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mythology - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-04-26 08:56

2024-01-15 Mon

#5376. Middle-earth は2重の勘違いを経た「民間語源」(解釈語源) [etymology][folk_etymology][literature][medievalism][rpg][notice][old_norse][mythology][oe]

 「#5356. 岡本広毅先生の NewsPicks のトピックス「RPGで知る西洋の歴史」」 ([2023-12-26-1]) で紹介した岡本広毅先生(立命館大学)による「RPGで知る西洋の歴史」では,次々と新しい記事が公開されてきています.昨晩公開された最新回は「RPGは「ロマンティック」?---知られざるロマンス史を紐解く①」です.roman, romance, romantic などの語源が解説されています.
 1回前の記事「『ファイナル・ファンタジー』と北欧神話---RPGを彩る伝承の物語」もおもしろいです.


「『ファイナル・ファンタジー』と北欧神話---RPGを彩る伝承の物語」



 この記事では J. R. R. Tolkien の作品に登場する妖精たちの世界 Middle-earth (中つ国)について,関連する「ミッドガル」とともに言及がなされています.

「ミッドガル」は『FFVII』に登場する科学文明の栄えた都市で,世界のエネルギー市場を支配する「神羅カンパニー」という大企業の本拠地でした.薄暗いネオン街や高層ビル,魔晄炉と呼ばれる発電施設など,近未来風の佇まいからは太古の神話世界とのつながりを想像することは容易ではありません.ただ,「ミッドガル」とは明らかに古い北欧語「ミズガルズ」("Miðgarðr") から取られたもので,これは北欧神話における人間の住まう領域を指します(巨人ユミルのまつ毛で作られた「囲い」).ミッドガルに渦巻く欲望や策略は「人間」の本性の一面と関わりますし,都市の荒廃や破壊,再生といったストーリー展開なども神話と重なり合います.なお,J.R.R.トールキン『ホビット』や『指輪物語』の舞台「ミドル・アース」("Middle-earth"「中つ国」)はミズガルズの現代英語版です.北欧とイングランドの人々の民族的ルーツは共通の祖先(ゲルマン人)へと遡るため,北欧神話は英語話者の故郷の物語でもあるのです.


 Middle-earth の由来をさらに詳しく調べてみると,どうやら古ノルド語 miðgarðr とは妙なねじれの関係にあるようです.後者は,古英語期より2回ほど民間語源 (folk_etymology) による変形を受けて,今の形にたどりついているのです.
 古英語には「世界」を意味する middangeard という語がありました.現代風に示すと "mid(dle)" + "yard" という語形成で,原義は「中庭」ほどです.これは古ノルド語 miðgarðr の語形成とも一致します.
 ところが,すでに古英語期より middangeard の第2要素が geard 「庭」ではなく,音形の似た eard 「故郷,祖国」と取り違えられ,形態上の混乱が起こりました(第1の民間語源).さらに中英語期になると,今度はこの eard がやはりよく似た音形の erthe (> earth) 「地,世界」と取り違えられました(第2の民間語源).ちなみに歴史的に第2要素として用いられてきた上記の3つの語は,互いに語源的には無関係です.
 Middle-earth の民間語源による2回のひねりに関しては,Fertig (60) が触れています.

The compound middle earth (re-popularized but by no means invented by Tolkien) can be traced back to early Middle English middelærde and OE middangeard and midanærd. Comparison with related words in other older Germanic languages, such as Old Saxon middilgard, Old High German mittilagart and Old Norse miðgarðr suggests that the second element originally corresponded to the Modern English word yard. We then see two successive folk-etymological identifications of this element, first with the Old English word eard '(native) land, home', then later with earth.


 なお,「民間語源」という用語とその呼称をめぐっては「#5180. 「学者語源」と「民間語源」あらため「探究語源」と「解釈語源」 --- プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) の最新回より」 ([2023-07-03-1]) を参照していただければ.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

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2021-11-22 Mon

#4592. 英語における動物の象徴的意味 [mythology][bible][connotation]

 各言語文化において,動物は独自の象徴的意味をもっている.英語の場合,それは聖書,神話,民話などを通じて育まれてきた,慣習的で連想的な意味を有しており,それが母語話者の間で広く共有されているために,文学,ことわざ,言葉遊びなどにおいても多用される.動物名が言及されると,いわば枕詞のように,ある一定のイメージが喚起されるほどに,言語文化に深く根付いているのである.『英語便利辞典』 (pp. 177-78) より,典型的なものを挙げよう.

