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prosody - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2020-08-09 05:24

2020-07-21 Tue

#4103. 頭韻のあり方の分水嶺はやはり1066年? [alliteration][prosody][meter][norman_conquest]

 ゲルマン語の韻律上の伝統としての頭韻 (alliteration) は,英語史においても古英語から現代英語まで連綿と続いている.しかし,韻文の技巧という観点からみると,韻律論的にも文学的にも,古英語と中英語の間に明確な断絶があるとされている.この過渡期には,表面的には同じ頭韻が行なわれ続けているようにみえても,頭韻を司る抽象的な韻律上の規則に注目すれば,伝統は忠実には保持されておらず,せいぜい「崩れた」形で継承されているにすぎない.継承か断絶かという議論は古くからあるが,少なくとも「そのままの継承」でないことは明白だ.
 では,かりに断絶とみたとき,その分水嶺はいつ頃なのか.まさか,お約束のように,かの1066年ではないだろうと思っていたところ,「いや実に1066年なのだ」という Minkova (339) の記述に出会い面食らった.

The 1065 poem The Death of Edward is the last composition that can be described reasonably as belonging to the Classical metrical tradition of Anglo-Saxon versification. Very revealing in this respect are the statistics and the comments presented in Cable (1991: 54--5). He notes one single metrically dubious verse (soþfæste sawle 'soothfast soul' (28a)) in the sixty-eight verses of The Death of Edward, while on the other side of the 1066 chronological divide the next extant poem with prominent alliteration, Durham, composed c. 1100, shows a very high level of unmetricality. In Durham 38.1 per cent of the forty-two verses fail to conform to the classical rules. Thus, while the cataclysmic effect of the Norman Conquest with respect to changes affecting phonology and morphosyntax can be questioned, the demarcation line in terms of versification modes is clearer, at least within the inevitable limitations imposed by the surviving texts.


 さすがにピンポイントに1066年ということを強調しているわけではないが,象徴的にはやはりこの年代のようだ.引用でも述べられている通り,英語も自然言語である以上,音韻論や形態統語論がある年代にガクンと変わるということは考えにくい.その点では韻律論も同じだろう.しかし,韻律論と関係は深いが韻律論そのものではない韻文の技巧として頭韻規則を眺める場合,ある年代を境に1つの規則から別の規則にガクンと変化するということはあり得るかもしれない.この場合の規則とは社会制度に近いもので,社会制度とはある日を境にして人々が一方から他方に意識的に乗り換えることができる代物だからだ.
 古英語末期の The Battle of Maldon などでも伝統的なリズムからは逸脱していると言われており,分水嶺としての1066年を額面通りに受け入れることはできないにせよ,象徴的な意義は認めてよいだろう.

 ・ Minkova, Donka. A Historical Phonology of English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2014.
 ・ Cable, Thomas. The English Alliterative Tradition. Philadelphia: U of Pennsylvania P, 1991.

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2020-02-25 Tue

#3956. 語形と韻脚がよく一致していた古英語と一致しなくなり始めた中英語 [prosody][meter][syllable][french][loan_word][rsr]

 語形 (wordform) と韻脚 (foot) は,各々独立した単位である.片方は形態音韻論上の単位,もう一方は韻律論上の単位として,各々異なるレベルで役割を担っている.しかし,両者は一致することもよくある.実際,2音節の語形は原則として韻脚に乗るだろう.
 歴史的にみると語形と韻脚の一致度は減少傾向にあるようだ.Ritt (122) が次のように論じている.

It seems that English changed from a language in which isomorphy between feet and wordforms was relatively common into one in which it was the exception rather than the rule. . . . Old English word stress fell, as a rule, on the leftmost syllable of the stem. Furthermore, Old English wordforms tended to consist of a stem plus inflectional endings, so that Old English wordforms would typically consist of one stressed and one or more unstressed syllables. Since this type of structure is practically identical with the optimal foot structure, it is easy to see why Old English wordforms very often tended to coincide with feet. It can be assumed that this tendency of feet and wordforms to coincide remained unchanged until well into the Middle English Period. Then, however, the relationship became unbalanced due to two factors. First, the number of monosyllabic words, which was already high in Old English, increased steadily until monosyllabism became typical of English wordforms. A comparison of Old English texts (Beowulf and The Battle of Maldon) and Middle English ones (The Owl and the Nightingale and Chaucer's Canterbury Tales) shows that in Old English less than half of all wordforms used were monosyllabic, while in Middle English roughly two-thirds were. Second, a large number of French loan words were integrated into the English lexicon, and many of them were stressed on their final syllables. It is easy to see that the combination of these two factors must have decreased the probability of feet to coincide with wordforms considerably.


 古英語の語形は典型的に「1音節の語幹(強勢)+1音節の屈折語尾(弱勢)」という構成なので,2音節の韻脚ときれいに重なることが多い.ところが,中英語にかけて屈折語尾が衰退し,1音節の語形が増えてくると,1つの語形のみで1つの韻脚を構成することができなくなってくる.つまり,形態音韻論と韻律論がかみ合わなくなってくる.さらに中英語期には,異質な強勢規則 (= Romance Stress Rule; rsr) をもつフランス語からの借用語が大量に流入し,英語本来の「強弱」の語形とともに「弱強」などの語形も増えてきた.こうして,語形が従来型の韻脚に必ずしも乗らないことが多くなってきた.つまり,古英語から中英語にかけての一連の変化を通じて,英語は類型的にいって語形と韻脚が一致しやすいタイプの言語から一致しにくいタイプの言語へとシフトしてきたことになる.
 この類型的なシフトは何を意味するのだろうか.様々な含蓄があると思われるが,1つには韻律の作用する場が,形態音韻論上の単位である語(形)というよりも,それより大きな句や節といった統語論上の単位へ移り変わったということがある.形態音韻論上の単位である語(形)の側からみれば,韻律からのプレッシャーがかからなくなり,その分,韻律の要請による語の内部での音変化(特に量の変化)が抑制されるといった効果があっただろう.換言すれば,語(形)がより安定するようになったといえるかもしれない.
 屈折の衰退と語(形)の1音節化については「#655. 屈折の衰退=語根の焦点化」 ([2011-02-11-1]),「#2626. 古英語から中英語にかけての屈折語尾の衰退」 ([2016-07-05-1]) を参照.また,屈折の衰退とフランス借用語の導入という2つの要因は,今回の話題にとどまらず中英語の韻律に様々な形でインパクトを与えたと考えられるが,指摘しておくべきもう1つの重要な点は脚韻 (rhyme) の導入との関係である.これについては「#796. 中英語に脚韻が導入された言語的要因」 ([2011-07-02-1]) を参照.

 ・ Ritt, Nikolaus. Quantity Adjustment: Vowel Lengthening and Shortening in Early Middle English. Cambridge: CUP, 1994.

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2020-02-13 Thu

#3944. prosodymeter の関係 [prosody][meter][terminology][stress][methodology]

 標題の2つの用語 prosody と {{cat('meter')} (or metre) の区別は意外と難しい.論者によっても各々の指示するものが異なっている場合もあるし,しばしば和訳にあたって両方とも「韻律」と訳される.一般的な解釈にしたがっていえば,いずれも強勢,抑揚,リズムなどに関連するが,prosody は話し言葉の世界に属する日常的な現象であり,meter は詩の世界に属する特殊な現象といえる.Minkova (323) は,両者の関係について示唆に富む説明を与えている.

