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lexicography - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2021-10-28 08:22

2021-10-24 Sun

#4563. OALD10 活用ガイド [dictionary][lexicography][notice][elt]

 昨年出版された英英辞書 Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English の第10版 (= OALD10) について,以下の記事を書いてきた.

 ・ 「#4518. OALD10 の世界英語のレーベル15種」 ([2021-09-09-1])
 ・ 「#4520. Oxford 3000, Oxford 5000, OPAL の語彙」 ([2021-09-11-1])
 ・ 「#4533. OALD10 が注意を促している同音異綴語の一覧」 ([2021-09-24-1])

 入手してからなるべく多くの機会に冊子体なりオンライン版なりを使うようにしているが,いやはや,辞書として本当に進化しているなという印象である.とりわけオンライン版では,辞書の基本機能はもちろん,コロケーションなどの応用機能も利用できる.文法学習のコーナーも充実しているし,先の記事で紹介した Oxford 3000 などのワードリストも入手できる.英文テキストを投げ込むと,各単語が頻度やレベルに応じて色づけされて返ってくる Text Checker というサービスもある.その他,スピーキングやライティングの学習にも役立つリソースが用意されている.サイトを探検しているだけで英語の学習になるほどだ.
 旺文社の特設ページより OALD10 の活用ガイドを入手できる.「OALD10活用ガイド 辞書編」「OALD10活用ガイド アプリ/Web編」の2種類のPDFがあり,とりわけ前者は辞書学の研究者である山田茂氏による,同辞書の使い方の丁寧な解説となっており,たいへん有用.
 OALD10 の辞書学の観点からの本格的な分析(100頁以上にわたる!)は Takahashi et al. を参照されたい.

 ・ Takahashi, Rumi, Yukiyoshi Asada, Marina Arashiro, Kazuo Dohi, Miyako Ryu, and Makoto Kozaki. "An Analysis of Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English, Tenth Edition." Lexicon 51 (2021): 1--106.

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2021-10-11 Mon

#4550. 歴史的辞書は言語の中立的な情報源ではない [lexicography][dictionary][cawdrey][johnson][philology]

 言語研究上,辞書はなくてはならない情報源である.本ブログの中心的な話題である英語史研究においても,各時代の辞書や通時的な辞書はなくてはならないツールだ.しかし,辞書とて人の作ったものである.辞書編纂者の生きた時代の言語態度が反映されているものだし,辞書編纂者個人のバイアスもかかっているのが常である.言語研究のためには,この辺りを意識して歴史辞書(および現代の辞書)を用いる必要があるのだが,このようなすぐれてフィロロジカルな観点は意識の外に置かれることが多い.例えば,威信ある OED の情報であれば間違いがあるはずがない,などと絶対的な信頼を寄せてしまうことはよくある.
 近代英語期に目を向けると,例えば英語史上初の英語辞書といわれる 1604年の Robert Cawdrey の A Table Alphabeticall と,時代も下って規範主義が成熟した1755年の Samuel Johnson の A Dictionary of the English Language とでは,編纂された時代背景も異なれば言語態度も異なるので,同じ見出し語の定義などを比べたとしても,そこには確かに通時的な変化が反映されている可能性はあるものの,そもそもの編纂意図が異なるという点を考慮しておかないと痛い目に合うかもしれない.Coleman (99--100) が,この点を指摘している.

For example, the title of Cawdrey's Table Alphabetical (1604) explains that the dictionary was compiled "for the benefit and help of ladies, gentlewomen, or any other unskillful persons. Whereby they may the more easily and better understand many hard English words, which they shall hear or read in scriptures, sermons, or elsewhere, and also be made able to use the same aptly themselves" (spelling modernized). Similarly often quoted is the preface to Johnson's Dictionary of the English Language (1755):

When I took the first survey of my undertaking, I found our speech copious without order, and energetic without rules: wherever I turned my view, there was perplexity to be disentangled, and confusion to be regulated; choice was to be made out of boundless variety, without any established principle of selection. (Johnson 1755: Preface)


   These quotations illustrate changing ideas about the status of English and the purpose of a dictionary. Cawdrey acknowledged that the vocabulary of English was varied and challenging, but apparently did not consider this to be a problem. His purpose was to help uneducated people struggling to understand loans from classical and modern languages: the deficit was in English speakers, not the language. Johnson, on the other hand, considered the exuberance of English to be problematic in itself, and for him the priorities were regulation and control of the language.


 17世紀初めの Cawdrey は問題は英語話者にあると考えていたが,18世紀半ばの Johnson は問題は英語そのものにあると考えていた.辞書編纂のポリシーが互いに異なっていたのも無理からぬことである.
 標題にも掲げた通り「歴史的辞書は言語の中立的な情報源ではない」可能性が高いのだ.一方,この点を逆手に取れば,歴史的辞書を通じて,通時的な言語変化の証拠は得られなくとも,各時代の言語態度をこそ復元できるということなのかもしれない.歴史的辞書は使いようである.

 ・ Coleman, Julie. "Using Dictionaries and Thesauruses as Evidence." Chapter 7 of The Oxford Handbook of the History of English. Ed. Terttu Nevalainen and Elizabeth Closs Traugott. New York: OUP, 2012. 98--110.

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2021-09-24 Fri

#4533. OALD10 が注意を促している同音異綴語の一覧 [homonymy][homophony][lexicography][dictionary][lexicology][pronunciation]

 昨年出版された Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English の第10版に,以前の版にはなかった新タイプの注記が加えられている.同音異綴 (homophony) を示す2語(あるいは3語)の指摘である(cf. 「#286. homonymy, homophony, homography, polysemy」 ([2010-02-07-1])).
 同音異綴語 (homophone) は英語に多数ある.flour/flowerknight/night のように比較的意識に上りやすいものがある一方で,cymbal/symbolflew/flue など言われてみれば確かにそうだなという類いのものもある(ちなみに flour/flower については 「#183. flowerflour」 ([2009-10-27-1]),「#2440. flower と flour (2)」 ([2016-01-01-1]),および 「flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」 (heldio) を参照).
 「#2945. 間違えやすい同音異綴語のペア」 ([2017-05-20-1]) でいくつか例を挙げたが,OALD10 の注記を集めると93項目もの同音異綴語が指摘されている.以下に Takahashi et al. (78--80) にまとめられている一覧を引用しよう.

