hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     1 2 次ページ / page 1 (2)

shortening - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2020-10-30 11:00

2020-09-10 Thu

#4154. 借用語要素どうしによる混種語 --- 日本語の例 [japanese][hybrid][shortening][borrowing][loan_word][etymology][word_formation][contact][purism]

 先日の記事「#4145. 借用語要素どうしによる混種語」 ([2020-09-01-1]) を受けて,日本語の事例を挙げたい.和語要素を含まない,漢語と外来語からなる混種語を考えてみよう.「オンライン授業」「コロナ禍」「電子レンジ」「テレビ電話」「牛カルビ」「豚カツ」などが思い浮かぶ.ローマ字を用いた「W杯」「IT革命」「PC講習」なども挙げられる.
 『新版日本語教育事典』に興味深い指摘があった.

最近では,「どた(んば)キャン(セル)」「デパ(ート)地下(売り場)めぐり」のように,長くなりがちな混種語では,略語が非常に盛んである.略語の側面から多様な混種語の実態を捉えておくことは,日本語教育にとっても重要な課題である. (262)


 なるほど混種語は基本的に複合語であるから,語形が長くなりがちである.ということは,略語化も生じやすい理屈だ.これは気づかなかったポイントである.英語でも多かれ少なかれ当てはまるはずだ.実際,英語における借用語要素どうしによる混種語の代表例である television も4音節と短くないから TV と略されるのだと考えることができる.
 日本語では,借用語要素どうしによる混種語に限らず,一般に混種語への風当たりはさほど強くないように思われる.『新版日本語教育事典』でも,どちらかというと好意的に扱われている.

混種語の存在は,日本語がその固有要素である和語を基盤にして,外来要素である漢語,外来語を積極的に取り込みながら,さらにそれらを組み合わせることによって造語を行ない,語彙を豊富にしてきた経緯を物語っている. (262)


 英語では「#4149. 不純視される現代の混種語」 ([2020-09-05-1]) で触れたように,ときに混種語に対する否定的な態度が見受けられるが,日本語ではその傾向は比較的弱いといえそうだ.

 ・ 『新版日本語教育事典』 日本語教育学会 編,大修館書店,2005年.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2020-08-11 Tue

#4124. OMG = "oh my God" は100年の歴史を誇る [abbreviation][shortening][net_speak][initialism][oed]

 ネット上の書き言葉では,ASAP = "as soon as possible" や CUL8R = "see you later" などのアルファベット頭字語 (initialism) と呼ばれる独特な省略記法が頻用される.「#817. Netspeak における省略表現」 ([2011-07-23-1]) で様々な例を示したが,これらは「#625. 現代英語の文法変化に見られる傾向」 ([2011-01-12-1]) や「#860. 現代英語の変化と変異の一覧」 ([2011-09-04-1]) で触れたように,すぐれて現代的な言語変化の傾向を反映するものとして注目されている.
 一方,このようなアルファベット頭字語そのものは実は古代から存在しており,発想そのものが新しいわけではないことにも注意すべきである.これについては「#3935. アルファベット頭字語の浮き沈みの歴史」 ([2020-02-04-1]) で見たとおりだ.
 標題の OMG = "oh my God" も,一見すると近年のネット上の新記法かと思われるかもしれないが,OED によると初例はなんと1917年のことである.

   Quot. 1917 is perhaps with punning reference to the Order of St. Michael and St. George, which at this point had had no Grand Master or Chancellor for several years: these were appointed on 4 Oct. 1917.

1917 J. A. F. Fisher Let. 9 Sept. in Memories (1919) v. 78 I hear that a new order of Knighthood is on the tapis---O.M.G. (Oh! My God!)---Shower it on the Admiralty!!


 その次に挙げられている例は飛んで1994年のものであり,現在の本格的な使用の発端が Netspeak にあることは間違いなさそうだが,(この例では古代からとは言えないものの)100年ほどの歴史を誇っているとは言えるだろう.
 このアルファベット頭字語については,目下 OED のこちらのページで特集グラフィック・コンテンツとして取り上げられている.非常におもしろいコンテンツなので,ぜひどうぞ.上記の1917年の初例が,かの Winston Churchill に宛てられた手紙での使用例だったとは!

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2020-07-31 Fri

#4113. 日本語のコロナ関連語録 [japanese][neologism][waseieigo][katakana][borrowing][shortening][false_friend][semantic_change][lexicology][word_formation][sociolinguistics]

 戦争,飢餓,疫病など苦難の時代には,言語も荒波に揉まれてきた.目下のコロナ禍では言語の何が変わるのだろうか.すでにいくつか候補が挙げられるようにも思う.
 たとえば,英語でいえば,「#4105. 銅像破壊・撤去,新PC,博物館」 ([2020-07-23-1]) でみたように,BLM運動との関連で人種差別を喚起させる特定の語句や表現が槍玉にあげられたり,自主的に置換されるという事態が生じている.これは厳密にいえばコロナ禍の直接的な影響によるものではないが,既存の社会問題がコロナ下の不安と憤懣のなかで増幅して爆発した結果とみなすならば,間接的には関与しているといえる.
 日本語では,様々なコロナ関連表現が,きわめて短期間のうちに生まれ定着してきたことは,肌身に感じられるだろう.7月25日(土)の読売新聞朝刊の特別面(11面)に「コロナ時代の言葉たち」と題する特集が掲載されていた.出現順に挙げるとおもしろそうだが,順番は意識せずに一覧を掲げてみる.

3密,8割削減,10万円給付,Go To トラベル,PCR,Skype,WHO,Zoom,あつ森,アクリル板,アビガン,アベノマスク,アマビエ・アマビコ,ウーバーイーツ,ウィズコロナ,ウェブ面接,エクモ,エッセンシャルワーカー,オーバーシュート,オンライン授業,クラスター,クルーズ船,コロナ (COVID-18),ステイホーム,スペイン風邪,チャーター便,テレワーク,ドライブスルー,ニューノーマル,パンデミック,フェースシールド,ライブハウス,リモートマッチ,ロックダウン,医療崩壊,一世休校,院内感染,屋形船,感染経路不明,緩み,休業要請,緊急事態宣言,県をまたぐ移動,抗原検査,抗体検査,行動変容,再生産数,持ちこたえている,自粛警察,社会的距離(ソーシャル・ディスタンス),手作りマスク,手指消毒,手洗い,収束/終息,出口戦略,新しい生活様式,瀬戸際,正念場,接触確認アプリ,接触感染,専門家会議,巣ごもり,大阪モデル,第2波,置き配,昼カラオケ,転売ヤー,東京アラート,濃厚接触,買い占め,飛沫感染,不要不急の外出自粛,武漢,分散登校,無観客,夜の街,臨時休講


 新語(句)の形成法としては,和製英語あり,借用あり,漢熟語あり,省略ありと,なかなかに新旧の方法が入り交じった賑やかな様相を呈している.新語(句)というよりは,既存の語(句)に新たな語義が付け加えられたり,ニュアンスが変化したりという,意味変化の事例も多い.この一覧を用いて語形成や意味論の基本を論じる講義を準備できるのではないかとすら感じた.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2020-03-01 Sun

#3961. 3音節短化の事例 [sound_change][vowel][phonology][phonetics][shortening][shocc][trish][compound][meosl][homorganic_lengthening][gvs][drift]

 昨日の記事「#3960. 子音群前位置短化の事例」 ([2020-02-29-1]) で触れた SHOCC (= Shortening before Consonant Clusters) とおよそ同時期に生じたもう1つの母音短化として,3音節短化 (Trisyllabic Shortening (= TRISH)) という音変化がある.3音節語において強勢のある第1音節の長母音が短化するというものだ.定式化すると次のようになる.

V → [-long]/__C(C)σσ


 Ritt (99--100) より,初期中英語での形態により例を挙げよう.現代英語の形態と比較できるもののみを挙げる.

heafodu PL'head'
cicenu PL'chicken'
linenes GEN'linen'
æniȝe PL'any'
ærende'errand'
æmette'ant'
suþerne'southern'
westenne DAT'waste (desert)'
deorlingas PL'darling'
feorþinȝas PL'farthing'
feowertiȝ'forty'
freondscipe'friendship'
haliȝdaȝ'holiday'
alderman'alderman'
heringes PL'herring'
stiropes PL'stirrup'
Monenday'Monday'
Thuresday'Thursday'
seliness'silliness'
redili'readily'
bretheren PL'brethren'
evere'ever'
othere ACC'other''
redeles PL'riddle'
boseme ACC'bosom'
wepenes PL'weapon'


 もともとの3音節語に対して生じたほか,複合語で3音節になったもの,名詞の複数形などの屈折語尾が付されて3音節になったものにも生じることがあった.これにより,現代英語で south, holy, moon などが2重母音・長母音をもつのに対して,複合語 southern, holiday, Monday では短母音となっている理由が説明される.他の具体例については,以下の記事も参照されたい.

 ・ 「#1751. 派生語や複合語の第1要素の音韻短縮」 ([2014-02-11-1])
 ・ 「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1])
 ・ 「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1])
 ・ 「#1750. bonfire」 ([2014-02-10-1])

 ここ数日間の記事で,中英語開音節長化 (meosl),同器性長化 (homorganic_lengthening),子音群前位置短化 (shocc) など,後期古英語から初期中英語に生じた一連の母音の量に関する変化を扱ってきたが,これらが互いに補完しあう関係にあったことは注目に値する.さらにいえば,この駆流 (drift) は次の時代の「大母音推移」 (gvs) にもつながっていくものであり,数世紀にわたる長いスパンで俯瞰すべき話題だということが分かる.

 ・ 「#2048. 同器音長化,開音節長化,閉音節短化」 ([2014-12-05-1])
 ・ 「#2052. 英語史における母音の主要な質的・量的変化」 ([2014-12-09-1])
 ・ 「#2063. 長母音に対する制限強化の歴史」 ([2014-12-20-1])
 ・ 「#1402. 英語が千年間,母音を強化し子音を弱化してきた理由」 ([2013-02-27-1])
 ・ 「#3916. 強弱音節の区別と母音変化の関係」 ([2020-01-16-1])
 ・ 「#3914. Stenbrenden 曰く「大母音推移は長期の漂流の一部にすぎない」」 ([2020-01-14-1])

(後記 2020/03/02(Mon):大名力氏より moon は長母音をもつ点を指摘いただきまして,元の「現代英語で south, holy, moon などが2重母音をもつのに対して」を「現代英語で south, holy, moon などが2重母音・長母音をもつのに対して」に修正しました.ありがとうございます.)

 ・ Ritt, Nikolaus. Quantity Adjustment: Vowel Lengthening and Shortening in Early Middle English. Cambridge: CUP, 1994.

Referrer (Inside): [2020-03-02-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2020-02-29 Sat

#3960. 子音群前位置短化の事例 [sound_change][vowel][consonant][phonology][phonetics][shortening][shocc][homorganic_lengthening]

 昨日の記事「#3959. Ritt による同器性長化の事例」 ([2020-02-28-1]) に引き続き,後期古英語から初期中英語に生じたもう1つの母音の量の変化として,子音群前位置短化 (Shortening before Consonant Clusters (= SHOCC) or Pre-Cluster Shortening) の事例を,Ritt (98) より初期中英語での形態で紹介しよう.現代英語の形態と比較できるもののみを挙げる.

kepte'kept'
brohte'brought'
sohte'sought'
þuhte'thought'
demde'deemed'
mette'met'
lædde'led'
sprædde'spread (past)'
bledde'bled'
fedde'fed'
hydde'hid'
softe'soft'
fifta'fifth'
leoht'light'
hihþu'height'
dust'dust'
blæst'blast'
breost'breast'
fyst'fist'
mist'mist'
druhþ'drought'
clænsian'cleanse'
halja'holy (man), saint'
mædd'mad'
fætt'fat'
wræþþo'wrath'
cyþþo'kin'
feoll'fell'
fiftiȝ'fifty'
twentiȝ'twenty'
bledsian'bless'
wisdom'wisdom'
wifman'woman'
hlæfdiȝe'lady'
ȝosling'gosling'
ceapman'chapman'
nehhebur'neighbour'
siknesse'sickness'


 SHOCC の名称通り,2つ以上の子音群の直前にあった長母音が短化する変化である.定式化すれば次のようになる.

V → [-long]/__CCX
where CC is not a homorganic cluster


 上の一覧から分かる通り,SHOCC は kept, met, led, bled, fed など語幹が歯茎破裂音で終わる弱変化動詞の過去・過去分詞形に典型的にみられる.また,fifth の例も挙げられているが,これらについては「#1080. なぜ five の序数詞は fifth なのか?」 ([2012-04-11-1]) や「#3622. latter の形態を説明する古英語・中英語の "Pre-Cluster Shortening"」 ([2019-03-28-1]) を参照されたい.一覧にはないが,この観点から against の短母音 /ɛ/ での発音についても考察することができる(cf. 「#543. sayssaid はなぜ短母音で発音されるか (2)」 ([2010-10-22-1])).
 SHOCC は,昨日扱った同器性長化 (homorganic_lengthening) とおよそ同時代に生じており,かつ補完的な関係にある音変化であることに注意しておきたい.以下も参照.

 ・ 「#2048. 同器音長化,開音節長化,閉音節短化」 ([2014-12-05-1])
 ・ 「#2052. 英語史における母音の主要な質的・量的変化」 ([2014-12-09-1])
 ・ 「#2063. 長母音に対する制限強化の歴史」 ([2014-12-20-1])

 ・ Ritt, Nikolaus. Quantity Adjustment: Vowel Lengthening and Shortening in Early Middle English. Cambridge: CUP, 1994.

