
一昨日の5月28日(木),英語史をテーマとする日本(世界でも?)唯一の月刊ウェブマガジン Helvillian 6月号が公開されました.通算第20号となる節目の号です.前号の紹介記事で「次号はいよいよ第20号の大台に乗る」と期待を寄せていましたが,こうして実際に形になり,継続の重みと有志ヘルメイトの皆さんの自発的なエネルギーに改めて深い敬意を表します.
今号の「表紙のことば」を担当されたのは taku さんです.ダイバーの taku さんが,ダイビングと英語史の共通点をアクロバティックに指摘されています.実は私もダイバーなのですが,「ダイビング×英語史」は考えたことがなかったので,今回 taku さんのことばを読んで目から鱗が落ちました.taku さんにお寄せいただいた表紙の写真はもちろん海面下の絶景.表紙デザインは,編集委員のお一人 Galois さんが手がけられました.
続く本編は,この1ヶ月のあいだに主に note 上で公開されたヘルメイトさんたちの記事群の抜粋一覧です.6月10日に発売予定の拙著 #なぜさんたんげん こと『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)を応援してくださる記事も多く含まれており,感謝に堪えません.
まず ari さんによる記事は,今月も圧倒的な質と量で,お馴染みの「ari 節」が安定的に炸裂しています.マカロンと増大辞をめぐる語源の話題から,『なぜさんたんげん』カウントダウン企画をマンガで応援する「英子さんたんげん」シリーズまで,縦横無尽のhel活振りです.
Grace さんは「新・家庭の常備「薬」なぜさんたんげん」と題する記事のなかで,近刊についてすでにウェブ公開されている部分のみを手がかりに,著者が近刊にこめた意図を鋭い洞察で暴いてくれています.著者として早くも身ぐるみを剥がされてしまったと感じています.恐るべし Grace 節!
今号の特筆すべき点として,kendama_player さんが note で初投稿を果たされたことが挙げられます.「ROAD TO 英語学・英語史」と題して,ご自身の英語史との出会いを振り返られています.新たな書き手の登場にコミュニティの広がりを感じ,嬉しい思いです.
lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンを順調に走行中で,今回は dental から desert までの単語をカバーしています.lacolaco さんが切り開いた「辞書を通読する」という道は,後に他のヘルメイトも歩むことになり,最も堅実で強力なhel活コンテンツに成長しました.そのような同志の1人が,あまねちゃんです.今号から『英語語源辞典』を気軽に通読する新シリーズを立ち上げられ,abacus から abyss に至るまで4本の記事を連発されています.この辞典通読ムーブメントの連鎖には,驚きを禁じ得ません.
mozhi gengo さんの寄稿の多さと視野の広さにも,相変わらず圧倒されます.インド英語の「クセ」に関する話題や,vacuum の <uu> という不思議な綴字の謎,さらには英領インド側から見たイギリスにとってのペルシャという歴史的な話題にまで筆が及んでいます.ペルシャ語の hastam が英語の I am に対応するという比較言語学的な指摘など,知的好奇心を大いに刺激されます.
教育・普及の観点からは,sorami さんの中学生向け英語語源クイズが第8弾・第9弾へと到達し,ラテン語の紹介や数の接頭辞を取り上げています.またみーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは128回に到達し(実際には本日までに140回に届こうというところ),継続力にただただ脱帽するばかりです.
佐久間さんは,日本歯科医史学会の特別講演のお知らせや,『語源で学ぶ医学英単語ハンドブック』を通じた医学英語教育の新たな地平についての議論により,医学の世界と言語研究の成果の交差点を探る希有なhel活を展開されています.
ykagata さんは,毎日連続投稿100回を優に超える活躍振りで,「ドイツ語×英語史」の話題を中心としつつ,いまや最も幅広いテーマでhel活を展開するヘルメイトとなっています.「「プチプチ」のドイツ語」や「カルビーのパッケージ仕様変更についてのドイツ語圏での報道を読む」など,タイトルだけ見ても読まざるを得ない記事が並びます.番外編として「『紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか』にこじつけて学ぶドイツ語」も投稿されています.
umisio さんの記事群は,今号でも鋭い批評性とユーモアが同居しています.川上語録の深掘りシリーズ最終回,国語の教科書や大河ドラマをめぐる歴史の考察,さらには「「英語史で解く英文法の謎 なぜ[3単現のs]をつけるのか」というタイトルのなぜ」シリーズも開始されました.
専門的な英語史の窓としては,川上さんによる「古英語の規範意識」および「重なる三単現 s」の2本の論考が,誌面に重厚な学術的深みを与えています.私自身も,新刊書の予約をめぐる御礼や,応援マガジンの始動について微力ながら記事を寄せさせていただきました.
巻末は Grace さんによる「あゆみ」と,編集委員4名による第20号到達までの道のりを振り返っての「編集後記」で美しく締めくくられています.
このように通算第20号は,記念の号にふさわしく,質量ともに過去最高水準の充実ぶりとなっています.有志の皆さんのエネルギーによって紡がれるこの知的空間を,ぜひ時間をかけてゆっくりと味わっていただければ幸いです.
「読むだけでなく,自分もこのhel活の輪に加わってみたい」という方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の扉を叩いてみてください.ともに学び,ともに創る喜びが,そこには溢れています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

5月22日(金)よりスタートしていました,6月10日発売の新刊『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』の発売前大イベント「『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙」 (in Slido) ですが,5月26日(火)の 23:59 をもちまして,予定通りに投票を締め切りました.最終的な投票総数は96件にのぼりました.深夜のラストスパートにかけて票を投じてくださった皆さん,そしてSNS等でこのお祭りを一緒に盛り上げてくださったすべての方々に,著者として心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
一昨日お届けした中間報告の記事「#6238. 今晩投票締切 --- 『なぜさんたんげん』24の疑問・総選挙,現在大激戦中」 ([2026-05-26-1]) では,2位グループの凄まじいデッドヒートの様子をお伝えしましたが,その後,どのような結末を迎えたのでしょうか.お待たせいたしました.ここに最終結果の確定順位と得票率を,降順にてご報告いたします.皆さんの「推し疑問」がどこに着地したのか,ぜひお確かめください.
1位:問5. なぜ3単現の s をつけるのか (38%)
2位:問9. なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか (21%)
3位:問7. なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形で表すのか (19%)
3位:問21. アルファベット最後の文字 Z のミステリー (19%)
5位:問20. どのように単語ごとのアクセントの位置が決まるのか (18%)
6位:問1. なぜ英語の語順は SVO なのか (16%)
6位:問3. なぜ存在を表すのに There is/are .... という構文を使うのか (16%)
6位:問4. なぜ疑問文に do が現れるのか (16%)
9位:問2. なぜ英語の文には主語が必要なのか (15%)
9位:問8. なぜ仮定法では if I WERE a bird となるのか (15%)
11位:問15. なぜIは大文字で書くのか (11%)
11位:問24. 単数の they とは何か (11%)
13位:問12. なぜ go の過去形は went になるのか (10%)
13位:問17. なぜ know や high には発音されない文字があるのか (10%)
15位:問6. なぜ will を使って未来を表すのか (8%)
15位:問14. なぜAの読みは「アー」ではなく「エイ」なのか (8%)
17位:問13. なぜ形容詞の比較級には -er と more があるのか (6%)
17位:問16. 「マジック e」とは何か (6%)
19位:問18. なぜ one, two はこのスペリングでこの発音なのか (5%)
19位:問22. なぜ英語には類義語が多いのか (5%)
19位:問23. なぜ英語には省略語が多いのか (5%)
22位:問19. なぜ eleven, twelve というのか (4%)
23位:問11. なぜ child の複数形は children になるのか (3%)
24位:問10. なぜ foot の複数形は feet になるのか (2%)
いかがでしょうか.最終結果を眺めてみますと,中間発表からの数時間でさらなるドラマが生まれていたことが分かります.
