「#6150. 「英語史の塔」が建っています」 ([2026-02-27-1]) にて「英語史の塔」 (tower_of_hel) が建った経緯について触れました.一見すると,研究社から出版されている英語史関連の既刊書・新刊書を積み上げただけの写真と思われたかもしれません.しかし,あの4冊の並びを眺めてみると,そこには英語史という分野に迫る上で,実に合理的な構造が隠されていることに気づきます.今回の記事では,その構造について解き明かしてみたいと思います.
英語史という広大な領域に足を踏み入れる際,その入口は決して一つではありません.学習者の関心や動機に応じて,大きく分けて2つのルートが存在します.
第1のルートは「全体から入る」アプローチです.このアプローチの土台となるのが,2016年に出版された拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』です.本書では,英語史通史は第1章でさらっと概観するにとどめ,残りはトピック別に,すなわち音韻・綴字史,文法史,語彙史,英語社会史といった分野別の歴史を通じて,英語史的な「ものの見方」というレンズを提示することに主眼を置いています.目の前の英語を正誤で裁くのではなく,変化の結果として捉える思考のフレームワークを構築するための1冊と言えます.
第2のルートは「単語から入る」アプローチです.これに適しているのが,昨年6月に刊行された『英語語源ハンドブック』です.身近な語の語源にまつわるエピソードは,それ自体が独立しておもしろく,どこからでも読み始めることができます.1語1語の背景にあるドラマに触れるうちに,英語という言語がいかに多様な歴史を背負っているかを肌身で実感することになります.単語間の横のつながりにも気づく機会が多いでしょう
しかし,これら入口の本だけでは,まだ「塔」の全貌は見えてきません.そこからさらに一歩踏み込むための深化のプロセスが必要です.
英語史の全体像,英語史の見方という骨格を習得した学習者が次に進むべきは,体験としての英語史です.そこで力を発揮するのがこの2月25日に刊行された『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』です.概説を通じて得た知識を,実際の古英語や中英語の原文にぶつけてみる.音や形を自らの目で確かめる作業を通じて,歴史は抽象的な知識から,確かな手応えを伴う身体的な経験へと昇華されます.
一方で,単語と語源のおもしろさに目覚めた学習者が,その探究を縦に掘り下げたいと思ったときに必須となるのが,『英語語源辞典』新装版(2024年)です.『英語語源ハンドブック』で得た興味を,借用経路や形態変化の詳細,精緻な語形成の分析へとつなげていく.1語1語の背後に潜む数百年の時間を徹底的に掘り下げるこの作業は,まさに学問的な醍醐味に溢れています.
これら4冊の関係を整理すると,以下のようになります.
・ 全体ルート:思考のレンズを得る(『はじめての英語史』) → 原文で身体化する(『古英語・中英語初歩』)
・ 単語ルート:語源のおもしろさを知る(『英語語源ハンドブック』) → 1語1語を徹底的に深掘りする(『英語語源辞典』)
興味深いのは,どちらのルートから登り始めても,結局はもう一方のルートと交差する点にあります.単語を深く追えば必ず言語全体の歴史的背景に行き着きますし,全体を学べば必ず具体的な語の変化という事実に立ち返ることになります.英語史の学びは,平面的な移動ではなく,螺旋状に上昇していく循環構造です.本当に「塔」らしく見えてきたのではないでしょうか.
前回の記事で紹介した写真は,まさにこの立体的な学びの構造を可視化したものと捉えることができます.土台があり,横の広がりがあり,縦の高さと深さがある.これらが組み合わさって初めて,「英語史の塔」は安定して自立します.
どこからこの塔を登り始めるかは,読者の皆さん次第です.以下にまとめます.
1. まず英語史の全体像を俯瞰したいなら『はじめての英語史』から
2. 単語の語源や語彙のつながりに惹かれるなら『英語語源ハンドブック』から
3. 過去の英語の響きを直接聴きたいなら『古英語・中英語初歩』へ
4. 単語の語源を本格的に深掘りしたいなら『英語語源辞典』へ
英語史の入門者であれば1か2をお薦めしますが,すでに学びを始めている方は,心の赴くままにどこから始めても構いません.これら4冊は互いに補完し合い,行き来することで皆さんの「英語史」をより立体的なものにしてくれるはずです.
私は「英語史をお茶の間に」をモットーとしています.専門性の追求と親しみやすさは,決して矛盾するものではありません.「英語史の塔」の4冊は,その理想を具現化する1つの形です.塔は眺めるための飾りではなく,より遠く,より深くを見渡すための場所です.ぜひ,ご自身に合った登り方を見つけ,英語という言語の新しい景色を楽しんでいただければと思います.
全4冊へのアクセスは,研究社公式のこちらのHPが便利です.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

昨日3月1日(日)の朝日新聞朝刊サンヤツ広告に,研究社から出版されている4冊が掲載されました.最初の2冊は,ここしばらく私自身が推しに推してきた『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』と『英語語源ハンドブック』です.前者はつい先日,2月25日に刊行されたばかりの本,後者は昨年6月15日に刊行され3重版となっている本です.
今回この2冊が並んで掲載されたことには,「英語史をお茶の間に」届けようと日々hel活を展開している者として,感慨を覚えます.というのは,2冊は一見すると別々の目的をもつ本に見えるかもしれませんが,実は英語史という「塔」を登る上で,興味深い関係で結ばれているからです(cf. 「#6150. 「英語史の塔」が建っています」 ([2026-02-27-1])).
近々の記事で詳しく解き明かす予定ですが,英語史への入口には「全体から入るルート」と「単語から入るルート」の2つがあると考えています.『英語語源ハンドブック』は,身近な単語のエピソードから入る「単語ルート」の強力な案内人です.一方,『古英語・中英語初歩』は,英語史の骨格を学んだ者が次に進むべき「全体ルート」の深化プロセス,すなわち原文を通じた身体的経験を得られる1冊です.
この2冊は良い具合に交わります.『ハンドブック』で単語の語源に魅了されたのであれば,その語が生まれた時代にあって,どのような響きをもっていたのかを知りたくなるはずです.すると,自然と『初歩』の原文へと導かれていくでしょう.
逆に,『初歩』で古英語の格変化や中英語の綴字に悪戦苦闘している学習者が,個々の語の背景にあるドラマを知れば,その学習は彩り豊かなものへと変わります.
つまり,この2冊は,語源という「点」の知識を,文献という「面」の経験へと繋ぐ,あるいはその逆へと橋渡しする関係にあります.ミクロからマクロへ,そしてマクロからミクロへ.このクロスオーバーこそが,英語史の学びを立体的なものにしてくれるのです.
皆さんにおかれましては,以上の関係を意識しつつ,2冊の間をぜひ行き来してみてください.英語史のさらなる魅力に気づくことになるはずです.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
おかげさまで『英語語源ハンドブック』や『英語語源辞典』の認知度が高まってきている.語源というものは,何語であっても,人を引きつけるものである.人は言葉を道具として使いこなせるばかりか,その道具について知りたい,語りたい生き物だからだ.
しかし,辞典やハンドブックにみられる記述は,当然のことながら,最初から知られていたわけでもないし,記されていたわけでもない.語源の専門家が調査して初めて得られた知識が,たいていの場合にコンパクトに提示されているということである.言い方をかえれば,語源的知識は「所与」のものではない.所与のように見えるかもしれないが,そうではない.
OED の語源欄の編集に関わっている Durkin (ix) が,語源学の入門書 The Oxford Guide to Etymology のイントロで,"About this book" と題する1節を書いている.抜き出して読んでみよう.
Etymologies appeal to people with a very wide variety of interests and intellectual backgrounds. A very few people, such as myself, spend most of their time researching etymologies. A slightly larger number do so very occasionally. Many, many more people look at etymologies, but have never researched any themselves. Some people will never even have thought of etymologies as things which need to be researched. Particularly when etymologies are encountered in the compressed form found in many dictionaries, they can seem to be a given, rather than the (often very tentative) results of extensive research.
This book is intended for anyone who has taken the important first step of realizing that etymologies are the result of research, and would like to discover something about the nature of that research, and the principles and methodologies which underlie it.
『英語語源ハンドブック』を通読するなどして英単語の語源に十分に親しんだ方で,かつ語源が所与のものではないことを認識した上で,専門家がどのように語源を探るものなのかを部分的に追体験したい方に,お薦めしたい1冊である.歯ごたえはあるかもしれないが,英語史や歴史言語学についても同時に学べる点でもすぐれた書籍だ.語源学の楽しさと厳しさを知りたい方は,ぜひ!