Referrer (Inside): [2020-04-06-1] [2020-03-01-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2020-02-04 Tue

#3935. アルファベット頭字語の浮き沈みの歴史 [initialism][abbreviation][shortening][punctuation]

 「#2982. 現代日本語に溢れるアルファベット頭字語」 ([2017-06-26-1]) などの記事で,現代語において隆盛を極めるアルファベット頭字語 (initialism) という略語法の話題を取り上げてきた.英語の例でいえば CEO, GDP, EU などがすぐに挙がるし,aka (= "also known as"), asap (= "as soon as possible"), imho (= "in my humble opinion") などもよく知られている.
 英語に関していえば,このような略語法 (abbreviation) の氾濫は確かに20世紀以降に顕著であり,すぐれて現代的な現象といってよいだろう(cf. 「#875. Bauer による現代英語の新語のソースのまとめ」 ([2011-09-19-1]),「#878. Algeo と Bauer の新語ソース調査の比較」 ([2011-09-22-1])).しかし,それ以前にも見られなかったわけではない.アルファベット文化圏を全体的に調べたわけではなが,少なくともヨーロッパ世界においては,アルファベット頭字語の使用そのものはローマ時代にも確認される.よく知られているのは,ラテン語で「ローマの元老院と人民」を意味する Senatus Populusque Romanus を頭字語化した SPQR である.ラテン語原文では各文字の後に点が打たれ,それによっても略語法であることが分かるが,これは後の英語における Prof., Dr. などの省略を表わすピリオドに連なるものといえる.
 アルファベット頭字語には,1文字で1語を表わせるという便利さがある.とりわけ漢字の利点をよく知っている私たちにとって,この表語文字特有の便利さは,たやすく理解できるだろう.古代ローマでも,この便利さが昂じて法律文書で多用されるようになったようだが,皮肉なことに,厳密さが要求される法律文書で,ときに複数の解釈を許すアルファベット頭字語はふさわしくないと判断され,結局は帝国により使用が禁止されることになった.この影響が持続したのか,その後10世紀までアルファベット頭字語は冬の時代を迎えることになった.
 しかし,10世紀になると復活の兆しを示しだした.とりわけ11--12世紀には,頭文字を用いた記憶術の発展に伴い,聖書に関係する用語や固有人名などがアルファベット頭字語で表現されるようになった.この慣習は,中世後期を通じて続いたが,初期刊本時代の終わりに至って再び衰退していった.そしてその後,先に述べた通り,20世紀に再び復活・拡大してきたというのが歴史の流れである.このように,アルファベット頭字語は何度も浮き沈みの歴史を経てきたのだ.
 以上は,Saenger (64--65) の解説に依拠した.なお,Saenger はアルファベット頭字語のことを "suspension abbreviation" と呼んでいる.

 ・ Saenger, P. Space Between Words: The Origins of Silent Reading. Stanford, CA: Stanford UP.

Referrer (Inside): [2020-08-11-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2020-01-17 Fri

#3917. 『英語教育』の連載第11回「なぜ英語には省略語が多いのか」 [rensai][notice][sobokunagimon][shortening][abbreviation][blend][acronym][compound][compounding][derivation][derivative][conversion][disguised_compound][word_formation][lexicology][borrowing][link]

 1月14日に,『英語教育』(大修館書店)の2月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第11回となる今回は「なぜ英語には省略語が多いのか」という話題です.

『英語教育』2020年2月号


 今回の連載記事は,タイトルとしては省略語に焦点を当てているようにみえますが,実際には英語の語形成史の概観を目指しています.複合 (compounding) や派生 (derivation) などを多用した古英語.他言語から語を借用 (borrowing) することに目覚めた中英語.品詞転換 (conversion) あるいはゼロ派生 (zero-derivation) と呼ばれる玄人的な技を覚えた後期中英語.そして,近現代英語にかけて台頭してきた省略 (abbreviation) や短縮 (shortening) です.
 英語史を通じて様々に発展してきたこれらの語形成 (word_formation) の流れを,四則計算になぞらえて大雑把にまとめると,(1) 足し算・掛け算の古英語,(2) ゼロの後期中英語,(3) 引き算・割り算の近現代英語となります.現代は省略や短縮が繁栄している引き算・割り算の時代ということになります.
  英語の語形成史を上記のように四則計算になぞらえて大づかみして示したのは,今回の連載記事が初めてです.荒削りではありますが,少なくとも英語史の流れを頭に入れる方法の1つとしては有効だろうと思っています.ぜひ原文をお読みいただければと思います.
  省略や短縮について,連載記事と関連するブログ記事へリンクを集めてみました.あわせてご一読ください.

 ・ 「#631. blending の拡大」 ([2011-01-18-1])
 ・ 「#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか?」 ([2011-09-20-1])
 ・ 「#887. acronym の分類」 ([2011-10-01-1])
 ・ 「#889. acronym の20世紀」 ([2011-10-03-1])
 ・ 「#893. shortening の分類 (1)」 ([2011-10-07-1])
 ・ 「#894. shortening の分類 (2)」 ([2011-10-08-1])
 ・ 「#1946. 機能的な観点からみる短化」 ([2014-08-25-1])
 ・ 「#2624. Brexit, Breget, Regrexit」 ([2016-07-03-1])
 ・ 「#2982. 現代日本語に溢れるアルファベット頭字語」 ([2017-06-26-1])
 ・ 「#3075. 略語と暗号」 ([2017-09-27-1])
 ・ 「#3329. なぜ現代は省略(語)が多いのか?」 ([2018-06-08-1])
 ・ 「#3708. 省略・短縮は形態上のみならず機能上の問題解決法である」 ([2019-06-22-1])

 ・ 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第11回 なぜ英語には省略語が多いのか」『英語教育』2020年2月号,大修館書店,2020年1月14日.62--63頁.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2019-06-22 Sat

#3708. 省略・短縮は形態上のみならず機能上の問題解決法である [abbreviation][shortening][slang]

 授業でディスカッションなどをしていると,ときに学生から驚くような発想が飛び出し,感じ入ることがある.先日,造語法としての省略 (abbreviation) や短縮 (shortening) という話題を取り上げ,話者は何のために語を切り詰めたがるのだろうかということを議論した.
 授業では,話者には頻用する表現を短く楽に発音したいといった実際的な欲求があり,省略・短縮という形態的手段を通じて,その欲求を満たすのだろうという議論をしようと思っていた.つまり,話者は純粋に形態的な簡便さを目指して言語行動を行なうことがしばしばある,ということを論じようと考えていた.
 ところが,ある学生が思ってもみない方面からコメントをくれた.省略・短縮はそのような形態的な問題であるばかりではなく,それ自体が独自の機能をもっているのではないかというのだ.たとえば,「コンビニ」は「コンビニエンスストア」を簡単に短く言うために作られた省略語であるという議論は確かに受け入れられるが,一方でそれが単なるコンビニエンスストア(=便利店)にとどまらず,独自の店舗形態と個性をもった「コンビニ」という固有の存在であることを明示するために,あえて「コンビニエンスストア」とは異なる形態,この場合には縮約された形態を取っているのではないかと.つまり,省略・短縮には機能的な役割があるという指摘だ.
 確かに元の表現をベースにしながらも,それとは異なる表現を作り出すことは,機能的独立を目指す造語行為といえる.そのような造語法には借用,派生,合成,転換を含めて様々な形態的手段があり得るが,最も手近で実用的な方法の1つに省略・短縮があるだろう.発音も楽になるし,元の表現とは似ていながらも一応異なる形態になるという点では,省略・短縮は複合的なニーズを満たしてくれる語形成上の優等生といえそうだ.
 俗語,隠語などの生成動機の問題にもつながる重要な視点である.素晴らしい.

