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最終更新時間: 2021-12-03 17:15

2021-10-29 Fri

#4568. 講座「英語の歴史と語源」の第12回「市民革命と新世界」を終えました --- これにてシリーズ終了 [asacul][notice][history][link][slide]

 去る10月23日(土)15:30〜18:45に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・12 「市民革命と新世界」」を,対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開講しました.2年ほど前に開始した「英語の歴史と語源」シリーズの最終回ということですが,何とか走りきることができました.参加者や朝カルのスタッフの皆さんのおかげです,ありがとうございました.
 今回は,革命で大荒れだったスチュアート朝の時代,ほぼまるまる17世紀に焦点を当てました.ルネサンスの熱気が冷め,革命で荒れた時代ながらも,抑制と理知に特徴づけられた英語の散文が発展してきました.この時代の散文は,私たちにとってそれなりに現代的に見えます.とりわけ王政復古後の散文の文体は,私たちにとって身近で知っている英語の文章という感じがします.
 そして,英語そのものもぐんと現代に近づいきています.この時代までに綴字の標準化はかなりの程度進んでいましたし,文法的にいえば例えば疑問文・否定文における do の使用など,現代的な統語的規則が確立しました.
 17世紀半ばから18世紀初頭にかけて,英語を統制するアカデミー設立への関心が高まりましたが,1712年にその試みが頓挫すると,以後,関心は薄まりました.現在に至るまで英語アカデミーなるものが存在しないのは,このときの頓挫に負っています.英語が世界化した21世紀,アカデミーの不在は良いことなのか悪いことなのか.この現代的問題を論じる上でも,17世紀の英語を巡る状況を理解しておくことは重要です.
 今回の講座で用いたスライドをこちらに公開しますので,ご覧ください.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきます.復習などにどうぞ.

   1. 英語の歴史と語源・12「市民革命と新世界」
   2. 第12回 市民革命と新世界
   3. 目次
   4. 関連年表
   5. 1. スチュアート朝と市民革命 --- 清教徒革命と名誉革命
   6. 2. ルネサンスの熱狂から革命・王政復古期の抑制と理知へ
   7. 3. 英語の市民化とアカデミー設立の試み
   8. 4. 17世紀の英語の注目すべき事項
   9. 5. 英語の世界展開が本格的に開始
   10. まとめ
   11. 参考文献
   12. 補遺1:フランシス・ベーコン『随筆集』 (Essays, 1597) より「怒りについて」
   13. 補遺2:サミュエル・ピープス『日記』 (Diary, 1825) より「1665年のペストに関する記録」

 「英語の歴史と語源」シリーズはこれにて終了ですが,次期も別の話題で講座を開く予定です.

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2021-10-27 Wed

#4566. heldio で古英語期と古英語を手短かに紹介しています(10分×2回) [notice][hel_education][oe][heldio][link]

 昨日と今日の2日間,私の Voicy の番組 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で古英語(期)の超入門をお届けしています.10分×2回の短いものです.現代の英語は知っているけれども古い英語はまったく初めて,という多くの方々に向けて,古英語期とはどんな時代なのか,古英語とはどんな言語なのかについて,おしゃべりしています.



 1本目の「古英語期ってどんな時代?」では,英語の始まりから説き起こして,英語の歴史の時代区分,そして古英語期といわれる5〜12世紀のイングランドについて,駆け足で独りごちました.
 2本目の「対談 『毎日古英語』のまさにゃんと,古英語ってどんな言語?」では,日本初の古英語系 YouTuber であるまさにゃんとインフォーマルな対談を通じて,古英語という言語の特徴を紹介しました.
 ちなみに,最近まさにゃん「まさにゃんチャンネル」にて,シリーズ「毎日古英語」を精力的に展開しています.今回の heldio 対談は古英語の超入門のみで終わっていますので,関心をもった方はぜひ「毎日古英語」で具体的な古英語にテキストに触れてみてください.なお,本ブログでも1年半ほど前に「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1]) で紹介しています.

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2021-10-23 Sat

#4562. 通時態は共時態に歴史的与件を提供する [saussure][diachrony][language_change][sociolinguistics][link]

ソシュール以来,共時態 (synchrony) と通時態 (diachrony) の関係を巡る論争は絶えたためしがない.本ブログでも,この話題について様々に議論してきた.

 ・ 「#866. 話者の意識に通時的な次元はあるか?」 ([2011-09-10-1])
 ・ 「#1025. 共時態と通時態の関係」 ([2012-02-16-1])
 ・ 「#1076. ソシュールが共時態を通時態に優先させた3つの理由」 ([2012-04-07-1])
 ・ 「#1260. 共時態と通時態の接点を巡る論争」 ([2012-10-08-1])
 ・ 「#2134. 言語変化は矛盾ではない」 ([2015-03-01-1])
 ・ 「#2197. ソシュールの共時態と通時態の認識論」 ([2015-05-03-1])
 ・ 「#2555. ソシュールによる言語の共時態と通時態」 ([2016-04-25-1])
 ・ 「#3264. Saussurian Paradox」 ([2018-04-04-1])
 ・ 「#3508. ソシュールの対立概念,3種」 ([2018-12-04-1])

 言語にアプローチする2つの態に関して私の考えるところによれば,通時態は共時態に歴史的与件を提供するものではないか.歴史的与件とは,その時点で過去から受け継いだ言語的資産目録というほどの意味である.両態は確かに直行する軸であり性質がまるで異なっているのだが,現在という時点において唯一の接触点をもつ.この接触点に両態のエネルギーが凝縮しているとみている.時間軸上のある1点における断面図である言語の共時態は,通時態からエネルギーを提供されて,そのような断面図になっているのだ.
 Sweetser (9--10) が著書の序章において,ソシュールのチェスの比喩をあえて引用しつつ,似たような見解を示しているので引用したい.

. . . [W]e cannot rigidly separate synchronic from diachronic analysis: all of modern sociolinguistics has confirmed the importance of reuniting the two. As with the language and cognition question, the synchrony/diachrony interrelationship has to be seen in a more sophisticated framework. The structuralist tradition spent considerable effort on eliminating confusion between synchronic regularities and diachronic changes: speakers do not necessarily have rules or representations which reflect the language's past history. But neither Saussure nor any of his colleagues would have denied that synchronic structure inevitably reflects its history in important ways: the whole chess metaphor is a perfect example of Saussure's deep awareness of this fact. Saussure, of course, uses chess because for future play the past history of the board is totally irrelevant: you can analyze a chess problem without any information about past moves. But he could hardly have picked --- as he must have known --- an example of a domain where past events more inevitably, regularly, and evidently (if not uniquely) determine the present resulting state. No phonologist today would reconstruct a proto-language's sound system without attention both to recognized universals of synchronic sound-systems and to attested (and phonetically motivated) paths of phonological change; it is assumed that the same perceptual, muscular, acoustic, and cognitive constraints are responsible for both universals of structure and universals of structural change. And, for a historical phonologist or semanticist trying to avoid imposing past analyses on present usage, it is an empirical question which aspects of diachrony are preserved in a given synchronic phonological structure or meaning structure.


