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term_of_endearment - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2023-01-28 09:56

2022-11-08 Tue

#4943. 「愛人」の呼称50種 [term_of_endearment][lexicology][synonym]

 英語には数多くの愛称や親愛語 (term_of_endearment) があり,歴史的にも止むことなく生み出され続けてきた.Crystal が,年代順に50の「愛人」の呼称を挙げている.

 darling (c. 888)
 dear (c. 1230)
 sweetheart (c. 1290)
 heart (c. 1305)
 honey (c. 1375)
 dove (c. 1386)
 cinnamon (c. 1405)
 love (c. 1405)
 mulling (c. 1475)
 daisy (c. 1485)
 mouse (c. 1520)
 whiting (c. 1529)
 fool (c. 1530)
 beautiful (1535)
 soul (c. 1538)
 bully (1548)
 lamb (c. 1556)
 pussy (c. 1557)
 ding-ding (1564)
 lover (1573)
 pug (1580)
 mopsy (1582)
 bun (1587)
 wanton (1589)
 ladybird (1597)
 chuck (1598)
 sweetkin (1599)
 duck (1600)
 joy (1600)
 sparrow (c. 1600)
 bawcock (c. 1601)
 nutting (1606)
 tickling (1607)
 bagpudding (1608)
 dainty (1611)
 flitter-mouse (1612)
 pretty (1616)
 old thing (c. 1625)
 duckling (1630)
 sweetling (1648)
 pet (1767)
 sweetie (1778)
 cabbage (1840)
 prawn (1895)
 so-and-so (1897)
 pumpkin (1900)
 pussums (1912)
 treasure (1920)
 sugar (1930)
 lamb-chop (1962)

 このような語彙には,はやりすたりもあったに違いないが,上の一覧には古くから根強く生き延び,現在もバリバリの現役という語が含まれている.息の長さに驚くばかりである.食物や動物の意味領域から転用されてきたものが多いようだ.
 愛称の歴史というのは,語彙論,意味変化,歴史語用論など多方面から迫れそうなテーマである.関連して「#1951. 英語の愛称」 ([2014-08-30-1]),「#2131. 呼称語のポライトネス座標軸」 ([2015-02-26-1]),「#4312. 「呼格」を認めるか否か」 ([2021-02-15-1]) を参照.

 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

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2021-02-15 Mon

#4312. 「呼格」を認めるか否か [vocative][case][latin][pragmatics][terminology][title][term_of_endearment]

 印欧語言語学では,伝統的に格 (case) の1つとして呼格 (vocative) が認められてきた.例えば,ギリシア語やラテン語において呼格は主格などと異なる特別な形態をとる場合があり (ex. Quō vādis, domine?domine など),その点で呼格という格を独立させて立てる意義は理解できる.
 しかし,昨日の記事「#4311. 格とは何か?」 ([2021-02-14-1]) で掲げた格の定義を振り返れば,"Case is a system of marking dependent nouns for the type of relationship they bear to their heads." である.いわゆる呼格というものは,文の構成要素としては独立し遊離した存在であり,別の要素に依存しているわけではないのだから,依存関係が存在することを前提とする格体系の内側に属しているというのは矛盾である.呼格は依存関係の非存在を標示するのだ,というレトリックも可能かもしれないが,必ずしもすべての言語学者を満足させるには至っていない.構造主義的厳密性をもって主張する言語学者 Hjelmslev は格として認めていないし,英語学者 Jespersen も同様だ.英語学者の Curme も,主格の1機能と位置づけているにすぎない.
 しかし,いわゆる呼格の機能である「呼びかけ」には,統語上の独立性のみならず音調上の特色がある.言語学的には,何らかの方法で他の要素と区別しておく必要があるのも確かである.言い換えれば,形態的な観点から格としてみなすかどうかは別にしても,機能や用法の観点からはカテゴリー化しておくのがよさそうだ.
 「呼格」には限られた特殊な語句が用いられる傾向があるということも指摘しておきたい.名前,代名詞 you,親族名称,称号,役職名が典型だが,そのほかにも (my) darling, dear, honey, love, (my) sweet; old man, fellow; young man; sir, madam; ladies and gentlemen などが挙げられる.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.

Referrer (Inside): [2022-11-08-1] [2021-02-16-1]

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2015-02-26 Thu

#2131. 呼称語のポライトネス座標軸 [politeness][face][pragmatics][title][address_term][honorific][term_of_endearment]

 呼称語 (address term) は,談話標識としてポライトネスの程度を調整する機能,人間関係の距離を調整する機能をもっている.呼称語は,「#1564. face」 ([2013-08-08-1]) の記事でも触れたように,相手の面子 (face) を尊重する戦略の1つでもある.
 呼称語には様々なものがあるが,大きく分けて negative face への指向強い「敬称型」 (derefential type) ,positive face への指向の強い「愛称型」 (familiar type) ,中間的な「中立型」 (neutral type) の3種がある.これらをポライトネス座標軸に並べると,Raumolin-Brunberg を参照した椎名 (80) にあるとおり,次のように図示できる.

Politeness of Address Terms

 左から右へみていくと,敬称型には Sir のような敬称 (honorific) と Mr. Smith のような肩書き+名字などがある.中立型には woman などの総称 (generic) や captain などの職名 (occupational) がある.愛称型には Smith のような名字 (surname) や John のような名前 (first name),friend のような友好語 (familiariser),uncle などの親族語 (kinship term),dear などの愛称 (endearment) がある.
 しばしば英語には敬語がないといわれるが,日本語の敬語体系に対応するものがないだけであり,「#1034. 英語における敬意を示す言語的手段」 ([2012-02-25-1]) でみたように英語なりの待遇表現は豊富に存在する.上記の英語の呼称語も,座標軸上に連続体をなしていることからもわかるとおり,選び方次第で相当に精妙な敬意や人間関係を示すことを可能にしている.英語では日本語以上に呼称語を会話の中で頻繁に織り交ぜるが,これは英語が日本語とは異なる戦略によってポライトネスを操作しているということにほかならない.
 近年,歴史語用論の立場から,英語の呼称語の分布の通時的推移などが研究されてきている.通時的な比較研究や共時的な対照研究など,将来性のあるテーマである.関連する記事としては,address_termtitle を参照.

 ・ 椎名 美智 「初期近代英語期の法廷言語の特徴」『歴史語用論の世界 文法化・待遇表現・発話行為』(金水 敏・高田 博行・椎名 美智(編)),ひつじ書房,2014年.77--104頁.

Referrer (Inside): [2022-11-08-1] [2018-12-23-1]

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2014-08-30 Sat

#1951. 英語の愛称 [shortening][personal_name][suffix][onomastics][metanalysis][term_of_endearment]

 愛称 (pet name) や新愛語 (term of endearment) は,専門的には hypocorism と呼ばれる.ギリシア語 hupo- "hypo-" + kórisma (cf. kóros (child))) から来ており,子供をあやす表現,小児語ということである.英語の hypocorism の作り方にはいくつかあるが,典型的なものは RobertRob のように語形を短くするものである.昨日の記事「#1950. なぜ BillWilliam の愛称になるのか?」 ([2014-08-29-1]) でみたように,語頭に音の変異を伴うものもあり,EdwardNed (cf. mine Ed), EdwardTed (cf. that Ed?), AnnNan (cf. mine Ann) のように前接要素との異分析として説明されることがある.
 ほかに,愛称接尾辞 (hypocoristic suffix) -y や -ie を付加する Georgie, Charlie, Johnnie などの例があり,とりわけ女性名に好まれる.また,短縮し,かつ接尾辞をつける ElizabethBetty, WilliamBilly, RichardRitchie なども数多い.接尾辞の異形として -sy, -sie もあり,ElizabethBetsy/Bessy, AnneNancy, PatriciaPatsy などにみられる.
 『新英語学辞典』 (542) によれば,歴史的には,接尾辞付加の慣習は15世紀中頃に Charlie などがスコットランドで始まり,それが16世紀以降に各地に広まったものとされる.また,『現代英文法辞典』 (670) によれば,本来は愛称であるから当初は正式名ではなかったが,18世紀から正式名としても公に認められるようになった.
 OALD8 の巻末に "Common first names" という補遺があり,省略名や愛称があるものについては,それも掲載されている.以下,そこから取り出したものを一覧にした(括弧を付したものは,別の参考図書から補足したもの).

