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french - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2020-01-17 20:56

2019-12-29 Sun

#3898. danger, dangerous の意味変化 [semantic_change][french][loan_word][loan_translation][etymology]

 英単語 danger (危険)は,古仏語で「支配(力)」を意味した dangier, dongier を借用したものだが,これ自体は同義の俗ラテン語 *dominiāriu(m) にさかのぼるとされる.さらには同義のラテン語の dominium に,そして dominus (主人,神)にまでさかのぼる.もう一歩さかのぼると,語源素は domus (家,ドーム)という基本語である.全体としていえば,「家の主人」→「支配(力)」→「危険」のように意味変化を遂げてきたことになる.
 英語での danger の初出は,初期中英語期,1200年頃の修道女マニュアル Ancrene Riwle であり,そこでは「支配(力),傲慢」の意味で用いられている.古いイディオム to be in danger of は「〜の支配下で」を意味した(cf. 古仏語の estre en dangier "to be in the power, at the mercy, of someone").一方,現代風の「危険」という発展的語義が確認されるのは,後期中英語期,1378年頃の Piers Plowman からである.
 形容詞 dangerous のたどった経緯も,名詞 danger とほぼパラレルである.英語での初出はやはり Ancrene Riwle であり,支配者にありがちな性格として「扱いにくい,傲慢な」を意味した.それが,中英語末期にかけて現代的な「危険な」の意味を発達させている.名詞にせよ形容詞にせよ,古仏語から英語に借用された当初は「支配(力)」を意味していたものが,中英語期の間にいかにして「危険」の意味を発展させたのだろうか.
 シップリー (198--99) によれば dangerous の語源と意味変化の経緯は次の通りである.

 タンジュローズ (Dangerose) という名の魅力的な貴婦人が,かつてパリ北西郊外の都市アニエールの領主ダマーズ (Damase) にしつこく言い寄られて不倫を犯した.二人はル・マン (Mans) のティグ (Thigh) という名の第37代大司教の破門にもかかわらず同棲した.ある日,この領主が川を渡っていると,激しい嵐が起こった.稲妻に打たれ,水に飲まれ半焼死・半溺死の状態で地獄に落ちた.ダンジュローズは嘆き悲しんで大司教の足元に身を投げて許しを請い,その後,厳しい隠遁生活をおくった.しかし,彼女の話は広く伝わってしまった.それでフランス人は危機に瀕すると,"Ceci sent la Dangerose." (ダンジュローズのようだ)と言った.フランス語 dangereux, dangereuse (危険な)が派生したとされる.
 この訓戒話は,danger (危険)の一般的に認められている語源説と比べると信憑性に欠ける.danger は,dominion (支配権)と同語源で,ラテン語 dominium (支配,所有)から,後期ラテン語 dominarium (支配,権力),古フランス語 dongier (権力,支配)を経て中英語に借入された.in danger of と言えば,当時の意味は「権力や支配権の思いのままにされる」であった.そうすれば今日の「危険」の意味は,領主に対して領民がいかに恐れを抱いていたかを示している.権力者はまさに被支配者に「危険」をもたらすものだった.


 引用の第1段落は,シップリーの好みそうな民間語源 (folk_etymology) 的な逸話として横においておくとして,第2段落で述べられている意味の展開が実に興味深い.権力者の「支配(力)」は,すなわち庶民にとっての「危険」であるということだ.権力のある支配者は得てして「気位が高い」し「扱いにくい」ものである.度が過ぎれば,下で仕える者にとって「危険な」存在となるだろう.この語の意味変化は,いつの世でも支配・権力とは危険なものだということを思い起こさせてくれる.

 ・ ジョーゼフ T. シップリー 著,梅田 修・眞方 忠道・穴吹 章子 訳 『シップリー英語語源辞典』 大修館,2009年.

Referrer (Inside): [2019-12-30-1]

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2019-12-16 Mon

#3885. 『英語教育』の連載第10回「なぜ英語には類義語が多いのか」 [rensai][notice][lexicology][synonym][loan_word][borrowing][french][latin][lexical_stratification][sobokunagimon][link]

 12月13日に,『英語教育』(大修館書店)の1月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第10回となる今回は「なぜ英語には類義語が多いのか」という話題を扱っています.

『英語教育』2020年1月号


 英語には「上がる」を意味する動詞として risemountascend などの類義語があります.「活発な」を表わす形容詞にも lively, vivacious, animated などがあります.名詞「人々」についても folk, people, population などが挙がります.これらは「英語語彙の3層構造」の典型例であり,英語がたどってきた言語接触の歴史の遺産というべきものです.本連載記事では,英語語彙に特徴的な豊かな類義語の存在が,1066年のノルマン征服と16世紀のルネサンスのたまものであり,さらに驚くことに,日本語にもちょうど似たような歴史的事情があることを指摘しています.
 「英語語彙の3層構造」については,本ブログでも関連する話題を多く取り上げてきました.以下をご覧ください.

 ・ 「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1])
 ・ 「#1296. 三層構造の例を追加」 ([2012-11-13-1])
 ・ 「#1960. 英語語彙のピラミッド構造」 ([2014-09-08-1])
 ・ 「#2072. 英語語彙の三層構造の是非」 ([2014-12-29-1])
 ・ 「#2279. 英語語彙の逆転二層構造」 ([2015-07-24-1])
 ・ 「#2643. 英語語彙の三層構造の神話?」 ([2016-07-22-1])
 ・ 「#387. trisociationtriset」 ([2010-05-19-1])
 ・ 「#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」」 ([2017-06-21-1])
 ・ 「#3374. 「示相語彙」」 ([2018-07-23-1])

 ・ 「#335. 日本語語彙の三層構造」 ([2010-03-28-1])
 ・ 「#3357. 日本語語彙の三層構造 (2)」 ([2018-07-06-1])
 ・ 「#1630. インク壺語,カタカナ語,チンプン漢語」 ([2013-10-13-1])
 ・ 「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1])

 ・ 堀田 隆一 「なぜ英語には類義語が多いのか」『英語教育』2020年1月号,大修館書店,2019年12月13日.62--63頁.

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2019-11-25 Mon

#3864. retard, pulse の派生語にみる近代英語期の語彙問題 [word_formation][latin][french][emode][lexicology][borrowing][loan_word][derivation][word_family]

 昨日の記事「#3863. adapt の派生語にみる近代英語期の語彙問題」 ([2019-11-24-1]) に引き続き,Durkin (334) より retard および pulse に関する派生語の乱立状況をのぞいてみよう.
 retard (1490) と retardate (1613) の2語が,動詞としてライバル関係にある基体である.ここから派生した語群を年代順に挙げよう(ただし,時間的には逆転しているようにみえるケースもある).retardation (n.) (c.1437), retardance (n.) (1550), retarding (n.) (1585), retardment (n.) (1640), retardant (adj.) (1642), retarder (n.) (1644), retarding (adj.) (1645), retardative (adj.) (1705), retardure (n.) (1751), retardive (adj.) (1787), retardant (n.) (1824), retardatory (adj.) (1843), retardent (adj.) (1858), retardent (n.) (1858), retardency (n.) (1939), retardancy (n.) (1947) となる.
 同じように pulse (?a.1425) と pulsate (1674) を動詞の基体として,様々な派生語が生じてきた(やはり時間的には逆転しているようにみえるケースもある).pulsative (n.) (a.1398), pulsatile (adj.) (?a.1425), pulsation (n.) (?a.1425), pulsing (n.) (a.1525), pulsing (adj.) (1559), pulsive (adj.) (1600), pulsatory (adj.) (1613), pulsant (adj.) (1642), pulsating (adj.) (1742), pulsating (n.) (1829) である.
 このなかには直接の借用語もあるだろうし,英語内で形成された語もあるだろう.その両方であると解釈するのが妥当な語もあるだろう.混乱,類推,勘違い,浪費,余剰などあらゆるものが詰まった word family である.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-11-24 Sun

#3863. adapt の派生語にみる近代英語期の語彙問題 [word_formation][latin][french][emode][lexicology][borrowing][loan_word][derivation][word_family]

