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paralinguistics - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-02-22 05:23

2018-04-14 Sat

#3274. 話し言葉と書き言葉 (5) [media][writing][punctuation][prosody][linguistics][paralinguistics][link]

 話し言葉と書き言葉は言語の2大メディアだが,それぞれに特有の,情報を整序し意味を伝える形式的なデバイスが存在する.英語に関するものとして,Stubbs (117) がいくつか列挙しているので,Milroy and Milroy (117--18) 経由で示そう.

Speech (conversation): intonation, pitch, stress, rhythm, speed of utterance, pausing, silences, variation in loudness; other paralinguistic features, including aspiration, laughter, voice quality; timing, including simultaneous speech; co-occurrence with proxemic and kinesic signals; availability of physical context.

Writing (printed material): spacing between words; punctuation, including parentheses; typography, including style of typeface italicization, underlining, upper and lower case; capitalization to indicate sentence beginnings and propoer nouns; inverted commas, for instance to indicate that a term is being used critically (Chimpanzees' 'language' is. . . .); graphics, including lines, shapes, borders, diagrams, tables; abbreviations; logograms, for example, &; layout, including paragraphing, spacing, margination, pagination, footnotes, headings and sub-headings; permanence and therefore availability of the co-text.


 このようなデバイスのリストは,両メディアを比較対照して論じる際にたいへん有用である.本ブログでも,この種の比較対照は多くの記事で取り上げてきた話題なので,主たるものを参考のため,以下に示しておこう.

 ・ 「#230. 話しことばと書きことばの対立は絶対的か?」 ([2009-12-13-1])
 ・ 「#748. 話し言葉と書き言葉」 ([2011-05-15-1])
 ・ 「#849. 話し言葉と書き言葉 (2)」 ([2011-08-24-1])
 ・ 「#1001. 話しことばと書きことば (3)」 ([2012-01-23-1])
 ・ 「#1655. 耳で読むのか目で読むのか」 ([2013-11-07-1])
 ・ 「#1665. 話しことばと書きことば (4)」 ([2013-11-17-1])
 ・ 「#1829. 書き言葉テクストの3つの機能」 ([2014-04-30-1])
 ・ 「#2301. 話し言葉と書き言葉をつなぐスペクトル」 ([2015-08-15-1])

 ・ Milroy, Lesley and James Milroy. Authority in Language: Investigating Language Prescription and Standardisation. 4th ed. London and New York: Routledge, 2012.
 ・ Stubbs, M. Language and Literacy: The Sociolinguistics of Reading and Writing. London: Routledge & Kegan Paul, 1980.

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2017-04-26 Wed

#2921. ジェスチャーの分類 [gesture][paralinguistics]

 言語使用において同期するイントネーション,プロソディ,休止,視線,ジェスチャーなどのパラ言語的要素 (paralinguistics) を,統合的に観察し研究する方法論として「マルティモーダル分析」 (multimodal analysis) が提案されている.そのなかでもジェスチャーの研究が近年盛り上がりを見せているようだ.
 ジェスチャーは,以下のように分類されている(以下の図と説明は,片岡,p. 85 を参照した).

                 ┌── エンブレム                   
ジェスチャー ──┤                            ┌── 拍子(ビート)
                 └── 自発的ジェスチャー ──┤                            ┌── 直示的ジェスチャー
                                               └── 表象的ジェスチャー ──┤                            ┌── 映像的ジェスチャー
                                                                             └── 描写的ジェスチャー ──┤
                                                                                                           └── 暗喩的ジェスチャー

 まず「エンブレム」とは,Vサイン,お辞儀,アッカンベー,ハイタッチなどの社会的に慣習化した記号を指す.言語における単語に近い.これに対して,完全に慣習化しているとはみなせない,発話に伴って自発的に表出する身振りが「自発的ジェスチャー」である.
 自発的ジェスチャーのうちの「拍子(ビート)」は,指で拍子を取るような動きに代表されるもので,談話構築的機能を有しているとされる.「表象的ジェスチャー」は,時空間の類似性・隣接性に基づくものであり,「直示的ジェスチャー」と「描写的ジェスチャー」に下位区分される.
 直示的ジェスチャーの代表は指差しである.描写的ジェスチャーは,指示対象の形態,動作,位置関係などを再現しようとする「映像的ジェスチャー」と,抽象的な内容を空間上に視覚化して描写する「暗喩的ジェスチャー」に分けられる.例えば,「山」を表わすのに両手で山の形を作るのは映像的 (iconic) であり,時間の経過を示すのに手を何らかの方向に動かすのは暗喩的 (metaphoric) である.

 ・ 片岡 邦好 「第5章 マルティモーダルの社会言語学 ――日・英対照による空間ジェスチャー分析の試み――」『社会言語学』井上 逸兵(編),朝倉書店,2017年.82--106頁.

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2013-10-30 Wed

#1647. 言語における韻律的特徴の種類と機能 [prosody][stress][paralinguistics]

 言語学において韻律 (prosody) とは,超分節的 (suprasegmental) な種々の音声特徴のことを指す.以下に,6種類を列挙しよう (Crystal 73--74) .

 (1) pitch, tone, intonation などの音の高低は,以下に詳しく見るように,広く言語的な目的に利用されている.
 (2) stress, loudness, accent などの音の強弱は,英語では語の強勢などに現れる.accent はしばしば stress と同一視されるが,厳密には高低 (pitch) と強弱 (stress) とを組み合わせた韻律的特徴である.
 (3) tempo などの音の速度は,速くすれば緊急や苛立ち,遅くすれば思慮深さや強調などが含意される.
 (4) rhythm や beat は,pitch, stress, tempo を組み合わせた韻律的特徴で,言語間の変異が著しい.英語のように強勢が等間隔で現れる stress-timed rhythm,日本語のように音節が等間隔で現れる syllable-timed rhythm などの区別がある.
 (5) pause, silence などの休止もある種の意図や感情を表わすのに用いられる.
 (6) timbre(音色・声色)は感情表現には資するものの,言語を言語たらしめる慣習的な性質や対立的な性質が認められないので,言語的というよりはパラ言語的 (paralinguistic) な特徴というべきである.

 このうち,言語においてとりわけ差異的・関与的である (1)--(4) をまとめて,韻律的特徴 (prosodic features) と呼んでいる.では,これらの韻律的特徴の機能は何か.様々な機能があるが,8つを挙げよう (Crystal 76--78) .

 (i) 感情を表わす.興奮,退屈,驚き,友好,慎みなど多くの感情を伝える.
 (ii) 文法構造を標示する.音の高低や休止などにより,文法的な差異を作り出す.例えば,英語や日本語など,多くの言語で平叙文と疑問文とを区別するのに,それぞれ下がり調子と上がり調子の intonation をもってする.関連して,「#976. syntagma marking」 ([2011-12-29-1]) を参照.
 (iii) 語に形を与える.語の強勢位置に関する規則をもつ言語では,語の同定に関与する.そのような規則をもたない英語のような言語でも,「#926. 強勢の本来的機能」 ([2011-11-09-1]) でみたように,言語的な機能を果たす.
 (iv) 語の意味を区別する.世界の言語の半数以上を占める声調言語 (tone language) では,音調が語(の意味)を区別する役割を果たしている.日本語の「箸」「橋」「端」の差異を参照.また,日本語を含め多くの言語が声調を利用している.
 (v) 意味に注意を引く.文中のある語句に韻律的な卓越を与えることによって,情報の新旧を示す談話的な機能を果たす.
 (vi) 談話を特徴づける.ニュース報道,実況放送,説教,講義などはそれぞれ特有の韻律を示す.
 (vii) 学習を助ける.リズム感のよい語呂などを利用すると,暗記や学習が容易になる.したがって,韻律的特徴は,言語習得においても重要な役割を果たす.
 (viii) 個人を同定する.韻律は,話者の社会言語学的な所属や話者の用いる使用域 (register) を指示する (indexical) 機能をもつ.

 言語における韻律はしばしば旋律や音楽と比較されるが,両者は2つの点で決定的に異なる.第1に,音楽は繰り返されることを前提として作られるが,言語については通常そのような前提はない.第2に,音楽は固定周波(絶対的な音調)に基づいて演奏されるが,言語の韻律は相対的なものである.

 ・ Crystal, David. How Language Works. London: Penguin, 2005.

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2012-12-13 Thu

#1326. 伝え合いの7つの要素 [communication][linguistics][function_of_language][paralinguistics]

 多才な言語学者・人類学者,西江雅之先生による「ことば」論を読んだ.西江先生の講義は学生時代に受けたことがあり,久しぶりに西江節を心地よく読むことができた.
 著者は,コミュニケーションのことを「伝え合い」と呼んでおり,そこにことばが占める割合は驚くほど小さいと述べる.続けて,生の伝え合いにおいては7つの要素があり,人はそれらの7つの要素を同時に使い分けているのだと主張する.その7つの要素とは,以下の通り (116) .

 (1) 「ことば」
 (2) 当人たちの身体や性格面での「人物特徴」
 (3) 顔の表情の変化や視線の動きを含む「体の動き」
 (4) 伝え合いをしている人物がいる周辺環境としての「場」
 (5) 直接的な接触によるものや顔色の変化などに見られる「生理的反応」
 (6) お互いの距離,当人たちが占めているスペース,そのときの時刻,伝え合いの内容を表現するためにかかる時間などの「空間と時間」
 (7) 当人たちの社会生活上の地位や立場といった「人物の社会的背景」

 7つの要素を挙げた後,著者は,これらは「互いに溶け合っている」のであり,「その要素の中の一つだけを独立させて伝え合いを行なうことはあり得ない」のだと強調する.そして,これがなかなかわかってもらえないのだと嘆きすらする.

重要なことは、この「七つの要素」は溶け合っているということ。その中の一要素だけを取り出して伝え合いをすることは、決してできないということです。この説は、この四〇年余りわたしが言い続けてきたことなのですが、みんなが一番わからないところらしい。ことばの専門家ではない人は比較的簡単に納得してくれるのですが、言語や哲学の専門家となると、まったくと言っていいほど関心を示してくれません。それほど、ある種の人びとの頭の中は、言語が圧倒的な位置を占めているんですね。 (118)


 この説について考えているときに,「#1259. 「Jakobson による言語の6つの機能」への批判」 ([2012-10-07-1]) で引用したムーナンの議論を思い出した.Jakobson の言語の6機能と西江の伝え合いの7要素とは互いに性格が異なるので直接比較できないが,いずれも説明上いくつかの因子へと分解してみせるものの,実際にはすべてが融和しており,分解は不可能なのではないか,ということだった.
 (1) が主流派の言語学で扱う対象だとすれば,(2) 以下の要素は,最近になって発展してきた語用論 (pragmatics) ,社会言語学 (sociolinguistics),パラ言語学 (paralinguistics) などの領域に属することになる.
 西江先生は,私が学生だった頃より,このような「傍流」の要素の重要性を主張してきたのかと,今さらながらに気づいた.だが,これらの分野は今や傍流ではなくなってきている.西江先生の炯眼に敬意を表したい.

 ・ 西江 雅之 『新「ことば」の課外授業』 白水社,2012年.
 ・ ジョルジュ・ムーナン著,佐藤 信夫訳 『二十世紀の言語学』 白水社,2001年.

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2012-04-21 Sat

#1090. 言語の余剰性 [redundancy][linguistics][entropy][information_theory][paralinguistics]

 ヒトの言語の著しい特徴として,以前の記事で「#766. 言語の線状性」 ([2011-06-02-1]) と「#767. 言語の二重分節」 ([2011-06-03-1]) を取り上げてきたが,もう1つの注目すべき特徴としての余剰性 (redundancy) については,明示的に取り上げたことがなかった.今日は,昨日の記事「#1089. 情報理論と言語の余剰性」 ([2012-04-20-1]) を受けて,この特徴について説明したい.
 言語による意味の伝達に最小限に必要とされる以上の記号的要素が用いられるとき,そこに余剰性が含まれているといわれる.言語の余剰性は一見すると無駄で非効率に思われるが,昨日の記事で述べたように,言語使用に伴う種々の雑音 (noise) に対する強力な武器を提供している.急ハンドルの危険を防止するハンドルの遊びと言い換えてもよいし,無用の用と考えてもよい.また,言語の余剰性は,言語習得にも欠かせない.言語構造上また言語使用上の余剰性が十分にあれば未知の言語要素でも意味の予測が可能であり,実際に言語習得者はこの機構を利用して,言語内的・外的な文脈からヒントを得ながら,意味の見当をつけてゆくのである.
 余剰性という観点から言語を見始めると,それは言語のあらゆる側面に関わってくる要素だということがわかる.まず,昨日の記事で触れたように,音声と音素の情報量の差に基づく余剰性がある.言語の伝達には数十個の分節された音素を区別すれば事足りるが,その実現は音声の連続体という形を取らざるを得ず,そこには必要とされるよりも約千倍も多くの音声信号が否応なしに含まれてしまう.
 音韻体系にみられる対立 (opposition) に関係する余剰性もある.英語において,音素 /n/ は有声歯茎鼻音だが,鼻音である以上は有声であることは予測可能であり,/n/ の記述に声の有無という対立を設定する必要はない.これは,余剰規則 (redundancy rule) と呼ばれる.
 音素配列にも余剰性がある.語頭の [s] の直後に来る無声破裂音は必ず無気となるので,無気であることをあえて記述する必要はない([2011-02-18-1]の記事「#662. sp-, st-, sk- が無気音になる理由」を参照).予測可能であるにもかかわらず精密に記述することは不経済だからである.しかし,言語使用の現場で,語頭の [s] は何らかの雑音で聞こえなかったが,直後の [t] は無気として聞こえた場合,直前に [s] があったに違いないと判断し,補うことができるかもしれない.このように,余剰性は安全装置として機能する.
 音素配列に似た余剰性は,綴字規則にも見られる.例えば,英語では頭字語などの稀な例外を除いて,<q> の文字の後には必ず <u> が来る.<u> はほぼ完全に予測可能であり,情報量はゼロである.
 形態論や統語論における余剰性の例として,These books are . . . . というとき,主語が複数であることが3語すべてによって示されている.It rained yesterday. では,過去であることが2度示されている.英語史上の話題である二重複数 (double_plural),二重比較級 (double_comparative),二重否定 ([2010-10-28-1], [2012-01-10-1]) なども,余剰性の問題としてみることができる.
 そのほか,類義語を重ねる with might and main, without let or hindrance や,電話などでアルファベットの文字を伝える際の C as in Charley などの表現も余剰的であるし,Yes と言いながら首を縦に振るといった paralinguistic な余剰性もある.
 余剰性と予測可能性 (predictability) は相関関係にあり,また予測可能性は構造の存在を前提とする.したがって,言語に余剰性があるということは,言語に構造があるということである.ここから,余剰性を前提とする情報理論と,構造を前提とする構造言語学とが結びつくことになった.構造言語学の大家 Martinet の主張した言語の経済性の原理でも,余剰性の重要性が指摘されている (183--85) .
 情報理論と言語の余剰性の関係については,Hockett (76--89) を参照.

 ・ Martinet, André. Éléments de linguistique générale. 5th ed. Armand Colin: Paris, 2008.
 ・ Hockett, Charles F. "Review of The Mathematical Theory of Communication by Claude L. Shannon; Warren Weaver." Language 29.1 (1953): 69--93.

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