The term prosody, as used here is restricted to stress phenomena in the spoken language, so 'prosody' is short for 'speech prosody' . . . . Meter describes the modes of versification, where linguistic material is arranged in specific recursive frames; as used here, 'meter' is short for 'verse or poetic meter'. Meter always draws on the prosodic structures available in the language. The two systems rely on the same fundamental distinctive categories and relations, though meter obeys verse-specific conventions such as repetition, alliteration and end-rhyme, and not all prosodic features have to be harnessed into a specific verse form. Nevertheless, there are important correspondences between the structure of verse and the structure of the ambient language. This makes meter a valuable source of information about language. The linguistic competence of the poet provides the raw material for verse; the way in which that material is manipulated to fit the metrical constraints of a particular tradition reveals the poet's, or the copyist's intuitions about prosody.

 
 英語史を含めた歴史言語学において,ここで述べられている prosody と meter の相互関係を理解しておくことは,とても重要である.多くの場合,現存するかつての書き言葉の資料に基づいて,対応する話し言葉の prosody を復元することは困難を極める.しかし,韻文資料から読み取れる meter を手がかりに,そこに反映されていると想定される一般的な話し言葉の prosody (のなにがしか)を,ある程度は復元できる可能性がある.prosody は meter に基本的材料を提供し,meter はそれを利用して詩を構成するとともに,prosody を伝えてくれる存在なのである.

 ・ Minkova, Donka. A Historical Phonology of English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2014.

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2020-01-15 Wed

#3915. 大母音推移と周辺の母音変化の循環的な性質 [gvs][vowel][sound_change][drift][isochrony][prosody]

 昨日の記事「#3914. Stenbrenden 曰く「大母音推移は長期の漂流の一部にすぎない」」 ([2020-01-14-1]) で引用した Stenbrenden は,「大母音推移」 (gvs) を長期的な視野から観察し,より大きな母音変化の漂流 (drift) の一部であると再評価した.では,その漂流というのは,いかなる存在なのか.Stenbrenden (316) は,調査対象とした長母音と,それが歴史的にたどってきた変化タイプを以下のように一覧にし,いくつかの変化タイプが繰り返し現われる事実に注目した.

ME and eModE long-vowel shifts

OE vowel, PDE reflexType of changeDate of beginning of change
ȳ > ī > /aɪ/unrounding950
 diphthongisation1250
ēo > ø̄ > ē > /iː/monophthongisation11th century
 unrounding12th--15th centuries
 raising1250
ā > ō̜ > ō > [ou] > /əʊ/rounding11th century
 raising16th century
 diphthongisation16th century
ǣ > > ē > /iː/ or /eɪ/raising/ɛː/ 11th c.; /eː/ 15th c.; /iː/ 16th c.
 (diphthongisation)(16th--17th centuries)
ē > /iː/raising1225
ō > /uː/ or /ʊ/ 〜 /ʌ/raising1225
 shortening; unrounding14th--15th centuries;
NF: ō > [üː](often fronted in PDE)15th--16th centuries
 NF: fronting and raising(late) 13th century
ī > /aɪ/diphthongisation1250
ū > /aʊ/diphthongisation1250


 繰り返し現われる変化タイプとは raising, fronting, diphthongisation, monophthongisation などのことを指すが,これらが互いに無関係に生じてきたとは考えにくい.むしろ,ここには "cyclical nature" (循環的な性質)を見出すことができそうだ.さらにいえば,英語のみならず多くのゲルマン諸語にも類似した循環的な母音変化の漂流がみられることから,ゲルマン諸語に通底する性質すら突き止めることができるかもしれない.
 ヒントとなるのは,Ritt などの主張する "rhythmic isochrony" の原理,すなわち強い音節と弱い音節が明確に区別され,それらが交互に現われる韻脚の各々が,およそ同じ長さをもって発音されるという韻律上の特徴である.rhythmic isochrony と母音変化の関係については「#1402. 英語が千年間,母音を強化し子音を弱化してきた理由」 ([2013-02-27-1]) を参照.

 ・ Stenbrenden, Gjertrud Flermoen. Long-Vowel Shifts in English, c. 1150--1700: Evidence from Spelling. Cambridge: CUP, 2016.

Referrer (Inside): [2020-01-16-1]

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2019-08-28 Wed

#3775. 英語は開音節を目指して音変化を起こしている [sound_change][phonetics][phonology][r][l][consonant][syllable][vowel][stress][rhythm][prosody]

 「#3719. 日本語は開音節言語,英語は閉音節言語」 ([2019-07-03-1]) でみたように,英語は類型論的にいえば有標の音節タイプである閉音節を多くもつ言語であることは事実だが,それでも英語の音変化の潮流を眺めてみると,英語は無標の開音節を志向していると考えられそうである.
 安藤・澤田は現代英語にみられる r の弾音化 (flapping; city, data などの t が[ɾ] となる現象),l の咽頭化 (pharyngealization; feel, help などの l が暗い [ɫ] となる現象),子音の脱落(attem(p)t, exac(t)ly, mos(t) people など)といった音韻過程を取り上げ,いずれも音節末の子音が関わっており,その音節を開音節に近づける方向で生じているのではないかと述べている.以下,その解説を引用しよう (70) .

 弾音化は,阻害音の /t/ を,より母音的な共鳴音に変える現象であり,これは一種の母音化 (vocalization) と考えられる.非常に早い話し方では,better [bɛ́r] のように,弾音化された /t/ が脱落することもある.また,/l/ の咽頭化では,舌全体を後ろに引く動作が加えられるが,これは本質的に母音的な動作であり,/l/ は日本語の「オ」のような母音に近づく.実際,feel [fíːjo] のように,/l/ が完全に母音になることもある.したがって,/l/ の咽頭化も,共鳴音の /l/ をさらに母音に近づける一種の母音化と考えられる.子音の脱落は,母音化ではないが,閉音節における音節末の子音連鎖を単純化する現象である.
 このように,三つの現象は,いずれも,音節末の子音を母音化したり,脱落させることによって,最後が母音で終わる開音節に近づけようとしている現象であり,機能的には共通していることがわかる.〔中略〕本質的に開音節を志向する英語は,さまざまな音声現象を引き起こしながら,閉音節を開音節に近づけようとしていると考えられる.


 これは音韻変化の方向性が音節構造のあり方と関連しているという説だが,その音節構造のあり方それ自身は,強勢やリズムといった音律特性によって決定されているともいわれる.これは音変化に関する壮大な仮説である.「#3387. なぜ英語音韻史には母音変化が多いのか?」 ([2018-08-05-1]),「#3466. 古英語は母音の音量を,中英語以降は母音の音質を重視した」 ([2018-10-23-1]) を参照.

 ・ 安藤 貞雄・澤田 治美 『英語学入門』 開拓社,2001年.