動物名象徴的意味
ant 蟻cooperation 協力,patience 忍耐
bear 熊maternal protection 母性本能,strength 力
butterfly 蝶beauty 美,balance 均衡
cat 猫independence 自立,agility 敏捷性
deer 鹿gentleness 温和,peace 平和
dog 犬royalty 忠誠,love 愛情
dove 鳩peace 平和,innocence 無垢
elephant 象wisdom 知恵,strength 力
fox 狐camouflage 擬態,cunning 狡猾さ
giraffe キリンintuition 直感力,foresight 先見の明
horse 馬friendship 友情,power 力
lion ライオンcourage 勇気,strength 力
mule ラバstubbornness 頑固,independence 独立
owl フクロウwisdom 知恵,clairvoyance 透視能力
serpent, snake 蛇temptation 誘惑,wisdom 知恵
turtle 亀longevity 長寿,love 愛情


 動物単体の名詞が帯びる象徴的意味のほか,動物の関わる慣用表現やイディオムは思いのほか多い.英語文化に深く根付いており意味が予想できないものも多いので,学習上注意を要する.

 ・ 小学館外国語辞典編集部(編) 『英語便利辞典』 小学館,2006年.

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2018-11-02 Fri

#3476. 曜日名の語源 [etymology][greek][latin][mythology][calendar]

 英語の月名の語源について,「#2910. 月名の由来」 ([2017-04-15-1]),あるいはより詳しく「#3229. 2月,February,如月」 ([2018-02-28-1]) とそのリンク先で取り上げてきた.一方,曜日名については「#2595. 英語の曜日名にみられるローマ名の「借用」の仕方」 ([2016-06-04-1]) や「#1261. Wednesday の発音,綴字,語源」 ([2012-10-09-1]) で取り上げてきたが,今回は参照に便利なようにシップリーの語源辞典 (674) より一覧を掲げたい.

 Sunday (日曜日) ---the day of the sun (太陽の日)
 Monday (月曜日) ---the day of the moon (月の日)
 Tuesday (火曜日) ---the day of Tiw (ティウの日).Tiw はゲルマン人の戦争の神であり,ローマの Martis dies (マルスの日)の代わりとして使われるようになった.ちなみにフランス語では mardi である.Tiw はラテン語 deus (神)やギリシア語 Zeus と同族語である.
 Wednesday (水曜日) ---Woden's day (ウォーディンの日).Woden は北欧の神々の王である.
 Thursday (木曜日) ---Thor's day (トールの日).Thor は雷神 (thunderer) である.かつては同義語として Thunderday があった.
 Friday (金曜日) ---the day of Friya or Frigga (フリヤもしくはフリッガの日).フリヤは北欧の愛の女神であり,フリッガはウォーディンの妻である.
 Saturday (土曜日) ---the day of Saturn (サターンの日).サターンはローマの農業の神である.


 week 自体は古英語 wicu, wucu (週)に遡り,これは wīce (奉仕、義務)から派生している.さらに遡れば,ゲルマン祖語の *wikōn "turning, succession" に由来する.時間を司る7曜の神々の「奉仕・義務の交替順序」ということらしい.OED によると,

It has been argued that the Germanic base underlying the attested words had an earlier sense referring to changes of duty, which was then applied to the sequence of deities governing the weekly cycle, and finally transferred to the week itself. Such an earlier sense may be reflected by Old Icelandic vika unit of distance travelled at sea (perhaps with reference to the periodical change of rowing teams, although this cannot be independently substantiated), Gothic wiko order in which something happens (in an isolated example in Luke 1:8 with reference to the allocation of religious duties, translating ancient Greek τάξις order, arrangement . . .), and also Old English wīce office, duty, function . . . .


 「週」という単位や概念の起源は印欧語族にはなく東洋のものだが,ユダヤ人を介してギリシア人,ローマ人に伝わり,そこからキリスト教の伝播とともにヨーロッパに広がった.

 ・ ジョーゼフ T. シップリー 著,梅田 修・眞方 忠道・穴吹 章子 訳 『シップリー英語語源辞典』 大修館,2009年.

