hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 次ページ / page 1 (19)

lexicology - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-05-20 20:18

2024-05-04 Sat

#5486. 5月18日(土)の朝カル新シリーズ講座第2回「英語語彙の歴史を概観する」のご案内 [asacul][notice][kdee][etymology][hel_education][helkatsu][link][lexicology][vocabulary][loan_word][borrowing][word_formation][voicy][heldio]

 新年度より,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」を月に一度のペースで開講しています.
 第1回「語源辞典でたどる英語史」は,4月27日(土)の 17:30--19:00 に開講され,おかげさまで盛況のうちに終了しました.こちらの回については,本ブログでも「#5453. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」が4月27日より始まります」 ([2024-04-01-1]) および「#5481. 朝カル講座の新シリーズ「語源辞典でたどる英語史」の第1回が終了しました」 ([2024-04-29-1]) で事前・事後に取り上げました.
 第2回「英語語彙の歴史を概観する」は2週間後の5月18日(土)の 17:30--1900 に開講される予定です.対面・オンラインによるハイブリッド開講で,「見逃し配信」サービスもご利用可能です.第1回を逃した方も問題なくご参加いただけます.ご関心のある方は,ぜひこちらよりお申し込みください.


asacul_20240427.png



 第2回は,シリーズ全体のイントロとして,1500年以上にわたる英語語彙史を俯瞰してみます.今後のシリーズ展開に向けて,英語の語彙の変遷について大きな見通しを得ることが目標です.英語語彙史を概観していく過程で,英語史の各時代からいくつかのキーワードをピックアップして『英語語源辞典』(研究社,1997年)をはじめとする各種の英語語源辞典を参照します.同辞典をお持ちの方は,ぜひお手元にご用意しつつ,講座にご参加ください.どんな単語が取り上げられるかを予想しながら講座に臨んでいただければ.

(以下,後記:2024/05/14(Tue))



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024-04-28 Sun

#5480. 2022年の日本歴史言語学会のシンポジウム「日中英独仏・対照言語史ー語彙の近代化をめぐってー」の概要が公開されました [notice][jshl][symposium][historical_linguistics][lexicology][standardisation][emode][japanese][contrastive_language_history][german][french][chinese][latin][greek][renaissance]

 1年半ほど前のことになりますが,2022年12月10日に日本歴史言語学会にてシンポジウム「日中英独仏・対照言語史ー語彙の近代化をめぐって」が開かれました(こちらのプログラムを参照).学習院大学でのハイブリッド開催でした.同年に出版された,高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)が J-STAGE 上で公開されました.PDF形式で自由にダウンロードできますので,ぜひお読みいただければと思います.セクションごとに分かれていますので,以下にタイトルとともに抄録へのリンクを張っておきます.

 ・ 趣旨説明 「日中英独仏・対照言語史 --- 語彙の近代化をめぐって」(高田博行,学習院大学)
 ・ 講演1 「日本語語彙の近代化における外来要素の受容と調整」(田中牧郎,明治大学)
 ・ 講演2 「中国語の語彙近代化の生態言語学的考察 --- 新語の群生と「適者生存」のメカニズム」(彭国躍,神奈川大学)
 ・ 講演3 「初期近代英語における語彙借用 --- 日英対照言語史的視点から」(堀田隆一,慶應義塾大学)
 ・ 講演4 「ドイツ語の語彙拡充の歴史 --- 造語言語としてのアイデンティティー ---」(高田博行,学習院大学)
 ・ 講演5 「アカデミーフランセーズの辞書によるフランス語の標準化と語彙の近代化 ---フランス語の標準化への歩み」(西山教行,京都大学)
 ・ ディスカッション 「まとめと議論」

 講演3を担当した私の抄録は次の通りです.
 

初期近代英語期(1500--1700年)は英国ルネサンスの時代を含み,同時代特有の 古典語への傾倒に伴い,ラテン語やギリシア語からの借用語が大量に英語に流れ込んだ.一方,同時代の近隣ヴァナキュラー言語であるフランス語,イタリア語,スペイン語,ポルトガル語などからの語彙の借用も盛んだった.これらの借用語は,元言語から直接英語に入ってきたものもあれば,他言語,典型的にはフランス語を窓口として,間接的に英語に入ってきたものも多い.さらには,借用要素を自前で組み合わせて造語することもしばしば行なわれた.つまり,初期近代英語における語彙の近代化・拡充は,様々な経路・方法を通じて複合的に実現されてきたのである.このような初期近代英語期の語彙事情は,実のところ,いくつかの点において明治期の日本語の語彙事情と類似している.本論では,英語と日本語について対照言語史的な視点を取りつつ,語彙の近代化の方法と帰結について議論する.


 先に触れた編著書『言語の標準化を考える』で初めて対照言語史 (contrastive_language_history) というアプローチを導入しましたが,今回の論考はそのアプローチによる新たな挑戦として理解していただければと思います.

standardisation_front_cover_small



 ・ 高田 博行・田中 牧郎・彭 国躍・堀田 隆一・西山 教行 「日中英独仏・対照言語史ー語彙の近代化をめぐってー」『歴史言語学』第12号(日本歴史言語学会編),2024年.89--182頁.
 ・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024-02-26 Mon

#5418. A Dictionary of Japanese Loanwords の前書きを読んでみよう [review][loan_word][japanese][lexicography][lexicology][dictionary][inohota][notice][oed]



 昨日,「いのほたチャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」)の最新動画が公開されました.「最初の日本語由来の英語は?いまや hikikomori や enjo kosai も!---外来語の諸相-「ナイター」「柿」【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル 第209回】」です.英語に入った日本語単語の歴史を概説しています.馴染み深い日本語が多く出てくるので,入りやすい話題かと思いますが,れっきとした英語史の話題です.
 動画内では典拠として OED のほか,A Dictionary of Japanese Loanwords というおもしろい辞書を用いており,紹介もしています.この辞書については,最近の hellog でも「#5410. A Dictionary of Japanese Loanwords --- 英語に入った日本語単語の辞書」 ([2024-02-18-1]) にて取り上げていますので,そちらもご一読ください.


Toshie M. Evans, ed. ''A Dictionary of Japanese Loanwords''. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.



 同辞書の冒頭の説明書きを読んでみましょう (ix--x) .