Referrer (Inside): [2020-01-17-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2019-04-15 Mon

#3640. 語頭音(節)省略による2重語 [doublet][aphaeresis][shortening][abbreviation]

 英語史には,語頭音(節)省略 (aphaeresis) と呼ばれる音韻形態過程を示すの事例は少なくない.it is'tis, beneath'neath, advantagevantage, racooncoon, acutecute などである.さらに「#548. example, ensample, sample は3重語」 ([2010-10-27-1]) のような例もある.
 しばしば,このような過程のビフォーとアフターの両形が互いに意味を違えつつ併存することがあり,その場合には語源を同じくする2重語 (doublet) が生じたことになる.すでに挙げた (ad)vantage(a)cute がその例だが,他にもいくつか挙げてみよう.

 ・ complot (共謀)/ plot (陰謀)
 ・ defence (防衛)/ fence (囲い)
 ・ disport (気晴らし;楽しませる)/ sport (運動,スポーツ)
 ・ distrain (差し押さえる)/ strain (引っ張る,緊張させる)

 私たちにもなじみ深い sport =「スポーツ」の語義は,比較的新しい発達である.原形 disport は14世紀後半の Chaucer の時代に Anglo-French から借用した単語で,当初は「娯楽;気晴らし」の語義で用いられた.語頭音節省略形 sport もすぐに発達したが,語義が「運動ゲーム」へ変化するのは16世紀前半からであり.しかもこの語義の本格的な使用は19世紀後半になってからである.
 この種の2重語はボキャビルにも活用できる.「#1723. シップリーによる2重語一覧」 ([2014-01-14-1]) や「#1724. Skeat による2重語一覧」 ([2014-01-15-1]) も活用されたい.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2019-03-28 Thu

#3622. latter の形態を説明する古英語・中英語の "Pre-Cluster Shortening" [consonant][vowel][shortening][adjective][comparison][sound_change][etymology][shocc]

 「#3616. 語幹母音短化タイプの比較級に由来する latter, last, utter」 ([2019-03-22-1]) で取り上げたように,中英語では,形容詞の比較級において原級では長い語幹母音が短化するケースがあった.これを詳しく理解するには,古英語および中英語で生じた "Pre-Cluster Shortening" なる音変化の理解が欠かせない.
 "Pre-Cluster Shortening" とは,特定の子音群の前で,本来の長母音が短母音へと短化する過程である.音韻論的には,音節が「重く」なりすぎるのを避けるための一般的な方略と解釈される.原理としては,feed, keep, meet, sleep などの長い語幹母音をもつ動詞に歯音を含む過去(分詞)接辞を加えると fed, kept, met, slept と短母音化するのと同一である.あらためて形容詞についていえば,語幹に長母音をもつ原級に対して,子音で始まる古英語の比較級接尾辞 -ra (中英語では -er へ発展)を付した比較級の形態が,短母音を示すようになった例のことを話題にしている.Lass (102) によれば,

Originally long-stemmed adjectives with gemination in the comparative and superlative showing Pre-Cluster Shortening: great 'great'/gretter, similarly reed 'red', whit 'white', hoot 'hot', late. (The old short-vowel comparative of late has been lexicalised as a separate form, later, with new analogical later/latest.)


 長母音に子音群が後続すると短母音化する "Pre-Cluster Shortening" は,ありふれた音変化の1種と考えられ,実際に英語音韻史では異なる時代に異なる環境で生じている.Lass (71) によれば,古英語で生じたものは以下の通り(gospel については「#2173. gospel から d が脱落した時期」 ([2015-04-09-1]) を参照).

About the seventh century . . . long vowels shortened before /CC/ if another consonant followed, either in the coda or the onset of the next syllable, as in bræ̆mblas 'branbles' < */bræːmblɑs/, gŏdspel 'gospel' < */goːdspel/. This removes one class of superheavy syllables.


 この古英語の音変化は3子音連続の前位置で生じたものだが,初期中英語で生じたバージョンでは2子音連続の前位置で生じている.今回取り上げている形容詞語幹の長短の交替に関与するのは,この初期中英語期のものである (Lass 72--73) .

Long vowels shortened before sequences of only two consonants . . . , and --- variably--- certain ones like /st/ that were typically ambisyllabic . . . . So shortening in kĕpte 'kept' < cēpte (inf. cēpan), mĕtte met < mētte'' (inf. mētan), brēst 'breast' < breŏst 'breast' < brēost. Shortening failed in the same environment in priest < prēost; in words like this it may well be the reflex of an inflected form like prēostas (nom./acc.pl.) that has survived, i.e. one where the /st/ could be interpreted as onset of the second syllable; the same holds for beast, feast from French. This shortening accounts for the 'dissociation' between present and past vowels in a large class of weak verbs, like those mentioned earlier and dream/dreamt, leave/left, lose/lost, etc. (The modern forms are even more different from each other due to later changes in both long and short vowels that added qualitative dissociation to that in length: ME /keːpən/ 〜 /keptə/, now /kiːp/ 〜 /kɛpt/, etc.)


 latter (および last) は,この初期中英語の音変化による出力が,しぶとく現代まで生き残った事例として銘記されるべきものである.

 ・ Lass, Roger. "Phonology and Morphology." The Cambridge History of the English Language. Vol. 2. Cambridge: CUP, 1992. 23--154.

Referrer (Inside): [2020-07-13-1] [2020-02-29-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2018-08-26 Sun

#3408. Elizabeth の数々の異名 [onomastics][personal_name][shortening][abbreviation][hebrew]

 標題の Elizabeth は,英国史の最も偉大な2人の女性に代表される典型的な英語の女性人名である.旧約聖書に現われるたいへん古い名前であり,語源もよく分かっていないようだが,ヘブライ語で「神の誓い」「神は完全なり」を表わす Elisheba に由来するのではないかと言われる.
 英国では16世紀後半の Elizabeth I の治世が契機となり,後の3世紀間,英語女性名としては絶大な人気を誇ったが,20世紀になると(Elizabeth II の治世にもかかわらず)古めかしい名前と評価されるようになったからか,かつてのような人気は博していないようだ.
 聖書にも現われる古い名前だけに,英国のみならずヨーロッパ諸国で同名,およびそこから派生した名前が人名として広く採用されているが,それらが改めて英語人名として英語社会に入ってくると,Elizabeth ファミリーと呼ぶべき種々の異名が行なわれることになった.あまつさえ,英語内部で省略形,愛称形 (hypocorism),地方方言形も発達してきたので,英語では多種多様な Elizabeth が流通していることになる.以下に,Crystal (148) に拠って,代表的なものを挙げよう.

 ・ Short forms: Bess, Bet, Beth, Eliza, Elsa, Liza, Lisbet, Lisbeth, Liz, Liza
 ・ Pet forms (hypocorism): Bessie, Bessy, Betsy, Bette, Betty, Elsie, Libby, Lilibet, Lizzie, Lizzy, Tetty
 ・ Regional forms: Elspet, Elspeth, Elspie (Scottish)
 ・ Foreign forms: Elizabeth (common European spelling); Babette, Elise, Lise, Lisette (French); Elsa, Else, Ilse, Liesel (German); Bettina, Elizabetta (Italian); Isabel, Isabella, Isbel, Isobel, Izzie, Sabella (Spanish/Portuguese); Elilís (Irish Gaelic); Ealasaid (Scottish Gaelic); Bethan (Welsh)

 歴史的には,これらの異名の各々に対して綴字も様々あり得たわけであり,とりわけ標準的な綴字が普及する18世紀より前には,個人名の「正しい」綴字へのこだわりは稀薄だったので,綴字の多様性は著しい.「#1720. Shakespeare の綴り方」 ([2014-01-11-1]) で示唆したとおりである.Elizabeth (および他の多くの名前)について,歴史的にどれだけ多くのヴァリエーションがあったことだろうか.「斉藤」「斎藤」「齋藤」「齊藤」の比ではない!?