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2018-02-28 Wed

#3229. 2月,February,如月 [calendar][etymology][mythology][latin][dissimilation]

 末日になってしまったが,月名シリーズの締めくくりとして「2月」をお届けする.
 英語 February の究極の語源は不詳だが,ラテン語で「清めの祭り」を指した februa (pl.) に由来するとされる.この祭りの起源はイタリア半島を縦走するアペニン山脈地方の原住民サビニ人にあるとされ,祭りは2月15日に行なわれたという.この februa に接尾辞を付加して februārius (mēnsis) と月名を作り,それが俗ラテン語形 *fabrāriu(m) を経由して,ロマンス諸語へと伝わった.古フランス語では feverier (現代フランス語 février)となり,これが中英語期に fever(y)er, feverel などの形で入ってきた.英語での初例は1200年頃とされる.
 fever(y)er には第2子音に b ではなくフランス語形にならった v がみられるが,これは15世紀まで用いられた.なお,feverel の語末の l は異化 (dissimilation) によるものである(cf. laurel, marble, purple; 「#72. /r/ と /l/ は間違えて当然!?」 ([2009-07-09-1]) も参照) .現在のラテン語的な b をもつ形は,英語では februarie などの綴字で14世紀末から見られ,近代にかけて v を示す綴字を置き換えていった.ただし,ラテン語形そのもの形 februārius は,実は後期古英語に取り込まれていたことを付言しておく.
 現代の February の発音については,揺れのあることが知られている.規範的には /ˈfɛbruəri/ と発音されるが, 最初の r が消えた /ˈfɛbjuəri/ もよく聞かれる.LDP3 の Preference Poll によると,若い世代のアメリカ英語では後者の発音がすでに64%に達している.イギリス英語での対応する数値は39%だが,これも決して低くない.高い世代では英米いずれでも相対的に低い値となっており,まさにこの単語における発音変化が着々と進行しているものとみてよいだろう.
 古英語本来語では solmōnaþ "mud-month" 「ぬかるみの月」と表現していた.また,日本語で陰暦2月の異称「如月(きさらぎ)」は,寒いので更に上着を着る月とも,草木の更生する「生更ぎ」の月の意ともいう.
 さて,これで月名シリーズが完成したので,以下にシリーズの各記事へのリンクを張っておこう.

 ・ 「#2910. 月名の由来」 ([2017-04-15-1])
 ・ 「#3187. 1月,January,睦月」 ([2018-01-17-1])
 ・ 「#3229. 2月,February,如月 ([2018-02-28-1])
 ・ 「#2890. 3月,March,弥生」 ([2017-03-26-1])
 ・ 「#2896. 4月,April,卯月」 ([2017-04-01-1])
 ・ 「#2939. 5月,May,皐月」 ([2017-05-14-1])
 ・ 「#2983. 6月,June,水無月」 ([2017-06-27-1])
 ・ 「#3000. 7月,July,文月」 ([2017-07-14-1])
 ・ 「#3046. 8月,August,葉月」 ([2017-08-29-1])
 ・ 「#3073. 9月,September,長月」 ([2017-09-25-1])
 ・ 「#3103. 10月,October,神無月」 ([2017-10-25-1])
 ・ 「#3167. 11月,November,霜月」 ([2017-12-28-1])
 ・ 「#3168. 12月,December,師走」 ([2017-12-29-1])

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2018-01-17 Wed

#3187. 1譛茨シ繰anuary?シ檎擱譛? [calendar][etymology][mythology][latin]

