの1つひとつにまでこだわり,それが何を意味しているのかを噛み砕いて説明しているセクションは,『英語語源辞典』を所有していながらも,専門的すぎて使いこなせていなかった多くの方々にとって福音となるはずです.
これは,1ヶ月ほど前の hellog 記事「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) における問題提起を受けての,lacolaco さんによる見事なイニシアチブであり,実践です.さらに先立つ「いのほた言語学チャンネル」の研究社ロケ回でも話題となったように,『英語語源辞典』は世界最高峰の辞典でありながら,一般読者がその価値を本格的に享受するためには「読み解き方の手ほどき」がどうしても必要でした.まさにそのギャップを埋める体系的なガイドを,1人のヘルメイトが自らの note で,これほどハイレベルな形で実現してくれたわけです.これぞ草の根から湧き上がる純粋なhel活であり,hel活コミュニティのつながりが生んだ貴い果実です.
この丁寧な解説は,同辞典の魅力と威力をお茶の間に届ける素晴らしい踏み台となるはずです.一般の英語学習者の皆さんにとどまらず,同辞典の出版元である研究社の方々をはじめ,英語史の研究・教育に携わる専門の関係者の皆さんにも,大いに注目していただきたい画期的な試みです.ぜひ lacolaco さんのノートを訪問し,『英語語源辞典』の読み方解説を味読してみてください
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
昨日の記事「#6236.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」 ([2026-06-03-1]) に続いて,5月28日時点での Voicy のアナリティクスに基づく記事をお届けします.一昨日2026年6月2日は,heldio 5周年記念日であると同時に,実は helwa 3周年記念日でもありました.Voicy heldio 開始からちょうど2年目に当たる日に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を開始したのでした.
helwa は週2回ベースで配信を始めましたが,途中から週3回ペースとなり今に至ります.3年間で積み上げてきた helwa の配信数は,449本に達しました.冷静に考えると,これはなかなか異常なペースです.普通の有料コミュニティであれば,数十本の限定雑談や月1回のイベント程度で終わることも多いかと思いますが,helwa は heldio とは異なるもう1つの英語史コミュニティへと成長してきました.
当初は,これほどニッチな学術分野で有料チャンネルを始めて本当に人が集まるのか,どのような雰囲気の場になるのか,大きな不安があったのも事実です.しかし,蓋を開けてみればそこは heldio 通常回の特典音源の置き場ではなく,日常的な英語史雑談,Discord 上での交流,オフ会ルポ,書籍の共同企画,学会の裏話など,多岐にわたる談義が繰り広げられる「英語史サロン」へと発展していきました.そして,helwa リスナーを増やすことを主目的とするのではなく,英語史を一緒に楽しむ仲間を作ることが最重要視される,そのような空間に育ってきたのです.
この3年間における最大の成果の1つは,音声配信チャンネルというオンラインの枠を飛び出し,オフ会や「英語史ライヴ」など,現実のコミュニティが実現したことでしょう.泊まりがけのオフ会も複数回開催され,その熱気はこのコミュニティから生まれた月刊ウェブマガジン Helvillian などで熱くレポートされています.英語史という実利の外側にある学問が,学生,社会人,教員といった幅広い層の垣根を越えて,純粋な大人の「居場所」となったことは,きわめて感慨深いことです.
しかし,helwa がもたらした最大の変革は,「英語史が雑談になった」という点に尽きるかもしれません.本来,英語史は大学の講義室や専門論文のなかに閉じ込められた世界でした.それがこのコミュニティでは,「その語源おもしろい」「その発音変化わかる」「それ英語史的な発想だよね」といった言葉が日常的に交わされています.オフ会での乾杯の挨拶もすっかり古英語の Wes hal! に定着しています.英語史が一部の専門家だけのものではなく,コミュニティの皆さんの間で一種の「生活言語」として根付いているといったらよいでしょうか.