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

Referrer (Inside): [2019-03-29-1] [2018-09-20-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2018-06-08 Fri

#3329. なぜ現代は省略(語)が多いのか? [abbreviation][shortening][acronym][blend][lexicology][word_formation][productivity][sociolinguistics][sobokunagimon]

 経験的な事実として,英語でも日本語でも現代は一般に省略(語)の形成および使用が多い.現代のこの潮流については,「#625. 現代英語の文法変化に見られる傾向」 ([2011-01-12-1]),「#631. blending の拡大」 ([2011-01-18-1]),「#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか?」 ([2011-09-20-1]),「#878. Algeo と Bauer の新語ソース調査の比較」 ([2011-09-22-1]),「#879. Algeo の新語ソース調査から示唆される通時的傾向」([2011-09-23-1]),「#889. acronym の20世紀」 ([2011-10-03-1]),「#2982. 現代日本語に溢れるアルファベット頭字語」 ([2017-06-26-1]) などの記事で触れてきた.現代英語の新語形成として,各種の省略 (abbreviation) を含む短縮 (shortening) は破竹の勢いを示している.
 では,なぜ現代は省略(語)がこのように多用されるのだろうか.これについて大学の授業でブレストしてみたら,いろいろと興味深い意見が集まった.まとめると,以下の3点ほどに絞られる.

 ・ 時間短縮,エネルギー短縮の欲求の高まり.情報の高密度化 (densification) の傾向.
 ・ 省略表現を使っている人は,元の表現やその指示対象について精通しているという感覚,すなわち「使いこなしている感」がある.そのモノや名前を知らない人に対して優越感のようなものがあるのではないか.元の表現を短く崩すという操作は,その表現を熟知しているという前提の上に成り立つため,玄人感を漂わせることができる.
 ・ 省略(語)を用いる動機はいつの時代にもあったはずだが,かつては言語使用における「堕落」という負のレッテルを貼られがちで,使用が抑制される傾向があった.しかし,現代は社会的な縛りが緩んできており,そのような「堕落」がかつてよりも許容される風潮があるため,潜在的な省略欲求が顕在化してきたということではないか.

 2点目の「使いこなしている感」の指摘が鋭いと思う.これは,「#1946. 機能的な観点からみる短化」 ([2014-08-25-1]) で触れた「感情的な効果」 ("emotive effects") の発展版と考えられるし,「#3075. 略語と暗号」 ([2017-09-27-1]) で言及した「秘匿の目的」にも通じる.すなわち,この見解は,あるモノや表現を知っているか否かによって話者(集団)を区別化するという,すぐれて社会言語学的な機能の存在を示唆している.これを社会学的に分析すれば,「時代の流れが速すぎるために,世代差による社会の分断も激しくなってきており,その程度を表わす指標として省略(語)の多用が認められる」ということではないだろうか.

Referrer (Inside): [2020-01-17-1] [2019-05-22-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2017-09-27 Wed

#3075. 略語と暗号 [cryptology][abbreviation][shortening][acronym][initialism][writing]

 略語表記は英語でも日本語でも花盛りである.「#889. acronym の20世紀」 ([2011-10-03-1]),「#2982. 現代日本語に溢れるアルファベット頭字語」 ([2017-06-26-1]) でみたように,頭字語と呼ばれる acronyminitialism などは新聞や雑誌などに溢れている.確かに略語表記は現代に顕著だが,その存在は古くから確認される.西洋ではギリシア・ローマの時代に遡り,その起こりこそ筆記に要する空間・時間の節約や速記といった実用的な用途にあったかもしれないが,やがて宗教的な目的,秘匿の目的にも用いられるようになった.長田 (43--44) は,暗号との関連から略語について次のように論じている.

 略語は,このように第三者に対する秘匿とは別の目的から使用され,発達してきたが,略語そのものがあまり慣用されていないものであったり,略語の種類が増加してくると,略語表を見ないと元の意味がとれない場合が生じる.また,簡略化によるものや書き止めによる略語(書きかけのまま中途で止めて略語とするもの)には,それが略語であることを示すために単語上や語末に傍線を入れて注意を喚起するようなことが行なわれた.
 じつは,この不便さが一方では秘匿の目的に略語が使用されることにつながるのである.


 AIDSEU であれば多くの人が見慣れており相当に実用的といえるが,最近目につくようになったばかりの EPA(Economic Partnership Agreement; 経済連携協定)や ICBM(Inter-Continental Ballistic Missile; 大陸間弾道弾)では,必ずしも多くの人が何の略語なのか,何を指すのかを認識していないかもしれない.かすかなヒントがあると言い張ることはできるかもしれないが,暗号に近いといえるだろう.
 では,AIDSEU はなぜ認知されやすいのかといえば,繰り返し用いられてきたからである.当初は事実上の暗号に等しかったろうが,それでも構わずに使い続けられていくうちに,多くの人々が慣れ,認知するに到ったということである.これは非暗号化の過程とみることもできるだろう.「これらの略語も繰り返し使用したのでは,秘匿の効果が薄れてしまうことはいうまでもない」(長田,p. 45).

 ・ 長田 順行 『暗号大全 原理とその世界』 講談社,2017年.

Referrer (Inside): [2020-01-17-1] [2018-06-08-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2015-06-24 Wed

#2249. 綴字の余剰性 [spelling][orthography][cgi][web_service][redundancy][information_theory][punctuation][shortening][alphabet][q]

 言語の余剰性 (redundancy) や費用の問題について,「#1089. 情報理論と言語の余剰性」 ([2012-04-20-1]),「#1090. 言語の余剰性」 ([2012-04-21-1]),「#1091. 言語の余剰性,頻度,費用」 ([2012-04-22-1]),「#1098. 情報理論が言語学に与えてくれる示唆を2点」 ([2012-04-29-1]),「#1101. Zipf's law」 ([2012-05-02-1]) などで議論してきた.言語体系を全体としてみた場合の余剰性のほかに,例えば英語の綴字という局所的な体系における余剰性を考えることもできる.「#1599. Qantas の発音」 ([2013-09-12-1]) で少しく論じた通り,例えば <q> の後には <u> が現われることが非常に高い確立で期待されるため,<qu> は余剰性の極めて高い文字連鎖ということができる.
 英語の綴字体系は全体としてみても余剰性が高い.そのため,英語の語彙,形態,統語,語用などに関する理論上,運用上の知識が豊富であれば,必ずしも正書法通りに綴られていなくとも,十分に文章を読解することができる.個々の単語の綴字の規範からの逸脱はもとより,大文字・小文字の区別をなくしたり,分かち書きその他の句読法を省略しても,可読性は多少落ちるものの,およそ解読することは可能だろう.一般に言語の変化や変異において形式上の短縮 (shortening) が日常茶飯事であることを考えれば,非標準的な書き言葉においても,綴字における短縮が頻繁に生じるだろうことは容易に想像される.情報理論の観点からは,可読性の確保と費用の最小化は常に対立しあう関係にあり,両者の力がいずれかに偏りすぎないような形で,綴字体系もバランスを維持しているものと考えられる.
 いずれか一方に力が偏りすぎると体系として機能しなくなるものの,多少の偏りにとどまる限りは,なんとか用を足すものである.主として携帯機器用に提供されている最近の Short Messages Service (SMS) では,使用者は,字数の制約をクリアするために,メッセージを解読可能な範囲内でなるべく圧縮する必要に迫られる.英語のメッセージについていえば,綴字の余剰性を最小にするような文字列処理プログラムにかけることによって,実際に相当の圧縮率を得ることができる.電信文体の現代版といったところか.
 実際に,それを体験してみよう.以下の "Text Squeezer" は,母音削除を主たる方針とするメッセージ圧縮プログラムの1つである(Perl モジュール Lingua::EN::Squeeze を使用).入力するテキストにもよるが,10%以上の圧縮率を得られる.出力テキストは,確かに可読性は落ちるが,慣れてくるとそれなりの用を足すことがわかる.適当な量の正書法で書かれた英文を放り込んで,英語正書法がいかに余剰であるかを確かめてもらいたい.


