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contamination - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-03-20 07:25

2017-06-22 Thu

#2978. wh- to 構文 [infinitive][interrogative_pronoun][syntax][contamination]

 ブログ「アーリーバードの収穫」を運営されている石崎陽一先生から,「疑問詞+ to 不定詞」構文の歴史的発達について質問を受けた(素朴ながらも興味深い話題をありがとうございます).具体的には what to do, how to do の類いの形式ことで,これは間接疑問節と to 不定詞の出会いによって生じた構文と考えられるので,ある種の統語上の融合,場合によっては contamination ともいうべきものかもしれない(「#737. 構文の contamination」 ([2011-05-04-1]) を参照).
 歴史的にもおもしろそうな問題だが,調べたことがなかったので,まずは MED (verbal particle) を調べてみると,語義 5b (e) に次のようにあった.初出は初期中英語期であり,その後も例がいくつも挙がる.

(e) with inf. preceded by the interrogatives hou, what, whider, or whiderward, the entire construction functioning as the direct obj. of verbs of knowing, studying, teaching, etc.

   c1300(?c1225) Horn (Cmb Gg.4.27) 17/276: For he nuste what to do.


 次に OEDto を調べてみた.語義 16a がこの用法の解説になっており,次のようにある.

a. With inf. after a dependent interrogative or relative; equivalent to a clause with may, should, etc. (Sometimes with ellipsis of whether before or in an indirect alternative question.)

   c1386 Chaucer Man of Law's Tale 558 She hath no wight to whom to make hir mone.


 OED での初例は Chaucer となっているが,MED の初例のほうが早いことが分かる.合わせて,この構文は古英語には現われないらしい.
 おもしろいのは,現代英語において当該構文は従属節を構成するものと理解されているが,単独で主節を構成する例も18世紀初頭から現われていることだ.OED の語義 16b に,次のように挙げられている.

b. In absolute or independent construction after an interrogative, forming an elliptical question.
   This may be explained as an ellipsis of the principal clause . . . , or of 'is one', 'am I', etc. before the inf.

   1713 J. Addison Cato iii. vii, But how to gain admission? for Access Is giv'n to none but Juba, and her Brothers.


 周囲の文献をちらっと覗いたところ,込み入った事情がありそうだという印象を受けた.おもしろそうだが,どこまで深掘りできるだろうか・・・.

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2016-09-19 Mon

#2702. Jane does nothing but watch TV.watch は原形不定詞か? [infinitive][preposition][conjunction][contamination][syntax]

 9月13日付けで掲示板に標題の質問が寄せられた,Jane does nothing but watch TV.He does something more than just put things together. のような文に現われる2つ目の動詞 watchput は原形を取っているが,これは原形不定詞と考えるべきなのか,という疑問である.
 現代英語では,原形不定詞 (bare infinitive) は大きく分けて4種類の環境で現われる.1つは,使役動詞や知覚動詞などの目的語に後続するもので,They made her pay for the damage. や The crow saw Gray score two magnificent goals. の類いである.今ひとつは,疑似分裂構文やそれに準ずる構文において What the plan does is ensure a fair pension for all. や Turn off the tap was all I did. などの文に見られる.さらに,I had said he would come down and come down he did. のような繰り返し文などにも見られる.最後に,除外を表わす前置詞 (but, except) に後続する形で She did everything but make her bed. のように用いられる (Quirk et al. §15.15; Biber et al. §11.2.2.3) .
 標題の質問に関連するのは,この最後の用法のことである.but, except は前置詞兼接続詞として他にも特殊な振る舞いを示し,どのように分析すべきかは重要な問題だが,当面,共時的には原形不定詞が後続しうる特殊な前置詞として理解しておきたい.もう1つの (more) than を用いた例文についても,意味こそ「除外」ではないが,but, except と平行的にとらえ,原形不定詞が後続する前置詞に近いものと考えておく(I would rather [sooner] die than disgrace myself. のような文も参照).さらに,関連して I intend to build the boat as well as plan it. なども合わせて考慮したい.
 だが but, except については,一方で通常の前置詞のように振る舞うこともでき,例えば He does everything in the house but [except] putting the children to bed. のように後ろに動名詞を従えることもできる.あまつさえ,to 不定詞を従える場合もあり,Nothing remains but to die. や I have no choice [alternative] but to agree. などもあるので,ややこしい.
 これらの語句に関する振る舞いの特殊性や不安定性は,but, except が前置詞的にも接続詞にも用いられることと関連するに違いない.歴史的にはどのような経緯でこのような構造が生じてきたのか詳しく調べていないが,構文上の contamination が生じているのではないかと想像される.「#737. 構文の contamination」 ([2011-05-04-1]) に挙げた (4) の例なども参照.