 ・ allowed/aloud
 ・ bare/bear
 ・ base/bass
 ・ berry/bury
 ・ blew/blue
 ・ board/bored
 ・ brake/break
 ・ buy/by/bye
 ・ cell/sell
 ・ chews/choose
 ・ chute/shoot
 ・ coarse/course
 ・ coward/cowered
 ・ crews/cruise
 ・ cue/queue
 ・ cymbal/symbol
 ・ days/daze
 ・ dear/deer
 ・ desert/dessert
 ・ dew/due
 ・ feat/feet
 ・ flour/flower
 ・ flew/flu
 ・ forth/fourth
 ・ grate/great
 ・ groan/grown
 ・ hear/here
 ・ heal/heel/he'll
 ・ air/heir
 ・ higher/hire
 ・ hole/whole
 ・ idle/idol
 ・ colonel/kernel
 ・ knight/night
 ・ lead/led
 ・ lessen/lesson
 ・ mail/male
 ・ meat/meet
 ・ miner/minor
 ・ missed/mist
 ・ muscle/mussel
 ・ knew/new
 ・ knows/nose
 ・ oar/or/ore
 ・ one/won
 ・ pain/pane
 ・ passed/past
 ・ peace/piece
 ・ pair/pare/pear
 ・ peak/peek/pique
 ・ plain/plane
 ・ praise/prays/preys
 ・ principal/principle
 ・ profit/prophet
 ・ key/quay
 ・ rap/wrap
 ・ raise/rays/raze
 ・ read/red
 ・ read/reed
 ・ rain/reign/rein
 ・ road/rode/rowed
 ・ role/roll
 ・ rose/rows
 ・ rouse/rows
 ・ sail/sale
 ・ scene/seen
 ・ cent/scent/sent
 ・ seas/sees/seize
 ・ cereal/serial
 ・ sight/site
 ・ soar/sore
 ・ sole/soul
 ・ sew/so/sow
 ・ stationary/stationery
 ・ steal/steel
 ・ storey/story
 ・ suite/sweet
 ・ son/sun
 ・ tail/tale
 ・ threw/through
 ・ tide/tied
 ・ toe/tow
 ・ vain/vein
 ・ wail/whale
 ・ waist/waste
 ・ war/wore
 ・ weak/week
 ・ ware/wear/where
 ・ wait/weight
 ・ weather/whether
 ・ whine/wine
 ・ which/witch
 ・ warn/worn

 眺めていると,各単語の綴字と発音のよい勉強になる.なかにはヘェ〜と思うものもあるのでは?

 ・ Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English. 10th ed. Ed. A. S. Hornby. Oxford: Oxford UP, 2020.
 ・ Takahashi, Rumi, Yukiyoshi Asada, Marina Arashiro, Kazuo Dohi, Miyako Ryu, and Makoto Kozaki. "An Analysis of Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English, Tenth Edition." Lexicon 51 (2021): 1--106.

Referrer (Inside): [2021-10-24-1]

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2021-09-11 Sat

#4520. Oxford 3000, Oxford 5000, OPAL の語彙 [lexicology][lexicography][dictionary][keyword][statistics]

 「#4518. OALD10 の世界英語のレーベル15種」 ([2021-09-09-1]) でも紹介したが,昨年 Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English (通称 OALD)の第10版が出版された.改訂とともに進化し続けるこの辞書のファンの1人としては,辞書本文以上に付録的な部分にも注目してしまうのだが,関連して Oxford 3000, Oxford 5000, OPAL と呼ばれる英語学習・教育上の有用な語彙一覧を紹介したい.OALD10 の x--xi に各々の解説がある.

 ・ The Oxford 3000TM
   20億語からなる巨大な The Oxford English Corpus における生起頻度に基づいた,英語学習者を意識して編まれた英単語3000個の一覧.同コーパスは,イギリス英語とアメリカ英語のみならず世界英語を網羅している.最頻2000語で英語テキストの8割の語彙をカバーしているともいわれるが,この3000語の一覧は CEFR (= Common European Framework of Reference) の A1 から B2 までの水準を念頭においた頼りになるリストだ.こちらより一覧をダウンロードできる.

 ・ The Oxford 5000TM
   The Oxford 3000 よりも水準の高い,CEFR の B2 から C1 までの語彙を含めた拡張版の単語一覧.上記と同様こちらから一覧にアクセスできる.

 ・ The Oxford Phrasal Academic LexiconTM
   "OPAL" と略称されている,学術英語 (English for Academic Purposes) に有用な語彙.大学の講義,セミナー,レポート,卒論などの英語を念頭に編まれた単語一覧である.この一覧は,書き言葉コーパス The Oxford Corpus of Academic English (= OCAE) と話し言葉コーパス The British Academic Spoken English (= BASE) をソースとしたキーワード (keyword) 分析に基づくもので,学術英語の習得に役立つ単語一覧である.こちらからアクセスできる.

 昨今の英語学習・教育は実に統計的・科学的になっているなあと感心するばかりだが,英語学・英語史のアカデミックな研究においても語彙の頻度情報というのは基本事項であるから,おおいに活用したい.

 ・ Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English. 10th ed. Ed. A. S. Hornby. Oxford: Oxford UP, 2020.

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2021-09-09 Thu

#4518. OALD10 の世界英語のレーベル15種 [world_englishes][variety][lexicography][dictionary]

 昨年,伝統ある英語学習者用の英英辞書 Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English の第10版 (= OALD10) が出版された.私も第4版や第5版の頃から長らくお世話になっている辞書だが,冊子体のみならず CD/DVD 版で提供される時代になってきたかと思いきや,今回の第10版ではディスク媒体の配布すらなく,アクセスコード付きのオンライン版のみが提供される形となっている.時代は変わったものだ.ただ,重厚な冊子体版は相変わらず健在なので,パラパラめくっては(内容とともに)質感を楽しんでいる.
 OALD は伝統的にイギリス英語を基盤とする記述に定評があるが,無視できない存在であるアメリカ英語の記述にも力を割いてきた経緯がある.さらに昨今は World Englishes の時代ということもあり,世界の諸変種の語彙を取り込んだ編纂方針が目立つようになってきた.実際,今回の第10版では,巻末に "English across the world" と題するコラムが掲載されている.小見出しとして "The spread of English" や "Englishes, not English" という文言もみえる.前者の冒頭は次の通り.

English is spoken as a first language by more than 350 million people throughout the world, and used as a second language by as many, if not more. One in five of the world's population speaks English with some degree of competence. It is an official or semi-official language in over 70 countries, and it plays a significant role in many more.


 続けて世界の地域ごとに英語変種が簡単に解説されていくのだが,辞書で使用される各変種を示すレーベルも同時に紹介される.変種レーベルの一覧は見返しに記載されているが,それを再現すると次の通り15種類が確認される.BrE (= British English), NEngE (= Northern England English), ScotE (= Scottish English), WelshE (= Welsh English), IrishE (= Irish English), US (= American English), CanE (= Canadian English), NAmE (= North American English), AustralE (= Australian English), NZE (= New Zealand English), SAfrE (= South African English), WAfrE (= West African English), EAfrE (= East African English), IndE (= Indian English (the English of South Asia)), SEAsian E (= South-East Asian English) .
 World Englishes の地域ベースの分類としては標準的でバランスのとれたものといってよい.伝統的イギリス系辞書も,このような配慮を示す時代になってきたのだなあ.

 ・ Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English. 10th ed. Ed. A. S. Hornby. Oxford: Oxford UP, 2020.

