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hyphen - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2020-07-10 09:32

2019-12-24 Tue

#3893. grammatical punctuation と correspondence punctuation [punctuation][hyphen]

 英語の句読法 (punctuation) は機能の観点から大きく2つに分けることができる.書き言葉の文法に関する句読法 (grammatical punctuation) と,書き言葉を話し言葉に対応付ける句読法 (correspondence punctuation) である.前者は形態素,語,句,節,文などの形式的な単位において文法的な機能を(補助的に)標示するものであり,後者は音読の便などのために韻律的な情報を(補助的に)標示するものである.現代は前者の文法的機能のほうが圧倒的に優勢で,重要とされているが,歴史的にいえば句読法は主として韻律的機能を果たすために発達してきた (cf. 「#575. 現代的な punctuation の歴史は500年ほど」 ([2010-11-23-1])) .17世紀以降,韻律重視から文法重視へ重心がシフトしてきたという経緯があるが,現在でも韻律的機能が無となったわけではない.
 もう1つ,両機能にまたがるともいえる第3の区分として,hyphen を用いた "line-breaks" の機能(分綴)を加えることもできるだろう.これら3種の機能を整理してくれているのが,Cook (107) の "English punctuation" と題する表である.そちらを再掲しよう.

Grammatical punctuation
   morphemes<'> 'Milton's paradise lost'
<-> 'sensori-motor'
wordsspaces: 'God bless the child that's got its own'/'Godblessthechildthat'sgotitsown'
phrases<,> 'Policemen, like red squirrels, must be protected.'
clauses<,> 'An Englishman, even if he is alone, forms an orderly queue of one'.
<–> 'Federal work teams – split by race – finish ratchetting together a grandstand.'
<:> 'Man proposes: God disposes.'
text-sentencesCapitals plus <.> 'War is peace. Freedom is slavery. Ignorance is strength.'
Correspondence punctuation
length of pauses (according to Lowth 1775)comma: single pause
semi-colon: 2 x pause
colon: 4 x pause
full stop: 8 x pause
tone-groupsclause-separating punctuation may conform to spoken tone-groups: 'Friends, Romans, countrymen, lend me your ears.'
inner voicePunctuation may show the 'prosody of the inner voice' (Chafe 1988)
'contraction'<'> sometimes corresponds to a weak spoken form: 'he's', 'can't', ''em'
'line-breaks'
words are broken by hyphens at line-breaks according to morphemes 'trans-port' or syllables 'tran-sport'


 Cook はこのように句読法の3種の機能を区別したが,Crystal はその他の機能にも注目している.そちらについては「#574. punctuation の4つの機能」 ([2010-11-22-1]),「#3045. punctuation の機能の多様性」 ([2017-08-28-1]) の記事を参照されたい.

 ・ Cook, Vivian. The English Writing System. London: Hodder Education, 2004.

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2019-09-20 Fri

#3798. 古英語の緩い分かち書き [punctuation][writing][scribe][manuscript][distinctiones][anglo-saxon][orthography][hyphen]

 英語表記において単語と単語の間に空白を入れる分かち書きの習慣については,「#1112. 分かち書き (1)」 ([2012-05-13-1]),「#1113. 分かち書き (2)」 ([2012-05-14-1]),「#1903. 分かち書きの歴史」 ([2014-07-13-1]) を始めとする distinctiones の各記事で取り上げてきた.この習慣は確かに古英語期にも見られたが,現代のそれに比べれば未発達であり,あくまで過渡期の段階にあった.実のところ,続く中英語期でも規範として完成はしなかったので,古英語の分かち書きの緩さを概観しておけば,中世英語全体の緩さが知れるというものである.
 Baker は,古英語入門書において単語の分かち書き,および単語の途中での行跨ぎに関して "Word- and line-division" (159--60) と題する一節を設けている.以下,分かち書きについての解説.

