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最終更新時間: 2024-04-11 16:26

2024-04-02 Tue

#5454. 小学生にも英語史? --- 田地野彰(編著)『小学生から知っておきたい英語の?ハテナ』(Jリサーチ出版,2024年) [review][hel_education][notice][helkatsu][sobokunagimon][toc]


Tajino-Shougakusei_front_cover.png



 フレッシュな書籍,田地野彰(編著)『小学生から知っておきたい英語の?ハテナ』(Jリサーチ出版,2024年)が出版されています.共著者の一人である高橋佑宜氏(神戸市外国語大学)よりご恵投いただきました(ありがとうございます!).
 本書では,7名の著者が小学生に向けて分かりやすい言葉で英語に関する素朴な疑問に答えています.絵本といってもよいイラストの数々に彩られ,大人でも楽しめる異色の本です.本編を構成する7章の見出しを掲げます.



 第1章 英語の?ハテナ
 第2章 英語の歴史の?ハテナ
 第3章 日本語と英語の?ハテナ
 第4章 英語の物語の?ハテナ
 第5章 英語を使うための?ハテナ
 第6章 英単語の?ハテナ
 第7章 英文法の?ハテナ



 赤字で示した第2章の執筆者が,「ゆうき先生」こと,英語史を専門とする高橋佑宜氏です.次の5つのハテナが取り上げられています.

 ・ 英語はいつ,どこから来たの?
 ・ 英語って昔から変わらないの?
 ・ 英語はいつから世界中に広まったの?
 ・ どうして英語は世界中で使われているの?
 ・ アメリカ英語とイギリス英語は違うの?

 この第2章は「ゆうき先生からの応援メッセージ」で締められています.この応援メッセージが実に熱いのです.ぜひ皆さんにも手に取っていただきたいと思います.
 私自身「英語史をお茶の間に」をモットーにhel活 (helkatsu) を展開していますが,その観点から本書の出版企画と作りには興奮しました.まさか英語史を(中学生にであればまだしも)小学生にまで届けるとは! まずこの発想にたまげました.しかも,大人にも味わえるイラスト本として作り込まれている点にも感激しました.
 取り上げられているハテナは35個と決して多いわけではありませんが,むしろ小学生のために厳選されたハテナリストとして解釈できます.このような本質的な疑問に,専門家たちがどのように端的に答えるのか,もし自分が回答者だったらどのように答えるか.このように考えながら読みなおしてみると,すべてのハテナが難問に思えてきました.なるほど,このような形で英語史(そして英語学習)について子供たちに導入できるのかと一本取られた感があります.新しいです.
 高橋佑宜氏については,hellog でも「#4527. 英語の語順の歴史が概観できる論考を紹介」 ([2021-09-18-1]) および「#5059. heldio 初の「英語史クイズ」」 ([2023-03-04-1]) で言及しています.ぜひ今後もhel活でご一緒していければ!

 ・ 田地野 彰(編著),加藤 由崇・川原 功司・笹尾 洋介・高橋 佑宜・ハンフリー 恵子・山田 浩(著),りゃんよ(イラスト) 『小学生から知っておきたい英語の?ハテナ』 Jリサーチ出版,2024年.

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2024-03-19 Tue

#5440. 川添愛(著)『世にもあいまいなことばの秘密』(筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉,2023年) [review][toc][syntax][semantics][pragmatics][youtube][inohota][notice]


川添 愛 『世にもあいまいなことばの秘密』 筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉,2023年.



 昨年12月に出版された,川添愛さんによる言葉をおもしろがる新著.表紙と帯を一目見るだけで,読んでみたくなる本です.くすっと笑ってしまう日本語の用例を豊富に挙げながら,ことばの曖昧性に焦点を当てています.読みやすい口調ながらも,実は言語学的な観点から言語学上の諸問題を論じており,(物書きの目線からみても)書けそうで書けないタイプの希有の本となっています.
 どのような事例が話題とされているのか,章レベルの見出しを掲げてみましょう.



 1. 「シャーク関口ギターソロ教室」 --- 表記の曖昧さ
 2. 「OKです」「結構です」 --- 辞書に載っている曖昧さ
 3. 「冷房を上げてください」 --- 普通名詞の曖昧さ
 4. 「私には双子の妹がいます」 --- 修飾語と名詞の関係
 5. 「政府の女性を応援する政策」 --- 構造的な曖昧さ
 6. 「二日,五日,八日の午後が空いています」 --- やっかいな並列
 7. 「二〇歳未満ではありませんか」 --- 否定文・疑問文の曖昧さ
 8. 「自分はそれですね」 --- 代名詞の曖昧さ
 9. 「なるはやでお願いします」 --- 言外の意味と不明確性
 10. 「曖昧さとうまく付き合うために」



 言語学的な観点からは,とりわけ統語構造への注目が際立っています.等位接続詞がつなげている要素は何と何か,否定のスコープはどこまでか,形容詞が何にかかるのか,助詞「の」の多義性,統語的解釈における句読点の役割等々.ほかに語用論的前提や意味論的曖昧性の話題も取り上げられています.
 本書は日本語を読み書きする際に注意すべき点をまとめた本としては,実用的な日本語の書き方・話し方マニュアルとして読むこともできると思います.むしろ実用的な関心から本書を手に取ってみたら,言語学的見方のおもしろさがジワジワと分かってきた,というような読まれ方が想定されているのかもしれません.曖昧性の各事例については「問題」と「解答」(巻末)が付されています.
 本書のもう1つの読み方は,例に挙げられている日本語の事例を英語にしたらどうなるか,英語だったらどのように表現するだろうか,などと考えながら読み進めることによって,両言語の言語としての行き方の違いに気づくというような読み方です.両言語間の翻訳の練習にもなりそうです.
 本書については YouTube 「いのほた言語学チャンネル」にて「#205. 川添愛さん『世にもあいまいなことばの秘密』のご紹介」の回で取り上げています.ぜひご覧ください.



 言語の曖昧性については hellog より「#2278. 意味の曖昧性」 ([2015-07-23-1]),「#4913. 両義性にもいろいろある --- 統語的両義性から語彙的両義性まで」 ([2022-10-09-1]) の記事もご一読ください.

 ・ 川添 愛 『世にもあいまいなことばの秘密』 筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉,2023年.

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2024-02-28 Wed

#5420. 保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社,2014年) --- 英語の文法化の入門書 [toc][review][grammaticalisation]


保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.



 英語の文法化 (grammaticalisation) を学び始めたいという方に,標題の入門書をお薦めします.こちらの本については,先日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも取り上げました.「#1001. 英語の文法化について知りたいなら --- 保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社,2014年)」です.ぜひお聴きください.



 今朝配信した heldio でも「#1003. There is an apple on the table. --- 主語はどれ?」と題して,本書を参照しながら存在構文の謎についてのお話しをお届けしています.最近の heldio では他にも文法化にまつわる話題をシリーズで配信していますので「#5411. heldio で「文法化」を導入するシリーズをお届けしました」 ([2024-02-19-1]) のリンク集もご参照ください.
 さて,『文法化する英語』で取り上げられている英語史上の文法化の事例はたいへんに豊富です.しかも重要な文法項目ばかりです.以下に掲げる目次を見ればわかるかと思います.



 はしがき
 第1章 文法化と英語
   1. はじめに
   2. 文法化とは何か
   3. 英語の構造
   4. 英語の歴史
   5. 文法化を動かす「見えざる手」
 第2章 冠詞の文法化
   1. はじめに
   2. 不定冠詞の歴史
   3. 定冠詞の歴史
   4. 冠詞の出現と文法化
 第3章 存在構文における there の文法化
   1. はじめに
   2. There 構文の発達
   3. 虚辞 there の出現と文法化
 第4章 所有格の標識 -'s の文法化
   1. はじめに
   2. 所有格の標識 -'s の文法化
   3. of 属格の発達
 第5章 接続詞の文法化
   1. はじめに
   2. 並列構造から従属構造へ
    2.1. 古英語における従属構造の発達
    2.2. 多様な接続詞の発達
   3. 接続詞の文法化
 第6章 関係代名詞の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の関係代名詞
   3. 関係代名詞 that の文法化
   4. WH 関係代名詞の発達
 第7章 再帰代名詞の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の再帰代名詞
   3. 再帰代名詞の文法化
 第8章 助動詞 DO の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の疑問文と否定文
   3. DO の文法化
 第9章 法助動詞の文法化
   1. はじめに
   2. 現代英語の法助動詞
   3. 法助動詞の文法化
 第10章 不定詞標識 to の文法化と準助動詞の発達
   1. はじめに
   2. 不定詞標識 to の文法化
   3. for + 名詞句 + to 不定詞の発達
   4. 準助動詞の文法化
    4.1. be going to の文法化
    4.2. have to の文法化
 第11章 進行形の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の進行表現
   3. 進行形の文法化
 第12章 完了形の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の完了表現
    2.1. HAVE 完了形
    2.2. BE 完了形
   3. 完了形の文法化
 第13章 受動態の文法化
   1. はじめに
   2. 受動態の発達
   3. 受動態の文法化
   4. 二重目的語構文の受動態について
 第14章 形式主語 it の文法化
   1. はじめに
   2. 非人称構文の衰退
   3. 虚辞 it の文法化
 第15章 文法化と言語進化
   1. はじめに
   2. 英語の多様な文法化
   3. 文法化と構造変化
   4. 言語の小進化
   5. 英語の格と語順
   6. おわりに
 主要作品略語表
 参考文献
 さらなる研究のために
 索引




 本書は,この hellog でも何度か参照してきました.以下の記事もご覧いただければと思います.いずれにせよ『文法化する英語』は英語史の視点からの文法化の入門書としてイチオシです.