 月名シリーズとして,1月 = January = 睦月に関する話題を.英語の January は,ローマの門の守護神 Jānus (ヤヌス)に由来する.ヤヌスには2つの顔があり,1つは前を,1つは後ろを向いていた.時間でいえば行く年と来る年の両方に見通しの利く門番だったことになる.Janus 自体は janua (扉)に由来し,扉の番人を表わす英語の janitor も関連語である.これらは究極的には印欧語根の *ei- (行く)の拡大形 *ya- に遡る.JānusDiānus の転じたものともされ,その場合には Diāna とも関係するだろう.
 ラテン語形 Jānuārius (mensis) が古英語期に入り,Januarius として用いられた例があるが,通常,古英語期には本来語で se æfterra ġēola (the later Yule) と呼ばれた(12月を表わした se ǣrra ġeōla (the earlier Yule) とも要比較).ほかに wulfmōnaþ (wolf-month) とも称されたが,これは空腹な狼が人を襲うこともあり得る危険な月だったことに由来すると考えられる.ラテン単語は中英語期の1300年頃にアングロ・フレンチ語形 jenvier を経由して Jenever などの形で改めて導入されたが,14世紀末に現在風の語形へと再形成された(再形成前の古い語形は方言形として今なお残っている).
 日本語で陰暦正月を表わす「睦月」は,人々が往来してなかむつまじくすることからとも,稲の実を水に浸す「実月」の転ともされる.
 月名シリーズとして,「#2910. 月名の由来」 ([2017-04-15-1]),「#2890. 3月,March,弥生」 ([2017-03-26-1]),「#2896. 4月,April,卯月」 ([2017-04-01-1]),「#2939. 5月,May,皐月」 ([2017-05-14-1]),「#2983. 6月,June,水無月」 ([2017-06-27-1]),「#3000. 7月,July,文月」 ([2017-07-14-1]),「#3046. 8月,August,葉月」 ([2017-08-29-1]),「#3073. 9月,September,長月」 ([2017-09-25-1]),「#3103. 10月,October,神無月」 ([2017-10-25-1]),「#3167. 11月,November,霜月」 ([2017-12-28-1]),「#3168. 12月,December,師走」 ([2017-12-29-1]) も参照.

Referrer (Inside): [2018-02-28-1]

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2016-07-18 Mon

#2639. 「死神」のメタファーとメトニミー [metaphor][metonymy][mythology][cognitive_linguistics]

 「#2496. metaphor と metonymy」 ([2016-02-26-1]),「#2632. metaphor と metonymy (2)」 ([2016-07-11-1]) で2つの過程の異同について考えた.「#2196. マグリットの絵画における metaphor と metonymy の同居」 ([2015-05-02-1]) では両手段が効果的に用いられている芸術作品を解釈したが,今回は同じく両手段が同居しているイメージの例として西洋の「死神」 (Grim Reaper) を挙げよう.いわずとしれた,マントを羽織り,大鎌を手にした骸骨のイメージである.

Grim Reaper

 Lakoff and Johnson (251) は,「死神」を,メタファーとメトニミーが複雑に埋め込まれた合成物 (composition) の例として挙げている.

In the classic figure of the Grim Reaper, there is such a composition. The term "reaper" is based on the metaphor of People as Plants: just as a reaper cuts down wheat with a scythe before it has gone through its life cycle, so the Grim Reaper comes with his scythe indicating a premature death. The metaphor of Death as Departure is also part of the myth of the Grim Reaper. In the myth, the Reaper comes to the door and the deceased departs with him.
   The figure of the Reaper is also based on two conceptual metonymies. The Reaper takes the form of a skeleton---the form of the body after it has decayed, a form which metonymically symbolizes death. The Reaper also wears a cowl, the clothing of monks who presided over funerals at the time the figure of the Reaper became popular. Further, in the myth the Reaper is in control, presiding over the departure of the deceased from this life. Thus, the myth of the Grim Reaper is the result of two metaphors and two metonymies having been put together with precision.


 複数の概念メタファーと概念メトニミーが精密に合致して,1つの複雑な要素からなる合成物としての「死神」が成立しているという.ことば以前の認識というレベルにおいて,あの典型的なイメージの根底には,精巧に絡み合ったレトリックが存在していたのである.

 ・ Lakoff, George, and Mark Johnson. Metaphors We Live By. Chicago and London: U of Chicago P, 1980.

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2016-06-04 Sat

#2595. 英語の曜日名にみられるローマ名の「借用」の仕方 [latin][etymology][borrowing][loan_word][loan_translation][mythology][calendar]