・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ Durkin, Philip. The Oxford Guide to Etymology. Oxford: OUP, 2009.

今年度は月1回,朝日カルチャーセンター新宿教室で英語史講座を開いています.シリーズタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語」です.日常的でありながらも深い歴史やいわくありげな背景をもっている英単語を毎回1つ選び,『英語語源辞典』(研究社)や『英語語源ハンドブック』(研究社)等の記述を参照しながら,その単語の魅力に迫り,同時に英語史のダイナミズムをも感じていただきます
2月28日(土)の講座は冬期クールの第2回となります.今回取り上げるのは,あまりに多義・多機能で正体が何なのかが分からなくなりそうな that という単語に注目します.1音節の小さな語ですが,ある意味で英文法を背負っているかのような八面六臂の活躍.その起源と発展をたどると,この単語の理解が増し,愛着も湧いてくること間違いなしです.
以下,that をめぐってどんな論点があるのか,ブレスト風に書き出してみます.
・ Is that that that that that that refers to? / That that is is that that is not is not is that it it is.
・ that と定冠詞 the の関係は?
・ 指示詞の th- と疑問詞の wh- の関係は?
・ 直示性の単語たち:this, these, that, those
・ this 単独では人を指せるけれど,that 単独だと失礼になるのはなぜ?
・ those who などと those 人々を指し得るのはなぜ?
・ I think that . . . . などの that 節はいかにして生まれたか?
・ ゆるい副詞節を導く that
・ 関係代名詞の that は,他の関係代名詞と何が異なるのか?
・ that の「省略」,あるいは虚辞の that について
ほかにも論点は挙がってくるものと思われます.that のすべてを90分で語り尽くすことはできませんが,歴史をたどることで,その魅力をあぶり出したいと思います.
講座への参加方法は,今期もオンライン参加のみとなります.リアルタイムでの受講のほか,2週間の見逃し配信サービスもあります.皆さんのご都合のよい方法でご参加いただければ幸いです.開講時間は 15:30--17:00 となっています.講座と申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.
なお,冬期クールの第3回は以下の通りの予定です.春に向けて,英語史の学びを盛り上げていきましょう!
・ 第12回:3月28日(土) 15:30?17:00 「be --- 英語の「存在」を支える超不規則動詞」
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

英語史研究者の唐澤一友さんによる英語史の名著『英語のルーツ』が文庫となって帰ってきました.私も「#5830. 英語史概説書等の書誌(2025年度版)」 ([2025-04-13-1]) など,英語史関連書籍を推薦する際には,いつも定番の1冊として挙げている書籍です.
本書は,もともと2011年に春風社より出版されており,後に増刷もされてきましたが,ある段階から在庫が切れて書店で入手することができなくなっていました.図書館で借りる,あるいは古書店で購入する,などの方法に頼らざるを得ず,推薦したくてもしにくい状況にありましたが,今回,筑摩書房の〈ちくま学芸文庫〉より復刊されるという朗報を受け,英語史界にいる者として嬉しく思います.たいへん有意義な復刊で,本ブログを定期的にお読みいただいている皆さんにお勧めしたい1冊です.
本書は英語史の本なのですが,類書よりも「広い」意味での英語史の本と受け取ってよいかと思います.序章を除いて5章立ての本なのですが,最初の3章までは英語前史というべき「印欧祖語」や「印欧語族」の話題で占められているのです.英語史の本としては希有な構成といってよいでしょう.その点では玄人好みする本ともいえ,他の入門書を数冊読んでからトライするのがよいかとも思われますが,現代英語を意識した筆で書かれているために,おもいのほか読みやすいです.
章立てを示すと「序章 英語発達史概観」「第1章 インド・ヨーロッパ祖語民族の言語・文化・神話」「第2章 英語の語源と印欧語比較言語学」「第3章 印欧諸語の中の英語」「第4章 古英語から現代英語まで」「第5章 文字と綴りのルーツ」となります.「狭い」意味での英語史は,第4章に凝縮されていることになります.今回刊行された文庫版には,オリジナルにはない節も書き加えられていますので,オリジナル版の既読者にも再読をお薦めします.
著者の唐澤さんは,昨年6月に刊行された『英語語源ハンドブック』(研究社)制作チームの仲間ということもあり,共著者の小塚良孝さんと私との3人で,文庫化のお祝いを兼ねて,先日オンラインで「居酒屋KKH」を開催し,そこで heldio 対談を収録しました.2月13日に「#1720. 『英語のルーツ』文庫化記念 --- 唐澤一友さんとの対談 from 居酒屋KKH」として配信しましたので,ぜひ著者の生の声をお聴きいただければ.
著者の唐澤さんご自身も,最近 X アカウント @KazuKarasawa で本書に関連する話題を投稿しているので,ぜひフォローしてみてください.
・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉,2026年.
・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 春風社,2011年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
1月31日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の第10回が,冬期クールの第1回として開講されました.テーマは「very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」でした.
very といえば,最も日常的で無標な強意語 (intensifier) と認識されていると思います,あまりに卑近な単語なので深く考えたこともないかもしれませんが,英語史的にも様々な観点から議論できる,話題の尽きない語彙項目です.講義では,very の起源と発展をたどり,他の類義語と比較し,強意語という語類の特異な性質に迫りました.濃密な90分となったと思います.
この朝カル講座第10回の内容を markmap によりマインドマップ化して整理しました.復習用にご参照いただければ.

なお,この朝カル講座のシリーズの第1回から第9回についてもマインドマップを作成してるので,そちらもご参照ください.
・ 「#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-05-10-1])
・ 「#5887. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第2回「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-06-09-1])
・ 「#5915. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第3回「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-07-07-1])
・ 「#5949. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第4回「but --- きわめつきの多義の接続詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-08-10-1])
・ 「#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-09-07-1])
・ 「#6013. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第6回「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」をマインドマップ化してみました」 ([2025-10-01-1])
・ 「#6041. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第7回「I --- 1人称単数代名詞をめぐる物語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-11-10-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6098. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第9回「one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」をマインドマップ化してみました」 ([2026-01-06-1])
次回の第11回は2月28日(土)で,主題は「that --- 指示詞から多機能語への大出世」となります.開講形式は引き続きオンラインのみで,開講時間は 15:30--17:00 です.ご関心のある方は,ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の公式HPより詳細をご確認の上,お申し込みいただければ幸いです.

先週の月曜日の「#6125. heldio/helwa リスナー sorami さんによる『英語語源ハンドブック』のクイズ・シリーズが開始 --- 中高生のための英語史」 ([2026-02-02-1]) に引き続き、嬉しいお知らせです.sorami さんが、『英語語源ハンドブック』(研究社)をベースにした note 記事の第2弾を公開されました.「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ#2」です.
今回もラインナップが充実しています.祈願文 God be with ye! から生まれた挨拶表現や,history と対をなす2重語 (doublet) の話題など,英語史の定番であり,かつ学習者の「なぜ?」に直球で応える良質な問題が揃っています.
「青りんご」問題も,色彩の文化差を考えさせる良問ですね.現代的な話題への目配りも欠かしません.SNS でおなじみの lol や,ポリティカル・コレクトネス (political_correctness) の文脈で語られる職業名の問題など,英語という生きた言語の背後にある歴史的・社会的変化を自然に学べるクイズのラインナップになっています.
sorami さんは,今回も記事の結びで,「授業の小ネタ,ウォームアップなどに自由に使っていただければ幸いです」と述べられています.全国の英語教員の皆さん,ぜひこの宝の山を活用してみてください.授業の冒頭で例えば God be with ye! の小ネタを添えるだけで,生徒たちの単語に対する眼差しも変わるのではないでしょうか.
「英語史をお茶の間に」ならぬ「英語史を教室に」.こうした活動を通じて,英語史的な視点が広がっていくことを願っています.sorami さん,第3弾も期待しております!
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

1月28日,heldio/helwa リスナーの sorami さんが note 上で「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」と題するシリーズを開始されました.昨年6月に出版された『英語語源ハンドブック』(研究社)に基づいた英単語の語源に関するクイズです.「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ#1~『英語語源ハンドブック』より~」をご覧ください.
訪れてみればお分かりになると思いますが,すばらしい教材です.まず,出題のラインナップが絶妙です.animal から○○○への展開,business のなかに隠れている別の単語を探させるという発想,さらには percent, centimeter, century に共通する cent という部品への注目など,中学生が日々接している英単語が,実は深い歴史的な根っこでつながっていることを発見させる構成になっています.
ほかに cultivate(耕す)と culture(文化)のつながりは,英語語源の定番の話題ではありますが,それを「土を耕す」から「人の心を耕す」への意味変化として提示することで,中学生の知的好奇心がおおいに刺激されることと思います.解答では日本語の「培う」の語源にも触れている点など,比較語源学的な視点も盛り込まれており,言語への感度を高める工夫が随所に凝らされています.
私は常々,英語史という分野は英語教育との相性が抜群であると感じています.文法規則の丸暗記に疲れ果てた学習者にとって,語源的な背景を知ることは,単なる暗記の負担を軽減するだけでなく,言語そのものに対する愛着を育むきっかけとなるからです.sorami さんのこの試みは,まさにその理念を具現化した「授業で使える小ネタ」の宝庫です.
全国の小中高のお英語教員の皆さんにも,ぜひこの記事を訪れていただければと思います.そして,記事の最後に「授業の小ネタやウォームアップなど自由に使っていただければ幸いです」とある通りですので,ぜひご活用ください.また,sorami さんのように,『英語語源ハンドブック』をもとに自らクイズを作成したり,あるいはハンドブックを片手に授業の導入を工夫したりといった,独自の試みを始めてみてはいかがでしょうか.「英単語って,実はこんなに繋がっているんだ!」という生徒の驚きは,教える側にとっても大きな喜びとなるはずです.
sorami さんの note シリーズの今後の展開を楽しみにするとともに,読者の皆さんもぜひこの「語源で学ぶ,語源で教える」の輪に加わっていただければ.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

今年度は月1回,朝日カルチャーセンター新宿教室で英語史講座を開いています.シリーズタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語」です.英語史的に厚みと含蓄のある英単語を1つ選び,そこから説き起こして,『英語語源辞典』(研究社)や『英語語源ハンドブック』(研究社)等の記述を参照しながら,その英単語の歴史,ひいては英語全体の歴史を語ります.
1週間後,1月31日(土)の講座は冬期クールの初回となります.今回取り上げるのは,英語学習者にとって(そして多くの英語話者にとっても)最も馴染み深い副詞の1つでありながら,その来歴に驚くべき変遷を隠し持っている very です.
私たちは普段,何気なく「とても,非常に」という意味で very を使っています.機能語に近い役割を果たす,ごくありふれた単語です.しかし,英語史の観点からこの語を眺めると,そこには「強調」という人間心理につきまとう,激しい生存競争の歴史が見えてきます.以下,very をめぐって取り上げたい論点をいくつか挙げてみます.
・ 高頻度語の very は,実は英語本来語ではなく,フランス語からの借用語です.なぜこのような基礎的な単語が借用されるに至ったのでしょうか.
・ フランス語ではもともと「真実の」を意味する形容詞 (cf. Fr. vrai) であり,英語に入ってきた当初も形容詞として用いられていました.the very man 「まさにその男」などの用法にその痕跡が残っています.これがいかなるきっかけで強意の副詞となり,しかもここまで高頻度になったのでしょうか.
・ 強意語には「強意逓減の法則」という語彙論・意味論上の宿命があります.強調表現は使われすぎると手垢がつき,強調の度合いがすり減ってしまうのです.
・ 英語史を通じて,おびただしい強意語が現われては消えていきました.古英語や中英語で使われていた代表的な強意語を覗いてみます.
・ 多くの強意語が消えゆく(あるいは陳腐化する)なかで,なぜ very は生き残り,さらに現代英語においてこれほどの安定感を示しているのでしょうか.大きな謎です.
・ 一般的に「強調」とは何か,「強意語」とは言語においてどのような位置づけにあるのかについても考えてみたいと思います.
このように,very という一見単純な単語の背後に,形容詞から副詞への品詞転換,意味の漂白化,そして類義語との競合といった,英語語彙史上ののエッセンスが詰まっています.このエキサイティングな歴史を90分でお話しします.
講座への参加方法は,今期もオンライン参加のみとなります.リアルタイムでの受講のほか,2週間の見逃し配信サービスもあります.皆さんのご都合のよい方法でご参加いただければ幸いです.開講時間は 15:30--17:00 となっています.講座と申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.
なお,冬期クールのラインナップは以下の通りです.2026年の幕開けも,皆さんで英語史を楽しく学んでいきましょう!
- 第10回:1月31日(土) 15:30?17:00 「very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」
- 第11回:2月28日(土) 15:30?17:00 「that --- 指示詞から多機能語への大出世」
- 第12回:3月28日(土) 15:30?17:00 「be --- 英語の「存在」を支える超不規則動詞」
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
日本英文学会の編集する学術誌『英文学研究』の第103巻(2026年)に,拙著(家入葉子・堀田隆一共著)『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)の書評が『英文学研究』に掲載されました.評者は愛知教育大学の小塚良孝氏です.
4ページ分の丁寧な書評を賜りました.小塚氏には,本書の刊行直後にも関連する研究発表会で司会をしていただくなど,お世話になりました.この場を借りて,改めて感謝申し上げます.
書評では,本書が意図した「文献学と英語史研究の融合」という視点や,近年の研究動向の整理について,評価していただきました.特に,伝統的な英語史研究における「古英語・中英語・近代英語という時代区分」「形態論・音韻論等の分野区分」「共時性と通時性という視点の区分」といった境界線を,絶対視せずに柔軟に乗り越えることの必要性を本書が説いている点について,的確に言及していただきました.これから英語史を志す学生や若手研究者にとっても,またすでに第一線で活躍されている研究者にとっても,本書が提示する見取り図が有用であることを認めていただいた形です.『英文学研究』がお手元にある方は,ぜひ pp. 226--30 の書評をご一読いただければ幸いです.
さて,ここで改めて,本書『文献学と英語史研究』について紹介しておきたいと思います.本書は,2023年1月に開拓社の最新英語学・言語学シリーズの第21巻として出版されました.
本書の最大の目的は,1980年代以降の約40年間にわたる英語史研究の動向を整理し,今後の展望を示すことにあります.英語史研究は,コーパス言語学の発達や隣接分野との連携により,この数十年で大きく変貌を遂げました.かつての「文献学」 (philology) の伝統と,現代的な「言語学」 (linguistics) の手法がいかに融合し,新しい知見を生み出しているのか.その最前線を,音韻論,綴字,形態論,統語論といった主要な分野ごとに詳説しています.本書の構成は以下の通りです.
・ 第1章 英語史研究の潮流
・ 第2章 英語史研究の資料とデータ
・ 第3章 音韻論・綴字
・ 第4章 形態論
・ 第5章 統語論
・ 第6章 英語史研究における今後の展望にかえて
・ 参考文献
・ 索引
本書に関連しては,hellog でも過去に多くの記事を書いてきました.以下に関連記事へのリンクを掲載しますので,あわせてご参照ください.
・ 「#4985. 新著が出ます --- 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.」 ([2022-12-20-1])
・ 「#5023. 新著『文献学と英語史研究』で示されている英語綴字史研究の動向と展望」 ([2023-01-27-1])
・ 「#5024. 「通史としての英語史」とは? --- 新著『文献学と英語史研究』より」 ([2023-01-28-1])
・ 「#5158. 家入葉子・堀田隆一著『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)を改めて紹介します」 ([2023-06-11-1])
また,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」や,YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも,関連する話題をいくつかお届けしています.共著者の家入葉子先生(京都大学)との対談回もあります.本書の舞台裏や,英語史研究への熱い思いが語られていますので,未聴の方はぜひチェックしてみてください.
・ Voicy heldio: 「#609. 家入葉子先生との対談:新著『文献学と英語史研究』(開拓社)を紹介します」
・ Voicy heldio: 「#611. 家入葉子先生との対談の第2弾:新著『文献学と英語史研究』より英語史コーパスについて語ります」
・ Voicy heldio: 「#582. 「境界を意識し,境界を越える」 --- 新著『文献学と英語史研究』が伝えたいこと」
・ YouTube: 「家入葉子・堀田隆一『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)のご紹介 --- 言語学も同期する中心から周辺へ?」
今回の小塚氏による書評を機に,再び本書が英語史に関心を寄せる方々の目に留まり,新たな研究の種が蒔かれることを願っています.

・ 小塚 良孝 「書評:家入葉子・堀田隆一著 『文献学と英語史研究』 開拓社 2023年 xii + 251pp.」 『英文学研究』 第103巻,2026年.226--30頁.
・ 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2023年.

昨年の6月に『英語語源ハンドブック』が研究社より刊行されてから,早いもので7ヶ月ほどが経ちます.おかげさまで多くの方に手に取っていただき,好意的な反響をいただいております.さて,本書は「ハンドブック」と銘打ってはいますが,辞書のように引くだけでなく,通読していただくことも想定した作りになっています.この「通読」に挑戦する読者が増えているようです.
さらにありがたいことに,この「通読」のプロセスや成果を,ブログや SNS などで発信してくださる方々がいらっしゃり,少しずつ増えてきています.ウェブ上に展開するこれらのコンテンツは,これから本書を手に取る方,あるいは現在通読中の方にとって,よい伴走者となると思います.今回は,それぞれのコンテンツ作成者の方々への感謝の気持ちも込めて,現在ウェブ上で確認できる関連コンテンツをいくつか紹介したいと思います.
まず,教育的な視点からの通読シリーズです.
・ 「研究社の英語語源ハンドブックの Word of the Day」 (ari さん blogspot)
・ 「小学生と学ぶ英語史」 (みーさん note)
ari さんの記事は英語教員向けの「大人のための」通読シリーズとなっており,現場の先生方にとっても有益な情報が満載です.一方,みーさんは「小学生のための」通読シリーズという,これまで誰も足を踏み入れたことのない領域に挑戦されています.英語史の裾野が広がっていることを実感し,感銘を受けています.
続いて,ゲルマン語比較言語学的な観点から本書を読み解くという,硬派かつユニークな試みを紹介します.
・ 「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語」 (ykagata さん Hatena Blog)
・ 「『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語」に便乗して眺めるスウェーデン語」 (り~みんさん note)
ykagata さんはドイツ語の観点から,そしてそれに呼応する形で,り~みんさんはスウェーデン語の観点から英語語源を眺めるという新機軸を展開されています.英語,ドイツ語,スウェーデン語は同じゲルマン語派 (Germanic) の姉妹言語なので,これらを比較対照することは語源学習において非常に有効です.
プロフェッショナルな視点からの感想や書評も見逃せません.
・ 「#翻訳者英語語源ハンドブック1日1語感想」 (天野優未さん X)
・ 「【2025年のベスト本】『英語語源ハンドブック』について,思ったことを語り尽くす.」 (やるせな語学さん)
翻訳者である天野さんからは,常に日英語を対照している翻訳のプロとしての鋭いコメントをいただいています.また,やるせな語学さんには,大変丁寧な書評を執筆していただきました.著者が意図した細部まで読み込んでいただいていることに感謝いたします.
それから,身内ではありますが khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーによる活動も紹介させてください.
・ 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」 (khelf 寺澤志帆さん)
こちらは『英語語源辞典』が主テキストではありますが,『英語語源ハンドブック』への言及も頻繁になされています.綴字の歴史という観点から語源を深掘りする際に非常に参考になります.
最後に,版元である研究社による公式コンテンツです.
・ 「英語語源クイズ」 (研究社 note)
本書の編集者によるクイズ形式の記事です.英語史や語源の授業,あるいは英語学習のちょっとした余興などに,大いに活用できる内容となっています.
私としては『英語語源ハンドブック』を通読するというムーヴメントを作りたいと密かに(公に?)願っています.上記の方々はその先駆者たちです.語源の学習は,1語1語の背景にある歴史や文化を紐解く旅のようなものです.1人で黙々と進むのも楽しいものですが,こうしてウェブ上で自身の学びや発見を共有することで,その旅はより豊かなものになるはずです.
これらに続く通読挑戦者が現われ,少しでも多くの方が関連コンテンツを発信してくれるようになれば,英語史の楽しみもさらに広がっていくことと思います.皆さんも,ぜひこの「通読ムーヴメント」に参加してみませんか?
1月3日付けで,やるせな語学さんによる書評記事「【2025年のベスト本】『英語語源ハンドブック』について,思ったことを語り尽くす.」が公開されています.
昨年の6月に刊行された『英語語源ハンドブック』 (hee) について,年明け早々,身の引き締まるような書評をいただきました.評者の「やるせな語学」さんは.英語学習や語源に関する記事を精力的に発信されていますが,今回の書評は単なる紹介にとどまらず,本書の意義を英語教育・学習の広い文脈に位置づけて論じてくださっています.
書評では,まず昨今の「語源本」ブームに触れつつ,学術的裏付けに乏しい「語源の無免許運転」状態の教材が散見される現状を憂いています(ただし,そのなかで学習と研究の目的が異なる件についても触れながらフェアな議論がなされており,私も深く同意しました).その上で,専門家によって書かれた本書が,正しい知識へのアクセスを提供しつつ,「言語の体系」としての語源を学ぶ機会を与えていると評価していただきました.『ハンドブック』の著者たちが目指したのは,単なる暗記の道具としての語源ではなく,音変化や意味変化といった「言語変化」のダイナミズムを読者に感じてもらうことでしたので,この評は本当にありがたく思います
評者が特に注目してくださったのが,「基本1000語」という本書のコンセプトです.本書は JACET8000 に基づく基本語を徹底的に掘り下げるアプローチを採っています.「この1000語の威力がすごい」という趣旨の評者の指摘は,まさにその通りでして,著者陣も後から驚いたほどでした.基本語だからこそ,そこには英語史の根幹に関わる音変化,意味変化,借用などの歴史が凝縮されています.一見無味乾燥に見える基本語彙の背後に,4次元的な歴史の広がりを見出していただいたたことに感謝します.
また,書評の後半で述べられている「注意したいこと」にも共感を覚えました.語源はあくまで再建された理論的構築物に依存するものであり,語源不詳のケースも多々あるので,決して「神様」などではないということです.そして,古典語学習のハードルの高さと重要性.これらは,英語史を学ぶ者が常に心に留めておくべき事柄だと思いました.「語源を鞘に収める選択」という表現に,評者の並々ならぬ見識を感じました.
最後に,本書への要望として「全単語の索引(書籍版)」や「接辞のまとめ」を挙げられています.こちらは本書制作関係者の間で情報共有したいと思います.DL版の索引は昨年末に公開されましたが,やはり紙の書籍として完結していることの価値は大きいという指摘は確かにその通りだと思います.
ともあれ,『英語語源ハンドブック』が,このように熱量のある読者に届き,深く読み込まれていることは,この上ない喜びです.本書の親本ともいえる『英語語源辞典』 (kdee) と合わせて,ぜひこの「やるせな語学」さんの書評も熟読していただければと思います.
そして,評者も推している『英語語源ハンドブック』通読,皆さんもぜひ始めてみてください!
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
12月20日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の第9回が,秋期クールの第3回として開講されました.テーマは「one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」でした.
あまりに当たり前の単語ですが,英語史的には実に奥の深い語彙項目で,じっくり鑑賞するに値する対象です.いかにして基本的な数詞の役割から,文法化を経て不定冠詞となり,不定代名詞となり,支柱語となったのでしょうか.基本語だけに,そこから語形成を経て生じた関連語も多く,その1つひとつもやはり興味深い歴史をたどっています.実際,講義の90分では語りきれないほどでした.それほど one の世界は深くて広くて深いのです.
この朝カル講座第9回の内容を markmap によりマインドマップ化して整理しました.復習用にご参照いただければ.

なお,この朝カル講座のシリーズの第1回から第8回についてもマインドマップを作成してるので,そちらもご参照ください.
・ 「#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-05-10-1])
・ 「#5887. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第2回「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-06-09-1])
・ 「#5915. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第3回「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-07-07-1])
・ 「#5949. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第4回「but --- きわめつきの多義の接続詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-08-10-1])
・ 「#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-09-07-1])
・ 「#6013. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第6回「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」をマインドマップ化してみました」 ([2025-10-01-1])
・ 「#6041. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第7回「I --- 1人称単数代名詞をめぐる物語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-11-10-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
シリーズは次回より冬期クールに入ります.次回の第10回は新年1月31日(土)に「very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」と題して開講されます.開講形式は引き続きオンラインのみで,開講時間は 15:30--17:00 です.ご関心のある方は,ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の公式HPより詳細をご確認の上,お申し込みいただければ幸いです.
明けましておめでとうございます.2026年の幕開けです.本年も「英語史をお茶の間に」をモットーに,皆様の知的好奇心を刺激する「hel活」 (helkatsu) を力強く推進していきます.
日々の更新を続けるこの「hellog~英語史ブログ」に加え,音声メディアの Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」,heldio のプレミアム版でディープなhel活コミュニティでもある「英語史の輪 (helwa)」,そして YouTube 「いのほた言語学チャンネル」もあわせてよろしくお願いいたします.
さて,新年の恒例行事として,昨年1年間に執筆・公開された hellog 記事のなかから,アクセスの多かった上位50件を振り返ります.過年度の振り返りについては,「#5728. 2024年 hellog でよく読まれた記事ベスト50」 ([2025-01-01-1]) ほか,過去の元日記事にリンクをまとめてあります.
以下が,2025年に公開された記事のランキング(1位から50位まで)です.
・ 「#5738. 516番目の through を見つけました」 ([2025-01-11-1]) (963回閲覧)
・ 「#5762. 品詞とは何か? --- 日本語の「品詞」を辞典・事典で調べる」 ([2025-02-04-1]) (800回閲覧)
・ 「#5745. アルファベットの文字頻度」 ([2025-01-18-1]) ([2025-01-18-1]) (558回閲覧)
・ 「#5831. 2025年度の「英語史」講義が始まります --- 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目」 ([2025-04-14-1]) (442回閲覧)
・ 「#5736. アイルランド語 (Irish) とアイルランド英語 (Irish English) はまったく異なる言語である」 ([2025-01-09-1]) (349回閲覧)
・ 「#5860. 「ん」の発音の実現形」 ([2025-05-13-1]) (250回閲覧)
・ 「#5832. なぜ古英語の語順規則は緩かったのか? --- 語順の2つの原理から考える」 ([2025-04-15-1]) (234回閲覧)
・ 「#5973. 「いのほた本」が出ます! --- 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』(ナツメ社)」 ([2025-09-03-1]) (228回閲覧)
・ 「#5959. 2025年度の夏期スクーリング「英語史」講義が始まります」 ([2025-08-20-1]) (214回閲覧)
・ 「#5935. 現代英語の等位接続詞一覧」 ([2025-07-27-1]) (197回閲覧)
・ 「#5841. クリストファー・バーナード(著)『英語句動詞分類辞典』(研究社,2025年)」 ([2025-04-24-1]) (175回閲覧)
・ 「#5836. 「ゆる言語学ラジオ」のターゲット1900回 --- matter や count が「重要である」を意味する動詞であるのが妙な件」 ([2025-04-19-1]) (174回閲覧)
・ 「#5728. 2024年 hellog でよく読まれた記事ベスト50」 ([2025-01-01-1]) (173回閲覧)
・ 「#5748. egg の英語史」 ([2025-01-21-1]) (171回閲覧)
・ 「#5830. 英語史概説書等の書誌(2025年度版)」 ([2025-04-13-1]) (154回閲覧)
・ 「#5778. connection か connexion か?」 ([2025-02-20-1]) (143回閲覧)
・ 「#5936. 現代英語の従位接続詞一覧」 ([2025-07-28-1]) (136回閲覧)
・ 「#5905. ローマ字表記,ヘボン式を基本に --- 70年ぶりの方針転換へ」 ([2025-06-27-1]) (135回閲覧)
・ 「#5863. 撥音「ん」の歴史」 ([2025-05-16-1]) (131回閲覧)
・ 「#6059. take --- 古ノルド語由来の big word の起源と発達」 ([2025-11-28-1]) (129回閲覧)
・ 「#5865. 撥音「ん」の理論的解説」 ([2025-05-18-1]) (129回閲覧)
・ 「#5840. 「類音牽引」 --- クワノミ,*クワツマメ,クワツバメ,ツバメ」 ([2025-04-23-1]) (123回閲覧)
・ 「#5735. 19世紀,英語がフランス語に及ぼした影響」 ([2025-01-08-1]) (119回閲覧)
・ 「#5846. 言語地理学」 ([2025-04-29-1]) (118回閲覧)
・ 「#5768. 2024年度に提出された卒業論文と修士論文の題目」 ([2025-02-10-1]) (116回閲覧)
・ 「#5864. 6月18日(水)に本が出ます! 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著)『英語語源ハンドブック』(研究社)」 ([2025-05-17-1]) (116回閲覧)
・ 「#5852. 市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩』第2版(研究社,1986年)」 ([2025-05-05-1]) (115回閲覧)
・ 「#5928. 多義語 but」 ([2025-07-20-1]) (112回閲覧)
・ 「#5879. 時制の一致を考える」 ([2025-06-01-1]) (110回閲覧)
・ 「#5819. 開かれたクラス,閉じたクラス,品詞」 ([2025-04-02-1]) (106回閲覧)
・ 「#5792. 「言語変化の要因とそのメカニズム」 --- 『言語の事典』の1節より」 ([2025-03-06-1]) (105回閲覧)
・ 「#5803. corpse, corse, corpus, corps の4重語」 ([2025-03-17-1]) (105回閲覧)
・ 「#5855. ギリシア語由来の否定の接頭辞 a(n)- と英語の不定冠詞 a(n) の平行性」 ([2025-05-08-1]) (103回閲覧)
・ 「#5786. なぜ she の所有格と目的格は her で同じ形になるのですか? --- いのほた YouTube 版」 ([2025-02-28-1]) (101回閲覧)
・ 「#5815. 安形麻理・安形輝『ヴォイニッチ写本』(星海社,2024年)」 ([2025-03-29-1]) (96回閲覧)
・ 「#5920. 「財産」となった一日の記録 --- ひつまぶしのタレより濃かった名古屋オフ会」 ([2025-07-12-1]) (92回閲覧)
・ 「#5777. 形容詞から名詞への品詞転換」 ([2025-02-19-1]) (91回閲覧)
・ 「#6062. Take an umbrella with you. の with you はなぜ必要なのか? --- mond の問答が大反響」 ([2025-12-01-1]) (91回閲覧)
・ 「#5754. divers vs diverse」 ([2025-01-27-1]) (90回閲覧)
・ 「#5859. 「AI古英語家庭教師」の衝撃 --- ぷりっつさんの古英語独学シリーズを読んで」 ([2025-05-12-1]) (89回閲覧)
・ 「#5923. could の <l> は発音されたか? --- 『英語語源ハンドブック』の記述をめぐって」 ([2025-07-15-1]) (89回閲覧)
・ 「#5996. khelf の疋田海夢さんが Growth and Structure 連載を始めています」 ([2025-09-26-1]) (89回閲覧)
・ 「#5868. 『英語語源ハンドブック』 Amazon 新着ランキングの「英語」部門で第1位!」 ([2025-05-21-1]) (88回閲覧)
・ 「#5823. helito --- カードゲーム ito を用いた英語史の遊び」 ([2025-04-06-1]) (87回閲覧)
・ 「#5954. 「子供」を意味する古英語 bearn,現代スコットランド方言の bairn について --- ykagata さんのブログ記事より」 ([2025-08-15-1]) (86回閲覧)
・ 「#5838. 方言はこう生まれる --- 水野太貴さんによる『中央公論』の連載より」 ([2025-04-21-1]) (85回閲覧)
・ 「#5997. 「ゆる言語学ラジオ」で『英語語源ハンドブック』が紹介されました --- 人気シリーズ「ターゲット1900」回に再出演」 ([2025-09-27-1]) (85回閲覧)
・ 「#5785. フランス語に入った英単語 --- 月刊『ふらんす』の連載記事第12弾(最終回)」 ([2025-02-27-1]) (85回閲覧)
・ 「#5747. egg の綴字の歴史」 ([2025-01-20-1]) (84回閲覧)
・ 「#5808. 英語の母音変化の傾向」 ([2025-03-22-1]) (84回閲覧)
ランキングを眺めてみますと,ある傾向が見て取れます.まず第1位の「through の 516 番目の異綴字」 ([2025-01-11-1]) は,単一の語をめぐる話題でありながら,英語史における「綴字の多様性」という現象が読者の皆さんの知的好奇心を強く惹きつけた結果といえそうです.
次に目立つのは,日本語の音声に関する記事です.「ん」の発音やその歴史に関する一連の記事が高順位に食い込んでいます.これは,英語史を相対化するために日本語を見つめ直す,という視点が読者の皆さんの間に定着してきたことを示すものかもしれません.
また,2025年は書籍出版が相次いだ年でもありました.唐澤一友・小塚良孝両氏との共著『英語語源ハンドブック』,井上逸兵氏との共著『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』に関係する話題が,よく読まれています.これらは heldio や YouTube 「いのほた言語学チャンネル」,さらには『ゆる言語学ラジオ』との連動企画も関連しており,メディアミックス展開が効果的だったのではないかと考えています.
学術的なトピックとしては,「品詞とは何か」や「語順」といった,基本的でありながらも歴史的に掘り下げると非常に深いテーマが,上位に含まれています.これも hellog らしいところです.「AI古英語家庭教師」のような最新技術と英語史学習を組み合わせた話題も,今の時代を反映しています.
本年も,これらの記事を入り口として,より多くの方が英語史の深淵な世界に足を踏み入れてくださることを願っています.まずは新年の学び始めとして,上記の一覧から気になる記事を読んでみてはいかがでしょうか.2026年も,hel活へのご注目とご協力のほど,よろしくお願い申し上げます.
本日は1つご報告させていただきます.2016年に研究社より刊行された拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』が,このたび増刷され,第10刷となりました.刊行から10年近くが経過しようとしていますが,長く読み継がれていることに,著者として深く感謝申し上げます.本書は,英語学習者や大学生・大学院生はもちろん,言葉の歴史に関心を持つ一般の方々にも広く読んでいただきたいという思いで執筆したものです.英語という言語が抱える数々の「なぜ」 --- 綴字と発音の不規則な関係,文法の謎など --- を,歴史的な視点から解き明かす入門書として,これまで多くの大学の授業などでも採用していただきました.
今回の増刷を機に,改めて本書の「コンパニオン・サイト」についてご紹介したいと思います.実はこの本には,紙面の都合で載せきれなかった情報を補完するための特設ページが研究社公式サイト上に存在します.ここには本書の各章に関連するリンク集や正誤表などが置かれています.
ただし,このコンパニオン・サイトは,単なるリンク集にとどまりません.実は,刊行当時,本書と関連づけた連載「現代英語を英語史の視点から考える」を月に1度のペースで執筆し,同サイト上で公開していました(今もアーカイヴとして残っているので,お読みになれます).この連載記事は,私が当時かなりの熱量を込めて執筆したもので,書籍本体に勝るとも劣らない密度と情報量をもっていると思います.『はじめての英語史』が入門編であるとすれば,こちらの連載記事は,より深く英語史の森へと踏み込むための応用編ともいえます.
もともと『はじめての英語史』自体が,今お読みいただいているこの hellog の記事をベースに再構成された部分が多いのですが,紙幅の制約上,泣く泣くカットした話題や,より専門的な議論が,その連載記事(や hellog 記事群)に残されています.したがって,本書を読み進めながら,該当する箇所のコンパニオン・サイトを参照し,さらにそこからリンクされているブログ記事や,上記の連載記事へと飛ぶことで,立体的かつ重層的に英語史を学ぶことができます.この連載記事は現在でも無料で公開されていますので,まだご覧になったことがない方は,ぜひ一度訪れてみてください.
英語史の裾野を広げる出版活動としては,本書の第10刷のほかにも,今年の6月18日には英語史研究者仲間との共著になる『英語語源ハンドブック』(研究社)を,そして10月15日には同僚の井上逸兵さんとの共著になる『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』(ナツメ社)を上梓しました.後者は,YouTube 「いのほた言語学チャンネル」から生まれた書籍であり,電子書籍版もリリースされたばかりです.まさにメディアミックス! これらの新しい書籍と合わせて,10刷までたどり着いたロングセラー『はじめての英語史』も,ご愛顧いただければ幸いです.
昨朝の heldio でも,この第10刷のニュースとコンパニオン・サイトについてご案内しました.「#1665. 拙著『はじめての英語史』の10刷が出ています --- コンパニオンサイトもどうぞ」を,ぜひお聴きください.
英語史の面白さをより多くの方に伝え,知的好奇心を刺激する「英語史をお茶の間に」の活動を,ブログ,ラジオ,YouTube,書籍等を通じて,これからも続けていきたいと思います.今後ともご協力と応援のほど,どうぞよろしくお願いいたします.
・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
11月29日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の第8回が,秋期クールの第2回として開講されました.テーマは「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」です.
英語学習の初期段階で出会う超基本語でありながら,あまりに多義で使いこなすのが難しい動詞 take.前回の朝カル講座では,この単語に注目し,その驚くべき歴史を紹介しました.英語本来語ではなく古ノルド語からの借用語であるという事実だけでも驚きですが,古英語で「取る」を意味した niman がいかにして置き換えられていったのか,またその化石的な生き残りの単語についてもたっぷり語りました.
この講座の前後に,take をめぐる様々な話題が hellog/heldio で取り上げられましたので,一覧しておきます.
・ hellog 「#6053. 11月29日(土),朝カル講座の秋期クール第2回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」が開講されます」 ([2025-11-22-1])
・ hellog 「#6059. take --- 古ノルド語由来の big word の起源と発達」 ([2025-11-28-1])
・ hellog 「#6062. Take an umbrella with you. の with you はなぜ必要なのか? --- mond の問答が大反響」 ([2025-12-01-1])
・ hellog 「#6065. Take an umbrella with you. の with you に見られる空間関係明示機能」 ([2025-12-04-1])
・ hellog 「#6066.take の多義性」 ([2025-12-05-1])
・ heldio 「#1640. 11月29日の朝カル講座は take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」 (2025/11/25)
・ heldio 「#1648. Take an umbrella with you. の wity you ってなぜ必要なんですか? --- 中学生からの素朴な疑問」 (2025/12/03)
・ heldio 「#1651. numb と nimble --- take に駆逐された niman の化石的生き残り」 (2025/12/06)
・ heldio 「#1652. 「Take an umbrella with you. の with you の謎」への反応をご紹介」 (2025/12/07)
・ heldio 「#1653. Take an umbrella with you. の with you のもう1つの役割」 (2025/12/08)
・ mond 「Take an umbrella with you. の with you って何故必要なんですか?」]]
さて,この朝カル講座第8回の内容を markmap によりマインドマップ化して整理しました(画像をクリックして拡大).復習用にご参照いただければ.

なお,この朝カル講座のシリーズの第1回から第7回についてもマインドマップを作成しています.
・ 「#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-05-10-1])
・ 「#5887. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第2回「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-06-09-1])
・ 「#5915. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第3回「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-07-07-1])
・ 「#5949. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第4回「but --- きわめつきの多義の接続詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-08-10-1])
・ 「#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-09-07-1])
・ 「#6013. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第6回「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」をマインドマップ化してみました」 ([2025-10-01-1])
・ 「#6041. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第7回「I --- 1人称単数代名詞をめぐる物語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-11-10-1])
シリーズの次回,第9回は,12月20日(土)に「one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」と題して開講されます.開講形式は引き続きオンラインのみで,開講時間は 15:30--17:00 です.ご関心のある方は,ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の公式HPより詳細をご確認の上,お申し込みいただければ幸いです.

今年度,毎月1度の朝日カルチャーセンター新宿教室での英語史講座「歴史上もっとも不思議な英単語」シリーズも,これまで順調に進んでいます.来週末の12月20日(土),年内では最後となる,秋期クールの第3回(今年度通算第9回)が開講される予定です.今回は,一見すると何の変哲もない one という単語に注目します.
ただの数詞にすぎない,といえばそうなのですが,実はただものではありません.
・ one の綴字と発音の乖離
・ 不定冠詞 a/an への発達
・ 語源的関連語 any, alone, atone, only, other, none, no
・ 複合語 someone, anyone no one
・ 1つなのに複数形 ones がある?
・ 「屈折形」の one's, oneself
・ 代名詞としての one
・ 支柱語としての one
・ one of . . . の語法
one が数詞から尋常ならざる発達を遂げ,問題がありすぎる語へと変質してきたらしいことが見て取れるのではないでしょうか.むしろ卑近で高頻度で当たり前の単語だからこそ,様々な用法を生み出してきたといえます.講座では,この小さくも大きな語彙項目に,英語史の観点から90分じっくり向き合います.
講座への参加方法は,前回同様にオンライン参加のみとなっています.リアルタイムでのご参加のほか,2週間の見逃し配信サービスもありますので,ご都合のよい方法でご受講ください.開講時間は 15:30--17:00 です.講座と申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.
(以下,後記:2025/12/13(Sat)))
本講座の予告については heldio にて「「#1658. 12月20日の朝カル講座は one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」」としてお話ししています.ぜひそちらもお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
一昨日,知識共有サービス mond に寄せられた,ある質問に回答しました.それがX投稿を経由してバズっています.今朝の時点で,X投稿が320万インプを示しており,驚いています.私のhel活X投稿の歴史では最多です.
以前,中学生に英語を教えたとき,こーゆう質問されました.「Take an umbrella with you. の with you って何故必要なんですか?」確かに,Take an umbrella. だけでも通じるので,with NP は別にいらないんじゃないかと思ってしまいます.

ちょうど take という単語について調べたり考えたりしていたところだったこともあり,この質問を何気なくピックアップして回答した次第ですが,このような反響をいただいたことに驚いています.
そもそも質問が良質でした.多くの英語学習者の共感を呼ぶ「英語に関する素朴な疑問」だったと思います.
私は本ブログや mond やその他の様々な媒体で日々「hel活」 (helkatsu) を展開していますが,とりわけ中高生が抱くような「英語に関する素朴な疑問」を重視しています.それに答えようとする営みは,英語史や英語学の最も実践的な形だと考えているからです.回答を試みたとしても,必ずしも解決する問題ばかりではなく,むしろさらに難解な問題を招いてしまうことも多々あるのですが,少なくともコトバについて考える貴重な機会となります.
これまでに mond で100問以上の「英語に関する素朴な疑問」に回答してきましたが,とりわけ多くの反響をいただいた過去回答を5つピックアップしてみます.日曜日の読み物としてどうぞ.
・ mond 「なぜ形容詞は代名詞 (she, it, mine…) を修飾できないんですか?」への回答

・ mond 「英語では単数形,複数形の区別がありますが,なぜ「1とそれ以外」なのでしょうか.」

・ mond 「that に接続詞としての用法が生じたのに対し,this にそれが生じなかったのはなぜでしょうか.」

・ mond 「どうして英語には冠詞がいるのでしょうか? なくても意味が通じるような気がします」


英語学習者の皆さんにおかれましては,ぜひ「英語に関する素朴な疑問」を大切にしていただければと思います.Take an umbrella with you. に関するおおもとの質問を提供してくれた中学生,それを mond に投稿された質問者の方,X上で感想コメントをいただいて拡散してくださった皆さん,ありがとうございます.そして,新たな「英語に関する素朴な疑問」の良問を mond にてお待ちしております!
先日,長崎県の五島列島に位置する新上五島町の小・中・高の英語教員を対象とした研修会にて,お話しする機会をいただきました.私自身は目下海外滞在中ということで,Zoom でつないでのリモート研修会となりましたが,画面越しの交流を通じて,主催の先生をはじめとする参加された先生方お一人お一人の英語教育への熱意が伝わってきて,大変実り多い時間となりました.
研修会のテーマは「『英語語源ハンドブック』で学ぶ英語語彙史と授業への応用」でした.私の研究分野である英語史,とりわけ語彙史の知見を,小・中・高の英語授業でいかに活かせるか,という問題について,『英語語源ハンドブック』の記述を参照しつつ,具体的な単語に注目してアイディアを出してみました.研修会後半のディスカッションでは,参加された先生方からも具体的な発展案などのアイディアやコメントもいただきました.結果として,英語史研究と英語教育が交差する貴重な機会となったと感じています.
研修会では,特に英語語彙の世界性 (cosmopolitan_vocabulary) に注目しました.英語は語彙でみるかぎり決して "pure" な言語ではなく,歴史的に他言語から語彙を大量に借用してきた "hybrid" な言語です.その最たる例が,ノルマン征服 (norman_conquest) 以降にフランス語から大量に入ってきた語彙です.たとえば,calf (生きた子牛)と veal (子牛の肉),deer (生きた鹿)と venison (鹿の肉)のように,動物とその肉を表わす語が,英語本来語系列とフランス借用語系列に分裂している例は,英語史における鉄板ネタです.
このような言語の歴史的背景を学校の英語の授業で伝えることには,大きな意義があります.1つには,英語が純粋で「偉い」言語だという思い込みから,教員も生徒も解放されることです.現代世界において英語は「絶対的王者」の地位にあるとはいえ,歴史を紐解いてみれば,紆余曲折を経てきた言語であり,語彙的には "hybrid" な言語でもあり,「偉い」という形容詞とは相容れない性格を多々もっている言語なのです.歴史を知ると,英語とて実はさほど身構えるほどの相手ではない,と肩の力が抜けていくはずです.
また,上記の「動物と肉の単語」の例1つをとってみても,歴史・文化の学びにつながることはもちろん,さらには国語科の話題としての「語彙の3層構造」,すなわち日本語の和語・漢語・外来語の区分の問題にもシームレスに接続していきます.英語史は,英語科という1科目にとどまらず,歴史科や国語科とも連携していくハブとなり得るのです.
今回の研修会は,英語史研究が小中高の教育現場と結びつき,互いに学び合い,高め合うことができる「接点」が存在することを確信する機会となりました.この知的な刺激を糧に,今後も英語史の知見を様々な形で社会へ還元していく活動(=hel活)を続けていきたいと思っています.改めまして,主催者の先生,参加された先生方に心より感謝申し上げます.

今年度は月1回,朝日カルチャーセンター新宿教室で英語史講座「歴史上もっとも不思議な英単語」シリーズを開講しています.その秋期クールの第2回(今年度通算第8回)が,1週間後の11月29日(土)に迫ってきました.今回取り上げるのは,現代英語のなかでも最も基本的な動詞の1つ take です.
take は,その幅広い意味や用法から,英語話者にとってきわめて日常的な語となっています.しかし,この単語は古英語から使われていた「本来語」 (native word) ではなく,実は,8世紀半ばから11世紀にかけてブリテン島を侵略・定住したヴァイキングたちがもたらした古ノルド語 (old_norse) 由来の「借用語」 (loan_word) なのです.
古ノルド語が英語史にもたらした影響は計り知れず,私自身,古ノルド語は英語言語接触史上もっとも重要な言語の1つと考えています(cf. 「#4820. 古ノルド語は英語史上もっとも重要な言語」 ([2022-07-08-1])).今回の講座では take を窓口として,古ノルド語が英語の語彙体系に与えた衝撃に迫ります.
以下,講座で掘り下げていきたいと思っている話題を,いくつかご紹介します.
・ 古ノルド語の語彙的影響の大きさ:古ノルド語からの借用語は,数こそラテン語やフランス語に及ばないものの,egg, leg, sky のように日常に欠かせない語ばかりです(cf. 「#2625. 古ノルド語からの借用語の日常性」 ([2016-07-04-1])).take はそのなかでもトップクラスの基本語といえます.
・ 借用語 take と本来語 niman の競合:古ノルド語由来の take が流入する以前,古英語では niman が「取る」を意味する最も普通の語として用いられていました.この2語の競合の後,結果的には take が勝利を収めました.なぜ借用語が本来語を駆逐し得たのでしょうか.
・ 古ノルド語由来の他の超基本動詞:take のほかにも,get,give,want といった,英語の骨格をなす少なからぬ動詞が古ノルド語にルーツをもちます.
・ タブー語 die の謎:日常語であると同時に,タブー的な側面をもつ die も古ノルド語由来の基本的な動詞です.古英語本来語の「死ぬ」を表す動詞 steorfan が,現代英語で starve (飢える)へと意味を狭めてしまった経緯は,言語接触と意味変化の好例となります.
・ she や they は本当に古ノルド語由来か?:古ノルド語の影響は,人称代名詞 she や they のような機能語にまで及んでいるといわれます.しかし,この2語についてはほかの語源説もあり,ミステリアスです.
・ 古ノルド語借用語と古英語本来語の見分け方:音韻的な違いがあるので,識別できる場合があります.
形態音韻論的には単音節にすぎないtake という小さな単語の背後には,ヴァイキングの歴史や言語接触のダイナミズムが潜んでいます.今回も英語史の醍醐味をたっぷりと味わいましょう.
講座への参加方法は,前回同様にオンライン参加のみとなっています.リアルタイムでのご参加のほか,2週間の見逃し配信サービスもありますので,ご都合のよい方法でご受講ください.開講時間は 15:30--17:00 です.講座と申込みの詳細は朝カルの公式ページよりご確認ください.
なお,次々回は12月20日(土)で,これも英語史的に実に奥深い単語 one を取り上げる予定です.
(以下,後記:2025/11/25(Tue)))
本講座の予告については heldio にて「「#1640. 11月29日の朝カル講座は take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」」としてお話ししています.ぜひそちらもお聴きください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
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