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
 ・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.

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2014-12-19 Fri

#2062. bytwyste の例 [preposition][pearl][blend][contamination]

 between の異形態の歴史について,「#1389. between の語源」 ([2013-02-14-1]),「#1393. between の歴史的異形態の豊富さ」([2013-02-18-1]),「#1394. between の異形態の分布の通時的変化」 ([2013-02-19-1]),「#1399. 初期中英語における between の異形態の分布」 ([2013-02-24-1]),「#1554. against の -st 語尾」 ([2013-07-29-1]),「#1807. ARCHER で betweenbetwixt」 ([2014-04-08-1]) などで取り上げてきた.現代英語の betwixt に連なる諸形態を含め,数多くの異形態が古英語以来おこなわれてきた.主要な異形態はおよそ辞書やコーパスから収集してきたつもりだったが,漏れがあった.MEDbitwix(e (prep.) に,異形態として挙げられている -twist だ.OED でも,中英語の異形態としての bytwyste が触れられている.しかし,MED にも OED にも異形態としての言及があるだけで,用例のなかには該当する形態が現われず,確認が取れていなかった.14世紀後半の作とされる Pearl を読んでいたところ,たまたま bytwyste に出くわしたので,メモしておきたい.脚韻位置に現われるので,ababababbcbc の脚韻スキームからなる12行の節 (ll. 457--468) をまるごと引用しよう.

'Of courtaysye, as saytz Saynt Poule,
Al arn we membrez of Jesu Kryst:
As heued and arme and legg and naule
Temen to hys body ful trwe and tryste,
Ryȝt so is vch a Krysten sawle
A longande lym to þe Mayster of myste.
Þenne loke: what hate oþer any gawle
Is tached oþer tyȝed þy lymmez bytwyste?
Þy heued hatz nauþer greme ne gryste
On arme oþer fynger þaȝ þou ber byȝe.
So fare we alle wyth luf and lyste
To kyng and quene by cortaysye.'


 他にもざっと探したが -twist 系の異形態は見つかっていないので,Pearl からのこの例が今のところ唯一例である.この形態の起源については, bitweies のような s で終わる形態に t が添加されたもの (paragoge) とも考えられるし,bitwixte のような /kst/ をもつ形態から /k/ が消失したものとも考えられる.あるいは,その両系列が融合した混成 (blending, contamination) の可能性も疑われる.表面的には非語源的な <t> の語末添加と見えるが,単なる音韻変化の問題なのか,混成や類推などという形態論的な側面も関与しているのか,議論の余地があるだろう.

 ・ Andrew, Malcolm and Ronald Waldron, eds. The Poems of the Pearl Manuscript. 3rd ed. Exeter: U of Exeter P, 2002.

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2012-04-26 Thu

#1095. acknowledge では <kn> が /kn/ として発音される [spelling_pronunciation_gap][blend][contamination][metanalysis][etymology]

 「#122. /kn/ で始まる単語」 ([2009-08-27-1]) の記事で,形態素の頭の /kn/ が歴史的に /k/ を弱化・消失させてきたために,現在,綴字 <kn> に対して発音 /n/ が対応する結果となっていることを説明した.ただし,形態素をまたいで /k-n/ が連続する場合には,/k/ は失われなかった.この例として acknowledge ( ac- + knowledge ) を挙げたが,この語には混成 (blend or contamination) や異分析 (metanalysis) という興味深い現象が関わっている.今日はこの点について触れたい.
 現代英語の綴字 <acknowledge> から判断するに,この語は ac + know + ledge へと形態素分析できるようにみえる.know が語根であり,そこへ接頭辞 ac- と接尾辞 -ledge が付加したかのような体裁をしている.だが,これが全体として動詞として機能しているというのは意外である.というのは,ledge (< OE -lāc) は,knowledgewedlock ([2011-05-12-1]の記事「#745. 結婚の誓いと wedlock」を参照)などに見られる通り,名詞を派生する接尾辞だからだ(ただし,これには音韻的な対応が認められておらず,他説も提案されている).一方,接頭辞 ac- のほうは,前置詞 on に相当する接頭辞が変形したものである.古英語には,oncnāwan (認める;承認する)という語があり,acknowledge との意味上の連続性は疑いえない.
 諸事情をまとめると,acknowledge は次のような語形成を経たのではないかと推測される.まず,古英語に "know" を語根とする oncnāwan という派生動詞が存在した.一方,"know" を語根とする派生名詞として,knoulech(e) が中英語期の早い段階の12世紀に現われた.この名詞は,品詞転換によりそのまま動詞としても用いられており,この語形と動詞としての役割は,意外にも早くから関連づけられていたのかもしれない.oncnāwan に由来する語と knoulech(e) とが中英語後期に混成し,aknowleche という語が生まれた.
 生まれた当初より,語根の頭の /k/ が接頭辞の末尾へ引きつけられたような異分析的綴字 <ack-> が用いられており,すでに接頭辞は,本来語の on- に由来するものではなく,ロマンス的な a(c)- (ex. accept, acquire) として再解釈されていたことがうかがわれる.結果として,/k/ は接頭辞側の音として認識されるようになり,17世紀末から18世紀にかけて know(ledge) などの語で語頭の /k/ が消失した際にも,acknowledge の /k/ は消失を免れたのである.
 語源学的な観点に立てば,acknowledge(ment) は,英語語根 know の派生語のなかで唯一 /k/ 音を保った語ということができるが,混成や異分析という共時的・心理的観点に立てば,保たれた /k/ は,語根に属する音ではなく接頭辞に属する音と考えるべきだろう.

