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spelling_pronunciation_gap - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2023-01-26 12:49

2023-01-15 Sun

#5011. 英語綴字史は「フランスかぶれ・悪筆・懐古厨」!? by ゆる言語学ラジオ [graphotactics][orthography][spelling][gh][digraph][yurugengogakuradio][spelling_pronunciation_gap][grapheme][voicy][prestige][minim][linguistics][link]

 言語学 (linguistics) というメジャーとはいえない学問をポップに広めるのに貢献している YouTube/Podcast チャンネル「ゆる言語学ラジオ」.昨日1月14日に公開された最新回では,1つ前の回に引き続き,<ghoti> ≡ /fɪʃ/ の問題を中心に英語の綴字と発音の珍妙な関係が話題となっています(前回の話題については「#5009. なぜバーナード・ショーの綴字ネタ「ghoti = fish」は強引に感じられるのか?」 ([2023-01-13-1]) も参照).2回にわたり私が監修させていただいたのですが,その過程もたいへん楽しいものでした(水野さん,関係者の方々,ありがとうございます!).
 ghoti, high, women, nation, debt などの綴字について,水野さんと堀元さんの軽妙洒脱なトークをどうぞ.ものすごいタイトルで「フランスかぶれ・悪筆・懐古厨。綴りの変遷理由が意外すぎる。【発音2】#194」です.



 「フランスかぶれ・悪筆・懐古厨」というフレーズですが,英語綴字史のツボのうち3点を実におもしろく体現している表現だと思います.英語の綴字は,中英語以降にフランス語風にかぶれたというのは事実です.また,悪筆というのは写字生個人の悪筆というわけではありませんが,当時の特殊な字体や字形が,現代の観点からは悪筆と見える場合があることを指摘しています(今回は縦棒 (minim) が問題となっていました).懐古厨は,英国ルネサンスと重なる初期近代英語期に古典語(特にラテン語)への憧憬が募ったことを指しています.
 フランス語かぶれと(ラテン語)懐古厨は,時代も動機も異なってはいますが,社会言語学的にいえば,いずれも威信 (prestige) ある言語への接近としてとらえることができます.これは,英語綴字史を通じて観察される大きな潮流です.
 この2回の「ゆる言語学ラジオ」で取り上げられた話題に関して,私自身も「hellog~英語史ブログ」,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」,YouTube チャンネル「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」,著書などを通じて,様々に発信してきています.ここにリンクをまとめると煩雑になりそうですので,note 上に特設ページ「「ゆる言語学ラジオ」の ghoti 回にまつわる堀田リンク集」を作ってみました.そちらも合わせてご覧ください.
 なお,最新回の最後の「おおおっ,オレかよ!」は,「#224. women の発音と綴字 (2)」 ([2009-12-07-1]) のことです.12年前の個人的な仮説(というよりも感想)で,書いたこと自体も忘れていますよ,そりゃ(笑).
 Voicy パーソナリティ兼リスナーとして,「ゆる言語学ラジオ」の Voicy 版があることも紹介しておきたいと思います.最新回「フランスかぶれ・悪筆・懐古厨。綴りの変遷理由が意外すぎる。#194」です.


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2023-01-13 Fri

#5009. なぜバーナード・ショーの綴字ネタ「ghoti = fish」は強引に感じられるのか? [graphotactics][orthography][spelling][phonotactics][gh][digraph][yurugengogakuradio][spelling_pronunciation_gap][grapheme][voicy]

 言語に焦点を当てた YouTube と Podcast の人気チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の1月10日に公開された最新回は「ghoti と書いてフィッシュと読む?英語学ジョークを徹底解剖【発音1】#193」です.英語の綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) を皮肉ったものとしてよく知られている話題が紹介されています.私が英語綴字史を研究しているということもあり,このたび続編となる次回と合わせて監修させていただくことになりました(水野さん,お世話になっています!).



 <ghoti> という綴字で fish /fɪʃ/ と読める,というトンデモネタですが,これは英語の綴字改革に関心を寄せていたアイルランド出身の劇作家 George Bernard Shaw (1856--1950) が英語の綴字のひどさを皮肉ったものとして紹介されることが多いです.Shaw および <ghoti> の <gh> に関する hellog 記事として,以下を挙げておきます.

 ・ 「#15. Bernard Shaw が言ったかどうかは "ghotiy" ?」 ([2009-05-13-1])
 ・ 「#605. Shavian Alphabet」 ([2010-12-23-1])
 ・ 「#1195. <gh> = /f/ の対応」 ([2012-08-04-1])
 ・ 「#2085. <ough> の音価」 ([2015-01-11-1])
 ・ 「#2590. <gh> を含む単語についての統計」 ([2016-05-30-1])
 ・ 「#3945. "<h> second" の2重字の起源と発達」 ([2020-02-14-1])

 なぜ <ghoti> ≡ /fɪʃ/ が成り立つのかについては,ゆる言語学ラジオの2人のトークに勝る説明はありませんので,ここで野暮なことは述べません.
 Shaw はこの例を皮肉として挙げたわけで,当然ながら私たち受け取る側も何かしらの違和感を感じています.<ghoti> ≡ /fɪʃ/ のカラクリは説明されれば分かるけれども,かなりの牽強付会だと感じます.この強引さの感覚はどこから来るのでしょうか.
 私たちは,現代標準英語の正書法 (orthography) のなかでも特に文字配列法 (graphotactics) が守られていない点に反応しているのだろうと思われます.英語綴字の諸規則は複雑多岐にわたりますが,そのなかでも綴字を構成する文字素 (grapheme) の配列に関する規則があり,それを文字配列法と呼んでいます.<ghoti> ≡ /fɪʃ/ のなかでもとりわけ子音に対応する綴字 <gh> と <ti> について,文字配列法の規則が破られている,つまり不規則だという感覚が生じているのです.
 <gh> ≡ /f/ の関係は確かに cough, enough, laugh, rough, tough など比較的頻度の高い語にもみられ,極端に珍しいわけではありません.しかし,この関係が成り立つのは基本的には語末(形態素末)においてであり,このことが文字配列法の規則に組み込まれていると考えられます.つまり,英単語には <gh> ≡ /f/ の関係が語頭(形態素頭)で現われる例がないために,ghoti が文字配列法の規則に違反していると感じられるのでしょう.
 同様に <ti> ≡ /ʃ/ の関係も,それ自体は決して珍しくありません.-tion や -tious をもつ単語は多数あり,私たちも見慣れています (ex. nation, station, ambitious, cautious) .しかし,/ʃ/ に対応する <ti> は基本的にそれだけで独立して現われるわけではなく,後ろに <on> や <ous> を伴って現われるのが文字配列法の規則です.<ghoti> の <ti> を /ʃ/ と読ませる際に感じる強引さは,この規則違反に由来します.
 英語の文字配列法については以下の記事もご覧ください.

