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最終更新時間: 2019-02-17 07:05

2017-03-20 Mon

#2884. HiSoPra* に参加して (2) [academic_conference][historical_pragmatics][pragmatics][sociolinguistics][history_of_linguistics]

 昨日の記事[2017-03-19-1]に続いて,3月14日に参加した HiSoPra* の話題.大討論会「社会と場面のコンテクストから言語の歴史を見ると何が見えるか?―歴史社会言語学・歴史語用論の現在そして未来」で,10分程度の発言の機会をいただいた.僭越ながら私が掲げた「テーゼ」は,「21世紀の歴史社会言語学は,古くからある問題に新たな衝撃を与え,言語変化を含む歴史言語学の諸問題に活気をもたらすものである」というもの.特に資料もなしでの口頭発表だったので,以下に備忘録的に内容の概要を残しておきたい.
 テーゼをさらに短く要約すると,「古い問題に対する新しいアプローチ」である.これはいろいろなところで聞くフレーズかもしれないが,歴史社会言語学・歴史語用論について,私が考えていることを端的に表現すると,これに行き着く.特に英語史の分野では,HiSoPra 的な研究は連綿と続いてきており,知見も蓄積されてきている.日本語史の立場から,もう1人の討論者である青木氏が「とっくにやってる」と述べた通り,英語史でも「とっくにやってる」のである.ただ,「歴史社会言語学」や「歴史語用論」というラベルが貼られていなかっただけである.しかし,ここで問題は,「たかがラベル」なのか「されどラベル」なのか,である.実際のところは「たかが」かつ「されど」の解釈が正解だと思っているが,討論会の題に「未来」が入っていることもあり,新しい分野としてのラベル貼りは重要だという方向で議論を運んだ.「とっくにやってる」こと,すなわち既存の研究に名前と場所を与えることによって,新たな見方や対し方が生まれ,今まで見えなかった周辺の問題との関連が見えるようになり,思いも寄らない化学反応が生じてくる可能性がある.
 18世紀末からの近代言語学の歴史は,「歴史的視点 vs 非歴史視点」「中心領域 vs 周辺領域」の2つの対立軸でみると,きれいに整理できる.以下のマトリックスで表わされるように,19世紀から20世紀後半にかけて,言語学の主たる関心は I → II → III の順序で変化してきて,21世紀に残されたのは第IVステージしかない.このステージは,空白ではあるが,未知のものではない.既存の2つの項「歴史的視点」「周辺領域」を掛け合わせることによって,必然的に埋まるはずの空白である.しかし,意識的な2項の掛け合わせは,歴史上初のものであり,その意味において「新しい」とは言える(以下,伏せ字部分をクリック).

 中心領域(音声,音韻,形態,統語,意味)周辺領域(社会,語用)
非歴史的視点II. 共時的言語理論(構造主義,生成文法)(20世紀)III. 社会言語学,語用論など(20世紀後半)
歴史視点I. 比較言語学,文献学(19世紀)IV. 歴史社会言語学,歴史語用論など (21世紀)


 英語史の分野で蓄積されてきた多くの研究を,このマトリックスのなかに一つひとつプロットしていくと,第IV領域にも少なからぬ点が打たれるだろう.その意味では「新しい」研究分野ではないとも言えるのだが,これまでそこに名前がつけられていなかったので位置づけがぼんやりしていたのである.「第I領域や第III領域の周辺部」という否定的な位置づけしか与えられていなかった.それが,「歴史社会言語学」や「歴史語用論」などの積極的なラベルを与えられることによって,居場所が確定することになった.
 こんな比喩はどうだろうか.これまで,第I領域や第III領域という固まった星から宇宙空間へ漏れ出たチリのようなものとしてしか認識されてこなかった諸問題が,徐々に集まって,今や星雲のようなものとしてまとまる兆しを示すようになってきた.まだ固い星となるには材料も重心も足りないが,少なくともチリではなく星雲となってきたのだから,「○○星雲」ほどの名前を与えてあげてもよいのではないか.(共時的な社会言語学も語用論も,数十年前に駆け出し始める以前には,星でもなければ,星雲でもなく,それこそチリ扱いされていたのだ!)
 さて,歴史社会言語学や歴史語用論は,第IVステージであり,(2つの軸だけの世界で考えれば)ファイナルステージとなる.埋まるべくして埋まる空白という見方をすれば消極的だが,後発ゆえの強みをもつと捉えれば積極的である.第IVステージは,後発であるがゆえに,第I, II, IIIステージの知見をすべて利用することができる恵まれたポジションにいる,と考えたらどうだろうか.第IVステージは,マトリックスの位置づけとしては「歴史的・周辺的」と特徴づけられる右下の1領域を占めるにすぎないが,言語学史上の流れを踏まえながら考えれば,右下領域を中心としつつ,他の3領域全体にもにらみを利かせられる有利な立場にいるとも言える.この意味で,総合的言語観を提供するホープかもしれないのだ.とにかく,後発の強みを活かすことである.
 以上のように,私の考える HiSoPra の意義は「古い問題に対する新しいアプローチ」である.