まず,栄えある第1位に輝いたのは「問5. 3単現の s」でした.得票率38%で,他を寄せ付けない圧倒的な強さで王座に君臨しました.まさに本書のタイトルにふさわしい,英語学習者にとって最大の謎であることが証明された形です.
そして,最も注目すべきは2位以下の大激戦の結末です.中間報告で21%の同率2位に並んでいた三つ巴の争いから,頭一つ抜け出したのは「問9. -ing」でした.単独2位を死守したその背景には,文法上の役割が異なるのに形が同じであることへの,根深いモヤモヤ感があったのでしょうか.一方で,受験英語の定番「問7. 時・条件の副詞節」は,後半で怒涛の追い上げを見せた「問21. 文字 Z のミステリー」に捕らえられ,19%で同率3位という結果になりました.Z の謎がここまで上位に食い込んでくるとは,正直なところ著者としても予想していませんでした.文字・綴字史のロマンが皆さんに伝わったということなのかもしれません.
対照的に,英語史の定番中の定番である「問12. went の謎」 (10%) や「問11. children の謎」 (3%),「問10. feet の謎」 (2%) といった不規則変化の面々は,最終的にも下位グループに沈むことになりました.これらは一見すると風変わりな不規則変化にすぎませんが,その向こう側には壮大な英語史のカラクリが潜んでいます.本書では,その奥深さが伝わるのではないかと期待しています.
今回の総選挙で上位にランクインした話題については,本書の発売を待つことなく,今後の Voicy heldio にて「先出し深掘り解説」としてお届けしていく予定です.どの疑問の背後にどのようなダイナミックな歴史が隠されているのか,ぜひ楽しみにお待ちください.
今回の総選挙を通じて,皆さんと一緒に英語史のビッグウェーブをさらに高く大きくできたことを,重ねて感謝いたします.6月10日の新書発売に向けて,ここからさらにお祭りムードを加速させていきます.
特典(1節分の書き下ろし)もついてくる Amazon での予約注文にて本書をご予約いただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

昨日の記事「#6231. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」の第2弾と第3弾が公開されています」 ([2026-05-19-1]) でご案内した研究社ロケ回の第3弾では,『英語語源辞典』の読みこなしについても話題となりました.
編集者の星野龍さん,中川京子さん,青木奈都美さんとのお話しのなかで,『英語語源辞典』(や OED の語源関係欄)は,情報がぎっしり詰め込まれており,専門的な記号や略称も多いので,一般読者は読みこなすのが難しい.一般の英語学習者が,同辞典の良さを本格的に味わおうと思えば,読み解き方の手ほどきが必要なほどだ.そのための講座やガイドブックがあるとよい,という趣旨のお話しも出ました.
一般の方々にとって『英語語源辞典』を使いこなすのが容易ではないことは,同辞典を激推ししてきた私自身も気付いており,そのためにいくつかの活動もしてきました.1つは,動画内で私自身も触れている通り,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のなかで,まさに『英語語源辞典』読み解き講座に近い配信回をしばしばお届けしてきました.英語史を専攻する大学院生などとともに,同辞典の読み方を解説したり,議論したりしています.以下に主だった回を一覧します.
・ 2023年10月23日 heldio にて「#875. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (1) --- 藤原くんと foot を語る」が配信され,藤原郁弥さんとの画期的なシリーズの幕開きとなる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第2位に入った.
・ 2023年10月26日 heldio にて「#878. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (2) --- 藤原くんと foot を語る」が配信される.
・ 2023年11月8日 heldio にて「#891. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (3) --- khelf 藤原くんと marble を語る第1弾」が配信される.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第9位に入った.
・ 2023年11月11日 heldio にて「#894. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (4) --- khelf 藤原くんと marble を語る第2弾」が配信される.
・ 2023年11月14日 heldio にて「#897. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (5) --- khelf 藤原くんと marble を語る第3弾」が配信される.
・ 2023年12月15日 heldio にて「#928. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (6) --- khelf 藤原くんと2重語 compute/count を語る」が配信される.
・ 2024年1月31日 heldio にて「#975. 『英語語源辞典』の収録語彙」が公開される.
・ 2024年2月2日 heldio にて「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」が配信される.
・ 2024年2月3日 heldio にて「#978. 『英語語源辞典』の語義・初出年代 --- khelf 藤原くんと凡例を読もう」が配信される.凡例を熟読するという稀代な企画がスタート.
・ 2024年6月6日 heldio にて「#1101. 『英語語源辞典』凡例読みシリーズ with 藤原郁弥さん&青木輝さん」が配信される.
・ 2024年07月26日 heldio で「#1153. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (8) --- khelf 藤原くんと king の項を精読する」が公開される.
・ 2024年08月24日 heldio で「#1182. 【緊急のご報告】研究社『英語語源辞典』新装版が重版決定!」が公開される.
・ 2024年09月23日 heldio で「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」が公開される.
・ 2024年10月21日 heldio で「#1240. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (2) --- KDEE の編集方針を理解しよう」が公開される.
・ 2024年10月26日 heldio で「#1236. mine を『英語語源辞典』で読み解く」が公開される.
・ 2024年11月14日 heldio で「#1264. 『英語語源辞典』通読はキツい,無理!」が公開される.
・ 2024年11月16日 heldio で「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」が公開される.
・ 2024年12月26日 heldio で「#1306. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (3) --- 印欧語比較言語学の学史をたどる」が公開される.
・ 2025年04月25日 heldio で「#1426. 『英語語源辞典』をランダム読み --- khelf メンバーとの思いつき企画」が公開される.
また,私は数年来朝日カルチャーセンター新宿教室にて定期的に英語史関連の講座を開いてきましたが,とりわけ2024年度の毎月の講座では,「語源辞典でたどる英語史」をシリーズタイトルとして掲げて,事実上の『英語語源辞典』読み解き講座を展開していました.現行の毎月講座でも,『英語語源辞典』は常に参照し,その一部を精読するということを続けています.今週土曜日に予定されている5月回でも,もちろん参照する予定です(先日の hellog 記事「#6228. 「again を探って中英語原文の世界へ」 --- 今年度の朝カル英語史シリーズ第2回」([2026-05-16-1]) をご参照ください).
ほかには,上記 Voicy heldio から派生したプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーによる,『英語語源辞典』をめぐる様々な活動も,『英語語源辞典』の読みこなしに貢献しています.とりわけ同辞典の通読に挑戦されているお2人 lacolaco さんによる note 上の「英語語源辞典通読ノート」や寺澤志帆さんの連載企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」は要注目です.ari さんによる『英語語源辞典』で一人遊びするアプリ「#266【KQ2】ゴラクエを update して遊ぶ!!」も参照ください.
上記のように,これまでにも仲間たちと私とで様々な活動を展開してきましたが,『英語語源辞典』を読みこなせるようになるための「体系的」な講座やガイドブックなどは,確かに存在しませんでした.どのくらいの需要があるのか,という問題はありますが,今回のいのほた動画で触れている通り,一考の余地はあるかもしれません.
読者の皆さん,需要はありますか?
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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5月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の6月号が発売されました.今年度,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」をベースとして,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.
連載第3回となる今回は,私がメイン執筆者として「英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」を書いています.前号の井上さんによる「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」への返答のような形になります.井上さんからの温かいコメントも最後に付いた文章です.
今回の記事タイトルは,前号の井上さんの記事タイトルへのオマージュ(いや,パロディというべきでしょうか)として生まれたものです.井上さんがそう来るなら,私としては「英語史の3つの扉」しかない,と直感し,先にタイトルが決まりました.では,その3つとは何か.それは後から考え出すという,いかにも「いのほた」らしいライブ感のある記事執筆です.
