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最終更新時間: 2019-11-11 08:35

2015-06-29 Mon

#2254. 意味変化研究の歴史 [history_of_linguistics][semantic_change][semantic][rhetoric][causation][cognitive_linguistics]

 連日,Waldron に依拠して意味変化の記事を書いてきたが,同じ Waldron (115--16) を参照して,19世紀以降の意味変化研究史を振り返ってみたい.
 近代的な意味変化論は,19世紀初頭のドイツに起こった.比較言語学が出現し,音韻変化が研究され始めたのと同じ頃,言語学者は古典的なレトリックの用語により意味変化を記述できる可能性に気づいた.共時的な言葉のあや (figures of speech) と通時的な意味変化の類縁性に気がついたのである.例えば,意味変化の分類が,synechdoche, metonymy, metaphor などのレトリック用語に基づいてなされるなどした.意味変化研究史の幕開けがまさにこの関係の気づきにあったことを考えると,昨今,古典的レトリックと意味変化の関係が認知言語学の立場から再び注目を集めている状況は,非常に興味深い (cf. 「#2191. レトリックのまとめ」 ([2015-04-27-1])) .
 レトリック用語による意味変化の分類から始まり,19世紀中には論理的な分類も発達した.ある意味で現代にまで根強く続いている Extension, Restriction, Transfer の3分法である.これをより論理的に整理したのが,1894年の R. Thomas による分類で,以下のように図示できる (Waldron 115) .

I Change within the same conceptual sphere
     (a) Species pro genere
     (b) Genus pro specie
II Change through transfer to another conceptual sphere
     (a) Through subjective correspondence (metaphor)
     (b) Through objective correspondence (metonymy)


 20世紀に入ると,これまでのような意味変化の分類よりも,意味変化の原因(心理的,社会的,言語的)へと関心が移った.意味変化研究に社会や歴史の観点が取り入れられるようになり,科学技術の発展,社会道徳の変化,各種レジスターなどが意味変化に及ぼしてきた影響が論じられるようになった.
 意味変化に関する20世紀の代表的著作として Stern, Ullmann, Waldron が挙げられるが,意味変化の分類や原因を巡る議論は,およそ出尽くし,整理されたといえるかもしれない.近年は,上記のような古典的な意味変化論から脱却して,認知言語学,文法化研究,語用論などから示唆を得た,新しい意味変化研究が生まれてきつつある.
 意味論全体の研究史については,「#1686. 言語学的意味論の略史」 ([2013-12-08-1]) を参照.

 ・ Waldron, R. A. Sense and Sense Development. New York: OUP, 1967.

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