hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新    

cmc - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-12-21 12:40

2023-09-25 Mon

#5264. Voicy heldio で khelf の「ゼミ合宿収録シリーズ」が始まっています [khelf][khelf-conference-2023][seminar][hel_education][voicy][notice][cmc][net_speak][aokikun]

 「#5259. khelf のゼミ合宿中です」 ([2023-09-20-1]) で触れたとおり,先週の9月21日(火)から23日(木)にかけて,khelf 所属の現役の学部生と大学院生とともに,泊まり込みゼミ合宿を実施しました.
 初日と2日目は主に「ポスターなしポスターセッション」にて互いの個人研究の経過報告を聴き,質問や助言を交わし合うという形で進めました.そして,最終日3日目の朝には,3--4人1組でグループを組み,10分ほどの英語史・英語学に関する音声コンテンツを準備し,私の立ち会いのもと Voicy heldio の収録をするという課題を課しました.heldio 出演ではすでにベテランの院生もいればまったく初めての学部生もいるということで,すべてがスムーズに運んだわけではありませんが,それぞれのグループが工夫を重ね,独自の音声コンテンツができあがりました.
 「ゼミ合宿収録シリーズ」開始ののろしとなる一昨日の院生たちによるコンテンツ「#845. ゼミ合宿最終日の朝,大学院生4人と雑談」配信に引き続き,今朝も「#847. ゼミ合宿収録シリーズ (1) --- khelf 会長の青木くんと学部生3名による emoji と CMC」を配信しました.



 今朝の回では,多くの現代人が関心を寄せる絵文字 (emoji) と CMC (computer-mediated communication) が話題となっています.khelf 会長の青木輝さん主導による,学部生学生たちとの対談回となっています.hellog と heldio の関連回として以下を挙げておきます.

 ・ hellog 「#808. smileys or emoticons」 ([2011-07-14-1])
 ・ hellog 「#1664. CMC (computer-mediated communication)」 ([2013-11-16-1])
 ・ heldio 「#816. ネット時代の言葉遣い --- CMC (生放送のアーカイヴ)」

 絵文字と CMC の話題は,10月に khelf より発行される予定の『英語史新聞』第7号のなかでも取り上げられる予定です.関連して khelf 公式のX(旧ツイッター)アカウント @khelf_keio も,ぜひフォローしていただければと思います.

khelf banner


[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-08-26 Sat

#5234. 5人で語る CMC (computer-mediated communication) [cmc][punctuation][voicy][heldio][masanyan][ogawashun][punctuation][link]

 「#1664. CMC (computer-mediated communication)」 ([2013-11-16-1]) について,英語学研究者が5人集まって飲みながらフリートークしました.話しはあちらこちらに飛んでいますが,結果として CMC の様々な側面に光を当てた議論となっていると思います(し,随所に笑いもあります).一昨日の Voicy heldio の生放送でお届けしたものを,昨日アーカイヴより通常配信しています.60分ほどの長尺ですが,この週末にゆっくりお聴きいただければと.「#816. ネット時代の言葉遣い --- CMC (生放送のアーカイヴ)」です.



 今回参加している私以外の4人のメンバーは以下の通りです.

 ・ 多々良直弘さん(桜美林大学): https://gproweb1.obirin.ac.jp/obuhp/KgApp?resId=S000185
 ・ 金田拓さん(帝京科学大学):https://www.ntu.ac.jp/research/kyoin/kodomo/gakoukyouiku/kaneta_t.html
 ・ 小河舜さん(フェリス女学院大学ほか):https://sites.google.com/view/shunogawa (cf. ogawashun)
 ・ 「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学):https://sites.google.com/view/moritamasato/ (cf. masanyan)

 主に句読点 (punctuation) の話題で盛り上がりました.関連する hellog 記事をいくつか挙げておきます.
 
 ・ 「#574. punctuation の4つの機能」 ([2010-11-22-1])
 ・ 「#575. 現代的な punctuation の歴史は500年ほど」 ([2010-11-23-1])
 ・ 「#808. smileys or emoticons」 ([2011-07-14-1])
 ・ 「#2848. 「若者は1字下げない」」 ([2017-02-12-1])
 ・ 「#3045. punctuation の機能の多様性」 ([2017-08-28-1])
 ・ 「#3891. 現代英語の様々な句読記号の使用頻度」 ([2019-12-22-1])
 ・ 「#3893. grammatical punctuation と correspondence punctuation」 ([2019-12-24-1])
 ・ 「#4751. なぜすべてを大文字書きする人がいるの?」 ([2022-04-30-1])
 ・ 「#4987. 英語の感嘆符の使いすぎ批判は19世紀から」 ([2022-12-22-1])
 ・ 「#4986. 日本語で増えてきている感嘆符」 ([2022-12-21-1])