 ・ 「#2405. 綴字と発音の乖離 --- 英語綴字の不規則性の種類と歴史的要因の整理」 ([2015-11-27-1])
 ・ 「#3882. 綴字と発音の「対応規則」とは別に存在する「正書法規則」」 ([2019-12-13-1])

 ゆる言語学ラジオには Voicy 版 もあり,今回の最新回はこちらとなっています.



 Voicy 内ではゆる言語学ラジオも,私の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 も,同じ「語学」セクションにカテゴライズされているチャンネルであるため,たまに両アイコンが仲良く横に並ぶことがあります(笑).

Referrer (Inside): [2023-01-15-1]

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2022-11-14 Mon

#4949. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第21回「「マジック e」って何?」 [notice][sobokunagimon][rensai][final_e][spelling][vowel][terminology][silent_letter][pronunciation][spelling_pronunciation_gap]

 本日は『中高生の基礎英語 in English』の12月号の発売日です.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第21回では「「マジック e」って何?」という疑問を取り上げています.

『中高生の基礎英語 in English』2022年12月号



 綴字上 matemat は語末に <e> があるかないかの違いだけですが,発音はそれぞれ /meɪt/, /mæt/ と母音が大きく異なります.母音が異なるのであれば,綴字では <a> の部分に差異が現われてしかるべきですが,実際には <a> の部分は変わらず,むしろ語尾の <e> の有無がポイントとなっているわけです.しかも,その <e> それ自体は無音というメチャクチャぶりのシステムです.多くの英語学習者が,学び始めの頃に一度はなぜ?と感じたことのある話題なのではないでしょうか.
 一見するとメチャクチャのようですが,類例は多く挙げられます.Pete/pet, bite/bit, note/not, cute/cut などの母音を比較してみてください.ここには何らかの仕組みがありそうです.少し考えてみると,語末の <e> の有無がキューとなり,先行する母音の音価が定まるという仕組みになっています.いわば魔法のような「遠隔操作」が行なわれているわけで,ここから magic e の呼称が生まれました.
 今回の連載記事では,なぜ magic e という間接的で厄介な仕組みが存在するのか,いかにしてこの仕組みが歴史の過程で生まれてきたのかを易しく解説します.本ブログでもたびたび取り上げてきた話題ではありますが,連載記事では限りなくシンプルに説明しています.ぜひ雑誌を手に取ってみてください.
 関連して以下の hellog 記事を参照.

 ・ 「#1289. magic <e>」 ([2012-11-06-1])
 ・ 「#979. 現代英語の綴字 <e> の役割」 ([2012-01-01-1])
 ・ 「#1827. magic <e> とは無関係の <-ve>」 ([2014-04-28-1])
 ・ 「#1344. final -e の歴史」 ([2012-12-31-1])
 ・ 「#2377. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (1)」 ([2015-10-30-1])
 ・ 「#2378. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (2)」 ([2015-10-31-1])
 ・ 「#3954. 母音の長短を書き分けようとした中英語の新機軸」 ([2020-02-23-1])
 ・ 「#4883. magic e という呼称」 ([2022-09-09-1])

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2022-10-30 Sun

#4934. 英語綴字の(不)規則性の考え方 [spelling][orthography][writing][spelling_pronunciation_gap][methodology]

 英単語の綴字はしばしば不規則である,あるいは例外が多いなどと言われるが,この言い方には「規則」が存在するという前提がある.「規則」はあるが,そこから逸脱しているものが多いという理由で「不規則」なのだ,とそのような理屈だろう.
 しかし,それだけ逸脱が多いとすれば,そもそも「規則」と呼んでいたものは,実は規則の名に値しなかったのではないか,という議論にもなり得る.不規則を語るためには規則が同定されなければならないのだが,これが難しい.論者によって立てる規則が異なり得るからだ.
 この問題について Crystal (284) が興味深い解説を与えている.

Regularity implies the existence of a rule which can generate large numbers of words correctly. A rule which works for 500 words is plainly regular; one which works for 100 much less so; and for 50, or 20, or 10, or 5 it becomes progressively less plausible to call it a 'rule' at all. Clearly, there is no easy way of deciding when the regularity of a rule begins. It has been estimated that only about 3 per cent of everyday English words are so irregular that they would have to be learned completely by heart, and that over 80 per cent are spelled according to regular patterns. That leaves some 15 per cent of cases where we could argue the status of their regularity. But given such statistics, the chief conclusion must be that we should not exaggerate the size of the problem, as some supporters of reform are prone to do. Nor minimize it either, for a great deal of confusion is caused by that 3--15 per cent, and some 2 per cent of the literate population never manage to resolve it . . . .


 綴字の問題に限らず,言語における「規則」はおおよそ理論上の構築物であり,その理論の数だけ(不)規則の数もあることになる.

 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

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2022-10-22 Sat

#4926. yacht の <ch> [dutch][loan_word][silent_letter][consonant][spelling_pronunciation][metathesis][phoneme][grapheme][spelling_pronunciation_gap][spelling][consonant][phonology][orthography][digraph][eebo]

 学生から <ch> が黙字 (silent_letter) となる珍しい英単語が4つあるということを教えてもらった(貴重な情報をありがとう!).drachm /dræm/, fuchsia /ˈfjuːʃə/, schism /sɪzm/, yacht /jɑt/ である.典拠は「#2518. 子音字の黙字」 ([2016-03-19-1]) で取り上げた磯部 (7) である.
 今回は4語のうち yacht に注目してみたい.この語は16世紀のオランダ語 jaght(e) を借用したもので,OED によると初例は以下の文である(cf. 「#4444. オランダ借用語の絶頂期は15世紀」 ([2021-06-27-1])).初例で t の子音字がみられないのが気になるところではある.

a1584 S. Borough in R. Hakluyt Princ. Navigations (1589) ii. 330 A barke which was of Dronton, and three or foure Norway yeaghes, belonging to Northbarne.


 英語での初期の綴字(おそらく発音も)は,原語の gh の発音をどのようにして取り込むかに揺れがあったらしく,様々だったようだ.OED の解説によると,

Owing to the presence in the Dutch word of the unfamiliar guttural spirant denoted by g(h), the English spellings have been various and erratic; how far they represent varieties of pronunciation it is difficult to say. That a pronunciation /jɔtʃ/ or /jatʃ/, denoted by yatch, once existed seems to be indicated by the plural yatches; it may have been suggested by catch, ketch.


 <t> と <ch> が反転した yatch とその複数形の綴字を EEBO で検索してみると,1670年代から1690年代までに50例ほど上がってきた.ちなみに,このような綴字の反転は中英語では珍しくなく,とりわけ "guttural spirant" が関わる場合にはよく見られたので,ある意味ではその癖が初期近代英語期にまではみ出してきた,とみることもできるかもしれない.
 yatch の発音と綴字については,Dobson (371) が次のように言及している.