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2017-03-19 Sun

#2883. HiSoPra* に参加して (1) [academic_conference][historical_pragmatics][pragmatics][sociolinguistics]

 3月14日に学習院大学にて,歴史社会言語学・歴史語用論の研究会 HiSoPra* (= HIstorical SOciolinguistics and PRAgmatics) の第1回研究会が開催された.2つの比較的新しい,緩く関連づけられた分野における国内初のフォーラムである.40名ほどの参加者があり,2つの個人発表と,「社会と場面のコンテクストから言語の歴史を見ると何が見えるか?―歴史社会言語学・歴史語用論の現在そして未来」と題する2時間にわたる「大討論会」がプログラムに組まれていた.
 私は,討論会の5名の指定討論者の1人ということで参加する機会をいただいた(学習院の高田博行先生をはじめ,開催と準備に関わる各位に感謝いたします).各指定討論者が,この分野の現在と未来にむけて「提題」を提示し,それをネタにフロア全体で議論し,意見交換して盛り上がる,という趣旨の会である.司会の先生方も裁き方が難しかったのではないかと思うけれども,事前打ち合わせも特になかったために本音トークや自由意見が活発に飛び交い,刺激的な会となった.
 いくつかの議論がなされたが,(1) 中黒やスラッシュで結ばれた「歴史社会言語学」と「歴史語用論」がいかなる関係にあり,各々がいかに定義づけられるのか,(2) これらが(特に日本語史や英語史の分野において)本当に「新しい」分野なのか,(3) (少なくとも名前としては)新しいこれらの学問分野は,どのような新たな知見をもたらしてくれると見込まれるのか,といったところが主たる話題だった.
 討論を通じて,上記のような疑問への「答え」が必ずしも明らかになったわけではないが,この分野に緩く関係している研究者諸氏の間に様々な見解があり,そうした見解が諸々の言葉に対する姿勢や学問的伝統を反映しているのだということを知ることができた.この点だけでも,大きな収穫だったのではないか.
 少なくとも,「○○さんの研究って,基本的に HiSoPra ぽいよね」などと一言で表現できるようになるのはとても便利だと思っている.

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2016-09-23 Fri

#2706. 接辞の生産性 [productivity][word_formation][affixation][hapax_legomenon][lexicology][morphology][neologism][academic_conference]

 先日,東北大学大学院情報科学研究科「言語変化・変異研究ユニット」主催の第3回ワークショップ「内省判断では得られない言語変化・変異の事実と言語理論」に参加してきた(主催の先生方,大変お世話になりました!).形態論がご専門の東北大学の長野明子先生の発表「英語の接頭辞 a- の生産性の変化について」では,接辞の生産性 (productivity) の諸問題や測定法について非常に分かりやすく説明していただいた.今回の記事では,長野先生の許可を得て,そのときのハンドアウトから「生産性に関する仮説」を要約したい.
 接辞の生産性には availability と profitability が区別される.前者は,その接辞を用いた語形成規則が存在することを指し,それにより形成される潜在的な語がある状態をいう.それに対して後者は,その語形成規則が実際に使用され,単語として具現化している状態をいう.つまり,接辞の生産性を考える際には,新語を作る潜在能力と実際に新語を作った顕在能力を区別しておく必要がある.
 接辞の生産性の測定ということになると,潜在能力たる availability の測定は難しい.実際の単語として具現化されていないのだから,客観的に測りようがないのである.したがって,せめて顕在能力である profitability を測り,そこから availability を推し量ってみよう,ということになる.profitability の主要な測定法として3つほどが提案されている.いずれも,コーパスや辞書を用いることが前提となっている.

 (1) その接辞をもつ派生語のタイプ数.端的には辞書に登録されていたり,コーパスで文証される単語の語彙素 (lexeme) レベルで数えた個数.
 (2) 特定期間での,その接辞をもつ新語の数.
 (3) その接辞の派生語が hapax_legomenon である確率.ある程度の規模のコーパスにある派生語が1度しか現われないということと,その語形成の生産性の高さとは相関関係にあるとされている(see 「#938. 語形成の生産性 (4)」 ([2011-11-21-1])).