A Dictionary of Japanese Loanwords is a lexical index of terms borrowed from the Japanese language that are listed in standard English dictionaries and in publications that analyze new words. Therefore, this dictionary covers both the loanwords that have withstood the test of time and those whose test has just started.
   American standard dictionaries keep records of borrowings from the Japanese language; most of them, however, do not furnish quotations. A Dictionary of Japanese Loanwords adds a special contribution by providing illustrative quotations from many entries. These quotations were collected from books, newspapers, magazines, advertisements, and databases, all of which were published or distributed in the United States between 1964 and 1995. They give details about the entry, demonstrate how it is used in a natural context, and indicate the degree of its assimilation into American English.
   Recent studies report that Japanese is the second most productive source of new loanwords to English, which indicates that the English-speaking world is paying attention to Japan more closely than ever before. The entries and illustrative quotations present the aspects of Japan that Americans have been exposed to and have adopted. Karaoke, for example, first appeared in English in 1979, when English-speaking societies observed and read about a karaoke fever in Japan. Today, Americans find themselves enjoying karaoke. Karaoke showcase, a weekly television talent contest, appeared on 120 U.S. stations in June 1992. A phenomenon like this is shown in this book in the form of lexical entries.
   The impact that Japan has made on America covers all aspects of life: aesthetics, architecture, arts and crafts, astronomy, biology, botany, business management, clothing, economics, education, electronics, fine art, food and food technology, medicine, oceanography, pathology, philosophy, physics, politics, religion, sports, technology, trade, weaponry, zoology, and so on. Some entries are not accompanied by a quotation; nevertheless, when dictionaries record words they indicate that these words are somehow linked to people's everyday lives. A Dictionary of Japanese Loanwords is also meant to be fun to read. I hope that it will provide the meaning for Japanese words the reader has come across on many occasions, and that it will be an occasion for happy browsing.

    
     この辞書の魅力は,何よりも引用文が豊富なところ.まさに "happy browsing" に最適な「読める辞書」です.
    
 ・ Toshie M. Evans, ed. A Dictionary of Japanese Loanwords. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024-02-23 Fri

#5415. 語彙記載項 (lexical entry) には何が記載されているか? [lexicon][lexicography][lexicology][semantics][dictionary][orthography][etymology]

 私たちが普段使う英語辞書や日本語辞書などでは,見出し語のもとにどのような情報が記載されているだろうか.見出し語それ自体は,アルファベット順あるいは五十音順に並べられた上で,各語が正書法に則った文字列で掲げられているのが普通だろう.その後に発音(分節音や超分節音)の情報が記載されていることが多い.その後,品詞や各種の文法情報が示され,語義・定義が1つ以上列挙されるのが典型である.エントリーの末尾には,語法,派生語・関連語,語源,その他の注などが付されている辞書もあるだろう.個別の辞書 (dictionary) ごとに,詳細は異なるだろうが,おおよそこのようなレイアウトである.
 では,私たち言語話者の頭の中にある辞書 (lexicon) は,どのように整理されており,各語の項目,すなわち語彙記載項 (lexical entry) にはどんな情報が「記載」されているのだろうか.これは,語彙論や意味論の理論的な問題である.
 まず,語彙項目の並びがアルファベット順や五十音順ではないだろうことは直感される.また,文字を読み書きできない修学前の子供たちの頭の中の語彙記載項目には,正書法の情報は入っていないだろう.さらに(私などのように)特別に語源に関心のある話者でない限り,頭の中の語彙記載項に「語順欄」のような通時的なコーナーが設定されているとは考えにくい.
 しかし,発音,品詞や各種の文法情報,語義については,紙の辞書 (dictionary) とは異なる形かとは予想されるが,何らかのフォーマットで頭の中の辞書にも「記載」されていると考えられる.では,具体的にどんなフォーマットなのだろうか.
 これは語彙論や意味論の分野の理論的問題であり.これぞという定説や決定版が提案されているわけではない.直接頭の中を覗いてみるわけにはいかないからだ.ただし,大雑把な合意があることも確かだ.英語の単語で考える限り,例えば,Bauer (192--93) は,Lyons を参照し,他のいくつかの先行研究にも目配りしつつ,次の4項目を挙げている.

 (i) stem(s)
 (ii) inflectional class
 (iii) syntactic properties
 (iv) semantic specification(s)


 (i) は stem(s) (語幹)とあるが,言わんとしていることは音韻論(分節音・超分節音)の情報のことである.(ii) は形態論的情報,(iii) は統語論的情報,(iv) は意味論的情報である.最後の項目は,多義の場合には「複数行」にわたるだろう.
 理論言語学の見地からは,ここに正書法欄や語源欄の入る余地はないのだろう.認めざるを得ないが,文字と語源を愛でる歴史言語学者にとって,ちょっと寂しいところではある.

 ・ Bauer, Laurie. English Word-Formation. Cambridge: CUP, 1983.
 ・ Lyons, John. Semantics. Cambridge: CUP, 1977.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024-02-18 Sun

#5410. A Dictionary of Japanese Loanwords --- 英語に入った日本語単語の辞書 [review][loan_word][japanese][lexicography][lexicology][false_friend][semantic_change][oed][dictionary]


Toshie M. Evans, ed. ''A Dictionary of Japanese Loanwords''. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.



 眺めているだけでおもしろい,決して飽きない辞書の紹介です.Toshie M. Evans 氏により編集された,英語に入った日本語単語を収録する辞書 A Dictionary of Japanese Loanwords です.1997年に出版されています.この hellog でも「#142. 英語に借用された日本語の分布」 ([2009-09-16-1]) で参照した通りですが,820語の日本語由来の「英単語」がエントリーされています.単に見出し語が列挙されているだけでなく,多くの語には,1964年から1995年の間にアメリカで出版された資料から取られた例文が付されており,たいへん貴重です.
 雰囲気を知っていただくために「火鉢」こと hibachi のエントリーを覗いてみましょう.

hibachi [hibɑːtʃi] n. pl. -chi or s, 1. a brazier used indoors for burning charcoal as a source of heat.
In an old-style shop, the selling activity took place in a front room on a tatami (straw mat) platform about one foot above the ground level. Customers removed their shoes, warmed themselves by sitting on the floor next to a hibachi (earthen container with glowing embers) and were served tea and sweets. (Places, Summer 1992, p. 81)
2. a portable brazier with a grill, used for outdoor cooking.
Double stamped steel hibachi, lightweight & portable. Goes with you to the backyard or even the beach for tasty cookouts? (Los Angeles Times, Jul. 7, 1985, Part I, p. 13, advertisement)
[< hibachi < hi fire + bachi < hachi pot] 1874: hebachi 1863 (OED)


 語義1は日本の「火鉢」そのものなのですが,語義2の「バーベキューコンロ」にはたまげてしまいますね.この語とその意味変化については「#4386. 「火鉢」と hibachi, 「先輩」と senpai」 ([2021-04-30-1]) でも扱っているので,ご参照ください.
 日本語から英語に入った借用語に関心のある方は,ぜひ以下の記事もどうぞ.

 ・ 「#126. 7言語による英語への影響の比較」 ([2009-08-31-1])
 ・ 「#45. 英語語彙にまつわる数値」 ([2009-06-12-1])
 ・ 「#2165. 20世紀後半の借用語ソース」 ([2015-04-01-1])
 ・ 「#3872. 英語に借用された主な日本語の借用年代」 ([2019-12-03-1])
 ・ 「#4140. 英語に借用された日本語の「いつ」と「どのくらい」」 ([2020-08-27-1])
 ・ 「#5055. 英語史における言語接触 --- 厳選8点(+3点)」 ([2023-02-28-1])
 ・ 「#5147. 「ゆる言語学ラジオ」出演第3回 --- 『ジーニアス英和辞典』第6版を読む回で触れられた諸々の話題」 ([2023-05-31-1])

 ・ Toshie M. Evans, ed. A Dictionary of Japanese Loanwords. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.

Referrer (Inside): [2024-02-26-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024-02-04 Sun

#5396. フランス語とラテン語からの大量の語彙借用は英語の何をどう変えたか? [lexicology][french][latin][loan_word][word_formation][lexical_stratification][contact][semantic_change][derivation]

 英語語彙史においてフランス語やラテン語の影響が甚大であることは,折に触れて紹介してきた.何といっても借用された単語の数が万単位に及び,大きい.しかし,数や量だけの影響にとどまらない.大規模借用の結果として,英語語彙の質も,主に中英語期以降に,著しく変化した.その質的変化について,Durkin (224) が重要な3点を指摘している.

 ・ The derivational morphology of English was (eventually) completely transformed by the accommodation of whole word families of related words from French and Latin, and by the analogous expansion of other word families within English exploiting the same French and Latin derivational affixes (especially suffixes).
 ・ Not only was a good deal of native vocabulary simply lost, but many other existing words showed meaning changes (especially narrowing) as semantic fields were reshaped following the adoption of new words from French and Latin.
 ・ The massive borrowing of less basic vocabulary, especially in a whole range of technical areas, led to extensive and enduring layering or stratification in the lexis of English, and also to a high degree of dissociation in many semantic fields (e.g. the usual adjective corresponding in meaning to hand is the etymologically unrelated manual)


 1点目は,単語の家族 (word family) や語形成 (word_formation) そのものが,本来の英語的なものからフランス・ラテン語的なものに大幅に入れ替わったことに触れている.2点目は,本来語が死語になったり,意味変化 (semantic_change) を経たりしたものが多い事実を指摘している.3点目は,比較的程度の高い語彙の層が新しく付け加わり,語彙階層 (lexical_stratification) が生じたことに関係する.
 単純化したキーワードで示せば,(1) 語形成の変質,(2) 意味変化,(3) 語彙階層の発生,といったところだろうか.これらがフランス語・ラテン語からの大量借用の英語語彙史上の質的意義である.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024-01-31 Wed

#5392. 中英語の姓と職業名 [name_project][me][onomastics][personal_name][occupational_term][etymology][oe][morphology][lexicology][word_formation][agentive_suffix][by-name]

 「名前プロジェクト」 (name_project) との関連で,中英語期の人名 (personal_name),とりわけ現代の姓 (last name) に相当する "by-name" あるいは "family name" に関心を抱いている.古英語や中英語にみられる by-name の起源は,Clark (567) によれば4種類ある(ただし,古中英語に限らず,おおよそ普遍的な分類だと想像される).

 (a) familial ones, viz. those defining an individual by parentage, marriage or other tie of kinship
 (b) honorific and occupational ones (categories that in practice overlap)
 (c) locative ones, viz. those referring to present or former domicile
 (d) characteristic ones, often called 'nicknames'

 このうち (b) は名誉職名・職業名ととらえられるが,中英語におけるこれらの普通名詞としての使用,そして by-name として転用された事例に注目している.中英語の職業名は多々あるが,Clark (570--71) を参照しつつ,語源的・形態論的に分類すると以下のようになるだろうか.

 1. フランス語(あるいはラテン語?)からの借用語 (French loanword)
   barber, butcher, carpenter, cordwainer/cordiner, draper, farrier, mason, mercer, tailor; fourbisseur, pestour
 2. 本来語 (native word)
   A. 単一語 (simplex)
     cok, herde, smith, webbe, wrighte
   B. 複素語 (complex),すなわち派生語や複合語
     a. 動詞ベース
       bruere/breuster, heuere, hoppere/hoppestre; bokebynder, bowestrengere, cappmaker, lanternemaker, lymbrenner, medmowere, rentgaderer, sylkthrowster, waterladestre
     b. 名詞ベース
       bureller, glovere, glasier, madrer, nailere, ropere, skinnere; burelman, candelwif, horseknave, maderman, plougrom, sylkewymman; couherde, swynherde, madermongere, stocfisshmongere, ripreve, bulleward, wodeward, wheelewrighte

 古中英語の人名をめぐる話題については,以下の hellog 記事でも取り上げてきたので要参照.

 ・ 「#590. last name はいつから義務的になったか」 ([2010-12-08-1])
 ・ 「#2365. ノルマン征服後の英語人名の姓の採用」 ([2015-10-18-1])
 ・ 「#5231. 古英語の人名には家系を表わす姓 (family name) はなかったけれど」 ([2023-08-23-1])
 ・ 「#5297. 古英語人名学の用語体系」 ([2023-10-28-1])
 ・ 「#5338. 中英語期に人名にもたらされた2つの新機軸とその時期」 ([2023-12-08-1])
 ・ 「#5346. 中英語期に英語人名へ姓が導入された背景」 ([2023-12-16-1])
 ・ 「#5299. 中英語人名学の用語体系」 ([2023-10-30-1])

 ・ Clark, Cecily. "Onomastics." The Cambridge History of the English Language. Vol. 2. Ed. Olga Fischer. Cambridge: CUP, 1992. 542--606.

Referrer (Inside): [2024-03-09-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-09-21 Thu

#5260. 喜びに満ちた delicious の同根類義語 [eebo][synonym][me][cognate][lexicology][borrowing][loan_word][latin][french][oed][thesaurus][htoed][voicy][heldio]



 今週の月・火と連続して,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」(毎朝6時に配信)にて delicious とその類義語の話題を配信しました.