記事では,英語史への3つの入口として,「比較言語学」 (),「文献学」 (philology),「歴史言語学」 (historical_linguistics) を取り上げています.第1の扉「比較言語学」では,文献に残らない祖語の姿を「再建」 )という手法によって浮かび上がらせる営みを論じました.第2の扉「文献学」では,1文字・1語に宿る言語的・社会的文脈を丁寧に読み解くことの醍醐味を述べています.そして第3の扉「歴史言語学」では,言語変化 (language_change) のメカニズムを体系的に追う視点を紹介しました.3者はそれぞれ異なる分野でありながらも「社会と言語の接点」という点で通底しています.この締めくくりによって,社会言語学を専門とされる井上さんとのコラボ的なエッセイとして仕上げることができたかな,と感じています.
なお,本連載は月々メイン執筆者を交代するスタイルをとっており,サブの側がコメントを数行添える形式をとっています.今回,井上さんからは「英語史ってロマンですねー」という言葉をいただきました.「いのほた言語学チャンネル」のゆるいライブ感を,誌面でも少しずつ体現できているとすれば,望外の喜びです.
本連載記事と関連して,heldio でも先日「#1812. 英語史の3つの扉 --- 『英語教育』の「いのほた連載」第3弾より」としてお話ししました.あわせてお聴きください.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第3回 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」『英語教育』2026年6月号,大修館書店,2026年5月14日.44--45頁.

1週間後の5月23日(土) 15:30--17:00 に,今年度の2回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の通算第14弾ということで,今回は「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,日常的な副詞 again とその双子の兄弟である前置詞 against に注目します.
講座では,『英語語源辞典』や『英語語源ハンドブック』を参照しつつ,この単語の語源や意味・形態上の発達を追いかけ,副詞 again と前置詞 against とで棲み分けがなされるようになった背景に迫ります.本来は接頭辞にすぎなかった形態素が,独立した単語となっていくという興味深い歴史をもっているのです.関連して,古英語の前置詞全体についても概観する予定です.
この単語の発音やスペリングの変化・変異にも注目します.異形が非常に多く,古英語や中英語の辞書ではどの形が見出し語に上がっているのかを予想するのが困難なほどです.
また,この春期クールでは,2月25日に研究社より刊行された伝説的入門書,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとして活用します.今回はこの入門書に収載されている初期中英語のテキスト Peterborough Chronicle より,again を含む,中世の拷問をおどろおどろしく描写する箇所を少々読んでみたいと思います.
中英語の原文が初めてという方も心配は要りません.上記参考テキストについても,講座で読む部分については配付資料内で引用しますので,受講に必須ではありませんが,テキストには現代英語訳や辞書も付属していますので,あれば学びが深まると思います.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.See you again!
(以下,後記:2026/05/18(Mon))
今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1814. again を探って中英語原文の世界へ --- 5月23日(土)『古中初歩』による朝カルシリーズ第2回」をお聴きください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

「#6211. 寺澤盾先生が PIVOT TALK に出演して【世界の英語と日本人】をお話しされています」 ([2026-04-29-1]) で少し触れましたが,英語史界隈で待望の新書が上梓されました.英語史研究者の寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)による『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』〈中公新書〉です.3月25日に刊行されました.
本書は,『英語の歴史:過去から未来への物語』(2008年),『英単語の世界 --- 多義語と意味変化から見る』(2016年)に次ぐ,寺澤先生の新書3部作の3冊目となります.
本書の最大の特徴は,タイトルに「歴史」や「英語史」という言葉こそ冠していませんが,その実体はきわめて濃密な(特に近現代の)英語史の本である,という点にあります.17世紀以降の大英帝国の拡大とともに,英語がどのように世界へ拡散し,各地の土着の言語と接触しながら変容を遂げてきたのでしょうか.その動的なプロセスを「5大陸」という壮大なスケールで描き出したのが本書です.「世界英語」 (world_englishes) をめぐる議論の現在地を把握するための決定版といえます.
寺澤先生は本書の中で,英語を単なる言語の枠組みに閉じ込めていません.むしろ,英語を軸とした優れた「社会科の本」になっているものと,私は読みました.世界各地の英語を論じることは,その地域の歴史,地理,政治,そして文化そのものを論じることにほかなりません.世界史的な大事件がどのように言語に刻印されているのか,あるいは地理的な条件がいかに変種間の差異を生み出してきたのか.本書を読み進めることは,英語というフィルターを通して,複雑な現代世界を読み解くようなものです.
構成の妙も見逃せません.全編を通して,専門的な知見に基づきながらも,一般の読者が興味を持ち続けられるようなエピソードが随所に散りばめられています.写真,グラフ,表,地図などの図版も豊富で,コラムや「豆知識」コーナーも工夫が凝らされています.本文に続く付きものとしては,文献案内,世界英語対照年表,用語解説,人名・作品名・事項索引,語句索引などが丁寧に編集されています.学術的な厳密さを一切妥協することなく,それでいて新書というフォーマットにふさわしい,語りかけるような平易な文体や構成で作られていることに驚嘆せざるを得ません.
本書は日本における英語のあり方についても鋭い示唆を与えてくれます.「世界の英語」を知ることは,私たちの多くが学んできた「標準英語」という概念がいかに限定的なものであるかを気づかせてくれます.多様な Englishes の存在を認めることは,英語学習において完璧主義に陥りがちな日本人英語学習者にとって,ある種の救いになるのではないでしょうか.多層的な歴史背景を持つ各国の英語の姿を鏡として,ひるがえって,日本人がいかに英語と向き合い,共生していくべきかという未来志向の問いが,本書の底流には流れています.
私個人としても,本ブログでご案内している通り,来たる6月10日に初めての新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』を上梓します.寺澤先生が長年培ってこられた「英語史×新書」の熟練には遠く及びませんが,身が引き締まる次第です.寺澤先生の三部作を並べて読むことで,英語史という学問が持つ懐の深さと,現代社会におけるその意義を存分に味わうことができるはずです.英語に関わるすべての人に読んでもらいたい3冊です.
新刊書『世界の英語』については,先日 Voicy heldio にて「#1805. 寺澤盾(著)『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』〈中公新書〉」としても取り上げました.本記事よりも詳細にご紹介していますので,そちらも合わせてお聴きいただければと思います.
・ 寺澤 盾 『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』 中央公論新社〈中公新書〉,2026年.
やりました! 来たる6月10日に NHK出版新書より発売予定の拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が,Amazon の新着ランキング「英語」部門と「新書」部門の2部門において,第1位を獲得しました.ランキングが刻一刻と変化するなかで,5月12日 00:20 に確認した状況です.
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昨晩の heldio 「予約爆撃アワー」生配信でお伝えした数時間後に,この嬉しいニュースを確認することができました.予約段階からこれほど多くの方々に関心を持っていただき,著者としてこれほど心強く,ありがたいことはありません.応援してくださった皆様,本当にありがとうございます.
昨晩の生配信でも熱く語りましたが,本書はNHK出版の担当の編集者さんと二人三脚で,英語史のおもしろさをいかに読者に届けるか,その思いを込めて作り上げた書籍です.昨日の生配信の様子は,近日中にアーカイブとして公開する予定ですので,制作秘話などに興味のある方はぜひそちらをお聴きください.
発売日の6月10日まで,あと約30日あります.この1ヶ月間,待機している皆さんが待ちくたびれることのないよう,本ブログ,heldio, helwa, YouTube 等の様々な媒体を通じて,発売前のお祭りを盛り上げるべく本書に関する多様な仕掛けを繰り出していく予定です.
まずは,昨晩,私の X アカウント @chariderryu より,発売前のカウントダウン企画を立ち上げました.本書に関連する有意義なつぶやきを,毎日1つ,お届けします.第1弾はこちらです.ぜひアカウントをフォローしていただければと思います.
皆さんも,SNS や note 等の発信のアカウントをお持ちであれば,ぜひ本書に関連する話題に触れていただけますと幸いです.その際には,ぜひ公式の統一ハッシュタグ #なぜさんたんげん を添えていただけますと幸いです.本書をより多くの方に届けるための大きな推進力となりますので,よろしくお願いいたします.著者としてもできる限り反応していきたいと考えています.