Referrer (Inside): [2019-04-24-1] [2015-08-21-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-08-30 Sat

#1951. 英語の愛称 [shortening][personal_name][suffix][onomastics][metanalysis]

 愛称 (pet name) や新愛語 (term of endearment) は,専門的には hypocorism と呼ばれる.ギリシア語 hupo- "hypo-" + kórisma (cf. kóros (child))) から来ており,子供をあやす表現,小児語ということである.英語の hypocorism の作り方にはいくつかあるが,典型的なものは RobertRob のように語形を短くするものである.昨日の記事「#1950. なぜ BillWilliam の愛称になるのか?」 ([2014-08-29-1]) でみたように,語頭に音の変異を伴うものもあり,EdwardNed (cf. mine Ed), EdwardTed (cf. that Ed?), AnnNan (cf. mine Ann) のように前接要素との異分析として説明されることがある.
 ほかに,愛称接尾辞 (hypocoristic suffix) -y や -ie を付加する Georgie, Charlie, Johnnie などの例があり,とりわけ女性名に好まれる.また,短縮し,かつ接尾辞をつける ElizabethBetty, WilliamBilly, RichardRitchie なども数多い.接尾辞の異形として -sy, -sie もあり,ElizabethBetsy/Bessy, AnneNancy, PatriciaPatsy などにみられる.
 『新英語学辞典』 (542) によれば,歴史的には,接尾辞付加の慣習は15世紀中頃に Charlie などがスコットランドで始まり,それが16世紀以降に各地に広まったものとされる.また,『現代英文法辞典』 (670) によれば,本来は愛称であるから当初は正式名ではなかったが,18世紀から正式名としても公に認められるようになった.
 OALD8 の巻末に "Common first names" という補遺があり,省略名や愛称があるものについては,それも掲載されている.以下,そこから取り出したものを一覧にした(括弧を付したものは,別の参考図書から補足したもの).

1. Female names

AbigailAbbie
AlexandraAlex, Sandy
AmandaMandy
Catherine, Katherine, Katharine, KathrynCathy, Kathy, Kate, Katie, Katy
ChristinaChrissie, Tina
ChristineChris
DeborahDebbie, Deb
Diana, DianeDi
(Dorothy)(Dol)
EleanorEllie
ElizaLiza
Elizabeth, ElizabethBeth, Betsy, Betty, Liz, Lizzie
Ellen, HelenNell
FrancesFran
GeorginaGeorgie
GillianJill, Gill, Jilly
GwendolineGwen
JacquelineJackie
JanetJan
Janice, JanisJan
JenniferJenny, Jen
JessicaJess
JosephineJo, Josie
JudithJudy
KristenKirsty
MargaretMaggie, (Meg, Peg)
(Mary)(Moll, Poll)
NicolaNicky
PamelaPam
PatriciaPat, Patty
PenelopePenny
PhilippaPippa
RebeccaBecky
Rosalind, RosalynRos
SamanthaSam
SandraSandy
SusanSue, Susie, Suzy
Susanna(h), SuzanneSusie, Suzy
Teresa, TheresaTessa, Tess
ValerieVal
VictoriaVicki, Vickie, Vicky, Vikki
WinifredWinnie


2. Male names

AlbertAl, Bert
AlexanderAlex, Sandy
AlfredAlfie
AndrewAndy
(Anthony)(Tony)
BenjaminBen
BernardBernie
(Boswell)(Boz)
BradfordBrad
CharlesCharlie, Chuck
ChristopherChris
CliffordCliff
DanielDan, Danny
DavidDave
DouglasDoug
EdwardEd, Eddie, Eddy, (Ned), Ted
EugeneGene
FrancisFrank
FrederickFred, Freddie, Freddy
Geoffrey, JeffreyGeoff, Jeff
GeraldGerry, Jerry
GregoryGreg
HenryHank, Harry
HerbertBert, Herb
JacobJake
JamesJim, Jimmy, Jamie
JeremyJerry
John
Johnny
JonathanJon
JosephJoe
KennethKen, Kenny
Laurence, LawrenceLarry, Laurie
LeonardLen, Lenny
LeslieLes
LewisLew
LouisLou
(Macaulay)(Mac)
MatthewMatt
MichaelMike, Mick, Micky, Mickey
NathanNat
NathanielNat
NicholasNick, Nicky
PatrickPat, Paddy
(Pendennis)(Pen)
Peter, Pete
PhilipPhil
Randolph, RandolfRandy
RaymondRay
RichardRick, Ricky, Ritchie, Dick
RobertRob, Robbie, Bob, Bobby
RonaldRon, Ronnie
SamuelSam, Sammy
SebastianSeb
Sidney, SydneySid
StanleyStan
Stephen, StevenSteve
TerenceTerry
TheodoreTheo
ThomasTom, Tommy
TimothyTim
VictorVic
VincentVince
WilliamBill, Billy, Will, Willy


 ・ 大塚 高信,中島 文雄 監修 『新英語学辞典』 研究社,1987年.
 ・ 荒木 一雄,安井 稔 編 『現代英文法辞典』 三省堂,1992年.

Referrer (Inside): [2014-11-11-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-08-29 Fri

#1950. なぜ BillWilliam の愛称になるのか? [shortening][rhyme][personal_name][onomastics][sobokunagimon]

 標記の問題については,WilliamWill と愛称的短化を経た後,一種の rhyming slang (cf. 「#1459. Cockney rhyming slang」 ([2013-04-25-1]))により Bill となったのだろうと思っていた.しかし,なぜ /w/ が /v/ や /f/ や /p/ ではなく /b/ に置換されたのかがはっきりしない.RichardDick, RobertBob についても同様だ.この問題についてもやもやしていたところに,Stern (262) に別の説が提案されていたので紹介する.

I may mention here the phenomenon termed by Sundén pseudo-ellipsis (Sundén, Ell. Words 141 sqq.). Bob has been considered a hypochoristic [sic] shortening of Robert. But why should R- be changed into B-? Sundén points out that there existed in OE the proper names Boba, Bobba, Bobing, and in ME Bobbe, Bobin, Bobbet. Robert was introduced into England through the Norman conquest; a shortening of Robert gave Rob or Robbe, which are also instanced in ME. We have thus Bobbe and Robbe, of different origin, but both of them proper names. It is reasonable to assume that the two names were confused, and Bobbe apprehended as a short form of Robert. Sundén is able to show that a similar process is probable for William --- Bill, Richard --- Dick, Amelia --- Emy, Edward or Edmund --- Ted, Isabella --- Tib, James --- Jem, Jim, and others. We have here a double process: shortening plus phonetic associative interference . . . .