 現代英語の曜日の名前は,よく知られているように,太陽系の主要な天体あるいは神話上それと結びつけられた神の名前を反映している.いずれも,ラテン単語の反映であり,ある意味で「借用」といってよいが,その借用の仕方に3つのパターンがみられる.
 Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday については,各々の複合語の第1要素として,ローマ神 Mars, Mercury, Jupiter, Venus に対応するゲルマン神の名前が与えられている.これは,ローマ神話の神々をゲルマン神話の神々で体系的に差し替えたという点で,"loan rendition" と呼ぶのがふさわしいだろう.(Wednesday については「#1261. Wednesday の発音,綴字,語源」 ([2012-10-09-1]) を参照.)
 一方,Sunday, Monday の第1要素については,それぞれ太陽と月という天体の名前をラテン語から英語へ翻訳したものと考えられる.差し替えというよりは,形態素レベルの翻訳 "loan translation" とみなしたいところだ.
 最後に Saturday の第1要素は,ローマ神話の Saturnus というラテン単語の形態をそのまま第1要素へ借用してきたので,第1要素のみに限定すれば,ここで生じたことは通常の借用 ("loan") である(複合語全体として考える場合には,第1要素が借用,第2要素が本来語なので "loanblend" の例となる;see 「#901. 借用の分類」 ([2011-10-15-1])).
 英語の曜日名に,上記のように「借用」のいくつかのパターンがみられることについて,Durkin (106) が次のように紹介しているので,引用しておきたい.

The modern English names of six of the days of the week reflect Old English or (probably) earlier loan renditions of classical or post-classical Latin names; the seventh, Saturday, shows a borrowed first element. In the cases of Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday there is substitution of the names of roughly equivalent pagan Germanic deities for the Roman ones, with the names of Tiw, Woden, Thunder or Thor, and Frig substituted for Mars, Mercury, Jupiter, and Venus respectively; in the cases of Monday and Sunday the vernacular names of the celestial bodies Moon and Sun are substituted for the Latin ones. The first element of Saturday (found in Old English in the form types Sæternesdæġ, Sæterndæġ, Sætresdæġ, and Sæterdæġ) uniquely shows borrowing of the Latin name of the Roman deity, in this case Saturn.


 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

Referrer (Inside): [2018-11-02-1]

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2013-06-22 Sat

#1517. 擬人性 [gender][personal_pronoun][etymology][mythology][personification]

 近現代英語では無生物の指示対象は中性として扱われるが,ときに擬人化 (personification) され,男性あるいは女性として扱われる場合がある.これを擬人性 (gender of animation) という.近現代英語の擬人性と初期中英語以前に機能していた文法性 (grammatical gender) とは,関与の認められるものもないではないが,両者は本質的に区別すべきものである.擬人性において付与されるのが男性か女性かを決定する要因には,以下の3点が認められる(『新英語学辞典』 pp. 469--70).

 (1) 神話・伝説・古典などの影響.moon は Phoebe, Luna, Diana との同一視から女性とされる.同様に love は Eros, Cupid より,war は Mars より男性とされる.なお,古英語 mōna は男性名詞,lufu は女性名詞だったので,語源的な関与は否定される.
 (2) 語源・語史的影響.Rome はラテン語の女性名詞 Roma より,virtue は古仏語の女性名詞 vertu より,darkness は古英語の女性名詞語尾 -nes より,それぞれ擬人性が与えられているとされる.しかし,このように語源・語史的影響を想定する場合でも,歴史的に連続性があるのか,あるいは語源への参照の結果なのか,あるいは両者を区別することはできないのかという問題は,個々の例について考慮する必要があるだろう.特に国名については,「#1028. なぜ国名が女性とみなされてきたのか」 ([2012-02-19-1]) を参照.
 (3) 心理的影響.対象に対する主観的感情に基づき,雄大・強烈なものを男性,優美・可憐なもの,多産なものを女性とするなどの例がある.男性として wind, ocean, summer, anger, death などが,女性として nature, spring, art, night, wisdom などがある.また,乗物や所持品など,運転者や所有者が愛着を表わすものに対して付与する性を心理的性 (psychological gender) と呼び,典型的に口語において男性の所有者が対象物を she と言及する例が多いが,所有者が女性の場合には he と言及することもありうる.関連して,「#852. 船や国名を受ける代名詞 she (1)」 ([2011-08-27-1]) 及び「#853. 船や国名を受ける代名詞 she (2)」 ([2011-08-28-1]) を参照.

 心理的影響による擬人性は主観的で任意であるため,ある意味で応用範囲は広い.ハリケーンや人工頭脳機器を女性に見立てる英語の傾向については,「#890. 人工頭脳系 acronym は女性名が多い?」 ([2011-10-04-1]) を参照.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄 監修 『新英語学辞典』 研究社,1987年.

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