 ・ 「#2144. 冠詞の発達と機能範疇の創発」 ([2015-03-11-1])
 ・ 「#2146. 英語史の統語変化は,語彙投射構造の機能投射構造への外適応である」 ([2015-03-13-1])
 ・ 「#2490. 完了構文「have + 過去分詞」の起源と発達」 ([2016-02-20-1])
 ・ 「#3669. ゼミのグループ研究のための取っ掛かり書誌」 ([2019-05-14-1])
 ・ 「#5132. なぜ be going to は未来を意味するの? --- 「文法化」という観点から素朴な疑問に迫る」 ([2023-05-16-1])

 ・ 保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.

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2024-01-23 Tue

#5384. 言語学史の名著の目次 [toc][history_of_linguistics][review]


ミルカ・イヴィッチ 著,早田 輝洋・井上 史雄 訳 『言語学の流れ』 みすず書房,1974年.



 「#5371. 言語学史のハンドブックの目次」 ([2024-01-10-1]) の記事で,現代の言語学史のハンドブックを1冊紹介した.言語学史の本も数あれど,私が名著だと思って何度も読み返しているのは,上記のイヴィッチ著『言語学の流れ』である.原著はセルボクロアチア語による Pravci u lingvistici (19563年)だが,これが1965年に Trends in Linguistics (Mouton) として英訳され,その英訳版に基づいて1974年に邦訳されたのが上掲の本である.
 英米や西欧のみならずスラヴ系の言語学の伝統をも視野に入れた広い言語学史となっており,現代の多くの読み手には独特な雰囲気が感じられるかもしれないが,むしろ全体としては偏りの少ないすぐれた言語学史である.英米や西欧に慣れ親しんだ日本において,もっと読まれてよい言語学史の著作ではないかと思っている.以下に目次を掲げておきたい.



【 18世紀の終りまでの言語研究 】

  1. 概論
  2. 古代ギリシャの言語研究
  3. インドの文法学派
  4. ローマ帝国時代から文芸復興期の終りまで
  5. 文芸復興期から18世紀の終りまで

【 19世紀の言語研究 】

  6. 概論
  7. 初期の比較言語学者の時期
  8. アウグスト・シュライヒャーの生物学的自然主義
  9. 言語学におけるフンボルト主義(世界観理論)
  10. 言語学における心理主義
  11. 若手文法学派
  12. 「独立派」の代表者フーゴ・シュハルト

【 20世紀の言語研究 】

  13. 概論
    13.1 20世紀の学問の基本特徴
    13.2 言語学発展の動向
  14. 非構造主義言語学
    14.1 言語地理学
        方法の基礎 近代方言学
    14.2 フランス言語学派
        心理生理学的・心理学的・社会学的言語研究 文体論的研究
    14.3 言語学における美的観念論
        概論 フォスラーの学派 新言語学
    14.4 進歩的スラヴ学派
        カザン学派 フォルトゥナートフ(モスクワ)学派 ベーリチの言語間
    14.5 マール主義
    14.6 実験音声学
  15. 構造主義言語学
    15.1 発展の基本的傾向
    15.2 フェルディナン・ドゥ・ソシュール
    15.3 ジュネーヴ学派
    15.4 音韻論の時代
        先駆者 トルベツコイの音韻論の原理 プラーグ言語学サークル ロマーン・ヤーコブソンの二項論 音韻変化の構造主義的解釈
    15.5 アメリカ言語学の諸学派
        先駆者:ボアズ,サピア,ブルームフィールド 分布主義の時代 人類学的言語学 心理言語学
    15.6 コペンハーゲン学派
        学派の基礎づけ---ヴィッゴ・ブレナル イェルムスレウの言語学
  16. 言語学における論理記号主義
    16.1 論理演算学
    16.2 記号学
    16.3 言語学的意味論
  17. 構文論と生成的手法
  18. 数理言語学
    18.1 概論
    18.2 計量(統計)言語学
    18.3 情報理論
    18.4 機械翻訳




 私自身が言語観を形成する上で,おおいに影響を受けた一冊である.

 ・ ミルカ・イヴィッチ 著,早田 輝洋・井上 史雄 訳 『言語学の流れ』 みすず書房,1974年.

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2024-01-10 Wed

#5371. 言語学史のハンドブックの目次 [toc][history_of_linguistics]


Hough, Carole, ed. ''The Oxford Handbook of Names and Naming''. Oxford: OUP, 2016.



 900ページ超の鈍器本だが,ずっと通読したいと思っているハンドブックがある.Allan Keith 編の The Oxford Handbook of the History of Linguistics である.つまみ食いはしてきたのだが,やはり本腰を入れて熟読したい.そのモチベーションを高めるために,目次を一覧しておく.



 Front Matter
 Introduction
 1. The Origins and the Evolution of Language
 2. The History of Writing as a History of Linguistics
 3. History of the Study of Gesture
 4. The History of Sign Language Linguistics
 5. Orthography and the Early History of Phonetics
 6. From IPA to Praat and Beyond
 7. Nineteenth-Century Study of Sound Change from Rask to Saussure
 8. Discoverers of the Phoneme
 9. A History of Sound Symbolism
 10. East Asian Linguistics
 11. Linguistics in India
 12. From Semitic to Afro-Asiatic
 13. From Plato to Priscian: Philosophy's Legacy to Grammar
 14. Pedagogical Grammars Before the Eighteenth Century
 15. Vernaculars and the Idea of a Standard Language
 16. Word-Based Morphology from Aristotle to Modern WP (Word and Paradigm Models)
 17. General or Universal Grammar from Plato to Chomsky
 18. American Descriptivism ('Structuralism')
 19. Noam Chomsky's Contribution to Linguistics: A Sketch
 20. European Linguistics since Saussure
 21. Functional and Cognitive Grammars
 22. Lexicography from Earliest Times to the Present
 23. The Logico-philosophical Tradition
 24. Lexical Semantics from Speculative Etymology to Structuralist Semantics
 25. Post-structuralist and Cognitive Approaches to Meaning
 26. A Brief Sketch of the Historic Development of Pragmatics
 27. Meaning in Texts and Contexts
 28. Comparative, Historical, and Typological Linguistics since the Eighteenth Century
 29. Language, Culture, and Society
 30. Language, the Mind, and the Brain
 31. Translation: the Intertranslatability of Languages; Translation and Language Teaching
 32. Computational Linguistics
 33. The History of Corpus Linguistics
 34. Philosophy of Linguistics
 End Matter
    References
    Index




 言語学史 (history_of_linguistics) に関する話題は,本ブログでも多く取り上げてきたが,とりわけ「#1288. 言語学史という分野が1960年代に勃興した理由」 ([2012-11-05-1]) の記事をお薦めしておきたい.

 ・ Keith, Allan, ed. The Oxford Handbook of the History of Linguistics. Oxford: OUP, 2013.

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2024-01-07 Sun

#5368. ethnonym (民族名) [demonym][onomastics][toponymy][personal_name][name_project][ethnonym][terminology][toc][ethnic_group][race][religion][geography]

 民族名,国名,言語名はお互いに関連が深い,これらの(固有)名詞は名前学 (onomastics) では demonymethnonym と呼ばれているが,目下少しずつ読み続けている名前学のハンドブックでは後者の呼称が用いられている.
 ハンドブックの第17章,Koopman による "Ethnonyms" の冒頭では,この用語の定義の難しさが吐露される.何をもって "ethnic group" (民族)とするかは文化人類学上の大問題であり,それが当然ながら ethnonym という用語にも飛び火するからだ.その難しさは認識しつつグイグイ読み進めていくと,どんどん解説と議論がおもしろくなっていく.節以下のレベルの見出しを挙げていけば次のようになる.

 17.1 Introduction
 17.2 Ethnonyms and Race
 17.3 Ethnonyms, Nationality, and Geographical Area
 17.4 Ethnonyms and Language
 17.5 Ethnonyms and Religion
 17.6 Ethnonyms, Clans, and Surnames
 17.7 Variations of Ethnonyms
   17.7.1 Morphological Variations
   17.7.2 Endonymic and Exonymic Forms of Ethnonyms
 17.8 Alternative Ethnonyms
 17.9 Derogatory Ethnonyms
 17.10 'Non-Ethnonyms' and 'Ethnonymic Gaps'
 17.11 Summary and Conclusion

 最後の "Summary and Conclusion" を引用し,この分野の魅力を垣間見ておこう.

In this chapter I have tried to show that while 'ethnonym' is a commonly used term among onomastic scholars, not all regard ethnonyms as proper names. This anomalous status is linked to uncertainties about defining the entity which is named with an ethnonym, with (for example) terms like 'race' and 'ethnic group' being at times synonymous, and at other times part of each other's set of defining elements. Together with 'race' and 'ethnicity', other defining elements have included language, nationality, religion, geographical area, and culture. The links between ethnonyms and some of these elements, such as religion, are both complex and debatable; while other links, such as between ethnonyms and language, and ethnonyms and nationality, produce intriguing onomastic dynamics. Ethnonyms display the same kind of variations and alternatives as can be found for personal names and place-names: morpho-syntactic variations, endonymic and exonymic forms, and alternative names for the same ethnic entity, generally regarded as falling into the general spectrum of nicknames. Examples have been given of the interface between ethnonyms, personal names, toponyms, and glossonyms.
   In conclusion, although ethnonyms have an anomalous status among onomastic scholars, they display the same kinds of linguistic, social, and cultural characteristics as proper names generally.


 「民族」周辺の用語と定義の難しさについては以下の記事も参照.

 ・ 「#1871. 言語と人種」 ([2014-06-11-1])
 ・ 「#3599. 言語と人種 (2)」 ([2019-03-05-1])
 ・ 「#3706. 民族と人種」 ([2019-06-20-1])
 ・ 「#3810. 社会的な構築物としての「人種」」 ([2019-10-02-1])

 また,ethnonym のおもしろさについては,関連記事「#5118. Japan-ese の語尾を深掘りする by khelf 新会長」 ([2023-05-02-1]) も参照されたい.

 ・ Koopman, Adrian. "Ethnonyms." Chapter 17 of The Oxford Handbook of Names and Naming. Ed. Carole Hough. Oxford: OUP, 2016. 251--62.

Referrer (Inside): [2024-02-07-1]

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2023-12-06 Wed

#5336. Fertig による analogy の本格的研究書の目次 [analogy][toc][terminology][voicy][heldio]

 言語変化の説明原理の1つ analogy (類推作用)については,本ブログでも多くの記事を書いてきた.言語学史上,analogy は軽視されてきたきらいがある.規則的とされる音変化に対し,その規則から外れる例外事項は analogy という「ゴミ箱」に投げ捨てられてきた経緯がある.ここには,analogy が言語変化の説明原理としてある意味で強力すぎるという点も関係しているのかもしれない.analogy のこのような日陰者ぶりについては,hellog 「#1154. 言語変化のゴミ箱としての analogy」 ([2012-06-24-1]) や Voicy heldio 「#911. アナロジーは言語変化のゴミ箱!?」も参照されたい.
 このような言語学史上の事情により,言語変化における analogy に真正面から切り込んだ研究書は多くない.そのなかでも本格派といえるのが,本ブログでも何度か参照してきた David Fertig による Analogy and Morphological Change (Edinburgh UP, 2013) である.本格派であることは,以下に掲げる目次の細かさからも伝わるのではないか.analogy でここまで語れるとは!



1 Fundamental Concepts and Issues
  1.1 Introduction
  1.2 Essential Historical Background: Hermann Paul and the Neogrammarian Period
  1.3 Preliminary (Narrow) Definitions
  1.4 Conceptual and Terminological Fundamentals
    1.4.1 The term 'analogy'
    1.4.2 Analogy vs. analogical innovation/change
    1.4.3 Speaker-oriented approaches
    1.4.4 Change vs. diachronic correspondence
    1.4.5 Innovation vs. change
    1.4.6 Defining historical linguistics
  1.5 Clarifying the Definition of Analogical Innovation/Change
    1.5.1 Narrow vs. broad definitions of analogical innovation
    1.5.2 Toward a more adequate definition of analogical innovation/change
    1.5.3 Some other definitions
  1.6 Analogical Change as Opposed to What?
    1.6.1 Analogy vs. reanalysis
    1.6.2 Analogy2 and sound change
    1.6.3 2 and language contact
    1.6.4 Changes attributable to extra-grammatical factors
    1.6.5 What about grammaticalization?
  1.7 Proportions and Proportional Equations
  1.8 Why Study Analogy and Morphological Change?

2 Basic Mechanisms of Morphological Change
  2.1 Introduction
  2.2 Defining (Re)analysis
  2.3 Associative Interference
  2.4 (Re)analysis, Analogy2 and Grammatical Change
    2.4.1 history, synchrony, diachrony, panchrony
    2.4.2 'Language change is grammar change'?
    2.4.3 The role of transmission/acquisition in grammatical innovation
    2.4.4 The relationship of analogical innovation to grammatical change in static and dynamic models of mental grammar
  2.5 Types of Morphological Reanalysis
    2.5.1 D-reanalysis
    2.5.2 C-reanalysis
    2.5.3 B-reanalysis
    2.5.4 A-reanalysis
    2.5.5 Summary of A-, B-, C- and D-reanalysis
    2.5.6 Exaptation
  2.6 Chapter Summary

3 Types of Analogical Change, Part 1: Introduction and Proportional Change
  3.1 Introduction
  3.2 Outcome-Based vs. Motivation-Based Classifications
  3.3 Terminology and Terminological Confusion
  3.4 Proportional vs. Non-Proportional Analogy
  3.5 Morphological vs. Morphophonological Change
  3.6 A Critical Overview of Traditional Subtypes of Proportional Change
    3.6.1 Four-part analogy
    3.6.2 Extension
    3.6.3 Backformation
    3.6.4 Regularization and irregularization
    3.6.5 Item-by-item vs. across-the-board change

4 Types of Analogical Change, Part 2: Non-Proportional Change
  4.1 Introduction
  4.2 Folk Etymology
  4.3 Confusion of Similar-Sounding Words
  4.4 Contamination and Blends
    4.4.1 Contamination
    4.4.2 Double marking of grammatical categories
    4.4.3 Blends and related phenomena

5 Types of Analogical Change, Part 3: Problems and Puzzles
  5.1 A Problem Child for Classification Schemes: Paradigm Leveling
  5.2 Analogical Non-Change
  5.3 Phantom Analogy
    5.3.1 'Regularization is much more common than irregularization': a case study in circular reasoning
  5.4 Summary of Types of Analogical Change (Chapters 3--5)

6 Analogical Change beyond Morphology
  6.1 Introduction
  6.2 Syntactic Change
  6.3 Lexical (Semantic) Change
  6.4 Morphophonological Change
  6.5 Phonological Change
  6.6 Regular Sound Change as Analogy
  6.7 The Interaction of Analogy2 and Sound Change
    6.7.1 Sturtevant's so-called paradox
    6.7.2 'Therapy, not Prophylaxis'
  6.8 Chapter Summary

7 Constraints on Analogical Innovation and Change
  7.1 Introduction
  7.2 Predictability and Directionality
  7.3 Constraints on the Interparadigmatic Direction of Change
    7.3.1 Analogical change as 'optimization'
    7.3.2 Formal simplification/optimization of the grammar
    7.3.3 Preference theories
    7.3.4 System-independent constraints
    7.3.5 System-dependent constraints
    7.3.6 Analogical extension of patterns with initially low type frequency
    7.3.7 System-dependent naturalness vs. formal simplicity/optimality
    7.3.8 Universal preferences and 'evolutionary' grammatical theory
  7.4 Constraints on the Intraparadigmatic Direction of Change
  7.5 Token Frequency
  7.6 Teleology
  7.7 Chapter Summary

8 Morphological Change and Morphological Theory
  8.1 Introduction
  8.2 Grammatical Theory and Acquisition
  8.3 The Nature and Significance of Linguistic Universals
  8.4 Static vs. Dynamic conceptions of Grammar
  8.5 Exemplar-Based vs. Rule-Based Models
  8.6 Analogy vs. Rules
    8.6.1 Dual-mechanism models
  8.7 Rules vs. Constraints
  8.8 Syntagmatic/Compositional vs. Paradigmatic/Configurational Approaches to Morphology
    8.8.1 Asymmetric vs. symmetric paradigmatic models
    8.8.2 Paul's proportional model
  8.9 Chapter Summary
  
  References
  Index





Fertig, David. ''Analogy and Morphological Change.'' Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.



 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

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2023-09-29 Fri

#5268. 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) [world_englishes][review][notice][hel_education][hel][toc][we_nyumon]


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 待望の世界英語 (World Englishes) に関する最新の入門書が,来週半ばに出版されます(税込定価2,640円;Amazon で予約受付中).私自身,とりわけここ数年間,英語史の観点から世界英語の現象に関心を寄せ,いろいろと考えたり執筆・講演などをしてきました.手に取りやすく読みやすい本書の出版は,この現代的な問題のおもしろさが広く一般に知られる好機となると期待しています.関係者よりご献本いただきまして,目下楽しく拝読しています(ありがとうございました!).
 本書は,2012年に昭和堂より出版された『World Englishes---世界の英語への招待』(田中春美・田中幸子(編))の続編に当たる本です.前著から,執筆メンバー,文献,データなどにおいて大きく刷新が加えられています.考察対象とされる世界英語変種も幅広さを増し,知りたくても知り得なかった,盲点というべきアジア地域の英語変種 --- 例えば中東地域,韓国,中華世界,モンゴル,ミャンマー --- なども取り上げられています.
 以下,目次と各章の執筆者を掲載します.



序章 World Englishes --- 世界諸英語(大石 晴美・梅谷 博之)
第I部 母語としての英語
   第1章 イギリスとケルトの英語(和田 忍)
   第2章 アメリカとカナダの英語(今村 洋美)
   第3章 オーストラリアとニュージーランドの英語(岡戸 浩子)
第II部 公用語・第二言語としての英語
   第4章 インドの英語(榎木薗 鉄也・加藤 拓由)
   第5章 東南アジアの英語(大石 晴美)
   第6章 アフリカの英語(山本 忠行)
   第7章 カリブ海の英語(山口 美知代)
第III部 国際語・外国語としての英語
   第8章 ヨーロッパと中東の英語(高橋 真理子)
   第9章 日本の英語(今村 洋美)
   第10章 韓国の英語(小林 めぐみ)
   第11章 中華世界の英語(山口 美知代)
   第12章 モンゴルの英語(梅谷 博之)
   第13章 ミャンマーの英語(大石 晴美)
終章 World Englishes の未来(大石 晴美)
発音について(梅谷 博之)




 これまでも繰り返し述べてきましたが,世界英語はすぐれて現代的なトピックのように見えますし,実際にそうなのですが,実のところ英語史との親和性が非常に強い領域です.むしろ歴史的次元を抜きにして世界英語を論じることはできないだろうと私は考えています.英語史の国際学会でも世界英語に関する研究発表部屋が特別に用意されることは珍しくなくなってきていますし,世界英語に関するハンドブックの章なども英語史研究者が執筆していることが多いです.さらにいえば,本書の序章と第1章は,合わせて事実上の英語史概説となっていると言ってよいでしょう(第1章の著者は英語史を研究している和田忍先生(駿河台大学)です).
 これから熟読した上で,今後も本書から話題を取り上げつつ,本ブログ記事を執筆したり,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で紹介していきたいと思っています.ご著者の先生方で,もし heldio 対談などをお受けくださるようであれば,ぜひよろしくお願いいたします!
 本ブログの世界英語に関する記事群へは world_englishes よりご訪問ください.

 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

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2023-07-10 Mon

#5187. 固有名詞学のハンドブック [review][onomastics][personal_name][toponymy][eponym][demonym][toc]

 本ブログでは,「名前」を扱う言語学の分野,固有名詞学 (onomastics) に関する話題を多く取り上げてきた.人間の社会生活において名前が関わらない領域はほとんどないといってよく,名前の言語学は必然的に学際的なものとなる.実際,この分野には,昨今,熱い視線が注がれている.今回紹介するのは,この限りなく広い分野をエキサイティングに導入してくれるハンドブックである.


Hough, Carole, ed. ''The Oxford Handbook of Names and Naming''. Oxford: OUP, 2016.



 私はまだ Hought によるイントロを読んだにすぎないが,すでにこの分野のカバーする領域の広さに圧倒されている.以下に目次を示そう.



 Front Matter
 1. Introduction
 Part I. Onomastic Theory
    2. Names and Grammar
    3. Names and Meaning
    4. Names and Discourse
 Part II. Toponomastics
    5. Methodologies in Place-name Research
    6. Settlement Names
    7. River Names
    8. Hill and Mountain Names
    9. Island Names
    10. Rural Names
    11. Street Names: A Changing Urban Landscape
    12. Transferred Names and Analogy in Name-formation
 Part III. Anthroponomastics
    13. Personal Naming Systems
    14. Given Names in European Naming Systems
    15. Family Names
    16. Bynames and Nicknames
    17. Ethnonyms
    18. Personal Names and Anthropology
    19. Personal Names and Genealogy
 Part IV. Literary Onomastics
    20. Theoretical Foundations of Literary Onomastics
    21. Names in Songs: A Comparative Analysis of Billy Joel's We Didn't Start The Fire and Christopher Torr's Hot Gates
    22. Genre-based Approaches to Names in Literature
    23. Corpus-based Approaches to Names in Literature
    24. Language-based Approaches to Names in Literature
 Part V. Socio-onomastics
    25. Names in Society
    26. Names and Identity
    27. Linguistic Landscapes
    28. Toponymic Attachment
    29. Forms of Address
    30. Pseudonyms
    31. Commercial Names
 Part VI. Onomastics and Other Disciplines
    32. Names and Archaeology
    33. Names and Cognitive Psychology
    34. Names and Dialectology
    35. Names and Geography
    36. Names and History
    37. Names and Historical Linguistics
    38. Names and Language Contact
    39. Names and Law
    40. Names and Lexicography
    41. Place-names and Religion: A Study of Early Christian Ireland
 Part VII. Other Types of Names
    42. Aircraft Names
    43. Animal Names
    44. Astronomical Names
    45. Names of Dwellings
    46. Railway Locomotive Names and Train Names
    47. Ship Names
 End Matter
    Bibliography
    Index



 800ページ超の大部ではあるが,それでも名前に関わる分野を網羅しているとは言えなさそうだ.それくらいに広い分野だということだ.固有名詞学,恐るべし.

 ・ Hough, Carole, ed. The Oxford Handbook of Names and Naming. Oxford: OUP, 2016.

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2023-07-07 Fri

#5184. 秋元実治『イギリス哲学者の英語』(開拓社,2023年) [review][mode][philosophy][toc]

 「#5166. 秋元実治(編)『近代英語における文法的・構文的変化』(開拓社,2023年)」 ([2023-06-19-1]) で紹介した編著者の秋元実治先生(青山学院大学名誉教授)が,今年,開拓社よりもう1冊の著書を出されています.『イギリス哲学者の英語 --- 通時的研究』です.ご献本いただき,ありがたき幸せです.


秋元 実治 『イギリス哲学者の英語 --- 通時的研究』 開拓社,2023年.



 本書は開拓社の言語・文化選書の第99弾として出版されたものです(秋元先生は,2017年に同選書の第65弾『Sherlock Holmes の英語』を,2020年に第86弾『探偵小説の英語 --- 後期近代英語の観点から』を出版されています).
 本書は,16--20世紀に生きた6人のイギリス哲学者に焦点を当て,彼らの英語を分析し,その文法的,文体的特徴を浮き彫りにしています.彼らの書いた英語を時系列に並べることで,主に近代英語期を通じての英語の通時的変化が俯瞰できるようになっています.英語史や英語の通時的変化に関心のある方はもちろん,イギリス経験哲学者の書いた英文に関心のある方にも,学べることが多いです.
 以下に本書の章立てとともに,取り上げられた哲学者を列挙します.



 第1章 概説 --- 哲学者を中心に
 第2章 近代英語とは
 第3章 哲学者の英語 (1) --- Francis Bacon(1561--1626)
 第4章 哲学者の英語 (2) --- Thomas Hobbes(1588--1679)
 第5章 哲学者の英語 (3) --- John Locke(1632--1704)
 第6章 哲学者の英語 (4) --- David Hume(1711--1776)
 第7章 哲学者の英語 (5) --- John Stuart Mill(1806--1873)
 第8章 哲学者の英語 (6) --- Bertrand Russell(1872--1970)
 第9章 通時的考察




 ・ 秋元 実治 『イギリス哲学者の英語 --- 通時的研究』 開拓社,2023年.