Yawt or yatch 'yacht' are two variant pronunciations which are well evidenced by OED; the former is due to the identification of the Dutch spirant [χ] with ME [χ], of which traces still remained when yacht was adopted in the sixteenth century, so that it was accommodated to the model of, for example, fraught and developed with it, while OED suggests that the latter is due to analogy with catch and ketch---it is certainly due to some sort of corrupt spelling-pronunciation, in the attempt to accommodate the word to native models.


 <t> と <ch> の綴字上の反転と,それに続く綴字発音 (spelling_pronunciation) の結果生み出された yacht の妙な異形ということになる.

 ・ 磯部 薫 「Silent Consonant Letter の分析―特に英語史の観点から見た場合を中心として―」『福岡大学人文論叢』第5巻第1号, 1973年.117--45頁.
 ・ Dobson, E. J. English Pronunciation 1500--1700. 2nd ed. 2 vols. Oxford: OUP, 1968.

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2022-09-09 Fri

#4883. magic e という呼称 [oed][final_e][spelling][vowel][terminology][mulcaster][walker][silent_letter][pronunciation][spelling_pronunciation_gap]

 take, meme, fine, pope, cute などの語末の -e は,それ自体は発音されないが,先行する母音を「長音」で読ませる合図として機能する.このような用法の emagic e (マジック e)と呼ばれる.魔法のように他の母音の発音を遠隔操作してしまうからだろう.英語教育・学習上の用語としてよく知られている.
 magic e の働きや歴史の詳細は hellog より以下の記事を参照されたい.

 ・ 「#1289. magic <e>」 ([2012-11-06-1])
 ・ 「#979. 現代英語の綴字 <e> の役割」 ([2012-01-01-1])
 ・ 「#1827. magic <e> とは無関係の <-ve>」 ([2014-04-28-1])
 ・ 「#1344. final -e の歴史」 ([2012-12-31-1])
 ・ 「#2377. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (1)」 ([2015-10-30-1])
 ・ 「#2378. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (2)」 ([2015-10-31-1])
 ・ 「#3954. 母音の長短を書き分けようとした中英語の新機軸」 ([2020-02-23-1])

 今回は magic e という呼称そのものに焦点を当てたい.OED の magic, adj. (and int.) のもとに追い込み見出しが立てられている.

magic e n. (also with capital initials) (chiefly in primary school literacy teaching) a silent e at the end of a word or morpheme following a consonant, which lengthens the preceding vowel and consequently appears to transform its sound; as the e in hope, lute, casework, etc.
     Cf. silent adj. 3c.
   1918 Primary Educ. Mar. 183/2 Let us see how the a will sound after magic e is fastened on mat. (Write mate on board. Pronounce.) You see what trick he did. He changed short a into long a.
   2005 L. Wendon & L. Holt Letterland: Adv. Teacher's Guide (2009) ii. 58 It was recommended that children play-act the Magic e's function in tap and tape.


 初出は100年ほど前の教育学雑誌となっている.19世紀や18世紀には遡らない,比較的新しめの表現ではないかと予想していたが,当たったようだ.
 上記で Cf. として挙げられている silent, adj. and n. を参照してみると,3c の項に "silent e" に関する記述があった.

c. Of a letter: written but not pronounced. Cf. mute adj. 4b, magic e n. at magic adj. Compounds.
     Sometimes designating a letter whose absence would have no impact on the pronunciation of the word, as b in doubt, and sometimes designating a letter that has a diacritic function, as final e indicating the length of the vowel of a preceding syllable, as in mute or fate.
   1582 R. Mulcaster 1st Pt. Elementarie xvii. 113 Som vse the same silent e, after r, in the end, as lettre, cedre, childre, and such, where methink it were better to be the flat e, before r, as letter, ceder, childer.
   1775 J. Walker Dict. Eng. Lang. sig. 4Ov Persuade, whose final E is silent, and serves only to lengthen the sound of the A in the last syllable.
   1881 E. B. Tylor Anthropol. vii. 179 The now silent letters are relics of sounds which used to be really heard in Anglo-Saxon.
   2017 Hispania 100 286 The letter 'h' is silent in Spanish and is often omitted by those who are not familiar with the spelling of a word.


 magic e は "silent e" と同値ではない.前者は後者の特殊事例である.上の引用で Mulcaster からの初例は magic e のことを述べているわけではないことに注意が必要である.一方,2つ目の Walker からの例は,確かに magic e のことを述べている.
 さらに mute, adj. and n.3 の 4b の項を覗いてみると "mute e" という呼び方もあると分かる.これは "silent e" と同値である.この呼称の初例は次の通りで,そこでは実質的に magic e のことを述べている.

1840 Proc. Philol. Soc. 3 6 It gradually was established..that when a mute e followed a single consonant the preceding vowel was a long one.

Referrer (Inside): [2022-11-14-1]

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2022-03-20 Sun

#4710. <o> ≡ /u:/ となる例 [spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][vowel]

 英語の綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) の問題を取り上げ始めるとキリがなく,実際にキリなく本ブログでも記事を書いてきたが,ずっと気になっている未解決の問題がある.標題の <o> ≡ /u:/ となるケースである.これについては何度か質問も寄せられてきたし,私自身もおおいに関心があるのだが,自身として解決にも納得にも至っていない.そこで,まず関係する例を挙げるところから始め,今後の調査につなげたいと思う.
 最も身近な例は do, to, who, whose 辺りだろうか.ああ,と思ってしまうほど身近である.does, done については「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1]) で取り上げたのだが,肝心な do については考えてこなかった.who については「#3630. なぜ who はこの綴字でこの発音なのか?」 ([2019-04-05-1]) で取り上げたが,どうも煮え切らない答えだ.これらの仲間として two を挙げてもよいだろうか.これについては「#184. two の /w/ が発音されないのはなぜか」 ([2009-10-28-1]),「#1324. two の /w/ はいつ落ちたか」 ([2012-12-11-1]) で取り上げた.
 次に move, remove, removal; prove, approve, approval, improve などの <-ove> の仲間たちである.これも「#1882. moveprove にかつて見られた前母音とその影響」 ([2014-06-22-1]) で取り上げたが,ここでの <o> ≡ /u:/ の関係について,私自身もよく分かっていない.
 そして,lose という不可思議な例がある.OED によると,次のように解説がある.類義語や方言形の相互の影響により,通常の綴字と発音の対応関係が狂ったという説である.

The regular modern English pronunciation representing Old English losian would be /ləʊz/; the standard English pronunciation /luːz/ seems to be due to association with LOOSE v., which in some contexts (e.g. to loose hold) closely approaches this verb in meaning. Many dialects have the phonetic form normally descending from the Old English verb. The Scottish form loss is probably evolved from the past tense and past participle lost.