 初期近代英語期の語彙に関する問題の1つに,同根派生語の乱立がある.「#3157. 華麗なる splendid の同根類義語」 ([2017-12-18-1]),「#3258. 17世紀に作られた動詞派生名詞群の呈する問題 (1)」 ([2018-03-29-1]),「#3259. 17世紀に作られた動詞派生名詞群の呈する問題 (2)」 ([2018-03-30-1]) などで論じてきたが,今回は adapt という基体を出発点にした派生語の乱立をのぞいてみよう.以下,Durkin (332--33) に依拠する.
 OED によると,15世紀初期に adapted が現われるが,adapt 単体として出現するのは1531年である.これ自体,ラテン語 adaptāre とフランス語 adapter のいずれが借用されたものなのか,あるいはいずれの形に基づいているものなのか,必ずしも明確ではない.
 その後,両形を基体とした様々な派生語が次々に現われる.adaptation (n.) (1597), adapting (n.) (1610), adaption (n.) (1615), adaptate (v.) (1638), adaptness (n.) (1657), adapt (adj.) (1658), adaptability (n.) (1661), adaptable (adj.) (1692), adaptive (adj.) (1734), adaptment (n.) (1739), adapter (n.) (1753), adaptor (1764), adaptative (adj.) (1815), adaptiveness (n.) (1815), adaptableness (n.) (1833), adaptorial (adj.) (1838), adaptational (adj.) (1849), adaptivity (n.) (1840), adaptativeness (n.) (1841), adaptationism (n.) (1889), adaptationalism (n.) (1922) のごとくだ.
 いずれの語がいずれの言語からの借用なのかが不明確であるし,そもそも借用などではなく英語内部において造語された語である可能性も高い.後者の場合には「英製羅語」や「英製仏語」ということになる.歴史語彙論的に,このような語群を何と呼んだらよいのか悩むところである.
 この問題に関する Durkin (333) の解説を引いておく.

Very few of these words show direct borrowing from Latin or French (probably just adapt verb, adaptate, adaptation, and maybe adapt adjective), but a number of others are best explained as hybrid or analogous formations on Latin stems. The group as a whole illustrates the impact of the borrowing of a handful of key words in giving rise to an extended word family over time, including many full or partial synonyms. In some cases synonyms may have arisen accidentally, as speakers were simply ignorant of the existence of earlier formations; some others could result from misrecollection of earlier words. . . . However, such profligacy and redundancy is typical of such word families in English well into the Later Modern period, well beyond the period in which 'copy' was particularly in vogue in literary style.


 ここからキーワードを拾い出せば "hybrid or analogous formations", "ignorant", "misrecollection", "profligacy and redundancy" などとなろうか.
 今回の内容と関連する話題として,以下の記事も参照されたい.

 ・ 「#1493. 和製英語ならぬ英製羅語」 ([2013-05-29-1])
 ・ 「#1927. 英製仏語」 ([2014-08-06-1])
 ・ 「#3165. 英製羅語としての conspicuousexternal」 ([2017-12-26-1])
 ・ 「#3166. 英製希羅語としての科学用語」 ([2017-12-27-1])
 ・ 「#3179. 「新古典主義的複合語」か「英製羅語」か」 ([2018-01-09-1])
 ・ 「#3348. 初期近代英語期に借用系の接辞・基体が大幅に伸張した」 ([2018-06-27-1])
 ・ 「#3858. 「和製○語」も「英製△語」も言語として普通の現象」 ([2019-11-19-1])

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-10-28 Mon

#3836. フランス語史の年表 [timeline][hfl][french][anthropology][indo-european]

 フランス語史は専門ではないものの,英語史を掘り下げて理解するためには是非ともフランス語史の知識がほしい.ということで,少なからぬ関心を寄せている.今回は Perret (179--81) よりフランス語史の年表 "Chronologie" を掲げよう.イタリックの行は,仮説的な年代・記述という意味である.

[ Préhistoire des langues du monde ]

   Il y a 4 ou 5 millions d'années: apparition de l'australopithèque en Afrique.
   Il y a 1,6 million d'années: homo erectus colonise l'Eurpope et l'Asie.
   Il y a 850 000 ans: premiers hominidés en Europe.
   Avant - 100 000: Homo sapiens en Europe (Neandertal) et en Asie (Solo).
   - 100 000: un petit groupd d'Homo sapiens vivant en Afrique (ou au Moyen-Orient) se met en marche et recolonise la planète. Les autres Homo sapiens se seraient éteints. (Hypothèse de certains généticiens, les équipes de Cavalli-Sforza et de Langaney, dite thèse du «goulot d'étranglement»).
   - 40 000: première apparition du langage?

[ Préhistoire des Indo-Européens ]

   - 10000: civilisation magdalénienne en Dordogne. Premier homme en Amérique.
   - 7000: les premières langues indo-européennes naissent en Anatolie (hypothèse Renfrew).
   Entre - 65000 et - 5500: les Indo-Européens commencent leur migration par vagues (hypothèse Renfrew).
   - 4500: les Indo-Européens occupent l'ouest de l'Europe (hypothèse Renfrew).
   - 4000 ou - 3000: les Indo-Européens commencent à se disperser (hypothèse dominante).
   - 3500: civilisation dite des Kourganes (tumuluss funéraires), débuts de son expansion.
   - 3000: écriture cunéiforme en Perse, écriture en Inde. Première domestication du cheval en Russie? (- 2000, premières représentations de cavaliers).

[ Préhistoire du français ]

   - 4000 ou - 3000: la civilisation des constructeurs de mégalithes apparaît en Bretagne.
   - 3000: la présence des Celtes est attestée en Bohème et Bavière.
   - 2500: début de l'emploi du bronze.
   - 600: premiers témoignages sur les Ligure et les Ibères.
   - 600: des marins phocéens s'installent sur la cõte méditerranéenne.
   - 500: une invasion celte (précédée d'infiltrations?): les Gaulois.

[ Histoire du français ]