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2021-08-03 Tue

#4481. 英語史上,2度借用された語の位置づけ [lexicography][lexicology][borrowing][loan_word][latin][lexeme]

 英語史上,2度借用された語というものがある.ある時代にあるラテン語単語などが借用された後,別の時代にその同じ語があらためて借用されるというものである.1度目と2度目では意味(および少し形態も)が異なっていることが多い.
 例えば,ラテン語 magister は,古英語の早い段階で借用され,若干英語化した綴字 mægester で用いられていたが,10世紀にあらためて magister として原語綴字のまま受け入れられた (cf. 「#1895. 古英語のラテン借用語の綴字と借用の類型論」 ([2014-07-05-1])).
 中英語期と初期近代英語期からも似たような事例がみられる.fastidious というラテン語単語は1440年に「傲岸不遜な」の語義で借用されたが,その1世紀後には「いやな,不快な」の語義で用いられている(後者は現代の「気難しい,潔癖な」の語義に連なる).また,Chaucer は artificial, declination, hemisphere を天文学用語として導入したが,これらの語の現在の非専門的な語義は,16世紀の再借用時の語義に基づく.この中英語期からの例については,Baugh and Cable (222--23) が次のような説明を加えている.
 

A word when introduced a second time often carries a different meaning, and in estimating the importance of the Latin and other loanwords of the Renaissance, it is just as essential to consider new meanings as new words. Indeed, the fact that a word had been borrowed once before and used in a different sense is of less significance than its reintroduction in a sense that has continued or been productive of new ones. Thus the word fastidious is found once in 1440 with the significance 'proud, scornful,' but this is of less importance than the fact that both More and Elyot use it a century later in its more usual Latin sense of 'distasteful, disgusting.' From this, it was possible for the modern meaning to develop, aided no doubt by the frequent use of the word in Latin with the force of 'easily disgusted, hard to please, over nice.' Chaucer uses the words artificial, declination, and hemisphere in astronomical sense but their present use is due to the sixteenth century; and the word abject, although found earlier in the sense of 'cast off, rejected,' was reintroduced in its present meaning in the Renaissance.


 もちろん見方によっては,上記のケースでは,同一単語が2度借用されたというよりは,既存の借用語に対して英語側で意味の変更を加えたというほうが適切ではないかという意見はあるだろう.新旧間の連続性を前提とすれば「既存語への変更」となり,非連続性を前提とすれば「2度の借用」となる.しかし,Baugh and Cable も引用中で指摘しているように,語源的には同一のラテン語単語にさかのぼるとしても,英語史の観点からは,実質的には異なる時代に異なる借用語を受け入れたとみるほうが適切である.
 OED のような歴史的原則に基づいた辞書の編纂を念頭におくと,fastidious なり artificial なりに対して,1つの見出し語を立て,その下に語義1(旧語義)と語義2(新語義)などを配置するのが常識的だろうが,各時代の話者の共時的な感覚に忠実であろうとするならば,むしろ fastidious1fastidious2 のように見出し語を別に立ててもよいくらいのものではないだろうか.後者の見方を取るならば,後の歴史のなかで旧語義が廃れていった場合,これは廃義 (dead sense) というよりは廃語 (dead word) というべきケースとなる.いな,より正確には廃語彙項目 (dead lexical item; dead lexeme) と呼ぶべきだろうか.
 この問題と関連して「#3830. 古英語のラテン借用語は現代まで地続きか否か」 ([2019-10-22-1]) も参照.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2021-03-12 Fri

#4337. Horne Tooke の語源奇書 [etymology][dictionary][lexicography][webster][comparative_linguistics][jones]

 昨日の記事「#4336. Richardson の辞書の長所と短所」 ([2021-03-11-1]) で触れたように,Richardson はその独特な言語観と語源記述を Horne Tooke なる人物に負っている.Tooke は,その独善的な語源観により Richardson のみならず Webster をも迷妄に導いた,19世紀後半のイギリスの生んだ個性である.
 John Horne Tooke (1736--1812) は,1758年にケンブリッジ大学を卒業後,法律家志望ではあったが,父の希望により聖職に就いた.しかし,1773年に聖職を辞すと,アメリカ独立戦争に際して植民地側に立ち,急進的な政治運動を開始した.後のフランス革命にも同情的な立場を取り,国事犯として検挙されるなどの憂き目にあっている.
 そのような政治運動を展開する間,言語哲学への関心から語学的な著述も行なってきた.1778年には接続詞 that に関する著述 A Letter to John Dunning, Esq. を出している.そして,次著が問題の2巻ものの Epea Pteroenta or, the Diversions of Purley (1786, 1805) である.合計1000頁に及ぶ言語哲学と語源論に関する大著だ.これが,今となっては奇書といってしかるべき語源本なのである.
 Dixon によるこの奇人・奇書の解説文を引用しよう (150) .

   He [Tooke] maintained that originally language consisted just of nouns and verbs with everything else (adjectives, prepositions, pronouns, articles, and so on) being abbreviations of underlying noun and verb sequences. He also believed that each word had a definite meaning which had remained constant from its origin. What makes the modern reader squirm most is the way in which Horne Took applied these principles, absolutely off the top of his head. For example, conjunction through was believed to be related to noun door, and conjunction if was said to have come from the imperative form of verb give. If did have the form gif in Old English and verb give was giefan, but these are not cognate, the similarity of form being coincidental.)
   Sometimes there was vague similarity of form, other times not. 'I believe that up means the same as top or head, and is originally derived from a noun of the latter signification'. 'From means merely beginning, and nothing else', so that in 'Lamp hangs from cieling (sic)'), it is the case that 'Cieling (is) the place of beginning to hang.'
   There are dozens more of such mental meanderings, lacking any basis in fact. From actually goes back to preposition *per in PIE and up to PIE preposition *upo. It is true that some prepositions have developed from lexical words, but none in the way Horne Tooke imagined. Through relates to the PIE verb *tere- 'to cross over, pass through, overcome'. . . . Door is a development from *dhwer, which meant 'door, doorway' in PIE.
   Horne Tooke's book was simply a raft of wild ideas. There may have been other books of this nature, but the scarcely believable fact is that The Diversions of Purley was accepted by the British public as an example of brilliant insight. Philosopher James Mill found Horne Tooke's work 'profound and satisfactory', 'to be ranked with the very highest discoveries which illustrate the names of speculative men'. The account of conjunctions 'instantly appeared to the learned so perfectly satisfactory as to entitle the author to some of the highest honours of literature'.


 当時,近代言語学の走りとして William Jones により比較言語学 (comparative_linguistics) の端緒が開かれつつあったものの,イギリスへの本格的な導入はなされておらず,Tooke の俗耳に入りやすい前科学的な語源論は好評を博した(かの哲学者 James Mill も絶賛したほど).いや,むしろ Tooke の書により,イギリスへの比較言語学の導入が遅れたとすらいえるかもしれない(佐々木・木原,p. 353).
 しかし,1840年頃までには,イギリスは Tooke の迷妄から抜け出していた.Tooke の書は,"gratuitous", "incorrect", "fallacious", "frivolous" などの形容詞で評される時代となっていたのである (Dixon 151)

 ・ 佐々木 達,木原 研三 編 『英語学人名辞典』 研究社,1995年.
 ・ Dixon, R. M. W. The Unmasking of English Dictionaries. Cambridge: CUP, 2018.