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2019-04-19 Fri

#3644. 現代英語は stress-timed な言語だが,古英語は syllable-timed な言語? [prosody][phonology][stress][vowel][typology][syllable][poetry]

 「#1647. 言語における韻律的特徴の種類と機能」 ([2013-10-30-1]) でみたように,英語は stress-timed なリズム,日本語は syllable-timed (or mora-timed) なリズムをもつ言語といわれる.前者は強勢が等間隔で繰り返されるリズムで,後者は音節(モーラ)が等間隔で繰り返されるリズムである.英語に近隣の言語でいえばドイツ語は stress-timed で,フランス語やスペイン語は syllable-timed である.
 このように共時的な類型論の観点からは諸言語をいずれかのリズムかに振り分けられるが,通時的にみると各言語のリズムは不変だったのだろうか,あるいは変化してきたのだろうか.
 英語に関していえば,ある見方からは確かに変化してきたといえる.現代英語の stress-timed リズムの基盤にあるのは曖昧母音 /ə/ の存在である.強勢のある明確な音価と音量をもつ母音と,弱く短く発音される曖昧母音とが共存しているために,前者を核とした韻律の単位が定期的に繰り返されることになるのだ.しかし,古英語では曖昧母音が存在しなかったので,stress-timed リズムを成立させる基盤が弱かったことになる.古英語はむしろ syllable-timed リズムに近かったともいえるのである.Cable (23--24) の議論を聞こう.

To begin with, Old English did not have reduced vowels. The extensive system of inflectional endings depended on the full values of the short vowels, especially [ɑ], [ɛ], [u], and [ɔ]; and in polysyllabic words these and other short vowels were not reduced to schwa. The surprising effect is that in its lack of reduced vowels Old English can be said to have similarities with the phonological structure of a syllable-based language like Spanish. In this respect, both Old English and Spanish differ from Late Middle English and Modern English. Consequently, Old English can be hypothesized to have more of the suprasegmental structure of syllable-based languages---that is, the impression of syllable-timing---despite our thinking of Old English as thoroughly Germanic and heavily stressed.


 Cable は,古英語が完全な syllable-timed な言語だと言っているわけではない.強勢ベースのリズムの要素もあるし,音節ベースのそれもあるとして,混合的なリズムだと考えている.上の節に続く文章も引用しておこう.

These deductions and hypotheses from theoretical and experimental phonology are supported in the most recent studies of the meter of Old English poems. Beowulf has never been thought of as a poem in syllabic meter. Yet the most coherent way to imagine Old English meter is as a precisely measured mix of "accentual" elements (as the meter has traditionally been understood), "syllabic" elements (which may seem more appropriate for French verse), and "quantitative" elements (which are most familiar in Greek and Latin). (Cable 24)


 ・ Cable, Thomas. "Restoring Rhythm." Chapter 3 of Approaches to Teaching the History of the English Language: Pedagogy in Practice. Introduction. Ed. Mary Heyes and Allison Burkette. Oxford: OUP, 2017. 21--28.

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2019-01-30 Wed

#3565. 韻律論と分節音韻論の独立性について [gvs][vowel][prosody][phonology][ot][acquisition][evolution]

 英語には,歴史的な大母音推移 (Great Vowel Shift; gvs) とは別に,現代英語の共時的な現象としての "Modern English Vowel Shift Rule (alterations)" というものがある.後者は,現代英語の派生語ペアにみられる音韻形態論的な変異に関する共時的な規則である.Chomsky and Halle に端を発し,その後の語彙形態論でも扱われてきたトピックだ.たとえば,次のようなペアの母音に関して交替がみられる.variousvariety, comedycomedian, studystudious, harmonyharmonious; divinedivinity, sereneserenity, sanesanity, reducereduction, foolfolly, profoundprofundity (McMahon 342) .
 McMahon は,この共時的な規則を最適性理論 (Optimality Theory; ot) で分析した先行研究の不備を指摘しながら,同理論は韻律論 (prosody) の問題を扱うのには長けているが,母音交替のような分節音に関する問題には適用しにくいのではないかと論じている.両部門は,一般には同じ「音韻論」にくくられるとはいえ,実際には独立性が高いのではないかという.McMahon (357) は,独立性の根拠をあげながら次のように論じている.

. . . we must recognise prosodic and melodic phonology as two different systems, and in fact there are many different strands of evidence pointing in that direction. For instance, prosodic phonology shows clearer connections with emotion, with gesture, and with aspects of call systems in other primates. Prosodic and segmental phonology behave very differently in cases of language disorder and breakdown, with some children who are seriously language-impaired finding considerable compensatory strength in prosody, for instance. Prosodic phonology is also acquired early, and there is evidence that the brain lateralisation of prosody and melody is different too, with more involvement of the right hemisphere in prosody, and strong left hemisphere localisation for segmentals. If prosody phonology and segmental phonology are actually two very different systems, which have evolved differently, are processed differently, are acquired differently, and interact with different systems (as with the paralinguistic uses of prosody, for instance), then there is no need for us to expect a single theory to deal with both.


 この見解は,OT の理論的な扱いに関するにとどまらず,言語学における音韻論の位置づけについても再考を促すものとなるだろう.

 ・ Chomsky, Noam and Morris Halle. The Sound Pattern of English. New York: Harper & Row, 1968.
 ・ McMahon, April. "Who's Afraid of the Vowel Shift Rule?" Language Sciences (Issues in English Phonology) 29 (2007): 341--59.

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2019-01-16 Wed

#3551. 初期近代英語の標準化と an/a, mine/my, in/i, on/o における n の問題 [standardisation][emode][variation][article][preposition][personal_pronoun][prosody]

 近代英語期にはゆっくりと英語の標準化 (standardisation) が目指されたが,標準化とは Haugen によれば "maximum variation in function" かつ "minimum variation in form" のことである(「#2745. Haugen の言語標準化の4段階 (2)」 ([2016-11-01-1])).後者は端的にいえば,1つの単語につき1つの形式(発音・綴字)が対応しているべきであり,複数の異形態 (allomorphs) が対応していることは望ましくないという立場である.
 標題の機能語のペアは,n をもつ形態が語源的ではあるが,中英語では n を脱落させた異形態も普通に用いられており,特に韻文などでは音韻や韻律の都合で便利に使い分けされる「役に立つ変異」だった.形態的に一本化するよりも,音韻的な都合のために多様な選択肢を残しておくのをよしとする言語設計だったとでも言おうか.
 ところが,初期近代英語期に英語の標準化が進んでくると,それ以前とは逆に,音韻的自由を犠牲にして形態的統一を重視する言語設計が頭をもたげてくる.標題の各語は,n の有無の間で自由に揺れることを許されなくなり,いずれかの形態が標準として採用されなければならなくなったのである.n のある形態かない形態か,いずれが選ばれるかは語によって異なっていたが,不定冠詞や1人称所有代名詞のように,用いられる分布が音韻的,文法的に明確に規定されさえすれば両形態が共存することもありえた.このような個々の語の振る舞いの違いこそあれ,基本的な思想としては,自由変異としての異形態の存在を許さず,それぞれの形態に1つの決まった役割を与えるということとなった.
 amy では n のない形態が選ばれ,inon では n のある形態が選ばれたという違いは,音韻的には説明をつけるのが難しいが,標準化による異形態の整理というより大きな言語設計の観点からは,表面的な違いにすぎないということになるだろう.この鋭い観点を提示した Schlüter (29) より,関連箇所を引用しよう.

