
5月22日(金)よりスタートしていました,6月10日発売の新刊『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』の発売前大イベント「『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙」 (in Slido) ですが,5月26日(火)の 23:59 をもちまして,予定通りに投票を締め切りました.最終的な投票総数は96件にのぼりました.深夜のラストスパートにかけて票を投じてくださった皆さん,そしてSNS等でこのお祭りを一緒に盛り上げてくださったすべての方々に,著者として心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
一昨日お届けした中間報告の記事「#6238. 今晩投票締切 --- 『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙,現在大激戦中」 ([2026-05-26-1]) では,2位グループの凄まじいデッドヒートの様子をお伝えしましたが,その後,どのような結末を迎えたのでしょうか.お待たせいたしました.ここに最終結果の確定順位と得票率を,降順にてご報告いたします.皆さんの「推し疑問」がどこに着地したのか,ぜひお確かめください.
1位:問5. なぜ3単現の s をつけるのか (38%)
2位:問9. なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか (21%)
3位:問7. なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形で表すのか (19%)
3位:問21. アルファベット最後の文字 Z のミステリー (19%)
5位:問20. どのように単語ごとのアクセントの位置が決まるのか (18%)
6位:問1. なぜ英語の語順は SVO なのか (16%)
6位:問3. なぜ存在を表すのに There is/are .... という構文を使うのか (16%)
6位:問4. なぜ疑問文に do が現れるのか (16%)
9位:問2. なぜ英語の文には主語が必要なのか (15%)
9位:問8. なぜ仮定法では if I WERE a bird となるのか (15%)
11位:問15. なぜIは大文字で書くのか (11%)
11位:問24. 単数の they とは何か (11%)
13位:問12. なぜ go の過去形は went になるのか (10%)
13位:問17. なぜ know や high には発音されない文字があるのか (10%)
15位:問6. なぜ will を使って未来を表すのか (8%)
15位:問14. なぜAの読みは「アー」ではなく「エイ」なのか (8%)
17位:問13. なぜ形容詞の比較級には -er と more があるのか (6%)
17位:問16. 「マジック e」とは何か (6%)
19位:問18. なぜ one, two はこのスペリングでこの発音なのか (5%)
19位:問22. なぜ英語には類義語が多いのか (5%)
19位:問23. なぜ英語には省略語が多いのか (5%)
22位:問19. なぜ eleven, twelve というのか (4%)
23位:問11. なぜ child の複数形は children になるのか (3%)
24位:問10. なぜ foot の複数形は feet になるのか (2%)
いかがでしょうか.最終結果を眺めてみますと,中間発表からの数時間でさらなるドラマが生まれていたことが分かります.
まず,栄えある第1位に輝いたのは「問5. 3単現の s」でした.得票率38%で,他を寄せ付けない圧倒的な強さで王座に君臨しました.まさに本書のタイトルにふさわしい,英語学習者にとって最大の謎であることが証明された形です.
そして,最も注目すべきは2位以下の大激戦の結末です.中間報告で21%の同率2位に並んでいた三つ巴の争いから,頭一つ抜け出したのは「問9. -ing」でした.単独2位を死守したその背景には,文法上の役割が異なるのに形が同じであることへの,根深いモヤモヤ感があったのでしょうか.一方で,受験英語の定番「問7. 時・条件の副詞節」は,後半で怒涛の追い上げを見せた「問21. 文字 Z のミステリー」に捕らえられ,19%で同率3位という結果になりました.Z の謎がここまで上位に食い込んでくるとは,正直なところ著者としても予想していませんでした.文字・綴字史のロマンが皆さんに伝わったということなのかもしれません.
対照的に,英語史の定番中の定番である「問12. went の謎」 (10%) や「問11. children の謎」 (3%),「問10. feet の謎」 (2%) といった不規則変化の面々は,最終的にも下位グループに沈むことになりました.これらは一見すると風変わりな不規則変化にすぎませんが,その向こう側には壮大な英語史のカラクリが潜んでいます.本書では,その奥深さが伝わるのではないかと期待しています.
今回の総選挙で上位にランクインした話題については,本書の発売を待つことなく,今後の Voicy heldio にて「先出し深掘り解説」としてお届けしていく予定です.どの疑問の背後にどのようなダイナミックな歴史が隠されているのか,ぜひ楽しみにお待ちください.
今回の総選挙を通じて,皆さんと一緒に英語史のビッグウェーブをさらに高く大きくできたことを,重ねて感謝いたします.6月10日の新書発売に向けて,ここからさらにお祭りムードを加速させていきます.
特典(1節分の書き下ろし)もついてくる Amazon での予約注文にて本書をご予約いただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

5月22日(金)よりスタートした,6月10日発売の新刊『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』の発売前の大イベント『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙」 (in Slido) ですが,最終投票日の本日までに多くの票(お1人3票まで)を投じていただいています.すでにご投票いただいた皆さん,本当にありがとうございます.
投票締切は本日5月26日(火) 23:59 です.残り時間が少なくなってきましたが,今朝の 00:10 現在の最新中間結果(得票率)を,皆さんにどこよりも早く公開いたします(Slido では投票済みの方は現時点での結果を見ることができる仕様です).
24項目のスタンダードな「英語に関する素朴な疑問」が,現在どのようなデッドヒートを繰り広げているのか,まずはその生々しい順位と得票率をご覧ください.
1位:問5. なぜ3単現の s をつけるのか (37%)
2位:問7. なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形で表すのか (21%)
2位:問9. なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか (21%)
2位:問20. どのように単語ごとのアクセントの位置が決まるのか (21%)
5位:問4. なぜ疑問文に do が現れるのか (19%)
6位:問8. なぜ仮定法では if I WERE a bird となるのか (18%)
7位:問3. なぜ存在を表すのに There is/are .... という構文を使うのか (16%)
7位:問21. アルファベット最後の文字 Z のミステリー (16%)
9位:問2. なぜ英語の文には主語が必要なのか (15%)
10位:問17. なぜ know や high には発音されない文字があるのか (14%)
11位:問1. なぜ英語の語順は SVO なのか (12%)
12位:問12. なぜ go の過去形は went になるのか (8%)
12位:問15. なぜIは大文字で書くのか (8%)
12位:問16. 「マジック e」とは何か (8%)
12位:問24. 単数の they とは何か (8%)
16位:問6. なぜ will を使って未来を表すのか (7%)
16位:問22. なぜ英語には類義語が多いのか (7%)
18位:問13. なぜ形容詞の比較級には -er と more があるのか (5%)
18位:問14. なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なのか (5%)
18位:問18. なぜ one, two はこのスペリングでこの発音なのか (5%)
21位:問11. なぜ child の複数形は children になるのか (4%)
22位:問10. なぜ foot の複数形は feet になるのか (3%)
22位:問19. なぜ eleven, twelve というのか (3%)
22位:問23. なぜ英語には省略語が多いのか (3%)
いかがでしょうか.現時点での中間結果を見て,著者としても非常に興味深い発見がいくつもあります.
まず首位を独走しているのは,本書のタイトル・副題にも掲げ,先日のNHK出版デジタルマガジンの無料公開記事(すでに3万回閲覧突破)でも反響を呼んでいる「問5. 3単現の s」です.37%という圧倒的な得票率で,王者の風格を漂わせています.
しかし,凄まじいのは2位グループのデッドヒートです.受験英語の呪文の代表格「問7. 時・条件を表わす副詞節」,役割は異なるのに同形の「問9. -ing」,不規則きわまりない英単語の「問20. アクセントの位置」に関する3つの疑問が21%という同率の数字で並び,激しく火花を散らしています.確かに,英語学習者の皆が感じてきたモヤモヤが集まっている感じがします.
一方で,英語史ネタの定番ともいえそうな「問12:went の謎」 (8%) や「問10:feet の謎」 (3%),「問11:children の謎」 (4%) といった不規則変化のトリオが,現時点では意外にも下位グループに甘んじています.これはまだ,これらの不規則変化の向こう側に潜む壮大な英語史のカラクリが世の中に知られていないということなのか何なのか.
改めて,今回の総選挙の投票期間は,本日26日(火)の 23:59 までです.投票が締め切られましたら,近々に最終結果の大発表を Voicy heldio にて行います.そして,上位に輝いた疑問については,本書の発売前に先出し深掘り解説を行ないたいと思います.
まだ投票を迷っている皆さん,あるいはすでに投票を終えた皆さん,あなたの,あるいはあなたの知り合いの方々の3票が投じられれば,この大混戦の2位グループから頭一つ抜け出させることも,下位に沈んでいる推しの疑問を上位にごぼう抜きさせることも十分に可能です.どの話題が上位をさらっていくのかは,残り数時間の皆さんの投票にかかっています.
アカウント不要,匿名で1タップで即完了する投票会場はこちらです↓
・ Slido の投票会場
今晩の投票締切に向けて,皆さんと一緒に英語史のビッグウェーブをさらに高く大きくしていければと思います.皆さんのラストスパートのご投票を心よりお待ちしています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

