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false_friend - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-07-13 08:07

2024-03-28 Thu

#5449. 月刊『ふらんす』で英語史連載が始まりました [hakusuisha][french][loan_word][notice][rensai][furansu_rensai][voicy][heldio][false_friend]


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 「日本で唯一のフランス語・フランス文化専門の総合月刊誌」という謳い文句で白水社より刊行されている『ふらんす』.先日発行された『ふらんす』2024年4月号(新年度開始号)より,12ヶ月にわたり「英語史で眺めるフランス語」というシリーズタイトルで2ページの連載記事をお届けします.
 初回となる今回は「英語にはフランス語風味がたくさん」と題して,次のような小見出しで構成しています.

 ・ なぜ英語の歴史?
 ・ 1066年の衝撃
 ・ 英語語彙のなかのフランス語単語
 ・ 語彙以外へのフランス語の影響

 『ふらんす』の誌上で英語(史)とは何事か,とみる向きもあるかと思います.そもそも白水社の編集者の方より連載執筆のお声がけをいただいた際の私自身の感想が「なぜ?」でした.私は,本ブログでもその他の媒体でも英語とフランス語の密接な関わりについて,主に英語史の観点から様々に発信してきました.試しに本ブログの french タグをクリックしてみると,実に313の記事がヒットします.それくらい英仏語の歴史的関係を強調してきたわけですが,まさかフランス語(文化)を専門とする雑誌に英語史に関する文章を載せられる日が来るとは思いも寄りませんでした.お話しをいただいたときには,上記のようにやや狼狽しつつも「チャンス!」と叫びつつ,謹んでお引き受けした次第です.
 ご関心のある方々には,ぜひ1年間お付き合いいただければと存じます.初回はとりわけ最初の小見出し「なぜ英語の歴史?」にご注目ください.
 この連載を機に,私自身もフランス語とフランス語史をもっと勉強しなければと気を引き締めています.フランス語史といえば,「三省堂のことばのコラム」より「歴史で謎解き!フランス語文法(フランス語教育 歴史文法派)」がお薦めです.現時点で第46回まで続いている長寿シリーズです.そちらにも英語(史)とフランス語(史)の関係に注目したコラムがいくつかあります.例えば,第18回「なぜ英語とフランス語は似ているの?」は,今回の『ふらんす』に掲載した記事と見事にシンクロします(cf. 「#4175. 「なぜ英語とフランス語は似ているの?」の記事紹介」 ([2020-10-01-1])).
 1年間続く連載「英語史で眺めるフランス語」では,英語史とフランス語はとにかく相性がよいということを力説し続けようと思っています.「英語(史)とフランス語はペアでとらえるのが吉」,このことを訴えていきます.
 年度替わりの時期で,新年度からフランス語学習に挑戦しようという方も少なくないかと思います.そのような方には,上記連載のみならず,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より以下の3本をお薦めしておきましょう.ぜひこちらもお聴きいただければ.

 ・ 「#26. 英語語彙の1/3はフランス語!」
 ・ 「#329. フランス語を学び始めるならば,ぜひ英語史概説も合わせて!」
 ・ 「#327. 新年度にフランス語を学び始めている皆さんへ,英語史を合わせて学ぶと絶対に学びがおもしろくなると約束します!」

(以下,後記:2024/04/02(Tue))
 4月1日に heldio で「#1036. 月刊『ふらんす』で英語史の連載を始めています」を配信しました.



 ・ 堀田 隆一 「英語史で眺めるフランス語 第1回 英語にはフランス語風味がたくさん」『ふらんす』2024年4月号,白水社,2024年3月23日.62--63頁.

Referrer (Inside): [2024-06-25-1] [2024-04-25-1]

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2024-02-18 Sun

#5410. A Dictionary of Japanese Loanwords --- 英語に入った日本語単語の辞書 [review][loan_word][japanese][lexicography][lexicology][false_friend][semantic_change][oed][dictionary]


Toshie M. Evans, ed. ''A Dictionary of Japanese Loanwords''. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.



 眺めているだけでおもしろい,決して飽きない辞書の紹介です.Toshie M. Evans 氏により編集された,英語に入った日本語単語を収録する辞書 A Dictionary of Japanese Loanwords です.1997年に出版されています.この hellog でも「#142. 英語に借用された日本語の分布」 ([2009-09-16-1]) で参照した通りですが,820語の日本語由来の「英単語」がエントリーされています.単に見出し語が列挙されているだけでなく,多くの語には,1964年から1995年の間にアメリカで出版された資料から取られた例文が付されており,たいへん貴重です.
 雰囲気を知っていただくために「火鉢」こと hibachi のエントリーを覗いてみましょう.

hibachi [hibɑːtʃi] n. pl. -chi or s, 1. a brazier used indoors for burning charcoal as a source of heat.
In an old-style shop, the selling activity took place in a front room on a tatami (straw mat) platform about one foot above the ground level. Customers removed their shoes, warmed themselves by sitting on the floor next to a hibachi (earthen container with glowing embers) and were served tea and sweets. (Places, Summer 1992, p. 81)
2. a portable brazier with a grill, used for outdoor cooking.
Double stamped steel hibachi, lightweight & portable. Goes with you to the backyard or even the beach for tasty cookouts? (Los Angeles Times, Jul. 7, 1985, Part I, p. 13, advertisement)
[< hibachi < hi fire + bachi < hachi pot] 1874: hebachi 1863 (OED)


 語義1は日本の「火鉢」そのものなのですが,語義2の「バーベキューコンロ」にはたまげてしまいますね.この語とその意味変化については「#4386. 「火鉢」と hibachi, 「先輩」と senpai」 ([2021-04-30-1]) でも扱っているので,ご参照ください.
 日本語から英語に入った借用語に関心のある方は,ぜひ以下の記事もどうぞ.

 ・ 「#126. 7言語による英語への影響の比較」 ([2009-08-31-1])
 ・ 「#45. 英語語彙にまつわる数値」 ([2009-06-12-1])
 ・ 「#2165. 20世紀後半の借用語ソース」 ([2015-04-01-1])
 ・ 「#3872. 英語に借用された主な日本語の借用年代」 ([2019-12-03-1])
 ・ 「#4140. 英語に借用された日本語の「いつ」と「どのくらい」」 ([2020-08-27-1])
 ・ 「#5055. 英語史における言語接触 --- 厳選8点(+3点)」 ([2023-02-28-1])
 ・ 「#5147. 「ゆる言語学ラジオ」出演第3回 --- 『ジーニアス英和辞典』第6版を読む回で触れられた諸々の話題」 ([2023-05-31-1])

 ・ Toshie M. Evans, ed. A Dictionary of Japanese Loanwords. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.

Referrer (Inside): [2024-02-26-1]

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2022-09-25 Sun

#4899. magazine は「火薬庫」だった! [etymology][arabic][french][false_friend][semantic_change][italian][spanish][portuguese][borrowing][loan_word]

 英仏語の "false friends" (= "faux amis") の典型例の1つに英語 magazine (雑誌)と仏語 magasin (店)がある.語形上明らかに関係しているように見えるのに意味がまるで違うので,両言語を学習していると面食らってしまうというケースだ(ただし,フランス語にも「雑誌」を意味する magazine という単語はある).
 OED により語源をたどってみよう.この単語はもとをたどるとアラビア語で「倉庫」を意味する mákhzan に行き着く.この複数形 makhāˊzin が,まずムーア人のイベリア半島侵入・占拠の結果,スペイン語やポルトガル語に入った.「倉庫」を意味するスペイン語 almacén,ポルトガル語 armazém は,語頭にアラビア語の定冠詞 al-, ar- が付いた形で借用されたものである.スペイン語での初出は1225年と早い.
 この単語が,通商ルートを経て,定冠詞部分が取り除かれた形で,1348年にイタリア語に magazzino として,1409年にフランス語に magasin として取り込まれた(1389年の maguesin もあり).そして,英語はフランス語を経由して16世紀後半に「倉庫」を意味するこの単語を受け取った.初出は1583年で,中東に出かけていたイギリス商人の手紙のなかで Magosine という綴字で現われている.

1583 J. Newbery Let. in Purchas Pilgrims (1625) II. 1643 That the Bashaw, neither any other Officer shall meddle with the goods, but that it may be kept in a Magosine.


 しかし,英語に入った早い段階から,ただの「倉庫」ではなく「武器の倉庫;火薬庫」などの軍事的意味が発達しており,さらに倉庫に格納される「貯蔵物」そのものをも意味するようになった.
 次の意味変化もじきに起こった.1639年に軍事関係書のタイトルとして,つまり「専門書」ほどの意味で "Animadversions of Warre; or, a Militarie Magazine of the trvest rvles..for the Managing of Warre." と用いられたのである.「軍事知識の倉庫」ほどのつもりなのだろう.
 そして,この約1世紀後,ついに私たちの知る「雑誌」の意味が初出する.1731年に雑誌のタイトルとして "The Gentleman's magazine; or, Trader's monthly intelligencer." が確認される.「雑誌」の意味の発達は英語独自のものであり,これがフランス語へ1650年に magasin として,1776年に magazine として取り込まれた.ちなみに,フランス語での「店」の意味はフランス語での独自の発達のようだ.
 英仏語の間を行ったり来たりして,さらに各言語で独自の意味変化を遂げるなどして,今ではややこしい状況になっている.しかし,「雑誌」にせよ「店」にせよ,軍事色の濃い,きな臭いところに端を発するとは,調べてみるまでまったく知らなかった.驚きである.

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