Referrer (Inside): [2023-09-23-1]

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2023-02-11 Sat

#5038. 語用論の学際性 [pragmatics][linguistics][sociolinguistics][philosophy_of_language][psycholinguistics][ethnography_of_speaking][anthropology][politics][history_of_linguistics][methodology][toc]

 「#5036. 語用論の3つの柱 --- 『語用論の基礎を理解する 改訂版』より」 ([2023-02-09-1]) で紹介した Gunter Senft (著),石崎 雅人・野呂 幾久子(訳)『語用論の基礎を理解する 改訂版』(開拓社,2022年)の序章では,語用論 (pragmatics) が学際的な分野であることが強調されている (4--5) .

 このことは,語用論が「社会言語学や何々言語学」だけでなく,言語学のその他の伝統的な下位分野にとって,ヤン=オラ・オーストマン (Jan-Ola Östman) (1988: 28) が言うところの,「包括的な」機能を果たしていることを暗に意味する.Mey (1994: 3268) が述べているように,「語用論の研究課題はもっぱら意味論,統語論,音韻論の分野に限定されるというわけではない.語用論は…厳密に境界が区切られている研究領域というよりは,互いに関係する問題の集まりを定義する」.語用論は,彼らの状況,行動,文化,社会,政治の文脈に埋め込まれた言語使用者の視点から,特定の研究課題や関心に応じて様々な種類の方法論や学際的なアプローチを使い,言語とその有意味な使用について研究する学問である.
 学際性の問題により我々は,1970年代が言語学において「語用論的転回」がなされた10年間であったという主張に戻ることになる.〔中略〕この学問分野の核となる諸領域を考えてみると,言語語用論は哲学,心理学,動物行動学,エスノグラフィー,社会学,政治学などの他の学問分野と関連を持つとともにそれらの学問分野にその先駆的形態があることに気づく.
 本書では,語用論が言語学の中における本質的に学際的な分野であるだけでなく,社会的行動への基本的な関心を共有する人文科学の中にあるかなり広範囲の様々な分野を結びつけ,それらと相互に影響し合う「分野横断的な学問」であることが示されるであろう.この関心が「語用論の根幹は社会的行動としての言語の記述である」 (Clift et al. 2009: 509) という確信を基礎とした本書のライトモチーフの1つを構成する.


 6つの隣接分野の名前が繰り返し挙げられているが,実際のところ各分野が本書の章立てに反映されている.

 ・ 第1章 語用論と哲学 --- われわれは言語を使用するとき,何を行い,実際に何を意味するのか(言語行為論と会話の含みの理論) ---
 ・ 第2章 語用論と心理学 --- 直示指示とジェスチャー ---
 ・ 第3章 語用論と人間行動学 --- コミュニケーション行動の生物学的基盤 ---
 ・ 第4章 語用論とエスノグラフィー --- 言語,文化,認知のインターフェース ---
 ・ 第5章 語用論と社会学 --- 日常における社会的相互行為 ---
 ・ 第6章 語用論と政治 --- 言語,社会階級,人種と教育,言語イデオロギー ---

 言語学的語用論をもっと狭く捉える学派もあるが,著者 Senft が目指すその射程は目が回ってしまうほどに広い.

 ・ Senft, Gunter (著),石崎 雅人・野呂 幾久子(訳) 『語用論の基礎を理解する 改訂版』 開拓社,2022年.

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2022-12-20 Tue

#4985. 新著が出ます --- 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年. [notice][philology][history_of_linguistics][methodology][bunkengaku][toc]

 京都大学の家入葉子先生と堀田の共著となる,英語史研究のハンドブック『文献学と英語史研究』が開拓社より出版されます.発売は新年の1月中旬辺りになりますが,Amazon ではすでに予約可能となっています(A5版,264ページ,税込3,960円).

家入 葉子・堀田 隆一『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.



 本書は,開拓社の最新英語学・言語学シリーズ(全22巻の予定)の第21巻としての位置づけで,それ自体が変化と発展を続けるエキサイティングな分野である「英語史」と「英語文献学」の過去40年ほどの研究動向を振り返りつつ,未来への新たな方向を提案するという趣旨となっています.なお,本書の英文タイトルは Current Trends in English Philology and Historical Linguistics です.
 本書で取り上げている話題は,英語史研究の潮流と展望,資料とデータ,音韻論,綴字,形態論,統語論が主です.英語史分野で研究テーマを探すためのレファレンスとして利用できるほか,通読すれば昨今の英語史分野で何が問題とされ注目されているのかの感覚も得られると思います.本の扉にある【本書の内容】は以下の通りです.

文献資料の電子化が進んだ20世紀の終盤以降は,英語史研究においてもコーパスや各種データベースが標準的に利用されるようになり,英語文献研究は飛躍的な展開を遂げた.英語史研究と現代英語研究が合流して英語学の分野間の連携が進んだのも,この時代の特徴である.本書はこの潮流の変化を捉えながら,音韻論・綴字・形態論・統語論を中心に最新の英語史研究を紹介するとともに,研究に有用な電子的資料についても情報提供する.


 章立ては以下の通りです.章ごとに執筆者は分かれていますが,互いに原稿を交換し検討が加えられています.

 第1章 英語史研究の潮流 (執筆者:家入)
 第2章 英語史研究の資料とデータ (堀田,家入)
 第3章 音韻論・綴字 (堀田)
 第4章 形態論 (堀田)
 第5章 統語論 (家入)
 第6章 英語史研究における今後の展望にかえて (家入)


 家入先生がウェブ上ですでに本書の紹介をされていますので,リンクを張っておきます.

 ・ 研究・授業関連の投稿ページ
 ・ 「コトバと文化のフォーラム - Castlecliffe」のブログ記事

 本書については,今後 hellog や Voicy の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」などの媒体で情報発信していく予定です.長く参照され続ける本になればと思っています.どうぞよろしくお願いいたします.

 ・ 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.

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2022-07-21 Thu

#4833. 『言語の標準化を考える』で考えた標準化の切り口 [gengo_no_hyojunka][standardisation][toc][typology]

 hellog でも何度か宣伝していますが,この5月に 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)が上梓されました.

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 私が執筆担当した箇所の1つに,第1章の「導入:標準語の形成史を対照するということ」の第2節「標準化の切り口(パラメータ)」 (6--15) があります.本書の出版企画につながった過去5年間の研究会活動のなかで検討してきた標準化のパラメータを列挙した部分です.小見出しがそのままパラメータに対応しているので,そちらを一覧しておきます.

2.1 統一化,規範化,通用化
2.2 標準化の程度
2.3 標準化と脱標準化
2.4 使用域
2.5 領域別の標準化とその歴史的順序
2.6 標準化のタイミングと要した時間
2.7 標準化の諸段階・諸側面
2.8 通用空間
2.9 標準化の目標となる変種の種類・数
2.10 標準化を推進する主体・方向
2.11 標準化に対する話者の態度
2.12 言語の標準化と社会の言語標準化


 時間をかけてブレストし,まとめてきたパラメータの一覧なので,対照言語史的に標準化 (standardisation) を検討する際のタイポロジーやモデルとして広く役立つのではないかと考えています.
 hellog では言語標準化の話題は standardisation の記事で頻繁に取り上げてきましたが,研究会での発表を念頭に作成した,英語の標準化の歴史についてのある程度まとまった資料としては「#3234. 「言語と人間」研究会 (HLC) の春期セミナーで標準英語の発達について話しました」 ([2018-03-05-1]) と「#3244. 第2回 HiSoPra* 研究会で英語史における標準化について話しました」 ([2018-03-15-1]) を参照ください.
 『言語の標準化を考える』の紹介についてはこちらの記事セットをどうぞ.とりわけ7月8日に音声収録した編者鼎談はお薦めです.本書の狙いや読みどころを編者3人で紹介しています.近々に編者鼎談第2弾も企画しています.本書について,あるいは一般・個別言語における標準化の話題について,ご意見,ご感想,ご質問等をこちらのコメントフォームお寄せください.第2弾で話題として取り上げられればと思っています.


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2022-07-14 Thu

#4826. 『起源でたどる日常英語表現事典』の目次 [review][toc][etymology]

 昨日の記事「#4825. 英米史略年表 --- 『英語の教養』より」 ([2022-07-13-1]) で紹介した大井光隆(著)『英語の教養』(ベレ出版,2021年)とよく似た趣旨の本をもう1冊紹介したい.
 同じく2021年に出版された,亀田尚己・中道キャサリン(著)『起源でたどる日常英語表現事典』(丸善出版)である.英語に関わる文化・歴史上の各キーワードを1ページで簡潔に解説してくれる事典だ.とりわけ単語の語源や使い方に焦点が当てられているが,文化・歴史的背景についても半ページほど割かれている.以下に章立てを示そう.



 第I部 歴史・文化・制度に関する英語の起源
   1 古代史・英米史にまつわる英語
   2 聖書・文学にまつわる英語
   3 権威・身分制度にまつわる英語
   4 教育制度にまつわる英語
 第II部 宗教・戦争・政治に関する英語の起源
   1 宗教にまつわる英語
   2 戦争にまつわる英語
   3 政治・法律にまつわる英語
 第III部 経済・商業・職業に関する英語の起源
   1 経済活動にまつわる英語
   2 契約にまつわる英語
   3 両替・銀行・為替にまつわる英語
   4 貿易にまつわる英語
   5 工業・農業・職業にまつわる英語
 第IV部 家庭・身体・道具に関する英語の起源
   1 労働・運動・娯楽にまつわる英語
   2 身体・食事・飲み物にまつわる英語
   3 道具・乗り物・動物にまつわる英語
 第V部 自然・気象・季節に関する英語の起源
   1 海陸・地形・地勢・神霊にまつわる英語
   2 気象・季節・降雨・日照にまつわる英語
   3 天体・暦・時間にまつわる英語
 第VI部 外国語に由来する英語の起源
   1 ラテン語由来の英語
   2 フランス語由来の英語
   3 その他の外国語由来の英語




 合計286の単語・表現が見出しに挙げられ解説されているが,パラパラめくって眺めているだけで飽きない.例えば,最後の第VI部の「外国語に由来する英語の起源」からの単語を挙げてみると,ラテン語由来として A.D., Alma Mater, Bona fide, Candle, Confidence, De facto, e.g., etc./et cetera, i.e., Mile, per, per cent/percent, v.v/vice versa, Verse が,フランス語由来として Attaché, Connoisseur, Gourmet, Novice, Vogue が,その他として Chocolate, Kindergarten, Magazine, Pyjamas/Pajamas, Tea が扱われている.

 ・ 亀田 尚己・中道 キャサリン 『起源でたどる日常英語表現事典』 丸善出版,2021年.

Referrer (Inside): [2022-07-31-1] [2022-07-20-1]

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2022-07-13 Wed

#4825. 英米史略年表 --- 『英語の教養』より [review][toc][timeline]

 昨年出版された大井光隆(著)『英語の教養』(ベレ出版)をパラパラ眺めて楽しんでいる.文化的なキーワードを挙げつつ1テーマを1ページで解説する,手軽に読める英米文化誌の本となっている.どこから読んでもためになる.章立てを示そう.



 第1章 英米の歴史
 第2章 年中行事と祝日
 第3章 ギリシャとローマの神話
 第4章 聖書とキリスト教
 第5章 伝説と民間伝承
 第6章 生活のことば
 第7章 スポーツの文化
 第8章 架空の人物と民間のヒーロー
 第9章 動物の世界
 第10章 植物の世界




 第1章を開いたところに「英米史略年表」が掲げられている (10--11) .英米史の全体像を大づかみするには,細かい年表よりも,このくらいの略年表が便利である.要点だけを押さえた英米史年表として以下に記しておきたい.


(紀元前)
600年頃ブリテン島に大陸からケルト人が移住
55年~4ローマの将軍カエサル,ブリテン島に侵攻(~54)
 このころ,イエス・キリスト誕生
(紀元後)
43ローマによるブリテン島支配が始まる
409ローマ軍,ブリテン島より撤退
597ローマの宣教師アウグスティヌスによるキリスト教の布教始まる
800このころからバイキングの侵攻が始まる
871アルフレッド王即位
1016デンマーク王クヌート (Canute) がイングランドを征服,王位に就く
1066「ノルマン征服」で,ウィリアム1世即位
1215ジョン王,マグナカルタを認める
1337英仏間の「百年戦争」始まる (~1453)
1348黒死病,猛威を振るう
1455「ばら戦争」始まる (~85)
1509ヘンリー8世即位 (~47)
1534国教会 (Church of England) 成立,ローマ・カトリック教会と絶縁
1558エリザベス1世即位 (~1603)
1588ドレイク,スペインの無敵艦隊を破る
 このころ,劇作家シェイクスピアが活躍
1600東インド会社が設立され,東洋との直接貿易始まる
1607イギリス人が初めてアメリカに入植し,現在のバージニアに植民地ジェームズタウン (Jamestown) を設立
1620ピルグリム・ファーザーズがアメリカに移住
1640ピューリタン革命 (~60)
1649チャールズ1世が処刑され,イングランド共和国成立
1660王政復古 (the Restoration) で,チャールズ2世即位 (~85)
1665ロンドンで黒死病が大流行
1666ロンドン大火で,市街の80%が消失
1688名誉革命 (the Glorious Revolution) 始まる (~89)
1707イングランドとスコットランドが合同し,グレートブリテン連合王国が成立
1775アメリカ独立戦争始まる
1776アメリカ独立宣言が採択される
1789フランス革命勃発
1801イギリス,アイルランドと合同
1815ウェリントン,ワーテルローの戦いでナポレオン軍を破る
1830リバプール・マンチェスター間に鉄道が開業し,鉄道時代がスタート
1837ビクトリア女王即位 (~1901)
1840アヘン戦争勃発 (~42)
1845アイルランドで大飢饉 (~46)
1851ロンドンで第1回万博(ロンドン大博覧会)開催
1861アメリカで南北戦争始まる
1914第一次世界大戦始まる (~18)
1939第二次世界大戦始まる (~45)
1952エリザベス2世即位
1960アメリカで公民権運動
1965ベトナム戦争 (~75)
1989「ベルリンの壁」崩壊
2019世界各地で「新型コロナウィルス感染症」 (COVID-19) が発生




 ・ 大井 光隆 『英語の教養』 ベレ出版,2021年.

Referrer (Inside): [2022-07-31-1] [2022-07-14-1]

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2022-05-25 Wed

#4776. 初の対照言語史の本が出版されました 『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 [notice][standardisation][contrastive_linguistics][contrastive_language_history][gengo_no_hyojunka][toc]

 様々な言語における標準化の歴史を題材とした本が出版されました.

 ・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.

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 私も編著者の1人として関わった本です.5年近くの時間をかけて育んできた研究会での発表や議論がもととなった出版企画が,このような形で結実しました.とりわけ「対照言語史」という視点は「海外の言語学の動向を模倣したものではなく,われわれが独自に提唱するもの」 (p. 4) として強調しておきたいと思います.例えば英語と日本語を比べるような「対照言語学」 (contrastive_linguistics) ではなく,英語「史」と日本語「史」を比べてみる「対照言語史」 (contrastive_language_history) という新視点です.
 この本の特徴を3点に絞って述べると,次のようになります.

 (1) 社会歴史言語学上の古くて新しい重要問題の1つ「言語の標準化」 (standardisation) に焦点を当てている
 (2) 日中英独仏の5言語の標準化の過程を記述・説明するにとどまらず,「対照言語史」の視点を押し出してなるべく言語間の比較対照を心がけた
 (3) 本書の元となった研究会での生き生きとした議論の臨場感を再現すべく,対話的脚注という斬新なレイアウトを導入した

 目次は以下の通りです.



 まえがき
 第1部 「対照言語史」:導入と総論
   第1章 導入:標準語の形成史を対照するということ(高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一)
   第2章 日中英独仏 --- 各言語史の概略(田中 牧郎・彭 国躍・堀田 隆一・高田 博行・西山 教行)
 第2部 言語史における標準化の事例とその対照
   第3章 ボトムアップの標準化(渋谷 勝己)
   第4章 スタンダードと東京山の手(野村 剛史)
   第5章 書きことばの変遷と言文一致(田中 牧郎)
   第6章 英語史における「標準化サイクル」(堀田 隆一)
   第7章 英語標準化の諸相 --- 20世紀以降を中心に(寺澤 盾)
   第8章 フランス語の標準語とその変容 --- 世界に拡がるフランス語(西山 教行)
   第9章 近世におけるドイツ語文章語 --- 言語の統一性と柔軟さ(高田 博行・佐藤 恵)
   第10章 中国語標準化の実態と政策の史話 --- システム最適化の時代要請(彭 国躍)
   第11章 漢文とヨーロッパ語のはざまで(田中 克彦)
 あとがき




 hellog でも言語の標準化の話題は繰り返し取り上げてきました.英語の標準化の歴史は確かに独特なところもありますが,一方で今回の「対照言語史」的な議論を通じて,他言語と比較できる点,比較するとおもしろい点に多く気づくことができました.
 「対照言語史」というキーワードは,2019年3月28日に開催された研究会にて公式に初めてお披露目しました(「#3614. 第3回 HiSoPra* 研究会のお知らせ」 ([2019-03-20-1]) を参照).その後,「#4674. 「初期近代英語期における語彙拡充の試み」」 ([2022-02-12-1]) で報告したように,今年の1月22日,ひと・ことばフォーラムのシンポジウム「言語史と言語的コンプレックス --- 「対照言語史」の視点から」にて,今回の編者3人でお話しする機会をいただきました.今後も本書出版の機会をとらえ,対照言語史の話題でお話しする機会をいただく予定です.
 hellog 読者の皆様も,ぜひ対照言語史という新しいアプローチに注目していたければと思います.