   - 1500: conquête de la Provence par les Romains et infiltrations dans la région narbonnaise.
   - 59 à - 51: conquête de la Gaule par les Romains.
   212: édit de Caracalla accordant la citoyenneté à tous les hommes libres de l'Empire.
   257: incursions d'Alamans et de Francs jusqu'en Italie et Espagne.
   275: invasion générale de la Gaule par les Germains.
   312: Constantin fait du christianisme la religion officielle de l'Empire.
   Vers 400: traduction en latin de la Bible (la Vulgate) par saint Jérôme.
   450--650: émigration celte en Bretagne (à partir de Grande-Bretagne): réimplantation du celte en Bretagne.
   476: prise de Rome et destitution de l'empereur d'Occident.
   486--534: les Francs occupent la totalité du territoire de la Galue (496, Clovis adopted le christianisme).
   750--780: le latin cesse d'être compris par les auditoires populaires dans le nord du pays.
   800: sacre de Charlemagne.
   813: concile de Tours: les sermons doivent être faits dans les langues vernaculaires.
   814: mort de Charlemagne.
   842: les Serments de Strasbourg, premier document officiel en proto-français.
   800 à 900: incursions des Vikings.
   800--850: on cesse de comprendre le latin en pays de langues d'oc.
   880: Cantilène de sainte Eulalie, première elaboration littéraire en proto-français.
   911: les Vikings sédentarisés en Normandie.
   957: Hugues Capet, premier roi de France à ignorer le germanique.
   1063: conquête de l'Italie du Sud et de la Sicile par des Normands.
   1066: bataille de Hastings: une dynastie normande s'installe en Angleterre où on parlera français jusqu'à la guerre de Cent Ans.
   1086: la Chanson de Roland.
   1099: prise de Jérusalem par les croisés: début d'une présence du français et du provençal en Moyen-Orient.
   1252: fondation de la Sorbonne (enseignement en latin).
   1254: dernière croisade.
   1260: Brunetto Latini, florentin, compose son Trésor en français.
   1265: Charles d'Anjou se fait couronner roi des deux Siciles, on parlera français à la cour de Naples jusqu'au XIVe siècle.
   1271: réunion du Comté de Toulouse, de langue d'oc, au royaume de France.
   1476--1482: Louis XI rattache la Bourgogne, la Picardie, l'Artois, le Maine, l'Anjou et la Provence au royaume de France.
   1477: l'imprimerie. Accélération de la standardisation et de l'oficialisation du français, premières «inventions» orthographiques.
   1515: le Consistori del Gai Saber devient Collège de rhétorique: fin de la littérature officielle de langue d'oc.
   1523--1541: instauration du français dans le culte protestant.
   1529: fondation du Collège de France (rares enseignements en fançais).
   1530: Esclarcissment de la langue française, de Palsgrave, la plus connue des grammaires du français qui parassient à l'époque en Angleterre.
   1534: Jacques Cartier prent possession du Canada au nom du roi de France.
   1539: ordonnace de Villers-Cotterêts, le français devient langue officielle.
   1552: la Bretagne est rattachée au royaume de France.
   1559: la Lorraine est rattachée au royaume de France.
   1600: la Cour quitte les bords de Loire pour Parsi.
   1635: Richelieu officialise l'Académie française.
   1637: Descartes écrit en français Le Discours de la méthode.
   1647: Remarques sur la langue française de Vaugelas: la norme de la Cour prise comme modèle du bon usage.
   1660: Grammaire raisonnée de Port-Royal.
   1680: première traduction catholique de la Bible en français.
   1685: révocation de l'édit de Nantes: un million de protestants quittent la France pour les pays protestants d'Europe, mais aussi pour l'Afrique et l'Amérique.
   1694: première parution du Dictionnaire de l'Académie.
   1700: début d'un véritable enseignement élémentaire sans latin, avec les frères des écoles chrétiennes de Jean-Baptiste de la Salle.
   1714: traité de Rastadt, le français se substitue au latin comme languge de la diplomatie en Europe.
   1730: traité d'Utrecht: la France perd l'Acadie.
   1739: mise en place d'un enseignment entièrement en français dans le collège de Sorèze (Tarn).
   1757: apparition des premiers textes en créole.
   1762: explusion des jésuites, fervents partisans dans leur collèges de l'enseignement entièrement en latin; une réorganisation des collèges fait plus de place au français.
   1763: traité de Paris, la France perd son empire colonial: le Canada, les Indes, cinq îles des Antilles, le Sénégal et la Lousinane.
   1783: la France recouvre le Sénégal, la Lousiane et trois Antilles.
   1787: W. Jones reconnaît l'existence d'une famille de langues regroupant latin, grec, persan, langues germaniques, langues celte et sanscrit.
   1794: rapport Barrère sur les idiomes suspect (8 pluviôse an II); rapport Grégoire sur l'utilité de détruire les patois (16 prairial an II).
   1794--1795: la Républic s'aliène les sympathies par des lois interdisant l'usage de toute autre langue que le français dans les pays occupée.
   1797: tentative d'introduire le français dans le culte (abbé Grégoire).
   1803: Bonaparte vend la Louisiane aux Anglais.
   1817: la France administre le Sénégal.
   1827: Préface de Cromwell, V. Hugo, revendication de tous les registres lexicaux pour la langue littéraire.
   1830: début de la conquête de l'Algérie.
   1835: la sixième édition du Dictionnaire de l'Académie accepte enfin la graphie -ais, -ait pour les imparfiat.
   1879: invention du phonographe.
   1881: Camille Sée crée un enseignment public à l'usage des jeunes fille.
   1882: lois Jules Ferry: enseignement primaire obligatoire, laïquie et gratuie (en français).
   1885: l'administration du Congo (dit ensuite de Belge) est confiée au roi des Belges.
   1901: arrêté proposant une certaine tolérance dans les règles orthographiques du français.
   1902: l'enseignement secondaire moderne sans latin ni grec est reconnu comme égal à la filière classique.
   1902--1907: publication de l'Atlas linguistique de la France par régions de Gilliéron et Edmont.
   1950: autorisation de soutenir des thèses en français.
   1919: traité de Versalles, le français perd son statue de langue unique de la diplomatic en Europe.
   1921: début de la diffusion de la radio.
   1935: invention de la télévision.
   1951: loi Deixiome permet l'enseignement de certaines langues régionales dans le second cycle.
   1954--1962: les anciennes colonies de la France deviennent des états indépendents.
   1962--1965: concile de Vatican II: la célébration do la messe, principal office du culte catholique, ne se fait plus en latin.
   1987: un créole devient langue officielle en Haïti.
   1990: un «rapport sur les rectifications de l'orthographe» propose la régularisation des pluriels de mots composés et la suppression de l'accent circonflexe.
   1994: première création d'un organism de soutien à la francophonie.

 ・ Perret, Michèle. Introduction à l'histoire de la langue française. 3rd ed. Paris: Colin, 2008.

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2019-10-20 Sun

#3828. 『図説フランスの歴史』の目次 [toc][hfl][french][history]

 英語史を学ぶ上で間接的ではあるが非常に重要な分野の1つにフランス史がある.今回は,図解資料を眺めているだけで楽しい『図説フランスの歴史』の目次を挙げておきたい.ちなみにイギリス史の目次については「#3430. 『物語 イギリスの歴史(上下巻)』の目次」 ([2018-09-17-1]) を参照.目次シリーズ (toc) の記事も徐々に増えてきた.



  第1章 ローマとフランク王国
    1. ローマン・ガリア
    2. フランク王国
    3. ガリア地方とキリスト教
  第2章 カペー朝の成立
    1. 「暗黒の世紀」
    2. カペー朝の成立
  第3章 フランス王国の発展
    1. フィリップ二世
    2. ルイ九世
    3. フィリップ四世とローマ教皇との戦い
    4. 社会の変化
    5. キリスト教徒ゴシック美術
  第4章 百年戦争とヴァロア朝
    1. 百年戦争
    2. 近代国家への胎動
    3. 封建制の危機
  第5章 ルネサンス王政
    1. イタリア戦争
    2. ルネサンス
    3. 宗教改革とフランス
  第6章 宗教戦争とブルボン朝の成立
    1. 宗教戦争
    2. ブルボン朝の成立
    3. アンリ四世の政治
  第7章 絶対王政の輝き
    1. ルイ一三世と主権国家
    2. ルイ一四世
    3. フランス絶対王政
    3. 王の栄光
  第8章 一八世紀の政治と文化
    1. ルイ一五世からルイ一六世
    2. 啓蒙思想
    3. 文化の変容
  第9章 フランス革命とナポレオン
    1. フランス革命
    2. ナポレオン
    3. フランス革命の構造
    4. 革命の遺産
  第10章 一九世紀のフランス
    1. 復古王政
    2. 七月王政
    3. 二月革命と第二共和制
    4. 第二帝政
    5. 産業化とブルジョワの支配
    6. 民衆世界の変貌
  第11章 第三共和政の成立
    1. パリ・コミューンと第三共和政の成立
    2. フランスにおける国民国家の形成
    3. 結社法と政教分離法
  第12章 現代のフランス
    1. 第一次世界大戦の衝撃
    2. 世界恐慌と人民戦線
    3. 第二次世界大戦とレジスタンス
    4. 戦後のフランス
    5. 激動の世紀末
    6. 二一世紀のフランス
    7. フランスの経験と日本



 ・ 佐々木 真 『図説フランスの歴史』増補新版 河出書房新社,2016年.

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2019-08-17 Sat

#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達 [suffix][-ate][adjective][participle][verb][word_formation][loan_word][latin][french][conversion][morphology][analogy]

 昨日の記事「#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-16-1]) に引き続き,接尾辞 -ate の話題.動詞接尾辞の -ate については「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) で取り上げたが,今回はその起源と発達について,OED -ate, suffix1 を参照しながら,もう少し詳細に考えてみよう.
 昨日も述べたように,-ate はラテン語の第1活用動詞の過去分詞接辞 -ātus, -ātum, -āta に遡るから,本来は動詞の語尾というよりは(過去分詞)形容詞の語尾というべきものである.動詞接尾辞 -ate の起源を巡る議論で前提とされているのは,-ate 語に関して形容詞から動詞への品詞転換 (conversion) が起こったということである.形容詞から動詞への品詞転換は多くの言語で認められ,実際に古英語から現代英語にかけても枚挙にいとまがない.たとえば,古英語では hwít から hwítian, wearm から wearmian, bysig から bysgian, drýge から drýgan が作られ,それぞれ後者の動詞形は近代英語期にかけて屈折語尾を失い,前者と形態的に融合したという経緯がある.
 ラテン語でも同様に,形容詞から動詞への品詞転換は日常茶飯だった.たとえば,siccus から siccāre, clārus から clārāre, līber から līberāre, sacer から sacrāre などが作られた.さらにフランス語でも然りで,sec から sècher, clair から clairer, content から contenter, confus から confuser などが形成された.英語はラテン語やフランス語からこれらの語を借用したが,その形容詞形と動詞形がやはり屈折語尾の衰退により15世紀までに融合した.
 こうした流れのなかで,16世紀にはラテン語の過去分詞形容詞をそのまま動詞として用いるタイプの品詞転換が一般的にみられるようになった.direct, separate, aggravate などの例があがる.英語内部でこのような例が増えてくると,ラテン語の -ātus が,歴史的には過去分詞に対応していたはずだが,共時的にはしばしば英語の動詞の原形にひもづけられるようになった.つまり,過去分詞形容詞的な機能の介在なしに,-ate が直接に動詞の原形と結びつけられるようになったのである.
 この結び付きが強まると,ラテン語(やフランス語)の動詞語幹を借りてきて,それに -ate をつけさえすれば,英語側で新しい動詞を簡単に導入できるという,1種の語形成上の便法が発達した.こうして16世紀中には fascinate, concatenate, asseverate, venerate を含め数百の -ate 動詞が生み出された.
 いったんこの便法が確立してしまえば,実際にラテン語(やフランス語)に存在したかどうかは問わず,「ラテン語(やフランス語)的な要素」であれば,それをもってきて -ate を付けることにより,いともたやすく新しい動詞を形成できるようになったわけだ.これにより nobilitate, felicitate, capacitate, differentiate, substantiate, vaccinate など多数の -ate 動詞が近現代期に生み出された.
 全体として -ate の発達は,語形成とその成果としての -ate 動詞群との間の,絶え間なき類推作用と規則拡張の歴史とみることができる.

