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terminology - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2025-02-22 08:49

2025-02-22 Sat

#5780. 古典語に由来する連結形は日本語の被覆形に似ている [morphology][compound][latin][greek][japanese][word_formation][combining_form][terminology][derivation][affixation][morpheme]

 昨日の記事「#5779. 連結形は語に対応する拘束形態素である」 ([2025-02-21-1]) で,連結形 (combining_form) に注目した.今回も引き続き注目していくが,『新英語学辞典』の解説を読んでみよう.

combining form 〔文〕(連結形) 複合語,時に派生語を造るときに用いられる拘束的な異形態をいう.英語の本来語では語基 (BASE) と区別がないが,ギリシア語・ラテン語に由来する形態の場合は連結形が独自に存在するのがふつうである.連結上の特徴から見ると前部連結形(例えば philo-)と後部連結形(例えば -sophy)とに分けることができる.接頭辞,接尾辞のような純粋な拘束形式と異なり,連結形は互いにそれら同士で結合したり,あるいは接辞をとることもできる.


 おおよそ昨日の記述と重なるが,「英語の本来語では語基 (BASE) と区別がない」の指摘は比較言語学的にも対照言語学的にも興味深い.英語では,古い段階の古英語ですら,語 (word) の単位がかなり明確で,語とは別に語幹 (stem) や語根 (root) を切り出す共時的な動機づけは弱い.
 それに対して,ギリシア語やラテン語などの古典語では,英語に比べて屈折がよく残っており,これを反映して,独立した語とは形態的に異なる非独立的な連結形が存在する.
 西洋古典語の連結形と関連して思い出されるのは,古代日本語の非独立形あるいは被覆形と呼ばれる形態だ.「#3390. 日本語の i-mutation というべき母音交替」 ([2018-08-08-1]) で導入した通り,例えば「かぜ」(風)と「かざ」(風見),「ふね」(船)と「ふな」(船乗り),「あめ」(雨)と「あま」(雨ごもり)のように独立形と,複合語を作る際に用いられる非独立形の2系列があった.歴史的には音韻形態論的な変化の結果,2系列が生じたということだが,西洋古典語の連結形についても同じことがいえるかもしれない.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.

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2025-02-21 Fri

#5779. 連結形は語に対応する拘束形態素である [morphology][compound][latin][greek][word_formation][combining_form][terminology][derivation][affixation][morpheme]

 接頭辞 (prefix) ぽい,あるいは接尾辞 (suffix) ぽい,それでいてどちらでもないという中途半端な位置づけの形態素 (morpheme) がある.連結形と訳される combining_form である.連結形についての説明や問題点は「#552. combining form」 ([2010-10-31-1]) で触れたとおりだが,『英語学要語辞典』での解説が分かりやすかったので,今回はその項目を引用したい.

combining form 〔言〕(連結形,造語形) 合成語 (COMPOUND) ときに派生語 (DERIVATIVE WORD) の形成に用いられる構成要素をいう.OED で aero- の定義にはじめて用いられたと考えられる.本来はギリシア語・ラテン語系に由来するものが多く,前部連結形(例 philo-)と後部連結形(例 -logy)の2種類がある.連結形は自由形式 (FREE FORM) をなす語 (WORD) の拘束異形態 (bound allomorph) ということができ,本来は独立語として用いられない.しかし,最近では anti (← anti-),graph (← -graph) のような例外的用法も増加している.また,連結形は接頭辞 (PREFIX)・接尾辞 (SUFFIX) に比べて意味が一層具象的であり,連結の関係も通例等位的である.ただし,最近では bio-degradable (= biologically ---) のような例外も認められる.さらに,接頭辞・接尾辞が通例直接互いに連結することがないのに対して,連結形は語や他の連結形のほか,接辞,特に接尾辞と連結することも可能である(例:-morphic (← -morph + -ic),heteroness (← hetero- + -ness)).


 「連結形は語に対応する拘束形態素である」という捉え方は,とても分かりやすい.
 なお,引用中にある OED への言及についてだが,combining form の項目に初例として以下が掲載されていた.

1884 Gr. ἀερο-, combining form of ἀήρ, ἀέρα
   New English Dictionary (OED first edition) at Aero-


 ・ 寺澤 芳雄(編) 『英語学要語辞典』 研究社,2002年.

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2025-02-15 Sat

#5773. 品詞とは何か? --- 厳密に機能を基準にした分類の試み [pos][terminology][linguistics][category][semantics][function_of_language][functionalism][syntax]

 昨日の記事「#5772. 品詞とは何か? --- 厳密に意味を基準にした分類は可能か」 ([2025-02-14-1]) で,1つの基準を厳密に適用した場合の品詞論について考え始めた.引き続き『新英語学辞典』の parts of speech の項に依拠しながら,今回は機能のみに基づいた品詞分類を思考実験してみよう.

 (3) 機能を基準にした品詞分類. Fries (1952, ch. 6) は品詞を厳密に機能を基準にして分類すべきであると主張し,独自の品詞分類を提案した.語の位置[機能]を基準にして,同一の位置にくる語を一つの語類にまとめた.The concert was good (always). / The clerk remembered the tax (suddenly). / The team went there. の3種の代表的な検出枠 (test frame) を出発点として,文法構造を変えずに,これらの文のどの語の位置にくるかによって,次の4種の類語 (CLASS WORD) --- ほぼ内容語 (CONTENT WORD) に同じ --- を設定し,これらを品詞とした.
 第一類語 (class 1 word): concert, clerk, tax, team の位置にくる語
 第二類語 (class 2 word): was, remembered, went の位置にくる語
 第三類語 (class 3 word): good の位置にくる語
 第四類語 (class 4 word): always, suddenly, there の位置にくる語
これ以外は機能語 (FUNCTION WORD) として A から O まで15の群 (group) に分けた.注意すべきは,The poorest are always with us. の poorest は,その形態がどうであろうとその位置から第一類語とするし,また,I know the poorest man. の poorest は,第三類語とするのである.さらに,a boy friend と a good friend の boy も good も同じ第三類語に入れられるのは明らかである.従って a cannon ball の cannon が名詞であるか形容詞であるかの議論も生じてこない.〔もちろんこの場合の cannon は第三類語となる.〕 この分類によれば,一つの語がただ一つの品詞に入れられなくなるのは全くなつのことになり,ある環境にどんな語が現われるかと問われると,名詞とか代名詞とかでなく,1語ずつ現われうるすべての語を答えなければならない.このような分類は方法論の厳密さに価値はあるが,文法体系全体としては余り意味のない場合も生じるかもしれない.


 ここまで読むと分かると思うが,「機能」とは「統語的機能」のことである.確かにこれはこれで理論的に一貫している.しかし,実用には供しづらい.『新英語学辞典』の記述の前提には,品詞分類の要諦は実用性にあり,という姿勢があることが確認できる.この点は重要だと思う.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.