 ・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.

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2021-11-12 Fri

#4582. 宇賀治正朋(著)『英文法学史』の目次 [toc][history_of_english_grammar][history_of_linguistics]

 故宇賀治正朋先生の著書に『英文法学史』がある.御遺族が御遺稿を自費で出版されたとのことで,非売品として一般には知られていない著書である.先日,知り合いの研究者より1部をいただく機会があった.ここに目次を示し,宇賀治先生がいかにして英文法史を紡いだかを概観したい.大きな見取り図が得られる.



  1 序章
   1.1 Grammar: 定義と構成部門
   1.2 Grammar: 最初の適用言語ラテン語

  第1部 先史時代 ー 英文法の源流
  2 古代ギリシアの文法研究
    2.1 古代ギリシァ前期
      2.1.1 プラトン ー 始原の言語学書 対話篇『クラテュロス』
      2.1.2 アリストテレス ー 文法学の祖
      2.1.3 ストア派の哲学者たち ー 文法は論理学の一分野
      2.1.4 まとめ
    2.2 古代ギリシァ後期 ー ヘレニズム時代
      2.2.1 アレクサンドリアの文法家
        2.2.1.1 ディオニュシオス ー 「文法術」の出現
        2.2.1.2 評釈と意義
        2.2.1.3 アポロニオス ー 統語論の開拓者
          第1部 定冠詞・関係代名詞
          第2部 代名詞
          第3部 文法違反(solecism)・動詞・分詞
          第4部 前置詞・副詞

  3 古代ローマの文法研究
    3.1 ウァッロ ー 屈折形態論の創始者
    3.2 歴史的意義
    3.3 ドナトゥス ー 現代にいたる文法組織の大綱を決定
      I. Ars Minor
      II. Ars Maior
    3.4 評価

  4 中世イングランドの文法研究
    4.1 イングランドの状況

  5 英文法の出現
    5.1 時代背景
    5.2 Bullokar から1600年まで
      文献解題1. William Bullokar: Bref Grammar for English (1586)
    5.3 1601年から1700年まで
      文献解題2. Ben Jonson: The English Grammar (1640)
      文献解題3. John Wallis: Grammatica Linguae Anglicanae (1653)
    5.4 1701年から1800年まで
      文献解題4. Lindley Murray: English Grammar, Adapted to the Different Classes of Learners (1795)



 ・ 宇賀治 正朋 『英文法学史』 研究社印刷,2012年.

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2021-02-22 Mon

#4319. 河西良治教授退職記念論文集刊行会(編) 『言語研究の扉を開く』 開拓社,2021年. [notice][review][toc]

 敬愛する河西良治先生(中央大学文学部英語文学文化専攻教授)がこの3月でご退職されます.退職記念として,河西ゼミ門下生により編集された記念論文集『言語研究の扉を開く』が開拓社より出版されました.私自身も小論「英語の歴史にみられる3つの潮流」を寄稿させていただいたのですが,その拙論は別として,河西先生ご自身も含めた充実の執筆陣による多種多様な英語学の論文が集まっており,これからじっくり楽しんで読みたいと思っています.

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 以下,目次を掲げます.

[ 言語心理学・言語教育学 ]

  ・ 阿佐 宏一郎 「文字サイズと読み効率の言語心理学」
  ・ 歌代 崇史 「ティーチャートークの適切さの自動推定に向けた探求 --- 日本語教員養成課程において ---」
  ・ 木塚 雅貴 「英語科教員のための英語音声学」
  ・ Matthews, John 「Sounds of Language, Sounds of Speech: The Linguistics of Speaking in English but Hearing in Japanese」

[ 応用言語学 ]

  ・ 石崎 貴士 「Reconsidering the Input Hypothesis from a Connectionist Perspective: Cognitive Filtering and Incomprehensible Input」
  ・ 平川 眞規子 「日本人英語学習者によるテンスとアスペクトの意味解釈:単純形 -s vs. 現在進行形 -ing
  ・ 穂刈 友洋 「誤り研究への招待」
  ・ 村野井 仁 「第二言語習得と意味」
  ・ 若林 茂則 「第二言語の解明:統率束縛理論に基づく研究の成果と今後の研究の方向性」

[ 英語学 ]

  ・ 靭江 静 「日本語の「できる」と英語の can の語用論上の相違と語用論に基づいた指導の必要性」
  ・ 久米 啓介 「英語学習者の冠詞体系」
  ・ 倉田 俊二 「英語の自由間接話法と自由直接話法について」
  ・ 堀田 隆一 「英語の歴史にみられる3つの潮流」
  ・ 手塚 順孝 「顎・舌・唇:身体的特徴を加味した英語母音の一般化の可能性」

[ 理論言語学 ]

  ・ 新井 洋一 「That 時制節を焦点として導く疑似分裂文の特性と諸問題」
  ・ 井筒 勝信 「見えるもの、見えないもの:ミクロ類型論から見えて来るもの」
  ・ 北原 賢一 「コーパスを用いた言語研究の盲点 --- 同族目的語表現を巡って ---」
  ・ 篠原 俊吾 「ずらして見る --- メトニミー的視点 ---」
  ・ 星 英仁 「概念・志向システムによる意味解釈のメカニズム」
  ・ 山田 祥一 「断言と疑問の混交文 --- ウェブ上の言葉遊びに見られる特殊表現 ---」

  ・ 河西良治先生経歴と業績一覧

  ・ 「私の言語研究:言語と人生」 河西 良治


 ・ 河西良治教授退職記念論文集刊行会(編) 『言語研究の扉を開く』 開拓社,2021年.

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2020-08-20 Thu

#4133. OED による英語史概説 [oed][lexicology][lexicography][historiography][toc][hel][hel_education]

 OED のサイトには当然ながら英語史に関する情報が満載である.じっくりと読んだことはなかったのだが,掘れば掘るほど出てくる英語史のコンテンツの宝庫だ.OED が運営しているブログがあり,そこから英語史概説というべき記事を以下に挙げておきたい.
 OED らしく語彙史が中心となっているのはもちろん,辞書編纂の関心が存分に反映されたユニークな英語史となっており,実に読み応えがある.とりわけ古い時代の英語の evidence や manuscript dating の問題に関する議論などは秀逸というほかない(例えば Middle English: an overview の "Our surviving documents" などを参照).また,終着点となる20世紀の英語の評論などは,今後の英語を考える上で必読ではないか.
 是非,以下をじっくり読んでもらえればと思います.

 ・ Old English --- an overview
    - Historical background
    - Some distinguishing features of Old English
    - The beginning of Old English
    - The end of Old English
    - Old English dialects
    - Old English verbs
    - Derivational relationships and sound changes
       - cf. Old English in the OED
 ・ Middle English: an overview
    - Historical period
    - The most important linguistic developments
    - A multilingual context
    - Borrowing from early Scandinavian
    - Borrowing from Latin and/or French
    - Pronunciation
    - A period characterized by variation
    - Our surviving documents
 ・ Early modern English --- an overview
    - Boundaries of time and place
    - Variations in English
    - Attitudes to English
    - Vocabulary expansion
    - 'Inkhorn' versus purism
    - Archaism and rhetoric
    - Regulation and spelling reform
    - Fresh perspectives: Old English and new science
 ・ Nineteenth century English: an overview
    - Communications and contact
    - Local and global English
    - Recording the language
    - A changing language: grammar and new words
    - The science of language
 ・ Twentieth century English: an overview
    - Circles of English
    - Convergence: the birth of cool
    - Restrictions on language
    - Lexis: dreadnought and PEP talk
    - Modern English usages

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2020-03-15 Sun

#3975. 『もういちど読む山川日本史』の目次 [toc][history][japanese_history]

 昨日の記事「#3974. 『もういちど読む山川世界史』の目次」 ([2020-03-14-1]) を踏まえ,日本史バージョンもお届けする.もちろん典拠は『もういちど読む山川日本史』だ.日本語史に関しては「#3389. 沖森卓也『日本語史大全』の目次」 ([2018-08-07-1]) を参照.ノードを開閉できるバージョンはこちらからどうぞ.