ちなみに,本記事を公開した 20:20 現在も,上記と同じ第1位をキープしています.また,新着ランキング「英語」部門の1つ上のカテゴリーである「新着,語学・辞事典・年鑑」部門では第4位,売れ筋ランキングの「英語」部門では第24位につけています.
このたびの喜びと感謝につきましては,今朝の heldio 配信回「#1808. 多謝!『なぜさんたんげん』が【英語】部門と【新書】部門で第1位を獲得」でも爆発させましたので,ぜひお聴きください.
「英語史をお茶の間に」広めるための私の挑戦は,今回の新刊によって新たなステージに入ります.皆様と一緒に,「3単現の s」という小さな窓から,数千年にわたる英語の壮大な歴史を覗き見る喜びを分かち合えればと願っています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
1ヶ月後の2026年6月10日(水),NHK出版より拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が刊行されます.初の新書出版であり,編集担当の方と二人三脚で時間をかけて作り上げた思い入れの深い1冊となります.本書は,英語を学んでいる,あるいは教えているすべての方にお届けしたい本となっています.英語の素朴な疑問 (sobokunagimon) は英語史が解決してくれる,この認識を世の中の当たり前にしたい,そんな思いを込めて作った本です.
発売まであと1ヶ月となった本日5月11日(月)の午後7時より,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて生配信をお届けします.題して「【ライヴ】近刊『英語史で解く 英文法の謎』予約爆撃アワー」です.この生配信中に,リスナーの皆さんに Amazon より一斉に予約注文していただくことで,本書の注目度,そして英語史という分野の認知度を一気に高めようというお祭り企画です.Amazon 予約注文された方には特典もつきます.この特典についても,今晩,じっくりとお話しいたします.
19:00の生配信開始直後は,通信環境の確認を兼ねて数分間の雑談からスタートします.19:30くらいまでには,私のほうから新書の案内や予約注文の呼びかけなど,今回の企画の骨子をお話しする予定です.そして,生配信の目玉は19:30頃からのゲスト対談です.本書のもととなった連載記事の頃より編集を担当してくださったNHK出版の田中菜乃香さんにご登壇いただく予定です.田中さんには,連載記事や今回の新書の編集にまつわる逸話,編集者の立場から見た連載と新書の違い,さらには本書のタイトルの決定経緯や,著者である私への「今だから言えること」など,時間の許す限りたっぷりとお話を伺いたいと考えています.30分では収まりきらない予感もしていますが・・・
今晩の「予約爆撃アワー」企画については,昨晩公開した heltube (私のhel活 YouTube チャンネル)での動画,および今朝の heldio の配信回でも熱烈に広報を行なっています.ぜひそちらもチェックして,今晩のお祭りの気分を高めていただければ幸いです.
・ 昨晩公開した heltube 動画:「2026年5月11日(月)19:00より heldio 生配信で近刊の「予約爆撃アワー」を実施します」
・ 今朝公開した heldio 音声配信:「#1807. 今晩7時生配信,近刊書の「予約爆撃アワー」」
とりわけ前者の heltube 動画では,私が現在滞在中のスコットランド,アバディーンの様子も見ていただけます.町の南側を流れるディー川の河口付近,地元で Fittie と呼ばれる港の周辺を毎日ジョギングするのが日課となっています.北海に注ぐこの川の河口では,野生のイルカに遭遇することもあり,自然の豊かさを肌で感じながら過ごしています.その様子もご覧になりつつ,今晩7時の heldio 生配信への準備を整えていただければと思います.
「英語史をお茶の間に」を実現すべく,皆様の熱い「爆撃」をお待ちしています.今晩のライヴでは,ぜひコメント・質問等を投げ込んでいただけますと幸いです.今晩7時,heldio でお会いしましょう!
なお,今後の本書の広報に際して,ハッシュタグは #なぜさんたんげんの平仮名8文字で統一いたします.本書の応援,何卒よろしくお願いいたします.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

上掲書については,hellog でも「#6209. 4月23日,研究社から英語語源本が2冊 --- 『コンパスローズ英単語〈新装版〉』と『医学英単語ハンドブック』」 ([2026-04-27-1]) で紹介しました.そこで少し触れていたように,その後,この本をめぐって,医学専門家で heldio/helwa のコアリスナーの「無職さん」こと,佐久間泰司さんと対談する機会を得ました.そちらの音源を heldio 対談として公開していますので,「#1800. 『医学英単語ハンドブック』(研究社,2026年)を片手に「無職さん」と対談」をお聴きください(53分ほどの対談です).
対談では,専門家である無職さんの視点から,本書の画期的な特徴について多角的に語っていただきました.まず驚かされたのは,従来の医学ラテン語の教本は,格変化などの文法事項から入るものが多く,専門外の学生にはきわめてハードルが高かったという実態です.それに対して本書は,語源 (etymology) と連結形 (combining_form) に特化しており,理系人間にとって非常に馴染みやすく,とっつきやすい構成になっているとのことです.
医学用語の世界では,解剖学用語はラテン語,疾患名はギリシア語が主流であるという興味深い住み分けについても議論が及びました.無職さんによれば,解剖学用語は国際的にラテン語で統一されている一方,ルネサンス期以降に発達した疾患名などにはギリシア語由来の語彙が流入したという背景があるようです.私のような英語史研究者の視点からは,これらが近代英語期以降の科学語彙の爆発的な増加とどのように関わっているのかという点が最大の関心事となりますが,従来の医学の現場では,これらを単なる記号として「丸暗記」してきたという実情も浮き彫りになりました.
本書の魅力の一つとして,ギリシア神話に絡めたコラムの充実が挙げられます .例えば眠りの神 Hypnos と hypnosis(催眠)の関係など,神話という人間臭い物語から説き起こされる語源解説は,私のような文系人間にとっても読み物としておもしろいものです.無職さんも,こうしたコラムがあることで本を開く心理的障壁が下がり,学習の継続につながると太鼓判を押してくれました.
一方で,専門家の立場からの要望として,発音記号やアクセント表示の有無,あるいは dent- と tooth のような一般語と専門語の結びつきを説明してくれる「グリムの法則」 (grimms_law) の解説があればさらに有意義だったのではないか,といった贅沢なツッコミも飛び出しました.しかし,全体としては,無数の医学用語を要素の足し算で効率よく学べる,これまでにない体系的なハンドブックに仕上がっているという評価で一致しました.
医学英語はもちろん,科学英語 (scientific_english) や語形成 (word_formation) に興味のある方はもちろん,英語史の観点から語彙の国際性を考えてみたい方にとっても,本書は示唆に富む一冊です.医学関係者ならずとも,ぜひ手に取って,その重厚な語源の世界に触れてみてください.
また,佐久間さんご自身による関連する note 記事「『語源で学ぶ医学英単語ハンドブック』に見る,医学英語教育の新たな地平」も公開されています.そちらもぜひお読みください.
・ 野中 泉(編著)・森田 勝之(編著)・木下 晃吉(監修) 『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』 研究社,2026年.
本日は重要なお知らせがあります.先日 Voicy heldio で「#1793. 新書が出ます!5月11日(月)の夕刻に予約爆撃アワー」としてお伝えしましたが,このたび初めて新書を上梓することになりました.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
発売日は1ヶ月少々先の6月10日(水)です.GWが終わり,今週末が明けて5月11日(月)辺りが,ちょうど発売の1ヶ月前となりますので,そのタイミングで近刊書に関する様々な情報開示を始めていきたいと考えています.
まずは,5月11日の夕刻に,Voicy heldio の生配信で「予約爆撃アワー」企画を打ち上げます.生配信をお聴きになりながら,ぜひそのタイミングで Amazon より本書を予約注文していただき,注目度を高めるのにご協力いただけますと幸いです.生配信では,本書についてももろもろご紹介したいと思います.