Possibly as part of this standardization process, the phonological makeup of many high-frequency words stabilized in one way or the other. While Middle English had been an era characterized by an unprecedented flexibility in terms of the presence or absence of variable segments, Early Modern English had lost these options. A word-final <e> was no longer pronounceable as [ə]; vowel-final and consonant-final forms of the possessives my/mine, thy/thine, and of the negative no/none were increasingly limited to determiner vs. pronoun function, respectively; formerly omissible final consonants of the prepositions of, on, and in became obligatory, and the distribution of final /n/ in verbs was eventually settled (e.g. infinitive see vs. past participle seen). In ME times, this kind of variability had been exploited to optimize syllable contact at word boundaries by avoiding hiatuses and consonant clusters (e.g. my leg but min arm, i þe hous but in an hous, to see me but to seen it). The increasing fixation of word forms in Early Modern English came at the expense of phonotactic adaptability, but reduced the amount of allomorphy; in other words, phonological constraints were increasingly outweighed by morphological ones . . . .


 標題の語の n の脱落した異形態については「#831. Why "an apple"?」 ([2011-08-06-1]),「#2723. 前置詞 on における n の脱落」 ([2016-10-10-1]),「#3030. on foot から afoot への文法化と重層化」 ([2017-08-13-1]) などを参照.定冠詞の話題だが,「#907. 母音の前の the の規範的発音」 ([2011-10-21-1]) の問題とも関連しそうな気がする.

 ・ Schlüter, Julia. "Phonology." Chapter 3 of The History of English. 4th vol. Early Modern English. Ed. Laurel J. Brinton and Alexander Bergs. Berlin: Mouton de Gruyter, 2017. 27--46.

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2018-12-05 Wed

#3509. 韻律音韻論からみたアクセント移動 [metrical_phonology][stress][phonology][prosody]

 現代英語で fifteen は /fɪfˈtiːn/ のように第2音節にアクセントが落ちるが,fifteen boys となると /ˌfɪftiːn ˈbɔɪz/ のように boys に最も強いアクセントが置かれる一方,fifteen においては第2音節よりも第1音節のほうが相対的に強くなる.これは,第1アクセントであれ第2アクセントであれ,2つのアクセントが隣接音節に連続して現われるのを避けるために,アクセント位置の調整機能が作動したためであると説明される.
 このアクセント位置の調整機能を韻律音韻論 (metrical_phonology) の立場から定式化しようとすると,例えば次のようになる(高橋,pp. 34--35).まず fifteen 単体についての図を (1) に挙げよう.

(1) fifteen

 *語の主アクセント
**語アクセント
fifti:n音節


 この図は fifteen の韻律グリッドを示している.アクセントを記述するのに,何段階かの階層を用意するのが韻律音韻論の特徴である.ここでは「語アクセント」と「語の主アクセント」という2つの階層が用意されている.各音節を垂直方向にみて,より多く星印が付されている音節に,より強いアクセントが置かれるという決まりだ.つまり,fifteen は第2音節がより強く,第1音節がそれより弱いということになる.
 次に,boys を加えて名詞句としてみよう.

(2) fifteen boys (調整前)

  *句アクセント
 **語の主アクセント
***語アクセント
fifti:nboiz音節


 (1) の横方向に boys の1音節分を加え,縦方向に「句アクセント」の階層を上乗せした韻律グリッドである.英語の名詞句では主要部 boys に最も強いアクセントが置かれるが,それは3つの星印で示されている.しかし, 英語の韻律上の規則として,隣接する2音節がともに2つ(以上)の星印をもっていることは許容されない(と考えておく).これにより,赤の星印で示したように,隣接する4つのマス目に星印が配置されるのはルール違反となる.そこで,違反を回避する方法が模索される.いくつかの可能性があるが,ここでは左上の赤い星印が1マス左にずれると想定しておく.すると,この調整により次の (3) の韻律グリッドが生成される.

(3) fifteen boys (調整後)

  *句アクセント
* *語の主アクセント
***語アクセント
fifti:nboiz音節


 これは,実際の fifteen boys のアクセントの種類と位置を正確に表現している韻律グリッドとなる.以上のステップが唯一の可能性ではないが,少なくとも妥当性の高い仮説の1つではあろう.以上が,韻律音韻論でアクセント(移動)の問題を扱う際の基本的な考え方である.

 ・ 高橋 幸雄 「第1章 音の構造について ――音声学・音韻論――」西原 哲雄(編)『言語学入門』朝倉日英対照言語学シリーズ 3 朝倉書店,2012年.9--38頁.

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2018-11-10 Sat

#3484. 英詩の形式の変遷 [poetry][prosody][literature][alliteration][rhyme][meter][shakespeare]

 岡崎 (71) によれば,古英語以来,英詩の形式は,リズム,押韻方法,詩行構造,種類という点において大きな変化を遂げてきた.

 a. リズム:強弱から弱強へ
 b. 押韻:頭韻から脚韻へ
 c. 詩行構造:不定の長さ(音節数)から定まった長さ(音節数)へ
 d. 種類:単一の形式から多様な形式へ


 古英語期から中英語期へ,そして近代英語期以降へと,英詩の形式は確かに大変化に見舞われてきた.背景には,英語の音変化や外来の詩型からの影響というダイナミックな要因が関与している.それぞれの時代の代表的な詩型の種類と特徴を,岡崎の要約により示そう.

[ 古英語頭韻詩 ](p. 71)

 a. 1行(長行,long-line)は,二つの半行 (half-line) から構成されている.
 b. 半行の音節数は3音節以上だが,一定していない.
 c. 頭韻する分節音は,第1半行(前半)に最大二つ,第2半行(後半)に一つ.
 d. 半行中で頭韻する分節音を含む音節が強音部となり,強弱の韻律が実現される.

[ 中英語頭韻詩 ](p. 73)

 a. 音節数不定の長行が基本単位(の可能性が高い).
 b. 頭韻する子音を含む語が1行に最小で二つ,最大で四つ.三つの場合が多い.
 c. 頭韻詩ごとに個々の独自の詩型がある.

[ 中英語の様々な脚韻詩 ](p. 75)

 a. 8詩脚の脚韻付連句:1行16音節.弱強8詩脚.2行1組.第4詩脚のあとに行中休止 (caesura) .半行末で脚韻.
 b. アレグザンダー詩行 (Alexandrine) :1行12音節.弱強6詩脚.行末で脚韻.
 c. 弱強5歩格 (iambic pentameter) :1行10音節.弱強5詩脚.行末で脚韻.
 d. 弱強4歩格 (iambic tetrameter) :1行8音節.弱強4詩脚.行末で脚韻.
 e. 弱強3歩格 (iambic trimeter) :1行6音節.弱強3詩脚.アレグザンダー詩行を二分割したもの.
 f. (stanza) :複数行からなる詩行の意味上のまとまり.
 g. 2行連 (couplet) :2行から構成される詩行の意味上のまとまり.
 h. 尾韻 (tail rhyme) :6行1組で脚韻型が aabccb の詩.ラテン語の賛美歌から.
 i. 帝王韻 (rhyme royal) :7行連の弱強5歩格の詩で,脚韻型が abcbbcc.
 j. ボブ・ウィール連 (bob-wheel stanza) :5行の脚韻詩行で,第1行のボブは1強勢,それに続く4行のウィールの各行は3強勢.脚韻型は ababa.
 k. バラッド律 (ballad meter) :4行連 (quatrain) が基本の詩型.弱強4歩格と弱強3歩格の2行連二つから構成される.3歩格詩行の行末が脚韻.