 ・ 「#840. delicious, delectable, delightful」
 ・ 「#841. deleicious の歴史的類義語がたいへんなことになっていた」

 かつて「#283. delectabledelight」 ([2010-02-04-1]) と題する記事を書いたことがあり,これとも密接に関わる話題です.ラテン語動詞 dēlectāre (誘惑する,魅了する,喜ばせる)に基づく形容詞が様々に派生し,いろいろな形態が中英語期にフランス語を経由して借用されました(ほかに,それらを横目に英語側で形成された同根の形容詞もありました).いずれの形容詞も「喜びを与える,喜ばせる,愉快な,楽しい;おいしい,美味の,芳しい」などのポジティヴな意味を表わし,緩く類義語といってよい単語群を構成していました.
 しかし,さすがに同根の類義語がたくさんあっても競合するだけで,個々の存在意義が薄くなります.なかには廃語になるもの,ほとんど用いられないものも出てくるのが道理です.
 Historical Thesaurus of the Oxford English Dictionary (= HTOED) で調べてみたところ,歴史的には13の「delicious 語」が浮上してきました.いずれも語源的に dēlectāre に遡りうる同根類義語です.以下に一覧します.

 ・ †delite (c1225--1500): Very pleasant or enjoyable; delightful.
 ・ delightable (c1300--): Very pleasing or appealing; delightful.
 ・ delicate (a1382--1911): That causes pleasure or delight; very pleasing to the senses, luxurious; pleasurable, esp. in a way which promotes calm or relaxation. Obsolete.
 ・ delightful (a1400--): Giving or providing delight; very pleasant, charming.
 ・ delicious (c1400?-): Very pleasant or enjoyable; very agreeable; delightful; wonderful.
 ・ delectable (c1415--): Delightful; extremely pleasant or appealing, (in later use) esp. to the senses; very attractive. Of food, drink, etc.: delicious, very appetizing.
 ・ delighting (?a1425--): That gives or causes delight; very pleasing, delightful.
 ・ †delitous (a1425): Very pleasant or enjoyable; delightful.
 ・ delightsome (c1484--): Giving or providing delight; = delightful, adj. 1.
 ・ †delectary (?c1500): Very pleasant; delightful.
 ・ delighted (1595--1677): That is a cause or source of delight; delightful. Obsolete.
 ・ dilly (1909--): Delightful; delicious.
 ・ delish (1915--): Extremely pleasing to the senses; (chiefly) very tasty or appetizing. Sometimes of a person: very attractive. Cf. delicious, adj. A.1.

 廃語になった語もあるのは確かですが,意外と多くが(おおよそ低頻度語であるとはいえ)現役で生き残っているのが,むしろ驚きです.「喜びを与える,愉快な;おいしい」という基本義で普通に用いられるものは,実際的にいえば delicious, delectable, delightful くらいのものでしょう.
 このような語彙の無駄遣い,あるいは類義語の余剰といった問題は,英語では決して稀ではありません.関連して,「#3157. 華麗なる splendid の同根類義語」 ([2017-12-18-1]),「#4969. splendid の同根類義語のタイムライン」 ([2022-12-04-1]),「#4974. †splendidious, †splendidous, †splendious の惨めな頻度 --- EEBO corpus より」 ([2022-12-09-1]) もご覧ください.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-07-01 Sat

#5178. 名義論的変化の2つのタイプ [lexicology][semantic_change][homonymic_clash][semantics][synonym][semiotics][onomasiology]

 昨日の記事「#5177. 語議論 (semasiology) と名議論 (onomasiology)」 ([2023-06-30-1]) で取り上げたように,意味変化 (semantic_change or semasiological change) とともに扱われることが多いが,明確に区別すべき過程として名議論的変化 (onomasiological change) というものがある.
 Traugott and Dasher (52--53) は,名義論的変化 ("onomasiological changes") について,Bréal の議論を参照する形で,2つのタイプを挙げている.

(i) Specialization: one element "becomes the pre-eminent exponent of the grammatical conception of which it bears the stamp" . . . , for example, the selection of que as the sole complementizer in French . . . .
(ii) Differentiation: two elements which are (near-)synonymous diverge. Paradigm examples include, in English, (a) the specialization, e.g. of hound when dog was borrowed from Scandinavian, and (b) loss of a form when sound change leads to "homonymic clash," e.g. ME let in the sense "prohibit" from OE lett- was lost after OE lætan "allow" also developed into ME let . . . .


 Bréal によれば,名義論的変化は,意味変化の話題でないばかりか,単純に名前の変化というわけでもなく,"the proper subject of the 'science of significations'" (95) ということらしい.
 正直にいうと,Bréal の説明は込み入っており理解しにくい.

 ・ Traugott, Elizabeth C. and Richard B. Dasher. Regularity in Semantic Change. Cambridge: CUP, 2005.
 ・ Bréal, Michel. Semantics: Studies in the Science of Meaning. Trans. Mrs. Henry Cust. New York: Dover, 1964. 1900.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-06-30 Fri

#5177. 語議論 (semasiology) と名議論 (onomasiology) [lexicology][semantic_change][semantics][semiotics][onomasiology][terminology]

 語の意味変化 (semantic_change) を論じる際に,語議論 (semasiology) と名議論 (onomasiology) を分けて考える必要がある.堀田 (155) より引用する.

語の意味変化を考えるに当たっては,語議論 (semasiology) と名議論 (onomasiology) を区別しておきたい.語を意味と発音の結びついた記号と考えるとき,発音(名前)を固定しておき,その発音に結びつけられる意味が変化していく様式を,語議論的変化と呼ぶ.一方,意味の方を固定しておき,その意味に結びつけられる名前が変化していく様式を名義論的変化と呼ぶ.語の意味変化を,記号の内部における結びつき方の変化として広義に捉えるならば,語議論的な変化のみならず名義論的な変化をも考慮に入れてよいだろう.


 要するに,語議論は通常の意味変化,名議論は名前の変化と理解しておけばよい.「#3283. 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]が出版されました」 ([2018-04-23-1]) を参照.

does_spelling_matter_front_cover


 ・ 堀田 隆一 「第8章 意味変化・語用論の変化」『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 服部 義弘・児馬 修(編),朝倉書店,2018年.151--69頁.