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2019-08-16 Fri

#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達 [suffix][-ate][adjective][participle][word_formation][loan_word][latin][french][conversion][morphology]

 英語で典型的な動詞語尾の1つと考えられている -ate 接尾辞は,実はいくつかの形容詞にもみられる.aspirate, desolate, moderate, prostrate, sedate, separate は動詞としての用法もあるが,形容詞でもある.一方 innate, oblate, ornate, temperate などは常に形容詞である.形容詞接尾辞としての -ate の起源と発達をたどってみよう.
 この接尾辞はラテン語の第1活用動詞の過去分詞接辞 -ātus, -ātum, -āta に遡る.フランス語はこれらの末尾にみえる屈折接辞 -us, -um, -a を脱落させたが,英語もラテン語を取り込む際にこの脱落の慣習を含めてフランス語のやり方を真似た.結果として,英語は1400年くらいから,ラテン語 -atus などを -at (のちに先行する母音が長いことを示すために e を添えて -ate) として取り込む習慣を獲得していった.
 上記のように -ate の起源は動詞の過去分詞であるから,英語でも文字通りの動詞の過去分詞のほか,形容詞としても機能していたことは無理なく理解できるだろう.しかし,後に -ate が動詞の原形と分析されるに及んで,本来的な過去分詞の役割は,多く新たに規則的に作られた -ated という形態に取って代わられ,過去分詞(形容詞)としての -ate の多くは廃用となってしまった.しかし,形容詞として周辺的に残ったものもあった.冒頭に挙げた -ate 形容詞は,そのような経緯で「生き残った」ものである.
 以上の流れを解説した箇所を,OED の -ate, suffix2 より引こう.

Forming participial adjectives from Latin past participles in -ātus, -āta, -ātum, being only a special instance of the adoption of Latin past participles by dropping the inflectional endings, e.g. content-us, convict-us, direct-us, remiss-us, or with phonetic final -e, e.g. complēt-us, finīt-us, revolūt-us, spars-us. The analogy for this was set by the survival of some Latin past participles in Old French, as confus:--confūsus, content:--contentus, divers:--diversus. This analogy was widely followed in later French, in introducing new words from Latin; and both classes of French words, i.e. the popular survivals and the later accessions, being adopted in English, provided English in its turn with analogies for adapting similar words directly from Latin, by dropping the termination. This began about 1400, and as in -ate suffix1 (with which this suffix is phonetically identical), Latin -ātus gave -at, subsequently -ate, e.g. desolātus, desolat, desolate, separātus, separat, separate. Many of these participial adjectives soon gave rise to causative verbs, identical with them in form (see -ate suffix3), to which, for some time, they did duty as past participles, as 'the land was desolat(e by war;' but, at length, regular past participles were formed with the native suffix -ed, upon the general use of which these earlier participial adjectives generally lost their participial force, and either became obsolete or remained as simple adjectives, as in 'the desolate land,' 'a compact mass.' (But cf. situate adj. = situated adj.) So aspirate, moderate, prostrate, separate; and (where a verb has not been formed), innate, oblate, ornate, sedate, temperate, etc. As the French representation of Latin -atus is -é, English words in -ate have also been formed directly after French words in --é, e.g. affectionné, affectionate.


 つまり,-ate 接尾辞は,起源からみればむしろ形容詞にふさわしい接尾辞というべきであり,動詞にふさわしい接尾辞へと変化したのは,中英語期以降の新機軸ということになる.なぜ -ate が典型的な動詞接尾辞となったのかという問題を巡っては,複雑な歴史的事情がある.これについては「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) を参照(また,明日の記事でも扱う予定).
 接尾辞 -ate については,強勢位置や発音などの観点から「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]),「#3685. -ate 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い」 ([2019-05-30-1]),「#3686. -ate 語尾,-ment 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い」 ([2019-05-31-1]),「#1383. ラテン単語を英語化する形態規則」 ([2013-02-08-1]) をはじめ,-ate の記事で取り上げてきたので,そちらも参照されたい.

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2019-08-06 Tue

#3753. 英仏語におけるケルト借用語の比較・対照 [french][celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][gaulish][language_shift][diglossia][sociolinguistics]

 昨日の記事「#3752. フランス語のケルト借用語」 ([2019-08-05-1]) で,フランス語におけるケルト借用語を概観した.今回はそれと英語のケルト借用語とを比較・対照しよう.
 英語のケルト借用語の数がほんの一握りであることは,「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]),「#3750. ケルト諸語からの借用語 (2)」 ([2019-08-03-1]) で見てきた.一方,フランス語では昨日の記事で見たように,少なくとも100を越えるケルト単語が借用されてきた.量的には英仏語の間に差があるともいえそうだが,絶対的にみれば,さほど大きな数ではない.文字通り,五十歩百歩といってよいだろう.いずれの社会においても,ケルト語は社会的に威信の低い言語だったということである.
 しかし,ケルト借用語の質的な差異には注目すべきものがある.英語に入ってきた単語には日常語というべきものはほとんどないといってよいが,フランス語のケルト借用語には,Durkin (85) の指摘する通り,以下のように高頻度語も一定数含まれている(さらに,そのいくつかを英語はフランス語から借用している).

. . . changer is quite a high-frequency word, as are pièce and chemin (and its derivatives). If admitted to the list, petit belongs to a very basic level of the vocabulary. The meanings 'beaver', 'beer', 'boundary', 'change', 'fear' (albeit as noun), 'to flow', 'he-goat', 'oak', 'piece', 'plough' (albeit as verb), 'road', 'rock', 'sheep', 'small', and 'sow' all figure in the list of 1,460 basic meanings . . . . Ultimately, through borrowing from French, the impact is also visible in a number of high-frequency words in the vocabulary of modern English . . . beak, carpentry, change, cream, drape, piece, quay, vassal, and (ultimately reflecting the same borrowing as French char 'chariot') carry and car.


 この質的な差異は何によるものなのだろうか.伝統的な見解にしたがえば,ブリテン島のブリトン人はアングロサクソン人の侵入により比較的短い期間で駆逐され,英語への言語交代 (language_shift) も急速に進行したと考えられている.一方,ガリアのゴール人は,ラテン語・ロマンス祖語の話者たちに圧力をかけられたとはいえ,長期間にわたり共存する歴史を歩んできた.都市ではラテン語化が進んだとしても,地方ではゴール語が話し続けられ,diglossia の状況が長く続いた.言語交代はあくまでゆっくりと進行していたのである.その後,フランス語史にはゲルマン語も参入してくるが,そこでも劇的な言語交代はなかったとされる.どうやら,英仏語におけるケルト借用語の質の差異は言語接触 (contact) と言語交代の社会的条件の違いに帰せられるようだ.この点について,Durkin (86) が次のように述べている.

. . . whereas in Gaul the Germanic conquerors arrived with relatively little disruption to the existing linguistic situation, in Britain we find a complete disruption, with English becoming the language in general use in (it seems) all contexts. Thus Gaul shows a very gradual switch from Gaulish to Latin/Romance, with some subsequent Germanic input, while Britain seems to show a much more rapid switch to English from Celtic and (maybe) Latin (that is, if Latin retained any vitality in Britain at the time of the Anglo-Saxon settlement).