来たる6月10日(水)にNHK出版新書として刊行される拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』の一般発売まで,あと19日となりました.おかげさまで5月11日の「予約爆撃アワー」以降も大変な反響をいただいており,Amazon 新着ランキングの「英語」部門でも第1位をキープし続けています.いろいろな形で本書を応援してくださっている皆さんに,心より感謝申し上げます.
また,5月11日に「NHK出版デジタルマガジン」で無料公開された本書の一部(第1章第5節「なぜ3単現の s をつけるのか」)が,なんと3万回閲覧されているとの内々のニュースも飛び込んできました.発売前にしてこれほど多くの方が「3単現の s」という理不尽(に見える)ルールにモヤモヤを抱え,そして英語史の視点に興味を寄せてくださっている事実に,著者として興奮を隠せません.
この熱量をさらに大きな「お祭り」へと昇華させるべく,本日5月22日(金)から5月26日(火)までの5日間,様々なプラットフォーム(hellog, heldio, note, heltube, X, Instagram)を巻き込んだ一大イベントを打ち上げます!
題して「『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙 --- あなたのベスト3はどれ?」です.
本書には,誰もが一度は首をかしげたことのある「英語に関する素朴な疑問」が24個,スタンダード集であるかのように,ギッシリと詰まっています.以下にその全24項目(本書の各節のタイトルに対応します)をズラリと並べてみます.皆さんのベスト3の疑問を選んでください.何をもって「ベスト」とするかは,皆さんそれぞれの判断でかまいません.「昔これが知りたかった!」「今もこれに苦しめられている!」「一番気になる!」「この謎についてもっと深掘り解説してほしい」「謎の答えは知っているけれども,その答えがエキサイティング!」等々.
1. なぜ英語の語順は SVO なのか
2. なぜ英語の文には主語が必要なのか
3. なぜ存在を表すのに There is/are .... という構文を使うのか
4. なぜ疑問文に do が現れるのか
5. なぜ3単現の s をつけるのか
6. なぜ will を使って未来を表すのか
7. なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形で表すのか
8. なぜ仮定法では if I WERE a bird となるのか
9. なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか
10. なぜ foot の複数形は feet になるのか
11. なぜ child の複数形は children になるのか
12. なぜ go の過去形は went になるのか
13. なぜ形容詞の比較級には -er と more があるのか
14. なぜAの読みは「アー」ではなく「エイ」なのか
15. なぜIは大文字で書くのか
16. 「マジック e」とは何か
17. なぜ know や high には発音されない文字があるのか
18. なぜ one, two はこのスペリングでこの発音なのか
19. なぜ eleven, twelve というのか
20. どのように単語ごとのアクセントの位置が決まるのか
21. アルファベット最後の文字 Z のミステリー
22. なぜ英語には類義語が多いのか
23. なぜ英語には省略語が多いのか
24. 単数の they とは何か
この24項目の中から,あなた自身のベスト3を選んで,こちらの Slido の投票会場からポチポチポチッと投票してください.アカウント取得などの面倒は一切不要です.1タップで匿名投票でき,現在の得票結果もリアルタイムでグラフ化されてその場で見ることができます.
今回の総選挙の得票結果は,現在展開中の「X(旧Twitter)での発売前カウントダウン企画(NHK出版公認・本書プレゼント企画)」の集計とも連動いたします.X アカウントをお持ちの方は,Slido で投票した番号とコメントなどを,私の X アカウントのこちらの総選挙告知ポストへリプライ(あるいは #なぜさんたんげん を付けてポスト)していただければ,プレゼント企画の選考対象とさせていただきます.また,note クリエイターの皆さまにおかれましては,気になる疑問について「#なぜさんたんげん」を付けて note 記事を書いていただければ,先日新設した note 公式マガジン『なぜさんたんげん』応援記事集にどんどん集約(採用)させていただきます.
今回の総選挙の投票期間は,本日5月22日(金)より5月26日(火)の 23:59 までとします.
投票期間が終了しましたら,総選挙最終結果の大発表を行い,上位に輝いた疑問について,本書発売前に「先出し深掘り解説」を行いたいと考えています.
全プラットフォームのヘルメイトの皆さまの熱き清き1票(実際には1人3票まで選べます)をお待ちしています.ぜひご家族,ご同僚,ご友人,ご近所の方々,先生方や生徒たちなどもお誘い合わせの上,総選挙にご参加ください.皆さんと一緒に「英語史をお茶の間に」届けるビッグウェーブを作っていければと思います.

・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
1ヶ月後の2026年6月10日(水),NHK出版より拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が刊行されます.初の新書出版であり,編集担当の方と二人三脚で時間をかけて作り上げた思い入れの深い1冊となります.本書は,英語を学んでいる,あるいは教えているすべての方にお届けしたい本となっています.英語の素朴な疑問 (sobokunagimon) は英語史が解決してくれる,この認識を世の中の当たり前にしたい,そんな思いを込めて作った本です.
発売まであと1ヶ月となった本日5月11日(月)の午後7時より,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて生配信をお届けします.題して「【ライヴ】近刊『英語史で解く 英文法の謎』予約爆撃アワー」です.この生配信中に,リスナーの皆さんに Amazon より一斉に予約注文していただくことで,本書の注目度,そして英語史という分野の認知度を一気に高めようというお祭り企画です.Amazon 予約注文された方には特典もつきます.この特典についても,今晩,じっくりとお話しいたします.
19:00の生配信開始直後は,通信環境の確認を兼ねて数分間の雑談からスタートします.19:30くらいまでには,私のほうから新書の案内や予約注文の呼びかけなど,今回の企画の骨子をお話しする予定です.そして,生配信の目玉は19:30頃からのゲスト対談です.本書のもととなった連載記事の頃より編集を担当してくださったNHK出版の田中菜乃香さんにご登壇いただく予定です.田中さんには,連載記事や今回の新書の編集にまつわる逸話,編集者の立場から見た連載と新書の違い,さらには本書のタイトルの決定経緯や,著者である私への「今だから言えること」など,時間の許す限りたっぷりとお話を伺いたいと考えています.30分では収まりきらない予感もしていますが・・・
今晩の「予約爆撃アワー」企画については,昨晩公開した heltube (私のhel活 YouTube チャンネル)での動画,および今朝の heldio の配信回でも熱烈に広報を行なっています.ぜひそちらもチェックして,今晩のお祭りの気分を高めていただければ幸いです.
・ 昨晩公開した heltube 動画:「2026年5月11日(月)19:00より heldio 生配信で近刊の「予約爆撃アワー」を実施します」
・ 今朝公開した heldio 音声配信:「#1807. 今晩7時生配信,近刊書の「予約爆撃アワー」」
とりわけ前者の heltube 動画では,私が現在滞在中のスコットランド,アバディーンの様子も見ていただけます.町の南側を流れるディー川の河口付近,地元で Fittie と呼ばれる港の周辺を毎日ジョギングするのが日課となっています.北海に注ぐこの川の河口では,野生のイルカに遭遇することもあり,自然の豊かさを肌で感じながら過ごしています.その様子もご覧になりつつ,今晩7時の heldio 生配信への準備を整えていただければと思います.
「英語史をお茶の間に」を実現すべく,皆様の熱い「爆撃」をお待ちしています.今晩のライヴでは,ぜひコメント・質問等を投げ込んでいただけますと幸いです.今晩7時,heldio でお会いしましょう!
なお,今後の本書の広報に際して,ハッシュタグは #なぜさんたんげんの平仮名8文字で統一いたします.本書の応援,何卒よろしくお願いいたします.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
本日は重要なお知らせがあります.先日 Voicy heldio で「#1793. 新書が出ます!5月11日(月)の夕刻に予約爆撃アワー」としてお伝えしましたが,このたび初めて新書を上梓することになりました.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
発売日は1ヶ月少々先の6月10日(水)です.GWが終わり,今週末が明けて5月11日(月)辺りが,ちょうど発売の1ヶ月前となりますので,そのタイミングで近刊書に関する様々な情報開示を始めていきたいと考えています.
まずは,5月11日の夕刻に,Voicy heldio の生配信で「予約爆撃アワー」企画を打ち上げます.生配信をお聴きになりながら,ぜひそのタイミングで Amazon より本書を予約注文していただき,注目度を高めるのにご協力いただけますと幸いです.生配信では,本書についてももろもろご紹介したいと思います.
すでに Amazon の予約受付は始まっていますが,ぜひ5月11日の夕刻の「お祭り」の時間までお待ちください.なお,Amazon から予約いただいた方は,発売後にある「特典」を受け取ることができます.そちらもご期待ください.
近刊書のベースとなっているのは,2021--2022年度のNHKテキスト『中高生の基礎英語 in English』において毎月掲載されていた連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」です.その原稿に大幅な加筆・修正を施し,このたび新書化しました.英語を学び直している社会人の方から,日頃英語教育に携わっている先生方,英語史という分野に初めて触れるという方まで,幅広く読んでいただける1冊に仕上がりました.「英語に関する素朴な疑問」に英語史の観点から答えるスタンダード編というべき本となっています.
タイトルにも掲げた「3単現の s」 (3sp) は,英語学習者が最初期に出会う英文法の謎の代表格ですね.なぜ主語が3人称・単数で,文の時制が現在のときにだけ,わざわざ -s をつけなければならないのか.なぜ他の人称などでは,つける必要がないのか.こうした素朴な疑問に対して,英語史の視点から光を当てることで,一見不条理に見える英文法のルールがいかにして形成されてきたのかを解説していきます.本書には,3単現の -s 以外にも,英語史的な知見から英文法の謎をスッキリ解決するトピックを凝縮して詰め込んでいます.
近刊書に関連する話題は,今後,hellog, heldio, YouTube, X などのメディアでたっぷりお届けしていく予定です.その皮切りとなるのが,5月11日(月)夕刻の「予約爆撃アワー」企画となります.ぜひスケジュールを空けて生配信をお待ちいただければ幸いです.また,当日の聴き逃しのないよう,この機会にぜひ「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」をフォローしていただけますと幸いです.本書の出版をきっかけに,皆さんと一緒にますます英語史を盛り上げていければと思います.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