Referrer (Inside): [2023-07-01-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-06-04 Sun

#5151. 日本語反対語辞典の「まえがき」より [lexicology][semantics][antonymy][synonym][structuralism][thesaurus][dictionary]

 「反対語」「対義語」「対照語」「対応語」などと称される antonym は,語彙意味論においても関心を集めてきた.私も反対語辞典の類いは好きでよく引くのだが,日本語で常用しているものとして『反対語対照語辞典 新装版』がある.
 反対語といっても「反対」のあり方は様々で,語彙意味論でもまさにその点が問題となる.上記の辞典の「まえがき」 (i--ii) を読めば,その難しさとおもしろさが理解できるだろう.

 単語は一つ一つがばらばらに存在しているのではなく,まとまりをもち,いわばネットワークをなしている.たとえば「父」という単語は,「お父さん」「おやじ」「パパ」などと言い換えることができる.これら四語は,同じものを指している.四語の間には敬意の有無やニュアンスの違いなどがあり,完全に同義であるとはいえないが,同義に近い関係ーー類義の関係ーーにあるということができる.一方,「父」の対として「母」という語がある.そして,「母」にも「お母さん」「おふくろ」「ママ」といったような類義の語が存在する.また,「父」と「母」の両者を包含する語として「親」があり,「親」の対として「子」という語がある.このように,単語は相互に関連して複雑な組織網を形成している.
 反対語の定義はきわめて難しい.同義語・類義語には同じものを指すといった基準があるが,反対語の条件は単純ではない.反対語という場合,まず両者の間に共通する意味がなければならない.「母」が「父」の反対語になるのは,両者が<親>という共通の意味をもっているからである.しかし,共通する意味をもっているだけでは,もちろん反対語にはならない.「母」が「父」の反対語になるのは,男性ではなく女性であるということによる.つまり,男性か女性かという基準から見て反対の意味になるのである.反対語の条件は,
 (1) 共通する意味をもっていること
 (2) その上で,ある基準から見て,反対の意味をもっていること
の二点であるということになるだろう.
 もう一つの例をあげよう.「大勝」の反対語には,「大敗」と「辛勝」とがあげられるが,前者は,(1) 大差で勝負がつくという共通点をもち,(2) 勝ち負けという基準から見て反対の意味をもっており,後者,つまり「辛勝」は,(1) 勝つという共通の意味をもち,(2) 勝ち方が大差か小差かという基準から見て反対の意味をもっている.ある語の反対語は,一つとは限らない.基準が変わると,いくつも存在することになる.
 以上のように説明すると,反対語の判定は比較的容易なように見えるが,一語一語について具体的に考えていく段になると,反対の意味とは何かということが問題になってきて,判断に苦しむことが多い.


 上記で例に挙げられている「大勝」に関する辞典内の図を参照しよう.構造主義的な,きれいなマトリックスとなる.

 <大差> <小差>
<勝利>圧勝(大勝・快勝)←───→辛勝
  
  
  
<敗北>惨敗(大敗・完敗)←───→惜敗


 しかし,多くの場合,そこまできれいなマトリックスにはならない.反対関係はもっと複雑になることも多い.例えば「水」を中心とした語彙の関係図を示そう.


             ┌─┐      
             │油│      
             └─┘      
  ┌─┐         ↑    ┌─┐
  │ │         │    │ │
  │ │         ↓    │ │
  │水│←──────→┌─┐   │ │
  │ │  ┌─┐   │ │   │ │
  │蒸│  │湯│←─→│水│←─→│氷│
  │ │  └─┘   │ │   │ │
  │気│        └─┘   │ │
  │ │         ↑    │ │
  │ │←────────┼───→│ │
  └─┘         ↓    └─┘
             ┌─┐      
             │火│      
             └─┘      


 反対語の意味論については,hellog および heldio より以下を参照.

 ・ hellog 「#1800. 様々な反対語」 ([2014-04-01-1])
 ・ hellog 「#1804. gradable antonym の意味論」 ([2014-04-05-1])
 ・ hellog 「#1968. 語の意味の成分分析」 ([2014-09-16-1])
 ・ hellog 「#4102. 反意と極性」 ([2020-07-20-1])
 ・ heldio 「#353. 反対語っていろいろあっておもしろい!」
 ・ heldio 「#354. long と short は対等な反対語ではない?」

 ・ 北原 保雄・東郷 吉男(編) 『反対語対照語辞典 新装版』 東京堂出版,2015年.

Referrer (Inside): [2024-01-01-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-04-04 Tue

#5090. 人名ベースの造語は eponym だが,では地名ベースの造語は何と呼ぶ? [eponym][toponymy][onomastics][personal_name][etymology][metonymy][semantic_change][word_formation][lexicology][terminology]

 昨日の記事「#5089. eponym」 ([2023-04-03-1]) で,etymon が人名 (personal_name) であるような語について考察した(etymon という用語については「#3847. etymon」 ([2019-11-08-1]) を参照).ところで,人名とともに固有名詞学 (onomastics) の重要な考察対象となるのが地名 (place-name, toponym) である.とすれば,当然予想されるのは,etymon が地名であるような語の存在である.実際,国名というレベルで考えるだけでも japan (漆器),china (磁器),turkey (七面鳥)などがすぐに思い浮かぶ(cf. heldio 「#626. 陶磁器の china と漆器の japan --- 産地で製品を表わす単語たち」「#625. Turkey --- トルコと七面鳥の関係」).
 このような地名に基づいて作られた語も多くあるわけだが,これを何と呼ぶべきか.eponym はあくまで人名ベースの造語に与えられた名前である.toponymplace-name に対応する術語であり,やはり「地名」に限定して用いておくほうが混乱が少ないだろう.Crystal (165) は,このように少々厄介な事情を受けて,"eponymous places" と呼ぶことにしているようだ(これでも少々分かりくいところはあることは認めざるを得ない).Crystal が列挙している "eponymous places" の例を再掲しよう.

alsatian: Alsace, France.
balaclava: Balaclava, Crimea.
bikini: Bikini Atoll, Marshall Islands.
bourbon: Bourbon County, Kentucky.
Brussels sprouts: Brussels, Belgium.
champagne: Champagne, France.
conga: Congo, Africa.
copper: Cyprus.
currant: Corinth, Greece.
denim: Nîmes, France (originally, serge de Nîm).
dollar: St Joachimsthal, Bohemia (which minted silver coins called joachimstalers, shortened to thalers, hence dollars).
duffle coat: Duffel, Antwerp.
gauze: Gaza, Israel.
gypsy: Egypt.
hamburger: Hamburg, Germany.
jeans: Genoa, Italy.
jersey: Jersey, Channel Islands.
kaolin: Kao-ling, China.
labrador: Labrador, Canada.
lesbian: Lesbos, Aegean island.
marathon: Marathon, Greece.
mayonnaise: Mahó, Minorca.
mazurka: Mazowia, Poland.
muslin: Mosul, Iraq.
pheasant: Phasis, Georgia.
pistol: Pistoia, Italy.
rugby: Rugby (School), UK.
sardine: Sardinia.
sherry: Jerez, Spain.
suede: Sweden.
tangerine: Tangier.
turquoise: Turkey.
tuxedo: Tuxedo Park Country Club, New York.
Venetian blind: Venice, Italy.