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2021-03-11 Thu

#4336. Richardson の辞書の長所と短所 [etymology][dictionary][lexicography][johnson][oed][webster]

 「#3155. Charles Richardson の A New Dictionary of the English Language (1836--37)」 ([2017-12-16-1]) で紹介したように,Richardson (1775--1865) の英語辞書は,Johnson, Webster, OED という辞書史の流れのなかに埋没しており,今ではあまり顧みられることもないが,19世紀半ばにおいては重要な役割を果たしていた.
 長所としては,英語辞書史上初めて本格的に「歴史」を意識した辞書だったということがある.引用文による定義のサポートは Johnson に始まるが,Johnson とて典拠にした文献は王政復古以後のものであり,中英語にまで遡ることはしなかった.しかし,Richardson は中英語をも視野に入れ,真の「歴史的原則」の地平を開いたのである.しかも,引用数は Johnson を遥かに上回っている.結果として,小さい文字で印刷されながら2000頁を超すという(はっきりいって使いづらい)大著となった (Dixon 146) .
 もう1つ長所を指摘すると,近代期の辞書編纂は善かれ悪しかれ既存の辞書の定義からの剽窃が当然とされていたが,Richardson はオリジナルを目指したことである.手のかかるオリジナルの辞書編纂を選んだのは,前には Johnson,後には OED を挙げれば尽きてしまうほどの少数派であり,この点において Richardson の覇気は評価せざるを得ない.
 短所としては,先の記事でも触れたとおり,"a word has one meaning, and one only" という極端な原理を信奉し,主に語源記述において独善に陥ってしまったことだ.この原理は Horne Tooke (1736--1812) という,やはり独善的な政治家・語源論者によるもので,この人物は今では奇書というべき2巻ものの英語語源に関する著 The Diversions of Purley (1786, 1805) をものしている.Richardson の辞書を批判した Webster も,この Tooke の罠にはまった1人であり,この時代,語源学方面で Tooke の負の影響がはびこっていたことが分かる.
 いずれにせよ Richardson は,英語辞書史において主要な辞書編纂家のはざまで活躍した19世紀半ばの重要キャラだった.

 ・ 佐々木 達,木原 研三 編 『英語学人名辞典』 研究社,1995年.
 ・ Dixon, R. M. W. The Unmasking of English Dictionaries. Cambridge: CUP, 2018.

Referrer (Inside): [2021-03-12-1]

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2021-03-08 Mon

#4333. Johnson は難語辞書への回帰路線? [johnson][dictionary][lexicography]

 英語辞書の黎明期から初期にかけての流れについて,「#609. 難語辞書の17世紀」 ([2010-12-27-1]) と「#610. 脱難語辞書の18世紀」 ([2010-12-28-1]) で概説した.18世紀になってようやく難語ではなく普通語を収録した一般的な英語辞書が誕生したということだった.
 John Kersey が A New English Dictionary (1702) を編纂し,続いて Nathaniel Bailey が An Universal Etymological English Dictionary (1721) と Dictionarium Britannicum: Or a more Compleat Universal Etymological English Dictionary than any Extant (1730) を出版し,最後に Samuel Johnson が A Dictionary of the English Language (1755) で締めくくったという流れだ.
 難語や専門語には注目せず日常的な語を多く収録するという点では,Kersey の見出し語は約28,000語,Bailey の Dictionary は約40,000語であるから,確かに2人は脱難語辞書の路線をたどったといってよい.
 ところが,Johnson は一般的な辞書を編纂したという点で一見2人の流れを汲んでいるようにみえるものの,少し違った路線をとっている.収録語数は約39,000語と Bailey よりもやや少ないくらいで,収録語彙を選んでいる風がある.実際,Johnson は物事よりも概念を表わす語を好んで収録した.また,よく知られているように定義を引用で補強した最初の辞書編纂者として名を残しているが,その引用元は常にハイソな文人墨客だったのである.明らかに上流意識が強い.
 Dixon (96) は,この点を指摘して,Johnson の路線がある意味での難語辞書回帰に当たると鋭い洞察を加えている.

Johnson's choice of words, and the senses exemplified, reflected his preoccupation with high-class literary style, rather than with general use of the language. His selectivity was, in a rather different sense, continuing the philosophy of the 'hard words' lexicographers.


 この点については当時の時代背景も考慮に入れる必要がある.関連して「#2650. 17世紀末の質素好みから18世紀半ばの華美好みへ」 ([2016-07-29-1]) も参照.

 ・ Dixon, R. M. W. The Unmasking of English Dictionaries. Cambridge: CUP, 2018.

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2021-03-06 Sat

#4331. Johnson の辞書の名詞を示す略号 n.s. [johnson][dictionary][lexicography][noun][adjective][verb][latin][terminology]

 Samuel Johnson の辞書 A Dictionary of the English Language (1755) には,名詞を示す略号として,現在見慣れている n. ではなく n.s. が用いられている.名詞 stone の項目の冒頭をみてみよう.



 見出し語に続いて,イタリック体で n. ʃ. が見える.(当時の小文字 <s> はいわゆる long <s> と呼ばれるもので,現在のものと異なるので注意.long <s> については,「#584. long <s> と graphemics」 ([2010-12-02-1]),「#2997. 1800年を境に印刷から消えた long <s>」 ([2017-07-11-1]),「#3869. ヨーロッパ諸言語が初期近代英語の書き言葉に及ぼした影響」 ([2019-11-30-1]),「#3875. 手書きでは19世紀末までかろうじて生き残っていた long <s>」 ([2019-12-06-1]) などを参照.)
 n.s. は,伝統的に名詞を指した noun substantive の省略である.現在の感覚からはむしろ冗長な名前のように思われるかもしれないが,ラテン語文法の用語遣いからすると正当だ.ラテン語文法の伝統では,格により屈折する語類,すなわち名詞と形容詞をひっくるめて "noun" とみなしていた.後になって名詞と形容詞を別物とする見方が生まれ,前者は "noun substantive",後者は "noun adjective" と呼ばれることになったが,いずれもまだ "noun" が含まれている点では,以前からの伝統を引き継いでいるともいえる.Dixon (97) から関連する説明を引用しよう.

Early Latin grammars used the term 'noun' for all words which inflect for case. At a later stage, this class was divided into two: 'noun substantive' (for words referring to substance) and 'noun adjective' (for those relating to quality). Johnson had shortened the latter to just 'adjective' but retained 'noun substantive', hence his abbreviation n.s.


 引用にもある通り,形容詞のほうは n.a. ではなく現代風に adj. としているので,一貫していないといえばその通りだ.形容詞 stone の項目をみてみよう.



 ちなみに,ここには動詞 to stone の見出しも見えるが,品詞の略号 v.a. は,verb active を表わす.今でいう他動詞 (transitive verb) をそう呼んでいたのである.一方,自動詞 (intransitive verb) は,v.n. (= verb neuter) だった.
 文法用語を巡る歴史的な問題については,「#1257. なぜ「対格」が "accusative case" なのか」 ([2012-10-05-1]),「#1258. なぜ「他動詞」が "transitive verb" なのか」 ([2012-10-06-1]),「#1520. なぜ受動態の「態」が voice なのか」 ([2013-06-25-1]),「#3307. 文法用語としての participle 「分詞」」 ([2018-05-17-1]),「#3983. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (1)」 ([2020-03-23-1]),「#3984. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (2)」 ([2020-03-24-1]),「#3985. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (3)」 ([2020-03-25-1]),「#4317. なぜ「格」が "case" なのか」 ([2021-02-20-1]) などを参照.

 ・ Dixon, R. M. W. The Unmasking of English Dictionaries. Cambridge: CUP, 2018.

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2021-03-03 Wed

#4328. 16世紀の専門分野の用語集たち [lexicography][lexicology][dictionary][mulcaster]

 連日の記事で,16世紀後半に史上初の英英辞書が生み出されるに至った歴史的背景について考えてきた (cf. 「#4324. 最初の英英辞書は Coote の The English Schoole-maister?」 ([2021-02-27-1]),「#4325. 最初の英英辞書へとつなげた Coote の意義」 ([2021-02-28-1]),「#4326. 最初期の英英辞書のラインは Coote -- Cawdrey -- Bullokar」 ([2021-03-01-1]),「#4327. 羅英辞書から英英辞書への流れ」 ([2021-03-02-1]) .
 これまで論じてきた流れと平行的に,もう1つ触れておくべき重要な系譜があった.それは,辞書というほど体系的なものではないのだが,定義・説明が付された専門分野の用語集というべき存在である.ここには,単語リストかそれに毛が生えた程度のものも含まれる.ちょっとしたものから,そこそこの規模のものまで,16世紀には70以上の専門用語集が出版されていたというから驚きだ.Dixon (45--46) から,いくつか箇条書きしてみよう.

 ・ 馬の病気とケガに関する The Boke of Husbandry 中の38語のリスト (1523)
 ・ 病気,薬(草),医学用語を含む426語のリスト (1543)
 ・ 古典古代の129語と解説を含む The first Syxe Bokes of the Mooste christian Poet Marcellus Palingenius, Called the Zodiake of Life (1561)
 ・ 聖書に関連する95語を含む A Postill [gloss] or Exposition of the Gospels (1569)
 ・ 幾何学の49語と定義を含む The Elements of Geometrie (1570)
 ・ 薬の重さの単位を扱った10語ほどのリスト (1583)

 このような専門分野の用語集が広く出版されるようになると,専門分野を問わない一般的な語彙集もあると便利だろうという発想が自然と湧き出てくる.その必要性を訴えたのが「#441. Richard Mulcaster」 ([2010-07-12-1]) であり,彼こそが The First Part of the Elementarie (1582) の中での8000語ほどの語彙集 "Generall Table" を提示した人物だったのである.

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2021-03-02 Tue

#4327. 羅英辞書から英英辞書への流れ [latin][loan_word][coote][cawdrey][bullokar][lexicography][dictionary]

 連日の記事で,英語史上の最初の英英辞書の誕生とその周辺について Dixon に拠りながら考察している (cf. 「#4324. 最初の英英辞書は Coote の The English Schoole-maister?」 ([2021-02-27-1]),「#4325. 最初の英英辞書へとつなげた Coote の意義」 ([2021-02-28-1]),「#4326. 最初期の英英辞書のラインは Coote -- Cawdrey -- Bullokar」 ([2021-03-01-1])) .英英辞書の草創期を形成するラインとして Mulcaster -- Coote -- Cawdrey -- Bullokar という系統をたどることができると示唆してきたが,Mulcaster 以前の前史にも注意を払う必要がある.Mulcaster 以前と以後も,辞書史的には連続体を構成しているからだ.
 概略的に述べれば,確かに Mulcaster より前は bilingual な羅英辞書の時代であり,以後は monolingual な英英辞書の時代であるので,一見すると Mulcaster を境に辞書史的な飛躍があるように見えるかもしれない.しかし,後者を monolingual な英英辞書とは称しているものの,実態としては「難語辞書」であり,見出し語はラテン語からの借用語が圧倒的に多かったという点が肝心である.つまり,ラテン語の形態そのものではなくとも少々英語化した程度の「なんちゃってラテン単語」が見出しに立てられているわけであり,Coote -- Cawdrey -- Bullokar ラインの monolingual 辞書は,いずれも実態としては "1.5-lingual" 辞書とでもいうべきものだったのだ.つまり,Mulcaster 以後の英英辞書の流れも,それ以前からの羅英辞書の系統に連なるということである.
 Dixon (42) に従い,15--16世紀の羅英辞書の系統を簡単に示そう.よく知られているのは,1430年辺りの部分的な写本版が残っている Hortus Vocabulorum である.1500年に出版され,27,000語ものラテン単語が意味別に掲載されている.英羅辞書については,1440年の写本版が知られている Promptorium Parvalorum sive Clericum が,1499年に出版され,以後1528年まで改訂されることとなった.
 16世紀前半に存在感を示した羅英辞書は,The Dictionary of Sir Thomas Elyot knight (1538) である(タイトルが英語であるこに注意).これは先行する Hortus Vocabulorum の影響をほとんど受けておらず,むしろ Ambrogio Calepino の羅羅辞書をベースにしている (Dixon 43) .世紀の半ばの1565年に Bishop Thomas Cooper による羅英辞書 Thesaurus Linguae Romanae & Britannicae が出版され一世を風靡したが,世紀後半の1587年に Thomas Thomas により出版された羅英辞書 Dictionarium Linguae Latinae et Anglicanae にその地位を奪われていくことになった.そして,この Thomas Thomas の羅英辞書こそが,Mulcaster より後の Coote -- Cawdrey -- Bullokar ラインの英英辞書 --- すなわち英語史上初の英英辞書群 --- の源泉だったという事実を指摘しておきたい (Dixon 48) .
 関連して,「#3544. 英語辞書史の略年表」 ([2019-01-09-1]),「#603. 最初の英英辞書 A Table Alphabeticall (1)」 ([2010-12-21-1]),「#604. 最初の英英辞書 A Table Alphabeticall (2)」 ([2010-12-22-1]) を参照.

 ・ Dixon, R. M. W. The Unmasking of English Dictionaries. Cambridge: CUP, 2018.

Referrer (Inside): [2021-03-03-1]

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2021-03-01 Mon

#4326. 最初期の英英辞書のラインは Coote -- Cawdrey -- Bullokar [mulcaster][coote][cawdrey][bullokar][lexicography][dictionary]

 英語史上初の英英辞書を巡って「#4324. 最初の英英辞書は Coote の The English Schoole-maister?」 ([2021-02-27-1]) と「#4325. 最初の英英辞書へとつなげた Coote の意義」 ([2021-02-28-1]) の記事で議論してきた.前者の記事で「英語辞書の草創期として Mulcaster -- Coote -- Cawdrey のラインを認めておくことには異論がないだろう」と述べたが,辞書編纂のように様々な影響関係があるのが当然とされる分野では「ライン」は1つに定まらないし,とどまりもしない.
 英英辞書の嚆矢は一般に Robert Cawdrey の A Table Alphabeticall (1604) とされるが,Dixon (47) によればこれは間違いで,Edmund Coote の The English Schoole-maister (1596) こそが真の嚆矢であるという.一方,その後をみると,John Bullokar の An English Expositor (1616) が2人の後継という位置づけだ.Coote -- Cawdrey -- Bullokar という新たなラインを,ここに見出すことができる.Dixon (47) の要約が簡潔である.