新年度が始まりました.英語史の学び始めにふさわしいこの時期,本日は数日後の英語史講座のご案内を致します.
来たる4月11日(土)と12日(日)2日間にわたり,オンラインにて東京言語研究所の春期講座が開講されます.同研究所は,私が学生の頃から憧れをもって仰ぎ見ていた伝統ある言語学の研究・教育機関であり,ここ数年は私も講師として登壇させていただく機会を得ております.
春期講座は,2日間にわたる単発講義のオムニバスです.今年度,私は2日目の4月12日(日)の1限目(10:00--11:20)にて「英語史入門」を担当します.内容は「80分で英語史」です.実は私にとってこれは大きな挑戦です.
普段の大学の講義や,同研究所で担当する10回ほどのシリーズとなる理論言語学講座では,時間をかけてじっくりと英語の歴史を紐解いていきます.しかし,今回はそれをギュッと凝縮した80分間のダイジェスト版となります.1600年以上にわたる英語のダイナミズムをこの短時間でどう描き切るか,現在も最終段階の構成を練りながら,私自身が緊張しつつもワクワクしているところです.
講義の核となるのは,外面史を用いて内面史を解説するという試みです.発音の変化,綴字の変遷,文法の転換,そして語彙の拡大など.これらをバラバラに扱うのではなく,現代英語に潜む「なぜ?」という素朴な疑問を入口に,英語史全体のパノラマが見えてくるような網羅的な内容を目指します.
今回の春期講座では,魅力的な講義が勢揃いしています.heldio にもご出演いただいた嶋田珠巳先生先生(社会言語学)の講座は1日目に予定されています.言語学ファンにとってはたまらない2日間となるはずです.
なお,今年度の秋のシーズンには,同研究所にてシリーズの英語史講座(10週)も担当する予定です.今回の80分間の講義は,そのエッセンスを味わっていただくためのジャンプ台として位置づけています.
いずれもオンライン開催ですので,全国どこからでも,あるいは目下の私のように海外からでも(時差には注意が必要ですが!)ご参加いただけます.後日配信はありませんが,リアルタイムでの充実した議論を楽しみましょう.
申込期限は4月6日(月)の午前10時までとなっています.詳細およびお申し込みは,東京言語研究所の公式HPよりどうぞ.
(以下,後記:2026/04/03(Fri))
本記事と同じ趣旨で,4月3日の heldio にて「#1769. 「80分で英語史」 --- 4月12日に東京言語研究所の春期講座で」をお届けしましたので,ぜひそちらもお聴きいただければ.

先月,2026年2月は,知識共有プラットフォーム mond に寄せられた10件の問いに回答しました.今月も英語史の奥深さを感じさせる鋭い質問が並び,回答する側としても知的な刺激を多くいただいた1か月となりました.
2月の回答を振り返ってみると,話題や分野が多岐にわたっていました.音韻論,形態論,統語論,語用論,語彙論の問い,そして他言語との比較対照から生じた疑問等が寄せられ,多様で刺激的な問答となりました.とりわけ音韻論と形態論が関わる語形成の話題が多かったように思われます.
以下に2月分の10の問いと,対応する mond の回答へのリンクを時系列で示します.未読のものがありましたら,英語史の読み物として楽しんでいただければ.
1. foremost, hindmost の most はなにゆえ後ろについているのでしょうか?(2月3日)
2. 2人称代名詞の親称 thou と敬称 ye の使い分けがまだ健在であった時代の英語では,キリスト教の神に言及するときには thou と ye のどちらを用いましたか?(2月5日)
3. 「ねる」が「ねんね」になるように頭の1音を2回くりかえすタイプの名詞は英語にはありますか?(2月8日)
4. 研究社『英語語源辞典』にて.dusk 「黄昏」の項を引くと,ME dusk(音位転換) < OE dox < Gmc *duskaz と書いてありました.これってつまり,二重に音位転換が起こって,ひっくり返ったものがさらに元へ戻ったということなのでしょうか? 1回の音位転換はよく聞かれますが,2回連続というのはすごく珍しい例なのではないでしょうか!?(2月13日)
5. 英語では語末の -ng, -mb の g, b が発音されず鼻音だけになっていますが,-nd もいったんは [n] だけになりゆりもどした感じですか?(2月15日)
6. ドイツ語では名詞 + -ig による形容詞に -en をつけて動詞化することができますが,英語の名詞 + -y ではできません.これはドイツ語が拡大的であるのか,英語のほうだけ廃れたのかどちらなのでしょうか?(2月17日)
7. なぜ英語では直説法,仮定法ぐらいしか「法」とつくものがないのでしょうか?(2月19日)
8. ma'am は2つの a の間の d が脱落した語形ですが,英語は母音の間の d は明瞭に発音する言語のはずです.この d の脱落した語形の変則性について歴史的に解説をお願いします.(2月21日)
9. Say は say that SV や say "~" のように発言内容を目的語にとることができますが,say me のように人を目的語にとることはできません.したがって,人を主語にした受動態の文は作れないことになります.しかし,「~だと言われている」という意味で,S is said to V という表現は許容されています.例:She is said to be a nurse. 「彼女は看護師だと言われている.」 これはなぜでしょうか.(2月23日)
10. people が person の複数形の単なる代用になったのはいつですか?(2月25日)
とりわけ印象的だったのは,4番目の dusk における2重の音位転換 (metathesis) に関する質問です.ゲルマン祖語の *duskaz が古英語までに dox と音位転換を起こし,さらに中英語以降に再び dusk へと音位転換するプロセスは,一見すると元に戻ったようで,珍しい例と考えられるかもしれません.しかし,回答では,実際にはそれほど珍しいことではないことや,言語の変化と変異の複雑さにも言い及びました.実際,この問答を紹介した X 投稿10問のなかで最も多くの反響をいただきました.この問答からは,言語変化の機微に関する議論が発展し,heldio にて「#1731. 定説は受け入れるのではなく受け止める,そして定説の根拠を学べ」や「#1730. 「A→B」という言語変化の矢印のなかを覗き込むと,そこは魑魅魍魎のうごめく世界」をお話するに至りました.ぜひそちらもお聴きください.
また,2番目の神に対して thou と ye のいずれを用いたのかという問題も,英語史における代名詞の親称・敬称の歴史を考える上で欠かせない論点で,関心が集まりました.
7番目の,英語における「法」の少なさに関する質問も注目を集めました.他言語の観点から英語をみると,質問の幅も広がっておもしろいですね.