常連文化,内輪ネタ,定番フレーズが自然発生するその空気感は,深夜ラジオ共同体にかなり近いものがあるように思っています.「英語史」という硬派なテーマなのに,やっていることは深夜ラジオというギャップが,何ともおもしろいところです.また,リスナーの皆さんが単なる受信者にとどまらず,コメントや note や SNS を利用した発信者となってhel活を推進し,英語史エコシステムを想像している点も,helwa の本質といえます.
英語史研究者としては「英語史って,本来こんなふうにワイワイ雑談する分野じゃなかったんですよ(笑)」と,嬉しい悲鳴を上げたいです.この helwa という舞台裏の熱量とエネルギー源があるからこそ,表舞台である heldio の5年間にわたる毎日更新も維持されてきたと思っています.3年間で醸成されたこの愛すべきニッチ共同体の文化を,今後もさらにディープに,そして楽しく発展させていきたいと考えています.
新たな月となりました.heldio リスナーの皆さんにおかれましては,heldio 5周年かつ helwa 3周年の機会に,ぜひ「英語史の輪 (helwa)」へご入会ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しにお入りいただければ.今月は helwa では『なぜさんたんげん』の裏話が多くなるはずです.
一昨日の helwa 「【英語史の輪 #0453】helwa 3周年 --- 英語史エコシステムが完成した」を,ぜひお聴きください.
昨日2026年6月2日,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5周年を迎えることになりました.丸5年間,毎日マイクやレコーダーに向かって英語史を語り続けてきたことになりますが,この機会に Voicy のアナリティクスから抽出されたデータを皆さんと共有しつつ,この5年間の heldio の進化を振り返ってみたいと思います.アナリティクスは5月28日時点のデータを用いています.
まず配信回数ですが,5年間で2,340本を配信してきました.これは毎朝6時の heldio 通常配信のほか,生配信や特別配信,そしてプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の配信を加えた総数です.我ながら,英語史という単一テーマで,よく持ったと思います.単なる毎日更新にとどまらず,英語史というニッチな学術分野において,これだけの高頻度で5年間メディアが回り続けたというのは,リスナーの皆さんにとっても「え,そんな本数だったの!?」と驚かれるのではないでしょうか.
では,リスナーの皆さんにとって,heldio への「入口」となったのはどのような回だったのでしょうか.歴代の総再生回数および新規リスナー獲得数のランキングを見てみると,きわめて一貫した heldio の原点が見えてくるように思われます.
不動の歴代1位に君臨しているのは,記念すべき初回配信である「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」(合計リスナー3,104人,新規獲得1,757人)です.これは完全に他を圧倒する入口回となっています.ここで重要なのは,この回が扱っているテーマが a/an の使い分けという,中学1年生で習う初歩的で素朴な疑問である点です.ここから分かるのは,heldio の原点がハードルの高い専門知識の講義ではなく,誰もが抱く学校英語への違和感や日常の小さな謎に寄り添う姿勢だったということです.
もう1つの興味深いデータとして,2022年の「#408. 自己紹介:英語史研究者の堀田隆一です」(新規995人)と,2024年の「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」(新規989人)という,2回の自己紹介回がどちらもヒットしている現象が挙げられます.リスナーさんの関心が,英語史そのものだけでなく,それを語っているパーソナリティにも向いているものと理解してよいのでしょうか.その辺りが謎ではあります.
また,外部コミュニティとの接続という点では,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」さんにお招きいただいた際の 「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」(新規609人)が爆発的な流入を生みました.「英語史をお茶の間に」というモットーが,専門界隈の外へと届いた象徴的な瞬間でした.さらに,純粋な歴史の話題だけでなく,「#729. なぜ英語を学ばなければならないの?」(新規558人)のように,英語教育や現代人の英語観を照らす類いの話題も,強い新規流入を呼び込んでいます.トップに近い配信回を眺めまわしてみると,結局のところ違和感を共有する「英語に関する素朴な疑問」(sobokunagimon)が核であったことが示されています.