 他には,半ばランダムに shoe, canoe; tomb, womb 辺りを関連例として挙げておこう.
 そして,固有名詞として,イギリス首相を務めた Sir Alec Frederick Douglas-HomeHomethe Stone of SconeScone に見られるほか Brome, Scrome もある (Carney 353) .
 上記の諸例は <o> ≡ /u:/ を体現するが,この関係をなすに至った歴史的経緯は,おそらく個別に説明しなければならないだろう.一括して説明できないばかりか,一つひとつが難問である.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

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2022-03-15 Tue

#4705. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第13回「なぜ one, two はこの綴字でこの発音なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][numeral][spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][hellog-radio]

 この新年度も,1年間続いてきたNHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」での連載「英語のソボクな疑問」が継続されることになりました.読者の方々に毎月ご愛読いただいたおかげと感謝しております.ありがとうございました.ソボクな疑問を歴史的な観点からなるべくわかりやすく解説するというのが連載の趣旨です.引き続きご愛読のほど,よろしくお願いいたします.
 昨日発売された4月号テキストに,連載の第13回が掲載されました.新年度に向けての一発目は「なぜ one, two はこの綴字でこの発音なの?」という綴字と発音の乖離に関する話題です.皆さん,すでに見慣れ,読み慣れている単語ですので不思議など感じないかと思いますが,普通であれば one で「ワン」,two で「トゥー」などとはひっくり返っても読めないはずです.なぜ素直に「オネ」や「トゥウォー」などとならないのでしょうか.そこには,あっと驚く歴史的な理由があったのです.

『中高生の基礎英語 in English』2022年4月号



 one, two に限らず,英語には発音と綴字がかみ合っていない単語がごまんとあります.実のところ基本的な単語であればあるほどチグハグなケースが多いので,初学者にとっては特にキツいのです.規則から入るのではなく,いきなり不規則から入るに等しいわけですから.
 連載記事ではできる限り丁寧な説明を心がけました.同じ問題について本ブログや音声メディアでも取り上げたことがありますので,そちらも合わせて参照し,理解を深めていただければと思います.関連する記事セットよりどうぞ.音声メディアについては,以下より直接お聴きください.


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2022-03-11 Fri

#4701. スペリング <ae> に対応する音価 [spelling][ligature][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][greek][latin][loan_word][gvs][combining_form][mond]

 現代英語で <ae> というスペリングは稀である.この2文字を組み合わせて1文字とした合字 (ligature) である <æ> に至っては,(発音記号を除けば)ますます稀だ.稀どころか,通常はお目にかからないだろう.近代の印刷では encyclopædiamediæval などのスペリングが普通にみられたが,現在では合字ではなく2文字に分けて encyclopaediamediaeval と綴られるようになり,アメリカ式ではそもそも <ae> すら用いずに <e> で済ませて encyclopediamedieval のスペリングが一般的である.
 古英語以来,<æ> や <ae> のスペリングは盛衰を繰り返してきた.古英語では <æ> はアルファベットを構成する正規の文字であり,ごく普通に用いられた.ところが,12--13世紀には衰退し,対応する母音は単純に <a> で綴られるようになった(cf. 「#3998. なぜ applea は普通の「ア」ではなく「エァ」に近い発音なのですか?」 ([2020-04-07-1])).
 ところが,ギリシア語やラテン語から借用語が大量に流入した16世紀に,それらの古典語に含まれていた aiae が英語においては <æ> の文字で取り込まれることになり,リバイバルを果たした.しかし,上記のように近現代にかけて合字 <æ> は2文字の <ae> で綴りなおされることになり,さらに <e> に簡略化されることも多くなり,現在に至る.現在では <ae> も <æ> も日の目を見ないスペリングに成り果てている (Upward and Davidson 179--80) .
 稀に <ae> のスペリングを保持しているものは,ほぼすべてギリシア語 <ai> を含んだ借用語,あるいはそれがラテン語を経由して <ae> と変化したものに由来するといってよい.英語では古くは原則として <ae> ≡ /eː/ の対応関係があったが,大母音推移 (gvs) を経て,今では <ae> ≡ /iː/ の対応関係が一般的である.Carney (283) より,いくつか単語例を示そう.

 ・ in §Greek words --- aegis, aeon, aesthetic, anaemia, anaesthetist, archaeology, encyclopaedia, leukaemia, paean, etc.;
 ・ in classical names --- Aegean, Aeneas, Aesop, Athenaeum, Caesar, Judaea, Bacchae, Mycenae, Thermopylae;
 ・ the Latin feminine plural in scientific terms --- alumnae, aortae, lacunae,, lamellae, ulnae, etc.


 ところが,<ae> に <r> が後続する場合に関しては独自の事情があり,現在 <aer> ≡ /ɛə(r)/ が成立している.aeration, aerial, aerobic, aerodrome, aeronaut, aerosol, anaerobic などである.ほぼすべてがギリシア語に由来し,近代の借用語・造語として連結形 (combining_form) aero- を含んでいある (Carney 282) .語源的にも意味的にも air /ɛə(r)/ と関連するため, 互いの発音が結びつけられただろうことは容易に想像できる.ちなみに「飛行機」を意味する airplane について,イギリス英語では aeroplane の語形・綴字が根強い.
 なお本記事は,先日「Mond」に寄せられた aerobics などの接頭辞 aero- を,「エアロ」と発音するのはなぜでしょうか?という問いに焚きつけられて執筆した.そちらへの回答もどうぞ.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.
 ・ Upward, Christopher and George Davidson. The History of English Spelling. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2011.

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2021-12-10 Fri

#4610. marriage, carriage, verbiage [spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][noun][suffix][sound_change]

 ふと思いついた疑問.marriage/ˈmærɪʤ/ と carriage /ˈkærɪʤ/ は2音節で発音されるが,同じ <-iage> の綴字をもつ verbiage /ˈvəːbiɪʤ/ は3音節で発音される.なぜなのだろうか.
 -age はフランス語の名詞を作る接尾辞に由来する.さらに遡るとラテン語 -āticum (中性形容詞語尾)にたどりつく.英語では13世紀から見られ,14--15世紀以降,多用されるようになった.フランス語由来であるから,英語でも当初は強勢を伴って /-aːʒ/ と発音されていた.14世紀にフランス語から借用された中英語形の mariage, cariage も,フランス語にほど近い /mariˈaːʒ/, /kariˈaːʒ/ ほどの3音節の発音だったはずである.
 しかし,時とともにこの2語は「英語化」していった.音変化のルートを想像するに,(1) 強勢が第1音節に移り,(2) 第2,第3音節から強勢が奪われて -iage は /-iɪʤ/ となり,(3) 同部分がさらに弱化・短化・同化を経て /-ɪʤ/ となったのだろう.単語全体としてみれば3音節から2音節に短くなったことになる.
 一方,verbiage は3音節を保っている.上記のルートでいえば (1), (2) までは経たが (3) は経ていないという段階である.この単語は marriage, carriage よりもずっと遅く18世紀にフランス語から借用されてきたために「英語化」が十分に進んでいないということなのだろう.
 ちなみに同じ <-iage> をもつ triage /ˈtriːɑːʒ, triˈɑːʒ/ も18世紀にフランス語から借用された語だが,「英語化」のルートでは (1) の段階にあるか,あるいはまだルートに乗っていない段階にあるといえるだろう.
 <-iage> という綴字に対応する発音の種類は,借用年代と緩く連動しつつ,多様である.