先月,2026年1月は,知識共有プラットフォーム mond に寄せられてきた10の問いに回答しました.
綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) に関する話題が5問あり,この分野への関心の高さが窺われます.そのほか,構文の意味や歴史の話題,比較言語学的な問いなど,エキサイティングなトピックが並びました.
とりわけ反響が大きかったのは,7番目のAI時代におけるコーパス言語学の意義に関する問答です.タイムリーな論点でもあり,私としても英語史研究者・歴史言語学者の立場から,この問いに真剣に向き合ってみた次第です.専門内外の方々から多くの反応をいただき,たいへん嬉しく思います.
鋭い質問をお寄せいただいた皆さん,ありがとうございました.以下に時間順に10の問いと,対応する mond の問答へのリンクを張ります.ぜひ未読の問答がありましたら,お読みいただければ.また,mond で回答した話題について,本ブログで補足したり掘り下げる機会もよくありますので,mond タグより訪れてみてください.
1. would you be kind enough to 不定詞 「あなたは to 不定詞するのに十分なほど親切である可能性が万が一ながらあるでしょうか?」は,相手にお前は親切かと尋ねている時点でかなり不遜な表現だと思うのですが,それは質問者が日本人だからでしょうか?
2. gaol ジェイルの変則的なつづりの由来について教えてください.この ao の o は何ですか?
3. climb や bomb など,語末に黙字を持つ場合,ing, er など(動詞の場合)や er, est など(形容詞の場合)を付してもなお読まないままのはどうしてなのでしょうか.
4. 古風な英語では船を she で受けるそうですが、これは古英語の scip (中性名詞)とは関係ない、比較的最近の慣習であると先生のブログで拝見しました。ところでラテン語では女性名詞 navis,ギリシア語でも女性名詞 ναυς です.このような古典語からの影響の可能性はどれほどあるのでしょうか?
5. salmon はつづりに l があるのに l を発音しないことからして,16--17世紀あたりのつづりと発音の混乱が影響している臭いがします.salmon の発音と表記の歴史について教えてください。
6. 英語の Rome の o は二重母音 [ou] を持っていますが,古英語の長母音oは現代語で [u:] になるはずなので,この語は古英語からロームと発音されたのではない,中英語以降の再度の借用語なのでしょうか?
7. 今後特定のジャンルごとにその様式にそった文を出力するAIが発達し,多くの人がそれを利用するようになり,文を人間が作るのでなくAIの作った文を追認するようになった時代において,言語学の一分野であるコーパス言語学というものは学問としての意味をなしうるでしょうか?
8. language の gu は [gw] と発音されますが,フランス語は gu は後代のラテン語の借用語を除いて [g] です.これは often オフトンと同じタイプの綴り字発音ということですか?
9. as ... as 構文の歴史について教えてください.
10. 英語とドイツ語は同じゲルマン系統の言葉なのに,英語には単語別の性別が無いのはどうしてですか?
mond での質問受付についてお知らせがあります.先日の hellog 記事「#6105. mond での質問受付方式を変更します --- スーパーレター(優先パス)の導入」 ([2026-01-13-1]) でお伝えした通り,mond の「スーパーレター」(有料質問)機能を「回答の優先パス」として位置づけることにしています.数ある質問の中から,スーパーレターとしていただいたものを優先的に検討させていただきます(確約ではありませんが,回答の可能性は格段に高まります).もちろん,従来の無料での質問も引き続き歓迎いたしますので,ぜひ鋭い質問をお寄せください.
昨日の記事「#6126. goodbye の最後の e は何?」 ([2026-02-03-1]) に引き続き,goodbye に関する話題.goodbye の起源は,God be with you という祈願文が挨拶表現として高頻度で使われるうちに短縮してしまったものとされる.OED によると,語源欄に次のように記述がある.
Probably shortened partly < God be with you, and partly < God be with ye (see god n. & int. Phrases P.1c.i.ii, and the note below), with substitution of good adj. for god n. as the first element, probably by association with other greeting formulae, e.g. good day n., good day int., goodnight n., goodnight int.
記述を読み進めていくと,16世紀後半からは2人称代名詞が you ではなく ye のケースもあり得たこと,またさらに古くは前置詞が with ではなく mid の例もあったことが触れられている.
さらに,OED としては採用していないものの,もう1つの異説についても議論がなされている.
It has been suggested (W. Franz, 'Good-bye', in Engl. Studien (1898) vol. 24 344-6) that the phrase may have originated as a shortening of God buy you 'God redeem you' (compare buy v. I.3b, and also God save you! at save v. Phrases P.2b), and that association with God be with you is of later date. Although this suggestion would more readily explain the diphthong in the second syllable, it is not supported by the earliest forms (compare the α forms). Some of the β forms with buy do, however, appear to result from later secondary association with buy v.; this association may also have influenced the pronunciation.
OED としては,初出年代の観点から God buy you 説を民間語源や解釈語源とみなしており,積極的には受け入れていないことになる.ただし,現在の goodbye の第2音節の2重母音を間接的に説明するものとして,部分的な関与の可能性は示唆している.
「#4384. goodbye と「さようなら」」 ([2021-04-28-1]) で,挨拶表現 goodbye の語源周りの話題を取り上げた.いくつかの点で問題含みの表現であることをみたが,綴字の観点からは,なぜ語末に e が付いているのかが気になる.
Carney (153) では,e それ自体の問題というよりも ye という組み合わせに注目しつつ,次のような解説があった.
Final <-ye> occurs irregularly in a few §Basic words. Dye, lye ('soda'), rye, compared with sky, dry, wry, etc. are bulked up with <e> to three letters (the 'short word rule', p. 131). Similarly lexical bye is differentiated from the function word by. Dye and lye are differentiated from the much more common die and lie in present-day spelling, but in earlier centuries there was some free variation between the <ie> and <ye> spellings.
Carney の見解によると,bye の語末の e 付加は,英語正書法における「#2235. 3文字規則」 ([2015-06-10-1]) で説明されるという.内容語は最低3文字で綴られなければならないというルールだ.この表現における bye は単独での語源や意味が何であろうとも,good という形容詞の後に来ている点でいかにも名詞らしい,すなわち内容語らしい.一方,同音異義語の by は前置詞であり,機能語である.この差を出すためにも,そして前者について3文字規則に抵触しないためにも,前者にダミーの e を付すのが適切な解決策となる.
あるいは,この挨拶表現の原型とされる God be with you/ye. の ye の亡霊が bye に隠れていると想像を膨らませてみたいですか? 想像するのは自由で楽しいですね!
・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.
昨日の記事「#6118. salmon の l はなぜ発音されないのですか? --- mond の質問」 ([2026-01-26-1]) では,salmon (鮭)の黙字 l の背景にある語源的綴字 (etymological_respelling) の問題を取り上げました.今回は,その関連で,よく似た経緯をたどりながらも現代では異なる結果となっている falcon (ハヤブサ)について話しをしましょう.
falcon も salmon と同様,ラテン語 (falcōnem) に由来し,古フランス語 (faucon) の諸形態を経て中英語に入ってきました.したがって,当初は英語でも l の文字も発音もありませんでした.ところが,16世紀にラテン語綴字を参照して <l> の綴字が人為的に挿入されました.ここまでは salmon とまったく同じ道筋です.
しかし,現代英語の標準的な発音において,salmon の <l> が黙字であるのに対し,falcon の l は /ˈfælkən/ や /ˈfɔːlkən/ のように,綴字通りに /l/ と発音されるのが普通です.これは,綴字の発音が引力となって発音そのものを変化させた事例となります.
ところが,事態はそう単純ではありません.現代の発音実態を詳しく調べてみると,興味深い事実が浮かび上がってきます.LPD3 に掲載されている,英米の一般話者を対象とした Preference Poll の結果を見てみましょう.