[ 近代英語以降の脚韻詩 ](pp. 76--79)

 ・ 弱強(5歩)格 (iambic pentameter) を中心としつつも,弱弱強格 (anapestic meter),強弱格 (trochaic meter),強弱弱格 (dactylic meter),無韻詩 (blank verse),自由詩 (free verse) など少なくとも11種類の詩型が出現した.
 ・ 詩脚と実際のリズムの間に不一致 (mismatch) がある.詩脚のW位置に強勢音節が配置される不一致型には規則性があり,統語構造をもとに一般化できる.
 ・ Shakespeare のソネット:弱強5歩格「4行連×3+2行」という構成で,ababcdcdefefgg の脚韻型を示す.
 ・ 句またがり (enjambment) の使用:詩行末が統語節末に対応しない現象.行末終止行 (end-stopped line) と対比される.

 英詩の種類の豊富さは,歴史のたまものである.これについては「#2751. T. S. Eliot による英語の詩の特性と豊かさ」 ([2016-11-07-1]) も参照.

 ・ 岡崎 正男 「第4章 韻律論の歴史」 服部 義弘・児馬 修(編)『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.71--88頁.

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2018-11-09 Fri

#3483. アクセントによって方言差をつける日本語とつけない英語 [stress][prosody][japanese][sociolinguistics]

 服部 (67) は,英語と日本語における音声上の重要な相違点として,アクセント体系の利用の仕方を挙げている.

一般に,英語は強さ(強勢)アクセントの言語,日本語は高さ(ピッチ)アクセントの言語といわれる.英語をはじめとする強勢アクセントの言語では,強勢体系は英語の各種変種・方言間でほとんど変わらない.つまり,ある語の強勢位置が方言によって異なるということは,少数の例外を除けば,ほとんどない.一方,日本語のような高さアクセントの言語では,各語のアクセント型は方言によって著しく異なるというのが実態である.この差がいかなる原因で生じるのかは判然としない.今後の研究が俟たれるところである.


 なるほど地域方言をはじめとする諸変種の区別化にアクセントが利用される度合いは,確かに日本語では高く,英語では低いと思われる.変種の「訛り」は典型的に発音に現われるものと思われるが,発音といってもそこには分節音の目録,異音の種類,イントネーション,アクセントなど様々なものが含まれ,区別化のために何をどの程度利用するかは,言語ごとに異なるだろう.しかし,引用した文章によれば,アクセントの種類と変種区別のためのアクセント利用度の間には相関関係があるということらしい.
 強勢には様々な機能がある.「#926. 強勢の本来的機能」 ([2011-11-09-1]) でみたように対比による語の同定という機能が中心的であるという構造主義的な立場もあるが,実際には「#1647. 言語における韻律的特徴の種類と機能」 ([2013-10-30-1]) の記事でみた多種多様な役割があるだろう.そのなかでも「変種の区別化」は,後者の記事の (viii) で挙げられている機能の一部だろう.つまり,「個人を同定する.韻律は,話者の社会言語学的な所属や話者の用いる使用域 (register) を指示する (indexical) 機能をもつ」ということだ.では,なぜ(高さアクセントを用いる)日本語は,とりわけこの役割を強勢に担わせているのだろうか.確かによく分からない.アクセントがいかなる社会言語学的役割を担うかについての広い類型論的調査が必要だろう.
 関連して「#1503. 統語,語彙,発音の社会言語学的役割」 ([2013-06-08-1]),「#2672. イギリス英語は発音に,アメリカ英語は文法に社会言語学的な価値を置く?」 ([2016-08-20-1]) を参照.また,言語におけるアクセントのタイプの違いについては「#2627. アクセントの分類」 ([2016-07-06-1]) を参照.

 ・ 服部 義弘 「第3章 音変化」 服部 義弘・児馬 修(編)『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.47--70頁.

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2018-10-23 Tue

#3466. 古英語は母音の音量を,中英語以降は母音の音質を重視した [sound_change][phonology][prosody][vowel][diphthong][isochrony][functionalism][gvs]

 母音の弁別的特徴として何が用いられてきたかという観点から英語史を振り返ると,次のような傾向が観察される.古英語では主として音量の差(長短)が利用され,中英語以降では主として音質の差(緊張・弛緩)が利用されるようになったという変化だ.服部 (67) は,これについて次のように述べている.

その原因は英語のリズム構造に帰せられるものと考えられる.つまり,韻脚拍リズムを基盤とする英語は,各韻脚をほぼ同程度の長さにする必要があるため,長さがリズムの調整役として重要な役割を果たす.そのため母音の弁別的特徴は音質(緊張・弛緩)に託し,長さの方はリズム調整のために弁別性から解放したと解釈することができる.


 英語史において,音量の差と音質の差は,異なる目的で利用されるように変化してきたという見方である.これは壮大な音韻史観,韻律史観であり,歴史的な類型論 (typology) の立場から検証可能な仮説でもある.また逆からみれば,韻脚拍リズムではなく音節(あるいはモーラ)拍リズムを基盤とする日本語のような言語では,このような音量と音質の発展に関する傾向はさほど見出せないだろうということも予測させる.英語の音韻史記述に影響を及ぼす仮説であることはもちろん,現代英語の共時的な音韻論の記述や発音記号の表記などにも関連する点で,刺激的な議論だ.関連して「#3387. なぜ英語音韻史には母音変化が多いのか?」 ([2018-08-05-1]) も参照.

 ・ 服部 義弘 「第3章 音変化」服部 義弘・児馬 修(編)『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.47--70頁.

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2018-08-05 Sun

#3387. なぜ英語音韻史には母音変化が多いのか? [sound_change][phonology][prosody][vowel][diphthong][consonant][isochrony][stress]

 昨日の記事「#3886. 英語史上の主要な子音変化」 ([2018-08-04-1]) で言及した別の記事「#1402. 英語が千年間,母音を強化し子音を弱化してきた理由」 ([2013-02-27-1]) と関連して,なぜ英語音韻史において母音変化は著しく,子音変化は目立たないのかという問題について考えてみたい.
 Ritt (224) はこの傾向を "rhythmic isochrony" と "fixed lexical stress on major class lexical items" の2点に帰している.つまり,英語に内在するリズム構造,あるいは音律特性により,母音が強化し,子音が弱化するという方向付けがなされているという見解だ.
 服部 (67) によれば,英語は各韻脚 (foot) がほぼ等しい時間で発音される脚韻拍リズム (foot-timed rhythm) の言語に属する(ちなみに日本語は音節泊 (syllable-timed rhythm) あるいはモーラ泊 (mora-timed rhythm) という相対するタイプの言語).一般に脚韻拍の言語は,母音推移,連鎖的推移,二重母音化,母音弱化など母音にまつわる推移が相対的にずっと多いことが知られている.各脚韻の等時性を保持するために,強勢音節はとりわけ強く,無強勢音節はとりわけ弱く発音されるという対照的な傾向が生じ,なかんずく母音が変化にさらされやすくなるという事情があるようだ.
 より一般的な観点からいえば,言語のリズム構造は,その言語の音韻変化に思いのほか大きな影響を及ぼしており,ある程度まではその方向性を決定しているとすらいえるのかもしれない.服部 (48) は次のように論じている.