 (1), (2), (3) の測定法には一長一短あり,どれが最も優れているかを決めることはたやすくない.また,これらで測定できる profitability と最終的に求めたい availability との間にいかなる関係があるのかもよく分かっていない.例えば,(1) の値が高くとも availability は高くないとみなせる例がある.例えば,接尾辞 -th, -ment をもつ単語のタイプ数は多いが,現在,生産性のある接辞とはみなすことができないだろう (cf. 「#1787. coolth」 ([2014-03-19-1])) .逆に,(2) の値が低かったとしても,それをもってすぐに availability も低いだろうと予測するのは早計と考えられるケースもある(名詞+動詞の複合など).また,(3) で高い値を示すとしても,母語話者の直観的な生産性とは矛盾するケースがあるようだ.
 母語話者の直観として,生産性なるものがあるらしいことは確かだろう.しかし,それを客観的に測定するにはどうすればよいのか,理論的にも実践的にも問題は残されている.
 生産性の問題については,本ブログでも以下の記事その他で扱ってきたので要参照.「#935. 語形成の生産性 (1)」 ([2011-11-18-1]),「#936. 語形成の生産性 (2)」 ([2011-11-19-1]),「#937. 語形成の生産性 (3)」 ([2011-11-20-1]),「#938. 語形成の生産性 (4)」 ([2011-11-21-1]),「#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか?」 ([2011-09-20-1]),「#940. 語形成の生産性と創造性」 ([2011-11-23-1]),「#2363. hapax legomenon」 ([2015-10-16-1]) .

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2016-09-03 Sat

#2686. ICEHL19 に参加して気づいた学界の潮流など [academic_conference][icehl][etymological_respelling][map]

 2016年8月22--26日にドイツの University of Duisburg-Essen で開催された ICEHL19 (19th International Conference on English Historical Linguistics) に参加した.

Map of Germany (Essen Marked)

 私は,ここ2年間ほど研究している etymological_respelling について "Etymological Spelling Before and After the Sixteenth-Century" という題で発表してきたが,この英語史分野における最大の国際学会に参加することにより,学界の潮流がよく把握できることを改めて認識した.ICEHL19の学会参加と学界の潮流について,東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻の駒場英語史研究会で報告する機会があったので,報告内容の概略を本ブログにも載せておきたい(前回のICEHL18の報告については,「#2004. ICEHL18 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2014-10-22-1]) を参照).以下にICEHL19の研究発表等に関するPDFを挙げておく.

 ・ プログラム
 ・ 研究発表一覧
 ・ ワークショップ一覧
 ・ 発表要旨の小冊子

(1) 学会の沿革

 ・ ICEHL-1 (1979)
 ・ ICEHL-2 (1981, Odense)
 ・ ICEHL-3 (1983, Sheffield)
 ・ ICEHL-4 (1985, Amsterdam)
 ・ ICEHL-5 (1987, Cambridge)
 ・ ICEHL-6 (1990, Helsinki)
 ・ ICEHL-7 (1992, Valencia)
 ・ ICEHL-8 (1994, Edinburgh)
 ・ ICEHL-9 (1996, Poznan)
 ・ ICEHL-10 (1998, Manchester)
 ・ ICEHL-11 (2000, Santiago De Compostela)
 ・ ICEHL-12 (2002, Glasgow)
 ・ ICEHL-13 (2004, Vienna)
 ・ ICEHL-14 (2006, Bergamo)
 ・ ICEHL-15 (2008, Munich)
 ・ ICEHL-16 (2010, Pécs)
 ・ ICEHL-17 (2012, Zurich)
 ・ ICEHL-18 (2014, Leuven)
 ・ ICEHL-19 (2016, Essen)
 ・ ICEHL-20 to come (2018, Edinburgh)
 ・ ICEHL-21 to come (2020, Leiden)

(2) 基調講演

 ・ Gabriella Mazzon (University of Innsbruck) --- Shift in politeness values of English Discourse markers: a cyclical tendency?
 ・ Simon Horobin (University of Oxford) --- 'No gentleman goes on a bus': H. C. Wyld and the historical study of English
 ・ Erik Smitterberg (University of Uppsala) --- Late Modern English: Demographics, Prescriptivism, and Myths of Stability
 ・ Ingrid Tieken-Boon van Ostade (University of Leiden) --- Usage guides and the Age of Prescriptivism
 ・ Daniel Schreier (University of Zurich) --- Reconstructing variation and change in English: the importance of dialect isolates