圧倒的多数が /l/ を発音していますが,英米ともに3%ほどの話者は,現在でも /l/ を響かせない /ˈfɔːkən/ などの古いタイプの発音を使用していることが確認されます.この場合の <l> は黙字となります.さらに興味深いのは,CEPD17 の記述です.この辞書には,特定のコミュニティにおける慣用についての注釈があります.
Note: /ˈfɔː-/ is the usual British pronunciation among people who practise the sport of falconry, with /ˈfɔː-/ and /ˈfɔːl-/ most usual among them in the US.
鷹匠の間では,イギリスでは /l/ を発音しない形が普通であり,アメリカでもその傾向が見られるというのです.専門家の間では,数世紀前の伝統的な発音が「業界用語」のように化石化して残っているというのは興味深い現象です.
では,歴史的に見てこの <l> の綴字はいつ頃定着したのでしょうか.Hotta and Iyeiri では,EEBO corpus (Early English Books Online) を用いて,初期近代英語期における falcon の綴字変異を詳細に調査しました.その調査によれば,単数形・複数形を含めて,以下のような37通りもの異形が確認されました (147) .<l> の有無に注目してご覧ください.
falcon, falcons, faulcon, faucon, fawcons, faucons, fawcon, faulcons, falkon, falcone, faukon, faulcone, faukons, falkons, faulcones, faulkon, faulkons, falcones, faulken, fawlcon, fawkon, faucoun, fauken, fawcoun, fawken, falken, fawkons, fawlkon, falcoun, faucone, faulcens, faulkens, faulkone, fawcones, fawkone, fawlcons, fawlkons
まさに百花繚乱の様相ですが,時系列で分析すると明確な傾向が見えてきます.論文では次のようにまとめています (152) .
FALCON is one of the most helpful items for us in that it occurs frequently enough both in non-etymological spellings without <l> and etymological spellings with <l>. The critical point in time for the item was apparently the middle of the sixteenth century. Until the 1550s and 1560s, the non-etymological type (e.g., <faucon> and <fawcon>) was by far the more common form, whereas in the following decades the etymological type (e.g., <faulcon> and <falcon>) displaced its non-etymological counterpart so quickly that it would be the only spelling in effect at the end of the century.
つまり,16世紀半ば(1550年代~1560年代)が転換点でした.それまでは faucon のような伝統的な綴字が優勢でしたが,その後,急速に falcon などの語源的綴字が取って代わり,世紀末にはほぼ完全に置き換わったのです.
salmon と falcon.同じ時期に同じような動機で l が挿入されながら,一方は黙字となり,他方は(専門家を除けば,ほぼ)発音されるようになった.英語の歴史は,こうした予測不可能な個々の単語のドラマに満ちています.
falcon について触れている他の記事もご参照ください.
・ 「#192. etymological respelling (2)」 ([2009-11-05-1])
・ 「#488. 発音の揺れを示す語の一覧」 ([2010-08-28-1])
・ 「#2099. fault の l」 ([2015-01-25-1])
・ 「#5981. 苅部恒徳(編著)『英語固有名詞語源小辞典』(研究社,2011年)」 ([2025-09-11-1])
・ Wells, J C. ed. Longman Pronunciation Dictionary. 3rd ed. Harlow: Pearson Education, 2008.
・ Roach, Peter, James Hartman, and Jane Setter, eds. Cambridge English Pronouncing Dictionary. 17th ed. Cambridge: CUP, 2006.
・ Hotta, Ryuichi and Iyeiri Yoko. "The Taking Off and Catching On of Etymological Spellings in Early Modern English: Evidence from the EEBO Corpus." Chapter 8 of English Historical Linguistics: Historical English in Contact. Ed. Bettelou Los, Chris Cummins, Lisa Gotthard, Alpo Honkapohja, and Benjamin Molineaux. Amsterdam: Benjamins, 2022. 143--63.
salmon はつづりに l があるのに l を発音しないことからして,16~17世紀あたりのつづりと発音の混乱が影響している臭いがします.salmonの発音と表記の歴史について教えてください.
知識共有プラットフォーム mond にて,上記の質問をいただきました.日常的な英単語に潜む綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) に関する疑問です.
結論から言えば,質問者さんの推察は当たっています.salmon の l は,いわゆる語源的綴字 (etymological_respelling) の典型例であり,英国ルネサンス期の学者たちの古典回帰への憧れが具現化したものです.
hellog でもたびたび取り上げてきましたが,英語の語彙の多くはフランス語を経由して入ってきました.ラテン語の salmō (acc. salmōnem) は,古フランス語で l が脱落し saumon などの形になりました.中英語期にこの単語が借用されたとき,当然ながら英語でも l は綴られず,発音もされませんでした.当時の文献を見れば,samon や samoun といった綴字が一般的だったのです.
ところが,16世紀を中心とする初期近代英語期に入ると,ラテン語やギリシア語の素養を持つ知識人たちが,英語の綴字も由緒正しいラテン語の形に戻すべきだ,と考え始めました.彼らはフランス語化して「訛った」綴字を嫌い,語源であるラテン語の形を参照して,人為的に文字を挿入したのです.
debt や doubt の b,receipt の p,そして salmon の l などは,すべてこの時代の産物です.これらの源的綴字は,現代英語に多くの黙字 (silent_letter) を残すことになりました.
しかし,ここで英語史のおもしろい(そして厄介な)問題が生じます.綴字が変わったとして,発音はどうなるのか,という問題です.綴字に引きずられて発音も変化した単語(fault や assault など)もあれば,綴字だけが変わり発音は古いまま取り残された単語(debt や doubt など)もあります.salmon は後者のグループに属しますが,この綴字と発音のねじれた対応関係が定着したのは,いつ頃のことだったのでしょうか.
回答では,EEBO corpus (Early English Books Online) のコーパスデータを駆使して,salmon の綴字に l が定着していく具体的な時期(10年刻みの推移)をグラフで示しました.調査の結果,1530年代から1590年代にかけてが変化の中心期だったことが分かりました.1590年代以降,現代の対応関係が確立したといってよいでしょう.
回答では,1635年の文献に見られる,あるダジャレの例も紹介しています.また,話のオチとして「鮭」そのものではありませんが,この単語に関連するある細菌(食中毒の原因として有名なアレです)の名前についても触れています.
なぜ salmon は l を発音しないままなのか.その背後にある歴史ドラマと具体的なデータについては,ぜひ以下のリンク先の回答をご覧ください.

・ Hotta, Ryuichi and Iyeiri Yoko. "The Taking Off and Catching On of Etymological Spellings in Early Modern English: Evidence from the EEBO Corpus." Chapter 8 of English Historical Linguistics: Historical English in Contact. Ed. Bettelou Los, Chris Cummins, Lisa Gotthard, Alpo Honkapohja, and Benjamin Molineaux. Amsterdam: Benjamins, 2022. 143--63.