 この英仏語における差異からは,言語接触の類型論でいうところの,借用 (borrowing) と接触による干渉 (shift-induced interference) の区別が想起される (see 「#1985. 借用と接触による干渉の狭間」 ([2014-10-03-1]), 「#1780. 言語接触と借用の尺度」 ([2014-03-12-1])) .ブリテン島では borrowing の過程が,ガリアでは shift-induced interference の過程が,各々関与していたとみることはできないだろうか.
 フランス語史の光を当てると,英語史のケルト借用語の特徴も鮮やかに浮かび上がってくる.これこそ対照言語史の魅力である.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-05 Mon

#3752. フランス語のケルト借用語 [french][celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][gaulish][hybrid]

 連日英語におけるケルト諸語からの借用語を話題にしているが,観点をかえてフランス語におけるケルト借用語の状況を,Durkin (83--87) に依拠してみていこう.
 ローマ時代のフランス(ガリア)では,ラテン語と並んで土着のゴール語 (Gaulish) も長いあいだ用いられていた.都市部ではラテン語や(ロマンス祖語というべき)フランス語の前身が主として話されていたが,地方ではゴール語も粘り強く残っていたようだ.この長期にわたる接触の結果として,後のフランス語には,英語の場合よりも多くのケルト借用語が取り込まれてきた.とはいっても,100語を越える程度ではある(見方によって50--500語までの開きがある).ただし,「#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ」 ([2019-08-02-1]) で英語の場合について議論を展開したように,借用の時期やルートの特定は容易ではないようだ.この数には,ラテン語時代に借用されたものや,いくつもの言語の仲介を経て間接的に借用されたものなども含まれており,フランス語話者とゴール語話者の直接の接触に帰せられるべきものばかりではない.
 上記の問題点に注意しつつ,以下に意味・分野別のケルト借用語リストの一部を挙げよう (Durkin 84) .

 ・ 動物:bièvre "beaver", blaireau "badger", bouc "billy goat", mouton "sheep", vautre "type of hunting dog"; chamois "chamois", palefroi "palfrey", truie "sow" (最後の3つは混種語)
 ・ 鳥:alouette "lark", chat-huant "tawny owl"
 ・ 魚:alose "shad", loche "loach", lotte "burbot", tanche "tench", vandoise "dace", brochet "pike"; limande "dab" (ケルト接頭辞を示す)

 これらの「フランス単語」のうち,後に英語に借用されたものもある.mutton, palfrey, loach, tench, chamois などの英単語は,実はケルト語起源だったということだ.しかし,英単語 buck, beaver などは事情が異なり,フランス語の bièvre, bouc との類似は借用によるものではなく,ともに印欧祖語にさかのぼるからだろう.brasserie (ビール醸造)や cervoise (古代の大麦ビール)などは,ゴール人の得意分野を示しているようでおもしろい.
 フランス語におけるケルト借用語のその他の候補をアルファベット順に挙げてみよう (Durkin 84) .

arpent'measure of land'
bec'beak'
béret'beret'
borne'boundary (marker)'
boue'mud'
bouge'hovel, dive' (earlier 'bag')
bruyère'heather, briar-root'
changer'to change'
char'chariot' (reflecting a borrowing which had occurred already in classical Latin, whence also charrue 'plough')
charpente'framework' (originally the name of a type of chariot)
chemin'road, way'
chêne'oak'
craindre (partly)'to fear'
crème'cream'
drap'sheet, cloth'
javelot'javelin'
lieue'league (measure of distance)'
marne'marl' (earlier marle, hence English marl)
pièce'piece'
ruche'beehive'
sillon'furrow'
soc'ploughshare'
suie'soot'
vassal'vassal'
barre'bar'
jaillir'to gush, spring, shoot out'
quai'quay'


 英仏語におけるケルト借用語の傾向の差異という話題については,明日の記事で.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

Referrer (Inside): [2019-08-06-1]

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2019-06-17 Mon

#3703.『英語教育』の連載第4回「なぜ比較級の作り方に -er と more の2種類があるのか」 [notice][hel_education][elt][sobokunagimon][adjective][adverb][comparison][rensai][latin][french][synthesis_to_analysis][link]

 6月14日に,『英語教育』(大修館書店)の7月号が発売されました.英語史連載記事「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第4回目として拙論「なぜ比較級の作り方に -er と more の2種類があるのか」が掲載されています.是非ご覧ください.

『英語教育』2019年7月号


 形容詞・副詞の比較表現については,本ブログでも (comparison) の各記事で扱ってきました.以下に,今回の連載記事にとりわけ関連の深いブログ記事のリンクを張っておきますので,あわせて読んでいただければ,-ermore に関する棲み分けの謎について理解が深まると思います.

 ・ 「#3617. -er/-estmore/most か? --- 比較級・最上級の作り方」 ([2019-03-23-1])
 ・ 「#3032. 屈折比較と句比較の競合の略史」 ([2017-08-15-1])
 ・ 「#456. 比較の -er, -est は屈折か否か」 ([2010-07-27-1])
 ・ 「#2346. more, most を用いた句比較の発達」 ([2015-09-29-1])
 ・ 「#403. 流れに逆らっている比較級形成の歴史」 ([2010-06-04-1])
 ・ 「#2347. 句比較の発達におけるフランス語,ラテン語の影響について」 ([2015-09-30-1])
 ・ 「#3349. 後期近代英語期における形容詞比較の屈折形 vs 迂言形の決定要因」 ([2018-06-28-1])
 ・ 「#3619. Lowth がダメ出しした2重比較級と過剰最上級」 ([2019-03-25-1])
 ・ 「#3618. Johnson による比較級・最上級の作り方の規則」 ([2019-03-24-1])
 ・ 「#3615. 初期近代英語の2重比較級・最上級は大言壮語にすぎない?」 ([2019-03-21-1])

 ・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第4回 なぜ比較級の作り方に -er と more の2種類があるのか」『英語教育』2019年7月号,大修館書店,2019年6月14日.62--63頁.

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2019-05-05 Sun

#3660. 変なスペリングの queue [spelling][french][loan_word][doublet][q][vowel][digraph][sobokunagimon]

 先日,素朴な疑問として「#3649. q の後には必ず u が来ますが,これはどういうわけですか?」 ([2019-04-24-1]) を本ブログで取り上げたところ,読者の方より,queue (列)という妙なスペリングの単語があることを指摘してもらった.<ueue> と母音字が4つも続くのは,英語のスペリングとしては破格だからだ.フランスからの借用語であるこの語については,意味的な観点および英語の英米差という観点から,かつて「#1754. queue」 ([2014-02-14-1]) で話題にしたが,スペリングについては考えたことはなかったので,ここにコメントを加えておきたい.
 先日の記事 ([2019-04-24-1]) では,<qu> ≡ /kw/ と単純にとらえたが,実は <qu> ≡ /k/ であることも少なくない.critique, technique, unique などの語末に現われるケースはもとより,quay, conquer, liquor など語頭や語頭に現われても /kw/ ではなく /k/ となる例は,そこそこ見られる(cf. 「#383. 「ノルマン・コンケスト」でなく「ノルマン・コンクェスト」」 ([2010-05-15-1])).今回注目している queue /kjuː/ もこれらの仲間だ.
 queue の母音部分のスペリングをみると <eu> ≡ /juː/ となっており,これは一応英語のスペリング規則に沿ってはいる.neurotic, leukaemia; feudal, neuter; adieu, deuce, lieu など (Upward and Davidson 163) に確認される対応だが,これらは純粋な英語のスペリング規則というよりは,それぞれギリシア語,ラテン語,フランス語からの借用語として原語のスペリング習慣を引き継いだものとみるほうが妥当かもしれない(しかも,これらのいくつかの単語では (yod-dropping) の結果 <eu> ≡ /uː/ となっている).語末の <e> は,借用元のフランス語にもあるからあるのだと説明してもよいが,同時に英語のスペリング規則では <u> で単語を終えることができないからと説くこともできそうだ(「#2227. なぜ <u> で終わる単語がないのか」 ([2015-06-02-1]) を参照).
 ちなみに,先の記事 ([2014-02-14-1]) でも触れたように,queuecue (突き棒;弁髪)とは同根語,換言すればスペリングを違えただけの2重語 (doublet) である(ちょうど「#183. flowerflour」 ([2009-10-27-1]) のようなもの).いずれも同一のフランス単語に由来するが,スペリングを違えることで異なる語であるかのようにみなすようになったのは,英語における独自の発達である.
 いずれにせよ queue のスペリングは, <ueue> と母音字が4つ続く点で,きわめて破格的であることは間違いない.ご指摘ありがとうございました.

 ・ Upward, Christopher and George Davidson. The History of English Spelling. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2011.

Referrer (Inside): [2019-05-22-1]

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2019-05-02 Thu

#3657. mountain, mount, Mt. [etymology][latin][french][loan_word][abbreviation]

 Mt. Fuji is the highest mountain in Japan. には,Mt. (= mount) と mountain という「山」を意味する2つの単語が現われる.固有名詞とともに現われる場合には mount (表記上はたいてい省略して Mt.)を用い,一般名詞としては mountain を用いる.
 古英語で普通に「山」を意味する語は本来語の beorg (ドイツ語 Berg)だった.しかし,すでに古英語期から,ラテン語で「山」を意味する mōns, mont- が借用語 munt として入っており,用いられることはあった.さらに中英語期になると,同語源で古フランス語の語形 mont にも強められるかたちで通用されるようになった(MEDmount n.(1) を参照).現代英語では,一般名詞としては文語・古語としての響きを有し,上記のように Mt. として固有名詞の一部として用いられるのが普通である.
 一方,mountain は13世紀後半に初出する.語源は先にもあげたラテン語 mōns, mont- の形容詞形ともいうべきもので,俗ラテン語の *montānea(m) (regiōnem) (= "mountainous region") から古フランス語形 montagne を経て,英語に mountain(e n. として入ってきたものである.現在までに最も普通の「山」を表わす一般名詞として発展してきた.(考えてみると,mountainous という形容詞は,語源的には形容詞の,そのまた形容詞ということになっておもしろい.)
 実は Mt. という省略表記の使用の歴史について知りたいと思い,いくつかの歴史辞書でこれらの語を引いてみたのだが,ほとんど情報がない.別の資料にあたって調べてみる必要がありそうだ.ちなみに,関連するかもしれないと思って調べてみた MrMrs などの表記については,およそ初期近代に遡るという(cf. 「#895. Miss は何の省略か?」 ([2011-10-09-1])).

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2019-02-20 Wed

#3586. 外来複数形 [plural][latin][greek][french][italian]

 英語の不規則複数形をとる名詞には,外来複数形と呼ばれる一群がある.主として近代英語以降にラテン語,ギリシア語,フランス語,イタリア語などから借用された学術・専門語で,原語における複数形を保っているものだ.現代にかけて,英語の規則的な語尾 -(e)s を取るようになったものも少なくないが,それらも含めて代表的な単語を,『徹底例解ロイヤル英文法』に依拠して以下に示そう.
 特にラテン系 -us 名詞に見られる20世紀中の規則複数化の流れについては,Hotta の拙論を参照(関連して,「#121. octopus の複数形」 ([2009-08-26-1]),「#161. rhinoceros の複数形」 ([2009-10-05-1]) も).

1. ラテン語系の名詞
  1.1 -us で終わる語
    a) -us [əs] → -i [aɪ]
      alumnus (男子卒業生) → alumni
      bacillus (バチルス菌) → bacilli
      esophagus (食堂) → esophagi
      locus (軌跡) → loci, loca
      stimulus (刺激) → stimuli
    b) 規則複数語尾 -es をつけるもの
      apparatus (装置) → apparatuses
      bonus (ボーナス) → bonuses
      campus (校庭) → campuses
      caucus (幹部会議) → caucuses
      chorus (コーラス) → choruses
      circus (サーカス) → circuses
      impetus (起動力) → impetuses
      minus (負の数,マイナス符号) → minuses
      prospectus (学校などの案内) → prospectuses
      sinus (洞) → sinuses
      status (地位) → statuses
    c) -us → -i の変化と -es の両様のもの
      cactus (サボテン) → cacti, cactuses
      cirrus (巻雲) → cirri, cirruses
      cumulus (積雲) → cumuli, cumuluses
      focus (焦点) → foci, focuses
      fungus (きのこなどの菌類) → fungi, funguses
      genius (守護神;天才) → genii (守護神),geniuses (天才)
      nimbus (乱雲) → nimbi, nimbuses
      nucleus (原子核) → nuclei, nucleuses
      radius (半径) → radii, radiuses
      stratus (層雲) → strati, stratuses
      syllabus (教授細目) → syllabi, syllabuses
      terminus (末端,終着駅) → termini, terminuses
    d) その他
      corpus (集大成,言語資料) → corpora, corpuses
      genus (属) → genera, genuses
  1.2 -a で終わる語
    a) -a [ə] → -ae [iː]
      alga (藻) → algae
      alumna (女子卒業生) → alumnae
      larva (幼虫) → larvae
    b) 規則複数語尾 -s をつけるもの
      area (地域) → areas
      arena (闘技場) → arenas
      dilemma (ジレンマ) → delemmas
      diploma (学位免状) → diplomas [まれに diplomata もあり]
      drama (ドラマ) → dramas
      era (時代) → eras
    c) -a → -ae と -s の両様のもの
      antenna (触角;アンテナ) → antennae (触覚), antennas (アンテナ)
      formula (公式) → formulae, formulas
      nebula (星雲) → nebulae, nebulas
      vertebra (脊椎) → vertebrae, vertebras
  1.3 -um で終わる語
    a) -um [əm] → -a [ə]
      addendum (付録) → addenda
      bacterium (バクテリア) → bacteria
      corrigendum (ミスプリント) → corrigenda (正誤表)
      datum (データ) → data
      desideratum (切実な要求) → desiderata
      erratum (誤植) → errata (正誤表)
      ovum (卵子) → ova
    b) 規則複数語尾 -s をつけるもの
      album (アルバム) → albums
      chrysanthemum (菊) → chrysanthemums
      forum (討論会) → forums [まれに fora もあり]
      museum (博物館) → museums
      premium (割り増し金) → premiums
      stadium (スタジアム) → stadiums [まれに stadia もあり]
    c) -um → -a と -s の両様のもの
      aquarium (水族館) → aquaria, aquariums
      curriculum (教育課程) → curricula, curriculums
      maximum (最大限) → maxima, maximums
      medium (媒介物) → media, mediums [media が単数形,medias が複数形という用法もあり]
      memorandum (メモ) → memoranda, memorandums
      millennium (千年間) → millennia, millenniums
      minimum (最小限) → minima, minimums
      moratorium (支払い猶予期間) → moratoria, moratoriums
      podium (指揮台,葉柄) → podia, podiums
      referendum (国民投票) → referenda, referendums
      spectrum (スペクトル) → spectra, spectrums
      stratum (地層) → strata, stratums
      symposium (シンポジウム) → symposia, symposiums
      ultimatum (最後通告) → ultimata, ultimatums
  1.4 -ex, -ix で終わる語
    a) -ex [ɛks], -ix [ɪks] → -ices [ɪsiːz]
      codex (古写本) → codices
    b) -ex, -ix → -ices と -es の両様のもの
      apex (頂点) → apices, apexes
      appendix (付録,虫垂) → appendices, appendixes [「虫垂」の意味の複数形は appendixes]
      index (指標) → indices, indexes [「索引」の意味の複数形は indexes]
      matrix (母体,行列) → matrices, matrixes
      vortex (渦) → vortices, vortexes
2. ギリシャ語系の名詞の複数形
  2.1 -is [ɪs] で終わる語
    a) 語尾は -es [iːz] になる。
      analysis (分析) → analyses
      axis (軸) → axes [ax(e) 「斧」の複数 (発音は [ɪz])ともなることに注意]
      basis (理論的基礎) → bases [base 「基地」の複数 (発音は [ɪz])ともなることに注意]
      crisis (危機) → crises
      diagnosis (診断) → diagnoses
      ellipsis (省略) → ellipses [ellipse 「長円」の複数 (発音は [ɪz])ともなることに注意]
      hypothesis (仮説) → hypotheses
      oasis (オアシス) → oases
      paralysis (麻痺) → paralyses
      parenthesis (丸かっこ) → parentheses
      synopsis (概要) → synopses
      synthesis (総合,合成) → syntheses
      thesis (論文) → theses
    b) 規則複数語尾 -es をつけるもの
      metropolis (首都,大都会) → metropolises
  2.2 -on で終わる語
    a) -on [ən] → -a [ə]
      criterion (判断の基準) → criteria
      phenomenon (現象) → phenomena
    b) 規則複数語尾 -s をつけるもの
      electron (電子) → electrons
      neutron (中性子) → neutrons
      proton (陽子) → protons
    c) -on → -a と -s の両様のもの
      automaton (自動装置,ロボット) → automata, automatons
      ganglion (神経節) → ganglia, ganglions
3. フランス語系の名詞の複数形
  3.1 -eau, -eu → -eaux, -eux
    adieu [əˈdjuː] (別れ) → adieux [əˈdjuːz] または adieus
    bureau [ˈbjʊəroʊ] (事務局) → bureaux [ˈbjʊəroʊz] または bureaus
    plateau [ˈplætou] (高原) → plateaux [ˈplætoʊz] または plateaus
    tableau [ˈtæbloʊ] (絵) → tableaux [ˈtæbloʊz] または tableaus
  3.2 単複同 (ただし複数のときのみ -s [z] を発音する)
    corps (団) → corps
    chassis [ˈʃæsi(ː)] (自動車の車台,シャシー) → chassis
    faux pas [foʊ pɑː] (エチケットに反する失敗) → faux pas
    rendezvous [ˈrɑːndəˌvuː] (約束による会合) → rendezvous
4. イタリア語系の名詞の複数形
  4.1 -o → -i
    libretto (脚本) → libretti [-iː] または librettos
    tempo (テンポ) → tempi [-iː] または tempos
    virtuoso (巨匠) → virtuosi [-iː] または virtuosos
  4.2 規則複数語尾 -s をつけるもの
    solo (独奏[唱]) → solos
    soprano (ソプラノ) → sopranos

 ・ 綿貫 陽(改訂・著);宮川幸久, 須貝猛敏, 高松尚弘(共著) 『徹底例解ロイヤル英文法』 旺文社,2000年.
 ・ Hotta, Ryuichi. "Thesauri or Thesauruses? A Diachronic Distribution of Plural Forms for Latin-Derived Nouns Ending in -us." Journal of the Faculty of Letters: Language, Literature and Culture. 106 (2010): 117--36.

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2019-02-16 Sat

#3582. 中英語期のフランス借用語,ラテン借用語,"mots savants" (2) [french][latin][loan_word][lexicology][etymology][borrowing]

 昨日の記事 ([2019-02-15-1]) で,標題に関する Ellenberger の批評を紹介した.中英語の学問語 (= "mots savants") のソース言語に関する伝統的な見解は,不当にフランス語寄りではないかという問題提起である.では,Ellenberger 自身は,この問題についてどのような姿勢を取るのがふさわしいと考えているのだろうか.論文の終わりに,4箇条を掲げている (149--50) .

   1. Words are borrowed not once and for all but many times and from many sources.
   2. A Latin word borrowed into either of Anglo-French or English would be given an ending prescribed by Anglo-Norman scribal tradition.
   3. Words could be borrowed from Latin or French depending on what spheres of society the borrowers moved in. Clerics would be more likely to borrow from Latin than would laics.
   4. As the medieval libraries of England contained mainly Latin books and school curricula concentrated on Latin texts, learned words borrowed into French from written Latin sources would be more likely also to have entered English from those same sources than through French.


 英語史では,中英語の借用語の話題といえばフランス語がさらっていく.しかし,学問語に関する限り,中英語期のラテン語からの借用は,一般に思われているよりもずっと豊富だったことに注意したい.関連して,「#120. 意外と多かった中英語期のラテン借用語」 ([2009-08-25-1]),「#1211. 中英語のラテン借用語の一覧」 ([2012-08-20-1]),「#2961. ルネサンスではなく中世こそがラテン語かぶれの時代?」 ([2017-06-05-1]),「#292. aureate diction」 ([2010-02-13-1]) を参照.

 ・ Ellenberger, Bengt. "On Middle English Mots Savants." Studia Neophilologica 46.1 (1974): 142--50.

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2019-02-15 Fri

#3581. 中英語期のフランス借用語,ラテン借用語,"mots savants" (1) [french][latin][loan_word][lexicology][etymology][borrowing]

 「#653. 中英語におけるフランス借用語とラテン借用語の区別」 ([2011-02-09-1]),「#848. 中英語におけるフランス借用語とラテン借用語の区別 (2)」 ([2011-08-23-1]) で論じてきたように,とりわけ中英語期にラテン語・フランス語から入ってきた借用語は,いずれの言語をソースとするのか判然としないケースが多い.ラテン語なのか,ラテン語化したフランス語なのか,フランス語なのか,フランス語化したラテン語なのか,等々.
 OED を中心とする,この問題に対する伝統的な対処法として,「フランス語形が文証されればフランス語を借用元言語とし,そうでない場合に限ってラテン語をソースとみなす」ことが一般的だった.もう少し強くいってしまえば,判然としない場合には,フランス語をソースとみなすのをデフォルトとしようというスタンスだ.Ellenberger (142) は,この立場を紹介しながら,それに対する批判的な見解を示している.

. . . the 'learned words' . . . could have been taken either from French or directly from Latin. The difficulty of determining the exact source has been recognized with varying hesitation. Foremost in Francophilia stands the Oxford English Dictionary, which regards as borrowed from Latin only those words that have not been recorded in French; in addition, French forms are often postulated. To the author's knowledge, no scholar before Marchand has openly criticized this procedure.


 Ellenberger が引用中で同じ意見の仲間として引き合いに出している H. Marchand は,The Categories and Types of Present-Day English Word-Formation (2nd ed. München, 1969) の p. 238 で次のように述べている (Ellenberger 142fn) .

It would . . . be an erroneous standpoint to be always looking for the Latin original or the French pattern of a word (which the OED often does). The existence of an actual pattern is irrelevant so long as, potentially, the coinage is Latin. . . . the principle of assuming an actual original is wrong.


 借用元の形態が文証されるからフランス語であるとか,そうでないからラテン語であるとか,そのような議論はおそらく成り立たないだろうということだ.Ellenberger (148) 自身の言葉でいえば,次のような議論となる.

The clerks knew about adaptation and suffixation; they were used to latinizing English names, and sometimes words, and we may trust them to have been able to anglicize a Latin word in the same way as they or the French would have Frenchified it. To request a French intermediary for each and every word is to deny the knowledge of Latin in England. To regard an English word as a loan from French because a corresponding French loan is recorded a few years earlier in an ever so obscure source is to fall a victim to the perilous argument of post hoc, ergo propter hoc; as far as we know, no annual lists of new French words circulated among English clerks. Whether a learned word occurs first in French or English is simply a matter of chance, need, and literary activity.


 中英語期の学問語 (= "mots savants") のソースがフランス語なのかラテン語なのかという問題を議論することよりも大事なことは,むしろそれが一般のフランス借用語とは異なるレベルに属することを再認識することだろう.Ellenberger (150) が,論文の最後で次のように述べている通りである.

A far more useful distinction than that between learned words that might have and those that could not have been mediated by French is that between Romance popular and learned words. Middle English mots savants are latinisms and should be treated as such.


 なお,Ellenberger では,OED が上記のように槍玉に挙げられているが,現在編纂が進んでいるOED3 の編者の1人である Durkin は,この問題に柔軟な態度を示していることを付け加えておきたい.「#848. 中英語におけるフランス借用語とラテン借用語の区別 (2)」 ([2011-08-23-1]) を参照.

 ・ Ellenberger, Bengt. "On Middle English Mots Savants." Studia Neophilologica 46.1 (1974): 142--50.

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2018-10-29 Mon

#3472. 慶友会講演 (1) --- 「歴史上の大事件と英語」 [keiyukai][hel_education][slide][christianity][runic][latin][loan_word][bible][norman_conquest][french][ame_bre][spelling][webster][history]

 一昨日,昨日と「#3464. 大阪慶友会で講演します --- 「歴史上の大事件と英語」と「英語のスペリングの不思議」」 ([2018-10-21-1]) で案内した大阪慶友会での講演が終了しました.参加者のみなさん,そして何よりも運営関係者の方々に御礼申し上げます.懇親会も含めて,とても楽しい会でした.
 1つめの講演「歴史上の大事件と英語」では「キリスト教伝来と英語」「ノルマン征服と英語」「アメリカ独立戦争と英語」の3点に注目し「英語は,それを話す人々とその社会によって形作られてきた歴史的な産物である」ことを主張しました.休憩を挟んで180分にわたる長丁場でしたが,熱心に聞いていただきました.通時的な視点からみることで,英語が立体的に立ち上がり,今までとは異なった見え方になったのではないかと思います.
 この講演で用いたスライドを,以下にページごとに挙げておきます.