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2021-09-15 Wed

#4524. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第7回「なぜ know や high には発音されない文字があるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][silent_letter][spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][link]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の10月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」も第7回となっています.今回の話題は「なぜ know や high には発音されない文字があるの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2021年10月号



 英語には綴字では書かれているのに発音されない文字というのがありますね.これは黙字 (silent_letter) と呼ばれ,英語に関する素朴な疑問の定番といってよい話題です.歴史的な由来としてはいろいろなパターンがあるのですが,最も多いのが,かつてはその文字がきちんと発音されていたというパターンです.昔の英語では,know は「クノウ」,high は「ヒーヒ」などとすべて文字通りに発音されていたのが,後に発音の変化により問題の音が消えてしまったというケースが多いのです.その一方で綴字は古いままに据え置かれ,現在までゾンビのように生き残っているというわけです.要するに,綴字が発音の変化に追いついていかなかったという悲劇ですね.
 今回の話題と関連して,以下の記事を発展編として読んでみてください.英語の綴字には,本当に黙字が多いです.

 ・ 「#4164. なぜ know の綴字には発音されない k があるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-09-20-1])
 ・ 「#122. /kn/ で始まる単語」 ([2009-08-27-1])
 ・ 「#1095. acknowledge では <kn> が /kn/ として発音される」 ([2012-04-26-1])
 ・ 「#3675. kn から k が脱落する音変化の過程」 ([2019-05-20-1])
 ・ 「#1290. 黙字と黙字をもたらした音韻消失等の一覧」 ([2012-11-07-1])
 ・ 「#210. 綴字と発音の乖離をだしにした詩」 ([2009-11-23-1])
 ・ 「#1195. <gh> = /f/ の対応」 ([2012-08-04-1])
 ・ 「#2085. <ough> の音価」 ([2015-01-11-1])
 ・ 「#2590. <gh> を含む単語についての統計」 ([2016-05-30-1])
 ・ 「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1])

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2021-07-12 Mon

#4459. なぜ drive の過去分詞 driven はドライヴンではなくドリヴンなの? [sobokunagimon][participle][spelling_pronunciation_gap][verb][conjugation][v][vowel]

 学生から標記の素朴な疑問が寄せられました.確かに2重母音をもつ原形 drive /draɪv/ を念頭に置けば,過去分詞 driven も */ˈdraɪv(ə)n/ となりそうなものですが,正しくは単母音をもつ /ˈdrɪv(ə)n/ となります.ちなみに過去形 drove /droʊv/ も母音の音質こそ交替しますが原形と同じように2重母音をもっています.過去分詞だけが単母音を示すのはなぜなのでしょうか.
 英語史の観点からみていきます.古英語では,動詞は屈折(いわゆる活用のこと)の仕方によって様々に分類されていたのですが,この動詞に関していえば強変化第1類というグループに属していました.現代英語では drive(原形)-- drove(過去形)-- driven(過去分詞)と3つの主要形が認められますが,古英語では4つの主要形があり,問題の動詞でいえば drīfan(不定形)-- drāf(第1過去形)-- drifon (第2過去形)-- drifen (過去分詞)のように変化しました(当時 <v> の文字はなく <f> を用いていました),.ここで「第1過去形」と「第2過去形」のような区別があったことに驚くかもしれませんが,この区別は実は be 動詞の waswere に残っています(cf. 「#3812. waswere の関係」 ([2019-10-04-1])).
 さて,不定形 drīfan と第1過去形 drāf には母音字の上に横棒(長音記号)が見えますが,この長母音が現代英語における原形 drive の2重母音,および過去形 drove の2重母音に連なります.古英語でも現代英語でも,2モーラの長い音であることに変わりはありません.そして,古英語の過去分詞 drifen の単母音のほうは,そのまま現代まで同じ単母音が保たれて driven となっています.英語の歴史を通じて,1モーラの短い音だったわけです.
 強変化第1類に属する drīfan の仲間たちも,基本的には同じような歩みを経て現代に至っています.例えば現代英語の ride -- rode -- ridden, write -- wrote -- written は,古英語では各々 rīdan -- rād -- ridon -- riden, wrītan -- wrāt -- writon -- writen となり,いずれも過去分詞には単母音が現われます.
 したがって,標題の素朴な疑問には,次のように答えられるでしょう.古英語の時代から現代に至るまで,drive (および仲間の動詞)については,原形に相当する形態は常に2モーラの長い母音をもっていたが,過去分詞は常に1モーラの短い母音をもっていた,ということです.
 ただ,ちょっと気になる問題は残ります.ridden, written については各々 <d>, <t> の子音字が重なっており,それによって前の母音が短い /ɪ/ であることが効果的に示されています.子音字の重なっていない原形の ride, write とは,綴字上あきらかに異なっています.ところが,問題の driven については *drivven とは綴られておらず,あくまで原形 drive に似た driven という綴字です.子音字が重なっていないのです.
 これは,英語の正書法には子音字 <v> を重ねることができないという特殊な規則があるからです.本当は重ねて *drivven としたいところですが,この規則ゆえにやむを得ず driven に甘んじている,ということです.では,なぜ <v> は重ねてはいけないのでしょうか.これはなかなか複雑な経緯があり,ここで解説することはできないのですが,もともと <v> は <u> の変異字体として遅れて発達してきたことが関与しています.関連して,ぜひ「#1827. magic <e> とは無関係の <-ve>」 ([2014-04-28-1]),「#4069. なぜ live の発音は動詞では「リヴ」,形容詞だと「ライヴ」なのですか?」 ([2020-06-17-1]) をお読みください.

Referrer (Inside): [2021-07-13-1]

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2021-03-31 Wed

#4356. friend の綴字と発音について補足 [spelling][spelling_pronunciation_gap][vowel][trish][shocc][gvs][diphthong]

 昨日の記事「#4355. friend の綴字と発音」 ([2021-03-30-1]) で,<friend> ≡ /frɛnd/ の不規則さについて歴史的な説明を施したが,説明に当たって参照した典拠を示しておこう.まずは Jespersen (§4.312) から.

The short [e] now found in friend OE frēond must be due to the analogy of friendship, friendly, in which /e/ is the usual shortening; in friend we have early /iˑ/ (< /eˑ/) in B 1633, while D 1640, J 1764, W 1775, 1791 etc.. have short /e/, and G 1621 and others a short /i/ due to a shortening subsequent on the transition of /eˑ/ > /iˑ/. Cf. fiend OE fēond, which kept its vowel because no derived words were found to influence it.


 関連して,Jespersen (§3.241) は give, live などもかつては長母音をもっていたことに触れている.
 次に Upward and Davidson (178) より.

In late Old English, short vowels were lengthened before consonant sequences such as /mb/, /nd/, /ld/ and /rd/. This lengthening was lost again in many cases by the end of the Middle English period. With the action of the GVS, one sees modern reflexes of the remaining long vowels in words such as climb, bind, mild, yield, old, etc. However, in some words there was a subsequent shortening of the vowel, leading to pairs of words similar or identical in spelling in Modern English but with different pronunciations: wind (verb, with /aɪ/) but wind (noun, with /ɪ/), fiend and friend, etc.


 さらに,Dobson (Vol. 2, §9) も参照した.

Shortening of OE ē to occurs in a number of words beside forms that preserve the long vowel. The shortening is normal in bless and brethren, but for both of these Hart shows [i:] < ME ę̄. The comparative liefer (OE lēofra) has four times beside ę̄ once in Bullokar. In friend the shortening is probably due to derivatives (friendly, friendship) in which the vowel occurs before a group of three consonants in words which (in the case of friendly in oblique forms) were trisyllabic and had a secondary stress; but it might also tend to occur in oblique cases of the simplex in which the n and d were separated by the syllable-division. ME is recorded by Levins and eleven later sources (including Robinson, Hodges, and Cooper); but ę̄ is retained by Salesbury, Cheke, Laneham, Bullokar, Wharton (followed by J. Smith), and Price (followed by Lye and The Protestant Tutor). Fiend is not recorded with ME .


 Dobson (Vol. 2, §11) からもう1つ.

Friend has in the Welsh Hymn, Mulcaster, Gil, Wallis, Lloyd, Poole, Coles, Lye (beside ę̄), WSC (beside ), Price's 'homophone' list (though elsewhere he records [i:]), the rhymes of Poole and Coles, and perhaps in Ray . . . . Fiends has in the Welsh Hymn and the 'homophone' lists of Hodges ('near alike'), Price, Coles (Eng.-Lat. Dict.), and WSC (the pairing is with fins); it has [i:] in Wallis. Bullokar rhymes field on (cf., probably, Chaucer's hild 'held' and fil 'fell' < earlier hę̄ld, fę̄ll).


 たかが friend の発音と綴字に関する素朴な疑問のようにみるかもしれないが,歴史的な変化と変異の機微は限りなく精緻である.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 1. Sounds and Spellings. London: Allen and Unwin, 1909.
 ・ Upward, Christopher and George Davidson. The History of English Spelling. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2011.
 ・ Dobson, E. J. English Pronunciation 1500--1700. 1st ed. Oxford: Clarendon, 1957. 2 vols.

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2021-03-30 Tue

#4355. friend の綴字と発音 [spelling][spelling_pronunciation_gap][vowel][trish][gvs][diphthong][sobokunagimon]

 基本語ながらも,綴字と発音の対応という観点からすると,とてもつもなく不規則な例である.<friend> という綴字で /frɛnd/ の発音となるのは,普通では理解できない.ほかに <ie> ≡ /ɛ/ となるのは,イギリス英語における lieutenant ≡ /lɛfˈtɛnənt/ くらいだろうか (cf. 「#4176. なぜ lieutenant の発音に /f/ が出るのか?」 ([2020-10-02-1])).
 歴史をさかのぼってみよう.古英語 frēond (味方,友)においては,問題の母音は綴字通り /eːo/ だった.対義語である fēond (敵;> PDE fiend /fiːnd/)も同様で,長2重母音 /eːo/ を示していた.この点では,両語は同一の韻をもち,その後の発達も共通となるはずだった.しかし,その後 frēondfēond は異なる道筋をたどることになった.
 frēond からみてみよう.長2重母音 /ēo/ は中英語にかけて滑化して長母音 /eː/ となった.この長母音は,派生語 frēondscipe (> PDE friendship) などにおいて3音節短化 (Trisyllabic Shortening = trish) を経て /e/ となったが,派生語の発音が類推 (analogy) の基盤となり,基体の friend そのものの母音も短化して /e/ となったらしい.これが現代の短母音をもつ /frɛnd/ の起源である.
 一方,長母音 /eː/ による発音も後世まで残ったようで,これが大母音推移 (gvs) を経て /iː/ となった.また,この短化バージョンである /i/ も現われた.つまり friend の母音は,中英語期以降 /eː/, /e/, /iː/, /i/ の4つの変異を示してきたということである.
 ここで,対義語 fēond (cf. PDE fiend /fiːnd/) に目を向けてみよう.こちらも friend とルーツはほぼ同じだが,比較的順当な音変化をたどった.長2重母音 /eːo/ の長2重母音が滑化して /eː/ となり,これが大母音推移で上げを経て /iː/ となり,現代英語の発音 /fiːnd/ に至る.
 発音の経緯は以上の通りだが,friend, fiend の綴字 <ie> についても事情は簡単ではない.詳しくは「#4082. chief, piece, believe などにみられる <ie> ≡ /i:/」 ([2020-06-30-1]) を読んでいただきたい.上記の /iː/ の段階で綴字 <ie> と結びつけられたものが,現代まで残っていると考えればよいだろう.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

Referrer (Inside): [2021-03-31-1]

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2021-01-24 Sun

#4290. なぜ island の綴字には s が入っているのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hellog_entry_set][etymological_respelling][etymology][spelling_pronunciation_gap][reanalysis][silent_letter][renaissance]

 英語には,文字としては書かれるのに発音されない黙字 (silent_letter) の例が多数みられます.doubt の <b> や receipt の <p> など,枚挙にいとまがありません.そのなかには初級英語で現われる非常に重要な単語も入っています.例えば island です.<s> の文字が見えますが,発音としては実現されませんね.これは多くの英語学習者にとって不思議中の不思議なのではないでしょうか.
 しかし,これも英語史の観点からみると,きれいに解決します.驚くべき事情があったのです.音声解説をどうぞ.



 「島」を意味する古英語の単語は,もともと複合語 īegland でした.「水の(上の)陸地」ほどの意味です.中英語では,この複合語の第1要素の母音が少々変化して iland などとなりました.
 一方,同じ中英語期に古フランス語で「島」を意味する ile が借用されてきました(cf. 現代フランス語 île).これは,ラテン語の insula を語源とする語です.古フランス語の ile と中英語 iland は形は似ていますが,まったくの別語源であることに注意してください.
 しかし,確かに似ているので混同が生じました.中英語 iland が,古フランス語 ileland を継ぎ足したものとして解釈されてしまったのです.
 さて,16世紀の英国ルネサンス期になると,知識人の間にラテン語綴字への憧れが生じます.フランス語 ile を生み出したラテン語形は insulas を含んでいましたので,英語の iland にもラテン語風味を加味するために s を挿入しようという動きが起こったのです.
 現代の英語学習者にとっては迷惑なことに,当時の s を挿入しようという動きが勢力を得て,結局 island という綴字として定着してしまったのです.ルネサンス期の知識人も余計なことをしてくれました.しかし,それまで数百年の間,英語では s なしで実現されてきた発音の習慣自体は,変わるまでに至りませんでした.ということで,発音は古英語以来のオリジナルである s なしの発音で,今の今まで継続しているのですね.
 このようなルネサンス期の知識人による余計な文字の挿入は,非常に多くの英単語に確認されます.語源的綴字 (etymological_respelling) と呼ばれる現象ですが,これについては##580,579,116,192,1187の記事セットもお読みください.

Referrer (Inside): [2023-01-01-1]

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2021-01-10 Sun

#4276. なぜ say の過去形,3単現形は「セイド」「セイズ」ではなく「セッド」「セズ」と発音されるのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hellog_entry_set][diphthong][monophthong][vowel][phonetics][spelling][spelling_pronunciation_gap][pronunciation][sound_change][assimilation]

 動詞 say /seɪ/ は超高頻度の語で,初学者もすぐに覚えることになる基本語です.この動詞の過去形 said もきわめて高頻度なわけですが,綴字として不規則であるばかりか,実は発音においても不規則です.予想される2重母音をもつ /seɪd/ とはならず,短母音の /sɛd/ となるのです.同じような不規則性は3単現の -s を付けた形についてもいえます.綴字こそ says と規則的に見えますが,発音はやはり2重母音をもつ /seɪz/ とはならず,短母音の /sɛz/ となってしまいます.なぜ said, says はこのような発音なのでしょうか.これには歴史的な経緯があります.音声解説をどうぞ.



 実は,英語母語話者の発音を調査してみますと,先にダメ出しはしたものの,予想される通りの2重母音をもつ発音 /seɪd/, /seɪz/ も行なわれているのです.ただ,あくまで非標準的でマイナーな発音としてですので,私たちとしては不規則ながらもやはり短母音をもつ /sɛd/, /sɛz/ を確実に習得しておくのが無難でしょう.
 歴史的な音変化の経緯を要約すれば次のようになります.もともと動詞 say は,近代英語期の入り口までは,綴字が示す通り /saɪ/ でした.それに従って,過去形は /saɪ(ə)d/,3単現形は /saɪ(ə)z/ と規則的な発音を示していました.ところが,17世紀までに2重母音 /aɪ/ は長母音 /ɛː/ へと変化したのです.ちょうど日本語の「ヤバイ」が,ぞんざいな素早い発音で「ヤベー」となるのに似た,どの言語にもよく見られる音変化です.別の変化が起こらず,およそこの段階にとどまったまま現代に至っていたのであれば,めでたく規則的に say /seɪ/, said /seɪd/, says /seɪz/ となっていたでしょう(実のところ,後者2つもマイナーな発音としてあり得ることは上述しました).
 ところが,過去形と3単現形については,その後もう1つ別の音変化が生じました.長母音 /ɛː/ が短化して短母音 /ɛ/ となったのです.こうして say /seɪ/ に対して不規則にみえる /sɛd/, /sɛz/ が生じてしまったのです.同じ音変化に巻き込まれた別の単語として,againagainst を挙げておきましょう.短母音をもつ /əˈgɛn(st)/ が優勢ですが,2重母音をもつ /əˈgeɪn(st)/ も並行して聞かれるという状況になっています.
 なぜ過去形と3単現形でのみ母音が短化したのかというのは,必ずしも解明されていない謎です.said ˈhe, says ˈshe のような用いられ方が多く,主語代名詞に対して相対的に動詞が弱く発音されるので短化したという説明が提案されていますが,これも1つの仮説にすぎません.
 関連する話題と議論について,##541,543,2130の記事セットもお読みください.

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2020-12-27 Sun

#4262. なぜ have, has, had はこのような発音と綴字なのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][gvs][sound_change][vowel][spelling_pronunciation_gap][pronunciation][spelling][have][conjugation][3sp][verb][consonant][phonetics]

 動詞としても助動詞としても超高頻度語である have .超高頻度語であれば不規則なことが起こりやすいということは,皆さんもよく知っていることと思います.ですが,have の周辺にはあまりに不規則なことが多いですね.
 まず,<have> と綴って /hæv/ と読むことからして妙です.gave /geɪv/, save /seɪv/, cave /keɪv/ と似たような綴字ですから */heɪv/ となりそうなものですが,そうはなりません.have の仲間で接頭辞 be- をつけただけの behave が予想通り /biˈheɪv/ となることを考えると,ますます不思議です.
 次に,3単現形が *haves ではなく has となるのも妙です.さらに,過去(分詞)形が *haved ではなく had となるのも,同様に理解できません.なぜ普通に *haves や *haved となってくれないのでしょうか.では,この3つの疑問について,英語史の立場から答えてみましょう.音声解説をどうぞ.



 そうです,実は中英語期には /hɑːvə/ など長い母音をもつ have の発音も普通にあったのです.これが続いていれば,大母音推移 (gvs) を経由して現代までに */heɪv/ となっていたはずです.しかし,あまりに頻度が高い語であるために,途中で短母音化してしまったというわけです.
 同様に,3単現形や過去(分詞)形としても,中英語期には今ではダメな haveshaved も用いられていました.しかし,13世紀以降に語中の /v/ は消失する傾向を示し,とりわけ超高頻度語ということもあってこの傾向が顕著に表われ,結果として hashad になってしまったのです./v/ の消失は,head, lord, lady, lark, poor 等の語形にも関わっています(逆にいえば,これらの語には本来 /v/ が含まれていたわけです).
 一見不規則にみえる形の背景には,高頻度語であること,そして音変化という過程が存在したのです.ちゃんと歴史的な理由があるわけですね.この問題に関心をもった方は,##4065,2200,1348の記事セットにて詳しい解説をお読みください.

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2020-11-18 Wed

#4223. なぜ同じ <oo> の綴字なのに bookfood では母音が異なるのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][vowel][pronunciation][sound_change][gvs][spelling_pronunciation_gap][centralisation][spelling]

 <oo> という綴字をもつ book, good, look, stood は,いずれも短母音 /ʊ/ で発音されます.一方,同じ <oo> で綴られますが,food, pool, tooth, doom では長母音 /uː/ となっています.短長どちらの母音になるのかは単語によって決まっており,暗記するしかありません.なぜこのような状況になっているのでしょうか,音声解説をお聴きください.