 詰め将棋は本番のための訓練としてはよいが,本番そのものではない.言語研究も,本番の真剣勝負こそを観察対象とするものであってほしい.

 ・ Sweetser, E. From Etymology to Pragmatics. Cambridge: CUP, 1990.

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2021-10-19 Tue

#4558. 英語史と世界英語 [hel_education][world_englishes][model_of_englishes][variety][link][heldio]

 昨日の記事「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]) で,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による推薦書を紹介させていただきました.その中で7番目の書籍である鳥飼玖美子(著)『国際共通語としての英語』(講談社現代新書,2011年)が意外性をもって受け取られるかもしれません.タイトルからは確かに英語を巡る重要な問題であることは分かるのですが,英語史とどのように関わるのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか.この点を確認すべく,昨日に引き続き「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同氏と対談しました.「対談 英語史×国際英語」というお題です.以下よりどうぞ.



 英語史の領域では近年,世界英語 (world_englishes) への関心が急上昇しています.私自身も食らいついていかなければと思い,にわか勉強を始めているわけですが,急激なオンライン・リソースの拡大も相まって,すでに分野を一望するのも難しい水準にまで膨張しています.関心はあってもどこから始めたらよいかと迷うのも無理もありません.
 私のお勧め図書としては,唐澤一友(著)『世界の英語ができるまで』(亜紀書房,2016年)を挙げておきます.本ブログでも world_englishesmodel_of_englishes にて関連する記事を多く書いてきましたが,比較的最近書いた記事をピックアップすると,次のようなラインアップになります.

 ・ 「#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より」 ([2021-09-22-1])
 ・ 「#4466. World Englishes への6つのアプローチ」 ([2021-07-19-1])
 ・ 「#4506. World Englishes の全体的傾向3点」 ([2021-08-28-1])
 ・ 「#4507. World Englishes の類型論への2つのアプローチ」 ([2021-08-29-1])
 ・ 「#4508. World Englishes のコーパス研究の未来」 ([2021-08-30-1])
 ・ 「#4169. GloWbE --- Corpus of Global Web-Based English」 ([2020-09-25-1])
 ・ 「#4492. 世界の英語変種の整理法 --- Gupta の5タイプ」 ([2021-08-14-1])
 ・ 「#4493. 世界の英語変種の整理法 --- Mesthrie and Bhatt の12タイプ」 ([2021-08-15-1])
 ・ 「#4501. 世界の英語変種の整理法 --- McArthur の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-23-1])
 ・ 「#4502. 世界の英語変種の整理法 --- Görlach の "Hub-and-Spokes" モデル」 ([2021-08-24-1])

 世界英語を扱うオンライン・コーパスとしては,上にも触れた GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) を入り口としてお勧めします.このコーパスについては,専修大学文学部英語英米語学科菊地翔太先生のHPより,こちらのページに関連情報があります.ちなみに菊地翔太先生のHPを探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれましたので,こちらもお勧めしておきます.

Referrer (Inside): [2021-10-31-1]

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2021-10-18 Mon

#4557. 「英語史への招待:入門書10選」 [hel_education][bibliography][khelf][link][heldio]

 昨日,青山英語史研究会(青山学院大学・寺澤盾先生主催)がオンラインで開催されました.「研究会」とはいうものの,今回は英語史を学ぶ大学生を主たるオーディエンスとして想定し,英語史の学びをエンカレッジする様々な企画が組まれました.私も参加させていただきましたが,たいへん実りの多い会となりました.ありがとうございます.
 プログラムの1つとして,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による「英語史への招待:入門書10選」が紹介されました.氏の許可を得て,そのリスト(実際にはオマケ付きで11冊)を以下に掲載します.氏によると,この順序で手に取ってみることをお勧めするとのことです.
 ちなみに泉類氏とは,本日の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同じ話題で対談していますので,こちらも是非お聴きください.推薦書リストというものは,選者による簡単な解説があるだけでも説得力が増しますね.



 ・ 寺澤 盾 『英語の歴史:過去から未来への物語』 中公新書,2008年.
 ・ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
 ・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』 研究社,2016年.
 ・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 春風社,2011年.
 ・ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
 ・ 寺澤 盾 『聖書でたどる英語の歴史』 大修館書店,2013年.
 ・ 鳥飼 玖美子 『国際共通語としての英語』 講談社現代新書,2011年.
 ・ 西村 秀夫 編 『コーパスと英語史』 ひつじ書房,2019年.
 ・ 高田 博行・渋谷 勝巳・家入 葉子(編著) 『歴史社会言語学入門』 大修館書店,2015年.
 ・ Baugh, A. C. and T. Cable. A History of the English Language. 6th ed. Routledge, 2013.
 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

 番外編として,参考になるウェブサイトということで以下の4点も紹介されました.

 ・ TED Ed
 ・ YouTube 「まさにゃんチャンネル」
 ・ 「hellog〜英語史ブログ」
 ・ khelf (= Keio History of the English Language Forum)

 以上,英語史の学びのエンカレッジでした.昨日の記事「#4556. 英語史の世界にようこそ」 ([2021-10-17-1]) も合わせてどうぞ.

Referrer (Inside): [2021-10-19-1]

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2021-10-15 Fri

#4554. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第8回「なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][link][gvs]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の11月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」は第8回となっています.今回は英語の母音字の読みに関する,きわめて素朴な疑問「なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なの?」を取り上げています.

『中高生の基礎英語 in English』2021年11月号



 本ブログの読者の多くの方々は,この疑問が英語史でいうところの「大母音推移」 (gvs) に関わるものであることがお分かりかと思います.しかし,連載は中高生を対象読者とするものですので,この用語を持ち出すことは控えたいと考えました.そして,もちろん音声学の用語や概念なども前提とすることはできません.ということで,真正面から大母音推移の伝統的な説明を施すことはせず,なるべく易しく噛み砕いて伝えようと努めました.結果として,前舌母音のみの説明にとどめて後舌母音については触れないでおくなど,理解しにくくなりそうな部分を思い切って割愛しました.このような次第で,今回は私にとって1つの挑戦となりました(どのくらい成功しているかは分かりませんねえ).
 大母音推移の教科書的な説明としては本ブログの「#205. 大母音推移」 ([2009-11-18-1]) をどうぞ.もう少し詳しくは,拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』の1.3節と2.5節をご参照ください.専門的には gvs の各記事で扱っています.

 ・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.

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2021-10-10 Sun

#4549. 講座「英語の歴史と語源」の第12回「市民革命と新世界」のご案内 [asacul][notice][history][link][emode]

 朝日カルチャーセンター新宿教室にて全12回の企画で2年ほど前に始めた「英語の歴史と語源」シリーズが,いよいよ最終回となります.2週間後に迫った第12回(最終回)のお知らせです.「市民革命と新世界」と題して2021年10月23日(土)15:30--18:45に開講予定です.対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式を予定しています.関心のある方はこちらよりご予約ください.今回の趣旨は以下の通りです.

17世紀イングランドは「清教徒革命」と「名誉革命」という2つの大変革を経験しました.一般に国内の混乱の世紀ととらえられていますが,英語史の観点からは,後に英語が国外に展開してゆく足場を築いた時期として重要な意義をもちます.実際,同世紀中にイングランドは北米に植民地を築き,インドへの影響力をもち始めました.英語の世界的展開が本格的に始まろうとしていた時代に焦点を当てつつ,英語の現在と未来についても考察します.


 今回は,イングランドの革命の時代,17世紀に焦点を当てます.この時期は,イングランド国内の状況こそ混乱を極めましたが,国外への展開は順調であり,20--21世紀にかけて大国へと成長していくことになる北米やインドに橋頭堡を築いた時代として,歴史的にたいへん重要な意義をもちます.お祭り騒ぎというべきルネサンスの熱は冷めてしまったものの,英語がいよいよ自信と安定感を獲得し,国内外において規範を確立させようと引き締めに入った時期でもあります.現代に直接通じる言語特徴や言語意識が生まれたこの時代に注目しつつ,21世紀の英語も占いながら本シリーズを締めくくりたいと思います.皆様のご参加をお待ちしています.

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2021-10-01 Fri

#4540. 概念メタファー「言語は人間である」 [conceptual_metaphor][language_myth][link]

 「#1578. 言語は何に喩えられてきたか」 ([2013-08-22-1]) で見たとおり,「言語は○○である」の○○には様々なものが入る.言語を生き物に喩えるのは日常茶飯だが,生き物のなかでもとりわけ人間に喩えるという発想,つまり「言語は人間である」という概念メタファー (conceptual_metaphor) は意外と見過ごされてきたかもしれない.Watts (13--14) より "A LANGUAGE IS A HUMAN BEING" を体現する表現をいくつか拾ってみよう.

- <A language is born>
- <A language dies>
- <A language grows old>
- <A language is mature>
- <A language at time point x is the same language as at time point y>
- <A language has a character>
- <A language is a potential actor> (i.e. has the ability to initiate and carry out actions)
- <A language is corrupt>
- <A language is noble>
- <A language is perfect>
- <A language is homogeneous>
- <A language is polite>
- <A language is hesitant>
- <A language is bold>
- <A language is great>
- <A language is healthy>
- <A language is sick/ill>
- <A language is fit>
- <A language is ailing>
- <A language is dying>
- <A language is weak>
- <A language recovering/reviving>

 この一覧には,character (性格)に関する表現がいくつか含まれている.言語を一般的に生き物に喩えるのではなく,とりわけ人間に喩えるポイントは「性格づけ」にありそうだ.人間一人ひとりに性格があるのと同様に,各言語にも特有の性格があるという点に引っかけた比喩ということだ.
 様々な概念メタファーを通じて言語の性質,あるいは言語のとらえ方のパターンを見いだしていくのは,なかなかおもしろそうである.関連する過去の記事として,以下を挙げておきたい.

 ・ 「#1579. 「言語は植物である」の比喩」 ([2013-08-23-1])
 ・ 「#1722. Pisani 曰く「言語は大河である」」 ([2014-01-13-1])
 ・ 「#2631. Curzan 曰く「言語は川であり,規範主義は堤防である」」 ([2016-07-10-1])
 ・ 「#2743. 貨幣と言語」 ([2016-10-30-1])
 ・ 「#3771. Wittgenstein の「言語ゲーム」 (1)」 ([2019-08-24-1])

 ・ Watts, Richard J. Language Myths and the History of English. Oxford: OUP, 2011.

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2021-09-23 Thu

#4532. 英語史を学べる菊地翔太先生(専修大学)の HP [link][hel_education][khelf][seminar][glowbe]

 一昨日,昨日と「khelf-conference-2021」と題する拡大版ゼミ合宿(オンライン)を開催し,無事に終了しました.たいへん濃密で充実した学びの時間となりました.ゼミ外部から参加していただいた方々にも,お礼申し上げます.
 さて,新学期が始まる時期ということもありますし,英語史の学びを促してくれるHPを1つ紹介したいと思います.昨日のゼミ合宿でもお世話になった専修大学文学部英語英米語学科菊地翔太先生のHPです.ご専門は初期近代英語期の社会言語学的研究ですが,英語史全般について,とりわけ授業関連のページに有用な情報が詰まっています.英語史に関して学べるサイトのリンク集や,ご専門の Shakespeare 関連の情報が含まれますが,とりわけ英語史関連の動画への案内が豊富です.
 また,GloWbE (= Corpus of Global Web-Based English) 関連の情報がまとまっているこちらのページも,コーパスの使い方を学ぶ上で非常に参考になります.
 今後,HP を充実してゆく予定とのことで,ますます楽しみです.(本ブログ記事にもたびたび言及していただいています,ありがとうございます!)

(後記 2021/10/18(Mon):菊地翔太先生の HP を探検し紹介するコンテンツ「菊地先生のホームページを訪れてみよう 」を大学院生が作ってくれました.こちらもご覧ください.)

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2021-09-15 Wed

#4524. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第7回「なぜ know や high には発音されない文字があるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][silent_letter][spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][link]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の10月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」も第7回となっています.今回の話題は「なぜ know や high には発音されない文字があるの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2021年10月号



 英語には綴字では書かれているのに発音されない文字というのがありますね.これは黙字 (silent_letter) と呼ばれ,英語に関する素朴な疑問の定番といってよい話題です.歴史的な由来としてはいろいろなパターンがあるのですが,最も多いのが,かつてはその文字がきちんと発音されていたというパターンです.昔の英語では,know は「クノウ」,high は「ヒーヒ」などとすべて文字通りに発音されていたのが,後に発音の変化により問題の音が消えてしまったというケースが多いのです.その一方で綴字は古いままに据え置かれ,現在までゾンビのように生き残っているというわけです.要するに,綴字が発音の変化に追いついていかなかったという悲劇ですね.
 今回の話題と関連して,以下の記事を発展編として読んでみてください.英語の綴字には,本当に黙字が多いです.

 ・ 「#4164. なぜ know の綴字には発音されない k があるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-09-20-1])
 ・ 「#122. /kn/ で始まる単語」 ([2009-08-27-1])
 ・ 「#1095. acknowledge では <kn> が /kn/ として発音される」 ([2012-04-26-1])
 ・ 「#3675. kn から k が脱落する音変化の過程」 ([2019-05-20-1])
 ・ 「#1290. 黙字と黙字をもたらした音韻消失等の一覧」 ([2012-11-07-1])
 ・ 「#210. 綴字と発音の乖離をだしにした詩」 ([2009-11-23-1])
 ・ 「#1195. <gh> = /f/ の対応」 ([2012-08-04-1])
 ・ 「#2085. <ough> の音価」 ([2015-01-11-1])
 ・ 「#2590. <gh> を含む単語についての統計」 ([2016-05-30-1])
 ・ 「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1])

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2021-08-17 Tue

#4495. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第6回「なぜ形容詞の比較級には -er と more があるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][comparison][adjective][adverb][suffix][periphrasis][link]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の9月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」も第6回となりましたが,今回の話題は「なぜ形容詞の比較級には -er と more があるの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2021年9月号



 これは素朴な疑問の定番といってよい話題ですね.短い形容詞なら -er,長い形容詞なら more というように覚えている方が多いと思いますが,何をもって短い,長いというのかが問題です.原則として1音節語であれば -er,3音節語であれば more でよいとして,2音節語はどうなのか,と聞かれるとなかなか難しいですね.同じ2音節語でも early, happy は -er ですが,afraid, famousmore を取ります.今回の連載記事では,この辺りの複雑な事情も含めて,なるべく易しく歴史的に謎解きしてみました.どうぞご一読を.
 定番の話題ということで,本ブログでも様々な形で取り上げてきました.連載記事よりも専門的な内容も含まれますが,こちらもどうぞ.

 ・ 「#4234. なぜ比較級には -er をつけるものと more をつけるものとがあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-11-29-1])
 ・ 「#3617. -er/-estmore/most か? --- 比較級・最上級の作り方」 ([2019-03-23-1])
 ・ 「#4442. 2音節の形容詞の比較級は -ermore か」 ([2021-06-25-1])
 ・ 「#3032. 屈折比較と句比較の競合の略史」 ([2017-08-15-1])
 ・ 「#2346. more, most を用いた句比較の発達」 ([2015-09-29-1])
 ・ 「#403. 流れに逆らっている比較級形成の歴史」 ([2010-06-04-1])
 ・ 「#2347. 句比較の発達におけるフランス語,ラテン語の影響について」 ([2015-09-30-1])
 ・ 「#3349. 後期近代英語期における形容詞比較の屈折形 vs 迂言形の決定要因」 ([2018-06-28-1])
 ・ 「#3619. Lowth がダメ出しした2重比較級と過剰最上級」 ([2019-03-25-1])
 ・ 「#3618. Johnson による比較級・最上級の作り方の規則」 ([2019-03-24-1])
 ・ 「#3615. 初期近代英語の2重比較級・最上級は大言壮語にすぎない?」 ([2019-03-21-1])
 ・ 「#456. 比較の -er, -est は屈折か否か」 ([2010-07-27-1])

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2021-08-07 Sat

#4485. 講座「英語の歴史と語源」の第11回「ルネサンスと宗教改革」を終えました [asacul][notice][history][link][slide][renaissance][reformation]

 先週7月31日(土)15:30〜18:45に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・11 「ルネサンスと宗教改革」」と題してお話しをしました.今回も多くの方々に参加いただきました.質問やコメントも多くいただき活発な議論を交わすことができました.ありがとうございます.
 今回は,16世紀の英語が抱えていた3つの「悩み」に注目しました.現在,英語は世界のリンガ・フランカとなっており,威信を誇っていますが,400年ほど前の英語は2流とはいわずともいまだ1.5流ほどの言語にすぎませんでした.千年以上の間,ヨーロッパ世界に君臨してきたラテン語などと比べれば,赤ちゃんのような言語にすぎませんでした.しかし,そのラテン語を懸命に追いかけるなかで,後の飛躍のヒントをつかんだように思われます.16世紀は,英語にとって,まさに産みの苦しみの時期だったのです.
 今回の講座で用いたスライドをこちらに公開します.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきますので,復習などにご利用ください.

   1. 英語の歴史と語源・11「ルネサンスと宗教改革」
   2. 第11回 ルネサンスと宗教改革
   3. 目次
   4. 1. 序論
   5. 16世紀イングランドの5つの社会的変化
   6. 2. 宗教改革とは?
   7. イングランドの宗教改革とその特異性
   8. 印刷術と宗教改革の二人三脚
   9. 3. ルネサンスとは?
   10. イングランドにおける宗教改革とルネサンスの共存
   11. 4. ルネサンスと宗教改革の英語文化へのインパクト
   12. 16世紀の英語が抱えていた3つの悩み
   13. 5. 英語の悩み (1) - ラテン語からの自立を目指して
   14. 古英語への関心の高まり
   15. 6. 英語の悩み (2) - 綴字標準化のもがき
   16. 語源的綴字 (etymological spelling)
   17. debt の場合 (#116)
   18. 他の語源的綴字の例
   19. 語源的綴字の礼賛者 Holofernes
   20. 7. 英語の悩み (3) - 語彙増強のための論争
   21. R. コードリーの A Table Alphabeticall (#1609)
   22. 一連の聖書翻訳
   23. まとめ
   24. 参考文献
   25. 補遺1:Love’s Labour’s Lost
   26. 補遺2:「創世記」11:1-9 (「バベルの塔」)の Authorised Version と新共同訳

 次回の第12回はシリーズ最終回となります.「市民革命と新世界」と題して2021年10月23日(土)15:30〜18:45に開講する予定です.

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2021-07-18 Sun

#4465. 講座「英語の歴史と語源」の第11回「ルネサンスと宗教改革」のご案内 [asacul][notice][history][link][renaissance][reformation]

 全12回ということで2年前に開始した「英語の歴史と語源」シリーズですが,ゆっくりと進めているうちに,気づいてみれば,残すところ2回となりました.本日は第11回のお知らせです.
 2週間後の7月31日(土)15:30〜18:45に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・11 「ルネサンスと宗教改革」」と題してお話しします.英語が世界的な地位を築いた現在からは予想すらできない,当時の英語が抱えていた様々な「悩み」に注目します.関心をお持ちの方は是非こちらよりお申し込みください.趣旨は以下の通りです.

16世紀イングランドでは,ルネサンスと宗教改革は奇妙な形で共存していました.ルネサンスに伴う知識の爆発はラテン語やギリシア語への憧れを生み出し,英語はそこから大量の単語を借用することで語彙を格段に豊かにしました.一方,宗教改革に伴う自国語意識の高まりから,英語そのものの評価も高まりました.このような相矛盾する言語文化の中で英訳聖書が誕生することになりました.英語がいよいよ輝きを増してきた時代に焦点を当てます.


 今から4--5世紀も前の話しであり,ずいぶんと昔のことに聞こえるかもしれませんが,英語全盛の現代に直接つながる時代の話題です.歴史的に弱小言語だった英語が,いかにして現代にかけて威信と覇権を獲得することになったのか.これを真に理解するには,今回注目する16世紀,英語にとっての苦しみの時期を振り返っておくことが必要になります.現代における英語の覇権の起源について,皆さんと一緒に考えていきたいと思います.

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2021-07-04 Sun

#4451. フランス借用語のピークは本当に14世紀か? [french][loan_word][borrowing][statistics][lexicology][hybrid][personal_name][onomastics][link]

 中英語期にフランス語からの借用語が大量に流入したことは,英語史ではよく知られている.とりわけ中期から後期にかけて,およそ1250--1400年の時期に,数としてピークに達したことも,英語史概説書では広く記述されてきた.本ブログでも以下の記事などで,幾度となく取り上げてきた話題である.

 ・ 「#117. フランス借用語の年代別分布」 ([2009-08-22-1])
 ・ 「#1205. 英語の復権期にフランス借用語が爆発したのはなぜか」 ([2012-08-14-1])
 ・ 「#1209. 1250年を境とするフランス借用語の区分」 ([2012-08-18-1])
 ・ 「#1638. フランス語とラテン語からの大量語彙借用のタイミングの共通点」 ([2013-10-21-1])
 ・ 「#2349. 英語の復権期にフランス借用語が爆発したのはなぜか (2)」 ([2015-10-02-1])
 ・ 「#2162. OED によるフランス語・ラテン語からの借用語の推移」 ([2015-03-29-1])
 ・ 「#2357. OED による,古典語およびロマンス諸語からの借用語彙の統計」 ([2015-10-10-1])
 ・ 「#2385. OED による古典語およびロマンス諸語からの借用語彙の統計 (2)」 ([2015-11-07-1])
 ・ 「#4138. フランス借用語のうち中英語期に借りられたものは4割強でかつ重要語」 ([2020-08-25-1]),

 フランス借用語の数についていえば,OED などを用いた客観的な調査に裏づけられた事実であり,上記の「定説」に異論はない.しかし,当然ながらすべて書き言葉に基づく調査結果であることに注意が必要である.もし話し言葉におけるフランス借用語のピークを推し量ろうとするならば,ピークはもっと早かった可能性が高い.Trotter (1789) が次のように論じている.

In charting the chronology of the process, we are again at the mercy of the documentary evidence. The key period of lexical transfer appears to be the 14th century; but that may be, as much as anything else, because of the explosion of available documentation in both Anglo-French and, more particularly, Middle English at that time. In other words, the real dates of the transfers may not be the dates at which they are documented. Some evidence that this is not so is available in the form of English surnames, of Anglo-French origin . . . , and indeed in the capacity of some early Middle English texts to generate hybrids from Anglo-French and Middle English (forpreiseð; propreliche; priveiliche from Ancrene Wisse . . .).


 1つは,一般的にピークとされてきた14世紀は,たまたま書き言葉の記録が多く残された時代であり,そのためにフランス借用語の規模も大きく見えがちになるということだ.
 もう1つは,書き言葉に初出した年代をもって,そのまま英語に初出した年代と理解することはできないということだ(cf. 「#2375. Anglo-French という補助線 (2)」 ([2015-10-28-1])).普通の語ではなく姓(人名)として借用されたフランス語要素を考え合わせるならば,より早い時期に入っていた証拠がある.また,初期中英語期に文証される混種語の存在は,通常のフランス借用語が当時までにそれだけ多く流通していたことを示唆する(cf. 「#96. 英語とフランス語の素材を活かした 混種語 ( hybrid )」 ([2009-08-01-1])).
 英語史におけるフランス借用語のピークは,書き言葉の証拠から量的に調査した限りにおいては,従来通りに14世紀といってよいが,話し言葉を含めた実態としては,それより早い時期にあったものと推測されるのである.

 ・ Trotter, David. "English in Contact: Middle English Creolization." Chapter 114 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 1781--93.

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2021-06-06 Sun

#4423. 講座「英語の歴史と語源」の第10回「大航海時代と活版印刷術」を終えました [asacul][notice][history][link][slide][age_of_discovery][spanish][printing][caxton][cawdrey][dictionary][standardisation]

 去る5月29日(土)の15:30〜18:45に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・10 大航海時代と活版印刷術」を開講しました.全12回のシリーズですが,いよいよ終盤に入ってきました.今回も不自由の多い状況のなか参加していただいた皆さんに感謝致します.いつも通り,質問やコメントも多くいただきました.
 今回のお話しの趣旨は以下の通りです.

15世紀後半〜16世紀前半のイングランドは,ヨーロッパで始まっていた大航海時代と活版印刷術の発明という歴史上の大事件を背景に,近代国家として,しかしあくまで二流国家として,必死に生き残りを模索していた時代でした.この頃までに,英語はイングランドの国語として復活を遂げていたものの,対外的にいえば,当時の世界語たるラテン語の威光を前に,いまだ誇れる言語とはいえませんでした.英語史では比較的目立たない同時期に注目し,来たるべき飛躍の時代への足がかりを捕らえます.


 今回の講座で用いたスライドをこちらに公開します.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきます.

   1. 英語の歴史と語源・10「大航海時代と活版印刷術」
   2. 第10回 大航海時代と活版印刷術
   3. 目次
   4. 1. 大航海時代
   5. 新航路開拓の略年表
   6. 大航海時代がもたらしたもの --- 英語史の観点から
   7. 1492年,スペインの栄光
   8. 2. 活版印刷術
   9. 印刷術の略年表
   10. グーテンベルク (1400?--68)
   11. ウィリアム・キャクストン (1422?--91)
   12. 印刷術と近代国語としての英語の誕生
   13. 印刷術の綴字標準化への貢献
   14. 「印刷術の導入が綴字標準化を推進した」説への疑義
   15. 綴字標準化はあくまで緩慢に進行した
   16. 3. 当時の印刷された英語を読む
   17. Table Alphabeticall (1604) by Robert Cawdrey
   18. まとめ
   19. 参考文献

 次回のシリーズ第11回は「ルネサンスと宗教改革」です.2021年7月31日(土)の15:30〜18:45に開講予定です.英語にとって,ラテン語を仰ぎ見つつも国語として自立していこうともがいていた葛藤の時代です.講座の詳細はこちらからどうぞ.

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2021-05-31 Mon

#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました [khelf_hel_intro_2021][hel_education][link][khelf][notice][link]

 4月5日に開始し,およそ2ヶ月間継続していた「英語史導入企画2021」が予定通り終了しました.企画の趣旨としては,「#4362. 「英語史導入企画2021」がオープンしました」 ([2021-04-06-1]) で次のように述べていました.

年度初めの4月,5月は,学生も教員も一般人も新しい学びに積極的になる時期です.そこで,英語史を専攻する私たち khelf メンバー(大学院と学部のゼミ生たちが中心)が発信元となって,英語史という分野とその魅力を世の中に広く伝えるべく,何らかの「コンテンツ」を毎日1つずつウェブ上に公表していこうという「英語史導入企画2021」を立てました.


 当初の計画に沿って,日曜日を除く毎日,慶應義塾大学文学部英米文学専攻にて英語史を学ぶ院生・学部生(一部卒業生)から1件の英語史コンテンツが同ページにアップされ,一昨日の企画終了までに計48件のコンテンツが公表されました.息切れしそうな長距離リレー企画でしたが,読者の皆さんに上記の趣旨を少しでも伝えられることができたのであれば成功です.
 本ブログでは,各コンテンツが公表された翌日に,追いかけるようにそれを紹介する記事を書いてきました.毎日学生からランダムに振られてくるテーマについて翌日の記事で何か反応しなければならないというのは,なかなか厳しい課題でしたので,私としては企画が無事に終了してホッとしているところです.それでも,自分では積極的に選択しなさそうなテーマや想像できないテーマが日々舞い込んでくるので,実に刺激的でした.
 コンテンツを提供してくれた学生たちにも,鑑賞していただいた一般読者の方々にも,御礼申し上げます.
 企画は終了しましたが,48件のコンテンツは「英語史導入企画2021」よりいつでもアクセスできますので,自由にご覧ください.以下にもコンテンツ一覧と hellog 紹介記事へのリンクを張っておきます.


 1. 「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(1)」 (hellog 紹介記事はこちら
 2. 「借用語は面白い! --- "spaghetti" のスペルからいろいろ ---」 (hellog 紹介記事はこちら
 3. 「"You deserve it." と「自業自得」」 (hellog 紹介記事はこちら
 4. 「それ,英語?」 (hellog 紹介記事はこちら
 5. 「コロナ(Covid-19)って男?女?」 (hellog 紹介記事はこちら
 6. 「キラキラネームのパイオニア?」 (hellog 紹介記事はこちら
 7. 「Brexitと「誰うま」新語」 (hellog 紹介記事はこちら
 8. 「日本人はなぜ Japanese?」 (hellog 紹介記事はこちら
 9. 「否定と植物」 (hellog 紹介記事はこちら
 10. 「dog は犬なのか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 11. 「英語を呑み込む 'tsunami'」 (hellog 紹介記事はこちら
 12. 「Number の略語が nu.ではなく,no.である理由」 (hellog 紹介記事はこちら
 13. 「英語嫌いな人のための英語史」 (hellog 紹介記事はこちら
 14. 「MAZDA Zoom-Zoom スタジアムの Zoom って何」 (hellog 紹介記事はこちら
 15. 「身近な古英語5選」 (hellog 紹介記事はこちら
 16. 「「社会的」な「距離」って結局何?」 (hellog 紹介記事はこちら
 17. 「英語 --- English --- とは」 (hellog 紹介記事はこちら
 18. 「友達と恋人の境界線」 (hellog 紹介記事はこちら
 19. 「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(2)」 (hellog 紹介記事はこちら
 20. 「goodbye の本当の意味」 (hellog 紹介記事はこちら
 21. 「英語の語順は SV ではなかった?」 (hellog 紹介記事はこちら
 22. 「『先輩』が英語になったらどういう意味だと思いますか」 (hellog 紹介記事はこちら
 23. 「先生,ここに前置詞いらないんですか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 24. 「信号も『緑』になったことだし,渡ろうか」 (hellog 紹介記事はこちら
 25. 「古英語解釈教室―なぞなぞで入門する古英語読解」 (hellog 紹介記事はこちら
 26. 「お酒なのにkamikaze」 (hellog 紹介記事はこちら
 27. 「古英語期の働き方改革 --- wyrcan の多義性 ---」 (hellog 紹介記事はこちら
 28. 「フォトジェニックなスイーツと photogenic なモデル」 (hellog 紹介記事はこちら
 29. 「疑いはいつも 2 つ!」 (hellog 紹介記事はこちら
 30. 「「疲れた」って表現,多すぎない?」 (hellog 紹介記事はこちら
 31. 「ことばの中にひそむ「星」」 (hellog 紹介記事はこちら
 32. 「Morning や evening には何故 ing がつくの?」 (hellog 紹介記事はこちら
 33. 「Oh My Word!〜なぜ Word なのか?自己流考察〜」 (hellog 紹介記事はこちら
 34. 「犬猿ならぬ犬猫の仲!?」 (hellog 紹介記事はこちら
 35. 「Synonyms at Three Levels」 (hellog 紹介記事はこちら
 36. 「先生,進行形の ing って現在分詞なの?動名詞なの?」 (hellog 紹介記事はこちら
 37. 「意味深な SIR」 (hellog 紹介記事はこちら
 38. 「POP-UP STORE って何だろう?」 (hellog 紹介記事はこちら
 39. 「"Family is" or "Family are"」 (hellog 紹介記事はこちら
 40. 「変わり果てた「人力車」」 (hellog 紹介記事はこちら
 41. 「なぜ未来のことを表すための文法が will と be going to の二つ存在するのか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 42. 「この世で一番「美しい」のは誰?」 (hellog 紹介記事はこちら
 43. 「A Succinct Account of German and Germanic (hellog 紹介記事はこちら
    補足記事:「'German' と 'Germanic' についての覚書」
 44. 「視覚表現の意味変化 --- 『見る』ことは『理解』すること」 (hellog 紹介記事はこちら
 45. 「映画『マトリックス』が英語にのこしたもの」 (hellog 紹介記事はこちら
 46. 「複数形は全部 -s をつけるだけなら良いのに!」 (hellog 紹介記事はこちら
 47. 「発狂する帽子屋 as mad as a hatter の謎」 (hellog 紹介記事はこちら
 48. 「office, john, House of Lords --- トイレの呼び方」 (hellog 紹介記事はこちら
 49. 「テニス用語の語源」 (hellog 紹介記事はこちら

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2021-05-31 Mon

#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました [khelf_hel_intro_2021][hel_education][link][khelf][notice][link]

 4月5日に開始し,およそ2ヶ月間継続していた「英語史導入企画2021」が予定通り終了しました.企画の趣旨としては,「#4362. 「英語史導入企画2021」がオープンしました」 ([2021-04-06-1]) で次のように述べていました.

年度初めの4月,5月は,学生も教員も一般人も新しい学びに積極的になる時期です.そこで,英語史を専攻する私たち khelf メンバー(大学院と学部のゼミ生たちが中心)が発信元となって,英語史という分野とその魅力を世の中に広く伝えるべく,何らかの「コンテンツ」を毎日1つずつウェブ上に公表していこうという「英語史導入企画2021」を立てました.


 当初の計画に沿って,日曜日を除く毎日,慶應義塾大学文学部英米文学専攻にて英語史を学ぶ院生・学部生(一部卒業生)から1件の英語史コンテンツが同ページにアップされ,一昨日の企画終了までに計48件のコンテンツが公表されました.息切れしそうな長距離リレー企画でしたが,読者の皆さんに上記の趣旨を少しでも伝えられることができたのであれば成功です.
 本ブログでは,各コンテンツが公表された翌日に,追いかけるようにそれを紹介する記事を書いてきました.毎日学生からランダムに振られてくるテーマについて翌日の記事で何か反応しなければならないというのは,なかなか厳しい課題でしたので,私としては企画が無事に終了してホッとしているところです.それでも,自分では積極的に選択しなさそうなテーマや想像できないテーマが日々舞い込んでくるので,実に刺激的でした.
 コンテンツを提供してくれた学生たちにも,鑑賞していただいた一般読者の方々にも,御礼申し上げます.
 企画は終了しましたが,48件のコンテンツは「英語史導入企画2021」よりいつでもアクセスできますので,自由にご覧ください.以下にもコンテンツ一覧と hellog 紹介記事へのリンクを張っておきます.


 1. 「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(1)」 (hellog 紹介記事はこちら
 2. 「借用語は面白い! --- "spaghetti" のスペルからいろいろ ---」 (hellog 紹介記事はこちら
 3. 「"You deserve it." と「自業自得」」 (hellog 紹介記事はこちら
 4. 「それ,英語?」 (hellog 紹介記事はこちら
 5. 「コロナ(Covid-19)って男?女?」 (hellog 紹介記事はこちら
 6. 「キラキラネームのパイオニア?」 (hellog 紹介記事はこちら
 7. 「Brexitと「誰うま」新語」 (hellog 紹介記事はこちら
 8. 「日本人はなぜ Japanese?」 (hellog 紹介記事はこちら
 9. 「否定と植物」 (hellog 紹介記事はこちら
 10. 「dog は犬なのか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 11. 「英語を呑み込む 'tsunami'」 (hellog 紹介記事はこちら
 12. 「Number の略語が nu.ではなく,no.である理由」 (hellog 紹介記事はこちら
 13. 「英語嫌いな人のための英語史」 (hellog 紹介記事はこちら
 14. 「MAZDA Zoom-Zoom スタジアムの Zoom って何」 (hellog 紹介記事はこちら
 15. 「身近な古英語5選」 (hellog 紹介記事はこちら
 16. 「「社会的」な「距離」って結局何?」 (hellog 紹介記事はこちら
 17. 「英語 --- English --- とは」 (hellog 紹介記事はこちら
 18. 「友達と恋人の境界線」 (hellog 紹介記事はこちら
 19. 「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(2)」 (hellog 紹介記事はこちら
 20. 「goodbye の本当の意味」 (hellog 紹介記事はこちら
 21. 「英語の語順は SV ではなかった?」 (hellog 紹介記事はこちら
 22. 「『先輩』が英語になったらどういう意味だと思いますか」 (hellog 紹介記事はこちら
 23. 「先生,ここに前置詞いらないんですか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 24. 「信号も『緑』になったことだし,渡ろうか」 (hellog 紹介記事はこちら
 25. 「古英語解釈教室―なぞなぞで入門する古英語読解」 (hellog 紹介記事はこちら
 26. 「お酒なのにkamikaze」 (hellog 紹介記事はこちら
 27. 「古英語期の働き方改革 --- wyrcan の多義性 ---」 (hellog 紹介記事はこちら
 28. 「フォトジェニックなスイーツと photogenic なモデル」 (hellog 紹介記事はこちら
 29. 「疑いはいつも 2 つ!」 (hellog 紹介記事はこちら
 30. 「「疲れた」って表現,多すぎない?」 (hellog 紹介記事はこちら
 31. 「ことばの中にひそむ「星」」 (hellog 紹介記事はこちら
 32. 「Morning や evening には何故 ing がつくの?」 (hellog 紹介記事はこちら
 33. 「Oh My Word!〜なぜ Word なのか?自己流考察〜」 (hellog 紹介記事はこちら
 34. 「犬猿ならぬ犬猫の仲!?」 (hellog 紹介記事はこちら
 35. 「Synonyms at Three Levels」 (hellog 紹介記事はこちら
 36. 「先生,進行形の ing って現在分詞なの?動名詞なの?」 (hellog 紹介記事はこちら
 37. 「意味深な SIR」 (hellog 紹介記事はこちら
 38. 「POP-UP STORE って何だろう?」 (hellog 紹介記事はこちら
 39. 「"Family is" or "Family are"」 (hellog 紹介記事はこちら
 40. 「変わり果てた「人力車」」 (hellog 紹介記事はこちら
 41. 「なぜ未来のことを表すための文法が will と be going to の二つ存在するのか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 42. 「この世で一番「美しい」のは誰?」 (hellog 紹介記事はこちら
 43. 「A Succinct Account of German and Germanic (hellog 紹介記事はこちら
    補足記事:「'German' と 'Germanic' についての覚書」
 44. 「視覚表現の意味変化 --- 『見る』ことは『理解』すること」 (hellog 紹介記事はこちら
 45. 「映画『マトリックス』が英語にのこしたもの」 (hellog 紹介記事はこちら
 46. 「複数形は全部 -s をつけるだけなら良いのに!」 (hellog 紹介記事はこちら
 47. 「発狂する帽子屋 as mad as a hatter の謎」 (hellog 紹介記事はこちら
 48. 「office, john, House of Lords --- トイレの呼び方」 (hellog 紹介記事はこちら
 49. 「テニス用語の語源」 (hellog 紹介記事はこちら

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2021-05-30 Sun

#4416. トイレの英語文化史 --- 英語史語彙論研究入門 [taboo][euphemism][khelf_hel_intro_2021][thesaurus][dictionary][lexicology][htoed][semantics][synonym][slang][hel_education][bibliography][link]

 4月5日より始まっていた「英語史導入企画2021」のコンテンツ紹介記事は,今回で最終回となります.話題は「office, john, House of Lords --- トイレの呼び方」です.トリを飾るに相応しいテーマですね! トイレの英語文化史あるいは英語文化誌というべき内容で,Historical Thesaurus of the Oxford English Dictionary (= HTOED) を用いてこんなにおもしろい調査ができるのかと教えてくれるコンテンツです.コンテンツ内の図と点線を追っていくだけで,トイレの悠久の旅を楽しむことができます.
 タブー (taboo),婉曲表現 (euphemism),類義語 (synonym) といった語彙論 (lexicology) 上の問題は,英語史の卒業論文研究などでも人気のテーマです.英語史語彙論研究に関心をもったら,これらのタグの付いた hellog の記事群を読んでみてください.また,以下に今回のコンテンツと緩く関連した記事も紹介しておきます.

 ・ 「#470. toilet の豊富な婉曲表現」 ([2010-08-10-1])
 ・ 「#471. toilet の豊富な婉曲表現を WordNet と Visuwords でみる」 ([2010-08-11-1])
 ・ 「#992. 強意語と「限界効用逓減の法則」」 ([2012-01-14-1])
 ・ 「#1219. 強意語はなぜ種類が豊富か」 ([2012-08-28-1])
 ・ 「#3885. 『英語教育』の連載第10回「なぜ英語には類義語が多いのか」」 ([2019-12-16-1])
 ・ 「#3392. 同義語と類義語」 ([2018-08-10-1])
 ・ 「#469. euphemism の作り方」 ([2010-08-09-1])

 ・ 「#4395. 英語の類義語について調べたいと思ったら」 ([2021-05-09-1])
 ・ 「#3159. HTOED」 ([2017-12-20-1])
 ・ 「#847. Oxford Learner's Thesaurus」 ([2011-08-22-1])
 ・ 「#4334. 婉曲語法 (euphemism) についての書誌」 ([2021-03-09-1])
 ・ 「#1270. 類義語ネットワークの可視化ツールと類義語辞書」 ([2012-10-18-1])
 ・ 「#1432. もう1つの類義語ネットワーク「instaGrok」と連想語列挙ツール」 ([2013-03-29-1])

 ・ 「#4092. shit, ordure, excrement --- 語彙の3層構造の最強例」 ([2020-07-10-1])
 ・ 「#4041. 「言語におけるタブー」の記事セット」 ([2020-05-20-1])

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2021-04-27 Tue

#4383. be surprised at ではなく be surprised by も実は流行ってきている [hel_education][link][khelf][passive][preposition][corpus][clmet][lmode][oed][khelf_hel_intro_2021]

 この4月を通じて宣伝してきた「英語史導入企画2021」も,そろそろ折り返し地点にたどり着きます.大学院と学部の英語史ゼミのメンバーが日々「英語史コンテンツ」を提供するという,年度初め限定のキャンペーンを展開しています.
 4月6日に公表された初回コンテンツは,「#4362. 「英語史導入企画2021」がオープンしました」 ([2021-04-06-1]) で紹介した「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(1)」でした.英語学習者の誰もが習う be surprised at ですが,最近では be surprised by も多くなっているという衝撃の事実(?)を指摘した大学院生によるコンテンツでした.
 それを受けて昨日アップされたのは,同院生による第2弾「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(2)」です.前回は現代英語の諸変種に焦点を当てた「共時的」な内容でしたが,今回はいよいよ英語史的の醍醐味ともいえる「通時的」なアプローチでの分析です.おお,そうなのか!という驚きの事実が明らかになります.英語史導入企画としてナイスです,ぜひどうぞ.
 私もその洞察に刺激を受け,18--19世紀辺りの分布はどうだったのだろうと,後期近代英語のコーパス CLMET3.0 でちらっと検索してみました.70年刻みの3期に分け,(be 動詞はあえて指定せず)surprised atsurprised by でヒット数を単純に比較してみました.

Periodsurprised atsurprised by
1710--178015840
1780--185018955
1850--192015730


 この時代には surprised by はまだ全体の2,3割程度だったということになります.上記のコンテンツによれば,その後 surprised by が20世紀後半から伸張してきたということで,ますます目を離せない追い上げといってよいですね.なお,コンテンツ内でも触れられている通り,この問題に関する本格的な研究として以下のものがありますので,改めて明記しておきます.

 ・ Taketazu, Susumu. Psychological Passives and the Agentive Prepositions in English: A Historical Study. Tokyo: Kaibunsha, 2019.

 今回のコンテンツは,英語史学習への導入としてはややハイレベルだったかもしれませんが,英語史研究への導入としては,基本的ながらもたいへん重要な指摘を多く含んでいると思いました.5点ほど挙げれば次のようになるでしょうか.

 ・ 英語史研究にはコーパス利用がたいへん有効であること
 ・ 同じく OED (= Oxford English Dictionary) の利用が不可欠であること
 ・ ただし,これらから得られた情報は,単純に結論につなげるのではなく,慎重に分析し議論することが必要であること
 ・ 言語は常に変化しているということ
 ・ 新しいと思っていた表現が,実は古くから用いられたということ

 「英語史導入企画2021」はまだまだ続きます.引き続きよろしくお願い致します.

Referrer (Inside): [2021-08-09-1]

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2021-04-16 Fri

#4372. dog の多義性 [semantic_change][metaphor][proverb][polysemy][link][khelf_hel_intro_2021]

 昨日の記事「#4371. 価値なきもの イチジク,エンドウ,ピーナッツ,ネギ,マメ,ワラ」 ([2021-04-15-1]) で,英語において「取るに足りない」と評価されている植物の話題を取り上げた.英語と日本語とで当該植物に対する認識が異なることを示唆する,いわゆる異文化比較の問題だが,これは動物にも当てはまる.よく知られているように,同一の動物であっても,英語と日本語では表象や受容の仕方が異なる.
 例えば,最も身近な動物を表わす英単語 dog を取り上げよう.言うまでもなく,日本語「犬」の英語バージョンである.しかし,このように何の変哲もない単語にこそ,実はおもしろみが詰まっているものだ.殊に意味論の観点からは,いくらでも議論できる.dog は多義 (polysemy) なのである.
 『リーダーズ英和辞典』によれば,dog は10の語義をもつ.多少の編集を加えつつ,その10語義を大雑把に示したい.

1. 犬; イヌ科の動物《オオカミ・ヤマイヌなど》.雄犬; 雄.犬に似た動物《prairie dog, dogfish など》.
2. 《口》 くだらない[卑劣な]やつ; 《米俗・豪俗》 密告者, 裏切り者, 犬; 《俗》 魅力のない[醜い]女, ブス; *《俗》 いかす女, いい女; 《俗》 淫売; 《ののしって》ちくしょう!
3. *《俗》 不快なもの, くだらないもの, 売れない[売れ残りの]品物, 負け犬, 死に筋, 失敗(作), おんぼろ, ぽんこつ, 役立たず, クズ, カス.
4. 《口》 見え, 見せびらかし.
5. 鉄鉤((かぎ)), 回し金, つかみ道具; 【金工】 つかみ金, チャック; 《車の》輪止め.
6. [pl] *《口》 ホットドッグ (hot dog).
7. [the 〜s] *《口》 ドッグレース (greyhound racing).
8. 《俗》 [euph] 犬の糞 (dog-doo).
9. 【天】 [the D-] 大犬座 (the Great Dog), 小犬座 (the Little Dog).シリウス, 天狼星 (the Dog Star, Sirius).
10. 【気】 幻日 (parhelion, sun dog), 霧虹 (fogbow, fogdog).


 上記からも分かる通り,英単語の dog は一般にネガティヴな含意的意味 (connotation) をもつ.この事実を確認するには,英語文化の結晶ともいえる英語のことわざ (proverb) をみるとよい.「#3419. 英語ことわざのキーワード」 ([2018-09-06-1]) では上位にランクインしているし,実際に「#3420. キーワードを複数含む英語ことわざの一覧」 ([2018-09-07-1]) からことわざの例を見てみると,Better be the head of a dog than the tail of a horse/lion. とか We may not expect a good whelp from an ill dog. のように,あまり良い意味には使われていない.
 こんなことを考えたみたのは,昨日「英語史導入企画2021」の一環として学部ゼミ生による「dog は犬なのか?」というコンテンツがアップされたからである.
 本ブログでも,dog の通時的意味変化や共時的多義性について,以下の記事で間接的に触れてきた.参考までに.

 ・ 「#683. semantic prosody と性悪説」 ([2011-03-11-1])
 ・ 「#1908. 女性を表わす語の意味の悪化 (1)」 ([2014-07-18-1])
 ・ 「#2101. Williams の意味変化論」 ([2015-01-27-1])
 ・ 「#2187. あらゆる語の意味がメタファーである」 ([2015-04-23-1])

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