第1部 原始・古代
  第1章 日本のあけぼの
    1 文化の始まり
      人類の誕生
      旧石器文化
      縄文文化
      生活と習俗
    2 農耕社会の誕生
      弥生文化
      水稲と鉄器
      生産と階級
  第2章 大和王権の成立
    1 小国の時代
      100余の国々
      倭国の乱
      邪馬台国
    2 古墳文化の発展
      古墳の築造
      大和と朝鮮
      倭の五王
      大陸の人々
    3 大王と豪族
      氏姓制度
      部民と屯倉
      国造の反乱
      漢字と仏教
      共同体と祭祀
      古墳時代の生活
  第3章 古代国家の形成
    1 飛鳥の宮廷
      蘇我氏の台頭
      聖徳太子の政治
      遣隋使
    2 大化の改新
      政変の原因
      改新の政治
      近江の朝廷
    3 律令国家
      大宝律令
      中央と地方の官制
      班田農民
    4 飛鳥・白鳳の文化
      氏寺から官寺へ
      薄葬礼
      宮廷歌人
    5 平城京の政治
      国土の開発
      遣唐使
      政治と社会の変化
    6 天平文化
      国史と地誌
      学問と文芸
      国家仏教
      天平の美術
  第4章 律令国家の変質
    1 平安遷都
      造都と征夷
      律令制の変容
    2 弘仁・貞観文化
      新仏教の展開
      漢文学の隆盛
      密教芸術
    3 貴族政治の展開
      藤原氏の台頭
      延喜の治
      地方政治と国司
      承平・天慶の乱
    4 摂関政治
      摂関の地位
      貴族の生活
      東アジアの変動
    5 国風文化
      かな文学
      浄土信仰
      国風の美術と風俗
    6 荘園と武士団
      荘園の発達
      荘園と公領
      武士団の成長
第2部 中世
  第5章 武家社会の形成
    1 院政と平氏政権
      院政の開始
      院政時代
      平氏の栄華
      院政期の文化
    2 幕府の誕生
      源平の争乱
      鎌倉幕府の成立
      将軍と御家人
      北条氏の台頭
      執権政治
    3 武士団の世界
      館とその周辺
      一族のむすびつき
      荘園領主との争い
    4 よみがえる農村
      戦乱と飢饉
      荘園の生活
      米と銭
    5 鎌倉文化
      文学の新生
      念仏の教え
      迫害をのりこえて
      新仏教と旧仏教
      芸術の新傾向
  第6章 武家社会の転換
    1 蒙古襲来
      東アジアと日本
      元寇
      徳政と悪党
    2 南北朝の動乱
      幕府の滅亡
      建武の新政
      動乱の深まり
      守護大名
    3 室町幕府と勘合貿易
      室町幕府
      倭寇の活動
      勘合貿易
    3 北山文化
      金閣と北山文化
      動乱期の文化
      集団の芸能
  第7章 下克上と戦国大名
    1 下克上の社会
      惣村の形成
      土一揆
      幕府の動揺
      応仁の乱
      市の賑わい
      座と関所
    2 東山文化
      東山と銀閣芸術
      庶民文芸の流行
      文化の地方普及
      仏教のひろまり
    3 戦国の世
      戦国大名の登場
      分国支配
      一向一揆
      京と町衆
      都市の自治
第3部 近世
  第8章 幕藩体制の確立
    1 ヨーロッパ人の来航
      ヨーロッパ人の来航
      鉄砲の伝来
      キリスト教のひろまり
    2 織豊政権
      織田信長
      豊臣秀吉
      検地と刀狩
      秀吉の対外政策
    3 桃山文化
      城の文化
      町衆の生活
      南蛮文化
    4 江戸幕府の成立
      幕府の開設
      幕府の職制
      朝廷と寺社
    5 「士農工商」
      農民の統制
      身分と帙尾
    6 鎖国への道
      家康の平和外交
      禁教と鎖国
      長崎の出島
  第9章 藩政の安定と町人の活動
    1 文治政治
      由井正雪の乱
      元禄時代
      貨幣の改鋳
      荒井は得席
    2 産業の発達
      農地の開発
      漁業と鉱業
      名産の成立
    3 町人の経済活動
      宿場と飛脚
      東回りと西廻り
      江戸と上方
      町人の活動
      貨幣と金融
    4 元禄文化
      江戸前期の文化
      儒学の興隆
      諸学問の発達
      芭蕉・西鶴・近松
      元禄の美術
      庶民の生活
  第10章 幕藩体制の動揺
    1 享保の改革
      吉宗登場
      財政の再建
      法典の整備
    2 田沼時代
      田沼意次
      蝦夷地の開拓
      飢饉と百姓一揆
    3 寛政の改革
      松平定信
      北方の警備
      大御所時代と大塩の乱
    4 天保の改革
      水野忠邦
      西南の雄藩
      近代工業のめばえ
    5 化政文化
      化政文化
      化政文学
      錦絵の流行
      生活と信仰
    6 新しい学問
      国学と尊王論
      蘭学の発達
      批判的思想
第4部 近代・現代
  第11章 近代国家の成立
    1 黒船来たる
      ペリー来航
      開国
      通商の取り決め
      国内経済の混乱
    2 攘夷から倒幕へ
      動揺する幕府
      公武合体と尊皇攘夷
      外国との衝突
      倒幕運動の高まり
      大政奉還
    3 明治維新
      戊辰戦争
      新政府の方針
      廃藩置県
    4 強国をめざして
      四民平等
      徴兵令と士族
      地租改正
      国際関係の確立
    5 殖産興業
      官営工場
      鉄道の敷設
      松方財政
    6 文明開化
      自由と権利の思想
      小学校のはじまり
      ひろまる西洋風俗
    7 士族の抵抗
      新政府への不満
      民選議員設立の建白
      西南戦争
    8 自由民権運動
      高まる国会開設運動
      明治十四年の政変
      自由党と立憲改進党
      私擬憲法
      後退する民権運動
    9 帝国議会の幕開き
      憲法の調査
      大日本帝国憲法
      初期議会の政争
  第12章 大陸政策の展開と資本主義
    1 「脱亜入欧」
      条約改正の歩み
      朝鮮を巡る対立
      日清戦争
    2 藩閥・政党・官僚
      最初の政党内閣
      立憲政友会の成立
      官僚の役割
    3 ロシアとの戦い
      義和団事変と日英同盟
      日露戦争
      日露講和条約
      韓国併合
      日米対立のめばえ
    4 すすむ工業化
      日本の産業革命
      農村の変化
      のびる鉄道
      重工業の発達
    5 社会問題の発生
      悪い労働条件
      足尾鉱毒事件
      社会運動のおこり
    6 新しい思想と教育
      国家主義の思想
      宗教界の動き
      学校教育の発展
      科学の発達
    7 文芸の新しい波
      明治の文学
      美術と演劇
      新聞の発達
      かわる国民生活
  第13章 第一次世界大戦と日本
    1 ゆれ動く世界と日本
      第一次世界大戦
      二十一ヵ条の要求
      シベリア出兵
    2 民衆の登場
      大正政変
      民本主義
      大戦景気と米騒動
    3 平民宰相
      原内閣と普選問題
      高まる社会運動
    4 国際協調の時代
      パリ平和会議
      ワシントン会議
      協調外交の展開
    5 政党政治の明暗
      護憲三派内閣の成立
      普通選挙と治安維持法
      政党政治の定着
    6 都市化と大衆化
      都市化の進行
      文化の大衆化
      学問の新傾向
      新しい文学
    7 ゆきづまった協調外交
      中国情勢の変化
      金融恐慌
      田中外交
      金解禁と昭和恐慌
      ロンドン条約問題
  第14章 軍部の台頭と第二次世界大戦
    1 孤立する日本
      満州事変
      政党内閣の崩壊
      国際連盟の脱退
    2 泥沼の戦い
      天皇機関説問題
      二・二六事件
      枢軸陣営の形成
      日中戦争
      国家総動員
    3 新しい国際秩序をめざして
      第二次世界大戦の勃発
      国内の新体制
      日独伊三国同盟
    4 太平洋戦争の勃発
      ゆきづまった日米交渉
      日米開戦
      初期の戦局
    5 日本の敗北
      戦局の悪化
      荒廃する国民生活
      戦争の終結
  第15章 現代世界と日本
    1 占領された日本
      連合国軍の日本占領
      非軍事化と民主化
      社会の混乱
      政党の復活
      日本国憲法の制定
    2 主権の回復
      冷たい戦争
      占領政策の転換
      朝鮮戦争
      平和条約・安保条約
      国連加盟
      保守・革新の対立
    3 経済成長と生活革命
      経済の繁栄
      生活革命
      自由民主党の長期政権
      文化の大衆化と国際化
    4 現代の世界と日本
      多極化する国際社会
      日中国交正常化
      国際協力と貿易摩擦
      安定成長から平成不況へ
      冷戦の終結と国際情勢
      国際貢献と55年体制の崩壊
      現代の課題



 ・ 五味 文彦・鳥海 靖(編) 『もういちど読む山川日本史』 山川出版社,2009年.

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