「#6099. heldio 2025年第4四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 1月13日までオープン」 ([2026-01-07-1]) でご案内したとおり,去る2025年の第4四半期(10月--12月)における Voicy heldio のベスト配信回を決めるリスナー投票(1人10票まで)を実施しました.1月13日をもって投票を締め切りました.年始のお忙しい中,25名の皆さんよりご投票いただきました.いつもながら熱い応援をいただき,ありがとうございました.
投票結果をまとめましたので,本記事にて報告いたします.本日の heldio でも「#1693. heldio 2025年第4四半期のリスナー投票の結果発表」として報告しているので,ぜひお聴きください.
今回は9月開催の「英語史ライヴ2025」の熱気が残る対談回や,khelf(慶應英語史フォーラム)メンバーによる書評回,そしてニュージーランド特集など,バラエティに富んだランキングとなりました.以下に上位(4%以上)の配信回を掲載します.
【 第1位(36%)】
「#1605. まさにゃん&川上の素朴な疑問に答えよう --- 「英語史ライヴ2025」にて have to と must の違いを徹底討論」
【 第2位(32%)】
「#1586. 名前×英語史 with 小河舜さん&青木輝さん --- 「英語史ライヴ2025」より」
「#1592. 声の書評 by khelf 泉類尚貴さん --- 滝沢直宏(著)『コーパスと英文法』(研究社,2017年)」
「#1632. ニュージーランド英語はどこから来たのか?」
【 第3位(28%)】
「#1642. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第24弾」
【 第4位(24%)】
「#1590. 声の書評 by khelf 木原桃子さん --- 武内信一(著)『英語文化史を知るための15章』(研究社,2009年)」
「#1591. 声の書評 by khelf 寺澤志帆さん --- 寺澤芳雄(著)『聖書の英語の研究』(研究社,2009年)」
「#1596. 声の書評 by 小河舜さん&疋田海夢さん --- 苅部恒徳(編著)『英語固有名詞語源小辞典』(研究社,2011年)」
「#1620. なぜ going to が「ゴナ」,want to が「ワナ」になるの? (1)」
【 その他(4%)】
「#1636. キュウリの酢漬け gherkin」
「#1637. 1890年前後のニュージーランド英語のコイネー化」
「#1638. 海をまたいで等語線」
「#1639. Speight's 醸造所より pump で水を汲んでいます」
「#1645. Helvillian 12月号が公開! --- 特集は「旅」」
「#1655. なぜ I was の短縮形はないの?」
「#1658. 12月20日の朝カル講座は one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」
「#1661. 言及数トップの英単語はアレ! --- 語源ハンドブック索引より」
「#1665. 拙著『はじめての英語史』の10刷が出ています --- コンパニオンサイトもどうぞ」
「#1666. クリスマス企画「英語史小ネタ50連発」がスタート --- 拙著『はじめての英語史』のプレゼントもあります」
「#1672. ラムステーキ丼とラムチョップ生姜焼き」
「#1676. 2025年のhel活もおおいに盛り上がりました --- リスナーの皆さんへの感謝を込めて」
2025年第4四半期の結果を振り返ってみましょう.まず,第1位に輝いたのは「#1605. まさにゃん&川上の素朴な疑問に答えよう --- 「英語史ライヴ2025」にて have to と must の違いを徹底討論」でした.「英語史ライヴ2025」での公開収録の模様をお届けした回ですが,have to と must という学習者にとっても身近なテーマを,まさにゃんと川上さんという heldio おなじみのメンバーが熱く,深く議論した点が評価されました.ライヴ感たっぷりの回でしたね.同じくライヴ関連では,第2位の「#1586. 名前×英語史 with 小河舜さん&青木輝さん --- 「英語史ライヴ2025」より」もランクインしており,イベントの余韻がランキングにも色濃く反映されています.
第4四半期の大きな特徴として特筆すべきは,khelf メンバーによる「声の書評」シリーズの躍進です.同率第2位の #1592 を筆頭に,第4位には #1590, #1591, #1596 と実に4本もの書評回が上位に食い込みました.これらも「英語史ライヴ2025」での企画でしたので,ライヴの勢いがいかに凄まじかったかが知られます.この書評シリーズは,英語史を専攻する大学院生や教員が,専門書や良書をリスナーに向けて丁寧に紹介するものでした.「本×音声×英語史」という組み合わせが,知的好奇心旺盛な heldio リスナーの皆さんに深く刺さった結果といえると思います.学びのコミュニティとしての khelf の成熟を感じさせます.
また,ランキングの随所に見られるのがニュージーランド関連の話題です.同率第2位の「#1632. ニュージーランド英語はどこから来たのか?」を筆頭に,投票獲得率4%の層には「#1637. 1890年前後のニュージーランド英語のコイネー化」や「#1638. 海をまたいで等語線」も入っています.これは私が第4四半期を通じて同国に滞在していたからで,その土地の言葉や文化を肌で感じて発信する「旅する英語史」の側面も楽しんでいただけたものと理解しています.
ほかには,第3位に入った「#1642. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第24弾」のような定番シリーズの安定感も見逃せません.また,「#1620. なぜ going to が「ゴナ」,want to が「ワナ」になるの? (1)」や「#1655. なぜ I was の短縮形はないの?」のような「英語の素朴な疑問」は heldio の原点であり,常に高い需要があることを再確認しました.
個人的には食レポシリーズの「#1672. ラムステーキ丼とラムチョップ生姜焼き」を上位4%に選んでいただけたのが嬉しいですね.
まとめると,2025年第4四半期は「ライヴ」「書評」「旅」という3つのキーワードに集約されるように思います.教室の中だけの英語史にとどまらず,外へ飛び出し,本を紐解き,仲間と語り合う.そんな動的な「hel活」の様子がランキングからも見えてきます.
2025年も1年間,heldio をお聴きいただきありがとうございました.2026年も,リスナーの皆さんの知的好奇心を刺激するような,多角的でディープな英語史の世界をお届けしていきたいと思います.引き続き,heldio をよろしくお願いいたします.
先月,2025年12月は,知識共有プラットフォーム mond に寄せられた疑問の計8件に回答しました.
受験勉強に励む高校生からの熱心な質問や,日常のふとした語彙の疑問,さらには日英語の表記体系の比較など,バラエティに富んだ問いが寄せられました.回答を作成する過程で,私自身も改めて英語の歴史や仕組みについて考えさせられることが多く,勉強になっています.質問をお寄せいただいた方々,ありがとうございました.
以下に時間順に8つの問いと,対応する mond の問答へのリンクを張ります.週末の読み物としてどうぞ.
1. 短縮形についに質問です.なぜ,I wasの短縮形が無いんですか?
2. 英語の受験勉強の傍ら,英文法史を学んでいる高三です.関係代名詞は代名詞なのですか? また,形容詞的に修飾するという説明は,英語史的に正しいのでしょうか?
3. recipe(作り方・調理法)という単語について質問します.この単語のつづり方から想像される発音は,i が二重母音で語末の e が読まない字・・と思うところですが,実際はそうではなく,特に語末の e も発音するのは英単語ではかなり珍しいと思います.どうしてこのような変な発音なのですか.
4. 形容詞と同形の副詞と,そこに -ly がついた副詞で意味が異なりますが,不思議です.どうしてこのようにややこしいことになったのでしょうか?
5. 付帯状況の「with O C」は どのようにして生まれたのですか?
6. God save the king. が,三単現であるべきところ,原形を用いた仮定法だと習いました.ならば,You eat sushi. ならば,「君よ寿司を食べ給へ」という意味にも,時と場合によってはなり得ますか?
7. nowadaysという語に関して二つ質問です.(1) nowadays には now"a"day"s" となぜ単数形を表す a と複数形を表す s がどちらもついているのでしょうか? (2) 同じような意味の語に recently がありますがなぜ nowadays は現在形に,recently は現在完了形に使うという棲み分けがなされたのでしょうか?
8. 日本語では,聞いて音が分かったが漢字の表記が分からない場合,とりあえず仮名で書くという方法をとることができますが,英語では綴りが分からないとそもそも書いて残すことができません.音は分かるが綴りが分からないときは,どう対処しているのですか.
とりわけ6番目の God save the king. と You eat sushi. を比較した質問は,仮定法現在の衰退と残存,そして祈願や命令の機能という英語史の大きなテーマに関わるユニークな話題でした.また,8番目の日本語の仮名表記と英語の綴字に関する問いは,文字論的な観点から非常に鋭い指摘を含んでおり,回答していて知的興奮を覚えました.おかげさまで良問答とも非常に大きな反響をいただきました.
さて,ここで mond での質問受付について重要なお知らせがあります.先日の hellog 記事「#6105. mond での質問受付方式を変更します --- スーパーレター(優先パス)の導入」 ([2026-01-13-1]) でお伝えした通りですが,mond の「スーパーレター」(有料質問)機能を「回答の優先パス」として位置づけることにしました.数ある質問の中から,スーパーレターとしていただいたものを優先的に検討させていただきます(確約ではありませんが,回答の可能性は格段に高まります).もちろん,従来の無料での質問も引き続き歓迎いたします.
以上,英語史というニッチな分野での発信活動を,無理なく,長く,そして楽しく続けていくための持続可能性を考慮した決断です.ご理解いただければ幸いです.2026年も,引き続き皆さんの素朴な疑問に答えていきたいと思います.