 いくらでもリストを長くしていけそうだが,全体として飲食料,衣料,工芸品などのジャンルが多い印象である.

 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-04-03 Mon

#5089. eponym [eponym][personal_name][onomastics][etymology][metonymy][semantic_change][word_formation][lexicology]

 eponym とは人名に基づいて造られた語のことである.英語の具体例については「#2842. 固有名詞から生まれた語」 ([2017-02-06-1]),「#2849. macadamia nut」 ([2017-02-13-1]),「#3460. 紅茶ブランド Earl Grey」 ([2018-10-17-1]),「#3461. 警官 bobby」 ([2018-10-18-1]) で挙げてきた.また,eponym は「#5079. 商標 (trademark) の言語学的な扱いは難しい」 ([2023-03-24-1]) とも関係の深い話題である.McArthur の英語学用語辞典によれば,次の通り.

EPONYM [19c: from Greek epṓonumos named on]. (1) A personal name from which a word has been derived: John B. Stetson, the 19c US hatter after whom the stetson hat was named. (2) The person whose name is so used: The Roman emperor Constantine, who gave his name to Constantinople. (3) The word so derived: stetson, Constantinople. The process of eponymy results in many forms: (1) Such simple eponyms as atlas, which became popular after the 16c Flemish cartographer Gerardus Mercator put the figure of the titan Atlas on the cover of a book of maps. (2) Compounds and attributive constructions such as loganberry after the 19c US lawyer James H. Logan, and Turing machine after the 20c British mathematician Alan Turing. (3) Possessives such as Parkinson's Law after the 20c British economist C. Northcote Parkinson, and the Islets of Langerhans after the 19c German pathologist Paul Langerhans. (4) Derivatives such as Bowdlerize and gardenia, after the 18c English expurgator of Shakespeare, Thomas Bowdler, and the 19c Scottish-American physician Alexander Garden. (5) Clippings, such as dunce from the middle name and the first element of the last name of the learned 13c Scottish friar and theologian John Duns Scotus, whose rivals called him a fool. (6) Blends such as gerrymander, after the US politician Elbridge Gerry (b. 1744), whose redrawn map of the voting districts of Massachusetts in 1812 was said to look like a salamander, and was then declared a gerrymander. The word became a verb soon after. Works on eponymy include: Rosie Boycott's Batty, Bloomers and Boycott: A Little Etymology of Eponymous Words (Hutchinson, 1982) and Cyril L. Beeching's A Dictionary of Eponyms (Oxford University Press, 1988).


 ここで eponym は語源的に(一部であれ)人名に基づいている語,etymon が人名であるような語として,あくまで語源的な観点から定義されていることに注意したい.つまり後にさらに別の語形成を経たり,意味変化を経たりした語も含まれ,今となっては形態や意味においてオリジナルの人(名)からは想像できないほど遠く離れてしまっているケースもあるということだ.語源的に定義づけられているという特殊性を除けば,eponym はその他の一般の語とさほど変わらない振る舞いをしているといえるのではないか.

 ・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.

Referrer (Inside): [2023-04-04-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-02-01 Wed

#5028. 英語の季節語の歴史のおさらい [youtube][notice][semantic_change][lexicology][metonymy][calendar][french]

 日曜日に公開された YouTube チャンネル「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回は,(タイトルが長くてすみません)「かつて英語には「夏」と「冬」しかなかった。「春」や「秋」はどうやってうまれた?」です.20分ほどの動画となっています.どうぞご覧ください.



 今回の英語の季節語の話題は,本ブログを含め別のメディアで何度も繰り返し取り上げてきたもので,特に新しいトピックではありません.補足的な情報や関連する話題も含めて,様々な角度から注目してきましたので,ここでリンクを整理しておきたいと思います.

 ・ hellog 「#1221. 季節語の歴史」 ([2012-08-30-1])
 ・ hellog 「#1438. Sumer is icumen in」 ([2013-04-04-1])
 ・ hellog 「#2916. 連載第4回「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」」 ([2017-04-21-1])
 ・ 外部記事:「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」(=連載「現代英語を英語史の視点から考える」の第4回)
 ・ hellog 「#2925. autumn vs fall, zed vs zee」 ([2017-04-30-1])
 ・ hellog 「#3448. autumn vs fall --- Johnson と Pickering より」 ([2018-10-05-1])
 ・ Voicy heldio 「#69. winter は「冬」だけでなく「年」を表わす」
 ・ Voicy heldio 「#532. 『ジーニアス英和辞典』第6版の出版記念に「英語史Q&A」コラムより spring の話しをします」
 ・ Voicy heldio 「#533. 季節語の歴史」



 もう1つ関連してフランス語における季節語の歴史事情について,三省堂のことばのコラムのシリーズの「歴史で謎解き!フランス語文法(フランス語教育 歴史文法派)」より「第39回 フランス語の季節名の語源はなに?」がお薦めです.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-12-04 Sun

#4969. splendid の同根類義語のタイムライン [cognate][synonym][lexicology][inkhorn_term][emode][borrowing][loan_word][renaissance][oed][timeline]

 すでに「#3157. 華麗なる splendid の同根類義語」 ([2017-12-18-1]) で取り上げた話題ですが,一ひねり加えてみました.splendid (豪華な,華麗な;立派な;光り輝く)というラテン語の動詞 splendēre "to be bright or shining" に由来する形容詞ですが,英語史上,数々の同根類義語が生み出されてきました.先の記事で触れなかったものも含めて OED で調べた単語を列挙すると,廃語も入れて13語あります.

resplendant, resplendent, resplending, splendacious, †splendant, splendent, splendescent, splendid, †splendidious, †splendidous, splendiferous, †splendious, splendorous


 OED に記載のある初出年(および廃語の場合は最終例の年)に基づき,各語の一生をタイムラインにプロットしてみたのが以下の図です.とりわけ16--17世紀に新類義語の登場が集中しています.