(3) 研究発表の部屋

 ・ Phonology
 ・ Stress
 ・ Metrical matters
 ・ Inflectional Morphology
 ・ Morphosyntax
 ・ Word-formation
 ・ Lexicon
 ・ Syntax
 ・ Modals/modality
 ・ Semantics
 ・ Pragmatics
 ・ Discourse
 ・ Orthography
 ・ Style
 ・ Texts
 ・ Variation
 ・ Dialects
 ・ Relationships
 ・ Multilingual Texts
 ・ Glosses/Glossaries
 ・ Visual Text
 ・ Grammar and Usage books
 ・ Usage and errors
 ・ Identity
 ・ Types of Change

(4) ワークショップ

 ・ The Dynamics of Speech Representation in the History of English (Peter J. Grund and Terry Walker)
 ・ Intersubjectivity and the Emergence of Grammatical Patterns in the History of English (Silvie Hancil and Alexander Haselow)
 ・ Diachronic Approaches to the Typology of Language Contact (Olga Timofeeva and Richard Ingham)
 ・ Early American Englishes (Merja Kytó and Lucia Sievers)

(5) 学界の潮流など気づいた点

 ・ 前回の ICEHL-18 に見られた「historical sociopragmatics の研究を corpus で行う」という際だった潮流がさらに推し進められている(基調講演とワークショップのメニューを参照).
 ・ 文法化や認知言語学のアプローチも盤石.
 ・ 「周辺的な」変種への関心が一層強化している.
 ・ 「初期の学会では,"Standard English", "phonology", "morphology", "syntax" などがキーワードであり,"corpus", "xxx English", "pragmatics" などは出ていなかった」 (R. Hickey)
 ・ 伝統的でコアな分野である phonology, morphology, syntax なども健在(研究者の出身地や出身大学などとの関連あり?).
 ・ 一方,生成文法は目立たなくなっている.
 ・ 前回に引き続きワークショップが4つ用意されており,充実していた.
 ・ 時代としては,古英語と後期近代英語の話題は多かったが,その間の中英語と初期近代英語は比較的少なかった.
 ・ 言語接触の話題と関連して語源(語彙・意味)の発表が非常に多かった.例えば,
   - "Food for thought: Bread vs Loaf in Old and Early Middle English texts" (Sara M. Pons-Sanz)
   - "Buried Treasure: In Search of the Old Norse Influence on Middle English Lexis" (Richard Dance and Brittany Schorn)
   - "The Penetration of French Lexis in Middle English Occupational Domains" (Louise Sylvester, Richard Ingham and Imogen Marcus)
 ・ 研究チームがプロジェクトを進める場としての学会,という位置づけ.
   - 国際的なメンバーを組んでのワークショップ(後に論文集を出版?).
   - プロジェクトの企画,経過報告,宣伝など.
 ・ 古い問題や「定説」を新しく見直す傾向(例えば,上記の Bread vs Loaf など).
 ・ 日本人による発表が4人と残念ながら少なかった・・・

 国際学会の参加については,「#2327. 国際学会に参加する長所と短所」 ([2015-09-10-1]),「#2326. SHEL-9 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2015-09-09-1]),「#2325. ICOME9 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2015-09-08-1]) なども参照.

Referrer (Inside): [2016-09-09-1]

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2015-09-10 Thu

#2327. 国際学会に参加する長所と短所 [academic_conference][hel_education]

 以下の記事で,国際学会の参加報告を行ってきた.

 ・ 「#2004. ICEHL18 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2014-10-22-1])
 ・ 「#2325. ICOME9 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2015-09-08-1])
 ・ 「#2326. SHEL-9 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2015-09-09-1])

 報告をまとめながら,大学院生や若手研究者の立場に立って,英語史分野に関する国際学会に参加する長所と短所をブレストしてみた.多分に個人的な意見も混じっているが,何かの参考になるかもしれないと思い,箇条書きで綴っておきたい.

[長所]

 ・ 関心を共有する世界中の人々が1つの部屋に集まるので,エネルギー密度が高い
 ・ 世界的研究者の過去・現在の関心が目の前で開陳される(著書を読むきっかけになったり,既読の著書の理解向上にも)
 ・ 発表,司会,懇親会への参加を通じて,学会(学界)の主要人物と知り合えたり,誰が何を研究しているか等を知ることができる
 ・ 日本国内で会う機会の少ない日本人研究者と海外で出会えることもある
 ・ Proceedings に投稿する権利を得られる(論文執筆のペースメーカーに)
 ・ 論文執筆を意識しつつ英語の口頭発表の準備をすることで二度手間を省ける
 ・ 新著購入の割引のチャンスを得られる
 ・ 応募にあたっての敷居は,日本国内の学会と比べて著しく高いわけではない
 ・ (少なくとも私がこれまで出席した国際学会ではどこでも)聴衆が,若手・新人に対して温かく教育的に接してくれる
 ・ 国際的に発表すると自信がつく

[短所]

 ・ 渡航費などの負担
 ・ 開催時期が,日本では学期中など,タイミングがよくないことも
 ・ 応募締切が早い
 ・ 英語で発表する必要がある

 旅行好きであれば,ほかにも他愛もない長所が多数挙げられるはずである.経済的な問題をはじめ短所もあるが,多くの長所を買えると思えば,個人的には安いと思う.国際学会で(も),お会いしましょう.

Referrer (Inside): [2016-09-03-1]

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2015-09-09 Wed

#2326. SHEL-9 に参加して気づいた学界の潮流など [academic_conference]

 昨日の記事「#2325. ICOME9 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2015-09-08-1]) に引き続き,今回は SHEL-9 の学会参加報告を.
 2015年6月5日〜7日にカナダのバンクーバー (University of British Columbia) で開催された DSNA-20 & SHEL-9 Dual Conference への参加報告として,学会の発表や発表者の概要をつかむのに役立つと思われる情報を示す.学会詳細は SHEL-9 (Studies in the History of the English Language) よりアクセス可.

(1) 学会の沿革

 ヨーロッパで開催される国際学会 ICEHL (International Conference on English Historical Linguistics) の北米版.SHEL と ICEHL は毎年交互に開催されることになっているが,SHEL は他の関連学会との抱き合わせとなることが多い.私は初めての参加.SHEL-9 と DSNA-20 で合わせて107の発表と120名の発表者(キャンセルも含め)が4部屋並行で行われた.英語史分野の全体の2/3くらいか.

 ・ 第1回 UCLA (2000)
 ・ 第2回 University of Washington, Seattle (2002)
 ・ 第3回 University of Michigan, Ann Arbor (2004); jointly with GLAC (= Germanic Linguistics Annual Conference)
 ・ 第4回 University of Northern Arizona (2006)
 ・ 第5回 University of Georgia, Athens (2007)
 ・ 第6回 Universities of Calgary and British Columbia at Banff, Alberta (2009); jointly with GLAC
 ・ 第7回 Indian University, Bloomington (2012); jointly with GLAC
 ・ 第8回 Brigham Young University in Provo, Utah (2013)
 ・ 第9回 University of British Columbia, Vancouver (2015); held jointly with DSNA (= Dictionary Society of North America Meeting)
 

(2) 基調講演

 ・ Nikolaus Ritt (Vienna University)
    "Language Change as Cultural Evolution: From Theory to Practice"
 ・ Charlotte Brewer (Oxford University)
    "Mapping the OED: The Changing Record of the English Language"
 ・ Colette Moore (University of Washington)
    "Sociopragmatics in Middle English Manuscripts"

(3) 研究発表の部屋(下線は,今回の学会あるいは現在の潮流に照らして特徴的と思われた部屋)

 ・ OED
 ・ Bilingual Lex I & II
 ・ Medieval English
 ・ HEL Workshop
 ・ Lex in South Asia
 ・ Metre and Stress
 ・ Lex in Canada
 ・ Historical Special Registers
 ・ Language Contact I & II
 ・ Phonology Workshop
 ・ Earlier Modern English
 ・ Lex. Semantics & Usage
 ・ Contact and Onomastics
 ・ Syntax & Lexis
 ・ Middle English
 ・ Literary Sources Workshop
 ・ Language Rights
 ・ Long-Term Change
 ・ Online Lexis
 ・ Varieties & Diachrony
 ・ Word-Formation
 ・ Sketch Engine Workshop
 ・ Old English
 ・ Early Phonology
 ・ Special Lexicography
 ・ Grammatical Change
 ・ Digital Resources
 ・ Caribbean Lexicography
 ・ MOOC Workshop (Corpus linguistics: Method, Analysis, Interpretation)
 ・ Lex. Aspects
 ・ Usage
 ・ History of Lexicography

(4) 学会の潮流など気づいた点

 ・ 英語史分野に限っても,ICEHL と同様に幅広いジャンルが扱われている
 ・ コーパスや電子媒体の利用に関する方法論への関心が強かった
 ・ 北米ならではの関心
    - 特定の地域変種 (Caribbean and Asian varieties)
    - カナダ英語部屋
    - 英語教育のワークショップ
    - 言語権
 ・ 他学会との共催で化学反応も?
 ・ 予想していたよりもヨーロッパからの参加者が多く,意外と国際色豊か

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2015-09-08 Tue

#2325. ICOME9 に参加して気づいた学界の潮流など [academic_conference][map]

 先日,東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻主催の駒場英語史研究会で,今年度の国際学会への参加報告をする機会があった.昨年度の「#2004. ICEHL18 に参加して気づいた学界の潮流など」 ([2014-10-22-1]) に引き続き,今年度は春に ICOME9SHEL-9 に参加してきたので,本ブログ上でもその報告をしたい.今日は ICOME-9 について.
 2015年4月29〜5月3日にポーランドのブロツワフ (Philological School of Higher Education) で開催された The 9th International Conference on Middle English (ICOME9) へ参加してきた.以下に,学会の発表や発表者の概要をつかむのに役立つと思われる情報を示す.

Map of Poland, Wroclaw Marked

(1) 学会の沿革

 Jacek Fisiak 教授の立ち上げた,中英語に関する文学と語学の国際学会.今回と合わせて過去3回(第7回,第8回,第9回)参加したが,参加者は毎回50〜70名ほど.文学系に比して語学系が多いが,フィロロジーの色彩が濃い.今回は,講演と個人研究発表を含めて3部屋並行で,49の発表と69名の発表者(キャンセルも含め)があった.

 ・ 第1回 Rydzyna, Poland (1994)
 ・ 第2回 Helsinki, Finland (1997)
 ・ 第3回 Dublin, Ireland (1999)
 ・ 第4回 Vienna, Austria (2002)
 ・ 第5回 Naples, Italy (2005)
 ・ 第6回 Cambridge, UK (2008)
 ・ 第7回 Lviv, Ukraine (2011)
 ・ 第8回 Murcia, Spain (2013)
 ・ 第9回 Wrocław, Poland (2015)
 

(2) 基調講演

 ・ Hans Sauer (University of Munich) and David Scott-Macnab (University of Jahannesburg)
    "The Names of a Thousand-and-One Hunting-Hounds in a 15th-Century List"
 ・ Marcin Krygier (Adam Mickiewicz University, Poznan)
    "Laȝamon's Foreigners"
 ・ Michiko Ogura (Tokyo Woman's Christian University, Japan)
    "What Really Happened to 'Impersonal' and 'Reflexive' Constructions in Medieval English"
 ・ Rafał Borysławski (University of Silesia, Sosnowiec)
    "'Dreaming of the Middle Ages'?: Dream-Visions and Transgression from Marie de France to Chaucer"

(3) 特別セッション

 ・ The recipe in the history of English (cf. Bator, Magdalena. Culinary Verbs in Middle English. Frankfurt am Main: Peter Lang, 2014.)
 ・ Translating Middle English literature

(4) 研究発表者の所属研究機関の国籍

以下は,研究発表者の所属機関の国別分布.日本勢も健闘している.

        Poland (33) ************************************
       Germany ( 6) ******
         Japan ( 4) ****
       Austria ( 3) ***
        France ( 3) ***
        Norway ( 3) ***
         Spain ( 3) ***
       Belgium ( 2) **
        Russia ( 2) **
   Switzerland ( 2) **
       Ukraine ( 2) **
           USA ( 2) **
       Finland ( 1) *
         Italy ( 1) *
  South Africa ( 1) *
United Kingdom ( 1) *

(5) 学会の潮流など気づいた点

 ・ ポーランド人を中心としたスラブ系の研究者と交わる機会
    - 北米・西欧以外での伝統ある英語史研究の伝統 (cf. Jacek Fisiak)
    - 日本国内,あるいは国際学会でも開催地によっては出会いにくい
    - 日本人研究者を認知している
    - 伝統的に形態や語彙に分野に強い
 ・ 大きすぎず,小さすぎず,ちょうどよい規模の学会
 ・ 語学・文学が混合しており,その点では日本中世英語英文学会の雰囲気に近い
 ・ 前回と今回より,開催日程が8月から GW へ移動

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2014-12-10 Wed

#2053. 日本中世英語英文学会第30回大会のシンポジウム "Does Spelling Matter in Pre-Standardised Middle English?" を終えて [academic_conference][etymological_respelling][spelling]

 今日の記事は,報告というか,感謝というか,宣伝というか,そんな記事です.
 先週末の土日に,日本中世英語英文学会第30回大会が同志社大学で開催されました.その土曜日の午後に,2013年に Does Spelling Matter? を上梓したオックスフォード大学の Simon Horobin 教授を特別ゲストとして招き,"Does Spelling Matter in Pre-Standardised Middle English?" と題するシンポジウムを催しました.そのシンポジウムの司会(と発表者)の役を務めさせていただきましたが,当日は大勢の方に会場にお越しいただきました.大会関係者の方々も含めて,深く御礼申し上げます.
 さて,今日はそのシンポジウムに関連して,いくつか話題を提供します.Simon Horobin 教授については,本ブログでもいろいろなところで参照してきました(cf. Simon Horobin) .特に著書 Does Spelling Matter? からは英語綴字に関する話題を引き出しては,本ブログでも取り上げてきたので,大変お世話になった(多分今後もお世話になる)本です.実は,その Horobin 教授自身も2012年より Spelling Trouble と題するブログを書き綴っています.かなりおもしろいので,ぜひ購読をお勧めします! 本人も書いていて楽しいと述べていました.
 シンポジウムで私が話したのは,本ブログでもたびたび扱ってきた語源的綴字 (etymological (re)spelling) についてでした.これまでばらばらに書き集めてきたことを少し整理して示そうと思ったわけですが,まとめるにしてもまだまだ多くの作業が必要なようです.関心のある方は,これまでに書きためてきた個々の記事を是非ご参照ください.関連記事はこれからも書いていこうと思います.セッションで質疑応答くださった方々,及びその後に個人的にコメントをくださった方々には感謝いたします.
 また,シンポジウムでは,Horobin 教授が著書を出されたときから私もずっと気になっていた質問 "Does Spelling Matter?" に対する答えが明らかにされました.結論からいえば,"Yes" ということでした.隣に座っていた私も連鎖的に "Yes" と答え,他のパネリストの新川先生も高木先生も持論に即してお答えになっていました.いずれにせよ,綴字1つとっても十分におもしろい英語史上のテーマになり得ることを,改めて確認し確信しました.「綴字の社会言語学」 (sociolinguistics of spelling) なるものを構想することができるのではないかと・・・.
 いずれにしましても,大会関係者のすべての方々へ,ありがとうございました!

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.

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2014-10-22 Wed

#2004. ICEHL18 に参加して気づいた学界の潮流など [academic_conference][historical_pragmatics][icehl]

 2014年7月14--18日にベルギーのルーベン (KU Leuven) で開催された ICEHL18 (18th International Conference on English Historical Linguistics) に参加してきた.私も "The Ebb and Flow of Historical Variants of Betwixt and Between" というタイトル (cf. ##1389,1393,1394,1554,1807) でつたない口頭発表をしてきたが,それはともかくとして英語史分野での最大の国際学会に定期的に参加することは,学界の潮流をつかむ上でたいへん有用である.先日,学会参加を振り返って英語史研究の潮流について気づいた点を簡易報告としてまとめる機会(←駒場英語史研究会)があったので,その要点を本ブログにも掲載しておきたい.いずれも粗い分析なので,あくまで参考までに.

(1) Plenary talks

 1. Robert Fulk (Indiana University, Bloomington)
  English historical philology past, present, and future: A narcissist's view
 2. Charles Boberg (McGill University)
  Flanders Fields and the consolidation of Canadian English
 3. Peter Grund (University of Kansas)
  Identifying stances: The (re)construction of strategies and practices of stance in a historical community
 4. María José López-Couso (University of Santiago de Compostela)
  On structural hypercharacterization: Some examples from the history of English syntax

(2) Rooms

 ・ Code-switching & Scribal practices
 ・ Discourse & Information structure
 ・ Dialectology & Varieties of English
 ・ Grammaticalization (Noun Phrase)
 ・ Grammaticalization (Verb Phrase)
 ・ Historical sociolinguistics
 ・ Lexicology & Language contact
 ・ Morphology & Lexical change
 ・ Phonology
 ・ Pragmatics & Genre
 ・ Reported speech
 ・ Syntax & Modality
 ・ VP syntax

(3) Workshops

 ・ Cognitive approaches to the history of English
 ・ Early English dialect morphosyntax
 ・ Exploring binomials: History, structure, motivation and function
 ・ (De)Transitivization: Processes of argument augmentation and reduction in the history of English

(4) 研究発表のキーワード

 以下は、ICEHL18での講演、個人研究発表、ワークショップでの発表、ポスター発表を含めた166の発表(キャンセルされたものを除く)の内容に関するキーワードとその分布を整理したもの.キーワードは、各発表につきタイトルおよび(実際に参加したものについては)内容を勘案したうえで、数個ほど適当なものをあてがったもので、多かれ少なかれ私の独断と偏見が混じっているものと思われる.

           syntax (48)  ********************************************************
                ME (38) ********************************************
              ModE (30) ***********************************
                OE (27) *******************************
             genre (23) **************************
        pragmatics (22) *************************
            corpus (16) ******************
        morphology (14) ****************
grammaticalisation (13) ***************
         semantics (13) ***************
      construction (12) **************
      dialectology (12) **************
         discourse (10) ***********
  sociolinguistics ( 8) *********
        lexicology ( 7) ********
        inflection ( 6) *******
         phonology ( 6) *******
           contact ( 5) *****
          modality ( 5) *****
            deixis ( 4) ****
        derivation ( 4) ****
        manuscript ( 4) ****
        stylistics ( 4) ****
    code-switching ( 4) ****
           Chaucer ( 3) ***
         cognitive ( 3) ***
      grammatology ( 3) ***
            scribe ( 3) ***
            Caxton ( 2) **
         etymology ( 2) **
        generative ( 2) **
      lexicography ( 2) **
               OED ( 2) **
         phonetics ( 2) **
            runics ( 2) **
     Scots_English ( 2) **
  subjectification ( 2) **
           variety ( 2) **
  American_English ( 1) *
  Canadian_English ( 1) *
     Irish_English ( 1) *
         diffusion ( 1) *
     evidentiality ( 1) *
            gender ( 1) *
       methodology ( 1) *
           metrics ( 1) *
        onomastics ( 1) *
       preposition ( 1) *
   standardisation ( 1) *
          typology ( 1) *

(5) 研究発表者の所属研究機関の国籍

 のべ研究発表者(1発表に複数の発表者という場合もあり)の所属機関の国別の分布.日本勢も健闘しています!

           Germany (34) ***************************************
            Poland (18) *********************
           England (17) *******************
       Switzerland (15) *****************
           Belgium (13) ***************
             Japan (13) ***************
       Netherlands (13) ***************
          Scotland (11) ************
           Finland (10) ***********
             Spain (10) ***********
                US ( 9) **********
            Norway ( 5) *****
            France ( 4) ****
           Austria ( 3) ***
             Italy ( 3) ***
            Canada ( 2) **
           Hungary ( 2) **
            Sweden ( 2) **
          Bulgaria ( 1) *
            Greece ( 1) *
         Hong_Kong ( 1) *
               UAE ( 1) *
           Ukraine ( 1) *
             Wales ( 1) *


 (4) と (5) の情報をまとめてタグクラウドで表現.

ICEHL18 Keywords in Tag Cloud

(6) 学会の潮流など気づいた点

 ・ ここ数年の傾向として,従来のコアな研究分野 (syntax, morphology, etc.) に加え,pragmatics, corpus, grammaticalisation, construction, sociolinguistics, contact などの関心が成長してきている.とりわけ,「historical sociopragmatics の研究を corpus で行う」という際だった潮流が感じられる.
 ・ ワークショップとして組まれていたということもあるが,cognitive, grammaticalisation, modality にみられる認知的なアプローチも着々と地歩を築いている(直近数回のICEHLでは意外と目立っていなかったという印象).
 ・ generative は減少してきているものの,持続.
 ・ 上記の潮流や流行がある一方で,伝統的な研究分野 (dialectology, phonology, manuscript, Chaucer, etc.) は盤石・健在.
 ・ 「周辺的」な分野 (varieties of English, code-switching, runics, onomastics, standardisation, etc.) も多種多様にみられ,英語史分野の学会として最大であるがゆえに(?)"inclusive" という印象を新たにした.なお,日本人発表者の間でも発表内容は多種多様.
 ・ 師匠と弟子によるチーム研究発表という形式は以前からあったが,それ以外にも複数名(しばしば多国籍)による研究発表が多くなってきている.コーパス編纂に共同作業が不可欠であることや,そのようなコーパスを基盤にした研究書の出版が多くなってきていることとも関係しているか?多国籍グループ研究が成長してきている印象.
 ・ ワークショップの試みはICEHLではおそらく初のもので,cognitive のような広いものから,binomials のようなピンポイントのものまであり,充実していた様子.
 ・ コーパス使用は完全に定着し,過半数の研究(7〜8割方という印象)が何らかのコーパス使用に基づいていたのではないか.近代英語に関しては COHA や Google Books Ngram Viewer などの巨大コーパスで大雑把に予備調査し,そこから問題を絞り込むというスタイルがいくつかの発表で見られた.
 ・ 個人的には4日目(7月17日)の午前中の "Lexicology & Language contact" 部屋の人称代名詞関連3発表が刺激的だった.特に Lass & Laing のコンビによる,she の起源という積年の話題に決着をつけんという意気込みがものすごく,今回私が出席した発表のなかではオーディエンスの入りも最多で,質疑応答と議論も非常に活発だった.
   - Lass, Roger & Laing, Margaret (University of Edinburgh): On Middle English she, sho: A refurbished narrative
   - Alcorn, Rhona (University of Edinburgh): How 'them' could have been 'his'
   - Marcelle Cole (Leiden University): Where did THEY come from? A native origin for THEY, THEIR, THEM.

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