Referrer (Inside): [2012-11-07-1]

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2011-12-20 Tue

#967. Ne bo the song neuer so murie [owl_and_nightingale][negative][syntax][subjunctive][contamination]

 ##948,949,950,951 の記事で,厳密に論理的には説明のつけられない譲歩表現 Be it never so humble (= "no matter how humble it is") について触れた.中英語ではごく普通に見られる表現で,つい最近も The Owl and the Nightingale にて例に出くわした.しかし,その例では,ただでさえ解釈の困難な譲歩表現が複雑な統語的文脈のなかで現われており,全体として極めて難解な読みの問題となっている.
 Atkins 版から,C と J テキストの ll. 341--48 を再現しよう.

(C text)

341: Eurich murȝþe mai so longe ileste
342: þat ho shal liki wel unwreste:
343: vor harpe, 7 pipe, 7 fuȝeles [song]
344: mislikeþ, ȝif hit is to long.
345: Ne bo þe song neuer so murie,
346: þat he ne shal þinche wel unmurie
347: ȝef he ilesteþ ouer unwille:
348: so þu miȝt þine song aspille.

(J text)

341: Eurych mureþe may so longe leste,
342: Þat heo schal liki wel vnwreste:
343: For harpe, 7 pipe, 7 foweles song
344: Mislikeþ, if hit is to long.
345: Ne beo þe song ne so murie,
346: Þat he ne sal þinche vnmurie
347: If he ilesteþ ouer vnwille:
348: So þu myht þi song aspille.


 問題は,ll. 345--48 の構文である.Atkins は,p. 32fn にてこの譲歩表現について次のように説明を与えている.

345. neuer so murie. Instance of an irrational negative in a concessive clause---a construction found in O.E. and other Teutonic languages (see W. E. Collinson, M.L.R. x. 3, pp. 349--65) as well as occasionally in A.-Norman, where it is apparently due to English influence (see J. Vising, M.L.R. XI. 2, pp. 219--21): cf. A.S. Chron. (1087), nan man ne dorste slean oðerne man, næfde he næfre swa mycel yfel gedon.


 この箇所の Atkins の解釈については,l. 346 の ne は redundant と解されると述べていることから,"No matter how merry the song may be, it shall seem very unmerry if it lasts . . ." と読んでいることが想像される.だが,この場合 l. 346 の行頭の þat の役割を無視していることになり,その説明が欠けている.
 Cartlidge も,neunmurie で合わせて "unmerry" として解釈しており,þat についても無言であるから,Atkins の読みに近いと考えられる.Cartlidge の与えている現代英語訳は,"No matter how merry the song might be, it won't seem at all amusing if it lasts too long, undesirably, . . ." (10) である.
 þat の問題を解決しようとしている読みに,Stanley (114) がある.

345ff. The construction is difficult. Perhaps translate (assuming ellipsis), 'However joyous the song may be, it is never so joyous that it will not seem very miserable if it. . . .' he in lines 346f refers to song, a masc. n.


 この読みでは,ne は redundant ではなく,þat は主節部の省略された so . . . that 構文の þat だと説明されている.Burrow and Turville-Petre (94) もこの読みに従っている.

345--6   The logic of these lines requires their expansion: 'However delightful the song may be, (it will never be so delightful) that it will not seem very tiresome.'


 筆者としては,þat 問題を解決している Stanley 派の読みに賛成である.譲歩表現中の so が,本来続くはずだった so . . . that 構文の so と重なり合い,妙な構文として現われたということではないか.繰り返し現われる否定辞によって論理がほぼ解読不能の域に達しているが,so . . . that 構文の主節部の省略,あるいはより適切には syntactic contamination ([2011-05-04-1]の記事「#737. 構文の contamination」を参照)としてであれば,理解可能になる.

 ・ Atkins, J. W. H., ed. The Owl and the Nightingale. New York: Russel & Russel, 1971. 1922.
 ・ Cartlidge, Neil, ed. The Owl and the Nightingale. Exeter: U of Exeter P, 2001.
 ・ Stanley, Eric Gerald, ed. The Owl and the Nightingale. Manchester: Manchester UP, 1972.
 ・ Burrow, J. A. and Thorlac Turville-Petre, eds. A Book of Middle English. 3rd ed. Malden, MA: Blackwell, 2005.

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2011-05-05 Thu

#738. inclusive superlative [superlative][contamination][syntax][corpus][ppceme]

 昨日の記事「構文の contamination」 ([2011-05-04-1]) で最後に取り上げた "inclusive superlative" について,BNCweb でどのくらいヒットするか試してみた."(most _AJ0 | _AJS) (_{N})* of (any)? other" で検索すると,以下の7例を取り出すことができた(赤字は引用者).

 - Chang's speed was the best of any other player.
 - Perhaps the most notable of other attempts to describe parents in this fashion was undertaken by Earl S. Schaefer.
 - This percentage is the largest of any other constituency in England.
 - But centuries of migration, conquest, occupation, intermarriage, trade and cultural exchange - not to mention the tendency of artists to copy or reinterpret the most successful facets of other artists' work - have eroded much of this exclusivity.
 - Commander Keen has the largest fan club of any other shareware game available.
 - 'In proportion to the kiwi's size the egg is the largest of any other bird.
 - I say in particular our union because everyone here knows we probably have the largest and best training programme of any other union in Britain today.


 初期近代英語にも見られたということなので,The Penn-Helsinki Parsed Corpus of Early Modern English (PPCEME) でざっと調べてみると,John Fryer (b. c1650, d. 1733) なる人物の東洋旅行記に次の1例があった.

They yet retain a Warlike Disposition, being still accounted the best Gunners here of any other places in Persia;


 この妙な構文の起源と歴史を探るには,混交のもととなっている2つの構文 comparative + than any other と superlative + of all の頻度や文脈をまず洗い出す必要があるだろう.

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2011-05-04 Wed

#737. 構文の contamination [blend][contamination][syntax][superlative][bnc][corpus]

 [2011-01-17-1]blend混成語」を話題にした際に少々触れたが,類似した過程に contamination混交」がある.両者は意識的か否かという観点か区別されることがあるが,特に区別せず同様に用いられることもある.通常は語形成上の過程として捉えられるが,[2011-01-17-1]の記事で触れたように構文のレベルででも起こりうる.例えば,前の記事では,"Why did you do that for?" や "different than" を挙げた.
 Graddol を講読中に構文の contamination に出会った(赤字は引用者).

English is remarkable for its diversity, its propensity to change and be changed. This has resulted in both a variety of forms of English, but also a diversity of cultural contexts within which English is used in daily life. (5)


 ここでは,both . . . and . . .not only . . . but also . . . の構文が混交している.BNCweb より検索キーワード "both +** but also" で類例を探してみると,6例ほどが見つかった(赤字は引用者).

 - Ion Pacepa, Ceausescu's chief intelligence officer who defected in 1978, takes particular pleasure in his memoirs in exposing Stefan Andrei as both corrupt but also as well aware of the absurdity of the Ceausescus' pretensions, especially Elena's academic titles.
 - Their economy and population were both suffering, but also they were becoming wary of the Dzhungars' increasing strength.
 - In fitting statistical models to study relationships, it is important to take account of such hierarchies, both for technical reasons but also because influential factors can be present at any or all levels of aggregation.
 - The changes that have been introduced into South Africa [pause] forced upon the white minority government by both international pressure but also by the magnificent work at the A N C in Cosatu [pause] must be supported as well but we cannot treat South Africa as anything but a pariah [pause] a, a, a national pariah [pause] until we see one person one vote, and a black majority government in South Africa.
 - 'Committees' means both actual committees but also individuals or organisers listed as committees.
 - I mean that can be both pleasurable, but also make somebody feel uncomfortable.


 contamination は,共時的には話者の発話時に生じる2つの関連構文の混交として解釈されるが,これが共同体に広がってある程度の認知度を得ると,新しい構文として独立し定着することがある.そのような場合には,contamination は通時的な観点からアプローチすることができるだろう.以下は現代英語に見られる構文の contamination の例だが,これらがいつ頃に現われ,現在までにどの程度の認知度を得てきたかという問題は,英語史の問題である.

