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war - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-04-20 10:27

2018-11-15 Thu

#3489. 人的・知的リソースの「横領」の結果としての英語の世界語化 [war][elf][lingua_franca][history]

 近藤 (279--80) は,英語が知的なグローバル言語に成長した現代的な背景として,第二次世界大戦の結果,人的・知的リソースが英語圏へ流入したことがあるとしている.

人材と科学技術について,アメリカ・イギリス(とソ連)は旧ドイツ・オーストリア(中欧)の資産をむさぼり領有した.S・ヒューズ『大変貌――社会思想の大移動』が描くとおり,中欧から英語圏への知識人の脱出・移動によって一九三〇――四〇年代のイギリス・アメリカが獲得したものは大きい.スケールにおいて一六八五年以後のフランスから逃げたユグノ,オランダからイギリスに軟着陸した人材に数倍する.
 イギリスに渡来した人文社会系の学者だけをみても,I・バーリン,S・フロイト,F・ハイエク,ポラニー兄弟,K・ポパー,L・ウィトゲンシュタイン.歴史家に限ると(ネイミア)は早々と一九〇八年に来英),G・エルトン,M・フィンリ,E・ボブズボーム,N・ペヴズナ,M・ポスタン,A・ヴァールブルク…….二〇世紀の学問の革新者は,ほとんど追われて,あるいは自主的に渡来した人びとである.英語が真に知的なグローバル言語になったのは,このときからであろう.


 著者 (303) は,イギリス史を貫くのキーワードの1つとして「横領」を挙げているが,まさにイギリスやアメリカは外部からの知的横領によって,英語(文化)を磨き上げてきたといえるだろう.
 引用中に触れられているユグノの渡英に関して,その英語史上の意義について「#594. 近代英語以降のフランス借用語の特徴」 ([2010-12-12-1]),「#678. 汎ヨーロッパ的な18世紀のフランス借用語」 ([2011-03-06-1]) などで触れているので,そちらも参照されたい.近代初期のオランダからの移民による言語的影響については「#3436. 英語と低地諸語との接触の歴史」 ([2018-09-23-1]) の (4) を参照.

 ・ 近藤 和彦 『イギリス史10講』 岩波書店〈岩波新書〉,2013年.

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2017-08-17 Thu

#3034. 2つの世界大戦と語彙革新 (2) [lexicology][history][war]

 昨日の記事 ([2017-08-16-1]) で,戦争が語彙に及ぼす影響について取り上げ,2つの世界大戦より具体例を挙げた.戦時に様々な戦争用語が生まれるというのは自然なことであり,疑うべきことではないが,戦争と「著しい」語彙革新とが常に関連づけられるものかどうかは慎重に調べる必要がある.というのは,むしろ2つの世界大戦期には,語彙革新が相対的に少なかったというデータがあるからだ.
 Beal (29--34) の A Chronological English Dictionary に基づいた新語の初例登録年代の調査によると,意外なことに,1915--19年と1944--45年に新語導入の谷が現われている.この年代はちょうど両世界大戦に相当し,むしろ語彙革新が激しかったのではないかと予想される時期である.
 ここで重要なのは,これらの時期に「戦時新語」が他の時期と比べて多かっただろうことは自明だが,「戦時新語」以外の新語を含めた新語の総数が多かったとは限らないという点だ.研究者も私たちも,この時期に「戦時新語」の例を探し求めたがり,結果としていくつかの例を見出すことになるが,それはその時期の新語総数が多かったということと同義ではない.新語総数としては著しくなかかったという可能性があるし,事実,この調査によればその通りだったのだ.Beal (33) は次のように述べている.

[W]ar does not stimulate lexical innovation: although the loan-words from allies and enemies alike are noticed during and after these conflicts, they are not great in number.


 予想に反して戦時には新語が少ないという仮の結論となったが,これが本当だとすると,いったいなぜだろうか.これはこれで興味深い問題となる.

 ・ Beal, Joan C. English in Modern Times: 1700--1945. Arnold: OUP, 2004.

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2017-08-16 Wed

#3033. 2つの世界大戦と語彙革新 (1) [lexicology][history][semantic_change][neologism][war]

 Baugh and Cable (293--94) によれば,戦争は語彙の革新をもたらすということがわかる.戦争に関わる新語 (neologism) が形成されたり借用されたりするほか,既存の語の意味が戦争仕様に変化することも含め,戦争という歴史的事件は語彙に大きな影響を及ぼすものらしい.例を挙げてみよう.
 1914--18年にかけて,第1次世界大戦の直接的な影響により,語彙に革新がもたらされた.air raid (空襲),antiaircraft gun (高射砲),tank (戦車),blimp (小型軟式飛行船),gas mask (ガスマスク),liaison officer (連絡将校)などの語が作られた.借用語としては,フランス語から camouflage (迷彩)が入った.既存の語で語義が変化したものとしては,sector (扇形戦区),barrage (弾幕),dud (不発弾),ace (優秀パイロット)がある.専門用語だったものが一般に用いられるようになったという点では,hand grenade (手榴弾),dugout (防空壕),machine gun (機関銃),periscope (潜望鏡),no man's land (中間地帯),doughboy (米軍歩兵)などがある.その他,blighty (本国送還になるような負傷),slacker (兵役忌避者),trench foot (塹壕足炎),cootie (バイキン),war bride (戦争花嫁)などの軍俗語が挙げられる.
 第1次大戦に比べれば第2次世界大戦はさほど語彙革新を巻き起こさなかったとはいえ,少なからぬ新語・新用法が確認される.alert (空襲警報),blackout (報道管制),blitz (電撃攻撃),blockbuster (大型爆弾),dive-bombing (急降下爆撃),evacuate (避難させる),air-raid shelter (防空壕),beachhead (橋頭堡),parachutist (落下傘兵),paratroop (落下傘兵),landing strip (仮設滑走路),crash landing (胴体着陸),roadblock (路上バリケード),jeep (ジープ),fox hole (たこつぼ壕),bulldozer (ブルドーザー),decontamination (放射能浄化),task force (機動部隊),resistance movement (レジスタンス),radar (レーダー)が挙げられる.動詞の例としては,to spearhead (先頭に立つ),to mop up (掃討する),appease (宥和政策を取る)を挙げておこう.借用語としては,ドイツ語から flack (対空射撃),ポルトガル語からcommando (奇襲部隊)がある.語義が流行した語としては,priority (優先事項),tooling up (機会設備),bottleneck (障害),ceiling (最高限度),backlog (残務),stockpile (備蓄),lend-lease (武器貸与).
 戦後の用語としては,iron curtain (鉄のカーテン),cold war (冷戦),fellow traveler (シンパ),front organization (みせかけの組織),police state (警察国家)がある.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

Referrer (Inside): [2017-08-17-1]

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