すでに Amazon の予約受付は始まっていますが,ぜひ5月11日の夕刻の「お祭り」の時間までお待ちください.なお,Amazon から予約いただいた方は,発売後にある「特典」を受け取ることができます.そちらもご期待ください.
近刊書のベースとなっているのは,2021--2022年度のNHKテキスト『中高生の基礎英語 in English』において毎月掲載されていた連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」です.その原稿に大幅な加筆・修正を施し,このたび新書化しました.英語を学び直している社会人の方から,日頃英語教育に携わっている先生方,英語史という分野に初めて触れるという方まで,幅広く読んでいただける1冊に仕上がりました.「英語に関する素朴な疑問」に英語史の観点から答えるスタンダード編というべき本となっています.
タイトルにも掲げた「3単現の s」 (3sp) は,英語学習者が最初期に出会う英文法の謎の代表格ですね.なぜ主語が3人称・単数で,文の時制が現在のときにだけ,わざわざ -s をつけなければならないのか.なぜ他の人称などでは,つける必要がないのか.こうした素朴な疑問に対して,英語史の視点から光を当てることで,一見不条理に見える英文法のルールがいかにして形成されてきたのかを解説していきます.本書には,3単現の -s 以外にも,英語史的な知見から英文法の謎をスッキリ解決するトピックを凝縮して詰め込んでいます.
近刊書に関連する話題は,今後,hellog, heldio, YouTube, X などのメディアでたっぷりお届けしていく予定です.その皮切りとなるのが,5月11日(月)夕刻の「予約爆撃アワー」企画となります.ぜひスケジュールを空けて生配信をお待ちいただければ幸いです.また,当日の聴き逃しのないよう,この機会にぜひ「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」をフォローしていただけますと幸いです.本書の出版をきっかけに,皆さんと一緒にますます英語史を盛り上げていければと思います.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

heldio/helwa のコアリスナーであるみーさんが,note 上で展開されている連載「小学生と学ぶ英語史」が,先日4月21日に記念すべき第100回に到達しました.1月12日の連載開始以来,一日も欠かすことなく毎日更新を続けての100回達成です.この偉業に,心よりお祝い申し上げます.
このシリーズは『英語語源ハンドブック』の項目をベースとしながら,みーさんご自身が教えられている英語教室での経験を活かし,小学生にもわかるように丁寧に,かつ優しくかみ砕いて解説されているものです.タイトルには「小学生と学ぶ」とありますが,その内容は決して小学生向けに限定されるわけではありません.各記事には語源に関する確かな知識に加え,学習上の助けとなる周辺知識やエピソードが豊富に盛り込まれており,中高生や大学生,さらには学び直しを志す大人の学習者にとっても,非常に示唆に富む内容となっています .
みーさんの記事の魅力は,何といっても語り口の柔らかさにあります.『英語語源ハンドブック』の記述をそのまま提示するのではなく,目の前にいる子供たちがどこで躓き,どこで目を輝かせるのかを熟知した教育実践者としての視点が貫かれています.たとえば,lady の語源が「パンをこねる女性」であるという話から,聖母マリアにちなむ ladybug 「てんとう虫」の話題へと繋げ,子供たちの好奇心を刺激する手法などは,まさにその真骨頂と言えるでしょう .
また,みーさんは,hel活をしている helwa の仲間たちがアルファベット順に語源をたどる試みにインスピレーションを受け,ご自身も a, b, c ... と一巡し,また a に戻るという独自のルーティンを確立されました.このように志を同じくする仲間たちが互いに刺激し合い,学びを深めていく姿は,まさに「英語史をお茶の間に」を体現するものだと思います.
このたび,100回突破を祝して heldio にてみーさんとの対談を収録しました.4月28日(火)の朝に配信した「#1794. 祝・みーさん「小学生と学ぶ英語史」100回記念対談」です.連載を始めたきっかけから,日々の継続のコツ,そして教室での子供たちの生の反応まで,たっぷりとお話しを伺っています.
さらに,同日の夕方に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」でも,対談の続編を「【英語史の輪 #0438】みーさんとお祝い対談(今朝の続き)」と題して配信しています.こちらでは,よりリラックスした雰囲気で,継続の仕組みや仲間との交流について深掘りしています.ご関心のある方は,あわせてお聴きください.
英語史という分野は,一見すると難解に思われがちですが,みーさんのように橋渡しをされる方がいれば,小学生であっても「印欧祖語」 (indo-european) などの用語も自然に使いこなすようになるのです.こうした英語史の草の根の活動が,英語教育の現場に新しい風を吹き込むことを期待してやみません.読者の皆様も,ぜひみーさんの note を訪れ,フォローしたり温かいコメントを寄せていただければと思います
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

4月28日(火),熱心なヘルメイトの皆さんによる月刊ウェブマガジン Helvillian 5月号(第19号)が公開されました.今号も,英語史を軸とした知的探究心が多方向に展開し,読み応えのあるラインナップとなっています.
今号の「表紙のことば」を担当されたのは ari さんです.桜島をめぐる地元民によるエッセイ,いかに桜島が身近な存在であるかが分かりました.その ari さんの記事群は,今月も ari 節が全開で絶好調です.セム語に由来する英単語から,「エイゴシーの塔」の攻略を経て,フランダース関連の話題まで,記事の守備範囲の広さにはいつも驚かされます.
Grace さんは,英語の「息づかい」というタイトルで寺澤盾先生の新刊書『世界の英語』(中公新書)を紹介されています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は,D ゾーンを走行中で,今回は demand から demesne までをカバーしています.lacolaco さんの継続的な試みが,「辞書を読む」という静かなムーブメントを呼んでいますね.実は,これこそが最も堅実で強力なhel活なのではないかと,最近,思い始めています.
mozhi_gengo さんは,今号でも圧巻の寄稿数です.scale の語源といった入りやすそうな話題から,ヒンディー語における be 動詞に相当する単語の語源に至るまで,相変わらずの縦横無尽ぶりです.
英語史教育・普及の観点からの記事も,ますます充実してきています.sorami さんの中学生向け語源クイズは,綴字の謎に迫る第7弾まで到達しています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは,「小学生×英語史」という革命的な趣旨で始まり,100回に迫る(実際には本日までに優に100回を超えています)勢いで続いています.
umisio さんは,川上さんの名言「英語愛はありません」を深掘りするシリーズで続投されています.『英語史新聞』第13号への熱い暴走レポートも,読者の共感を呼ぶこと間違いなしですね!(khelf の応援,いつもありがとうございます.)
ykagata さんのブログも安定の継続で,ドイツ語を軸に『英語語源ハンドブック』をご紹介いただいたり,学びそのものについて考察する記事が公開されています.あまねちゃんの記事では,mark や zany の語源記事に始まり,最後にはついに『英語語源辞典』通読の挑戦へと禁断の一歩を踏み出されました.
また,川上さんによる古英詩に関する補遺は,異色の専門的な記事となっています.この記事を通じて,ぜひ古英詩の世界に触れてみてはいかがでしょうか.私自身も,微力ながら elvillian の前号の紹介記事を公開し,最新号の目次に名を連ねさせていただきました.
最後は Grace さんによる helwa のhel活の活動報告と,umisio さんによる『英語語源辞典』の流行に注目した暴走的編集後記で締めくくられています.
このように今号も,質量ともに充実したできあがりとなっています.ぜひ時間をかけてゆっくりと各コンテンツを味わっていただければ幸いです.
次号はいよいよ第20号の大台に乗ります.この Helvillian という媒体は,誰かに強制されたものではなく,英語史を愛し,学びを共有したいという有志の自発的なエネルギーによって継続しています.読者の皆さんにおかれましては,ぜひこの熱量を一緒に楽しんでいただき,温かい応援をいただければ幸いです.
また,「読むだけではなく,自分も書く側や編集側に回ってみたい」「このhel活の輪に直接貢献したい」という方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.ともに学び,ともに創る喜びが溢れている空間ですので.
