私が大学で担当している3,4年生を対象とするゼミは「英語史ゼミ」あるいは「フィロロジーゼミ」ということになっています.慶應文学部の専門ゼミは正式には(伝統的かつ大仰に)「研究会」と呼ばれるため,内部では「英語史研究会」や「フィロロジー研究会」,はたまた担当者の名前をとって「堀田研究会」などと呼ばれることもあります(最後のものは,私自身が研究されてしまうかのようで,ゼミ合宿などの折りに貸し切りバスやセミナー室の扉に貼り出されると少々恥ずかしいです).また,大学院でも対応する英語史のゼミがあります.
1年のこの時期は,現学部2年生が来年度以降に所属する専門ゼミを志望し,選考を経て,およそ決定する時期です.来年度の英語史ゼミ所属予定者も,先日,無事に確定しました.来年度もゼミでは広く英語史・英語学の諸問題を扱っていきたいと考えています.
さて,大学・大学院の英語史ゼミの現役メンバーや卒業生・修了生などを中心とするコミュニティとして,khelf (= Keio History of the English Language Forum) という組織が立ち上がっています.ほぼ2年前の2020年1月に発足し,同年11月にはホームページもオープンしました(「#4212. ゼミのホームページがオープンしました」 ([2020-11-07-1])).内輪メンバーからなる組織ではありますが,そこでの英語史学習・研究・教育の様子は可能な範囲で一般に公表していくという方針をとっています.この2年間のゼミ活動の足跡も,いくつかコンテンツ化されたものが上記ホームページ上に公開されていますので,ゼミ所属予定者はじっくりと読んでおいてください.また,また,本ブログを読んでいただいている一般の方々も,こんなことまでもが英語史・英語学の話題になり得るのかと,その幅広さを味わってみてください.
とりわけ,ゼミ生が英語史・英語学のどのような話題に関心をもっているかを眺めてもらえればと思います.この11月にはゼミ生研究テーマ紹介ページが設けられました.テーマ紹介となるコンテンツの作成に当たっては,各ゼミ生に前もってウェブ上での一般公開を前提とするので分かりやすい紹介コンテンツとなるように工夫してくださいと述べてありました.ですので,大学院生の研究テーマなども,本当はいずれも専門的で難解なテーマではありますが,通常よりもずっと分かりやすく紹介されています.昨年度のゼミ生(=卒業生)の卒論題目なども掲載されています.過年度のゼミ生の卒論題目については,合わせて sotsuron の各記事もご参照ください.
一昨日,昨日と「khelf-conference-2021」と題する拡大版ゼミ合宿(オンライン)を開催し,無事に終了しました.たいへん濃密で充実した学びの時間となりました.ゼミ外部から参加していただいた方々にも,お礼申し上げます.
さて,新学期が始まる時期ということもありますし,英語史の学びを促してくれるHPを1つ紹介したいと思います.昨日のゼミ合宿でもお世話になった専修大学文学部英語英米語学科の菊地翔太先生のHPです.ご専門は初期近代英語期の社会言語学的研究ですが,英語史全般について,とりわけ授業関連のページに有用な情報が詰まっています.英語史に関して学べるサイトのリンク集や,ご専門の Shakespeare 関連の情報が含まれますが,とりわけ英語史関連の動画への案内が豊富です.
また,GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) 関連の情報がまとまっているこちらのページも,コーパスの使い方を学ぶ上で非常に参考になります.
今後,HP を充実してゆく予定とのことで,ますます楽しみです.(本ブログ記事にもたびたび言及していただいています,ありがとうございます!)
(後記 2021/10/18(Mon):菊地翔太先生の HP を探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれました.こちらもご覧ください.)
昨日と今日,私のゼミのオンライン合宿が行なわれています.2日目の今日は,様々な活動の間に,私の「World Englishes 入門」が挟まります.趣旨としては,次の通りです.
英語が複数形で "Englishes" として用いられるようになって久しい.現在,世界中で使われている様々な種類の英語を総称して "World Englishes" ということも多くなり,学問的な関心も高まってきている.本講演では,いかにして英語が世界中に拡散し,World Englishes が出現するに至ったのか,その歴史を概観する.そして,私たちが英語使用者・学習者・教育者・研究者として World Englishes に対してどのような態度で向き合えばよいのかについて議論する.
準備したスライドをこちらに公開します.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきますので,復習などにご利用ください.
1. World Englishes 入門 for khelf-conference-2021
2. World Englishes 入門 --- どう向き合えばよいのか?
3. 目次
4. 1. はじめに --- 世界に広がる英語
5. 2. イギリスから世界へ
6. 関連年表
7. 3. 様々な英語
8. ピジン語とクレオール語
9. 4. 英語に働く求心力と遠心力
10. 5. 世界英語のモデル
11. おわりに
12. 参考文献
今日と明日,慶應義塾大学文学部英米文学専攻で英語史・英語学を学ぶ堀田隆一ゼミのゼミ合宿がオンラインで開催されます.昨年度に引き続き,コロナ禍により通常の泊まりがけのゼミ合宿はかなわず,オンラインでの開催となりますが,オンラインの良さを活かしたメニューで,充実の2日間にしたいと思っています.
本ブログを読まれている皆さんには,この機会に上記ゼミで英語史に関して行なっている研究・教育活動について広報させていただきたいと思います.大学の1ゼミにすぎないのですが少々外向きの活動も行なってきていまして,今後もそのような活動の比重を高めたいと思っています.ゼミを構成する学部生・院生に,卒業生等の少数の関係者も加わって,khelf (= Keio History of the English Language Forum) と自称して活動しています.ホームページ制作班により khelf のホームページも昨年度から立ち上がっており,今後も少しずつコンテンツを増やしていく予定です.
今年度のこれまでの最大の活動としては,4月の年度初めから2ヶ月にわたってほぼ毎日継続した「英語史導入企画2021」が挙げられます.目下,年度後半が始まるタイミングでもありますし,年度初めの意気を蘇らせるためにも,その趣旨を改めて思い起こしておきたいと思います.
年度初めの4月,5月は,学生も教員も一般人も新しい学びに積極的になる時期です.そこで,英語史を専攻する私たち khelf メンバー(大学院と学部のゼミ生たちが中心)が発信元となって,英語史という分野とその魅力を世の中に広く伝えるべく,何らかの「コンテンツ」を毎日1つずつウェブ上に公表していこうという「英語史導入企画2021」を立てました.
4月5日(月)から始めて5月下旬まで,日曜日を除く毎日更新していく予定です.「こんなに身近なトピックが英語史の入口になり得るのか」とか「こんな他愛のない問題について真剣に学問している集団があるのか」とか,様々に感じてもらい,英語史に関心をもってもらえればと思います.
この企画を通じて,日々 khelf メンバーから英語史に関するエッセイ風コンテンツがアップロードされ,最終的には49件のコンテンツが集まりました.幸い多くの方に目を通していただき,それが励みとなって khelf メンバーの学習・研究の士気も大いに上がりました.本ブログの読者の皆様にも改めて感謝いたします.コンテンツのアーカイブは常にオープンしていますので,どうぞいつでもご閲覧ください.
今後どのような企画を立ち上げていくかなども,今日明日のゼミ合宿で話し合いたいと思っています.khelf 活動につきまして,今後ともご支援とご協力のほどよろしくお願いいたします.
昨日「英語史導入企画2021」のために学部生よりアップされたコンテンツは「Morning や evening には何故 ing がつくの?」です.日常的な単語で,あえて考えてみないと意識すらしない疑問かもしれませんが,考え出すと不思議ですね.実は今回のコンテンツだけでは説明し尽くしたとはいえず,様々な説があって語源学的には諸説ある問題です.本ブログでは「#2708. morn, morning, morrow, tomorrow」 ([2016-09-25-1]) でこの話題に少し触れていますので,そちらもどうぞ.
目下,大学のゼミ授業でグループ研究を展開中です.あるグループは,ズバリ -ing 問題を扱っています.-ing といっても,現在分詞,動名詞,名詞語尾といろいろあって一筋縄ではいかないのですが,そのうちのどれを選んでどのように料理するかというのが研究の腕の見せ所です.同グループは進行形における現在分詞としての -ing に焦点を絞ったようです.
それでも機能は異なれど,共時的にみれば形態上同じ -ing であることには違いありません.歴史的にみても,本来は各々異なるルーツ,異なる機能をもっていましたが,似た形態なので混同されてきたというのが実態なのです.-ing にとってみれば,なりたくてなったわけではないでしょうが,多機能になってしまったわけですね.ということで,どのみち -ing が厄介であることには変わりありません.
-ing を巡る問題は英語史上の大きなテーマですが,本ブログで扱ってきた範囲内で -ing 絡みの記事を紹介しておきます.一遍に読みたい方はこちらの記事セットからどうぞ.
・ 「#4345. 古英語期までの現在分詞語尾の発達」 ([2021-03-20-1])
・ 「#790. 中英語方言における動詞屈折語尾の分布」 ([2011-06-26-1])
・ 「#2421. 現在分詞と動名詞の協働的発達」 ([2015-12-13-1])
・ 「#2422. 初期中英語における動名詞,現在分詞,不定詞の語尾の音韻形態的混同」 ([2015-12-14-1])
・ 「#1284. 短母音+子音の場合には子音字を重ねた上で -ing を付加するという綴字規則」 ([2012-11-01-1])
・ 「#3109. なぜ -(e)s の付け方と -ing の付け方が綴字において異なるのか?」 ([2017-10-31-1])
・ 「#4344. -in' は -ing の省略形ではない」 ([2021-03-19-1])
・ 「#1370. Norwich における -in(g) の文体的変異の調査」 ([2013-01-26-1])
・ 「#1764. -ing と -in' の社会的価値の逆転」 ([2014-02-24-1])
・ 「#4349. なぜ過去分詞には不規則なものが多いのに現在分詞は -ing で規則的なのか?」 ([2021-03-24-1])
・ 「#1508. 英語における軟口蓋鼻音の音素化」 ([2013-06-13-1])
・ 「#1610. Viking の語源」 ([2013-09-23-1])
・ 「#1673. 人名の多様性と人名学」 ([2013-11-25-1])
・ 「#3903. ゲルマン名の atheling, edelweiss, Heidi, Alice」 ([2020-01-03-1])
・ 「#3604. なぜ The house is building. で「家は建築中である」という意味になるのか?」 ([2019-03-10-1])
・ 「#3605. This needs explaining. --- 「need +動名詞」の構文」 ([2019-03-11-1])
・ 「#2512. 動詞の目的語として不定詞を取るか,動名詞を取るか (2)」 ([2016-03-13-1])
・ 「#2511. 動詞の目的語として不定詞を取るか,動名詞を取るか (1)」 ([2016-03-12-1])
・ 「#757. decline + 動名詞」 ([2011-05-24-1])
・ 「#4058. what with 構文」 ([2020-06-06-1])
・ 「#3923. 中英語の「?しながら来る」などの移動の様態を表わす不定詞構文」 ([2020-01-23-1])
大学の英語史ゼミでは,今期も数名でミニ調査を行なう「グループ研究」を開始しています.5つのグループ研究テーマを設けていますが,各研究の取っ掛かりとして,いくつかの参考資料や文献を提示します.今後も随時ここに書誌を加えていこうかと思っていますので,ゼミ学生はたまに覗いてください.ミニ書誌ではありますが,せっかくなのでブログ上でオープンにしておきます.強調しておきますが,あくまで「取っ掛かり」のための書誌です.ここから研究を育てていってください.
0. 全般
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