・ 1596. Edmund Coote [a shool-teacher]. The English Schoole-maister, teaching all his scholers, of what age soeuer, the most easie, short and perfect order of distinct reading and true writing our English tongue. Includes texts, catechism, psalms and, on pages 74--93, a vocabulary of about 1,680 items with definitions (mostly of a single word) provided for about 90 per cent of them.
・ 1604. Robert Cawdrey [a clergyman and school-teacher]. A Table Alphabeticall, conteyning and teaching the true writing, and vnderstanding of hard vsual English wordes, borrowed from the Hebrew, Greeke, Latine, or French, etc. ... Consists just of a vocabulary of about 2,540 items, all with definitions.
・ 1616. John Bullokar [a physician]. An English Expositor: teaching the interpretation of the hardest words used in our language. With sundry explications, descriptions, and discourses ... Consists just of a vocabulary of about 4,250 items, all with definitions.


 段階的に収録語数が増えているということが分かるが,互いの影響関係がおもしろい.Dixon (47) の上の引用に続く1節によると,Cawdrey は Coote の見出し語の87%をコピーしており,定義も半分ほどは同じものだという.そして,Bullokar はどうかといえば,今度は Cawdrey におおいに依拠しているという.
 これらの最初期の英英辞書編纂者に対する評価の歴史を振り返ってみると,またおもしろい.1865年の Henry B. Wheatley という辞書史家は,Bullokar を英英辞書の嚆矢としている.先の2人の存在に気づいていなかったらしい.また,1933年の Mitford M. Matthews は "Robert Cawdrey was the first to supply his countrymen with an English dictionary." (qtd. in Dixon (47--48)) と述べており,これが後の英語辞書史の分野で定説として持ち上げられ,現在に至る.確かに英語辞書史の本のタイトルを見渡すと,The English Dictionary from Cawdrey to Johnson (1946) や The English Dictionary before Cawdrey (1985) や The First English Dictionary, 1604 (2007) などが目につく.

 ・ Dixon, R. M. W. The Unmasking of English Dictionaries. Cambridge: CUP, 2018.
 ・ Wheatley, Henry B. "Chronological Notes on the Dictionaries of the English Language." Transactions of the Philological Society for 1865. 218--93.
 ・ Matthews, Mitford M. A Survey of English Dictionaries. London: OUP, 1933.

Referrer (Inside): [2021-03-03-1] [2021-03-02-1]

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2021-02-28 Sun

#4325. 最初の英英辞書へとつなげた Coote の意義 [coote][cawdrey][mulcaster][lexicography][dictionary]

 昨日の記事「#4324. 最初の英英辞書は Coote の The English Schoole-maister?」 ([2021-02-27-1]) に引き続き,英語辞書の草創期の一角を担った Edmund Coote とその著書 The English Schoole-maister (1596) の語彙一覧表の評価について.
 豊田 (377) は,同書が発音と綴字の教科書として果たした歴史的な意義を評価するに飽き足りず,英語辞書史上の価値を積極的に認めようとしている.

本書が,最初の英語辞書と評される Cawdrey の A Table Alphabeticall に直接的な影響を与えたことは,上掲の対照表から容易に看取することができる.Coote が語彙表であげている語,および語義の説明はすべてそのまま Cawdrey の辞典に収録されている.当時は借用と改作と盗作の時代 ('It was an era of borrowing, adapting and downright plagiarism') といわれるが,英国で最初の辞典編集者という栄に輝く Cawdrey が Coote に負うところは,決して少なくない.そしてまた,Cawdrey の辞書の表題 A Table Alphabeticall も,Coote の一覧表の前置きとして付された 'Directions for the vnskilfull' 中の "If thou hast not been acquainted with such a table as this following, and desirest to make vse of it, thou must get the Alphabet, that is, the order of the letters as they stand,..." における a table...Alphabet に示唆を得たという推定もなされている.A Table Alphabeticall は,'hard vsuall English wordes' を 'plaine English wordes' で説明するもので,いわゆる難解語辞典の草分とされるが,Coote にはすでに 'hard words' ('The Schoole-maister his profession'), および 'hardest' という語 ('Directions') が見える。英語辞書の歴史の記述には 'From Cawdrey to Johnson' なる章を設けて Cawdrey の貢献の跡をたどるのが普通であるが,最初の英語辞典の重要な典拠として,本書の価値は積極的に認めなければならないであろう.


 改めて「辞書」というのは何なのだろうか,別の単語による言い換え程度の定義らしきもののついた語彙一覧表との差異は何なのだろうか,と考えさせられた.

 ・ Coote, Edmund. The English Schoole-Maister. 1596.
 ・ 豊田 昌倫 「Edmund Coote: The English Schoole-maister の解説」『William Bullokar: Book at large, Bref Grammar and Pamphlet for Grammar. P. Gr.: Grammatica Anglicana. Edmund Coote: The English Schoole-maister』英語文献翻刻シリーズ第1巻.南雲堂,1971年.365--80頁.

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2021-02-27 Sat

#4324. 最初の英英辞書は Coote の The English Schoole-maister? [coote][cawdrey][mulcaster][lexicography][dictionary]

 英語辞書史上,最初の英英辞書は一般に Robert Cawdrey の A Table Alphabeticall (1604) とされている.これについて,「#603. 最初の英英辞書 A Table Alphabeticall (1)」 ([2010-12-21-1]),「#604. 最初の英英辞書 A Table Alphabeticall (2)」 ([2010-12-22-1]),「#726. 現代でも使えるかもしれない教育的な Cawdrey の辞書」 ([2011-04-23-1]),「#1609. Cawdrey の辞書をデータベース化」 ([2013-09-22-1]) などの記事で取り上げてきた.
 ただし Cawdrey も徒手空拳で史上初の英英辞書を作ったわけではない.例えば,すでに1582年に Richard Mulcaster が The First Part of the Elementarie のなかで8000語ほどの語彙集 "Generall Table" を掲げており,実際その多くが Cawdrey の辞書に反映されている (cf. 「#441. Richard Mulcaster」 ([2010-07-12-1])) .
 同じように,Edmund Coote が1596年に上梓した発音と綴字の教科書 The English Schoole-maister の第3部では約1500語の難解語の一覧表が挙げられており,Cawdrey はこちらも明らかに参照している.Coote の語彙一覧表には別の単語による言い換え程度のものではあるが「定義」も付されており,この部分を独立してみるならば,これこそ史上初の英英辞書とみなしてもよいのではないかと思われる.実際,Dixon (ix) は,そのようにとらえているようだ.