splendid and its synonyms

 ほかに1796年に初出の resplendidly という副詞や1859年に初出の many-splendoured という形容詞など,合わせて考えたい語もあります.いずれにせよ英語による「節操のない」借用(あるいは造語)には驚かされますね.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-12-01 Thu

#4966. 英語語彙史の潮流と雑感 [lexicology][word_formation][neologism][esl][world_englishes][contact][borrowing][loan_word][link]

 英語語彙史を鳥瞰すると,いかにして新語が導入されたてきたかという観点から大きな潮流をつかむことができる.新語導入の方法として,大雑把に (1) 借用 (borrowing) と (2) 語形成 (word_formation) の2種類を考えよう.借用は他言語(方言)から単語を借り入れることである.語形成は既存要素(それが語源的には本来語であれ借用語であれ)をもとにして派生 (derivation),複合 (compounding),品詞転換 (conversion),短縮 (shortening) などの過程を経て新たな単語を作り出すことである.

 ・ 古英語期:主に語形成による新語導入が主.ただし,ラテン語や古ノルド語からの借用は多少あった.
 ・ 中英語期:フランス語やラテン語からの新語導入が主.ただし,語形成も継続した.
 ・ 初期近代英語期:ラテン語やギリシア語からの新語導入が主.ただし,それまでに英語に同化していた既存要素を用いた語形成も少なくない.
 ・ 後期近代英語期・現代英語期:語形成が主.ただし,世界の諸言語からの借用は継続している.

 時代によって借用と語形成のウェイトが変化してきた点が興味深い.大雑把にいえば,古英語期は語形成偏重,次の中英語期は借用偏重,近代英語来以降は両者のバランスがある程度回復してきたとみることができる.それぞれの時代背景には征服,ルネサンス,帝国主義など社会・文化的な出来事が確かに対応している.
 しかし,上記はあくまで大雑把な潮流である.借用と語形成のウェイトの変化こそあったが,見方を変えれば,英語史を通じて常に両方法が利用されてきたとみることもできる.また,これはあくまで標準英語の語彙史にみられる潮流であることにも注意を要する.他の英語変種の語彙史を考えるならば,例えばインド英語などの ESL (= English as a Second Language) を念頭に置くならば,近代・現代では現地の諸言語からの語彙のインプットは疑いなく豊富だろう.激しい言語接触の産物ともいえる英語ベースのピジンやクレオールではどうだろうか.逆に言語接触の少ない環境で育まれてきた英語変種の語彙史にも興味が湧く.
 英語語彙史に関する話題は hellog でも多く取り上げてきたが,歴史を俯瞰した内容のもののみを以下に示す.

 ・ 「#873. 現代英語の新語における複合と派生のバランス」 ([2011-09-17-1])
 ・ 「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1])
 ・ 「#1956. Hughes の英語史略年表」 ([2014-09-04-1])
 ・ 「#2966. 英語語彙の世界性 (2)」 ([2017-06-10-1])
 ・ 「#4130. 英語語彙の多様化と拡大の歴史を視覚化した "The OED in two minutes"」 ([2020-08-17-1])
 ・ 「#4133. OED による英語史概説」 ([2020-08-20-1])
 ・ 「#4716. 講座「英語の歴史と語源」のダイジェスト「英語語彙の歴史」を終えました --- これにて本当にシリーズ終了」 ([2022-03-26-1])

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-11-09 Wed

#4944. lexical gap (語彙欠落) [terminology][lexicology][sapir-whorf_hypothesis][linguistic_relativism][language_myth][lexical_gap][semantics]

 身近な概念だが対応するズバリの1単語が存在しない,そのような概念が言語には多々ある.この現象を「語彙上の欠落」とみなして lexical gap と呼ぶことがある.
 例えば brother 問題を取り上げてみよう.「#3779. brother と兄・弟 --- 1対1とならない語の関係」 ([2019-09-01-1]) や「#4128. なぜ英語では「兄」も「弟」も brother と同じ語になるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-08-15-1]) で確認したように,英語の brother は年齢の上下を意識せずに用いられるが,日本語では「兄」「弟」のように年齢に応じて区別される.ただし,英語でも年齢を意識した「兄」「妹」に相当する概念そのものは十分に身近なものであり,elder brotheryounger sister と表現することは可能である.つまり,英語では1単語では表現できないだけであり,対応する概念が欠けているというわけではまったくない.英語に「兄」「妹」に対応する1単語があってもよさそうなものだが,実際にはないという点で,lexical gap の1例といえる.逆に,日本語に brother に対応する1単語があってもよさそうなものだが,実際にはないので,これまた lexical gap の例と解釈することもできる.
 Cruse の解説と例がおもしろいので引用しておこう.

lexical gap This terms is applied to cases where a language might be expected to have a word to express a particular idea, but no such word exists. It is not usual to speak of a lexical gap when a language does not have a word for a concept that is foreign to its culture: we would not say, for instance, that there was a lexical gap in Yanomami (spoken by a tribe in the Amazonian rainforest) if it turned out that there was no word corresponding to modem. A lexical gap has to be internally motivated: typically, it results from a nearly-consistent structural pattern in the language which in exceptional cases is not followed. For instance, in French, most polar antonyms are lexically distinct: long ('long'): court ('short'), lourd ('heavy'): leger ('light'), épais ('thick'): mince ('thin'), rapide ('fast'): lent ('slow'). An example from English is the lack of a word to refer to animal locomotion on land. One might expect a set of incompatibles at a given level of specificity which are felt to 'go together' to be grouped under a hyperonym (like oak, ash, and beech under tree, or rose, lupin, and peony under flower). The terms walk, run, hop, jump, crawl, gallop form such a set, but there is no hyperonym at the same level of generality as fly and swim. These two examples illustrate an important point: just because there is no single word in some language expressing an idea, it does not follow that the idea cannot be expressed.


 引用最後の「重要な点」と関連して「#1337. 「一単語文化論に要注意」」 ([2012-12-24-1]) も参照.英語や日本語の lexical gap をいろいろ探してみるとおもしろそうだ.