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2025-02-14 Fri

#5772. 品詞とは何か? --- 意味のみを基準にした厳密な分類は可能か [pos][terminology][linguistics][category][semantics]

 標題について「#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか」 ([2025-02-05-1]),「#5765. 品詞とは何か? --- Bloomfield の見解」 ([2025-02-07-1]),「#5771. 品詞とは何か? --- 分類基準の問題」 ([2025-02-13-1]) で議論してきた.
 品詞 (parts of speech, or pos) というものを設けると決めた以上,何に基づいて分類するのがベストなのかという問題が生じる(品詞を設ける必要がないというのも1つの立場だが,では言語を何で分けるのがよいのかという別の問いが生じる).昨日の記事では,伝統的な品詞分類が意味,機能,形態の3つの基準の複合に拠っていることを確認した.基準のオーバーラップが問題となるのであれば,いずれか1つに基づいた厳密な理論化こそが目指すべき方向となる.
 では,意味(論) (semantics) に基づいた厳密な分類をするとどうなるか.『新英語学辞典』の parts of speech の項では,この試みはうまく行かないだろうと論じられている.以下に引用しよう (p. 837) .

意味,機能,形態の3種の基準のうち,どれを採用してもよいわけであるが,ある一つを基準とした場合,まず,正確に分類できるかどうか,また仮に,分類できたにしても,その分類が文法記述に有効かどうかを考えなければならない.例えば,意味を基準に分類してみると,品詞間の境界を明確に区別することが困難であり,さらにもしあえて分類したとしても,その分類が文法記述には余り有益にはならないであろう.例えば,arrive と arrival を同じ品詞に入れたとすると,その用法について記述しようとすれば,その分類は,語形成とか,節から句への転換とかいう場合を除いては全く無意味になろう.このように意味基準の品詞分類の無益さから,次に機能,形態を基準にした分類が考えられる.


 意味による分類は,言うまでもなく意味論としてはおおいに意義があるのだが,品詞を区切る基準としては有益ではないようだ.とすると,品詞というのは,そもそも意味が関わる余地が少ないということになるのだろうか.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.

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2025-02-13 Thu

#5771. 品詞とは何か? --- 分類基準の問題 [pos][terminology][linguistics][history_of_linguistics][category][structuralism]

 「#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか」 ([2025-02-05-1]) と「#5765. 品詞とは何か? --- Bloomfield の見解」 ([2025-02-07-1]) で品詞論を紹介してきた.今回は『新英語学辞典』の parts of speech の項を参照しながら,英語の伝統的な8品詞の分類基準について考えてみる.
 英語の伝統的な8品詞は,意味,機能,形態の3つの分類基準がごちゃ混ぜになった分類であり,理論的には問題があるとされる.まず,名詞,形容詞,動詞,間投詞については,主に意味的な基準で分けられているといってよい.もちろん意味的な基準といっても微妙なケースはいくらでもある.英語で white は,日本語では「白」という名詞にも,「白い」という形容詞にも相当し,意味的には互いに限りなく近い.同様に,分詞は形容詞と動詞の合いの子といってよいが,合いの子からみればいずれにも意味的に近い.さらに,以上4品詞の分類については形態的な基準も少なからず関わっており,意味的な基準だけで語れるわけではない.間投詞は他と比べて意味的な自律性があるといえそうだが,これもまだ検討の余地があるかもしれない.
 一方,代名詞,副詞,接続詞は機能的な基準による分類だ.ただし,言語において「機能的」とのラベルはカバーする範囲が非常に広い.かりに「統語的」と狭めておけば,それなりに説明できるかもしれないが,グレーゾーンは残る.副詞や接続詞は統語的に決定できそうだが,代名詞は統語論的機能と同時に語用論的機能も帯びており,「機能的」のカバー範囲をもっと広めに設定しておく必要があるようにも思われる.
 最後に前置詞はどうだろうか.基本的には統語的な機能の観点からの分類といってよさそうだが,意味的な考慮が入っていないとはいえない.likeworth は後ろに「目的語」らしきものをとる点で統語的には前置詞的な振る舞いを示すが,比較的中身のある語彙的意味をもっている点では形容詞ぽい.
 品詞間の境目が明確でないという問題自体は古くからあり,個々の論点が指摘されてきたが,それ以前に3つの分類基準が複雑にオーバーラップしているという本質的な課題を抱えているのである.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.

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2025-02-07 Fri

#5765. 品詞とは何か? --- Bloomfield の見解 [pos][terminology][linguistics][history_of_linguistics][category][structuralism]

 一昨日の記事「#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか」 ([2025-02-05-1]) で,"parts of speech" (品詞),"word-class" (語類),"form-class" (形式類)といった近似する用語群について考えた.アメリカ構造主義の旗手 Bloomfield は,代表的著書 Language (§12.11) にて,この3つを区別して考えている.

The syntactic form-classes of phrases . . . can be derived from the syntactic form-classes of words: the form-classes of syntax are most easily described in terms of word-classes. Thus, in English, a substantive expression is either a word (such as John) which belongs to this form-class (a substantive), or else a phrase (such as poor John) whose center is a substantive; and an English finite verb expression is either a word (such as ran) which belongs to this form-class (a finite verb), or else a phrase (such as ran away) whose center is a finite verb. An English actor-action phrase (such as John ran or poor John ran away) does not share the form-class of any word, since its construction is exocentric, but the form-class of actor-action phrases is defined by their construction: they consist of a nominative expression and a finite verb expression (arranged in a certain way), and this, in the end, again reduces the matter to terms of word-classes.
   The term parts of speech is traditionally applied to the most inclusive and fundamental word-classes of a language, and then, in accordance with the principle just stated, the syntactic form-classes are described in terms of the parts of speech that appear in them. However, it is impossible to set up a fully consistent scheme of parts of speech, because the word-classes overlap and cross each other.


 form-class は語句の統語的な役割に対応する単位,word-class はその form-class の典型的な主要部を示す語の属する語彙的な区分,parts of speech はその word-class の伝統的で基本的な型,ということになるだろうか.
 あえてすっきりまとめるのであれば,それぞれ統語的単位,語彙的単位,語彙・統語・形態的単位といってよい.「品詞」 (parts of speech) は実用的な便利さゆえに広く用いられているが,実際には複合的(で意外と複雑)な単位ということになる.

 ・ Bloomfield, Leonard. Language. 1933. Chicago and London: U of Chicago P, 1984.

Referrer (Inside): [2025-02-14-1] [2025-02-13-1]

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2025-02-05 Wed

#5763. 品詞とは何か? --- ただの「語類」と呼んではダメか [pos][terminology][linguistics][history_of_linguistics][category][structuralism]

 昨日の記事 ([2025-02-04-1]) に続き,品詞 (parts of speech, or pos) という概念・用語をめぐる話題.今回は Crystal の言語学用語辞典を繰ってみた.

part of speech The TRADITIONAL term for a GRAMMATICAL CLASS of WORDS. The main 'parts of speech' recognized by most school grammars derive from the work of the ancient Greek and Roman grammarians, primarily the NOUN, PRONOUN, VERB, ADVERB, ADJECTIVE, PREPOSITION, CONJUNCTION and INTERJECTION, with ARTICLE, PARTICIPLE and others often added. Because of the inexplicitness with which these terms were traditionally defined (e.g. the use of unclear NOTIONAL criteria), and the restricted nature of their definitions (reflecting the characteristics of Latin or Greek), LINGUISTS tend to prefer such terms as WORD-class or FORM-class, where the grouping is based on FORMAL criteria of a more UNIVERSALLY applicable kind.