The first monolingual English dictionaries --- commencing in 1596 --- dealt just with 'hard words' (those of foreign origin) and explained them in terms of Germanic forms. The second such dictionary, by Robert Cawdrey in 1604, included:
   lassitude, wearines


 豊田 (375) も「Edmund Coote: The English Schoole-maister の解説」にて,これとやや近いことを述べている.

従来の類書では正しい綴字法を呈示することが目的とされたのに対し,難解な語に英語による説明を並置する Coote の語彙表は,英語辞典の雛形というべきものであり,同じく 'Schoole-maister' であった Robert Cawdrey の A Table Alphabeticall, conteyning and teaching the true vvriting, and vnderstanding of hard vsuall English wordes, borrowed from the Hebrew, Greeke, Latine, or French. Etc. (1604) に大きな影響を及ぼすことになる.


 いずれをもって最初の英語辞書とするかは「辞書」の定義の問題であり,ここでは踏み込まないが,英語辞書の草創期として Mulcaster -- Coote -- Cawdrey のラインを認めておくことには異論がないだろう.

 ・ Dixon, R. M. W. The Unmasking of English Dictionaries. Cambridge: CUP, 2018.
 ・ Coote, Edmund. The English Schoole-Maister. 1596.
 ・ 豊田 昌倫 「Edmund Coote: The English Schoole-maister の解説」『William Bullokar: Book at large, Bref Grammar and Pamphlet for Grammar. P. Gr.: Grammatica Anglicana. Edmund Coote: The English Schoole-maister』英語文献翻刻シリーズ第1巻.南雲堂,1971年.365--80頁.

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2020-10-24 Sat

#4198. 映画『博士と狂人』を観ました [film][history][lexicography][oed][linguistic_imperialism][philology][comparative_linguistics][hellog_entry_set]

 「#4172. 映画『博士と狂人』の原作者による OED 編纂法の紹介文」 ([2020-09-28-1]) で紹介した映画が,先週全国ロードショーとなったので劇場に観に行きました.OED (初版)編纂を巡る人間ドラマです.ネタバレしすぎない程度に,とりあえず感想を一言二言述べておきたいと思います.

 ・ 原作はノンフィクションだが,映画では少なからずフィクション化されていて,やや趣旨が変わっていたような.逆にいえば,原作が抑え気味だったということ.映画を観たことで,原作のノンフィクションらしい抑制感の魅力に気づいた.
 ・ OED 編纂を背景とした,実に悲しい話しであることが改めてよく分かった.
 ・ OED がイギリス帝国としての威信を背負って帝国主義的に企画され,編纂された事実がよく描かれていた.英語(学)史的な観点から,この点はとても重要.授業などで議論したいと思っているポイント.
 ・ 映画では OED の中身に触れている箇所が少ない(それはそうか)ので,OED の辞書としての凄さが思ったほど伝わらなかったような.映画化するには仕方がないか.もっぱら人間ドラマの描写に集中していた様子.
 ・ Murray 博士の先輩ともいうべき元 OED 編集主幹にして EETS 設立者でもある Furnivall 役がとても良い味を出していた.原作ではあまり描かれていなかった部分なので,映画でけっこうなお得感があった.やはり,Furnivall は破天荒で魅力的な英語文献学史上の重要キャラ.
 ・ 「狂人」ことショーン・ペンの演技は迫真だった(メル・ギブソンの「博士」も十分に良かったとはいえ).

 上でも触れている OED 編纂と帝国主義の関係については,ぜひ以下の記事を読んでみてください(記事セットとしてはこちらから).OED の見方が変わるかもしれません.

 ・ 「#304. OED 制作プロジェクトののろし」 ([2010-02-25-1])
 ・ 「#638. 国家的事業としての OED 編纂」 ([2011-01-25-1])
 ・ 「#644. OED とヨーロッパのライバル辞書」 ([2011-01-31-1])
 ・ 「#3020. 帝国主義の申し子としての比較言語学 (1)」 ([2017-08-03-1])
 ・ 「#3376. 帝国主義の申し子としての英語文献学」 ([2018-07-25-1])
 ・ 「#3603. 帝国主義,水族館,辞書」 ([2019-03-09-1])
 ・ 「#3767. 日本の帝国主義,アイヌ,拓殖博覧会」 ([2019-08-20-1])
 ・ 「#4131. イギリスの世界帝国化の歴史を視覚化した "The OED in two minutes"」 ([2020-08-18-1])

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2020-09-28 Mon

#4172. 映画『博士と狂人』の原作者による OED 編纂法の紹介文 [film][history][lexicography][oed]

 OED 編纂を巡る映画『博士と狂人』(原題 The Professor and the Madmanが10月16日(金)に全国ロードショー開始となります.メル・ギブソン(博士 James Murray 役)とショーン・ペン(狂人 Doctor Minor 役)の初共演.「孤高の学者と,呪われた殺人犯.世界最大の英語辞典誕生に隠された,真実の物語」というキャッチです.

the_professor_and_the_madman.jpg

 原作はノンフィクション作家 Simon Winchester による The Professor and the Madman (1998) .同作家による2003年出版の The Meaning of Everything も,同じく OED 編纂にかかる人間模様を活写しており,抜群におもしろいです.
 OED とは何か.これを分かりやすく説明するのは容易ではありませんが,The Professor and the Madman の2章 (25--26) に,著者による導入の文章があるので,引用しておきましょう.OED の編纂法に焦点を当てた導入です.

It took more than seventy years to create the twelve tombstone-size volumes that made up the first edition of what was to become the great Oxford English Dictionary. This heroic, royally dedicated literary masterpiece---which was first called the New English Dictionary, but eventually became the Oxford ditto, and thenceforward was known familiarly by its initials as the OED---was completed in 1928; over the following years there were five supplements and then, half a century later, a second edition that integrated the first and all the subsequent supplementary volumes into one new twenty-volume whole. The book remains in all senses a truly monumental work---and with very little serious argument is still regarded as a paragon, the most definitive of all guides to the language that, for good or ill, has become the lingua franca of the civilized modern world.
   Just as English is a very large and complex language, so the OED is a very large and complex book. It defines well over half a million words. It contains scores of millions of characters, and, at least in its early version, many miles of hand-set type. Its enormous---and enormously heavy---volumes are bound in dark blue cloth: Printers and designers and bookbinders worldwide see it as an apotheosis of their art, a handsome and elegant creation that looks and feels more than amply suited to its lexical thoroughness and accuracy.
   The OED's guiding principle, the one that has set it apart from most other dictionaries, is its rigorous dependence on gathering quotations from published or otherwise recorded uses of English and using them to illustrate the use of the sense of every single word in the language. The reason behind this unusual and tremendously labor-intensive style of editing and compiling was both bold and simple: By gathering and publishing selected quotations, the dictionary could demonstrate the full range of characteristics of each and every word with a very great degree of precision. Quotations could show exactly how a word has been employed over the centuries; how it has undergone subtle changes of shades of meaning, or spelling, or pronunciation; and, perhaps most important of all, how and more exactly when each word slipped into the language in the first place. No other means of dictionary compilation could do such a thing: Only by finding and showing examples could the full range of a word's past possibilities be explored.


 この後も OED 導入の文章が続きますが,ここまででも編纂法のユニークさが分かると思います.物語『博士と狂人』は,OED 編纂法のこのユニークな点を軸に展開していきます.上映が実に楽しみです.

 ・ Winchester, Simon. The Professor and the Madman: A Tale of Murder, Insanity, and the Making of the Oxford English Dictionary. New York: HarperCollins P, 1998. HarperPerennial ed. 1999.

Referrer (Inside): [2020-10-24-1]

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2020-08-28 Fri

#4141. 1150年を越えて残らなかった古英語単語は OED から外されている [oed][oe][doe][periodisation][lexicography][lexicology][manuscript]

 OED では古英語の単語はどのように扱われているか.この辺りの話題は,OED Online の提供する Old English in the OED を通じて知ることができる.
 OED は,原則として1150年を超えて残らなかった古英語単語は取り扱わないと宣言している.歴史的原則を貫く OED としては,このように除外される単語もれっきとした英単語であるとは認識しているはずだ.しかし,同辞書編纂の長い歴史の当初からの方針であり,別途 The Dictionary of Old English (DOE) も編纂中であることから,現実的な選択肢としてそのような原則を立てているのだろう.それでも,1150年より前に文証され,この境の年を生き延びた7500語ほどの古英語単語が収録されているという事実は指摘しておきたい.
 古英語期の内部の時期区分についても,新版 OED では3期に分けるという新しい方針を示している.'early OE' (600--950), 'OE' (950--1100), and 'late OE' (1100--1150) の3期である.主たる古英語写本約200点のうち,ほとんどが 'OE' (950--1100) に由来し,その点で証拠の偏りがあることは致し方がない(それ以前の 'early OE' (600--950) に属するものは20点未満).この3期区分は粗くはあるが,できるかぎり学術的正確性を期すための方法であり,写本年代や語の初出年代の記述にも有効に用いられている.

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2020-08-20 Thu

#4133. OED による英語史概説 [oed][lexicology][lexicography][historiography][toc][hel][hel_education]

 OED のサイトには当然ながら英語史に関する情報が満載である.じっくりと読んだことはなかったのだが,掘れば掘るほど出てくる英語史のコンテンツの宝庫だ.OED が運営しているブログがあり,そこから英語史概説というべき記事を以下に挙げておきたい.
 OED らしく語彙史が中心となっているのはもちろん,辞書編纂の関心が存分に反映されたユニークな英語史となっており,実に読み応えがある.とりわけ古い時代の英語の evidence や manuscript dating の問題に関する議論などは秀逸というほかない(例えば Middle English: an overview の "Our surviving documents" などを参照).また,終着点となる20世紀の英語の評論などは,今後の英語を考える上で必読ではないか.
 是非,以下をじっくり読んでもらえればと思います.

 ・ Old English --- an overview
    - Historical background
    - Some distinguishing features of Old English
    - The beginning of Old English
    - The end of Old English
    - Old English dialects
    - Old English verbs
    - Derivational relationships and sound changes
       - cf. Old English in the OED
 ・ Middle English: an overview
    - Historical period
    - The most important linguistic developments
    - A multilingual context
    - Borrowing from early Scandinavian
    - Borrowing from Latin and/or French
    - Pronunciation
    - A period characterized by variation
    - Our surviving documents
 ・ Early modern English --- an overview
    - Boundaries of time and place
    - Variations in English
    - Attitudes to English
    - Vocabulary expansion
    - 'Inkhorn' versus purism
    - Archaism and rhetoric
    - Regulation and spelling reform
    - Fresh perspectives: Old English and new science
 ・ Nineteenth century English: an overview
    - Communications and contact
    - Local and global English
    - Recording the language
    - A changing language: grammar and new words
    - The science of language
 ・ Twentieth century English: an overview
    - Circles of English
    - Convergence: the birth of cool
    - Restrictions on language
    - Lexis: dreadnought and PEP talk
    - Modern English usages

Referrer (Inside): [2020-08-31-1] [2020-08-24-1]

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2020-08-18 Tue

#4131. イギリスの世界帝国化の歴史を視覚化した "The OED in two minutes" [oed][map][lexicology][lexicography][philology][history][web_service]

 昨日の記事「#4130. 英語語彙の多様化と拡大の歴史を視覚化した "The OED in two minutes"」 ([2020-08-17-1]) で紹介した同じコンテンツを,異なる角度から改めて眺めてみたい.The OED in two minutes で公開されている英語語彙史地図のコンテンツである.
 中英語の始まりとなる1150年から再生して1年ごとに時間を進めていくと,しばらくは動きがヨーロッパ内部に限られており,さしておもしろくもないのだが,15世紀後半になってくると中東や北アフリカなどに散発的に点が現われてくる.そして,16世紀後半になると新大陸やインド方面にも点がポツポツしてきて,日本も舞台に登場してくる.この状況は17,18世紀にかけて稀ではなくなってくる.次に注目すべき動きが出てくるのは,18世紀後半のオセアニア,太平洋,南アフリカといった南半球を中心とした海洋地域である.19世紀に入るとアフリカや東南アジアを含めた世界の広域に点が打たれるようになり,同世紀後半には南アメリカも加わる.20世紀はまさにグローバルである.
 実におもしろい.同時に,実に恐ろしい.16世紀後半から19世紀終わりまでの時間枠に関するかぎり,そのままイギリスの世界帝国化の足跡を語彙史の観点からパラフレーズしたコンテンツに見えてきたからだ.直接・間接にイギリスの支配権の及ぶ領土を塗りつぶした世界史の地図は「軍事的な」地図として見慣れているし,ある意味で分かりやすい.しかし,今回のような「語彙史的な」地図がそれと多かれ少なかれ一致するというのは,何とも薄気味悪い.そして,後者の地図が,OED という英語文献学の粋というべき学術的な成果物を利用して作成されていること,またその辞書それ自身が大英帝国の最盛期である19世紀半ばの企画の産物であることを思い出すとき,薄気味悪さ以上に,得体のしれない恐ろしさを感じる.
 OED は学術的(文献学的)偉業を体現するツールであり,その点で私も賞賛を抑えることができない.しかし,その事実を認めつつ,それ自体が,毀誉褒貶相半ばする近代世界史の産物であることは肝に銘じておきたい.関連して以下の記事も参照.

 ・ 「#3020. 帝国主義の申し子としての比較言語学 (1)」 ([2017-08-03-1])
 ・ 「#3021. 帝国主義の申し子としての比較言語学 (2)」 ([2017-08-04-1])
 ・ 「#3376. 帝国主義の申し子としての英語文献学」 ([2018-07-25-1])
 ・ 「#3603. 帝国主義,水族館,辞書」 ([2019-03-09-1])
 ・ 「#3767. 日本の帝国主義,アイヌ,拓殖博覧会」 ([2019-08-20-1])

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