 ・ Cruse, Alan. A Glossary of Semantics and Pragmatics. Edinburgh: Edinburgh UP, 2006.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-11-08 Tue

#4943. 「愛人」の呼称50種 [term_of_endearment][lexicology][synonym]

 英語には数多くの愛称や親愛語 (term_of_endearment) があり,歴史的にも止むことなく生み出され続けてきた.Crystal が,年代順に50の「愛人」の呼称を挙げている.

 darling (c. 888)
 dear (c. 1230)
 sweetheart (c. 1290)
 heart (c. 1305)
 honey (c. 1375)
 dove (c. 1386)
 cinnamon (c. 1405)
 love (c. 1405)
 mulling (c. 1475)
 daisy (c. 1485)
 mouse (c. 1520)
 whiting (c. 1529)
 fool (c. 1530)
 beautiful (1535)
 soul (c. 1538)
 bully (1548)
 lamb (c. 1556)
 pussy (c. 1557)
 ding-ding (1564)
 lover (1573)
 pug (1580)
 mopsy (1582)
 bun (1587)
 wanton (1589)
 ladybird (1597)
 chuck (1598)
 sweetkin (1599)
 duck (1600)
 joy (1600)
 sparrow (c. 1600)
 bawcock (c. 1601)
 nutting (1606)
 tickling (1607)
 bagpudding (1608)
 dainty (1611)
 flitter-mouse (1612)
 pretty (1616)
 old thing (c. 1625)
 duckling (1630)
 sweetling (1648)
 pet (1767)
 sweetie (1778)
 cabbage (1840)
 prawn (1895)
 so-and-so (1897)
 pumpkin (1900)
 pussums (1912)
 treasure (1920)
 sugar (1930)
 lamb-chop (1962)

 このような語彙には,はやりすたりもあったに違いないが,上の一覧には古くから根強く生き延び,現在もバリバリの現役という語が含まれている.息の長さに驚くばかりである.食物や動物の意味領域から転用されてきたものが多いようだ.
 愛称の歴史というのは,語彙論,意味変化,歴史語用論など多方面から迫れそうなテーマである.関連して「#1951. 英語の愛称」 ([2014-08-30-1]),「#2131. 呼称語のポライトネス座標軸」 ([2015-02-26-1]),「#4312. 「呼格」を認めるか否か」 ([2021-02-15-1]) を参照.

 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-09-17 Sat

#4891. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第19回「なぜ単語ごとにアクセントの位置が決まっているの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][stress][prosody][french][latin][germanic][gsr][rsr][contact][borrowing][lexicology][hellog_entry_set]

 『中高生の基礎英語 in English』の10月号が発売となりました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第19回は「なぜ単語ごとにアクセントの位置が決まっているの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2022年10月号



 英単語のアクセント問題は厄介です.単語ごとにアクセント位置が決まっていますが,そこには100%の規則がないからです.完全な規則がないというだけで,ある程度予測できるというのも事実なのですが,やはり一筋縄ではいきません.
 例えば,以前,学生より「naturemature は1文字違いですが,なんで発音がこんなに異なるのですか?」という興味深い疑問を受けたことがあります.これを受けて hellog で「#3652. naturemature は1文字違いですが,なんで発音がこんなに異なるのですか?」 ([2019-04-27-1]) の記事を書いていますが,この事例はとてもおもしろいので今回の連載記事のなかでも取り上げた次第です.
 英単語の厄介なアクセント問題の起源はノルマン征服です.それ以前の古英語では,アクセントの位置は原則として第1音節に固定で,明確な規則がありました.しかし,ノルマン征服に始まる中英語期,そして続く近代英語期にかけて,フランス語やラテン語から大量の単語が借用されてきました.これらの借用語は,原語の特徴が引き継がれて,必ずしも第1音節にアクセントをもたないものが多かったため,これにより英語のアクセント体系は混乱に陥ることになりました.
 連載記事では,この辺りの事情を易しくかみ砕いて解説しました.ぜひ10月号テキストを手に取っていただければと思います.
 英語のアクセント位置についての話題は,hellog よりこちらの記事セットおよび stress の各記事をお読みください.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-08-25 Thu

#4868. 英語の意味を分析する様々なアプローチ --- 通信スクーリング「英語学」 Day 4 [english_linguistics][semantics][prototype][metaphor][metonymy][cognitive_linguistics][polysemy][voicy][2022_summer_schooling_english_linguistics][history_of_linguistics][lexicology][semantic_field]

 言葉の意味とは何か? 言語学者や哲学者を悩ませ続けてきた問題です.音声や形態は耳に聞こえたり目に見えたりする具体物で,分析しやすいのですが,意味は頭のなかに収まっている抽象物で,容易に分析できません.言語は意味を伝え合う道具だとすれば,意味こそを最も深く理解したいところですが,意味の研究(=意味論 (semantics))は言語学史のなかでも最も立ち後れています(cf. 「#1686. 言語学的意味論の略史」 ([2013-12-08-1])).
 しかし,昨今,意味を巡る探究は急速に深まってきています(cf. 「#4697. よくぞ言語学に戻ってきた意味研究!」 ([2022-03-07-1])).意味論には様々なアプローチがありますが,大きく伝統的意味論と認知意味論があります.スクーリングの Day 4 では,両者の概要を学びます.



1. 意味とは何か?
  1.1 「#1782. 意味の意味」 ([2014-03-14-1])
  1.2 「#2795. 「意味=指示対象」説の問題点」 ([2016-12-21-1])
  1.3 「#2794. 「意味=定義」説の問題点」 ([2016-12-20-1])
  1.4 「#1990. 様々な種類の意味」 ([2014-10-08-1])
  1.5 「#2278. 意味の曖昧性」 ([2015-07-23-1])
2. 伝統的意味論
  2.1 「#1968. 語の意味の成分分析」 ([2014-09-16-1])
  2.2 「#1800. 様々な反対語」 ([2014-04-01-1])
  2.3 「#1962. 概念階層」 ([2014-09-10-1])
  2.4 「#4667. 可算名詞と不可算名詞とは何なのか? --- 語彙意味論による分析」 ([2022-02-05-1])
  2.5 「#4863. 動詞の意味を分析する3つの観点」 ([2022-08-20-1])
3. 認知意味論
  3.1 「#1961. 基本レベル範疇」 ([2014-09-09-1])
  3.2 「#1964. プロトタイプ」 ([2014-09-12-1])
  3.3 「#1957. 伝統的意味論と認知意味論における概念」 ([2014-09-05-1])
  3.4 「#2406. metonymy」 ([2015-11-28-1])
  3.5 「#2496. metaphor と metonymy」 ([2016-02-26-1])
  3.6 「#2548. 概念メタファー」 ([2016-04-18-1])
4. 本日の復習は heldio 「#451. 意味といっても様々な意味がある」,およびこちらの記事セットより




[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow