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最終更新時間: 2020-11-25 08:02

2020-10-28 Wed

#4202. なぜ Are you a student? に対して *Yes, I'm. ではダメなのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hel_education][sobokunagimon][interrogative][syntax][word_order][clitic][information_structure]

 2週間ほど前に通常の hellog 記事「#4186. なぜ Are you a student? に対して *Yes, I'm. ではダメなのですか?」 ([2020-10-12-1]) で取り上げたばかりの素朴な疑問ですが,発音に関わる話題でもありますのでラジオ化し,説明もなるべく簡略化してみました.現役中学生からの質問でしたが,これを聴いて理解できるでしょうか.



 ポイントは,単語のなかには弱形と強形という異なる発音をもつものがあるということです.問題の be 動詞をはじめ,冠詞,助動詞,前置詞,人称代名詞,接続詞,関係代名詞/副詞など文法的な役割を果たす語に多くみられます.これらの単語はデフォルトでは弱形で発音されますが,今回の Yes, I am. ように,後ろに何かが省略されていて,文末に来る等いくつかの特別な場合には強形が現われます(というよりも,現われなければなりません).頻出する文法的な語だからこその,ちょっと面倒な現象ではありますが,弱形と強形の2つがあるという点をぜひ覚えておいてください.
 関連する話題については##4186,3713,3776の記事セットをご覧ください.

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2020-10-27 Tue

#4201. 手紙の書き出しの Dear my friend [vocative][pragmatics][adjective][interjection][syntax][word_order][pragmatic_marker][coca]

 最近,大学院生の指摘にハッとさせられることが多く,たいへん感謝している.標記の話題も一種の定型文句とみなしており,とりたてて分析的に考えたこともなかったが,指摘を受けて「確かに」と感心した.dear は「親愛なる」を意味する一般の形容詞であるから,my dear friend ならよく分かる.しかし,手紙の冒頭の挨拶 (salutation) などでは,統語的に破格ともいえる Dear my friend が散見される.Dear Mr. Smith なども語順としてどうなのだろうか.
 共時的な感覚としては,冒頭の挨拶 Dear は純然たる形容詞というよりは,挨拶のための間投詞 (interjection) に近いものであり,語用標識 (pragmatic_marker) といってよいものかもしれない.つまり,正規の my dear friend と,破格の Dear my friend を比べても仕方ないのではないか,ということかもしれない.CGEL (775) でも,以下のように挨拶を導入するマーカーとみなして済ませている.

It is conventional to place a salutation above the body of the letter. The salutation, which is on a line of its own, is generally introduced by Dear;
   Dear Ruth   Dear Dr Brown   Dear Madam   Dear Sir


 しかし,通時的にみれば疑問がいろいろと湧いてくる.Dear my friend のような語順が初めて現われたのはいつなのだろうか? その語用標識化の過程はいかなるものだったのだろうか? 近代英語では Dear my lordDear my lady の例が多いようだが,これは milord, milady の語彙化とも関わりがあるに違いない,等々.
 ただし,現代英語の状況について一言述べておけば,COCA で検索してみた限り,実は「dear my 名詞」の例は決して多くない.歴史的にもいろいろな観点から迫れる,おもしろいテーマである(←Kさん,ありがとう!).

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

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2020-10-12 Mon

#4186. なぜ Are you a student? に対して *Yes, I'm. ではダメなのですか? [sobokunagimon][interrogative][syntax][word_order][clitic][information_structure]

 中学生から寄せられた素朴な疑問です.標題のような yes/no 疑問文への回答で,No, I'm not. は許容されますが,*Yes, I'm. は許容されず,Yes, I am. と完全形で答えなければなりません.英語学習の最初に I am の省略形は I'm であると習うわけですが,省略形が使えない場合があるのです.これはなぜなのでしょうか.
 その答えは「文末に省略形を置くことはできない」という文法規則があるからです.もう少し正確にいえば,強形・弱形をもつ語に関しては,節末では強形で実現されなければならない,ということです.強形・弱形をもつ語というのは,今回問題となっている be 動詞をはじめ,冠詞,助動詞,前置詞,人称代名詞,接続詞,関係代名詞/副詞などが含まれます(cf. 「#3713. 機能語の強音と弱音」 ([2019-06-27-1]),「#3776. 機能語の強音と弱音 (2)」 ([2019-08-29-1])).主として文法的な機能を果たす語のことです.
 これらの語は,通常の文脈では弱く発音され,省略形で生起することが多いのですが,節末に生起する場合や単独で発音される場合には「強形」となります.am でいえば,標題の回答のように節末(文末)に来る場合には,通常の弱形 /əm, m/ ではなく,特別な強形 /æm/ として実現されなければなりません.
 では,なぜ節末で強形とならなければならないのでしょうか.通常,be 動詞にせよ助動詞にせよ前置詞にせよ,補語,動詞,目的語など別の要素が後続するため,それ自体が節末に生起することはありません.しかし,統語的な省略 (ellipsis) や移動 (movement) が関わる場合には,節末に起こることもあります.

 ・ Are you a student? --- Yes, I am (a student).
 ・ I am taller than you are (tall).
 ・ She doesn't know who the man is.
 ・ Sam kicked the ball harder than Dennis did (kick the ball hard).
 ・ They ran home as fast as they could (run fast).
 ・ What are you looking at?
 ・ This is the very book I was looking for.

 このような特殊な統語条件のもとでは,節末にあって問題の機能語は強形で実現されます.これは,通常の場合よりも統語や情報構造の観点から重要な役割を果たしているため,音形としても卓越した実現が求められるからだと考えられます.Yes, I am (a student). のケースでいえば,be 動詞には,後ろに a student が省略されているということを標示する役割が付されており,通常の I'm a student.be 動詞よりも「重責」を担っているといえるのです.
 なお,No, I'm not. が許容されるのは,be 動詞が節末に生起するわけではないからだと考えています.あるいは,「be 動詞 + not」が合わさって後続要素の省略を標示する機能を担っているのではないかとも考えられます (cf. No, it isn't.) .

Referrer (Inside): [2020-10-28-1]

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2020-05-02 Sat

#4023. 英語史の「総合から分析へ」を相対化する [synthesis_to_analysis][inflection][word_order][syntax][morphology][typology]

 昨日の記事「#4022. 英語史における文法変化の潮流を一言でいえば「総合から分析へ」」 ([2020-04-27-1]) について一言補足しておきたい.
 形態論ベースの類型論という理論的観点からみると確かに「総合」 (synthesis) と「分析」 (analysis) は対置されるが,実際的には100%総合的な言語や100%分析的な言語というものは存在しない.どの言語も,総合と分析を両極とする数直線のどこかしらの中間点にプロットされる.古英語は数直線の総合側の極点にプロットされるわけではなく,あくまでそこに近いところにプロットされるにすぎない.古英語も,それより前の時代からみれば十分に水平化が進んでいるからだ.同様に,現代英語は分析側の極点ではなく,そこに近いところにプロットされるということである.現代英語にも動詞や代名詞の屈折などはそこそこ残っているからだ.
 したがって,古英語から現代英語への文法変化の潮流を特徴づける「総合から分析へ」は,数直線の0から100への大飛躍ではないということに注意しなければならない.印象的にいえば,数直線の30くらいから80くらいへの中程度の飛躍だということである.もちろん,これでも十分に劇的なシフトだとは思う.
 「#191. 古英語,中英語,近代英語は互いにどれくらい異なるか」 ([2009-11-04-1]) や「#1816. drift 再訪」 ([2014-04-17-1]) で挙げた数直線らしき図からは,0から100への大飛躍が表現されているかのように読み取れるが,これも誇張である.これらの図はいずれもゲルマン語派に限定した諸言語間の相対的な位置を示したものであり,より広い類型論的な視点から作られた図ではない.世界の諸言語を考慮するならば,古英語から現代英語へのシフトの幅はいくぶん狭めてとらえておく必要があるだろう.
 Smith (41) が「総合から分析へ」の相対化について次のように述べている.

Traditionally, the history of English grammar has been described in terms of the shift from synthesis to analysis, i.e. from a language which expresses the relationship between words by means of inflexional endings joined to lexical stems to one which maps such relationships by means of function-words such as prepositions. This broad characterization, of course, needs considerable nuancing, and can better be expressed as a comparatively short shift along a cline. Old English, in comparison with Present-day English, is comparatively synthetic, but nowhere near as synthetic as (say) non-Indo-European languages such as Present-day Finnish or Zulu, older Indo-European languages such as classical Latin --- or even earlier manifestations of Germanic such as 4th-century Gothic, which, unlike OE, regularly distinguished nominative and accusative plural forms of the noun; cf. OE hlāfas 'loaves' (both NOM and ACC), Go. hláibōs (NOM), hláibans (ACC). Present-day English is comparatively analytic, but not as analytic as (say) Present-day Mandarin Chinese; a 21st-century English-speaker still marks person, number and case, and sustains grammatical cohesion, with concord between verbal and pronominal inflexions, for instance, e.g. I love bananas beside she hates bananas.


 「総合から分析へ」はキャッチフレーズとしてはとても良いが,上記の点に注意しつつ相対的に理解しておく必要がある.

 ・ Smith, Jeremy J. "Periods: Middle English." Chapter 3 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 32--48.

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2020-03-27 Fri

#3987. 古ノルド語の影響があり得る言語項目 (2) [old_norse][contact][syntax][word_order][phrasal_verb][plural][link]

 「#1253. 古ノルド語の影響があり得る言語項目」 ([2012-10-01-1]) で挙げたリストに,Dance (1735) を参照し,いくつか項目を追加しておきたい.いずれも実証が待たれる仮説というレベルである.

 (1) the marked increase in productivity of the derivational verbal affixes -n- (as in harden, deepen) and -l- (e.g. crackle, sparkle)
 (2) the rise of the "phrasal verb" (verb plus adverb/preposition) at the expense of the verbal prefix, most persuasively the development of up in an aspectual (completive) function
 (3) certain aspects of v2 syntax (including the development of 'CP-v2' syntax in northern Middle English)
 (4) the general shift to VO order

 上記 (1) については,「#1877. 動詞を作る接頭辞 en- と接尾辞 -en」 ([2014-06-17-1]) で関連する話題に触れているので,そちらも参照.
 (2) については,関連して「#2396. フランス語からの句の借用に対する慎重論」 ([2015-11-18-1]) を参照.
 (3), (4) は統語現象だが,とりわけ (4) は大きな仮説である.これについては拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年)の第5章第4節でも論じている.さらに以下の記事やリンク先の話題も合わせてどうぞ.

 ・ 「#1170. 古ノルド語との言語接触と屈折の衰退」 ([2012-07-10-1])
 ・ 「#3131. 連載第11回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)」」 ([2017-11-22-1]) (連載記事への直接ジャンプはこちら
 ・ 「#3160. 連載第12回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(後編)」」 ([2017-12-21-1]) (連載記事への直接ジャンプはこちら
 ・ 「#3733.『英語教育』の連載第5回「なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」」 ([2019-07-17-1])

 最後にリストに加えるのを忘れていたもう1つの項目があった.

 (5) the spread of the s-plural

 これは,私自身が詳細に論じている説である.詳しくは Hotta をご覧ください.

 ・ Dance, Richard. "English in Contact: Norse." Chapter 110 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 1724--37.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』 中央大学出版部,2011年.
 ・ Hotta, Ryuichi. The Development of the Nominal Plural Forms in Early Middle English. Tokyo: Hituzi Syobo, 2009.

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2020-03-06 Fri

#3966. 英語統語論の主要な歴史的変化の一覧 [syntax][language_change][word_order][timeline]

 Fischer et al. (4--6) に英語統語論の主要な歴史的変化の一覧表がある.参照用に便利なので,"Overview of syntactic categories and their changes" と題されたこの一覧を再現しておきたい.左欄を縦に眺めるだけでも,英語歴史統語論にどのような話題があり得るのかがつかめる.

Changes in:Old EnglishMiddle EnglishModern English
case form and function:genitivevarious functionsgenitive case for subjective/poss.; of-phrase elsewheresame
dativevarious functions/PP sporadicincrease in to-phrase; impersonal dative lostsame
accusativemain function: direct objectaccusative case lost, direct object mainly marked by positionsame
determiners:systemarticles present in embryo form, system developingarticles used for presentational and referential functionsalso in use in predicative and generic contexts
double det.presentrareabsent
quantifiers:position ofrelatively freemore restrictedfairly fixed
adjectives:positionboth pre- and postnominalmainly prenominalprenominal with some lexical exceptions
form/functionstrong/weak forms, functionally distinctremnants of strong/weak forms; not functionalone form only
as headfully operativereduced; introduction of onerestricted to generic reference/idiomatic
'stacking' ofnot possiblepossiblepossible
adjectival or relative clauserelative: se, se þe, þe, zero subject rel.new: þæt, wh-relative (except who), zero obj. rel.who relative introduced
adj. + to-inf.only active infinitivesactive and passive inf.mainly active inf.
aspect-system:use of perfectembryonicmore frequent; in competition with 'past'perfect and 'past' grammaticalized in different functions
form of perfectBE/HAVE (past part. sometimes declined)BE/HAVE; HAVE becomes more frequentmainly HAVE
use and form of progressiveBE + -ende; function not clearBE + -ing, infrequent, more aspectualfrequent, grammaticalizing
tense-system:'present'used for present tense, progressive, futureused for present tense and progr.; (future tense develops)becomes restricted to 'timeless' and 'reporting' uses
'past'used for past tense, (plu)perfect, past progr.still used also for past progr. and perfect; new: modal pastrestricted in function by grammaticalization of perfect and progr.
mood-system:expressed bysubjunctive, modal verbs (+ epistemic advbs)mainly modal verbs (+ develop. quasi-modals); modal past tense verbs (with exception features)same + development of new modal expressions
category of core modalsverbs (with exception features)verbs (with exception features)auxiliaries (with verbal features)
voice-system:passive formbeon/weorðan + (inflected) past part.BE + uninfl. past partsame; new GET passive
indirect pass.absentdeveloping(fully) present
prep. pass.absentdeveloping(fully) present
pass. infin.only after modal verbsafter full verbs, with some nouns and adject.same
negative systemne + verb (+ other negator)(ne) + verb + not; rare not + verbAux + not + verb; (verb + not)
interrog. systeminversion: VSinversion: VSAux SV
DO as operatorabsentinfrequent, not grammaticalizedbecoming fully grammaticalized
subject:position filledsome pro-drop possible; dummy subjects not compulsorypro-drop rare; dummy subjects become the normpro-drop highly marked stylistically; dummy subj. obligat.
clausesabsentthat-clauses and infinitival clausesnew: for NP to V clauses
subjectless/impersonal constructionscommonsubject position becomes obligatorily filledextinct (some lexicalized express.)
position with respect to Vboth S (...) V and VSS (...) V; VS becomes restricted to yes/no quest.only S (adv) V; VS > Aux SV
object:clausesmainly finite þæt-cl., also zero/to-infinitivestark increase in infinitival cl.introduction of a.c.i. and for NP to V cl.
position with respect to VVO and OVVO; OV becomes restrictedVO everywhere
position IO-DOboth orders; pronominal IO-DO preferrednominal IO-DO the norm, introduction of DO for/to IOIO-DO with full NPs; pronominal DO-IO predominates
clitic pronounssyntactic cliticsclitics disappearingclitics absent
adverbs:positionfairly freemore restrictedfurther restricted
clausesuse of correlatives + different word ordersdistinct conjunctions; word order mainly SVOall word order SVO (exc. some conditional clauses)
phrasal verbsposition particle: both pre- and postverbalgreat increase; position: postverbalsame
preposition strandingonly with pronouns (incl. R-pronouns: þær, etc.) and relative þeno longer with pronouns, but new with prep. passives, interrog., and other relative clausesno longer after R-pronouns (there, etc.) except in fixed expressions


 ・ Fischer, Olga, Hendrik De Smet, and Wim van der Wurff. A Brief History of English Syntax. Cambridge: CUP, 2017.

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2020-01-31 Fri

#3931. 語順の固定化と分かち書き [word_order][syntax][distinctiones][silent_reading][inflection][word]

 連日引用している Space Between Words: The Origins of Silent Reading の著者 Saenger は,中世後期に分かち書き (distinctiones) の慣習が改めて発達してきた背景には,ラテン語から派生したロマンス系諸言語の語順の固定化も一枚噛んでいたのではないかと論じている.
 比較的緩やかだったラテン語の語順が,フランス語などに発展する過程でSVO等の基本語順へ固定化していったことにより,読者の語(句)境界に対する意識が強くなってきたのではないかという.また語順の固定化と並行して屈折の衰退という言語変化が進行しており,後者も読者の語(句)の認識の仕方に影響を与えていただろうと考えられる.そして,もう一方の分かち書きの発達も,当然ながら語(句)境界の認識の問題と密接に関わる.これらの現象はいずれも語(句)境界の同定を重視するという方向性を共有しており,互いに補完し合う関係にあったのではないか.さらには,このような複合的な要因が相俟って黙読や速読の習慣も発達してきたにちがいない,というのが Saenger 流の議論展開だ.
 興味深い論点の1つは,文章を読解するにあたっての短期記憶に関するものである.語順が比較的自由で,かつ続け書きをする古典ラテン語においては,読者は1文を構成する長い文字列をじっくり解読していかければならない.文字を最後まで追いかけた上で,逆走し,全体の意味を確認する必要がある.この読み方では読者の短期記憶にも重い負担がかかることになるだろう.そこで,朗々と読み上げることによってその負担をいくらか軽減しようとしていると考えることもできる.
 一方,中世ラテン語やロマンス諸語などのように,ある程度語順が定まっており,かつ分かち書きがなされていれば,文中で次にどのような要素がくるか予想しやすくなると同時に,単語を逐一自力で切り分ける面倒からも解放されるために,短期記憶にかかる負担が大幅に減じる.わざわざ朗々と読み上げなくとも,速やかに読解できるのだ.語順の自由さと続け書きは平行的であり,語順の固定化と分かち書きも,向きは180度異なるものの,やはり平行的ということである.
 もう1つのおもしろい議論は,ちょうど屈折の衰退(と語順の固定化)が広く文法の堕落だと考えられてきたのと同様に,続け書きから分かち書きへのシフトも言語生活上の堕落だと考えられてきた節があるということだ.統語論の問題と書記法の問題は,このようにペアでとらえられてきたようだ.
 Saenger (17) のまとめの文は次の通り.

The evolution of rigorous conventions, both of word order and of word separation, had the similar and complementary physiological effect of enhancing the medieval reader's ability to comprehend written text rapidly and silently by facilitating lexical access.


 ・ Saenger, P. Space Between Words: The Origins of Silent Reading. Stanford, CA: Stanford UP.

Referrer (Inside): [2020-02-01-1]

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2019-10-23 Wed

#3831. なぜ英語には冠詞があるのですか? [article][sobokunagimon][typology][linguistic_area][geolinguistics][information_structure][word_order][syntax]

 英語史の授業にて尋ねられた質問.まさに直球.答えるのが難しい.
 まず英語史的にいえることは,古英語や中英語では,現代的な使い方での「冠詞」 (article) は未発達だったということです.thea(n) という素材そのものは古英語からあったのですが,それぞれ現代風の定冠詞や不定冠詞としては用いられていませんでした.つまり,古英語にも thea(n) という単語のご先祖様は確かにいたけれども,当時はまだ名詞に添えるべき必須の項目というステータスは獲得していなかったということです.
 ということは,日々私たちが使い分けに苦労している現代英語の「冠詞」という項目は,英語の歴史の歩みのなかで,徐々に獲得されてきたものということになります.冠詞は英語の歴史の最初からあったわけではない.まず,この事実を押さえておく必要があります.
 冠詞なるものが歴史のなかで獲得されてきたというのは,なにも英語に限りません.そもそも英語を含めたヨーロッパからインドに及ぶ多くの言語のルーツである印欧祖語には冠詞はありませんでした.しかし,印欧語族に属する古典ギリシア語,アルメニア語,アイルランド語という個別の言語をはじめ,ロマンス語派,ゲルマン語派,ケルト語派の諸言語やバルカン言語連合でも冠詞がみられることから,いずれも歴史の過程で冠詞を発達させてきたことがわかります(「#2855. 世界の諸言語における冠詞の分布 (1)」 ([2017-02-19-1]) を参照).
 また,印欧語族から離れて世界の諸言語に目を向けてみても,冠詞という言語項目は世界各地に確認されます(全体としては少数派ではありますが).ただし,地理的にはヨーロッパ,アフリカ,南西太平洋などにある程度偏在しているようで,類型論や地理言語学の立場からは興味深い話題となっています.
 さて,英語に話しを戻しましょう.古英語にも冠詞の種となるものはあったにせよ,なぜその後それが現代風の冠詞的な機能を発達させることになったのでしょうか.1つには,英語が中英語以降に語順を固定化させてきたという事実が関係しているように思われます.「#2856. 世界の諸言語における冠詞の分布 (2)」 ([2017-02-20-1]) でも述べたように「語順が厳しく定まっている言語では一般的に名詞的要素の置き場所を利用して定・不定を標示するのが難しいために,冠詞という手段が採用されやすいという事情がある」のではないかと考えられます.
 定・不定とは,その表現の指しているものが文脈上話し手や聞き手にとって既知か未知か,特定されるかされないかといった区別のことです.談話の典型的なパターンは,定の要素をアンカーとし,それに不定の要素を引っかけながら新情報を導入していくというものですが,このような情報の流れは情報構造 (information_structure) と呼ばれます.言語は情報構造を標示するための手段をもっていると考えられますが,語順や冠詞もそのような手段の候補となります.語順が自由であれば,定の要素を先頭にもってきたり,不定の要素を後置するなどの方法を利用できるでしょう(cf. 「#3211. 統語と談話構造」 ([2018-02-10-1])).しかし,語順の自由度が低くなると別の手段に訴える必要が生じてきます.英語は中英語期にかけて語順の自由度を失っていった結果,情報構造を標示するための新たな道具として,素材として手近にあった thea(n) などを利用したのではないかと考えられます.
 ただし,これも1つの仮説にすぎません.標題の質問にズバリ答えているわけではなく,我ながらもどかしいところです.
 冠詞の発生に関する統語理論上の扱いは,「#2144. 冠詞の発達と機能範疇の創発」 ([2015-03-11-1]) を参照してください.関連して,英語史における語順の固定化について「#3131. 連載第11回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)」」 ([2017-11-22-1]),「#3160. 連載第12回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(後編)」」 ([2017-12-21-1]),「#3733.『英語教育』の連載第5回「なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」」 ([2019-07-17-1]) をご覧ください.

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2019-08-18 Sun

#3765.『英語教育』の連載第6回「なぜ一般動詞の疑問文・否定文には do が現われるのか」 [rensai][notice][word_order][syntax][syntax][do-periphrasis][grammaticalisation][interrogative][negative][auxiliary_verb][sociolinguistics][sobokunagimon]

 8月14日に,『英語教育』(大修館書店)の9月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第6回となる今回の話題は,「なぜ一般動詞の疑問文・否定文には do が現われるのか」です.この do の使用は,英語統語論上の大いなる謎といってよいものですが,歴史的にみても,なぜこのような統語表現(do 迂言法と呼びます)が出現したのかについては様々な仮説があり,今なお熱い議論の対象になっています.

『英語教育』2019年9月号


 中英語期までは,疑問文や否定文を作る規則は単純でした.動詞の種類にかかわらず,疑問文では主語と動詞を倒置し,否定文では動詞のあとに否定辞を添えればよかったのです.現代英語の be 動詞や助動詞は,いまだにそのような統語規則を保ち続けていますので,中英語期までは一般動詞も同じ規則に従っていたと理解すればよいでしょう.しかし,16世紀以降,一般動詞の疑問文や否定文には,do 迂言法を用いるという新たな規則が発達し,確立していったのです.do の機能に注目すれば,do が「する,行なう」を意味する本動詞から,文法化 (grammaticalisation) という過程を経て助動詞へと発達した変化ともとらえられます.
 記事ではなぜ do 迂言法が成立し拡大したのか,なぜ16世紀というタイミングだったのかなどの問題に触れましたが,よく分かっていないことも多いのが事実です.記事の最後では「もしエリザベス1世が結婚し継嗣を残していたならば」 do 迂言法はどのように発展していただろうかという,歴史の「もし」も想像してみました.どうぞご一読ください.
 本ブログ内の関連する記事としては,「#486. 迂言的 do の発達」 ([2010-08-26-1]),「#491. Stuart 朝に衰退した肯定平叙文における迂言的 do」 ([2010-08-31-1]) を始めとして do-periphrasis の記事をご覧ください.

 ・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第6回 なぜ一般動詞の疑問文・否定文には do が現われるのか」『英語教育』2019年9月号,大修館書店,2019年8月14日.62--63頁.

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2019-07-18 Thu

#3734. 島嶼ケルト語の VSO 語順の起源 [word_order][syntax][celtic][generative_grammar][world_languages][reanalysis]

 印欧祖語の基本語順は SOV だったと考えられているが,そこから派生した諸言語では基本語順が変化したものもある.英語も印欧祖語からゲルマン祖語を経て歴史時代に及ぶ長い歴史のなかで,基本語順を SVO へと変化させてきた.生成文法流にいえば,O の移動 (movement) ,とりわけ前置 (fronting) の結果としての語順が,デフォルトとして定着したものと考えることができるだろう.

 ・ 「#3127. 印欧祖語から現代英語への基本語順の推移」 ([2017-11-18-1])
 ・ 「#3131. 連載第11回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)」」 ([2017-11-22-1])
 ・ 「#3160. 連載第12回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(後編)」」 ([2017-12-21-1])
 ・ 「#3733.『英語教育』の連載第5回「なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」」 ([2019-07-17-1])

 O ではなく V が前置された VSO という変異的な語順が,やがてデフォルトとして定着した言語がある.島嶼ケルト語 (Insular Celtic) だ.Fortson (144) が次のように述べている.

If verb-initial order generated in this way [= by fronting] becomes stereotyped, it can be reanalyzed by learners as the neutral order; and in fact in Insular Celtic, VSO order became the norm for precisely this reason (the perhaps older verb-final order is still the rule in the Continental Celtic language Celtiberian). A similar reanalysis happened in Lycian . . . .


 この解釈でいくと,おそらく語用論的な要因による変異語順の1つにすぎなかったものが,デフォルトの語順として再分析 (reanalysis) され,定着したということになろうか.すると,個々の印欧語における基本語順は,およそ基底の SOV から導き出せることになる.
 平叙文で VSO という語順に馴染みのない身としては,いきなり動詞で始まるという感覚はイマイチつかめないところだが,「#3128. 基本語順の類型論 (3)」 ([2017-11-19-1]) でみたように,VSO 語順は世界の言語のなかでも決して稀な語順ではない.世界の言語の基本語準については以下も参照.

 ・ 「#137. 世界の言語の基本語順」 ([2009-09-11-1])
 ・ 「#3124. 基本語順の類型論 (1)」 ([2017-11-15-1])
 ・ 「#3125. 基本語順の類型論 (2)」 ([2017-11-16-1])
 ・ 「#3128. 基本語順の類型論 (3)」 ([2017-11-19-1])
 ・ 「#3129. 基本語順の類型論 (4)」 ([2017-11-20-1])

 ・ Fortson IV, Benjamin W. Indo-European Language and Culture: An Introduction. Malden, MA: Blackwell, 2004.

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2019-07-17 Wed

#3733.『英語教育』の連載第5回「なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」 [rensai][notice][word_order][old_norse][syntax][contact][synthesis_to_analysis][sociolinguistics][sobokunagimon][link]

 7月14日に,『英語教育』(大修館書店)の8月号が発売されました.英語史連載記事「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第5回「なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」が掲載されています.ご一読ください.

『英語教育』2019年8月号


 標題の問いに端的に答えるならば, (1) 古英語の屈折が言語内的な理由で中英語期にかけて衰退するとともに,(2) 言語外的な理由,つまりイングランドに来襲したヴァイキングの母語である古ノルド語との接触を通じて,屈折の衰退が促進されたから,となります.
 これについては,拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年)の第5章第4節でも論じましたので,そちらもご参照ください.言語は,そのような社会的な要因によって大きく様変わりすることがあり得るのです.
 関連して,以下の記事もどうぞ.

 ・ 「#1170. 古ノルド語との言語接触と屈折の衰退」 ([2012-07-10-1])
 ・ 「#3131. 連載第11回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)」」 ([2017-11-22-1])
 ・ 「#3160. 連載第12回「なぜ英語はSVOの語順なのか?(後編)」」 ([2017-12-21-1])

 ・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第5回 なぜ英語は語順が厳格に決まっているのか」『英語教育』2019年8月号,大修館書店,2019年7月14日.62--63頁.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』 中央大学出版部,2011年.

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2019-03-12 Tue

#3606. 講座「北欧ヴァイキングと英語」 [asacul][old_norse][inflection][word_order][history][contact][loan_word][borrowing][link][slide]

 先日3月9日(土)の15:00〜18:15に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて,「英語の歴史」と題するシリーズ講座の第2弾として「北欧ヴァイキングと英語」をお話ししました.参加者の方々には,千年以上前のヴァイキングの活動や言葉(古ノルド語)が,私たちの学んでいる英語にいかに多大な影響を及ぼしてきたか分かっていただけたかと思います.本ブログでは,これまでも古ノルド語 (old_norse) に関する話題を豊富に取り上げてきましたので,是非そちらも参照ください.
 今回は次のような趣旨でお話ししました.

 英語の成り立ちに,8 世紀半ばから11世紀にかけてヨーロッパを席巻した北欧のヴァイキングとその言語(古ノルド語)が大きく関与していることはあまり知られていません.例えば Though they are both weak fellows, she gives them gifts. という英文は、驚くことにすべて古ノルド語から影響を受けた単語から成り立っています.また,英語の「主語+動詞+目的語」という語順が確立した背景にも,ヴァイキングの活動が関わっていました.私たちが触れる英語のなかに,ヴァイキング的な要素を探ってみましょう.

   1. 北欧ヴァイキングの活動
   2. 英語と古ノルド語の関係
   3. 古ノルド語が英語の語彙に及ぼした影響
   4. 古ノルド語が英語の文法に及ぼした影響
   5. なぜ英語の語順は「主語+動詞+目的語」で固定なのか?


 講座で使用したスライド資料をこちらにアップしておきます.スライド中から,本ブログの関連記事へもたくさんのリンクが張られていますので,そちらで「北欧ヴァイキングと英語」の関係について復習しつつ,理解を深めてもらえればと思います.

   1. シリーズ「英語の歴史」 第2回 北欧ヴァイキングと英語
   2. 本講座のねらい
   3. 1. 北欧ヴァイキングの活動
   4. ブリテン島の歴史=征服の歴史
   5. ヴァイキングのブリテン島来襲
   6. 関連用語の整理
   7. 2. 英語と古ノルド語の関係
   8. 3. 古ノルド語が英語の語彙に及ぼした影響
   9. 古ノルド語からの借用語
   10. 古ノルド借用語の日常性
   11. イングランドの地名の古ノルド語要素
   12. 英語人名の古ノルド語要素
   13. 古ノルド語からの意味借用
   14. 句動詞への影響
   15. 4. 古ノルド語が英語の文法に及ぼした影響
   16. 形態論再編成の「いつ」と「どこ」
   17. 古英語では屈折ゆえに語順が自由
   18. 古英語では屈折ゆえに前置詞が必須でない
   19. 古英語では文法性が健在
   20. 古英語は屈折語尾が命の言語
   21. 古英語の文章の例
   22. 屈折語尾の水平化
   23. 語順や前置詞に依存する言語へ
   24. 文法性から自然性へ
   25. なぜ屈折語尾の水平化が起こったのか? (1)
   26. なぜ屈折語尾の水平化が起こったのか? (2)
   27. なぜ屈折語尾の水平化が起こったのか? (3)
   28. 形態論再編成の「どのように」と「なぜ」
   29. 英文法の一大変化:総合から分析へ
   30. 5. なぜ英語の語順は「主語+動詞+目的語」で固定なのか?
   31. 本講座のまとめ
   32. 参考文献

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2019-01-15 Tue

#3550. 日本語用論学会関東地区講演会で may 祈願文について話します [notice][optative][auxiliary_verb][syntax][word_order][academic_conference][may]

 とある経緯により,今週末の1月19日(土)の15時より慶應義塾大学三田キャンパス(南校舎446番教室)にて,日本語用論学会関東地区の講演会にてお話しすることになっています.タイトルは「英語の may 祈願文の起源と発達」です.事前申込不要,参加費無料ですので,ご関心の向きはお運びください.
 May the Force be with you! (フォースが共にあらんことを!)に代表される may を用いた祈願文の歴史については,ここ数年間,関心を持ち続けてきました.拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年)の4.5節でも取り上げましたし,本ブログでも「#1867. May the Queen live long! の語順」 ([2014-06-07-1]),「#2256. 祈願を表わす may の初例」 ([2015-07-01-1]),「#2484. 「may 祈願文ができるまで」」 ([2016-02-14-1]) など optative の各記事で話題にしてきた通りです.
 なぜよりによって may という助動詞が用いられているのか,なぜ VS 語順になる必要があるのかなど,共時的に謎が多い問題なのですが,通時的にみるとある程度は理由が分かってきます.しかし,通時的にみても依然として不明な部分が多々残っており,研究の余地があります.本格的に調べてみようと思い立ったのは比較的最近ですので,今度の講演会ではこれまでに分かっていることをまとめたり,目下考えているところをお話しするということになりますが,この不可思議で魅力的な構文について,語用論的な視点も含めつつ議論してみたいと思っています.
 自身の拙い発表の宣伝はしにくいのですが,慶應大学文学部の同僚であり,日本語用論学会関東地区を仕切られている井上逸兵先生からのプッシュもあり紹介してみました.ちなみに井上先生は,昨年12月1--2日に開催の日本語用論学会第21回全国大会の2日目に行なわれた第1回 語用論グランプリにて,なんと総合優勝されました.強者です.こちらの右下の勝利の写真を参照.

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2018-12-18 Tue

#3522. 英語史における語順倒置の機能の変遷 [syntax][word_order][inversion][pragmatics]

 Stein は英語の2種類の倒置 (inversion) をとりあげ,それぞれが歴史的にいかなる機能上の変化を遂げてきたかを論じている.Stein (135, 139) の扱った倒置構造は,次の type A と type B である .type A は新しい何かを導入する役割を果たし,type B は否定や限定を強める役割を果たす.いずれも近代英語期に台頭してきたものであり,古英語期の倒置構造が直接に受け継がれたものではない.

[ type A ]

 ・ In came Chomsky.
 ・ Down with the rebound comes . . .
 ・ Beyond it rose the peopled hills.
 ・ Developing offshore drilling in California are two Texas oil men.

[ type B ]

 ・ Rarely did I hear such overtones of gratitude as went into the utterance of this compound noun.
 ・ Not until the Book of Splendour did appear in Spain in the thirteenth century did a formidable metaphysical text on cabalism appear.
 ・ Often did she visit the inhabitants of that gloomy village
 ・ Only of late have I learned about the complexities of subjectivity
 ・ Never did I hear about cabalism.

 これらの倒置構造の歴史的推移は,Stein (146--47) によれば次の通りである.

Prior to the central structural process, the grammaticalisation of SVO, inversion (or not) did have non-propositional meaning, which is best described as 'textual' or discourse meaning, but no affective meaning. . . After the dissolution of the Old English types of inversions, the late Middle English situation shows an incipient tendency for use as a focussing device. The modern developments include the rise of the B type (the emotional type), expressive and subjective in meaning, as well as the rise of the A type, with a discourse-cum-affective type of meaning. The latter type is in part a renaissance of a discourse meaning that was present in the Old English (VSO) pattern, which did not have the affective component. To that extent the development has gone full circle.


 以上をまとめれば,一般的に語順が比較的自由だった古英語では,倒置の機能は談話的なものに特化していたが,SVO語順を指向した中英語では談話的機能は失われて焦点化の機能が発達し,SVO語順が確立した近代にかけては感情的な機能が前面で出てくるとともに,部分的に談話的な機能が復活してきたという流れだ.
 語順倒置の形式ではなく機能の歴史的推移というのも,突っ込んでいくとおもしろそう(だが,難しそう)だ.

 ・ Stein, Dieter. "Subjective Meanings and the History of Inversions." Subjectivity and Sbujectivisation: Linguistic Perspective. Ed. Dieter Stein and Susan Wright. Cambridge: CUP, 129--50.

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2018-12-15 Sat

#3519. 感嘆文と疑問文の近さ [optative][interrogative][exclamation][tag_question][syntax][word_order][construction_grammar][inversion]

 この2日間の記事「#3517. if を使わずに V + S とする条件節」 ([2018-12-13-1]),「#3518. 条件節と疑問文の近さ」 ([2018-12-14-1]) で,統語的・意味論的な観点から「疑問」「接続法」「願望」「条件」の接点を探ってきた.この仲間に,もう1つ「感嘆」というキーワードも参加させたい.
 感嘆文では,疑問文で典型的に起こる V + S の語順がしばしば採用される.Jespersen (499) から例文を挙げよう.

 ・ Sh Merch II. 2. 106 Lord, how art thou chang'd
 ・ Sh Merch II. 3.16 Alacke, what heinous sinne is it in me To be ashamed to be my Fathers childe
 ・ BJo 3.133 what a vile wretch was I
 ・ Farquhar B 321 What a rogue is my father!
 ・ Defoe G 44 what fool must he be now that they have given him a place!
 ・ Goldsm 658 What a fool was I, to think a young man could learn modesty by travelling
 ・ Macaulay H 2.209 What a generation of vipers do we live among!
 ・ Thack N 180 What a festival is that day to her | What (how great) was my surprise when they were engaged!
 ・ Bennett C 2.12 What a night, isn't it?


 最後の例文では付加疑問がついているが,これなどはまさに感嘆文と疑問文の融合ともいうべき例だろう.感嘆と疑問が合わさった「#2258. 感嘆疑問文」 ([2015-07-03-1]) も例が豊富である.
 また,感嘆と願望が互いに近しいことは説明を要しないだろう.may 祈願文が V + S 語順を示すのも,感嘆の V + S 語順と何らかの関係があるからかもしれない.
 may 祈願文と関連して,Jespersen (502) に,Dickinson, European Anarchy 74 からの興味深い例文があったので挙げておこう.

"The war may come", says one party. "Yes", says the other; and secretly mutters, "May the war come!"


 may 祈願は,疑問文に典型的な V + S 語順を,願望や感嘆のためにリクルートした例と考えてみるのもおもしろそうだ.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 5. Copenhagen: Munksgaard, 1954.

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2018-12-14 Fri

#3518. 条件節と疑問文の近さ [conditional][word_order][syntax][assertion][construction_grammar]

 昨日の記事「#3517. if を使わずに V + S とする条件節」 ([2018-12-13-1]) で,V + S の条件節(動詞は典型的に接続法)の発達について取りあげた.現代英語で最も普通に V + S の語順をとるのは疑問文である.とすると,条件節と疑問文の間に何らかの接点があるのかないのかという疑問が湧くだろう.これについて考えてみよう.
 条件節と疑問文は,確かに近い関係にある.まず,間接疑問を導く接続詞に if が用いられることを思い起こしたい.He asked if I liked Chinese food. (彼は私に中華料理が好きかと尋ねた」や Let me know if she is coming 「彼女が来るか知らせてください」など.後者では if が「〜かどうか」の名詞節を導くのか,「〜ならば」の副詞節を導くのかは文脈に応じて異なり得るという点で両義的だが,まさにこの両義性こそが「条件」と「疑問」の接点となるのである.日本語訳に現われる係助詞「か」も,典型的に疑問を表わすことに注意.
 意味論的あるいは論理的にいえば,条件節も疑問文も "nonassertive" であるという点で共通している.つまり,ある命題について断定していないということである.命題とは別の可能性も含意するという点で,"alternative possible worlds" を前提としていると言い換えてもよいだろう.両者が異なるのは,条件節はそれだけでは何の発話行為にもならないが,疑問文ではそれだけで「疑問・質問」という発話行為となることだ.ついでにいえば,「願望」も命題の表わす事態がまだ起こっていないことを前提とするので nonassertion のもう1つの典型である.may 祈願文などは単独で「願望」の発話行為となる点で疑問文と共通する.
 このように考えてくると,なぜ条件節が疑問文と同様に V + S の語順をとるのか,おぼろげながら両者の接点が見えてくるのではないか.昨日の記事でも示唆した通り,「疑問」「接続法」「願望」「条件」というキーワードは互いにリンクしているようだ.
 (non)assertion については,「#679. assertion and nonassertion (1)」 ([2011-03-07-1]),「#680. assertion and nonassertion (2)」 ([2011-03-08-1]),「#950. Be it never so humble, there's no place like home. (3)」 ([2011-12-03-1]) の記事を参照されたい.

 ・ Leuschner, Torsten and Daan Van den Nest. "Asynchronous Grammaticalization: V1-Conditionals in Present-Day English and German." Languages in Contrast 15 (2015): 34--63.

Referrer (Inside): [2018-12-15-1]

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2018-12-13 Thu

#3517. if を使わずに V + S とする条件節 [syntax][word_order][conjunction][construction_grammar][conditional][subjunctive][inversion]

 現代英語には,条件節を表わすのに if を用いずに,主語と動詞の倒置で代用する構文がある.例文を挙げよう.

 ・ Were I to take over my father's business, I would make a drastic reform.
 ・ Had World War II ended two years earlier, how many lives would have been saved!
 ・ Should anything happen to him, call me at once.


 現代英語では,were, should, had で始まるものに限定されており,意味的にも反事実的条件に強く傾いているが,かつては疑問文の形成と同様に一般の動詞が前置されることもあったし,中立的条件にも用いられた.Leuschner and Nest (2) より,古英語や中英語からの例を挙げよう.

 ・ Fulga nu se mete ðære wambe willan, & sio wamb ðæs metes, ðonne towyrpð God ægðer. (YCOE: Cura Pastoralis, late 9th cent.)
   "If the food now follow.SUBJ the will of the belly and the belly that of the food, God annihilates both."
 ・ Do þu hit eanes awei; ne schalt tu neauer nan oðer swuch acourin. (PPCME2: Hali Meidhad, c. 1225)
   "If you get rid of it once, you will never (re)gain anything like it."
 ・ Deceyueth me the foxe / so haue I ylle lerned my casus (PPCME2: Caxton's History of Reynard the Fox, 1481)
   "If the fox deceives me, I have learned my lesson badly."


 最初の2つの例文において,前置されている動詞は接続法の形式である.
 なぜ条件節を表わすのに倒置が起こるのかという問題については,Jespersen (373--74) が「疑問文からの派生」説を紹介している.

A condition is very often denoted by a clause without any conjunction, but containing a verb placed before its subject. This construction, which is found in all the Gothonic language, is often explained from a question with implied positive answer: Will you come? [Yes, then] we can start at once.---A clear instance of this is AV 1. Cor. 7.27 Art thou bound vnto a wife? seeke not to bee loosed. Art thou loosed from a wife? seeke not a wife.


 しかし,Jespersen (374) は,「疑問文からの派生」説だけでは説明しきれないとも考えており,続けて「接続法としての用法」説の可能性にも言及している.

But interrogative sentences, though undoubtedly explaining much, are not the only sources of our construction. Pretty frequently we find a subjunctive used in such a way that it cannot have arisen from a question, but must be due to a main sentence expressing a desire, permission, or the like: AR 164 uor beo hit enes tobroken, ibet ne bið hit neuer | Towneley 171 Gett I those land lepars, I breke ilka bone | Sh Merch III. 2.61 Liue thou, I liue with much more dismay | Cymb IV. 3.30 come more, for more you're ready | John III. 3.31 and creep the time nere so slow, Yet it shall come, for me to doe these good.


 「疑問」「接続法」「願望」「条件」というキーワードが,何らかの形で互いに結びついていそうだという感覚がある.VS 条件節の発達は,最近取り上げてきた may 祈願の発達の問題にも光を投げかけてくれるかもしれない (cf. 「#3515. 現代英語の祈願文,2種」 [2018-12-11-1],「#3516. 仮定法祈願と may 祈願の同居」 ([2018-12-12-1])) .

 ・ Leuschner, Torsten and Daan Van den Nest. "Asynchronous Grammaticalization: V1-Conditionals in Present-Day English and German." Languages in Contrast 15 (2015): 34--63.
 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 5. Copenhagen: Munksgaard, 1954.

Referrer (Inside): [2018-12-15-1] [2018-12-14-1]

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2018-12-11 Tue

#3515. 現代英語の祈願文,2種 [optative][subjunctive][auxiliary_verb][syntax][word_order][punctuation][may]

 細江 (158--59) によれば,現代英語には,現在または未来の「ひたすらな願い」を表わす祈願法 (optative) の形式として,2種が認められる.1つは仮定法(歴史的な接続法 (subjunctive))を用いる方法(以下の (a)),もう1つは語頭に may を立てて「主語+動詞」を続ける方法である(以下の (b)).それぞれを示そう.

(a) 通常主語を文頭に立て,叙想法現在の動詞を述語とする.ただし,この際強勢のため形容詞・副詞などを先に立て主語と述語とを転置することも多い.たとえば,
   Thy kingdom come. Thy will be done.---Matthew, vi. 10.
   God bless and reward you for all your kindness.---Stowe.
   God forgive me!---Miss Mulock.
   Long live the Duke!---Charles Reade.
   Mine be a cot beside the hill!---Rogers.
   So be it, O Queen!---H. Hoggard.
   So help me God!---Hardy.
 このようなものは昔は常に用いられた形ではあるが,現今では詩および少数の固定した言い方のほかはあまり多く用いられない.しかし,ここに一つ特に注意すべきは,次のような呪罵の語では今なお普通に用いられるということである.
   Murrain take thee!---Scott.
   Devil take me!---Lamb.
   Generosity be hanged!---Thackeray.
   Dauphin be damned!---Shaw.
(b) 前記の場合,叙想法代用として may+不定詞を用いる.この場合に may はいつも主語より前に立つものである.たとえば,
   May no evil dream disturb my rest!---Evening Hymn.
   May he rest in peace!---Irving.
   So may it be for ages!---William Morris.


 仮定法の利用にせよ法助動詞 may の利用にせよ,法 (mood) が強く関わっていることがわかる.しばしば,祈願「法」 (optative mood) と呼ばれる所以である.また,(a) の場合は随意だが,(b) の場合は必ず語順の倒置が起こるという点も特徴的だ.これは,通常の叙述ではなく祈願という有標の発話行為であることを示すマーカーとして機能しているものではないかと思われる.書き言葉では,通常感嘆符 (exclamation mark) を伴うという特徴もある.
 なお,may に対応するドイツ語の mögen の接続法第1式も,may と同様の統語的振る舞いを示す.たとえば,Möge das neue Jahr viel Glück bringen! (新しい年が多幸でありますように!」,Möge er glücklich werden! (彼に幸あれ!)など.

 ・ 細江 逸記 『英文法汎論』3版 泰文堂,1926年.

Referrer (Inside): [2018-12-13-1] [2018-12-12-1]

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2018-09-11 Tue

#3424. 祈願の might (2) [syntax][word_order][auxiliary_verb][optative][may]

 昨日の記事 ([2018-09-10-1]) の記事に続いて,祈願の might の話題.該当の構文が,Visser (III, §1681) に "Faire myght thee befalle!" タイプとして取り上げられている.古英語から現代英語までの例文が挙っており,O(h)!that が先行する例を含め,構文の発達を考える上で貴重な一覧となっている.以下に引用する.

・ Ælfred, Boeth. (Sedgefield) 34, 6, Eala ðæt ure tida nu ne mihtan weorðan swilce!
・ Blickl. Hom. 69, 7, To hwon sceolde ðeos smyrenes ðus beon to lose ȝedon? eaþe heo mehte beon ȝeseald to þrim hunde peneȝa.
・ c1400--50 Alexander (Ashm.) 1605, 'Ay moȝt he lefe' quod ilka man twyse (OED).
・ c1460 Towneley Myst. 33, Faire myght the[e] befalle!
・ c1460 Wakefield Miracle Play of the Crucifixion (Everym.) Libr. p. 104, That shall I do, so might I thrive!
・ Ibid. p. 105, 29, as might thou the!
・ Ibid. p. 115, 9, as ever might I thrive!
・ 1530 Palsgrave 84, The optative mode which they vse whan they wisshe a dede to be done, as 'bien parle il', well speke he, or well myght he speke.
・ 1575 Gammer Gurton (in: Manly, Spec. II) V, ii, 8, fye on him, wretch! And euil mought he thee for it (Or mought = mote?).
・ 1589--9 Ben Jonson, The Case Is Altered (Everym.) II, i p. 678, That I might live alone once with my gold! O, 'tis sweet companion!
・ 1596 Shakesp., Merch. of Ven. II, ii, 98, Lord worshipt might be, what a beard hast thou got.
・ 1852 M. Arnold, To Marguerite, Cont'd 18, Oh might our marges meet again! (OED).
・ c1920 W. W. Gibson, Waters of Lethe (Coll. Poems 1926), O that we too might stand Amid unrustling reeds, That banner with dark plumes the shadowy strand! . . . O that we two might glide With eager eyes . . . Into the mist that veils the further side!
・ 1931 R. L. Binyon, Prayer (Coll. Poems 1931), O might my love that in one heart has found such hope to cherish . . . O might it grow Till in this clear profound Part of thy peace were seen (Kr).


 例文を全体的に見渡すと,might の祈願文は may の祈願文とおよそ同様の統語構造で用いられており,昨日の記事で OED に依拠して紹介した「条件節の倒置」説だけでは,might 構文の発達の全容は説明づけられないように思われる.
 1530年の例文には構文に関するメタなコメントが含まれており,注目に値する.そこでは,might 構文が接続法の代替表現として解されている.

 ・ Visser, F. Th. An Historical Syntax of the English Language. 3 vols. Leiden: Brill, 1963--1973.

Referrer (Inside): [2019-01-28-1]

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2018-09-10 Mon

#3423. 祈願の might (1) [syntax][word_order][auxiliary_verb][optative][oed][may]

 現代英語では廃れているといってよいが,中英語から近代英語にかけて,祈願の may ならぬ祈願の might という用法があった.OED の may, v.1 の語義24で取り上げられているのを読んで知った.OED より引用しよう.

24. Used (since Middle English with inversion of verb and subject) in exclamatory expressions of wish (sometimes when the realization of the wish is thought hardly possible). poet. Perhaps Obsolete.
     This appears to have developed from the hypothetical use (sense 20a).

c1325 (?c1225) King Horn (Harl.) (1901) 166 (MED) Crist him myhte blesse.
c1450 (?a1400) Wars Alexander (Ashm.) 1607 (MED) Ay moȝt [a1500 Trin. Dub. mot] he lefe, ay moȝt he lefe, þe lege Emperoure!
1600 Shakespeare Merchant of Venice ii. ii. 88 Lord worshipt might he be, what a beard hast thou got.
1720 Pope tr. Homer Iliad VI. xxiv. 261 Oh!..might I..these Barbarities repay!
1852 M. Arnold To Marguerite in Empedocles 97 Now round us spreads the watery plain---Oh might our marges meet again!


 祈願の might の出現と発達に関連して,祈願の may がどのように関与しているのか,していないのかは,おもしろい問題である.上記の OED の説明として言及されている語義20aというのは条件節における用法であり,つまり If S might V の代替表現としての Might S V という統語構造のことを指す.may 祈願文についてこのような発達の説明は聞いたことがないので,つまるところ,OEDmightmay の祈願文はそれぞれ異種の経路で発達したと考えていることになる.確かに,1720年の might I の例のように1人称単数が主語に用いられるケースは may 祈願文では見たことがなく,このような might の用法は厳密にいえば「祈願」とは別の発話行為を表わしているのかもしれない.
 ただし,might には倒置されていない用例も見られることから,「条件節の倒置」説だけではすべてを説明することはできなさそうだ.あるいは,その後の段階で may の祈願文と合流したという可能性もあるかもしれない.祈願の might は現代までに事実上の廃用となっているというが,なぜ廃用となったのかにも興味がある.

Referrer (Inside): [2019-01-28-1] [2018-09-11-1]

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