英語史の古典的名著 Baugh and Cable の第6版の英文を,helwa メンバーとともにゆっくりと超精読していく読書会を半定期的に開催しています.その毎回の読書会の様子を,Voicy heldio の音声メディアを通じて公開するシリーズを継続中です.2023年7月に開始してから3年弱が経ちましたが,第63節まで進んできています.
今朝の heldio にて,シリーズ最新回を配信しています.「#1796. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-5) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」です.明朝の heldio では,その続編となる「#1797. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-6) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」も配信予定ですので,合わせて2本に連動する形で本記事を公開します.
今回も,heldio/helwa コアリスナーでヘルメイトの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に精読会をリードしていただきました.いつもありがとうございます.数名のギャラリーとともに,いつもながらの深い読みを堪能することができました.
今回の精読対象の英文を以下に掲載します(Baugh and Cable, pp. 83--84) .B&C の第63節の第2段落の最初から,計1時間ほどかけて15文を読み進めました.
But abuses when bad enough have a way of bringing about their own reformation. What is needed generally is an individual with the zeal to lead the way and the ability to set an example that inspires imitation. King Alfred had made a start. Besides restoring churches and founding monasteries, he strove for twenty years to spread education in his kingdom and foster learning. His efforts bore little fruit. But in the latter half of the tenth century, three great religious leaders, imbued with the spirit of reform, arose in the church: Dunstan, archbishop of Canterbury (d. 988), Athelwold, bishop of Winchester (d. 984), and Oswald, bishop of Worcester and archbishop of York (d. 992). With the sympathetic support of King Edgar these men effected a genuine revival of monasticism in England. The true conception of the monastic life was inseparable from the observance of the Benedictine Rule. Almost everywhere in England this had ceased to be adhered to. As the first step in the reform, the secular clergy were turned out of the monasteries and their places filled by monks pledged to the threefold vow of chastity, obedience, and poverty. In their work of restoration the reformers received powerful support from the example of continental monasteries, notably those at Fleury and Ghent. These had recently undergone a similar reformation under the inspiring leadership of Cluny, where in 910 a community had been established on even stricter lines than those originally laid down by St. Benedict. Dunstan had spent some time at the Abbey of Blandinium at Ghent; Oswald had studied the system at Fleury; and Athelwold, although wanting to go himself, had sent a representative to Fleury for the same purpose. On the pattern of these continental houses a number of important monasteries were re-created in England, and Athelwold prepared a version of the Benedictine Rule, known as the Concordia Regularis, to bring about a general uniformity in their organization and observances. The effort toward reform extended to other divisions of the church, indeed to a general reformation of morals, and brought about something like a religious revival in the island.
このB&C読書会の過去回については,すべてアーカイヴからアクセスできます.各回へのリンクは「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.ご関心のある方は,ぜひ本書を入手して,この精読会の配信回をお聴きいただければ.また,精読会に対面・オンラインで直接参加されたい方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお入りください.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
新年度の私の「hel活」 (helkatsu) の新機軸として,「旅する英語史 旅hel」 (tabihel) という動画シリーズを立ち上げました.目下,私はスコットランドのアバディーンに滞在しているのですが,旅をし街歩きをしながら英語史に関係する話題を見つけ,ビデオカメラで撮影しつつ,自由にお話ししていこうという Vlog シリーズです.
シリーズ第1弾は,4月13日に半日をかけて撮影した「アバディーン編」です.こちらは一般公開はしておらず,Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお入りいただいているメンバーへの限定公開となっております.helwa メンバーの方は,4月16日配信の「【英語史の輪 #0433】旅する英語史「旅hel」アバディーン編をご視聴ください」を経由して,本編動画への URL にアクセスできます.
今回の動画の舞台は,スコットランド第3の都市 Aberdeen です.「花崗岩の街」 (Granite City) としても知られる美しい街並みを歩きながら,いくつかの英語史ポイントを拾い上げました.
例えば,Upperkirkgate という通りの名前です.この gate は,現代英語の「門」ではなく,北イングランドやスコットランドで「道,通り」を意味する古ノルド語に由来すると考えられます.南部の way や street に相当するもので,まさに北部的な語といえます.実は kirk ももう1つの北部ポイントです.
また,町の北を流れるドン川に架かる歴史的な橋 Brig o'Don にも訪れています.ここで注目したいのは橋を意味する brig という語形です.標準的な bridge の最後の子音が -dg- /dʒ/ ではなく -g /g/ となっているのは,やはり古ノルド語の影響を強く受けた北部方言の特徴を色濃く残している証拠です.
動画内では他にも,1593年創立の歴史ある Marischal College を眺めたり,最後には銀行の建物を改装したパブでエールを楽しんだりと,37分にわたる盛りだくさんの内容になっています.Osmo Pocket 3 という小型ビデオカメラを手に,慣れない動画編集に苦戦しながらも,楽しく英語史の視点から街の魅力を切り取ってみました.
この「旅hel」シリーズの立ち上げについては,一昨日の heldio でも「#1792. 旅する英語史「旅hel」アバディーン編の動画を helwa 経由で配信しています」としてお話ししましたが,そこではダイジェスト版となる5分ほどの「音声」もお聴きいただけます.本編動画の雰囲気を味わうことができるかと思います.
本編動画にご関心のある方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお越しください.helwa は初月無料となっておりますので,ぜひ4月分にお入りいただき,試し聴きしつつ,特に4月16日配信の「【英語史の輪 #0433】旅する英語史「旅hel」アバディーン編をご視聴ください」を経由して動画にアクセスしていただければ.
4月23日に,研究社より英単語の語源に関する書籍が同時に2冊発売されました.研究社からは,昨年6月に,いまもご好評いただいている『英語語源ハンドブック』が出ていますので,この1年の間に3冊も「英語語源本」が上梓されたことになります.英語語源が活況を呈しているといってよいでしょう.
新しく刊行されたのは次の2冊です.いずれも公式ページから「試し読み」できます.
・ 『語根で覚える コンパスローズ英単語〈新装版〉』(試し読みあり)
・ 『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』(試し読みあり)
以下,各々について簡単にご紹介します.

まずは池田和夫氏による『語根で覚えるコンパスローズ英単語〈新装版〉』です.本書は2019年に刊行され好評を博した旧版の装いを新たにしたもので,その名の通り「語根」にフォーカスした単語集です.ベースとなっているのは同社の『コンパスローズ英和辞典』の語源コラムですが,本書ではそこに200以上の項目が大幅に加筆されており,計300の「(最)重要語根」が網羅されています.
特筆すべきは,語彙学習における語源の実用性を数値で示している点です.1001語レベル以上の単語の7割以上は語源知識が役立つとされており,とりわけ中上級者にとってのボキャビルには語根学習が極めて有効であることが強調されています.音声ダウンロードサービスや,お馴染みの「赤シート」も完備されており,受験対策から一般の学び直しまで幅広く対応する,まさに語源学習の完成版といえる一冊です.

続いて,木下晃吉氏(監修),野中泉氏・森田勝之氏(編著)による『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』です.一見すると専門的な医学徒向けの書に見えますが,英語史の観点からも興味深い一冊です.医学英単語は,ルネサンス期以降に大量に流入してきたラテン語・ギリシア語の要素の宝庫であり,いわば「連結形」 (combining_form) の見本市のような世界だからです.
本書の構成は言語学の観点からも医学の観点からも論理的です.「接頭辞+語根+接尾辞」というパーツ分解の解説に始まり,後半では「Body System 別」(脳神経,呼吸器など)」に語彙が整理されています.専門用語が多用される実用的で長めの例文も付されており,音声ダウンロードを活用することで,難解な合成語のアクセントも効率的に習得できるよう工夫されています.付録の「処方箋用語」などは,医学の門外漢の私にとっては,新鮮な切り口でした.また,編著者の目線に立ち,医学語彙を導入する複数の切り口を,本のなかにいかに配置していくかという問題について考えてみたのも,おもしろい体験となりました.医学については何も分からない私ですが,情報量の多い,密度の高い医学英単語ハンドブックであることは確認できました.