   1. 「歴史上の大事件と英語」
   2. はじめに
   3. 英語史の魅力
   4. 取り上げる話題
   5. I. キリスト教伝来と英語
   6. 「キリスト教伝来と英語」の要点
   7. ブリテン諸島へのキリスト教伝来
   8. 1. ローマン・アルファベットの導入
   9. ルーン文字とは?
   10. ルーン文字の起源
   11. 知られざる真実 現存する最古の英文はルーン文字で書かれていた!
   12. 古英語アルファベットは27文字
   13. 2. ラテン語の英語語彙への影響
   14. ラテン語からの借用語の種類と謎
   15. 外来宗教が英語と日本語に与えた言語的影響の比較
   16. 3. 聖書翻訳の伝統の開始
   17. 各時代の英語での「主の祈り」の冒頭
   18. 聖書に由来する表現
   19. 「キリスト教伝来と英語」のまとめ
   20. II. ノルマン征服と英語
   21. 「ノルマン征服と英語」の要点
   22. 1. ノルマン征服とは?
   23. ノルマン人の起源
   24. ノルマン人の流入とイングランドの言語状況
   25. 2. 英語への言語的影響は?
   26. 語彙への影響
   27. 英語語彙におけるフランス借用語の位置づけ
   28. 語形成への影響
   29. 綴字への影響
   30. 3. 英語への社会的影響は?
   31. 堀田,『英語史』 p. 74 より
   32. 「ノルマン征服と英語」のまとめ
   33. III. アメリカ独立戦争と英語
   34. 「アメリカ独立戦争と英語」の要点
   35. 1. アメリカ英語の特徴
   36. 綴字発音 (spelling pronunciation)
   37. アメリカ綴字
   38. アメリカ英語の社会言語学的特徴
   39. 2. アメリカ独立戦争(あるいは「アメリカ革命」 "American Revolution")
   40. アメリカ英語の時代区分
   41. 独立戦争とアメリカ英語
   42. 3. ノア・ウェブスターの綴字改革
   43. ウェブスター語録 (1)
   44. ウェブスター語録 (2)
   45. ウェブスターの綴字改革の本当の動機
   46. 「アメリカ独立戦争と英語」のまとめ
   47. おわりに
   48. 参考文献

Referrer (Inside): [2018-10-31-1] [2018-10-30-1]

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2018-10-07 Sun

#3450. 「余はフランス人でありフランス語を話す」と豪語した(はずの)ヘンリー2世 [monarch][french][map]

 ヘンリー2世 (Henry II; 1133--89年;統治1154--89年) は,Plantagenet 王朝の開祖,イングランド王にして,12世紀半ばの西ヨーロッパに突如出現したアンジュー帝国 (the Angevin Empire) の「皇帝」である.先祖代々の継承地に加え,アリエノールとの結婚によって獲得した土地,そして征服や外交によって得た領土を含め,イギリス海峡をまたいだ広大な地域を治めることになった.具体的には,次の地図(君塚,p. 73の「アンジュー帝国」より)の示すとおり,勢力範囲はスコットランド国境からピレネー山脈に及んでおり,実力としては対抗するフランス王を優に超えていた.

Map of the Angevin Empire

 ヘンリー2世は,軍役代納金の本格的導入,法制・財政の諸制度改革,巡回裁判制度の拡充,聖職者や教会の特権の制限,自由都市の認可など数々の業績を残した.カンタベリー大司教ベケットとの対立したり,野心的な拡張主義を実践したという側面はあるが,英王と評価してよいだろう.しかし,英語史の観点からいえば,イングランド王でありながら,フランス人であることを主張し,フランス語で押し通したという点に注目したい.森 (47) 曰く,

ヘンリー二世は,「イングランド王ではあったが,決してイングランド人の王ではなかった」とも評されている.プランタジニット王家は,アーンジュ家の血を引くことから「アーンジュ王家」とも呼ばれるが,彼の場合は,まさしくアーンジュの人,つまりフランス人で押し通し,フランスからイェルサレムまでの言葉を理解したといわれながらも,遂にイングランドの言葉は全く理解しなかったし,その努力もしなかった.そのイングランドにおける統治の充実も,飽くまでも大陸における彼の野望達成のための手段であったとする見方もある.彼が「短いマント (Curtmantle)」のニックネイムで呼ばれたのも,それまでの長いローブとは異なる,アーンジュ・スタイルのマントを持ちこんだことによる.


 この種の「フランスかぶれ」は,ノルマン王家とプランタジネット王家においては珍しくもない当たり前の事実だったが,ヘンリー2世は,その後を継いだ息子のリチャード1世に比べれば,ノルマンディとイングランドをそこそこ足繁く往復していた方ではあるといえるだろう (cf. 「#3447. Richard I のイングランド滞在期間は6か月ほど」 ([2018-10-04-1])) .皇帝は出不精ではいけない,フットワークの軽さが重要である.

 ・ 森 護 『英国王室史話』16版 大修館,2000年.

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2018-09-26 Wed

#3439. St. Ives の「通り」の表現 [toponym][loan_word][french][latin][old_norse][italian]

 英語の通りの名前に用いられる「通り」に相当する名詞は,種類が豊富である.日本語では「〜通り」「〜道」「〜街道」がある程度だが,英語では様々な語源に由来する種々の名前が用いられる.以下は,デイヴィスとレヴィットの英語地名の著書 (8--9) で紹介されている Cambridgeshire の町,St. Ives に見られる数々の「通り」を表わす語を語源ごとに整理した一覧である.

[ 英語 ]
  mews (うま屋,あるいは鳥小屋のあった通り),road (馬場,ride の母音交替による名詞形),lane (小路),yard,row (家の列),hill,way,walk,drove (家畜の群を追う際に通る道,drive の名詞形),grove (小森,神の森),lea,ley (共に,農地,耕地)

[ フランス語(<ラテン語<ギリシア語) ]
  place, gardens, court, avenue, square, crescent (三日月形の通り),close (袋小路),terrace (山の手に建てられた家並み),passage,market (市場のある通り)

[ ラテン語 ]
  street, circus (そこから道が放射状に延びている広場)

[ 古ノルド語 ]
  gate (通り,あるいは門)

[ イタリア語 ]
  villa (領主の邸宅のある通り)

 St. Ives では,1つの町のなかに様々な言語に由来する「通り」の表現が混在している.St. Ives が特別なわけではなく,むしろイギリスの町並みと地名を象徴する1例にすぎないととらえるべきだろう.地名の1つひとつに,その土地の歴史が刻まれているのだ.地名学の魅力を感じさせる.

 ・ デイヴィス,C. S.・J. レヴィット(著),三輪 伸春(監訳),福元 広二・松元 浩一(訳) 『英語史でわかるイギリスの地名』 英光社,2005年.

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2018-09-21 Fri

#3434. 近代英語期までもつれこんだ英語の公用語化 [reestablishment_of_english][me][french][latin][law_french][norman_conquest]

 ノルマン征服により,イングランドの公用語はフランス語およびラテン語となった.英語は非公式の言語として地下に潜ったわけだが,その後の数世紀をかけてゆっくりと,しかし着実に復権を遂げていった.この経緯については,reestablishment_of_english の数々の記事で取り上げてきたが,とりわけ以下の記事を挙げておこう.

 ・ 「#131. 英語の復権」 ([2009-09-05-1])
 ・ 「#324. 議会と法廷で英語使用が公認された年」 ([2010-03-17-1])
 ・ 「#336. Law French」 ([2010-03-29-1])
 ・ 「#1207. 英語の書き言葉の復権」 ([2012-08-16-1])
 ・ 「#3096. 中英語期,英語の復権は徐ろに」 ([2017-10-18-1])
 ・ 「#3265. 中世から初期近代まで行政の書き言葉標準はずっとラテン語だった」 ([2018-04-05-1])

 君塚 (134--35) は,公用語としての英語の復権を13世紀以降の流れのなかで描いているが,その終点はといえば,近代に入った1649年である.

 なお,「ノルマン征服」以後,イングランド貴族の日常言語はフランス語であり,公式の文書などにはラテン語が用いられてきた.これがジョンによる「ノルマン喪失」以降,貴族間でも英語が日常的に使われ,エドワード3世治世下の一三六三年からは議会での日常語は正式に英語と定められた.庶民院にはフランス語ができない層が数多くいたこととも関わっていた.
 議会の公式文書のほうは,一五世紀前半まではラテン語とともにフランス語が使われていたが,一四八九年からは法令の草稿も英語となった(議会制定法自体はラテン語のまま).最終的に法として認められる「国王による裁可」(ロイヤル・アセント)も,一七世紀前半まではフランス語が使われていたが,共和制の到来(一六四九年)とともに英語に直され,以後今日まで続いている.


 だが,さらに後の話題もある.法律を含めた公文書が英語で書かれなければならなくなる,いわゆる「ラテン語の全廃」は,ハノーヴァー朝の1713年のことである.イングランドは,ノルマン征服以降,英語を公的な場に完全に取り戻すのに,ざっと650年を要したことになる.

 ・ 君塚 直隆 『物語 イギリスの歴史(上下巻)』 中央公論新社〈中公新書〉,2015年.

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