 歴史的には <oo> で綴られた上記の単語は,もともとはすべて長い /uː/ で発音されていました.しかし,その一部の book, good, look, stood 等が,どういうわけか短母音化することになりました.さらに,その短母音化した単語のなかで「選ばれし」2語だけ --- bloodflood --- が,どういうわけか中舌化 (centralisation) しました.この2語については -lood という共通点があることに気づきますが,だからといって,なぜこの2つが選ばれたのかは必ずしも解明されていません.音変化というのは,このように気まぐれなところがあります.
 現在 room が /ruːm/ ではなく /rʊm/ と短母音化しつつある点にも触れました.こちらも今後ウォッチしていきたいところですね.
 今回の話題に関連する記事として,##547,1353,2293,2290の記事セットもご覧ください.

Referrer (Inside): [2020-11-20-1]

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2020-10-02 Fri

#4176. なぜ lieutenant の発音に /f/ が出るのか? [sobokunagimon][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][ame_bre][french][etymology][spelling_pronunciation]

 lieutenant (代理,副官;中尉)は,アメリカ発音では素直に /l(j)uːˈtɛnənt/ となるが,イギリス発音ではどういうわけか /lɛfˈtɛnənt/ と /f/ の子音が現われる(cf. 「#1343. 英語の英米差を整理(主として発音と語彙)」 ([2012-12-30-1])).このイギリス発音に含まれる /f/ の由来については説明するのが難しく,いくつかの説が提案されている.
 この語は中英語期に古フランス語 lieutenant を借用したものである.lieu (place) + tenant (holding) という語形成で,「別の人の地位を代わりに担う人」という原義から「代理;(大尉の代理役としての)中尉」などの語義が発達した.中英語期以来,主たる綴字は lieu-tenant など /f/ を示唆しないものではあったが,並行して /f/ を含む lieftenaunt なども行なわれており,早くから綴字上(そしておそらく発音上も)揺れがみられた.
 近代に入っても長らく揺れは継続した.OED の当該語の語源欄によると,Walker により /v/ の発音 (/f/ ですらない)の実態が指摘されている.

In 1793 Walker gives the actual pronunciations as /lɛv-/ /lɪvˈtɛnənt/, but expresses the hope that 'the regular sound, lewtenant' will in time become current. In England this pronunciation /ljuːˈtɛnənt/ is almost unknown. A newspaper quot. of 1893 in Funk's Standard Dict. Eng. Lang. says that /lɛfˈtɛnənt/ is in the U.S. 'almost confined to the retired list of the navy'.


 /f/ の由来について,OED は同語源欄で次のように2つの説を紹介している(以下の引用で,<f> を示さない綴字,示す綴字はそれぞれ「αタイプ」「βタイプ」と称されている).

The origin of the 硫 type of forms (which survives in the usual British pronunciation, though the spelling represents the 留 type) is difficult to explain. The hypothesis of a mere misinterpretation of the graphic form (u read as v), at first sight plausible, does not accord with the facts. In view of the rare Old French form luef for lieu (with which compare especially the 15th cent. Scots forms luf-, lufftenand above) it seems likely that the labial glide at the end of Old French lieu as the first element of a compound was sometimes apprehended by English-speakers as a v or f. Possibly some of the forms may be due to association with LEAVE n.1 or LIEF adj.


 第1の説は,u/v の綴字が(渡り)母音 /w/ ではなく,子音 /f, v/ として解釈され,それが発音に反映されたというものである.識字率の高い現代では,そのような綴字発音 (spelling_pronunciation) もあり得ようが,中英語期や近代英語期にそのような現象があったという主張には,私は半信半疑である(cf. 「#1152. sneeze の語源」 ([2012-06-22-1])).どちらかというと,渡り母音 /w/ が異音 [v] と聞き間違えられたという音声的可能性を指摘する第2の説を採りたい.
 時代は下って18世紀には「#678. 汎ヨーロッパ的な18世紀のフランス借用語」 ([2011-03-06-1]) でみたように,フランス語より lieutenant-colonel (陸軍中佐)という複合語が英語にもたらされた.第2要素の colonel も綴字と発音の関係という点からは問題を含んでいる.これについては,「#3016. colonel の綴字と発音」 ([2017-07-30-1]) を参照.

Referrer (Inside): [2021-03-30-1]

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2020-09-29 Tue

#4173. Palsgrave のフランス語文典 [french][orthoepy][gvs][spelling_pronunciation_gap][spelling_reform][oed][emode]

 フランス語研究者であり正音学者だった16世紀前半に活躍したイギリス人 John Palsgrave は,英語(学)史上も重要である.フランス語研究者として1530年に英語でフランス語文典 Lesclarcissement de la Langue Francoyse を著わし,当時もっともよく知られたフランス語文典となった.「#3836. フランス語史の年表」 ([2019-10-28-1]) に名を挙げられるくらいであるから,その影響力はただものではない.
 Palsgrave はロンドンに生まれ,ケンブリッジ大学に学び,パリで修士号を取得した.帰国してフランス語教師となり Thomas More などとも親交を深めた.彼の英語学史上の最大の業績は,外国語であるフランス語を「音声表記」した点にあるといってよい.他言語の発音を客観的に記述するという,現代の音声学の基本的な姿勢の伝統を創始した人物である(渡部,p. 38).
 16世紀は,Palsgrave のような正音学者が多数輩出した時代である.大母音推移 (gvs) 等の音変化が進行し,発音と綴字のギャップ (spelling_pronunciation_gap) が開きつつあるなかで,綴字改革 (spelling_reform) の訴えが様々な陣営よりなされていた.外国語研究者は発音の問題に敏感である.Palsgrave も,例外ではなく英語の発音と綴字の問題に並々ならぬ関心を示す正音学 (orthoepy) の徒だったのである.なお,外国語研究の立場から英語の発音と綴字の問題に関心を示した初期近代英語期の「同志」としては,ほかに De pronunciation Graecae (1555) を著わした J. Cheke や Grammatica Linguae Anglicanae (1653) を著わした J. Wallis もいる(石橋,p. 616).
 Palsgrave のもう1つの注目すべき点は,OED の引用文の常連であることだ.OED は,かの Lesclarcissement から5418個もの用例を引いてきており,この時期の語彙記述に多大な貢献をなしている(cf. 「#642. OED の引用データをコーパスとして使えるか (4)」 ([2011-01-29-1])).この著書は語学書であるから,フィロロジストもである OED 編纂者にとって,当然ながら「大好物」である.編纂者が,このような垂涎ものの著書から(とりわけ文法用語などの)語彙を集めてこないわけがない.
 以上,Palsgrave が英語(学)史上ひとかどの人物とされている背景を簡単に紹介した.

 ・ 渡部 昇一 『英語学史』 英語学大系第13巻,大修館書店,1975年.
 ・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.

Referrer (Inside): [2021-02-10-1]

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