 この説は先の説と矛盾しない.Robert 導入以前に Bob という名前があったとすれば,rhyming slang 経由であれ音声的な関連によるものであれ,RobBob が関連づけられたとしても不思議ではない.
 私の娘は小百合という名前だが,日常的な発音では3モーラでも長く感じられるので,「さゆ」と呼ぶこともあれば「ゆみ」と呼ぶこともある.後者が「ゆり」ではないのは,多分「ゆみ」のほうが一般的な女子の名前として多いために,聞き慣れており,言いやすいから,いつの間にか転じて固定化してしまったものだろう(と自ら分析している).愛称やあだ名は,指示対象を正しく示さなければならないという制限のもとでの一種の言葉遊びと考えられるから,本来,多様性と創造性が豊かなもののはずである.

 ・ Stern, Gustaf. Meaning and Change of Meaning. Bloomington: Indiana UP, 1931.

Referrer (Inside): [2019-05-22-1] [2014-08-30-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-08-27 Wed

#1948. Addison の clipping 批判 [clipping][shortening][slang][prescriptive_grammar][shortening][clipping][swift][genitive][clitic]

 昨日の記事では「#1947. Swift の clipping 批判」([2014-08-26-1]) について見たが,Swift の同時代人である Joseph Addison (1672--1719) も,皮肉交じりにほぼ同じ言語論を繰り広げている.

Joseph Addison launched an attack on monosyllables in the Spectator (135, 4 August 1711):

The English Language . . . abound[s] in monosyllables, which gives an Opportunity of delivering our Thoughts in few Sounds. This indeed takes off from the Elegance of our Tongue, but at the same time expresses our Ideas in the readiest manner.


He observes that some past-tense forms --- e.g. drown'd, walk'd, arriv'd --- in which the -ed had formerly been pronounced as a separate syllable (as we still do in the adjectives blessed and aged) had become monosyllables. A similar situation is found in the case of drowns, walks, arrives, 'which in the Pronunciation of our Forefathers were drowneth, walketh, arriveth'. He objects to the genitive 's, which he incorrectly assumes to be a reduction of his and her, and for which he in any case gives no examples. He asserts that the contractions mayn't, can't, sha'n't, wo'n't have 'much untuned our Language, and clogged it with Consonants'. He dismisses abbreviations such as mob., rep., pos., incog. as ridiculous, and complains about the use of short nicknames such as Nick and Jack.


 動詞の -ed 語尾に加えて -es 語尾の非音節化,所有格の 's,否定接辞 n't もやり玉に挙がっている.愛称 NickJack にまで非難の矛先が及んでいるから,これはもはや正気の言語論といえるのかという問題になってくる.
 Addison にとっては不幸なことに,ここで非難されている項目の多くは後に標準英語で確立されることになる.しかし,Addison にせよ Swift にせよ切株や単音節語化をどこまで本気で嫌っていたのかはわからない.むしろ,世にはびこる「英語の堕落」を防ぐべく,アカデミーを設立するための口実として,やり玉に挙げるのに単音節語化やその他の些細な項目を選んだということなのかもしれない.もしそうだとすると,言語上の問題ではあるものの,本質的な動機は政治的だったということになろう.規範主義的な言語論は,たいていあるところまでは理屈で押すが,あるところからその理屈は破綻する運命である.言語論は,論者当人が気づいているか否かは別として,より大きな目的のための手段として利用されることが多いように思われる (cf. 「#468. アメリカ語を作ろうとした Webster」 ([2010-08-08-1])) .
 なお,所有格の 'shis の省略形であるという Addison の指摘については,英語史の立場からは興味深い.これに関して,「#819. his 属格」 ([2011-07-25-1]),「#1417. 群属格の発達」 ([2013-03-14-1]),「#1479. his 属格の衰退」 ([2013-05-15-1]) を参照されたい.

 ・ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-08-27 Wed

#1948. Addison の clipping 批判 [clipping][shortening][slang][prescriptive_grammar][shortening][clipping][swift][genitive][clitic]

 昨日の記事では「#1947. Swift の clipping 批判」([2014-08-26-1]) について見たが,Swift の同時代人である Joseph Addison (1672--1719) も,皮肉交じりにほぼ同じ言語論を繰り広げている.

Joseph Addison launched an attack on monosyllables in the Spectator (135, 4 August 1711):

The English Language . . . abound[s] in monosyllables, which gives an Opportunity of delivering our Thoughts in few Sounds. This indeed takes off from the Elegance of our Tongue, but at the same time expresses our Ideas in the readiest manner.


He observes that some past-tense forms --- e.g. drown'd, walk'd, arriv'd --- in which the -ed had formerly been pronounced as a separate syllable (as we still do in the adjectives blessed and aged) had become monosyllables. A similar situation is found in the case of drowns, walks, arrives, 'which in the Pronunciation of our Forefathers were drowneth, walketh, arriveth'. He objects to the genitive 's, which he incorrectly assumes to be a reduction of his and her, and for which he in any case gives no examples. He asserts that the contractions mayn't, can't, sha'n't, wo'n't have 'much untuned our Language, and clogged it with Consonants'. He dismisses abbreviations such as mob., rep., pos., incog. as ridiculous, and complains about the use of short nicknames such as Nick and Jack.


 動詞の -ed 語尾に加えて -es 語尾の非音節化,所有格の 's,否定接辞 n't もやり玉に挙がっている.愛称 NickJack にまで非難の矛先が及んでいるから,これはもはや正気の言語論といえるのかという問題になってくる.
 Addison にとっては不幸なことに,ここで非難されている項目の多くは後に標準英語で確立されることになる.しかし,Addison にせよ Swift にせよ切株や単音節語化をどこまで本気で嫌っていたのかはわからない.むしろ,世にはびこる「英語の堕落」を防ぐべく,アカデミーを設立するための口実として,やり玉に挙げるのに単音節語化やその他の些細な項目を選んだということなのかもしれない.もしそうだとすると,言語上の問題ではあるものの,本質的な動機は政治的だったということになろう.規範主義的な言語論は,たいていあるところまでは理屈で押すが,あるところからその理屈は破綻する運命である.言語論は,論者当人が気づいているか否かは別として,より大きな目的のための手段として利用されることが多いように思われる (cf. 「#468. アメリカ語を作ろうとした Webster」 ([2010-08-08-1])) .
 なお,所有格の 'shis の省略形であるという Addison の指摘については,英語史の立場からは興味深い.これに関して,「#819. his 属格」 ([2011-07-25-1]),「#1417. 群属格の発達」 ([2013-03-14-1]),「#1479. his 属格の衰退」 ([2013-05-15-1]) を参照されたい.

 ・ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-08-26 Tue

#1947. Swift の clipping 批判 [clipping][shortening][slang][prescriptive_grammar][shortening][clipping][swift]

 昨日の記事「#1946. 機能的な観点からみる短化」 ([2014-08-25-1]) を書きながら,英語史において語形の短化 shortening,とりわけ切株 (clipping) を嫌った強烈な個性を想起した.1712年にアカデミー設立を提案するほどまでに言語問題に入れ込んでいた,時の文豪 Jonathan Swift (1667--1745) である.「#134. 英語が民主的な言語と呼ばれる理由」 ([2009-09-08-1]) や「#141. 18世紀の規範は理性か慣用か」 ([2009-09-15-1]) で少し触れた通り,Swift は,理性の時代の担い手の先駆けとして当時の英語の「堕落」を憂慮し,英語を "refine" し "fix" しようと企図したのだった.
 Swift が憂慮していた項目はいくつかあるが,とりわけ単音節語のもつ軽さが気に入らなかったようだ.しかし,系統的にゲルマン語に属し,「屈折の衰退=語根の焦点化」 ([2011-02-11-1]) で示唆したような単音節の「語根主義」をはからずも持つにいたった近代英語にとって,Swift の単音節語への嫌悪は,まさに自然に反することだった.それでも,Swift は単音節語を,あるいはより正確にいえば単音節語化を,こき下ろした.Swift の言語に関する姿勢は,Baugh and Cable (259) が "Taking his writings as a whole, one may surmise that he would have preferred that the seventeenth century, at least after 1640, with its political, commercial, and scientific revolutions had never happened." と評しているほどに保守的だった.
 だが,逆にいえば,このことは,当時単音節語化が頻繁に起こっていた証拠でもある.Swift がやり玉に挙げたのは,rep (< reputation) や mob (< mobile) などの切株語である.Baugh and Cable (259) より,説明を引用しよう.

The things that specifically troubled the gloomy dean in his reflections on the current speech were chiefly innovations that he says had been growing up in the last twenty years. One of these was the tendency to clip and shorten words that should have retained their full polysyllabic dignity. He would have objected to taxi, phone, bus, ad, and the like, as he did to rep, mob, penult, and others. The practice seems to have been a temporary fad, although not unknown to any period of the language.


 昨日の記事で論じた内容と合わせて考えると,Swift はこれらの切株語形成の背後に感じられる,大衆の "desire for emotive effects" に鼻持ちならなかったのかもしれない.感情は理性によって抑えるべしとする世の中一般に対する Swift の態度が,保守的な言語論へと発展していったものと思われる.
 しかし,Swift の切株への嫌悪は,ある程度は次世代へも引き継がれた.再び Baugh and Cable (259--60) より引用する.

Thus George Campbell in his Philosophy of Rhetoric (1776) says: "I shall just mention another set of barbarisms, which also comes under this class, and arises from the abbreviation of polysyllables, by lopping off all the syllables except the first, or the first and second. Instances of this are hyp for hypochondriac, rep for reputation, ult for ultimate, penult for penultimate, incog for incognito, hyper for hypercritic, extra for extraordinary.


 これらのやり玉に挙げられた切株語はおよそ後世には残らなかったので,Swift や Campbell が生きていたら,安堵していたことだろう.しかし,mob は例外で,現在まで生き残っている.
 関連して,Swift は deudg'd, disturb'd, rebuk'd, fledg'd のような過去・過去分詞語尾の -ed の非音節化も,一種の単音節化であり,同様に忌避すべき省略だと考えていた.しかし,こちらは上記の多くの切株語とは異なり,後にほぼ完全に標準英語において定着することになる.これについては,「#776. 過去分詞形容詞 -ed の非音節化」 ([2011-06-12-1]) を参照されたい.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 5th ed. London: Routledge, 2002.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-08-26 Tue

#1947. Swift の clipping 批判 [clipping][shortening][slang][prescriptive_grammar][shortening][clipping][swift]

 昨日の記事「#1946. 機能的な観点からみる短化」 ([2014-08-25-1]) を書きながら,英語史において語形の短化 shortening,とりわけ切株 (clipping) を嫌った強烈な個性を想起した.1712年にアカデミー設立を提案するほどまでに言語問題に入れ込んでいた,時の文豪 Jonathan Swift (1667--1745) である.「#134. 英語が民主的な言語と呼ばれる理由」 ([2009-09-08-1]) や「#141. 18世紀の規範は理性か慣用か」 ([2009-09-15-1]) で少し触れた通り,Swift は,理性の時代の担い手の先駆けとして当時の英語の「堕落」を憂慮し,英語を "refine" し "fix" しようと企図したのだった.
 Swift が憂慮していた項目はいくつかあるが,とりわけ単音節語のもつ軽さが気に入らなかったようだ.しかし,系統的にゲルマン語に属し,「屈折の衰退=語根の焦点化」 ([2011-02-11-1]) で示唆したような単音節の「語根主義」をはからずも持つにいたった近代英語にとって,Swift の単音節語への嫌悪は,まさに自然に反することだった.それでも,Swift は単音節語を,あるいはより正確にいえば単音節語化を,こき下ろした.Swift の言語に関する姿勢は,Baugh and Cable (259) が "Taking his writings as a whole, one may surmise that he would have preferred that the seventeenth century, at least after 1640, with its political, commercial, and scientific revolutions had never happened." と評しているほどに保守的だった.
 だが,逆にいえば,このことは,当時単音節語化が頻繁に起こっていた証拠でもある.Swift がやり玉に挙げたのは,rep (< reputation) や mob (< mobile) などの切株語である.Baugh and Cable (259) より,説明を引用しよう.

The things that specifically troubled the gloomy dean in his reflections on the current speech were chiefly innovations that he says had been growing up in the last twenty years. One of these was the tendency to clip and shorten words that should have retained their full polysyllabic dignity. He would have objected to taxi, phone, bus, ad, and the like, as he did to rep, mob, penult, and others. The practice seems to have been a temporary fad, although not unknown to any period of the language.


 昨日の記事で論じた内容と合わせて考えると,Swift はこれらの切株語形成の背後に感じられる,大衆の "desire for emotive effects" に鼻持ちならなかったのかもしれない.感情は理性によって抑えるべしとする世の中一般に対する Swift の態度が,保守的な言語論へと発展していったものと思われる.
 しかし,Swift の切株への嫌悪は,ある程度は次世代へも引き継がれた.再び Baugh and Cable (259--60) より引用する.

Thus George Campbell in his Philosophy of Rhetoric (1776) says: "I shall just mention another set of barbarisms, which also comes under this class, and arises from the abbreviation of polysyllables, by lopping off all the syllables except the first, or the first and second. Instances of this are hyp for hypochondriac, rep for reputation, ult for ultimate, penult for penultimate, incog for incognito, hyper for hypercritic, extra for extraordinary.


 これらのやり玉に挙げられた切株語はおよそ後世には残らなかったので,Swift や Campbell が生きていたら,安堵していたことだろう.しかし,mob は例外で,現在まで生き残っている.
 関連して,Swift は deudg'd, disturb'd, rebuk'd, fledg'd のような過去・過去分詞語尾の -ed の非音節化も,一種の単音節化であり,同様に忌避すべき省略だと考えていた.しかし,こちらは上記の多くの切株語とは異なり,後にほぼ完全に標準英語において定着することになる.これについては,「#776. 過去分詞形容詞 -ed の非音節化」 ([2011-06-12-1]) を参照されたい.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 5th ed. London: Routledge, 2002.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow