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最終更新時間: 2019-05-24 08:08

2018-06-15 Fri

#3336. 日本語の諺に用いられている語種 [japanese][proverb][lexicology][etymology][genre][hel_education]

 木下 (84--87) が,日本語の諺に用いられている語彙を「漢語」「和語」「混種語/外来語」に区分して提示している.

 漢語和語混種語/外来語
ほにゅう類しし,象,てん,ひょう,駄馬(荷物運びの馬)あしか,いたち,犬,うさぎ,牛,馬,おおかみ,きつね,くま,こうもり,さる,鹿,たぬき,虎,猫,ねずみ,羊,豚,むじな,め牛 
鳥類くじゃくあひる,う,うぐいす,おうむ,かささぎ,かも,からす,きじ,さぎ,みみずく,すずめ,たか,ちどり,つぐみ,つばめ,つる,とび,はと,ひばり,ほととぎす,めじろ,山鳥,よたか,わし 
は虫類・両生類亀,かえる,とかげ,へび,まむし,わに  
魚介類あんこうあさり,あわび,いか,いわし,魚,うなぎ,えび,かき,かつお,かに,かます,かれい,くじら,くらげ,こい,さば,さめ,さんま,しじみ,たこ,たにし,どじょう,なまこ,なまず,はぜ,はまぐり,はも,ひらめ,ふぐ,ふな,まぐろ,ます,めだか,やつめうなぎ 
虫類 あぶ,あり,いもむし,うじ,か,くも,けら,しらみ,せみ,かたつむり,なめくじ,のみ,はえ,はち,ほたる,みのむし,むかで 
想像上の動物きりん,りゅうおに,かっぱ,ぬえ 
植物甘草,しょうぶ,じんちょうげ,せんだん,ぼたん,れんげ草おさがお,あざみ,あし,あやめ,いばら,えのき,かし,かや,けやき,こけ,桜,ささ,杉,すすき,竹,たで,とち,どんぐり,野菊,またたび,松,柳,やまもも,よもぎ 
道具類絵馬,看板,金銭,剣,こたつ,さいころ,財布,磁石,尺八,三味線,手裏剣,定規,膳,線香,ぞうきん,太鼓,茶碗,ちょうちん,鉄砲,のれん,鉢,判,びょうぶ,仏壇,ふとん,棒,やかん,ようじらっぱ,わんいかり,糸,うす,大鍋,おけ,鏡,かぎ,かご,刀,かなづち,金,鐘,釜,鎌,かまど,紙,かみそり,かんな,きね,きり,くい,釘,鍬,琴,こま,さお,さかずき,皿,ざる,しめなわ,鋤,鈴,墨,すりこぎ,薪,手綱,棚,たらい,たる,杖,つぼ,てこ,と石,つづら,なた,なわ,のみ,はさみ,箸,はしご,針,火打ち石,ひも,袋,筆,舟,船,へら,帆,枕,升,まないた,耳かき,むち,眼鏡,矢,やすり重箱,すり鉢,そろばん,拍子木,弁当箱
料理せんべい,たくあん,まんじゅうあずき飯,いも汁,かば焼,かゆ,刺身,塩から,たら汁,つけ物,どじょう汁,なます,煮しめ,冷酒,冷飯,ぼたもち,飯,もち甘茶,金つば,団子,茶漬け,鉄砲汁,豆腐汁
食品・食材牛乳,こしょう,こんにゃく,こんぶ,さとう,さんしょう,しょうゆ,茶,豆腐,納豆,肉,みそ油あげ,かつおぶし,米,酒,塩,酢,たまご焼豆腐
野菜・作物ごぼう,ごま,すいか,大根,にんじん,ひょうたん,びわ,ゆず麻,小豆,いね,いも,うど,梅,瓜,柿,菊,栗,しめじ,そば,だいだい,たけのこ,長いも,なし,なす,ねぎ,はす,へちま,まつたけ,麦,桃,山いも,わらびかぼちゃ
衣服烏帽子,下駄,ずきん,雪駄,ぞうり,はんてん帯,笠,かたびら,かみしも,かさ,小袖,衣,たすき,足袋,羽織,日がさ,振袖,みの,むつき(おむつ),わらじ越中ふんどし,白むく,高下駄,まち巻き,かぶと,じゅばん


 これは「諺というテキストタイプにおける語種(名詞)の分布」を表わす区分表であり,実際に何の役に立つのかは分からないものの,眺めていてなんだかおもしろい.なんらかの方法で語彙研究に貢献しそうな予感がする.これを英語の諺でもやってみたら,それなりにおもしろくなるかもしれない.
 この区分表を掲げた後で,木下 (88) が次のようにコメントしている.

 道具,衣服などは,洋風化,機械化が進んだ現在では,ほとんど見られなくなってしまったものが多くあります.生活が便利になった半面,日本の伝統的な生活の道具がしだいに私たちのまわりから姿を消しています.そして,おもしろいことに,新しく作られた便利な道具は,まだ,歴史が浅いせいか,ことわざのなかには見つかりません.将来,テレビやラジオ,せんたく機,そうじ機などといったことばを使ったことわざができるかもしれませんね.
 動物にしても,植物にしても,虫にしても,たくさんの名前を,ことわざの中に見ることができます.この中の何種類かは,もうわたしたちのまわりでは見ることができません.自然破壊が進んで,森や野原や沼がなくなり,川も海も姿を変えつつあります.私たちの生活を便利にし,より高度な文明を作り上げるためには,いたしかたない側面もあるのですが,これらのことわざを聞くたびに,さびしい気持ちになりますね.


 各言語の諺というのは,いろんな方面からディスカッションの題材となりそうだ.

 ・ 木下 哲生 『ことわざにうそはない?』 アリス館,1997年.

Referrer (Inside): [2018-08-22-1]

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2017-07-10 Mon

#2996. 近代英語期の英文法書とレシピ本の共通点 [prescriptive_grammar][recipe][genre][lmode]

 Tieken-Boon van Ostade (138) による後期近代英語の概説書を読んでいて,英文法書とレシピ本に見られる思いも寄らない共通点を教えられた.

Between 1500 and 1850, the number of such books [= cooking recipes] increased dramatically, which, interestingly, shows a parallel with the steep rise in the publication of English grammars since the 1760s . . . . Their reading public was also similar: people who desired access to the 'polite' middle classes, and who needed tools for this, even cookery books. Another similarity is that writers of cookery books often 'copy from existing collections so that such compilations tend to be "improvements" of earlier cookery books' (Görlach 1992: 750).


 まず,両テキストタイプともに,近代期を通じて出版が伸び続けており,とりわけ18世紀後半に増加したという.また,その需要はいずれも上昇志向の強い中流階級に支えられていたという点が指摘されている.いずれも,気品ある紳士淑女にとって「たしなみ」と捉えられていたのである.さらに,著者たちが「改善」と称して,既刊書からのコピペを当たり前のように行なっていたということも共通点だ.現在であれば明らかに剽窃として罰せられるところだが,当時は珍しいことではなかったのだろう.とはいえ,18世紀後半には,顰蹙を買うに足る行為と認識されるようになっていたようである.
 昨今の日本では,結婚相手として男女ともに料理のたしなみが求められるようになってきているようだが,特に日本語文法の知識は求められていない.これはある意味でほっとするところである.18世紀のイギリス社会は, "social climbers" にとって生きるのも楽ではなかったのだなあと考えさせる意外な共通点だった.

 ・ Tieken-Boon van Ostade, Ingrid. An Introduction to Late Modern English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2009.

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2017-06-13 Tue

#2969. 閉じない quotation marks [punctuation][literature][genre][prescriptive_grammar][printing]

 「#1097. quotation marks」 ([2012-04-28-1]) で,英語の引用符の single か double の差について論じた.今回は,引用符の開きと閉じの習慣について歴史をひもといてみよう.
 現在の慣習では,引用符を “ で開いたら ” で閉じるというのは自明のように思われる.しかし,前の記事でみたように,本来的にこの記号は「ここから引用が始まりますよ」という合図として,欄外に置かれるマークとして出発したのだった.「ここから始まる」と言っておいて「どこそこで終わる」と言わないのは,引用者として無責任のように思われるかもしれないが,これは現代的な思考法なのかもしれない.古くは,閉じの引用符は置かれなかったのである! 書き手にとって,どこで引用が終わるかは明らかだし,読み手もそれで何とかなるだろうと,ある種の鷹揚さを持ち合わせていたかのようだ.
 話者が頻繁に交替する会話の再現が稀な時代であれば,実際,何とかなったろう.しかし,小説のようなジャンルが盛んになると,閉じない引用符の問題は深刻となる.こうして,小説が人気を獲得する18世紀に,ついに閉じの引用符が慣習的に用いられるようになった.おりしも18世紀には現代人にとっては見苦しいほど句読法を多用することが是とされたので,Murray の規範文法でも,このような2重引用符の使用が推奨されたのである.新たな文学ジャンルの発達とそれに伴う直接話法の頻用,そして当時の重めの句読法の慣習が,新しい記号使用を促進したことになる (Crystal 308--09) .
 引用符の開きと閉じの問題について,印刷家が直面したもう1つの問題があった.それは,引用が複数の段落にまたがるとき,前の段落の最後に閉じの引用符を含めるか,あるいは後の段落の最初に開きの引用符を繰り返すか,といった問題である.印刷家によっては,各段落の始めと終わりを,それぞれ開きと閉じの引用符で標示するという方法を採用した.しかし,これでは各段落で独立して引用が導入されているかのように誤読される恐れがある.現在採用されているのは,各段落の始めは改めて開きの引用符を付して引用の継続を示すが,閉じの引用符は引用全体の終末時にしか付さない,という方法だ (Crystal 310) .一見すると論理的ではないかのようだが,説明されれば,その実用性と合理性のバランスの取れていることは納得できるだろう.
 歴史的には,引用符は必ずしも閉じるのが当然ではなかったという事実に注意すべきである.かつての緩い句読法は,開きと閉じの括弧の対応が正確でないとすぐにエラーとなる現代のプログラミング言語のようなガチガチの理屈とは対極にある,実におおらかな世界の慣習だったのである.

 ・ Crystal, David. Making a Point: The Pernickety Story of English Punctuation. London: Profile Books, 2015.

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2015-10-01 Thu

#2348. 英語史における code-switching 研究 [code-switching][me][emode][bilingualism][contact][latin][french][literature][borrowing][genre][historical_pragmatics][discourse_analysis]

 本ブログでは code-switching (CS) に関していくつかの記事を書いてきた.とりわけ英語史の視点からは,「#1470. macaronic lyric」 ([2013-05-06-1]),「#1625. 中英語期の書き言葉における code-switching」 ([2013-10-08-1]),「#1941. macaronic code-switching としての語源的綴字?」 ([2014-08-20-1]),「#2271. 後期中英語の macaronic な会計文書」 ([2015-07-16-1]) で論じてきた.現代語の CS に関わる研究の発展に後押しされる形で,また歴史語用論 (historical_pragmatics) の流行にも支えられる形で,歴史的資料における CS の研究も少しずつ伸びてきているようであり,英語史においてもいくつか論文集が出されるようになった.
 しかし,歴史英語における CS の実態は,まだまだ解明されていないことが多い.そもそも,CS が観察される歴史テキストはどの程度残っているのだろうか.Schendl は,中英語から初期近代英語にかけて,複数言語が混在するテキストは決して少なくないと述べている.

There is a considerable number of mixed-language texts from the ME and the EModE periods, many of which show CS in mid-sentence. The phenomenon occurs across genres and text types, both literary and non-literary, verse and prose; and the languages involved mirror the above-mentioned multilingual situation. In most cases Latin as the 'High' language is one of the languages, with one or both of the vernaculars English and French as the second partner, though switching between the two vernaculars is also attested. (79)

CS in written texts was clearly not an exception but a widespread specific mode of discourse over much of the attested history of English. It occurs across domains, genres and text types --- business, religious, legal and scientific texts, as well as literary ones. (92)


 ジャンルを問わず,様々なテキストに CS が見られるようだ.文学テキストとしては,具体的には "(i) sermons; (ii) other religious prose texts; (iii) letters; (iv) business accounts; (v) legal texts; (vi) medical texts" が挙げられており,非文学テキストとしては "(i) mixed or 'macaronic' poems; (ii) longer verse pieces; (iii) drama; (iv) various prose texts" などがあるとされる (Schendl 80) .
 英語史あるいは歴史言語学において CS (を含むテキスト)を研究する意義は少なくとも3点ある.1つは,過去の2言語使用と言語接触の状況の解明に資する点だ.2つめは,CS と借用の境目を巡る問題に関係する.語彙借用の多い英語の歴史にとって,借用の過程を明らかにすることは,理論的にも実際的にも極めて重要である (see 「#1661. 借用と code-switching の狭間」 ([2013-11-13-1]),「#1985. 借用と接触による干渉の狭間」 ([2014-10-03-1]),「#1988. 借用語研究の to-do list (2)」 ([2014-10-06-1]),「#2009. 言語学における接触干渉2言語使用借用」 ([2014-10-27-1])) .3つめに,共時的な CS 研究に通時的な次元を与えることにより,理論を深化させることである.

 ・ Schendl, Herbert. "Linguistic Aspects of Code-Switching in Medieval English Texts." Multilingualism in Later Medieval Britain. Ed. D. A. Trotter. Cambridge: D. S. Brewer, 2000. 77--92.

Referrer (Inside): [2015-12-18-1]

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2015-08-15 Sat

#2301. 話し言葉と書き言葉をつなぐスペクトル [pragmatics][methodology][genre][medium][writing][register]

 「#230. 話しことばと書きことばの対立は絶対的か?」 ([2009-12-13-1]) で,Koch and Oesterreicher の有名な「近いことば」と「遠いことば」のモデルを紹介した.これは,言語使用域 (register) に関連して,話し言葉や書き言葉などの談話の媒体 (medium) と,新聞記事,日記,説法,インタビューなどの談話の場 (field of discourse) とが互いにどのように連動しているかを示す1つのモデルである(使用域については「#839. register」 ([2011-08-14-1]) を参照).
 また,歴史語用論における証拠の問題と関連して「#2001. 歴史語用論におけるデータ」 ([2014-10-19-1]) でも,談話の媒体と場(あるいはジャンル)の関係を表わすものとして,Jucker による図を示した.
 今回はもう1つ参照用に Svartvik and Leech (200) による "A spectrum of usage linking speech with writing" を導入しよう.

'Typical speech'
       ↑                   Face-to face conversation
       │                   Telephone conversation
       │
       │                   Personal letters
       │                   Interviews
       │                   Spontaneous speeches
       │
       │                   Romantic fiction
       │                   Prepared speeches (such as lectures)
       │
       │                   Mystery and adventure fiction
       │                   Professional letters
       │                   News broadcasts
       │
       │                   Science fiction
       │                   Newspaper editorials
       │
       │                   Biographies
       │                   Newspaper reporting
       │                   Academic writing
       │
       ↓                   Official documents
'Typical writing'

 Koch and Oesterreicher の図のように2次元的でもないし,Jucker の図のように階層的でもない.あくまで単純かつフラットな連続体を表わす図にすぎないので,注意して解釈する必要があるが,参照には簡便だろう.
 Halliday 言語学において使用域を構成する談話の媒体,場,スタイルの3種の区分は,それぞれが精緻な連続体をなしており,しかもお互いが複雑に乗り入れをしている.すべてをまともに図示しようとすれば,何重ものスペクトルになるだろう.
 話し言葉と書き言葉の問題,媒体の問題については,「#748. 話し言葉書き言葉」 ([2011-05-15-1]),「#849. 話し言葉書き言葉 (2)」 ([2011-08-24-1]) ,「#1001. 話しことばと書きことば (3)」 ([2012-01-23-1]),「#1665. 話しことばと書きことば (4)」 ([2013-11-17-1]),「#1829. 書き言葉テクストの3つの機能」 ([2014-04-30-1]),「#1664. CMC (computer-mediated communication)」 ([2013-11-16-1]) をはじめ,medium の各記事を参照されたい.

 ・ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006. 144--49.

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2014-10-19 Sun

#2001. 歴史語用論におけるデータ [historical_pragmatics][methodology][genre][medium]

 昨日の記事「#2000. 歴史語用論の分類と課題」 ([2014-10-18-1]) で,歴史語用論を巡る様々な見方を紹介した.歴史言語研究の他の多くの部門と同様に,歴史語用論もかつての言語,とりわけ話し言葉を可能な限り正確に記述することを目指している.もっとも,歴史語用論は,媒介が話し言葉であれ書き言葉であれ,ジャンルが会話であれ,私信であれ,劇であれ,それぞれを1つの特有の談話 (discourse) として,独立した研究対象とすることを推進してきたのであり,必ずしも話し言葉の復元にこだわっているわけではない.とはいえ,歴史語用論でも,話し言葉の復元が重要な課題の1つであることにはかわりない.
 では,事実上書き言葉を通じてしか過去の言語のありようを知ることのできない歴史語用論を含む歴史言語研究では,そこからどのようにして話し言葉に関する情報を抽出することができるだろうか.書き言葉に埋め込まれている話し言葉の要素を取り出すためには,まず両者の関係に関する理解と理論が必要である.よく知られている理論の1つに,「#230. 話しことばと書きことばの対立は絶対的か?」 ([2009-12-13-1]) で取り上げた Koch and Oesterreicher による「遠いことば」 (Sprache der Distanz) と「近いことば」 (Sprache der Nähe) に関わる図式がある.日記,新聞記事,講演,インタビューなど各種の談話が,書き言葉(文字)と話し言葉(音声)の関係のなかでそれぞれどの辺りに位置するのかを示したモデルである.これにより,話し言葉に近い書き言葉が反映された談話を選び出すことができる.
 Jucker and Taavitsainen (23) に,Jucker の提案するもう1つのモデルが示されている."Data in historical pragmatics: The 'communicative view'" と題された図の概要を再現する.

                              ┌─── monologic ──── books, poems
Genuinely written data  ───┤
                              └─── dialogic  ──── letters, pamphlets

                              ┌─── retrospective ──── reports, protocols (e.g. legal); in diaries
                              │
                              │                       ┌── in narratives or poetry
                              │                       │
Written representations ───┼─── fictional ───┼── in academic texts
of spoken language            │                       │
                              │                       └── drama
                              │
                              │                       ┌── in conversation manuals
                              └─── prospective ──┤
                                                       └── in language textbooks

 大区分の1つ目 "Genuinely written data" は,返答のない monologic と,返答のある,したがって(書き言葉とはいえ)対話の体をなす dialogic とに分かれる.dialogic のうち,特に私信 (private letters) は擬似的な対話を再現しており,始めと終わりの挨拶に加え,中盤には話し言葉に近似した私的なコミュニケーションが反映される可能性が高く,資料としての価値が高い.
 大区分の2つ目 "Written representations of spoken language" は,話し言葉を推し量る資料としての価値がさらに高いとされる.まず,"retrospective" なテキストは,多少なりとも忠実に話し言葉が書き言葉のなかに再現されていると期待される.次に "fictional" なテキストは,登場人物間の対話が話し言葉を再現する貴重な資料となる.例えば賢い老人と愚かな若者の掛け合いによる知恵の文学は長い伝統をもつが,読者を引き込む話し言葉の魅力に満ちている."fictional" のなかでも劇は,歴史語用論において特別な地位を占めてきた.それは,劇においては発話の環境が詳しく同定できるからだ.どのような社会的立場の者がどのような状況で発話しているか,発話内行為 (illocution) や発話媒介行為 (perlocution) は何かなど,特定できることが多い.最後に,"prospective" なテキストは,規範的な対話を教える教科書や教本に現われるテキストである.
 テキストの種類により,話し言葉が反映されている程度や質は異なっているが,それぞれの特徴を慎重に考慮することによって,話し言葉を適切に抽出し,歴史語用論における資料として有効に用いることができる.

 ・ Koch, Peter and Wulf Oesterreicher. "Sprache der Nähe -- Sprache der Distanz: Mündlichkeit und Schriftlichkeit im Spannungsfeld von Sprachtheorie und Sprachgeschichte." Romanistisches Jahrbuch 36 (1985): 15--43.
 ・ Jucker, Andreas H. and Irma Taavitsainen. English Historical Pragmatics. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

Referrer (Inside): [2015-08-15-1]

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