以上,2冊を簡単にご紹介しました.4月24日には,heldio でも「#1790. 研究社より2冊の英語語源本が出ました --- 『コンパスローズ英単語〈新装版〉』と『語源で学ぶ医学英単語ハンドブック』」と題する配信回でお話ししていますので,そちらも合わせてお聴きいただければ幸いです.また,とりわけ『医学英単語ハンドブック』については,近々に本書をめぐる対談も heldio 配信を予定していますので,ぜひご期待ください.
そして,『英語語源ハンドブック』もお忘れなく!
・ 池田 和夫 『語根で覚える コンパスローズ英単語〈新装版〉』 研究社,2026年.
・ 野中 泉(編著)・森田 勝之(編著)・木下 晃吉(監修) 『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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4月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の5月号が発売されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.今回は連載第2回となり,井上さんがメインとなり「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」と題して,社会学の入門となる文章を書かれています.最後に,私も少しコメントしています.
前回の4月号(第1回)は,イントロとして「いのほた」対談形式でお届けしましたが,今月号からは交互にメインライターを務める趣向です.今月は井上さんが「社会言語学」 (sociolinguistics) のエッセンスを鮮やかに切り出しており,来月は私が「英語史」の観点から主筆を担当し,お互いに数行のコメントを寄せ合うという,まさに YouTube チャンネルの空気感を紙面に再現するような構成になっています.
今回の井上さんの記事の白眉は,「3つの扉」という切り口です.社会言語学という広大な領域を,(私流の解釈によれば) (1) 変異,(2) 人間関係,(3) 空気という3点で整理されています.人はことば「を」どう使うかという受動的な記述にとどまらず,副題にある通り,人はことば「で」何をしているのかという能動的・積極的な側面を強調されているのが,実に井上さんらしい視点だなと感じます.
とりわけ第1の扉である「変異」 (variation) は,言語変化を扱う歴史言語学や英語史と極めて親和性が高い領域です.歴史的に見れば,ある時代の「変異」が積み重なり,やがて「変化」へと結びついていくからです.この点については語りだすと止まらなくなるのですが,ぜひ本誌をお手に取っていただければと思います.
実をいえば,この連載は YouTube の「いのほた言語学チャンネル」と同様,あえてガチガチに12回分の計画を固めすぎないようにしています.もちろん大まかな構想はありますが,読者の皆さんの反応や,相方の出方を伺いながら,その都度フレキシブルにテーマを選んでいくという,ライブ感を大切にするスタイルをとっています.井上さんがこう来たならば,次は私はこう返そう……というインタラクションこそが,この連載の醍醐味と言えると思います.次回の6月号では私が主役を務める番ですが,今回の井上さんの「3つの扉」に触発されて,その英語史版をパロディとして書いてみようと思っています.社会言語学と英語史がどのように交差し,響き合うのか.まずは発売中の5月号にて,井上さんによる社会言語学の切り方を堪能してください.
本連載に関連して,heldio でも「#1783. 『英語教育』の「いのほた連載」第2弾」としてお話ししています.あわせてお聴きいただければ.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第2回 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」『英語教育』2026年5月号,大修館書店,2019年4月14日.44--45頁.

新年度が始まりました.今年度も「英語史をお茶の間に」広げていく活動「hel活」 (helkatsu) を精力的に展開してまいります.hellog 読者の皆様も,ぜひそれぞれの現場でhel活を推進していただければ幸いです.
昨年に引き続き,今年度の私のhel活の柱の1つとなるのが,恒例の朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座です.シリーズ全体のタイトルは昨年のものを継承し「歴史上もっとも不思議な英単語」のままですが,少なくともこの春期クールについては「語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」という副題を添えて,少々装いを新たにスタートします.
昨年度は,1つの単語を掘り下げることで英語史のパノラマを展望するというスタイルでした.今期もその精神は受け継ぎつつ,そこに「原文の味読」という付加価値を加えたいと考えています.具体的には,去る2月25日に研究社より刊行された伝説的入門書,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとして活用します.
春期クールの公式の案内文は以下の通りです.
「なぜこの英単語は,こんな意味や使い方をするのか」.その答えは,現代英語の外にあります.春期は,古英語・中英語の短い原文を入口として,英単語の不思議な歴史を探ります.名名文を丁寧に読み解いたうえで,そこから英語史の話題へと縦横に広げていきます.原文に構えず,英語史の物語として楽しめる講座です.(注:市河三喜・松浪有『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとし,そこから原文を選んで味読します.)
本講座の最大の特徴は,単なる語源解説にとどまらず,その語が実際に過去の文献でどのように息づいていたのかを,実際のテキストを通じて体験していただく点にあります.もちろん,これまで通り『英語語源辞典』や『英語語源ハンドブック』も頻繁に参照しながら,語源の深淵に迫っていきます.
春期クールは毎月1回,土曜日の 15:30--17:00 に開講されます.オンライン限定の講義ですので,全国どこからでもご参加いただけますし,2週間の見逃し配信もございます.予定されているラインナップは以下の通りです.
1. 4月25日(土):knight を探って中英語原文の世界へ
2. 5月23日(土):again を探って中英語原文の世界へ
3. 6月27日(土):ghost を探って古英語原文の世界へ
1週間後に開講される第1回は,中世騎士道でおなじみの knight を取り上げます.元々は「少年」や「従者」を意味していたこの語が,いかにして高貴な身分を指すようになったのか,中英語の原文に触れながらその意味変化を辿ります.
第2回は,日常語の again です.何の変哲もないように見えるこの語には,副詞や前置詞としての用法にとどまらず,多くの話題が隠されています.中英語期のテキストではどのように綴られ,用いられていたのでしょうか.
第3回は,現代では「幽霊」を指す ghost です.古英語期には「精神」や「魂」を意味していたこの語の変遷を,当時の格調高い原文とともに味わいましょう.
古英語や中英語の原文と聞くと,難しそうに聞こえるかもしれませんが,心配は無用です.「英語史の物語」を楽しむための材料として,私がナビゲートします.講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.
本シリーズの開講に向けて,Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1778. 4月25日(土)『古中初歩』による新年度の朝カルシリーズが始まります」をお聴きください.新年度,皆様と一緒に,原文とともに英語史の森を散策していくことを楽しみにしています.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

「#6188. heldio 2026年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 4月12日までオープン」 ([2026-04-06-1]) でご案内したとおり,2026年の第1四半期(1月--3月)における Voicy heldio のベスト配信回を決めるリスナー投票を実施しました.4月12日をもって締め切らせていただきましたが,年度初めのご多忙な時期にもかかわらず,多くのリスナーの皆さんに温かい1票(最大10票)を投じていただきました.ご協力いただき,ありがとうございました.
投票結果がまとまりましたので,ここに報告いたします.本日の heldio でも「 #1781. heldio 2026年第1四半期のリスナー投票の結果発表」として音声で解説していますので,あわせてお聴きください.
今回のランキングは,正直にいうと,たいへん驚きました.一言でまとめれば「『古英語・中英語初歩』祭り」でした.伝説の教科書の復刊という大きなニュースが,リスナーの皆さんの学習意欲と見事にシンクロした結果と言ってよいでしょうか.以下に上位(得票率19%以上)の配信回を掲載します.
【 第1位(44%)】
「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」
【 第2位(37%)】
「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」
【 第3位(33%)】
「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」
【 第4位(30%)】
「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」
「#1764. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (4)」
【 第7位(26%)】
「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
「#1720. 『英語のルーツ』文庫化記念 --- 唐澤一友さんとの対談 from 居酒屋KKH」
【 第9位(22%)】
「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」
「#1685. 表音文字,表語文字,表意文字」
「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」
「#1742. 緊急対談 --- teach/taught に関する中学生の天才的指摘をめぐって」
【 第14位(19%)】
「#1705. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」200回記念」
「#1706. 伝説の教科書『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊」
「#1717. 天野優未さんの『英語語源ハンドブック』『はじめての英語史』実況中継がおもしろすぎる」
「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
「#174. ten と -teen」6
「#1750. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第28弾」
2026年第1四半期の結果を振り返りますと,なんといっても目立つのは,2月25日に研究社より新装復刊された『古英語・中英語初歩』に関連する諸々の回でした.「精読シリーズ」を筆頭に,ベスト10の半分以上がこの伝説的な教科書に関連する内容でした.音声だけで古英語を精読するという,いささか「攻めた」企画ではありましたが,リスナーの皆さんが紙面を片手に熱心に食らいついてくださったことがうかがえます.特に,復刊の裏側にあるドラマを語った「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」や,通常はニッチと思われるような古英語の母音と子音を各々解説したシリーズも高い支持を得ており,単なる知識の習得にとどまらない「hel活」を評価していただいたものとして,受け取らせていただきました.
対談回も豊作でした.第7位には唐澤一友さんとの居酒屋対談「#1720. 『英語のルーツ』文庫化記念 --- 唐澤一友さんとの対談 from 居酒屋KKH」がランクイン.お酒の席ならではの(?)リラックスした雰囲気の中での英語史トークが,皆さんの耳に心地よく響いたのであれば,たいへん嬉しいです.また,第9位の「#1742. 緊急対談 --- teach/taught に関する中学生の天才的指摘をめぐって」は,中学生の鋭い観察眼に始まり英語史の深淵へと連なる,ワクワクの止まらない対談回として評価されました.
khelf(慶應英語史フォーラム)メンバーも活躍しており,「#1705. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」200回記念」が上位に入りました.また,「#1717. 天野優未さんの『英語語源ハンドブック』『はじめての英語史』実況中継がおもしろすぎる」も注目を集め,英語史の熱が周囲に広がっていることを感じます.
四半期の幕開けを飾った元旦の「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」も,支持をいただきました.そこで宣言した通り,この3ヶ月間はまさに飛躍の準備期間、あるいは助走期間であったように思います.古英語の精読に多くのリスナーが挑戦し始めたことは,今後のhel活にも大きな意味をもつことになりそうです.パーソナリティとしては感謝しかありません.
最後に,今回のリスナー投票に関する,コアリスナー ykagata さん の note 記事をご紹介します.投票期間の最終日の4月12日に「「heldio 2026年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票」に投票した」と題する記事を公開されました.パーソナリティとしてたいへん参考になり,かつ嬉しい記事でした.ありがとうございます.
2026年も早くも4分の1が過ぎました.今回のリスナー投票の結果をよくよく分析し,第2四半期も,リスナーの皆さんとともに様々な英語史の景色を眺めていければと思っています.引き続き heldio をよろしくお願いします!
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉,2026年.
英語史の古典的名著 Baugh and Cable の第6版の英文を,Voicy heldio という音声メディアを利用して,超精読していくシリーズです.
今朝の heldio にて,10日前にお届けした回の続編を配信しました.「#1780. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-4) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」です.お読みいただいている hellog 記事は,この音声配信と連動した記事となっています.
今回も,ヘルメイトの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に精読会をリードしていただきました.いつもありがとうございます.久しぶりに,対面でのライヴ感あふれる読書会となっていますので,楽しくお聴きいただけるかと思います.ノリに乗って長く収録することになったので,heldio でも前半・後半の2回に分けてお届けしています.今回は後半となります.
今回の精読対象の英文を掲載しましょう(Baugh and Cable, p. 83) .B&C の第63節の途中の3文のみですが,じっくりと精読しています.
So few were there that I cannot remember a single one south of the Thames when I came to the kingship." A century later, Ælfric, abbot of Eynsham, echoed the same sentiment when he said, "Until Dunstan and Athelwold revived learning in the monastic life no English priest could either write a letter in Latin, or understand one." It is hardly likely, therefore, that many Latin words were added to the English language during these years when religion and learning were both at such a low ebb.
古英語原文からの現代語訳引用があり,少々読みにくい箇所ですが,いかに巧みに本文に組み込まれているかを精読によって味わえる箇所となります.また,超精読のためには背後にある原文(今回の場合には古英語原文)を意識することの大切さも感じられると思います.今回もたいへん実りのある読書会となりました.
このB&C読書会の過去回については,すべてアーカイヴからアクセスできます.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧いただければ.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

新年度が幕を開けました.去る3月28日(土),英語史を愛する有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 4月号(第18号)』が公開されました.今号は記念すべき年度開始号ということで,春らしい勢いと,ますます研ぎ澄まされた知的好奇心が凝縮された号となっています.
今号の「表紙のことば」は,インド事情に精通した mozhi gengo さんが担当されています.インド中央部の崖の上に建つ櫓から眼下の川を望む印象的な1枚ですが,驚くべきはその構図です.最近,私が heldio 等で激推ししている『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の表紙デザインに酷似しているのです.「何の因果か」と感じさせる,新年度の始まりにふさわしい劇的な表紙ですね.
執筆陣の記事も,質・量ともに進化が止まりません.ari さんは,キャンセル界隈の語源から,hel活系統図のジョークまで,相変わらずの「ari 節」が炸裂しています.
編集委員のお1人 Grace さんは,私がジョークで提唱した「英語史の塔」建設を紹介してくださったほか,認知言語学の観点から文法に迫る本格的な書評も寄稿されています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンの深部に入っています.アルファベットの文字ごとに異なる語源の「景色」を語れるのは,通読者ならではの境地でしょう.
Lilimi さんは,仏検の振り返りとともに,NHK ラジオ『古典講読』への熱い思いを綴っています.ラジオ文化を愛する者として,非常に共感を覚える内容でした.mozhi gengo さんは,表紙に関連した記事のほか,valueless と priceless の意味論的な対比など,鋭い言語学的考察を展開されています.
教育現場や学習のヒントも充実しています.sorami さんによる中学生向け語源クイズは,もはや hel 活のインフラと言えるほどの完成度です.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは,実は大人こそが学ぶべき視点に溢れています.umisio さんによる川上さんの「プロの流儀」に迫る新シリーズ「愛などなくったって…」についても,今後の展開に目が離せません.
ykagata さんは,『古英語・中英語初歩』新装復刊を盛り上げる「30連発」の舞台裏や,ドイツ語を通じた比較言語学的な知見を共有してくれています.新星「あまねちゃん」の,古英語に初めて出会った際の瑞々しい違和感の記録も,ベテラン勢にはない(?)新鮮な視点を与えてくれており人気急上昇です.
しーさんによる『古英語・中英語初歩』のアンバサダー的活用術も要注目です,り~みんさんによる「明るい L と暗い L」の沼も思いのほか深いです,「無職さん」こと佐久間さんによるによる「歯・噛む」のアングロサクソン文化論,そして川上さんによる北欧語混交の歴史的詳述などは,どこを切り取っても英語史のロマンが溢れ出ることを証明しています.また,私も note 記事で「英語史の塔」の攻略法について少し触れさせていただき,今号の Helvillian で取り上げていただきました.
最後は Grace さんによる3月の helwa によるhel活の活動報告と,umisio さんによる編集後記で締めくくらています.
今月号を読んで感じるのは,このコミュニティの熱量と質の高さです.決して英語史だけを語るのではなく,お互いの学び合いを尊重し,高め合う居心地の良さが誌面から伝わってきます.
この春,新しい学びを始めてみたいと思っている皆さん,ぜひこの hel 活の輪に加わってみませんか? まずはプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.初月無料となっておりますので,この月初に気軽にエントリーしていただければ!
Helvillian 4月号のご案内は,声でも「#1768. Helvillian 4月号が公開! --- この春,ことばのルーツをたどる旅をしよう。」としてお届けしています.ぜひそちらもお聴きくださいね.
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