音変化の発端は実際の発話において生じる.もちろん,発話内で生じた音の変容がすべて音変化として確立するわけではないが,発端はあくまで実時間上の発話内で生じると考えられる.発話に際して,特定の形態・統語構造を持った語彙項目(の連鎖)が実際の発話において当該言語のリズム構造 (rhythmic structure) に写像される.リズム構造その他の音律 (prosody) 特性は幼児の言語獲得において分節音より早く獲得されることが知られており,部分的には胎児の段階から獲得が始まるとされている.この事実からも明らかなように,リズム(および,その他の音律)構造は,一般に考えられている以上に,分節音体系と深く結びついており,われわれが発話する際には,特定のリズム構造に合わせて分節音連鎖を配置していると想定される.その際,脚韻(foot,強勢音節から次の強勢音節の直前までを一まとめにした単位)や音節 (syllable) などのリズム上の単位の知覚しやすさや分節音連鎖の調音の容易さを高めるような形で各種音韻過程が働く.多くの規則的音変化の要因は言語音の調音と知覚の要請によって動機づけられているといってよい.


 これは「堅牢なリズム構造と,それに従属する柔軟な分節音」という斬新な音韻観に基づく音韻論である.

 ・ Ritt, Nikolaus. "How to Weaken one's Consonants, Strengthen one's Vowels and Remain English at the Same Time." Analysing Older English. Ed. David Denison, Ricardo Bermúdez-Otero, Chris McCully, and Emma Moore. Cambridge: CUP, 2012. 213--31.
 ・ 服部 義弘 「第3章 音変化」服部 義弘・児馬 修(編)『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.47--70頁.

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2018-04-14 Sat

#3274. 話し言葉と書き言葉 (5) [media][writing][punctuation][prosody][linguistics][paralinguistics][link]

 話し言葉と書き言葉は言語の2大メディアだが,それぞれに特有の,情報を整序し意味を伝える形式的なデバイスが存在する.英語に関するものとして,Stubbs (117) がいくつか列挙しているので,Milroy and Milroy (117--18) 経由で示そう.

Speech (conversation): intonation, pitch, stress, rhythm, speed of utterance, pausing, silences, variation in loudness; other paralinguistic features, including aspiration, laughter, voice quality; timing, including simultaneous speech; co-occurrence with proxemic and kinesic signals; availability of physical context.

Writing (printed material): spacing between words; punctuation, including parentheses; typography, including style of typeface italicization, underlining, upper and lower case; capitalization to indicate sentence beginnings and propoer nouns; inverted commas, for instance to indicate that a term is being used critically (Chimpanzees' 'language' is. . . .); graphics, including lines, shapes, borders, diagrams, tables; abbreviations; logograms, for example, &; layout, including paragraphing, spacing, margination, pagination, footnotes, headings and sub-headings; permanence and therefore availability of the co-text.


 このようなデバイスのリストは,両メディアを比較対照して論じる際にたいへん有用である.本ブログでも,この種の比較対照は多くの記事で取り上げてきた話題なので,主たるものを参考のため,以下に示しておこう.

 ・ 「#230. 話しことばと書きことばの対立は絶対的か?」 ([2009-12-13-1])
 ・ 「#748. 話し言葉と書き言葉」 ([2011-05-15-1])
 ・ 「#849. 話し言葉と書き言葉 (2)」 ([2011-08-24-1])
 ・ 「#1001. 話しことばと書きことば (3)」 ([2012-01-23-1])
 ・ 「#1655. 耳で読むのか目で読むのか」 ([2013-11-07-1])
 ・ 「#1665. 話しことばと書きことば (4)」 ([2013-11-17-1])
 ・ 「#1829. 書き言葉テクストの3つの機能」 ([2014-04-30-1])
 ・ 「#2301. 話し言葉と書き言葉をつなぐスペクトル」 ([2015-08-15-1])

 ・ Milroy, Lesley and James Milroy. Authority in Language: Investigating Language Prescription and Standardisation. 4th ed. London and New York: Routledge, 2012.
 ・ Stubbs, M. Language and Literacy: The Sociolinguistics of Reading and Writing. London: Routledge & Kegan Paul, 1980.

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2016-11-19 Sat

#2763. 中英語からの過去形と現在完了形の並列の例 (2) [perfect][preterite][aspect][tense][present_perfect_puzzle][prosody][poetic_license][rhyme]

 「#2750. "Present Perfect Puzzle" --- 中英語からの過去形と現在完了形の並列の例」 ([2016-11-06-1]) に引き続いての話題.Visser は,中英語における過去形と現在完了形の並列について,フランス語などからの影響もありうるとは述べているものの,主たる理由は詩的許容 (poetic_license) にあると考えている.というのは,両者の並列や交替が脚韻 (rhyme) や韻律 (metre) に動機づけられているとおぼしき例が,実際に少なくないからだ.脚韻の動機づけが感じられる例として,Visser (713) の挙げているものの中からいくつかを抜き出してみる.

 ・ c1386 Chaucer, C. T. H264: His bowe he bente, and sette ther-inne a flo, / And in his ire his wyf thanne hath he slayn, - / This is theffect, ther is namoore to sayn.
 ・ c1390 Gower Conf. Am. (ed. Morley) V p. 245: Wherof this lord hath hede nome / And did hem bothe for to come.
 ・ c1390 Gower Conf. Am. (ed. Morley) V p. 277: whan it came unto the grounde, / A great serpent it hath bewounde.
 ・ c1400 Syr Tryamowre (ed. Erdman Schmidt) 1030: The messengere ys come and gone. / But tydyngys of Tryamowre herde he none.

 同様に,韻律によると考えられる例のいくつかを Visser (717--18) より示す.

 ・ c1250 Floris & Bl. 985: Clarice, joie hire mot bitide, / Aros up in þe moreȝentide, / And haþ cleped Blauncheflur.
 ・ c1386 Chaucer, C. T. B628: This gentil kyng hath caught a greet motyf / Of this witnesse, and thoghte he wolde enquere / Depper in this.
 ・ c1386 Chaucer, C. T. H203: And so befel, whan Phebus was absent, / His wyf anon hath for hir lemman sent.
 ・ c1390 Gower, C. A. (ed. Morley) p. 277: And he, which understood his tale, / Betwene him and his asse all softe / Hath drawe and set him up a lofte.