 ギリシア語やラテン語の文法の遺産を引き継いだ歴史的で伝統的な文法範疇 (category) であることが強調されており,それが必ずしも明確な語彙の区分であるわけではないことにも触れられている.従来,品詞は概念的な語彙区分として理解されることが多かったが,実際にはそれも "unclear" (不明確)であるとすら述べられている.
 加えて,Crystal は言語学ではむしろ "word-class" (語類)や "form-class" (形式類)と呼ぶ向きも多いと述べている.確かに「品詞」という用語を敢えて避けるケースはありそうだ.「品詞」できれいに割り切れない場合に,より一般的な概念・用語としての「語類」を持ち出すことはあると思う.
 それでも,言語学においては,拠って立つ理論次第ではあるが,「品詞」はあまりに便利すぎて手放せないケースのほうが多いのではないか.方便としてここまで踏み固められた「品詞」を手放すのは惜しい.

 ・ Crystal, David, ed. A Dictionary of Linguistics and Phonetics. 6th ed. Malden, MA: Blackwell, 2008. 295--96.

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2025-02-04 Tue

#5762. 品詞とは何か? --- 日本語の「品詞」を辞典・事典で調べる [pos][terminology][linguistics][history_of_linguistics][category]

 品詞 (parts of speech, or pos) は最古の文法範疇の1つといってよい.古代から現代にいたる広い意味での言語学 (linguistics) の歴史のなかで,きわめて有用であり続けた言語理論である.
 日本語の「品詞」という用語について,国語辞典や百科事典の記述を確かめてみたい.まず『日本国語大辞典』より.

ひん-し【品詞】〔名〕〈英 parts of speech の訳語〉({英}parts of speech の訳語)文法上の意義・職能・形態などから分類した単語の区分け。欧米語の学校文法では、現在一般に八品詞(名詞・代名詞・形容詞・動詞・副詞・接続詞・前置詞・間投詞)とされる。国文法では、名詞・数詞・代名詞・動詞・形容詞・形容動詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞・助詞・助動詞が挙げられるが、併合、細分する場合もあり、また、学説によって異同がある。「品詞」の語は、日本文法書としては、明治七年(一八七四)に田中義廉が「小学日本文典」で七品詞を説いたのが最も早い。*小学日本文典〔1874〕〈田中義廉〉二・八「七品詞の名目」*風俗画報‐一六八号〔1898〕言語門「一は品詞の如何に関せず、単に標準語を伊呂波順に配列し而して是に対照する方言を蒐集するもの」*日本文法中教科書〔1902〕〈大槻文彦〉一「単語の以上八品を品詞と名づく」*中等教科明治文典〔1904〕〈芳賀矢一〉一・一三「助詞は種々の品詞の下につきて他の品詞との関係を示し又は其作用を助くる詞なり」


 次に『デジタル大辞泉』より.

ひん-し【品詞】《parts of speech》文法上の職能によって類別した単語の区分け。国文法ではふつう、名詞・代名詞・動詞・形容詞・形容動詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞・助動詞・助詞の11品詞に分類する。分類については、右のうち、形容動詞を認めないものや、右のほかに数詞を立てるものなど、学説により異同がある。


 『世界大百科事典』では長い項目となっている.冒頭の1段落のみを引用する.

品詞 ひんし
文法用語の一つ。それぞれの言語における発話の規準となる単位,すなわち,文は,文法のレベルでは最終的に単語に分析しうる(逆にいえば,単語の列が文を形成する)。そのような単語には,あまり多くない数の範疇(はんちゆう)(カテゴリー)が存在して,すべての単語はそのいずれかに属している。一つの範疇に属する単語はある種の機能(用いられ方,すなわち,文中のどのような位置に現れるか)を共有している。こうした範疇を従来より品詞 parts of speech と呼んできた。名詞とか動詞とかと呼ばれているものがそれである。


 『日本大百科全書』でも長い項目なので,最初の3段落のみ示す.

品詞 ひんし
文法上の記述、体系化を目的として、あらゆる語を文法上の性質に基づいて分類した種別。語義、語形、職能(文構成上の役割)などの観点が基準となる。個々の語はいずれかの品詞に所属することとなる。
 品詞の名称は parts of speech (英語)、parties du discours (フランス語)などの西洋文典の術語の訳として成立したもの。江戸時代には、オランダ文法の訳語として、「詞品」「蘭語九品」「九品の詞」のようなものがあった。語の分類意識としては、日本にも古くからあり、「詞」「辞」「てにをは」「助け字」「休め字」「名(な)」などの名称のもとに語分類が行われていたが、「品詞」という場合は、一般に、西洋文典の輸入によって新しく考えられた語の類別をさす。品詞の種類、名称には、学説によって多少の異同もあるが、現在普通に行われているものは、名詞・数詞・代名詞・動詞・形容詞・形容動詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞・助詞・助動詞などである。これらのうちの数種の上位分類である「体言」「用言」などの名称、および下位分類である「格助詞」「係助詞」なども品詞として扱われることもある。なお、「接頭語」「接尾語」なども品詞の名のもとに用いられることもある。
 それぞれの品詞に所属する具体的な語も、学説によって異同がある。たとえば、受身・可能・自発・尊敬・使役を表す「る・らる・す・さす・しむ(れる・られる・せる・させる)」は、山田孝雄 (よしお) の学説では「複語尾」、橋本進吉の学説では「助動詞」、時枝誠記 (もとき) の学説では「接尾語」とされる。現在の国語辞書では、見出し語の下に品詞名を記すことが普通である。ただし、圧倒的に数の多い「名詞」については、これを省略しているものが多い。


 重要と思われる4点を抽出すると,次のようになる.

 ・ 品詞は語を意義・職能・形態によって区分したものである
 ・ 学説・論者によって品詞の区分や数が異なる
 ・ 一般に区分された品詞の数は少数で,一つひとつの単語はいずれかの品詞に属する
 ・ 日本語の「品詞」は,西洋語から輸入された語の区分を指すのに主として用いられる

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2025-01-19 Sun

#5746. etymology の語源 [etymology][terminology][kdee][oed][etymological_fallacy][language_myth]

 語源 (etymology) について,最近の記事として「#5737. 語源,etymology, veriloquium」 ([2025-01-10-1]) と「#5739. 定期的に考え続けたい「語源とは何か?」」 ([2025-01-12-1]) で考えた.今回は etymology という用語自体について検討する.
 英単語 etymology は,ギリシア語に端を発し,ラテン語,古フランス語を経由して,後期中英語に入ったが,もともとは高度に専門的な用語である.『英語語源辞典』の etymology の項目を掲げる.


kdee_etymology.png



 OED の etymology, n. では,部分的にフランス語から,部分的にラテン語から入ったものとして,つまり "Of multiple origins" として解釈している.それぞれの経路について,次のように述べている.

< (i) Middle French ethimologie, ethymologie (French etymologie) established account of the origin of a given word, explaining its composition (2nd half of the 12th cent. in Old French; frequently from early 16th cent.), interpretation of a word, that which is revealed by such interpretation (c1337), the branch of linguistics concerned with determining of the origins of words (1622 in the passage translated in quot. 1630 at sense 5, or earlier),
and its etymon (ii) classical Latin etymologia (in post-classical Latin also aethimologia, ethimologia, ethymologia) interpretation and explanation of a word on the basis of its origin < Hellenistic Greek ἐτυμολογία, probably < Byzantine Greek ἐτυμολόγος (although this is apparently first attested later: see etymologer n.) + -ία -y suffix3; on the semantic motivation for the Greek word see etymon n. and discussion at that entry.


 語源的意味こそが「真の意味」であるとする考え方については,OED2.a.i. にて次の注意書きがある.

The idea that a word's origin conveys its true meaning (cf. discussion at etymon n.) has become progressively discredited since the 18th cent. with the increased study of etymology as a linguistic science (see sense 5). It is now sometimes referred to as the etymological fallacy.


 注意すべきは etymology の学問分野としての語義である.OED の第3語義は「語源学」ではなく「品詞論」を指し,c1475 を初出として次のようにみえる.

3. Grammar. A branch of grammar which deals with the formation and inflection of individual words and their different parts of speech. Now historical.


 現代的な「語源学」の語義は OED の第5語義に相当し,初出は1630年と若干遅い.

5. The branch of linguistics which deals with determining the origin of words and the historical development of their form and meanings.


 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2025-01-10 Fri

#5737. 語源,etymology, veriloquium [etymology][terminology][greek][latin][oe][aelfric]

 下宮忠雄(著)『歴史比較言語学入門』(開拓社,1999年)の第9章は「語源学」と題されている.『スタンダード英語語源辞典』の編者の1人でもあるし,思い入れの強い章かと想像される.下宮 (131) は第9章の冒頭でこう書いている.

 言語学概論の1年間の授業が終わったあとで,何が印象に残っているか,何が面白かったかを試験問題の最後に問うと,語源と意味論という返事が圧倒的に多い.言語の研究は古代ギリシアに始まるが,そこでは,文法 (grammar) と語源 (etymology) が言語研究の2つの柱だった.
 単語は一つ一つが歴史を持っている.語源 (etymology) は単語の本来の意味(これをギリシア語では etymon という)を探り,その歴史を記述する.したがって,意味論とも大いに関係をもっている.Cicero (キケロー)はギリシア語の etymologia を vēriloquium (vērum 「真実」,loquium 「語ること,ことば」)とラテン語に訳したが,修辞学者 Quintilianus [クウィンティリアーヌス]が etymologia にもどし,これが西欧諸国に伝わって今日にいたっている.grammar も etymology も2千年以上も前のギリシア人が創造した用語である.


 「語源」を意味する語が,西洋語の歴史において変遷してきたというのは知らなかった.ギリシア語由来の etymology の響きは高尚で好きだが,キケローのラテン語 vēriloquium も味わいがある.いずれも英語本来語でいえば true word ほどである.そこに日本語あるいは漢語の「語源」に含まれる「みなもと」の意味要素が(少なくとも明示的には)含まれていない点がおもしろい.
 ちなみに,ギリシア語由来ながらもラテン語に取り込まれていた ethymologia の単語は,古英語でも術語として受容されていたようで,OED によると Ælfric, Grammar (St. John's Oxford MS.) 293 に文証される.

Sum þæra [sc. divisions of the art of grammar] hatte ETHIMOLOGIA, þæ is namena ordfruma and gescead, hwi hi swa gehatene sind.


 この時点ではあくまでラテン単語としての受容にすぎなかったとはいえ,英語文化において etymology は相当に長い歴史をもっているといえる.

(以下,後記:2025/01/12(Sun))

 ・ heltalk 「ラテン語で「語源」を意味する veriloquium もカッコいいですね」 (2025/01/10)
 ・ heldio 「#1322. word-lore 「語誌」っていいですよね」 (2025/01/11)

 ・ 下宮 忠雄 『歴史比較言語学入門』 開拓社,1999年.
 ・ 下宮 忠雄・金子 貞雄・家村 睦夫(編) 『スタンダード英語語源辞典』 大修館,1989年.

Referrer (Inside): [2025-01-19-1] [2025-01-12-1]

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2024-12-01 Sun

#5697. royal we は「君主の we」ではなく「社会的不平等の複数形」? [terminology][oe][me][royal_we][monarch][personal_pronoun][pronoun][sociolinguistics][politeness][t/v_distinction][honorific][number][shakespeare]

 数日間,「君主の we」 (royal_we) 周辺の問題について調べている.Jespersen に当たってみると「君主の we」ならぬ「社会的不平等の複数形」 ("the plural of social inequality") という用語が挙げられていた.2人称代名詞における,いわゆる "T/V distinction" (t/v_distinction) と関連づけて we を議論する際には,確かに便利な用語かもしれない.

   4.13. Third, we have what might be called the plural of social inequality, by which one person either speaks of himself or addresses another person in the plural. We thus have in the first person the 'plural of majesty', by which kings and similarly exalted persons say we instead of I. The verbal form used with this we is the plural, but in the 'emphatic' pronoun with self a distinction is made between the normal plural ourselves and the half-singular ourself. Thus frequently in Sh, e.g. Hml I. 2.122 Be as our selfe in Denmarke | Mcb III. 1.46 We will keepe our selfe till supper time alone. (In R2 III. 2.127, where modern editions have ourselves, the folio has our selfe; but in R2 I. 1,16, F1 has our selues). Outside the plural of majesty, Sh has twice our selfe (Meas. II. 2.126, LL IV. 3.314) 'in general maxims' (Sh-lex.).
   . . . .
   In the second person the plural of social inequality becomes a plural of politeness or deference: ye, you instead of thou, thee; this has now become universal without regard to social position . . . .
   The use of us instead of me in Scotland and Ireland (Murray D 188, Joyce Ir 81) and also in familiar speech elsewhere may have some connexion with the plural of social inequality, though its origin is not clear to me.


 ベストな用語ではないかもしれないが,社会的不平等における「上」の方を指すのに「敬複数」 ("polite plural") などの術語はいかがだろうか.あるいは,これではやや綺麗すぎるかもしれないので,もっと身も蓋もなく「上位複数」など? いや,一回りして,もっとも身も蓋もない術語として「君主複数」でよいのかもしれない.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 2. Vol. 1. 2nd ed. Heidelberg: C. Winter's Universitätsbuchhandlung, 1922.

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2024-11-26 Tue

#5692. royal we --- 君主は自身を I ではなく we と呼ぶ? [personal_pronoun][pronoun][royal_we][monarch][terminology][indefinite_pronoun][reflexive_pronoun][number]

 「君主の we」 (royal_we) と称される伝統的な用法がある.王や女王が,自身1人のことを指して I ではなく we を用いるという特別な一人称代名詞の使い方である.この用法については「#5284. 単数の we --- royal we, authorial we, editorial we」 ([2023-10-15-1]) で OED を参照しつつ少々取り上げた.
 この特殊用法について,Quirk et al. の §6.18 の Note [a] に次のような記述がある.