昨年後半のことになりますが、知識共有サービス mond を通じて私に寄せられた「英語に関する素朴な疑問」に回答した2つの記事が、X(旧Twitter)上でともに330万インプレッションを超えるという,まさかのお祭り騒ぎを経験しました.「英語史をお茶の間に」をモットーに英語史活動「hel活」 (helkatsu) を推進する身としては望外の喜びです.
ありがたいことに質問箱には日々多くの投稿が寄せられてきており,現在ではストックが380件近くに達しています.いただいた質問にはすべて目を通していますし,可能な限り答えたいという気持ちはやまやまなのですが,良質な回答を心がけており,数日に1件を取り上げるのが物理的な限界である,というのが正直なところです.
そこで,今後も質の高い回答を継続し,かつ活動を持続可能なものとするために,質問受付の方針を少し変更させていただくことにしました.
具体的には,mond の機能である「スーパーレター」(有料質問)を「回答の優先パス」として位置づけることにしました.これまでもスーパーレター機能自体はオンにしていましたが,今後はこれを「優先的に目を通し,回答を検討する」ためのチケットとして活用させていただきます.数ある質問の中から,スーパーレターとしていただいたものを優先順位の上位に置き,回答を心がけます(確約ではありませんが,可能性は格段に高まります).
ここで誤解のないように強調しておきたいのは,mond の仕様上,課金が発生するのは私が「回答した場合のみ」であるという点です.スーパーレターを送ったとしても,私が回答を作成せず(あるいはできず)に期間が過ぎれば,質問者の方に金銭的な負担は一切生じません.あくまで,膨大な質問の山の中から優先的にピックアップさせていただくための仕組み,あるいは私の専門性への対価として投げ銭を伴う「本気の質問」への優遇措置,と捉えていただければ幸いです.いただいた収益については「hel活」の維持・発展のために使わせていただきます.
もちろん,従来の無料での質問も引き続き大歓迎です.「ちょっと聞いてみたい」という気軽な疑問こそが,意外と学問的に深い問いを含んでいることも多いからです.ただし,こちらは上述の通りストックが積み上がっているため,私がその時の気分や関心に合わせて「気ままに」選ばせていただく,いわば「抽選」に近い形となります.運良く選ばれたらラッキー,くらいの感覚で投稿していただければと思います.これまで通り,おもしろい質問や,多くの英語学習者が共有しているであろう疑問には,無料・有料を問わず積極的に答えていくつもりです.
mond での回答作成は,私自身にとっても学びの多いプロセスとなっています.専門外の視点からの素朴な疑問にハッとさせられることもあれば,回答を書くために調べ直す過程で新たな知見が得られることもあります.
以上は,英語史というニッチな分野での発信活動を,無理なく,長く,そして楽しく続けていくための持続可能性を考慮した決断です.皆様から寄せられる熱意ある質問には,プロフェッショナルとして向き合いたいと考えています.そのための環境作りとして,ご理解いただければ幸いです.
質問は以下のリンクより受け付けています.英語の語源,文法,発音の歴史など,素朴な疑問からマニアックな質問まで,皆さんからの声をお待ちしています.
知識共有プラットフォーム mond に次の質問が届きました:God save the king. が,三単現であるべきところ,原形を用いた仮定法だと習いました.ならば,You eat sushi. ならば,「君よ寿司を食べ給へ」という意味にも,時と場合によってはなり得ますか?

この質問に回答したところ,「sushi 文」の問題として SNS 上でも注目が集まっています.
回答に当たって,前半では,仮定法現在としての「sushi 文」について,英語史の観点を交えながら,理論的な可能性と現実的な使用の実態を検討しました.願望を表わす仮定法現在は,古英語から中英語にかけては普通に用いられていました.しかし,近代英語以降には衰退し,「#3543. 『現代英文法辞典』より optative (mood) の解説」 ([2019-01-08-1]) で見たとおり,God save the king や So be it などの固定表現で用いられるのみとなり,今回の「sushi 文」のように生産的に願望表現を作ることは事実上不可能になりました.
また,後半では「平叙」と「命令」と「願望」の発話行為 (speech_act) の違いにも触れました.You eat sushi. は理論上はいずれの解釈も可能ですが,実際上は願望の読みはないといってよいでしょう.一方,発音される場合の韻律次第で「命令」の読みは残ります.この問題についても,最近気になっていたニュージーランドの道路標識 "PEDESTRIANS GIVE WAY TO VEHICLES" を例に挙げて少し論じてみました.

ぜひ上記の問答をお読みいただき,皆さんにもこの問題についてお考えいただければと思います.また,この問題への注目を受けて,一昨日のお昼に heldio で生配信「【ランチ生配信】Xで16万インプ!話題の「sushi文」解説」も行ないましたので,そちらもアーカイヴからお聴きいただければ.
・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
先日,知識共有プラットフォーム mond に次の質問が届きました.付帯状況の「with O C」はどのようにして生まれたのですか?

こちらに多くの反響が寄せられています.内的な意味変化と外的な影響という2つの視点から回答しました.ぜひお読みいただければ.
外的な影響というのは,古英語期にラテン語からの翻訳に際して,ラテン語の独立属格構文 (absolute ablative) が mid を用いた古英語の構文に移し替えられたことに基づいています.ただし,これが中英語以降の with の付帯状況の構文に,どのように結びついていくのかは,また別の問題です.英語統語論史的には,議論のあるところかと思います.
現代英語の共時的な観察としては,Quirk et al. (§9.55, pp. 704--05) に「付帯状況の with」への言及があります.英語の用語としては "accompanying circumstances" や "contingency" などが用いられることが多いです.今後の議論のために,まず「付帯状況の with」が,どのような使われ方をするのか,どんな性質をもった構文かを確認しておきましょう.
[T]hey [= with and without] can introduce finite (sic) and verbless clauses as adverbial:
He wandered in without shoes or socks on.
With so many essays to write, I won't have time to go out tonight.
The fuller clausal equivalent is a participial adverbial clause expressing contingency (cf 15.46):
Having so many essays to write, I won't have time to go out tonight.
Since with and without in these functions introduce clauses, they are subordinators, not prepositions. The nonfinite clause may also be a to-infinitive. Compare:
With Mary being away
With no one to talk to
With Mary away John felt miserable.
With the house empty
Without anyone to talk to
with のみならず without の付帯状況構文もあること,各前置詞の後に動名詞や不定詞が直接続くことはないことなど,いろいろと特徴があることが分かります.共時的にも通時的にも興味の尽きない構文です.
・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
12月7日(日)の YouTube 「いのほた言語学チャンネル」の話題は「#391. おなじ no でも元々ちがうことば --- no money の no と No, I don't. の no」でした.3週間ほど前の「#387. 英語にはなぜ冠詞があるの?日本語には冠詞がないが,英語の冠詞の役割と似ているのは日本語のあれ」が思いのほか人気回となった(1.45万回視聴)ので,冠詞 (article) の話題の続編というつもりで話しを始めたのですが,地続きのトピックとして no に言及したところ,井上さんがむしろそちらにスポットライトを当て,今回のタイトルとサムネになった次第です.結果として,今回も多くの方々に視聴していただき,良かったです.皆さん,ありがとうございます.
前回の冠詞回でも話したのですが,不定冠詞 a/an は,もともと数詞の one に由来しているので,その本質は存在標示にあるとみなせます.これに対して,否定語の no の本質は,まさに不在標示です.a/an と no は,ある意味で対極にあるものととらえられます.存在するのかしないのか,1か0か,という軸で,不定冠詞と no を眺めてみる視点です.
この観点から見ると,英文法で習う few と a few の意味の違いも理解できます.few は元来 many の対義語であり,「多くない」という否定的な意味合いが強い語です.しかし,これに存在標示の a をつけてみるとどうなるでしょうか.「ないわけではないが,多くはない」という few の否定に傾いた意味に,a が「少ないながらも存在はしている」という肯定的なニュアンスを付け加え,結果として「少しはある」へと意味が調整される,と解釈できるわけです.
さて,この a/an と no の対立構造も奥深いテーマなのですが,今回の動画で視聴者の皆さんが最も驚きをもって受け止めたのは,タイトルにもある通り,2つの no が別語源だった,という事実ではないでしょうか.現代英語では,形容詞として使われる no と,副詞として使われる no が,たまたま同じ綴字・発音になっていますが,実は歴史的なルーツは異なるものなのです.
普段何気なく使っている単語でも,そのルーツをたどると,驚くような歴史が隠されているものです.皆さんもこの不思議な no の歴史を,ぜひ YouTube の動画で確認してみてください.言語学的な知的好奇心を刺激されること請け合いです.また,冠詞や否定というテーマは,情報構造や会話分析にもつながる非常に大きな問題ですので,今後も多角的に掘り下げていきたいと考えています.
11月は,知識共有プラットフォーム mond に寄せられた「英語に関する素朴な疑問」の計9件に英語史・英語学の観点から回答しました.いつものように素朴であるからこその難題も多かったのですが,回答を考えたり書いたりしながら,私自身の意見もまとまってくるので,貴重な機会です.質問をお寄せいただいた方々,ありがとうございます.
以下に時間順に9つの問いと,対応する mond の問答へのリンクを張ります.日曜日の読み物としてどうぞ.
1. 現在完了についての質問です.have gone to は go to から派生されたのだと思うのですが,have been to は「be 動詞 to 場所」では使えないですよね.「be 動詞 to 場所」はダメなのに「have been to 場所」は使えるのはなぜですか? 例文:○I have been to Tokyo. ×I am to Tokyo.
2. few と little は a を前に置くと肯定で,無いと否定の意味になるのはどういう仕組みですか.また,little は修飾する名詞が不可算の場合に使うのに不定冠詞を置くことができるのはなぜですか.
3. 等位接続で結ぶとき,二人称と三人称ではどちらが先行するのですか.また一人称を最後に置かないといけない理由は何ですか.例:he and I(I は最後に置く)
4. sensible は『分別がある』『賢明だ』という意味ですが,接頭辞 in を付した insensible は『分別がない』『馬鹿』のような反対の意味ではなく,『感覚がない』『鈍感』という意味になってしまいます.また反対にみると insensible から in を除いた sensible は『敏感』となりそうですがそうではありません.(in)flammable の場合とは違い,一応は in が否定の機能を持っていますが対義語にはなっていません.この食い違いはどのように生じたのですか.
5. 語順に関する疑問です.かつては格変化があったため,語順がある程度自由であったことは理解できるのですが格変化がなくなり,なぜ SVO になったのでしょうか.SOV や OVS などでもよくないか思ってしまいます.つまり,語順を固定することが目的であって SVO である必要はなかったのではないでしょうか.
6. なぜ形容詞は代名詞 (she, it, mine…) を修飾できないんですか?
7. public は「大衆の~」「公共の~」「公立の~」「公的」という意味ですがどうして public school は「私立学校」を表すのですか.
8. 英語の前置詞には分離から所有の意味に転じた of や対立から付帯の意味に転じた with など本来の意味とは異なった,というよりむしろ真逆のような使われ方をするようになったものがありますが,これはなぜなのでしょうか?
9. 以前,中学生に英語を教えたとき,こーゆう質問されました.「Take an umbrella with you. の with you って何故必要なんですか?」確かに,Take an umbrella. だけでも通じるので,with NP は別にいらないんじゃないかと思ってしまいます.
とりわけ最後の9問目の問答は,本ブログでも何度か言及してきた通り,大反響をいただきましたので,ぜひお読みください.

12月も,なるべく定期的に回答していければと思っています.

英語史のおもしろさは「知識の積み上げ」ではなく,ふだん当たり前に使っている英語の謎が,歴史という視点でスッと解けてしまうところにあります.Voicy で毎日配信している「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」も,この英語史の楽しさをどう伝えるかを軸に4年半ほど続けてきました.
ここ数週間,新規リスナーさんが増えてきていますので,本記事では初めて heldio に,そして英語史に触れる方のために「入口として最強の配信回10本」を物語のように楽しめる順番でご紹介します.
1. 自己紹介
・ 「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」
まず heldio とそのパーソナリティを知っていただくための1本.配信者である私,堀田隆一(ほったりゅういち)の自己紹介と,その「hel活」(英語史をお茶の間に届ける活動)についてお話しします.
2. いきなり「英語に関する素朴な疑問」が解ける体験
・ 「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」
「英語に関する素朴な疑問」は,歴史を通せば一瞬で解けることが多いです.英語史の醍醐味をもっとも端的に味わえる回です.heldio 最初の配信回でありながら,いまも新規リスナーの入口としてよく聴かれています.
3. 語法の謎と英語史
・ 「#1643. なぜ He turned linguist. では無冠詞なの? --- umisio さんからの冠詞の疑問」
リスナーさんから寄せられた冠詞の用法という現代英語の疑問について考えています.He turned linguist. の無冠詞がなぜ許されるのか.実は未解決なのですが,それだけに余計におもしろい,最近の人気回です.
4. 学習のモヤモヤを歴史で整理する
・ 「#1606. don't have to と must not の違いは結局…? --- 「英語史ライヴ2025」の懇親会2次会にて」
学校でもよく話題になる don't have to と must not の違い.意味上の違いだけでなく,その背後にある発想や歴史も視野に入れてみると,学習者のモヤモヤが少し整理されてきます.宴席にて,皆でガヤガヤと自由に議論しています.これこそ人生の豊かな時間!
5. 「語源」の正しい使い方を考える
・ 「#1514. 語源論法に要注意」
語源にまつわる様々な俗説,いわゆる「語源論法」には,落とし穴があります.語源そのものを盲信してしまう危うさと,英語史・語源の知識をどう使えば建設的なのかを考える回です.英語史のあるべき「利用法」を一緒に考えてみませんか?
6. 素朴な疑問を一気に浴びる
・ 「#1576. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック with 小河舜さん --- 「英語史ライヴ2025」より」
短い疑問がテンポよく続く,はじめての方にも聴きやすい人気シリーズのうちの1回.英語には「なぜ?」がこんなにあるのだと気づかされます.イベント「英語史ライヴ2025」とも連動した,にぎやかな1本です.
7. 語彙と文化のつながりを味わう
・ 「#43. スーパーマーケットとハイパーマーケット」
「スーパー」「ハイパー」という日本語の感覚と,英語の supermarket/hypermarket についての回.どこの言語から入ってきた単語なのかによってその単語の格付けが変わる様を,軽快に味わえるエピソードです.heldio 初期の回ながら,不思議とずっと人気を保っています.
8. 英語観と社会の変化を振り返る
・ 「#1613. この30年間で海外体験はこう変わった」
留学・海外旅行・海外生活の「ハードル」は,この30年でどう変わってきたのか.英語学習と社会環境の変化を俯瞰しながら,英語観・言語観の変化にも目を向けるエピソードです.目下,私が滞在中のニュージーランドからお届けしている最近の回です.
9. 言語仲間とのコラボで広がる世界
・ 「#1580. 「ゆる言語学ラジオ」『ターゲット1900』回にお邪魔してきました」
人気番組「ゆる言語学ラジオ」に出演させていただいた折りのフォローアップのエピソード.他メディアとのやりとりを通じて,英語史の話題が深掘りされていく様子を垣間見ることができると思います.heldio に新しく来られた方の入口としてもよく聴かれている1本です.
10. 英語史の「地層」を一気に聴き比べる
・ 「#499. 「主の祈り」を4時代の英語でそれぞれ読み上げます」
古英語から現代英語までの「地層」が,一度に耳で体感できる回です.同じ「主の祈り」でも,時代によって発音も綴字も語彙も大きく異なります.最後にこの回を聴くと,英語史の大きな流れが感じられるのではないでしょうか?
英語史の魅力は,一言でいえば,英語をめぐる世界が,立体的に見えはじめる感覚を得られる点にあります.上の10本は,そうした「見え方の変化」を最短距離で体験できるように並べてみました.
英語に興味のある方,言語に関心のある方,あるいはただ英語の見え方を少し変えてみたい方にも,ぜひ聴いていただければ幸いです.
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