 過去形と現在完了形の並列が主として詩的許容に起因するという説は,それが現われる時期や環境によっても支持される.このような並列の例は,14--15世紀の韻文にほぼ限られているのである.それ以前の古英語や初期中英語では,韻文にせよ散文にせよ,ごく僅かな例しか確認されない.また,後期中英語でも,散文では普通みられない.さらに,過去形と現在完了形の並列がみられる環境では,過去形と現在形の並列も同様にみられるという事実も,詩的許容による説に追い風となる.近現代にかけて,時制・相は論理的なカテゴリーとして重視されるようになり,過去と現在(完了)の区別もうるさくなっていくが,後期中英語では,時制・相のカテゴリーとその形式の問題は,韻律上の要請があれば,当面は棚上げしてもよい程度の重要さでとらえられていたのだろう.
 では,近現代にかけて,この寛容さが失われ,理詰めになっていったのはなぜなのだろうか.これは,言語と社会をめぐる非常に大きな英語史上の問題である.

 ・ Visser, F. Th. An Historical Syntax of the English Language. 3 vols. Leiden: Brill, 1963--1973.

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2016-11-07 Mon

#2751. T. S. Eliot による英語の詩の特性と豊かさ [literature][alliteration][rhyme][meter][stress][prosody][french][poetry]

 宇野重規(著)『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』を読んでいて,次の文章に出会った.T. S. Eliot (1888--1965) が英語の詩の特性と豊かさについて述べている箇所である.

 一国の文化は多様な階級や地域の文化によって構成されると同時に,さらに上位の世界文化と接続していなければならない。エリオットにとって,アイルランドやスコットランド,ウェールズの文化がイングランド文化と結びついた上で,さらにより大きなヨーロッパの文化の一端を担うことが重要であった。逆に言えば,ヨーロッパ文化とは画一的なものであってはならないというのが,エリオットの確信であった。
 このことは詩人であるエリオットにとって,本質的な重要性をもっていた。というのも,彼の見るところ,英語の詩の特性と豊かさは,英語がヨーロッパの多様な言語から合成されたものであることに由来するからである。作存続(アングル族とともにブリテン島に侵入したゲルマン民族の一つ,英国の基礎をつくる)の韻律,ノルマンフランス(ノルマン・コンクェストの中心となったフランス化したノルマン人)の韻律,ウェールズの韻律,さらにはラテン語やギリシア語の詩の研究によって,英国の詩は豊かなものになったことをエリオットは強調する。 (75)


 英語の雑種性は,語学的には特に語彙,綴字,韻律に色濃く反映されているが,韻律を接点として韻文文学にもおおいに反映している.上で述べられている「ノルマンフランス」の影響は特に大きく,古英語以来の頭韻 (alliteration) の伝統を,中英語以降に脚韻 (rhyme) の伝統に事実上置き換えるという大転換をもたらすことになった.ここでは,フランス語における脚韻詩が英語の詩作に直接影響を及ぼしたということはいうまでもないが,そのほかにも,「#796. 中英語に脚韻が導入された言語的要因」 ([2011-07-02-1]) で触れたように,中英語期にフランス借用語が大量に流入したことにより,フランス語式の強勢パターンがもたらされ,脚韻に都合のよい条件が整ったという事情もあった.
 しかし,頭韻の伝統も,水面下において中英語期以降,現代まで脈々と受け継がれてきたことも事実である (see 「#943. 頭韻の歴史と役割」 ([2011-11-26-1]),「#1560. Chaucer における頭韻の伝統」 ([2013-08-04-1])) .とすれば,近現代の詩の形式について,アングロ・サクソンの伝統とノルマン・フレンチの伝統が混合していると表現することは,まったく妥当なことである.

 ・ 宇野 重規 『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』 中央公論新社〈中公新書〉,2016年.

Referrer (Inside): [2018-11-10-1] [2016-11-17-1]

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2016-11-06 Sun

#2750. "Present Perfect Puzzle" --- 中英語からの過去形と現在完了形の並列の例 [perfect][preterite][aspect][tense][adverb][present_perfect_puzzle][me][french][prosody][poetic_license]

 「#2492. 過去を表わす副詞と完了形の(不)共起の歴史 」 ([2016-02-22-1]),「#2633. なぜ現在完了形は過去を表わす副詞と共起できないのか --- Present Perfect Puzzle」 ([2016-07-12-1]),及び昨日の記事「#2749. "Present Perfect Puzzle" --- 近現代英語からの「違反」例」 ([2016-11-05-1]) に引き続き,"Present Perfect Puzzle" について.中英語には,このパズルと関連する事例として,過去形と現在完了形の動詞が統語的あるいは文脈的に並列・共起して現われるケースが散見される.両者の間に際立った機能的な区別は感じられないことから,いまだ現代英語のような明確な区別はなかったことを示す例と解釈できる.Visser (2198) から,いくつか例を挙げよう.

 ・ c1386 Chaucer, C. T. E 1956, Adoun by olde Januarie she lay, That sleep til that the coughe hath hym awaked.
 ・ c1386 Chaucer, C. T. F 1082, His brother . . . Up caughte hym, and to bedde hath hym broght.
 ・ c1386 Chaucer, C. T. E 2132, er that dayes eighte Were passed . . . Januarie hath caught so greet a wille . . . hym for to pleye In his gardyn . . . That . . . unto this May seith he: Rys up, my wif!
 ・ c1390 Gower, Conf. Am. (Morley) II p. 107, And whan it came into the night, This wife with her hath to bedde dight Where that this maiden with her lay.
 ・ c1430 Syr Tryamowre (ed. Erdman Schmidt) 830, [he] bare hym downe of hys hors, And hath hym hurted sare.

 これらは,"epic (present) perfect" という事例とも解することができるし,韻律の要請による詩的許容 (poetic_license) も関与しているかもしれない.Visser (2198) は,フランス語にも同様の揺れが見られることから,その影響の可能性もありそうだと述べている.

It is not difficult to concur with 1960 Mustanoja and 1970 Bauer in assuming French influence as very likely. (As a matter of fact Modern colloquial French often prefers the type 'Je l'ai vu tomber' to that with the 'passé défini': 'Je le vis tomber.)'


 ・ Visser, F. Th. An Historical Syntax of the English Language. 3 vols. Leiden: Brill, 1963--1973.

Referrer (Inside): [2016-11-19-1]

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2016-09-12 Mon

#2695. 中世英語における分かち書きの空白の量 [punctuation][manuscript][writing][scribe][word][prosody][oe][inscription][distinctiones]