1. Female names

AbigailAbbie
AlexandraAlex, Sandy
AmandaMandy
Catherine, Katherine, Katharine, KathrynCathy, Kathy, Kate, Katie, Katy
ChristinaChrissie, Tina
ChristineChris
DeborahDebbie, Deb
Diana, DianeDi
(Dorothy)(Dol)
EleanorEllie
ElizaLiza
Elizabeth, ElizabethBeth, Betsy, Betty, Liz, Lizzie
Ellen, HelenNell
FrancesFran
GeorginaGeorgie
GillianJill, Gill, Jilly
GwendolineGwen
JacquelineJackie
JanetJan
Janice, JanisJan
JenniferJenny, Jen
JessicaJess
JosephineJo, Josie
JudithJudy
KristenKirsty
MargaretMaggie, (Meg, Peg)
(Mary)(Moll, Poll)
NicolaNicky
PamelaPam
PatriciaPat, Patty
PenelopePenny
PhilippaPippa
RebeccaBecky
Rosalind, RosalynRos
SamanthaSam
SandraSandy
SusanSue, Susie, Suzy
Susanna(h), SuzanneSusie, Suzy
Teresa, TheresaTessa, Tess
ValerieVal
VictoriaVicki, Vickie, Vicky, Vikki
WinifredWinnie


2. Male names

AlbertAl, Bert
AlexanderAlex, Sandy
AlfredAlfie
AndrewAndy
(Anthony)(Tony)
BenjaminBen
BernardBernie
(Boswell)(Boz)
BradfordBrad
CharlesCharlie, Chuck
ChristopherChris
CliffordCliff
DanielDan, Danny
DavidDave
DouglasDoug
EdwardEd, Eddie, Eddy, (Ned), Ted
EugeneGene
FrancisFrank
FrederickFred, Freddie, Freddy
Geoffrey, JeffreyGeoff, Jeff
GeraldGerry, Jerry
GregoryGreg
HenryHank, Harry
HerbertBert, Herb
JacobJake
JamesJim, Jimmy, Jamie
JeremyJerry
John
Johnny
JonathanJon
JosephJoe
KennethKen, Kenny
Laurence, LawrenceLarry, Laurie
LeonardLen, Lenny
LeslieLes
LewisLew
LouisLou
(Macaulay)(Mac)
MatthewMatt
MichaelMike, Mick, Micky, Mickey
NathanNat
NathanielNat
NicholasNick, Nicky
PatrickPat, Paddy
(Pendennis)(Pen)
Peter, Pete
PhilipPhil
Randolph, RandolfRandy
RaymondRay
RichardRick, Ricky, Ritchie, Dick
RobertRob, Robbie, Bob, Bobby
RonaldRon, Ronnie
SamuelSam, Sammy
SebastianSeb
Sidney, SydneySid
StanleyStan
Stephen, StevenSteve
TerenceTerry
TheodoreTheo
ThomasTom, Tommy
TimothyTim
VictorVic
VincentVince
WilliamBill, Billy, Will, Willy


 ・ 大塚 高信,中島 文雄 監修 『新英語学辞典』 研究社,1987年.
 ・ 荒木 一雄,安井 稔 編 『現代英文法辞典』 三省堂,1992年.

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