一方で,年別の平均リスナー数の推移を見ると,数字の上では減少傾向にあるように見えます.これには様々な原因があると思いますが,Voicy と同一のコンテンツを,他の音声配信プラットフォームでも配信し始めたので,Voicy 単独でのリスナー数が減ったということが大きいように思われます.もう1つは,リスナー集団の中心がライト層からコア層へシフトしてきたようにも感じます.リスナー数が減少した分,チャンネルが成熟していったのではないかと私は分析しています.
実際に現在のアナリティクスによれば,「とても熱心なリスナー」が72.7%,「熱心なリスナー」が7.9%を占めており,全体の約8割が濃いリスナーを占める,そのようなチャンネルへと進化しています.そして,この超コア化・定着化を支える巨大な「地下アーカイブ」となっているのが,3年間で449本を積み上げてきた「英語史の輪 (helwa)」の存在です.ここでは,日常的な英語史談義,Discord 上での交流,オフ会報告,コアな研究雑談などが蓄積され,単なる有料配信メンバーの集団という以上の濃いコミュニティが形成されています.
リスナーさんたちの属性分析からも,heldio の独特な受容スタイルが浮かび上がってきます.まず,男女比が男性45.9%,女性43.8%(無回答10.2%)と,ほぼ五分五分で均衡しています.一般に,語学学習系番組は女性に偏りやすく,IT・学術雑談系は男性に偏りやすい傾向がありますが,heldio はその中間に位置しています.大人の知的雑談メディアとしてバランスよく受け入れられているものと考えています.
年齢層を見ると,30代が24.3%,40代が25.5%,50代が23.1%となっており,実に大人の30--50代で全体の約73%を占めています.まさに「学び直し」や通勤・家事の合間の知的時間を求める成熟したリスナー層です.さらに職業分布では,会社員が46.3%,自営業が12.5%を占め,英語教員や学生といった層だけでなく,実務の外側にある純粋な知的好奇心として英語史を楽しんでいる一般のビジネスパーソンが圧倒的多数派のようです.
さらに国内での地域的な広がりを見ると,東京が38.9%と最大ですが,大阪6.7%,神奈川6.0%,千葉3.9%,北海道3.6%と続き,全国(さらには海外)に薄く広く分散しています.大学の講義室であれば物理的な制約がありますが,インターネットの音声配信という特性を活かし,英語史の地方分散化が数字として実現しているのは,興味深いファクトです.
これらすべてのデータを総括するならば,この5年間は,「マスメディア的なリスナー数の拡大」ではなく「英語史に関心を寄せるリスナーの着実な増加」を示す時間だった,ということです.実利的な英語スキルのためではなく,「英語っておもしろい」「言葉って不思議だな」という感覚を共有し,英語について雑談する文化圏・公共圏がここに誕生したのです.
大学の研究者が専門分野を掲げてこのようなコミュニティを形成できたことは,稀な事例ではないかと思っています.これまで heldio を支え,一緒に知的な遊び場を作ってくださったリスナーの皆さんに,改めて心より感謝申し上げます.
これからも heldio は様々な進化を遂げていくものと思われます.直近では,今月6月10日発売予定の近刊 『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)をめぐるお祭り企画やイベントも目白押しです.
新たな月となりましたし,heldio 5周年のこの機会に,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への入会もぜひご検討ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しに覗いてみていただければ.今月は helwa でも『なぜさんたんげん』の話題が多くなるだろうと思います.
昨日の heldio 「#1829. heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」もお聴きいただければ.それでは,明日もいつも通り,朝6時に heldio でお会いしましょう.

一昨日の5月28日(木),英語史をテーマとする日本(世界でも?)唯一の月刊ウェブマガジン Helvillian 6月号が公開されました.通算第20号となる節目の号です.前号の紹介記事で「次号はいよいよ第20号の大台に乗る」と期待を寄せていましたが,こうして実際に形になり,継続の重みと有志ヘルメイトの皆さんの自発的なエネルギーに改めて深い敬意を表します.
今号の「表紙のことば」を担当されたのは taku さんです.ダイバーの taku さんが,ダイビングと英語史の共通点をアクロバティックに指摘されています.実は私もダイバーなのですが,「ダイビング×英語史」は考えたことがなかったので,今回 taku さんのことばを読んで目から鱗が落ちました.taku さんにお寄せいただいた表紙の写真はもちろん海面下の絶景.表紙デザインは,編集委員のお一人 Galois さんが手がけられました.
続く本編は,この1ヶ月のあいだに主に note 上で公開されたヘルメイトさんたちの記事群の抜粋一覧です.6月10日に発売予定の拙著 #なぜさんたんげん こと『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)を応援してくださる記事も多く含まれており,感謝に堪えません.
まず ari さんによる記事は,今月も圧倒的な質と量で,お馴染みの「ari 節」が安定的に炸裂しています.マカロンと増大辞をめぐる語源の話題から,『なぜさんたんげん』カウントダウン企画をマンガで応援する「英子さんたんげん」シリーズまで,縦横無尽のhel活振りです.
Grace さんは「新・家庭の常備「薬」なぜさんたんげん」と題する記事のなかで,近刊についてすでにウェブ公開されている部分のみを手がかりに,著者が近刊にこめた意図を鋭い洞察で暴いてくれています.著者として早くも身ぐるみを剥がされてしまったと感じています.恐るべし Grace 節!
今号の特筆すべき点として,kendama_player さんが note で初投稿を果たされたことが挙げられます.「ROAD TO 英語学・英語史」と題して,ご自身の英語史との出会いを振り返られています.新たな書き手の登場にコミュニティの広がりを感じ,嬉しい思いです.
lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンを順調に走行中で,今回は dental から desert までの単語をカバーしています.lacolaco さんが切り開いた「辞書を通読する」という道は,後に他のヘルメイトも歩むことになり,最も堅実で強力なhel活コンテンツに成長しました.そのような同志の1人が,あまねちゃんです.今号から『英語語源辞典』を気軽に通読する新シリーズを立ち上げられ,abacus から abyss に至るまで4本の記事を連発されています.この辞典通読ムーブメントの連鎖には,驚きを禁じ得ません.
mozhi gengo さんの寄稿の多さと視野の広さにも,相変わらず圧倒されます.インド英語の「クセ」に関する話題や,vacuum の <uu> という不思議な綴字の謎,さらには英領インド側から見たイギリスにとってのペルシャという歴史的な話題にまで筆が及んでいます.ペルシャ語の hastam が英語の I am に対応するという比較言語学的な指摘など,知的好奇心を大いに刺激されます.
教育・普及の観点からは,sorami さんの中学生向け英語語源クイズが第8弾・第9弾へと到達し,ラテン語の紹介や数の接頭辞を取り上げています.またみーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは128回に到達し(実際には本日までに140回に届こうというところ),継続力にただただ脱帽するばかりです.
佐久間さんは,日本歯科医史学会の特別講演のお知らせや,『語源で学ぶ医学英単語ハンドブック』を通じた医学英語教育の新たな地平についての議論により,医学の世界と言語研究の成果の交差点を探る希有なhel活を展開されています.
ykagata さんは,毎日連続投稿100回を優に超える活躍振りで,「ドイツ語×英語史」の話題を中心としつつ,いまや最も幅広いテーマでhel活を展開するヘルメイトとなっています.「「プチプチ」のドイツ語」や「カルビーのパッケージ仕様変更についてのドイツ語圏での報道を読む」など,タイトルだけ見ても読まざるを得ない記事が並びます.番外編として「『紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか』にこじつけて学ぶドイツ語」も投稿されています.
umisio さんの記事群は,今号でも鋭い批評性とユーモアが同居しています.川上語録の深掘りシリーズ最終回,国語の教科書や大河ドラマをめぐる歴史の考察,さらには「「英語史で解く英文法の謎 なぜ[3単現のs]をつけるのか」というタイトルのなぜ」シリーズも開始されました.
専門的な英語史の窓としては,川上さんによる「古英語の規範意識」および「重なる三単現 s」の2本の論考が,誌面に重厚な学術的深みを与えています.私自身も,新刊書の予約をめぐる御礼や,応援マガジンの始動について微力ながら記事を寄せさせていただきました.
巻末は Grace さんによる「あゆみ」と,編集委員4名による第20号到達までの道のりを振り返っての「編集後記」で美しく締めくくられています.
このように通算第20号は,記念の号にふさわしく,質量ともに過去最高水準の充実ぶりとなっています.有志の皆さんのエネルギーによって紡がれるこの知的空間を,ぜひ時間をかけてゆっくりと味わっていただければ幸いです.
「読むだけでなく,自分もこのhel活の輪に加わってみたい」という方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の扉を叩いてみてください.ともに学び,ともに創る喜びが,そこには溢れています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

昨日の記事「#6231. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」の第2弾と第3弾が公開されています」 ([2026-05-19-1]) でご案内した研究社ロケ回の第3弾では,『英語語源辞典』の読みこなしについても話題となりました.
編集者の星野龍さん,中川京子さん,青木奈都美さんとのお話しのなかで,『英語語源辞典』(や OED の語源関係欄)は,情報がぎっしり詰め込まれており,専門的な記号や略称も多いので,一般読者は読みこなすのが難しい.一般の英語学習者が,同辞典の良さを本格的に味わおうと思えば,読み解き方の手ほどきが必要なほどだ.そのための講座やガイドブックがあるとよい,という趣旨のお話しも出ました.
一般の方々にとって『英語語源辞典』を使いこなすのが容易ではないことは,同辞典を激推ししてきた私自身も気付いており,そのためにいくつかの活動もしてきました.1つは,動画内で私自身も触れている通り,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のなかで,まさに『英語語源辞典』読み解き講座に近い配信回をしばしばお届けしてきました.英語史を専攻する大学院生などとともに,同辞典の読み方を解説したり,議論したりしています.以下に主だった回を一覧します.
・ 2023年10月23日 heldio にて「#875. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (1) --- 藤原くんと foot を語る」が配信され,藤原郁弥さんとの画期的なシリーズの幕開きとなる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第2位に入った.
・ 2023年10月26日 heldio にて「#878. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (2) --- 藤原くんと foot を語る」が配信される.
・ 2023年11月8日 heldio にて「#891. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (3) --- khelf 藤原くんと marble を語る第1弾」が配信される.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第9位に入った.
・ 2023年11月11日 heldio にて「#894. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (4) --- khelf 藤原くんと marble を語る第2弾」が配信される.
・ 2023年11月14日 heldio にて「#897. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (5) --- khelf 藤原くんと marble を語る第3弾」が配信される.
・ 2023年12月15日 heldio にて「#928. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (6) --- khelf 藤原くんと2重語 compute/count を語る」が配信される.
・ 2024年1月31日 heldio にて「#975. 『英語語源辞典』の収録語彙」が公開される.
・ 2024年2月2日 heldio にて「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」が配信される.
・ 2024年2月3日 heldio にて「#978. 『英語語源辞典』の語義・初出年代 --- khelf 藤原くんと凡例を読もう」が配信される.凡例を熟読するという稀代な企画がスタート.
・ 2024年6月6日 heldio にて「#1101. 『英語語源辞典』凡例読みシリーズ with 藤原郁弥さん&青木輝さん」が配信される.
・ 2024年07月26日 heldio で「#1153. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (8) --- khelf 藤原くんと king の項を精読する」が公開される.
・ 2024年08月24日 heldio で「#1182. 【緊急のご報告】研究社『英語語源辞典』新装版が重版決定!」が公開される.
・ 2024年09月23日 heldio で「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」が公開される.
・ 2024年10月21日 heldio で「#1240. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (2) --- KDEE の編集方針を理解しよう」が公開される.
・ 2024年10月26日 heldio で「#1236. mine を『英語語源辞典』で読み解く」が公開される.
・ 2024年11月14日 heldio で「#1264. 『英語語源辞典』通読はキツい,無理!」が公開される.
・ 2024年11月16日 heldio で「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」が公開される.
・ 2024年12月26日 heldio で「#1306. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (3) --- 印欧語比較言語学の学史をたどる」が公開される.
・ 2025年04月25日 heldio で「#1426. 『英語語源辞典』をランダム読み --- khelf メンバーとの思いつき企画」が公開される.
また,私は数年来朝日カルチャーセンター新宿教室にて定期的に英語史関連の講座を開いてきましたが,とりわけ2024年度の毎月の講座では,「語源辞典でたどる英語史」をシリーズタイトルとして掲げて,事実上の『英語語源辞典』読み解き講座を展開していました.現行の毎月講座でも,『英語語源辞典』は常に参照し,その一部を精読するということを続けています.今週土曜日に予定されている5月回でも,もちろん参照する予定です(先日の hellog 記事「#6228. 「again を探って中英語原文の世界へ」 --- 今年度の朝カル英語史シリーズ第2回」([2026-05-16-1]) をご参照ください).
ほかには,上記 Voicy heldio から派生したプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーによる,『英語語源辞典』をめぐる様々な活動も,『英語語源辞典』の読みこなしに貢献しています.とりわけ同辞典の通読に挑戦されているお2人 lacolaco さんによる note 上の「英語語源辞典通読ノート」や寺澤志帆さんの連載企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」は要注目です.ari さんによる『英語語源辞典』で一人遊びするアプリ「#266【KQ2】ゴラクエを update して遊ぶ!!」も参照ください.
上記のように,これまでにも仲間たちと私とで様々な活動を展開してきましたが,『英語語源辞典』を読みこなせるようになるための「体系的」な講座やガイドブックなどは,確かに存在しませんでした.どのくらいの需要があるのか,という問題はありますが,今回のいのほた動画で触れている通り,一考の余地はあるかもしれません.
読者の皆さん,需要はありますか?
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

上掲書については,hellog でも「#6209. 4月23日,研究社から英語語源本が2冊 --- 『コンパスローズ英単語〈新装版〉』と『医学英単語ハンドブック』」 ([2026-04-27-1]) で紹介しました.そこで少し触れていたように,その後,この本をめぐって,医学専門家で heldio/helwa のコアリスナーの「無職さん」こと,佐久間泰司さんと対談する機会を得ました.そちらの音源を heldio 対談として公開していますので,「#1800. 『医学英単語ハンドブック』(研究社,2026年)を片手に「無職さん」と対談」をお聴きください(53分ほどの対談です).
対談では,専門家である無職さんの視点から,本書の画期的な特徴について多角的に語っていただきました.まず驚かされたのは,従来の医学ラテン語の教本は,格変化などの文法事項から入るものが多く,専門外の学生にはきわめてハードルが高かったという実態です.それに対して本書は,語源 (etymology) と連結形 (combining_form) に特化しており,理系人間にとって非常に馴染みやすく,とっつきやすい構成になっているとのことです.
医学用語の世界では,解剖学用語はラテン語,疾患名はギリシア語が主流であるという興味深い住み分けについても議論が及びました.無職さんによれば,解剖学用語は国際的にラテン語で統一されている一方,ルネサンス期以降に発達した疾患名などにはギリシア語由来の語彙が流入したという背景があるようです.私のような英語史研究者の視点からは,これらが近代英語期以降の科学語彙の爆発的な増加とどのように関わっているのかという点が最大の関心事となりますが,従来の医学の現場では,これらを単なる記号として「丸暗記」してきたという実情も浮き彫りになりました.
本書の魅力の一つとして,ギリシア神話に絡めたコラムの充実が挙げられます .例えば眠りの神 Hypnos と hypnosis(催眠)の関係など,神話という人間臭い物語から説き起こされる語源解説は,私のような文系人間にとっても読み物としておもしろいものです.無職さんも,こうしたコラムがあることで本を開く心理的障壁が下がり,学習の継続につながると太鼓判を押してくれました.
一方で,専門家の立場からの要望として,発音記号やアクセント表示の有無,あるいは dent- と tooth のような一般語と専門語の結びつきを説明してくれる「グリムの法則」 (grimms_law) の解説があればさらに有意義だったのではないか,といった贅沢なツッコミも飛び出しました.しかし,全体としては,無数の医学用語を要素の足し算で効率よく学べる,これまでにない体系的なハンドブックに仕上がっているという評価で一致しました.
医学英語はもちろん,科学英語 (scientific_english) や語形成 (word_formation) に興味のある方はもちろん,英語史の観点から語彙の国際性を考えてみたい方にとっても,本書は示唆に富む一冊です.医学関係者ならずとも,ぜひ手に取って,その重厚な語源の世界に触れてみてください.
また,佐久間さんご自身による関連する note 記事「『語源で学ぶ医学英単語ハンドブック』に見る,医学英語教育の新たな地平」も公開されています.そちらもぜひお読みください.
・ 野中 泉(編著)・森田 勝之(編著)・木下 晃吉(監修) 『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』 研究社,2026年.

heldio/helwa のコアリスナーであるみーさんが,note 上で展開されている連載「小学生と学ぶ英語史」が,先日4月21日に記念すべき第100回に到達しました.1月12日の連載開始以来,一日も欠かすことなく毎日更新を続けての100回達成です.この偉業に,心よりお祝い申し上げます.
このシリーズは『英語語源ハンドブック』の項目をベースとしながら,みーさんご自身が教えられている英語教室での経験を活かし,小学生にもわかるように丁寧に,かつ優しくかみ砕いて解説されているものです.タイトルには「小学生と学ぶ」とありますが,その内容は決して小学生向けに限定されるわけではありません.各記事には語源に関する確かな知識に加え,学習上の助けとなる周辺知識やエピソードが豊富に盛り込まれており,中高生や大学生,さらには学び直しを志す大人の学習者にとっても,非常に示唆に富む内容となっています .
みーさんの記事の魅力は,何といっても語り口の柔らかさにあります.『英語語源ハンドブック』の記述をそのまま提示するのではなく,目の前にいる子供たちがどこで躓き,どこで目を輝かせるのかを熟知した教育実践者としての視点が貫かれています.たとえば,lady の語源が「パンをこねる女性」であるという話から,聖母マリアにちなむ ladybug 「てんとう虫」の話題へと繋げ,子供たちの好奇心を刺激する手法などは,まさにその真骨頂と言えるでしょう .
また,みーさんは,hel活をしている helwa の仲間たちがアルファベット順に語源をたどる試みにインスピレーションを受け,ご自身も a, b, c ... と一巡し,また a に戻るという独自のルーティンを確立されました.このように志を同じくする仲間たちが互いに刺激し合い,学びを深めていく姿は,まさに「英語史をお茶の間に」を体現するものだと思います.
このたび,100回突破を祝して heldio にてみーさんとの対談を収録しました.4月28日(火)の朝に配信した「#1794. 祝・みーさん「小学生と学ぶ英語史」100回記念対談」です.連載を始めたきっかけから,日々の継続のコツ,そして教室での子供たちの生の反応まで,たっぷりとお話しを伺っています.
さらに,同日の夕方に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」でも,対談の続編を「【英語史の輪 #0438】みーさんとお祝い対談(今朝の続き)」と題して配信しています.こちらでは,よりリラックスした雰囲気で,継続の仕組みや仲間との交流について深掘りしています.ご関心のある方は,あわせてお聴きください.