 現代の英語の書記では当然視されている分かち書き (distinctiones) が,古い時代には当然ではなく,むしろ続け書き (scriptio continua) が普通だったことについて,「#1903. 分かち書きの歴史」 ([2014-07-13-1]) で述べた.実際,古英語の碑文などでは語の区切りが明示されないものが多いし,古英語や中英語の写本においても現代風の一貫した分かち書きはいまだ達成されていない.
 だが,分かち書きという現象そのものがなかったわけではない.「#572. 現存する最古の英文」 ([2010-11-20-1]) でみた最初期のルーン文字碑文ですら,語と語の間に空白ではなくとも小丸が置かれており,一種の分かち書きが行なわれていたことがわかるし,7世紀くらいまでには写本に記された英語にしても,語間の空白挿入は広く行なわれていた.ポイントは,「広く行なわれていた」ことと「現代風に一貫して行なわれていた」こととは異なるということだ.分かち書きへの移行は,古い続け書きの伝統の上に新しい分かち書きの方法が徐々にかぶさってきた過程であり,両方の書き方が共存・混在した期間は長かったのである.英語の句読法 (punctuation) の歴史について一般に言えるように,語間空白の規範は中世期中に定められることはなく,あくまで書き手個人の意志で自由にコントロールしてよい代物だった.
 書き手には空白を置く置かないの自由が与えられていただけではなく,空白を置く場合に,どれだけの長さのスペースを取るかという自由も与えられていた.ちょうど現代英語の複合語において,2要素間を離さないで綴るか (flowerpot),ハイフンを挿入するか (flower-pot),離して綴るか (flower pot) が,書き手の判断に委ねられているのと似たような状況である.いや,現代の場合にはこの3つの選択肢しかないが,中世の場合には空白の微妙な量による調整というアナログ的な自由すら与えられていたのである.例えば,語より大きな統語的単位や意味的単位をまとめあげるために長めの空白が置かれたり,形態素レベルの小単位の境を表わすのに僅かな空白が置かれるなど,書き手の言語感覚が写本上に精妙に反映された.
 Crystal (11-12) はこの状況を,Ælfric の説教からの例を挙げて説明している.

Very often, some spaces are larger than others, probably reflecting a scribe's sense of the way words relate in meaning to each other. A major sense-break might have a larger space. Words that belong closely together might have a small one. It's difficult to show this in modern print, where word-spaces tend to be the same width, but scribes often seemed to think like this:

     we bought   a cup of tea   in the cafe

The 'little' words, such as prepositions, pronouns, and the definite article, are felt to 'belong' to the following content words. Indeed, so close is this sense of binding that many scribes echo earlier practice and show them with no separation at all. Here's a transcription of two lines from one of Ælfric's sermons, dated around 990.

     þærwæronðagesewene twegenenglas onhwitumgẏrelū;
     þær wæron ða gesewene twegen englas on hwitum gẏrelū;
     
     'there were then seen two angels in white garments'
     
     
     Eacswilc onhisacennednẏsse wæronenglasgesewene'.
     Eacswilc on his acennednẏsse wæron englas gesewene'.
     
     'similarly at his birth were angels seen'

The word-strings, separated by spaces, reflect the grammatical structure and units of sense within the sentence.


 話し言葉では,休止 (pause) や抑揚 (intonation) の調整などを含む各種の韻律的な手段でこれと似たような機能を果たすことが可能だが,書き言葉でその方法が与えられていたというのは,むしろ現代には見られない中世の特徴というべきである.関連して「#1910. 休止」 ([2014-07-20-1]) も参照.

 ・ Crystal, David. Making a Point: The Pernickety Story of English Punctuation. London: Profile Books, 2015.

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2016-08-24 Wed

#2676. 古英詩の頭韻 [alliteration][oe][consonant][stress][prosody][germanic]

 英語には,主に語頭の子音を合わせて調子を作り出す頭韻 (alliteration) の伝統がある.本ブログでは,「#943. 頭韻の歴史と役割」 ([2011-11-26-1]) をはじめ,alliteration の各記事で,主に現代英語に残る頭韻の現象を扱ってきた.
 しかし,英語史で「頭韻」といえば,なによりも古英詩における韻律規則としての頭韻が思い出される.頭韻は,古英語のみならず,古アイスランド語,古サクソン語,古高地ドイツ語などゲルマン諸語の韻文を特徴づける韻律上の手段であり,ラテン語・ロマンス諸語の脚韻 (rhyme) と際立った対比をなす.すぐれてゲルマン的なこの韻律手段について,古英詩においていかに使用されたかを,Baker (124--26) に拠って概説したい.
 古英詩の1行 (line) は2つの半行 (verse) からなっており,前半行を on-verse (or a-verse),後半行を off-verse (or b-verse) と呼ぶ.その間には統語上の行間休止 (caesura) が挟まっており,現代の印刷では長めの空白で表わされるのが慣例である.各半行には2つの強勢音節(それぞれを lift と呼ぶ)が含まれており,その周囲には弱音節 (drop) が配置される.このように構成される詩行において,on-verse の2つの lifts の片方あるいは両方の語頭音と,off-verse の最初の lift の語頭音は,同じものとなる.これが古英詩の頭韻である.
 頭韻の基本は語頭子音によるものだが,実際には語頭母音によるものもある.母音による頭韻では母音の音価は問わないので,例えば ei でも押韻できる.また,子音による頭韻については,sc, sp, st の子音群に限って,その子音群自身と押韻しなければならず,例えば stānsāriġ は押韻できない (see 「#2080. /sp/, /st/, /sk/ 子音群の特異性」 ([2015-01-06-1])) .一方,gġcċ は音価こそ異なれ,通常,互いに韻を踏むことができる.
 頭韻が行に配置されるパターンには,いくつかのヴァリエーションがある.基本は以下の3種類である.

 ・ xa|ay: þæt biþ in eorle   indryhten þēaw
 ・ ax|ay: þæt hē his ferðlocan   fæste binde.
 ・ aa|ax: ne se hrēo hyġe   helpe ġefremman

 時々,以下のような ab|ab の型 (transverse alliteration) や ab|ba の型 (crossed alliteration) も見られるが,特別に修辞的な響きをもっていたと考えられる.

 ・ ab|ab: Þær æt hȳðe stōd   hringedestefna
 ・ ab|ba: brūnfāgne helm,   hringde byrnan

 古英語頭韻詩の詩行は,上記の構造を基本として,その上で様々な細則に沿って構成されている.関連して,「#1897. "futhorc" の acrostic」 ([2014-07-07-1]),「#1560. Chaucer における頭韻の伝統」 ([2013-08-04-1]) も参照.

 ・ Baker, Peter S. Introduction to Old English. 3rd ed. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2012.

Referrer (Inside): [2019-07-29-1] [2016-08-25-1]

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2016-07-06 Wed

#2627. アクセントの分類 [typology][prosody][stress][terminology]

 言語におけるアクセント(強勢)について,一般言語学的な立場から,「#926. 強勢の本来的機能」 ([2011-11-09-1]) や「#1647. 言語における韻律的特徴の種類と機能」 ([2013-10-30-1]) で概説した.関連して,斉藤 (109) がアクセントの類型論を与えているので,それを参照した以下の分類図を作成した.

Typology of Accent

 図の左から右へと見ていくと,広義の「アクセント」は,有限のいくつかのパターンから「どれ」を選ぶかという「トーン」系列と,「どこ」を卓越させるかに関する狭義のいわゆる「アクセント」系列に2分される.「トーン」系列は,パターンの適用される単位が音節単位か単語単位かによって分けられ,さらに細分化することもできるが,全体としては広い意味で「ピッチアクセント」に属する.
 一方,図の下方の「アクセント」系列は,高低を基準とする「ピッチアクセント」(狭義)と強弱を基準とする「ストレスアクセント」に分かれる.それぞれは大きな分類としては「ピッチアクセント」と「アクセント」に属する.
 用語と分類に若干ややこしいところがあるが,これをアクセントの類型論の見取り図として押さえておきたい.

 ・ 斉藤 純男 『日本語音声学入門』改訂版 三省堂,2013年.

Referrer (Inside): [2018-11-09-1]

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