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-11-16 Sat

#1664. CMC (computer-mediated communication) [medium][netspeak][writing][cmc]

 「#1662. 手話は言語である (1)」 ([2013-11-14-1]) で,ヒトの言語の媒体には4つの形態があると述べた.音声言語 (speech),文字言語 (writing),コンピュータ媒介言語 (CMC = computer-mediated communication),手話 (sign_language) である.speech と writing の共通点と相違点については,これまでも「#748. 話し言葉書き言葉」 ([2011-05-15-1]),「#849. 話し言葉書き言葉 (2)」 ([2011-08-24-1]) ,「#1001. 話しことばと書きことば (3)」 ([2012-01-23-1]),「#230. 話しことばと書きことばの対立は絶対的か?」 ([2009-12-13-1]) ほかの記事で取り上げてきたが,今回は電子媒体を通じての言語使用である CMC について考えてみたい.
 電子メール,チャット,ツイッター,SNS (Social Networking Service) ,Web などの電子媒体には,話しことば的な側面と書きことば的な側面が同居しているとしばしば言われる.例えば,電子メールでは,原則として文字を利用しているという点で書きことば的ではあるが,文体・口調はしばしば話しことば的であり,電話に近い用途で用いられることが多い.電子的なグループ討論はさながら書くおしゃべりであるし,本来は話しことばの領域にあった「つぶやき」が,文字に付されて一般に公開されるようにもなっている.
 しかし,CMC は話しことばと書きことばの合の子として定義するだけですむものではない.CMC はこれまでの媒体にないいくつかの重要な特徴をもっており,独立した媒体とみなすのが妥当である.Crystal (153--58) は,CMC がいかに話しことばと異なるか,いかに書きことばと異なるかを指摘しながら,その媒体としての自律性を主張している.

[話しことばと異なる点]

 (1) 同時性フィードバックがない.コンピュータからメッセージを送る際には,「送信」作業が必要であり,送る方向も一方向である.やりとりは一回一回完了させる必要があり,同時のやりとりは起こらない.(ただし,技術的には,タイプするごとに(つまり確定前に)メッセージが送信されるシステムを築くことは可能であり,将来的に実現されることはあるかもしれない.)
 (2) 相手にメッセージがどの程度うまく届くかを測る手段がない.
 (3) チャットルームなどで,複数(の系列)の会話を聴くことができ,参加することができる.すべてに関わることもできるし,取捨選択することもできる.
 (4) やりとりのリズムが遅いことが多い.返信者の都合やコンピュータの技術的な問題により,メールの返事で数時間から数日間待つことは普通である.
 (5) 話ことばにおける会話の順序 (turn) の規範が厳密には守られない.CMC における turn は情報パケットの先着順であり,技術的な問題により,期待される順序と前後する可能性すらある.また,(3) により,複数系列の入り組んだ turn が生じる可能性もある.
 (6) 話ことばにおいて超分節音的な要素がもつ機能をうまく再現できない.ただし,代替手段として,句読点や「#808. smileys or emoticons」 ([2011-07-14-1]) の使用がある.

[書きことばと異なる点]

 (8) 空間的に縛られていない.例えば,ウェブページではメッセージの内容も形式も動的である.メッセージの発信者も受信者も,当たり前のようにメッセージを変更したり,加えたり,消去したりできる.コピーして加工するなど,元のメッセージを使い回すことも容易にできる.CMC のこの性質は,革命的ともいえるメッセージの "framing" を可能にした.複数人の間でやりとりされたメッセージを加工したり,整序したりすることにより,目的に沿った情報の整理と累積が可能となる.
 (9) リンクを張り,ジャンプすることができる.伝統的な書きことばでも脚注や参照の機能は見られるが,その容易さにおいてウェブの hypertext link とは比較にならない.
 (10) 注意深く洗練された文章構成がなされない.場合にもよるし,書き手にもよるが,典型的にいって,CMC では書きことばに典型的な,熟考された文章が書かれることは少ない.
 (11) 無劣化でコピーできる.書写,印刷,光学的コピーと異なり,電子的に無劣化で再現できる.

 CMC は,歴史的にいえば,話しことばと書きことばの両媒体の接触の結果として発生してきたことは確かだろう.しかし,共時的にいえば,CMC は話しことばや書きことばと同列に置かれる自律した媒介とみなしてよい.

 ・ Crystal, David. How Language Works. London: Penguin, 2005.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow