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ai - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-06-11 11:43

2024-02-14 Wed

#5406. ダーウィンによる人類の進化,言語の進化,精神の進化 [homo_sapiens][origin_of_language][evolution][history_of_linguistics][darwin][ai]

 Charles Darwin (1809--82) は,言語の進化は人類の進化そのものと平行的なところがあると考えており,また精神の進化とも関係しているとも述べている.特に後者に関して進化を考える上で言語と精神とを結びつけてみた論者は,Darwin が最初に近かったようだ.Mufwene (23) より解説を引用する.

Charles Darwin commented in The Descent of Man (1871) that the evolution of language was in several ways reminiscent of that of mankind itself. He hypotheisized that it had emerged gradually, had not been given by God or invented by design by humans, and could also be explained by natural selection. He was among the first to correlate the evolution of language with that of the human mind . . . , thus accounting for why parrots cannot produce original spoken messages intentionally, although they can imitate human speech fairly accurately. Showing what an important driver role the human mind has played in the evolution of language, he argued that it was for the same reason that other primates do not use their buccopharyngeal structure to speak.


 これは生成AIが産出する言語が真の言語なのかという点にも関わってくる点で,古くて新しい論点かもしれない.
 さらに,上の解説に続けて Mufwene (23) は,言語能力の発現と諸言語の発生は独立しているか否かという,もう1つの重要な論点を指摘している.

We now know that Charles Darwin was only partly right. The other primates' buccopharyngeal structure is not shaped in exactly the same way as that of humans, although, based on the parrot's phonetic accomplishments, we must wonder how critical this particular structure was for the emergence of language (not speech!) in the first place. After all, humans who cannot speak produce signed language, which is just as adequate for communication. This argument may be claimed to support the position that the emergence of the capacity for language must be distinguished from the emergence of languages. However, one must also wonder whether the two questions can be considered independently of each other . . . .


 この論点も現代の視点からみると余計におもしろい.生成AIは,人間が発した多くの既存の言語データをエネルギーとして,言語能力らしきもの(正確にいえば言語産出の手法)を獲得したからである.
 この時代に,Darwin を読んでみるのも有意義かもしれない.

 ・ Mufwene, Salikoko S. "The Origins and the Evolution of Language." Chapter 1 of The Oxford Handbook of the History of Linguistics. Ed. Keith Allan. Oxford: OUP, 2013. 13--52.

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2023-03-13 Mon

#5068. 英語史の知識・智恵は AI に負けない [academic_conference][heldio][voicy][ai][hel_education]

 一昨日の3月11日(土)の午後に,JACET中部支部2022年度第2回定例研究会(オンライン)にて講演させていただきました.40名超の方々のご参加を賜わり,ありがとうございました.また,支部長の今井隆夫先生(南山大学)をはじめ,事前準備にご尽力いただいた事務局の先生方に感謝いたします.
 講演後の質疑応答のなかで,英語教育において AI といかに付き合っていくべきかという大きな論題が提示されました.DeepLChatGPT など昨今の AI の自然言語処理の飛躍的発展を前に,語学教員は一人残らず頭を悩ませていることと思います.私もその一人です.
 しかし,今回の講演では,いかにして英語史が英語教育に貢献できるかという点に注目してきたので,この質問に対しても主にそちらの観点からお答えしました.英語史の知識・智恵は AI に負けることはないので動揺するに値しない,というのが私の回答です.
 講演でのこの質疑応答について,昨日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて取り上げました.「#650. 英語史の知恵が AI に負けない3つの理由」と題して23分ほどお話ししていますので,ぜひお聴きいただければと思います.



 講演でも放送でも述べましたが,(英語)教育における英語史活用には3つのレベルがあると考えています.もう少し丁寧に整理する必要がありますが,当面のものをこちらに示します.

 1. intra-disciplinary: 語源を用いた語彙学習,綴字と発音の関係,文法変化など
 2. inter-disciplinary: 英語教育や英語学との協力,他の科目(歴史,地理,国語,他の外国語)との連動など
 3. extra-disciplinary: 言葉に限らず物事の通時的見方を養う,言語の変化・変異・多様性,言語・国籍・民族・性・宗教の inclusion など

 理想的には,この3つのレベルすべてに関わるような英語史の話題を選び,それを用いて英語(史)教育を行なっていくのがよいと考えています.
 heldio の上記の放送回には多くのコメントが寄せられてきています(こちらのページの下方を参照).新たな議論が展開しており,私自身も思考を促されています.エキサイティングな議論ですので,ぜひ hellog 読者の皆さんも,そちらのコメント欄を通じてこの議論に加わっていただければと思います.

「#650. 英語史の知恵が AI に負けない3つの理由」へのコメント


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