 (1) these kinds of things: these thingsthis kind of things の混交.
 (2) different than: different fromother than の混交.
 (3) different to: different fromopposed to の混交.similar to との類推とも考えられる.
 (4) cannot help but do: cannot help doingcannot but do の混交.
 (5) It is no good for us complaining about it.: It is no good for us to complain about it.It is no good we complaining about it. の混交.
 (6) no sooner . . . when: no sooner . . . thanscarcely . . . when の混交.
 (7) I am friends with him.: I am friendly with him.He and I are friends. の混交.
 (8) a man whom she thought was a murderer: a man who she thought was a murderera man whom she thought to be a murderer の混交.
 (9) the cleverest of all the other boys: cleverer than the other boysthe cleverest of all the boys の混交.

 調べてみるといろいろとあるようだが,(9) のような例は少なくないようで,石橋 (127) は次のようにコメントしている.研究材料としておもしろそうだ.

Sunday's action was the most brilliant and fruitful of any fought up to that date by the fighters of the Royal Air Force. [the most . . . of (all) + (more . . . than) any]---W. Churchill / This is the greatest error of all the rest. [the greatest . . . of (all) + (a greater . . . than) all the rest]---Sh., Mids. N. D. v. i. 250. 最後の例のように,最上級に修飾される名詞を,意味上はそれを含まないはずの「その他」の中に包括させた混交表現を,とくに包括最上級 (Inclusive superlative) と呼ぶことがある.その例は近代初期の英語にときどき見いだされる.


 ・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm
 ・ 石橋 幸太郎 編 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.

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2011-01-17 Mon

#630. blend(ing) あるいは portmanteau word の呼称 [word_formation][morphology][popular_passage][terminology][blend][contamination]

 blend混成語」は blending混成」という語形成によって作られる語である.最も有名な混成語の1つは brunch だろう.breakfast + lunch をつづめたもので,2語を1語に圧縮したものである.複数のものを1つの入れ物に詰め込むイメージで,かばん語 ( portmanteau word ) と呼ばれることも多い( portmanteauOADL8 によると "consisting of a number of different items that are combined into a single thing" ).
 portmanteau word という表現は,Lewis Carroll 著 Through the Looking-Glass (1872) の6章で Alice と Humpty Dumpty が交わしている会話から生まれた表現である.Alice は,鏡の国の不思議な詩 "JABBERWOCKY" の最初の1節を Humpty Dumpty に示した.

'Twas brillig, and the slithy toves
   Did gyre and gimble in the wabe:
All mimsy were the borogoves,
   And the mome raths outgrabe.


 これに対して Humpty Dumpty が一語一語解説してゆくのだが,1行目の slithy について次のように述べている.

'Well, "slithy" means "lithe and slimy." "Lithe" is the same as "active." You see it's like a portmanteau --- there are two meanings packed up into one word.'


 同様に3行目の mimsy についても,"flimsy and miserable" の portmanteau word として説明を加えている.
 より術語らしい響きをもつ blending という呼称については,OED によると初例は Henry Sweet 著 "New English Grammar" (1892) に見いだされる.

Grammatical and logical anomalies often arise through the blending of two different constructions.


 通常 blending とは2語を基にした意識的な造語過程を指すが,2語の意味の同時想起によって生じる無意識の混乱に基づいた needcessity ( need + necessity ) のような例も含みうる.ただし,後者は contamination 「混同」として区別されることもある.
 blending は語形成の一種として広く知られているためにその陰であまり知られていないが,文法的な「混成」の現象もある."Why did you do that?" と "What did you do that for?" が混成して "Why did you do that for?" なる表現が表出したり,"different from" と "other than" から新しく "different than" が生じたりする例である.日本語の「火蓋を切る」と「幕を切って落とす」が混成して「火蓋を切って落とす」となるのも同様の例である.

Referrer (Inside): [2011-05-04-1] [2011-01-18-1]

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