Word-division is far less consistent in Old English than in Modern English; it is, in fact, less consistent in Old English manuscripts than in Latin written by Anglo-Saxon scribes. You may expect to see the following peculiarities.

・ spaces between the elements of compounds, e.g. aldor mon;
・ spaces between words and their prefixes and suffixes, e.g. be æftan, gewit nesse;
・ spaces at syllable divisions, e.g. len gest;
・ prepositions, adverbs and pronouns attached to the following words, e.g. uuiþbret walū, hehæfde;
・ many words, especially short ones, run together, e.g. þær þeherice hæfde.

The width of the spaces between words and word-elements is quite variable in most Old English manuscripts, and it is often difficult to decide whether a scribe intended a space. 'Diplomatic' editions, which sometimes attempt to reproduce the word-division of manuscripts, cannot represent in print the variability of the spacing on a hand-written page.


 続けて,単語の途中での行跨ぎの扱いについて.

Most scribes broke words freely at the ends of lines. Usually the break takes place at a syllabic boundary, e.g. ofsle-gen (= ofslægen), sū-ne (= sumne), heo-fonum. Occasionally, however, a scribe broke a word elsewhere, e.g. forhæf-dnesse. Some scribes marked word-breaks with a hyphen, but many did not mark them in any way.


 古英語期にもハイフンを使っていた写字生がいたということだが,この句読記号が一般化するのは「#2698. hyphen」 ([2016-09-15-1]) で述べたように16世紀後半のことである.
 以上より,古英語の分かち書きの緩さ,ひいては正書法の緩さが分かるだろう.

 ・ Baker, Peter S. Introduction to Old English. 2nd ed. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2007.

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2016-09-15 Thu

#2698. hyphen [punctuation][writing][hyphen]

 現代英語の書記にみられる句読法 (punctuation) の発達と定着は,一般に近代以降の出来事といってよい (see 「#574. punctuation の4つの機能」 ([2010-11-22-1]),「#575. 現代的な punctuation の歴史は500年ほど」 ([2010-11-23-1]),「#582. apostrophe」 ([2010-11-30-1]),「#2666. 初期近代英語の不安定な句読法」 ([2016-08-14-1])) .ハイフン (hyphen) にしても例外ではなく,広く用いられるようになり,一般化したのは1570年代以降である.実際,hyphen という呼び名が英語に現われるのは1620年辺りになってからであり,案外遅い.この語は,"together" を意味するギリシア語 huphén (hupó "under" + hén "one") がラテン語経由で英語に入ったものである.それ以前にも,この句読記号自体は用いられており,様々に呼ばれていたが,例えばその使用を重視した John Hart (c. 1501--74) は joiner と呼んでいた.
 実際,ハイフン記号の使用は写本時代の最初期から一貫して確認される.その役割も様々だったが,基本的な機能は,現代に伝わるものと同様であり,語やその一部の境目に関する種々の関係を明示することにあった.単語の内部で行またぎをする必要が生じたときには「分割記号」 (divider) の役割を果たし,複数の形態素の関連が密であり1語にまとめたい場合には「連係記号」 (linker) の役割を果たした.いずれにせよ,語の単位を明示する目的で用いられる符号である (Crystal 260--61) .
 しかし,ハイフンの正書法は,現代ですら定着したものがない.その使用には,相当程度,揺れが見られる.例えば,変種間というレベルの揺れとしても見られ,イギリス英語ではアメリカ英語よりもハイフンを多用する傾向がある.カナダ英語などでは,英米変種の中間的な振る舞いを示すともいわれる.また,個人差もあり,e-mail vs email, ice-cream vs ice cream や,flowerpot vs flower-pot vs flower pot など,揺れが激しい.通時的にも,以前は2語で書かれていたものが,後にハイフンを付され,さらに後にハイフンを省いて1語として綴られるような変化を遂げた語がいくつか確認される.例えば,type writer > type-writer > typewriter がその例であり,ほかに today, tomorrow, tonight などの to- 接頭辞をもつ語も to day > to-day > today のように,似たような経路を辿っている (Crystal 266) .

 ・ Crystal, David. Making a Point: The Pernickety Story of English Punctuation. London: Profile Books, 2015.

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2016-08-14 Sun

#2666. 初期近代英語の不安定な句読法 [punctuation][emode][printing][manuscript][shakespeare][writing][orthography][standardisation][apostrophe][hyphen]

 15世紀後半に印刷術 (printing) がもたらされた後,続く16世紀の間に標準的な正書法への模索が始まったが,その際の懸案事項は綴字にとどまらず句読法 (punctuation) にも及ぶことになった.
 先立つ中世の手書き写本の時代には,各種の句読記号が,統語意味的な目的というよりは音読のためのガイドとして様々に用いられていた.多くは印刷の時代以降に消えてしまったが,その数は30種類を超えた.現在使われているのと同形の句読記号もあったが,中世の写本ではその機能は必ずしも現代のものと同じではなかった.この中世の奔放な状況が,印刷時代の到来を経て徐々に整理へと向かい出したが,その過程は緩慢としており,初期近代英語期中にもいまだ安定を示さなかった.
 初期の印刷業者は基本的には写本にあった句読記号を再現しようとしたが,対応する活字がないものもあり,選択を迫られることも多かった.一般的には,</> (virgule) や <.> (point) は広く認められた(</> の機能は現在の <,> (comma) に相当し,1520年代から現在のような <,> に置き換えられるようになったが,印刷業者によっては両者ともに用いるものもあった).
 初期の印刷では,ほかに <:> (colon), <¶> (paragraph mark), <//> (double virgule) なども用いられ,新しい句読記号としては <( )> (parentheses), <;> (semicolon), <?> (question mark) なども導入されたが,定着には時間を要した.例えば,<;> などは,Coverdales による1538年の新約聖書の献題に現われこそするが,イングランドで用いられるようになるのは1570年代以降といってよい.
 17世紀に入っても,いまだ句読法の不安定は続いた.例えば,Shakespeare の First Folio (1623) でも,疑問符と感嘆符,コロンとセミコロンの使い分けは一貫していなかったし,アポストロフィ (apostrophe) やハイフン (hyphen) も予期しないところに現われた (ex. advan'st (= advanced), cast-him (= cast him)) .この不安定さは現代の Shakespeare の校訂にも反映しており,異なる版が異なる句読点を採用するという事態になっている.
 アポストロフィについて一言加えておこう.この句読記号は近代の新機軸であり,省略を示すために用いられ出したのは1559年からである.なお,現在のアポストロフィの用法として所有格を表わす <'s> での使用があるが,この発達はずっと遅れて18世紀のことである.
 このように,現代では正書法の一環として用法が定まっている種々の句読記号も,初期近代英語ではいまだ定着していなかった.このことは,印刷術導入の衝撃がいかに革命的だったか,印刷業者が新時代に適応するのにいかに試行錯誤したのかを示す1つの指標とみなすことができるのではないか.以上,Crystal (261) を参照して執筆した.
 関連して,「#574. punctuation の4つの機能」 ([2010-11-22-1]),「#575. 現代的な punctuation の歴史は500年ほど」 ([2010-11-23-1]),「#582. apostrophe」 ([2010-11-30-1]) も参照されたい.

 ・ Crystal, David. The Stories of English. London: Penguin, 2005.

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2014-02-26 Wed

#1766. a three-hour(s)-and-a-half flight [compound][adjective][plural][number][numeral][hyphen]

 標記のような数詞と単位を含む複合形容詞においては,単位を表わす名詞は複数形を取らないのが規則とされる.a four-power agreement, a five-foot-deep river, a ten-dollar bill, a twelve-year-old boy などの如くである.
 しかし,ときに複数形を取る例も散見され,a three-hours-and-a-half flight もあり得るし,a four years course もあり得る.Quirk et al. (Section 17.108) によれば,同種の表現として以下の4通りが可能である.

. . . in quantitative expressions of the following type there is possible variation . . .:
a ten day absence[singular]
a ten-day absence[hyphen + singular]
a ten days absence[plural]
a ten days' absence[genitive plural]


 同様に,「4年制課程」についても,"a four year course", "a four-year course", "a four years course", "a four years' course" のいずれもあり得ることになる.これらの変異形がいかにして生じてきたのか,使い分けの基準がありうるのかという問題は,通時的,理論的に興味深い問題だが,現段階では未調査である.
 この問題と関連しうる話題として注意しておきたいのは,やはりイギリス英語において,名詞の限定形容詞用法では,その名詞が複数形としてある程度語彙化している場合に,複数形の形態のままで実現されることが多いという事実だ.例えば,Quirk et al. (Section 17.109) によると,イギリス英語限定だが,次のような例がみられるという.parks department, courses committee, examinations board, the heavy chemicals industry, Scotland Yard's Obscene Publications Squad, Chesterfield Hospitals management Committee, the British Museum Prints and Drawings Gallery, an Arts degree, soft drinks manufacturer, entertainments guide, appliances manufacturer, the Watergate tapes affair.

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

Referrer (Inside): [2016-08-02-1]

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2010-11-22 Mon

#574. punctuation の4つの機能 [punctuation][apostrophe][hyphen]

 現代英語の書き言葉では punctuation 「句読法」の果たす役割は非常に大きい.period, comma, colon, semicolon, hyphen, apostrophe, question mark, exclamation mark, quotation marks をはじめ,asterisk, italics, bold type, capitalisation, indentation なども広く punctuation の構成要素と考えてよい.MLA Handbook for Writers of Research PapersThe Chicago Manual of Style などでは句読法の規範が細かく示されており,実際に物書きは句読法にたいそうこだわるのが通例である.そこまで厳しくせずとも,一般の書き手や読み手も,句読法が書きやすさや読みやすさに関係することを知っており,それなりの役割を果たしていることを認識している.
 Crystal (278) によれば,punctuation には少なくとも4つの機能がある.

 (1) grammatical: "to enable stretches of written language to be read coherently, by displaying their grammatical structure"
 (2) prosodic: "representing the intonation and emphasis of spoken language"
 (3) semantic/rhetorical: "highlight semantic units or contrasts present in the text but not directly related to its grammatical structure"
 (4) semantic/graphic: "add a semantic dimension, unique to the graphic medium, which it would be difficult or impossible to read aloud"

 punctuation といってすぐに思いつくのは,(1) の grammatical な用途だろう.文という統語的な単位を区切るのに period を用いる,等位関係を示したり語句を列挙するのに comma を用いる,語と語を区別するのに space を用いるなどが punctuation の典型的な用法だろう.
 (2) の prosodic な機能とは,question mark で上昇調を示すであるとか,exclamation mark で語気を表現するなどである.
 (3) の semantic/rhetorical は広い意味で文体的な機能と考えてもよいかもしれない.semicolon で節を列挙することによって演説調を表現したり,韻文で行分割や stanza 形式の表示法を利用するなどがこれに当たる.
 (4) は話し言葉に対応するものがないが意味に貢献する機能で,「いわゆる」を表わす scare quotes や,強調を示すために *VERY IMPORTANT* などとアステリスクで挟んだり大文字化する技法などが例となる.
 電子メール文化が徐々に熟してきて punctuation にも様々な新しい慣用が出現しつつある.言語の変化は,言語を構成する主要な components ( see [2010-05-09-1] ) のみならず,punctuation のような周辺的な component でも確実に生じている.では,過去にはどうだったか.もちろん,英語史においても punctuation は常に変化してきた.その概要は明日の記事で.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

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