[a] The virtually obsolete 'royal we' (= I) is traditionally used by a monarch, as in the following examples, both famous dicta by Queen Victoria:
   We are not interested in the possibilities of defeat.    We are not amused.


 Quirk et al. の §6.23 には,対応する再帰代名詞 ourself への言及もある.

There is also . . . a very rare 'royal we' singular reflexive pronoun ourself . . . .


 次に Fowler の語法辞典を調べてみた.その we の項目に,royal we に関する記述があった (835) .

   4 The royal we. The OED gives examples from the OE period onward in which we is used by a single sovereign or ruler to refer to himself or herself. The custom seems to be dying out: in her formal speeches Queen Elizabeth II rarely if ever uses it now. (On royal tours when accompanied by the Duke of Edinburgh we is often used by the Queen to refer to them both; alternatively My husband and I.)
   History of the term. The OED record begins with Lytton (1835): Noticed you the we---the style royal? Later examples: The writer uses 'we' throughout---rather unfortunately, as one is sometimes in doubt whether it is a sort of 'royal' plural, indicating only himself, or denotes himself and companions---N&Q 1931; 'In the absence of the accused we will continue with the trial.' He used the royal 'we', but spoke for us all---J. Rae, 1960. (The last two examples clearly overlap with those given in para 3.) It will be observed that the term 'the royal we' has come to be used in a weakened, transferred, or jocular manner. The best-known example came when Margaret Thatcher informed the world in 1989 that her daughter-in-law had given birth to a son: We have become a grandmother, the Prime Minister said. A less well-known American example: interviewed on a television programme in 1990 Vice-President Quayle, in reply to the interviewer's expression of hope that Quayle would join him again some time, replied We will.


 なお,上の引用の中程に言及のある"para 3" では,indefinite we が扱われていることを付け加えておく.

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
 ・ Burchfield, Robert, ed. Fowler's Modern English Usage. Rev. 3rd ed. Oxford: OUP, 1998.

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2024-11-16 Sat

#5682. Low Dutch という略称 [dutch][low_german][flemish][contact][lexicology][borrowing][loan_word][terminology][germanic][variety]

 「#2646. オランダ借用語に関する統計」 ([2016-07-25-1]) で,英語史におけるオランダ借用語をめぐって Durkin を参照した.そこで Dutch でも Low German でもなく,中間的な Low Dutch という用語が使われていた.これが何を指すのかといえば,Durkin 自身が丁寧に解説してくれていた.その1節 (354) を読んでみよう.

Loanwords into English from Dutch (including Flemish) and Low German are normally considered together, because it is so difficult to tell them apart. This is partly because word forms in both languages were, and to some extent still are, so similar, and partly because the social and cultural circumstances of borrowing into English are also often hard to tell apart. 'Low Dutch' is sometimes used as a collective cover term for borrowings from either or both languages into English, although it is important to note that Low Dutch is not itself a language name, but simply a terminological shorthand for referring to a complex situation.


 DutchLow German は各々区別される言語変種ではあるが,単語の形態が互いによく似ており,借用元同定の文脈においては,実際上区別がつかないことも多いために,便宜上2変種を合わせた用語として Low Dutch を設定しておく,ということだ.ある意味で Low Dutch はフィクションということになる.フランス借用語かラテン借用語か判別がつきにくいときに,便宜上「フランス・ラテン系借用語」などと一括して呼ぶのに似ている.
 しかし,こうした用語のフィクション性それ自体も程度の問題ともいえるかもしれない.というのは,上記の Dutch にしても Low German にしても,「区別される言語変種」と一応のところ述べはしたが,やはり何らかの程度においてフィクションでもあるからだ.この点については「#415. All linguistic varieties are fictions」 ([2010-06-16-1]) を参照.
 便利に使えるのであれば Low Dutch というタームは悪くない.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2024-10-28 Mon

#5663. 音節とは何か? [syllable][mora][terminology][phonology][prosody][phonetics][sobokunagimon]

 標題は素朴な疑問だが,実は言語学的には簡単には答えられない.音節 (syllable) は音声学でも基本的な概念だが,実は一般的な定義を与えるのが難しいのだ.Bussmann の言語学用語集を読んでみよう.

syllable
Basic phonetic-phonological unit of the word or of speech that can be identified intuitively, but for which there is no uniform linguistic definition. Articulatory criteria include increased pressure in the airstream . . . , a change in the quality of individual sounds . . . , a change in the degree to which the mouth is opened. Regarding syllable structure, a distinction is drawn between the nucleus (= 'crest,' 'peak,' ie. the point of greatest volume of sound which, as a rule, is formed by vowels) and the marginal phonemes of the surrounding sounds that are known as the head (= 'onset,' i.e. the beginning of the syllable) and the coda (end of the syllable). Syllable boundaries are, in part, phonologically characterized by boundary markers. If a syllable ends in a vowel, it is an open syllable; if it ends in a consonant, a closed syllable. Sounds, or sequences of sounds that cannot be interpreted phonologically as syllabic (like [p] in supper, which is phonologically one phone, but belongs to two syllables), are known as 'interludes.'


 ある個別言語の音節は母語話者にとって直感的に理解される単位だが,言語一般を念頭において客観的に定式化しようと試みても,うまくいかない.調音音声学や聴覚音声学の側からの定義,または音韻理論的な解釈などがあるものの,必ずしもきれいには定義できない.それでいて母語話者は音節という単位を「知っている」らしいというのだから,不思議だ.
 音節をめぐっては,hellog でも関連する話題を取り上げてきた.以下の記事などを参照.

 ・ 「#347. 英単語の平均音節数はどのくらいか?」 ([2010-04-09-1])
 ・ 「#1440. 音節頻度ランキング」 ([2013-04-06-1])
 ・ 「#1513. 聞こえ度」 ([2013-06-18-1])
 ・ 「#1563. 音節構造」 ([2013-08-07-1])
 ・ 「#3715. 音節構造に Rhyme という単位を認める根拠」 ([2019-06-29-1])
 ・ 「#4621. モーラ --- 日本語からの一般音韻論への貢献」 ([2021-12-21-1])
 ・ 「#4853. 音節とモーラ」 ([2022-08-10-1])

 ・ Bussmann, Hadumod. Routledge Dictionary of Language and Linguistics. Trans. and ed. Gregory Trauth and Kerstin Kazzizi. London: Routledge, 1996.

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2024-10-26 Sat

#5661. 否定とは何か? [negation][polarity][negative][terminology][syntax][double_negative][logic][assertion][semantics]

 昨日の記事「#5670. なぜ英語には単数形と複数形の区別があるの? --- Mond での質問と回答より」 ([2024-10-24-1]) で,否定 (negation) の話題を最後に出しました.言語において否定とは何か.これはきわめて大きな問題です.論理学や哲学からも迫ることができますが,ここでは言語学の観点に絞ります.
 言語学の用語辞典に頼ることから始めましょう.まず Crystal (323--24) より引用します.

negation (n.) A process or construction in GRAMMATICAL and SEMANTIC analysis which typically expresses the contradiction of some or all of a sentence's meaning. In English grammar, it is expressed by the presence of the negative particle (neg, NEG) not or n't (the CONTRACTED negative); in LEXIS, there are several possible means, e.g. PREFIXES such as un-, non-, or words such as deny. Some LANGUAGES use more than one PARTICLE in a single CLAUSE to express negation (as in French ne . . . pas). The use of more than one negative form in the same clause (as in double negatives) is a characteristic of some English DIALECTS, e.g. I'm not unhappy (which is a STYLISTICALLY MARKED mode of assertion) and I've not done nothing (which is not acceptable in STANDARD English). . . .
   A topic of particular interest has been the range of sentence STRUCTURE affected by the position of a negative particle, e.g. I think John isn't coming v. I don't think John is coming: such variations in the SCOPE of negation affect the logical structure as well as the semantic analysis of the sentence. The opposite 'pole' to negative is POSITIVE (or AFFIRMATIVE), and the system of contrasts made by a language in this area is often referred to as POLARITY. Negative polarity items are those words or phrases which can appear only in a negative environment in a sentence, e.g. any in I haven't got any books. (cf. *I've got any books).


 次に Bussmann (323) を引用します.論理学における否定に対して言語学の否定を,次のように解説しています.

In contrast with logical negation, natural language negation functions not only as sentence negation, but also primarily as clausal or constituent negation: she did not pay (= negation of predication), No one paid anything (= negation of the subject NP), he paid nothing (= negation of the object NP). Here the scope (= semantic coverage) of negation is frequently polysemic or dependent on the placement of negation, on the sentence stress . . . as well as on the linguistic and/or extralinguistic context. Natural language negation may be realized in various ways: (a) lexically with adverbs and adverbial expressions (not, never, by no means), indefinite pronouns (nobody, nothing, none), coordinating conjunctions (neither . . . nor), sentence equivalents (no), or prepositions (without, besides); (b) morphologically with prefixes (in + exact, un + interested) or suffix (help + less); (c) intonationally with contrastive accent (in Jacob is not flying to New York tomorrow the negation can refer to Jacob, flying, New York, or tomorrow depending which elements are stressed); (d) idiomatically by expressions like For all I care, . . . . Formally, three types of negation are differentiated: (a) internal (= strong) negation, the basic type of natural language negation (e.g. The King of France is not bald); (b) external (= weak) negation, which corresponds to logical negation (e.g. It's not the case/it's not true that p); (c) contrastive (= local) negation, which can also be considered a pragmatic variant of strong negation to the degree that stress and the corresponding modifying clause are relevant to the scope of the negation (e.g. The King of France is not bald, but rather wears glasses. The linguistic description of negation has proven to be a difficult problem in all grammatical models owing to the complex interrelationship of syntactic, prosodic, semantic, and pragmatic aspects.


 この2つの解説に基づいて,言語学における否定に関する論点・観点を箇条書き整理すると次のようになるでしょうか.

1. 否定の種類と範囲
 ・ 文否定 (sentence negation)
 ・ 節否定 (clausal negation)
 ・ 構成要素否定 (constituent negation)
2. 否定の実現様式
 ・ 語彙的 (lexically): 副詞,不定代名詞,接続詞,前置詞など
 ・ 形態的 (morphologically): 接頭辞,接尾辞
 ・ 音声的 (intonationally): 対照アクセント
 ・ 慣用的 (idiomatically): 特定の表現
3. 否定の形式的分類
 ・ 内的(強い)否定 (internal/strong negation)
 ・ 外的(弱い)否定 (external/weak negation)
 ・ 対照的(局所的)否定 (contrastive/local negation)
4. 否定の作用域 (scope)
 ・ 否定辞の位置による影響
 ・ 文強勢による影響
 ・ 言語的・非言語的文脈による影響
5. 2重否定 (double negative)
 ・ 方言や非標準英語での使用
 ・ 文体的に有標な肯定表現としての使用
6. 極性 (polarity)
 ・ 肯定 (positive/affirmative) vs. 否定 (negative)
 ・ 否定極性項目
7. 否定に関する統語的,韻律的,意味的,語用論的側面の複雑な相互関係
8. 自然言語の否定と論理学的否定の違い

この一覧は,否定の複雑さと多面性を示しています.案の定,抜き差しならない問題です.

 ・ Crystal, David, ed. A Dictionary of Linguistics and Phonetics. 6th ed. Malden, MA: Blackwell, 2008. 295--96.
 ・ Bussmann, Hadumod. Routledge Dictionary of Language and Linguistics. Trans. and ed. Gregory Trauth and Kerstin Kazzizi. London: Routledge, 1996.

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2024-09-25 Wed

#5630. 語源学とは何か? --- 『英語語源辞典』 (p. 1647) より [hellive2024][khelf][kdee][etymology][terminology][archaeology][history][philology][methodology][lexicology][historical_linguistics][comparative_linguistics]



 一昨日の Voicy heldio にて「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」を配信しました.これは,9月8日に heldio を媒体として開催された「英語史ライヴ2024」の午前9時過ぎから生配信された精読会のアーカイヴ版です.研究社より出版されている『英語語源辞典』の巻末の専門的な解説文を,皆で精読しながら解読していこうという趣旨の読書会です.当日は多くのリスナーの方々に生配信でお聴きいただきました.ありがとうございました.
 khelf の藤原郁弥さん(慶應義塾大学大学院生)が MC を務め,そこに「英語語源辞典通読ノート」で知られる lacolaco さん,およびまさにゃんこと森田真登さんが加わり,45分間の集中精読会が成立しました.ニッチな企画ですが,非常に濃い議論となっています.『英語語源辞典』のファンならずとも楽しめる配信回だと思います.ぜひお聴きください.以下は,精読対象となった文章の最初の2段落です (p. 1647) .

1. 語源学とは何か
 語源学の目的は,特定言語の単語の音形(発音・綴り字)と意味の変化の過程を可能なかぎり遡ることによって,文献上または文献以前の最古の音形と意味を同定または推定し,その言語の語彙組織におけるその語の位置を通時的に決定することにある.したがって,語源学はフィロロジーの一分科あるいは語彙論に属するが,その方法論と実践とにおいて,歴史・比較言語学と密接に関連し,また歴史的考証や考古学の成果をも援用する.
 英語の場合であれば,現代英語から中期英語 (Middle English: 略 ME),古期英語 (Old English: 略 OE) の段階にまで遡る語史的語源的研究と,さらに英語の成立以前に遡ってゲルマン基語 (proto-Germanic: 略 Gmc),印欧基語 (Proto-Indo-European: 略 IE) の段階を扱う遡源的語源研究とが考えられる.ある単語の語源を特定するためには,この両面を通じて,形態の連続性と同時に意味の連続性が確認されなければならない.そして,英語という言語が成立した後の語史的考察が英語成立以前の遡源的考察に先行すべきこと,すわなち英語史的研究が比較言語学的研究に先行すべきことはいうまでもないであろう.


 上記配信回を受けて,私の感想です.この2段落は,実はかなり難解だと思います.2点を指摘します.1つめに「語源学の目的は〔中略〕その言語の語彙組織におけるその語の位置を通時的に決定することにある」をすんなりと理解できる読者は少ないのではないでしょうか.私自身もこの文の字面の「意味」は理解したとしても,それがどのような「意義」をもつのかを理解するには少々の時間を要しましたし,その理解が当たっているのかどうかも心許ないところです.
 2つめは,最後の部分「英語という言語が成立した後の語史的考察が英語成立以前の遡源的考察に先行すべきこと,すわなち英語史的研究が比較言語学的研究に先行すべきことはいうまでもないであろう」です.この箇所については,本当にいうまでもないほど自明なのだろうか,という疑問が生じます.というのは,時間的にみる限り,語史的考察は遡源的考察に先行しないからです.それなのに「英語史的研究が比較言語学的研究に先行すべき」というのは,むしろ矛盾しているように聞こえないでしょうか.この2点目については,この後の段落を読めば,確かに真意がわかってきます.いずれにせよ,なかなかの水準の高い最初の2段落ではないでしょうか.
 1点目について私は考えるところがあるのですが,皆さんも改めて「語源学の目的は〔中略〕その言語の語彙組織におけるその語の位置を通時的に決定することにある」の解釈を考えていただければと思います.
 語源学とは何か? という問いについては,hellog より以下の記事を参照.

 ・ 「#466. 語源学は技芸か科学か」 ([2010-08-06-1])
 ・ 「#727. 語源学の自律性」 ([2011-04-24-1])
 ・ 「#1791. 語源学は技芸が科学か (2)」 ([2014-03-23-1])
 ・ 「#598. 英語語源学の略史 (1)」 ([2010-12-16-1])
 ・ 「#599. 英語語源学の略史 (2)」 ([2010-12-17-1])

 ここまでのところで『英語語源辞典』に関心をもった方は,ぜひ入手していただければ.


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2024-08-31 Sat

#5605. 「漢字列」という用語・概念 [terminology][kanji][graphology][writing][review][japanese][chinese][methodology]


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 「#5601. 漢字は中国語と日本語で文字論上の扱いが異なる」 ([2024-08-27-1]) の記事で,今野を引用して漢字の文字論を考えた.そのなかで「漢字列」という用語がさらっと登場した.しかし,これは日本語における漢字の役割を議論する上で,すこぶる重要な用語であり概念だと学んだ.私たちが一般的に「漢熟語」としてとらえている,典型的には漢字2字ほどからなる表現のことである.
 今野は「漢字列」という洞察を導入するにあたって,具体例として「平明」を挙げている.普通に考えれば,これは「ヘイメイ」と音読みで読み下すだろう.しかし,それは現代の話しである.12世紀半ばという時代設定で考えると,この漢字2文字からなる「漢字列」は,音読みの「ヘイメイ」のみならず,訓読みで「アケホノ」とも読み下すことができた.漢語が多く使われている文章内では「ヘイメイ」と読み下す可能性が高く,和語が多く使われている文章内では「アケホノ」の可能性が高かったにちがいない.この2文字の連なりは,原理的には1つの読みに定まらなかったのであり,その点において正書法がなかった,といえるのだ.
 かくして,この漢字2文字の扱いは宙ぶらりんとなる.この漢字2文字を,きわめて形式的に「漢字列」と呼んでおこう.これをどのように読み下すかは別として,読み下す以前の形式に言及したい場合に,無味乾燥な「漢字列」の呼称は意外と便利である.読み下しの結果いかんにかかわらず使える用語・概念だからだ.
 ここまで来たところで,今野 (44--45) の説明を導入しよう.きっとこの用語・概念の有益さが分かるだろう.

 しかし,とにもかくにも,言語を観察しようとしているのに,今みている漢字列がいかなる語をあらわしているかわからない,という状況が日本語においては起こり得る.こうしたことにかかわることがらを説明しようとした時になんとも落ち着きがわるいし,説明しにくい.その落ち着きのわるさ,説明のしにくさをいくらかでも解消するために,いかなる語をあらわしているかわからないものに「漢字列」という名前をつけておく.それがいかなる語をあらわしているか判明したら,和語とか漢語とかはっきりとした呼び方をすればよい.また語を超えた単位であっても,漢字が並んでいるものはすべて「漢字列」と呼ぶ.
 このように「漢字列」という概念を設定しておくことは日本語の歴史の観察,分析,記述に有効であると考える.あるいは有効であることを超えて,「漢字列」が日本語の歴史にとってのキー・ワードの一つかもしれない.つまり,「漢字列」という概念を使って説明すると,うまく説明できることが多いのが日本語ということになる.当然のことであるが,文字化に漢字を使っていない言語について考えるにあたっては「漢字列」という概念は必要がない.表音文字のみを使う言語の観察には存在しない概念といってよい.


 一般文字論にとって,きわめて示唆に富む洞察ではないか.

 ・ 今野 真二 『日本語と漢字 --- 正書法がない言葉の歴史』 岩波書店〈岩波新書〉,2024年.

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2024-08-23 Fri

#5597. ことばの意味の外延内包 [semantics][terminology][cognitive_linguistics]


今井 むつみ 『ことばの学習のパラドックス』 筑摩書房,2024年.



 今井むつみ(著)『ことばの学習のパラドックス』(筑摩書房,2024年)より,意味論でしばしば出会う外延 (extension) と内包 (intension) という用語を導入したい.

 「ことばの意味」には2つの重要な側面がある.「外延」 (extension) と「内包) (intension) である.ことばは,事物,事象,動作,関係,属性などを「指示」 (refer) するものであるが,指示対象 (referent) の集まりを「外延」という.「外延」は狭義の「カテゴリー」と同義である.「狭義の」というただし書きをつけたのは,本来の「カテゴリー」とは広い意味では事例の集合として人がみなすものなら何でもよく,必ずしもことばが指し示す指示物の集合でなくてもよいし,特に文化社会的に意味があるものでなくてもよいからである.
 「内包」は「外延」よりも定義が難しい.簡単に言ってしまえば,「内包」は指示対象となるものがどのような属性を持ち,指示対象にならない事物とどの点において異なるかの知識で,これによって人は,ある事例がそのことばの指示対象となるかどうかを決定する.古典的意味論では,内包は外延を決定するための必要にしてかつ十分な最小の数の意味要素 (semantic features) の集合と考えられていたが (Katz & Fodor, 1963),ここでは,「内包」とは,カテゴリーにどのような属性があり,それが互いにどのような関係にあるのか,カテゴリーにとってどの程度の重要性があるか,などについての知識であり,構造化された内的表象と考える.
 また,筆者は「内包」の中身は必ずしも言語的に記述できる,「くちばしがある」,「足が四本ある」などの属性に限らないと思っている.たとえば,知覚的なイメージ,あるいは最近よく認知心理学でいわれる「イメージスキーマ」 (Lakoff, 1987; Langacker, 1987) のようなものが内包の一部である場合もあると思う.たとえば「赤」ということばの内包が何であるかを言語的な属性で記述するのはほとんど不可能である.しかし,人は「赤」が知覚的にどういう色であるか,さらに「赤」の周辺の色「オレンジ」や「ピンク」がどのような色であるかのイメージを持っており,その内的イメージに照らして,問題の事例が「赤」であるかないかを決めることができる.この場合,この知覚的イメージも立派な「内包」であると思われる.「内包」は狭義の「概念」 (concept) に相当するものと考えて良い.ただし「概念」ということばも「カテゴリー」と同様多義的で,広義には「知識全般」を指して用いる場合もある.(今井,21--23頁)


 引用中にもある通り,平たくいえば「外延」は「カテゴリー」と,「内包」は「概念」ととらえてよい.しかし,言い換えた用語自体が多義であるので厄介だ.意味論ではとりわけ「概念」とは何かが問題とされてきた.これについては,以下の記事を参照されたい.