英語史という分野は,一見すると難解に思われがちですが,みーさんのように橋渡しをされる方がいれば,小学生であっても「印欧祖語」 (indo-european) などの用語も自然に使いこなすようになるのです.こうした英語史の草の根の活動が,英語教育の現場に新しい風を吹き込むことを期待してやみません.読者の皆様も,ぜひみーさんの note を訪れ,フォローしたり温かいコメントを寄せていただければと思います
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

4月28日(火),熱心なヘルメイトの皆さんによる月刊ウェブマガジン Helvillian 5月号(第19号)が公開されました.今号も,英語史を軸とした知的探究心が多方向に展開し,読み応えのあるラインナップとなっています.
今号の「表紙のことば」を担当されたのは ari さんです.桜島をめぐる地元民によるエッセイ,いかに桜島が身近な存在であるかが分かりました.その ari さんの記事群は,今月も ari 節が全開で絶好調です.セム語に由来する英単語から,「エイゴシーの塔」の攻略を経て,フランダース関連の話題まで,記事の守備範囲の広さにはいつも驚かされます.
Grace さんは,英語の「息づかい」というタイトルで寺澤盾先生の新刊書『世界の英語』(中公新書)を紹介されています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は,D ゾーンを走行中で,今回は demand から demesne までをカバーしています.lacolaco さんの継続的な試みが,「辞書を読む」という静かなムーブメントを呼んでいますね.実は,これこそが最も堅実で強力なhel活なのではないかと,最近,思い始めています.
mozhi_gengo さんは,今号でも圧巻の寄稿数です.scale の語源といった入りやすそうな話題から,ヒンディー語における be 動詞に相当する単語の語源に至るまで,相変わらずの縦横無尽ぶりです.
英語史教育・普及の観点からの記事も,ますます充実してきています.sorami さんの中学生向け語源クイズは,綴字の謎に迫る第7弾まで到達しています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは,「小学生×英語史」という革命的な趣旨で始まり,100回に迫る(実際には本日までに優に100回を超えています)勢いで続いています.
umisio さんは,川上さんの名言「英語愛はありません」を深掘りするシリーズで続投されています.『英語史新聞』第13号への熱い暴走レポートも,読者の共感を呼ぶこと間違いなしですね!(khelf の応援,いつもありがとうございます.)
ykagata さんのブログも安定の継続で,ドイツ語を軸に『英語語源ハンドブック』をご紹介いただいたり,学びそのものについて考察する記事が公開されています.あまねちゃんの記事では,mark や zany の語源記事に始まり,最後にはついに『英語語源辞典』通読の挑戦へと禁断の一歩を踏み出されました.
また,川上さんによる古英詩に関する補遺は,異色の専門的な記事となっています.この記事を通じて,ぜひ古英詩の世界に触れてみてはいかがでしょうか.私自身も,微力ながら elvillian の前号の紹介記事を公開し,最新号の目次に名を連ねさせていただきました.
最後は Grace さんによる helwa のhel活の活動報告と,umisio さんによる『英語語源辞典』の流行に注目した暴走的編集後記で締めくくられています.
このように今号も,質量ともに充実したできあがりとなっています.ぜひ時間をかけてゆっくりと各コンテンツを味わっていただければ幸いです.
次号はいよいよ第20号の大台に乗ります.この Helvillian という媒体は,誰かに強制されたものではなく,英語史を愛し,学びを共有したいという有志の自発的なエネルギーによって継続しています.読者の皆さんにおかれましては,ぜひこの熱量を一緒に楽しんでいただき,温かい応援をいただければ幸いです.
また,「読むだけではなく,自分も書く側や編集側に回ってみたい」「このhel活の輪に直接貢献したい」という方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.ともに学び,ともに創る喜びが溢れている空間ですので.
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