 ・ 「#1957. 伝統的意味論と認知意味論における概念」 ([2014-09-05-1])
 ・ 「#2808. Jackendoff の概念意味論」 ([2017-01-03-1])
 ・ 「#1931. 非概念的意味」 ([2014-08-10-1])

 ・ 今井 むつみ 『ことばの学習のパラドックス』 筑摩書房,2024年.

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2024-08-20 Tue

#5594. 民間語源(解釈語源)の復権のために [inohota][etymology][folk_etymology][analogy][terminology][link]



 一昨日8月18日(日)の YouTube 「いのほた言語学チャンネル」の最新回は,「#259. tip(レストランなどでのチップ)の語源は To Insure Promptness(「すぐのご提供の保証」)の頭文字だなどの怪しげな民間語源があるが...」です.サムネイルには大きく「後付けの語源を軽んじてはいけない理由」の文句が現われています(←井上氏の要約センスによるものです).
 数回前の配信回で,井上氏が語源ネタは「教室から酒場まで」人気があるとの名言を繰り出しました.おおよそ教室の語源が「学者語源」,酒場の語源が「民間語源」に相当するでしょうか.
 民間語源 (folk_etymology) はしばしば「俗説」とも呼ばれ,真面目な語源学や言語学では低く見られる傾向がありました.しかし,実は人間の言語の創造力と想像力を示してくれる貴重な事例なのです.その点では言い間違いなどと同じくらいの言語学的価値があります.
 私は,この2種類の対立する語源に与えられてきた従来の呼称「民間語源」と「学者語源」に,どうも馴染めません.威信の上下関係がつきまとうからです.いずれも捉え方こそ異なりますが,各々が尊ばれるべき語源であると考えています.
 そこで,この対立についてポジティヴな解釈を促すようなネーミングを考え続けてきました.もっとよい呼称があるかもしれませんが,とりあえず民間語源を「解釈語源」と,学者語源を「探究語源」と呼ぶことにしています.
 この問題意識や関連する話題は,hellog (や heldio/helwa)でも初めてではありません.以下をご参照いただき,さらに深く考えていただければと思います.

 ・ hellog 「#2174. 民間語源と意味変化」 ([2015-04-10-1])
 ・ helwa 「【英語史の輪 #9】語源って何?」(2023/06/30)
 ・ hellog 「#5180. 「学者語源」と「民間語源」あらため「探究語源」と「解釈語源」 --- プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) の最新回より」 ([2023-07-03-1])
 ・ 「#5378. 歴史的に正しい民間語源?」 ([2024-01-17-1])
 ・ 「#3539. tip (心付け)の語源」 ([2019-01-04-1])
 ・ 「#4942. sirloin の民間語源 --- おいしすぎて sir の称号を与えられた牛肉」 ([2022-11-07-1])

 井上氏の上記の名言にインスピレーションを受け,「教室語源」と「酒場語源」も普段使いには悪くないなと思い始めています.

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2024-08-05 Mon

#5579. 間投詞とは何か? [interjection][pos][category][exclamation][syntax][onomatopoeia][terminology][exclamation][pragmatics][syntax]

 間投詞 (interjection) というマイナーな品詞は,おおよそ統語規則に縛られない唯一の語類ということで,どこか自由な魅力がある.定期的に惹かれ,この話題を取り上げてきた気がする.過去の記事としては「#3689. 英語の間投詞」 ([2019-06-03-1]),「#3712. 英語の間投詞 (2)」 ([2019-06-26-1]),「#3688. 日本語の感動詞の分類」 ([2019-06-02-1]) などを参照されたい.
 今回は Crystal, McArthur, Bussmann の各々の用語辞典で interjection を引いてみた.

interjection (n.) A term used in the TRADITIONAL CLASSIFICATION of PARTS OF SPEECH, referring to a CLASS of WORDs which are UNPRODUCTIVE, do not enter into SYNTACTIC relationships with other classes, and whose FUNCTION is purely EMOTIVE, e.g., Yuk!, Strewth!, Blast!, Tut tut! There is an unclear boundary between these ITEMS and other types of EXCLAMATION, where some REFERENTIAL MEANING may be involved, and where there may be more than one word, e.g. Excellent!, Lucky devil!, Cheers!, Well well! Several alternative ways of analysing these items have been suggested, using such notions as MINOR SENTENCE, FORMULAIC LANGUAGE, etc. (Crystal)


INTERJECTION [15c: through French from Latin interiectio/interiectionis something thrown in]. A part of speech and a term often used in dictionaries for marginal items functioning alone and not as conventional elements of sentence structure. They are sometimes emotive and situational: oops, expressing surprise, often at something mildly embarrassing, yuk/yuck, usually with a grimace and expressing disgust, ow, ouch, expressing pain, wow, expressing admiration and wonder, sometimes mixed with surprise. They sometimes use sounds outside the normal range of a language: for example, the sounds represented as ugh, whew, tut-tut/tsk-tsk. The spelling of ugh has produced a variant of the original, pronounced ugg. Such greetings as Hello, Hi, Goodbye and such exclamations as Cheers, Hurra, Well are also interjections. (McArthur)


interjection [Lat. intericere 'to throw between']
Group of words which express feelings, curse, and wishes or are used to initiate conversation (Ouch!, Darn!, Hi!). Their status as a grammatical category is debatable, as they behave strangely in respect to morphology, syntax, and semantics: they are formally indeclinable, stand outside the syntactic frame, and have no lexical meaning, strictly speaking. Interjections often have onomatopoeic characteristics: Brrrrr!, Whoops!, Pow! (Bussmann)


 他の用語辞典も引き比べているところである.あまり注目されることのない間投詞の魅力に迫っていきたい.

 ・ Crystal, David, ed. A Dictionary of Linguistics and Phonetics. 6th ed. Malden, MA: Blackwell, 2008. 295--96.
 ・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.
 ・ Bussmann, Hadumod. Routledge Dictionary of Language and Linguistics. Trans. and ed. Gregory Trauth and Kerstin Kazzizi. London: Routledge, 1996.

Referrer (Inside): [2025-01-01-1]

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