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compound - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2020-11-25 08:02

2020-06-03 Wed

#4055. parasynthesis [parasynthesis][compounding][compound][derivation][derivative][word_formation][morphology][terminology][back_formation][conversion]

 parasynthesis(並置総合)は語形成 (word_formation) の1種で,複合 (compounding) と派生 (derivation) を一度に行なうものである.この語形成によって作られた語は,"parasynthetic compound" あるいは "parasyntheton" (並置総合語)と呼ばれる.その具体例を挙げれば,warm-hearted, demoralize, getatable, baby-sitter, extraterritorial などがある.
 extraterritorial で考えてみると,この語は extra-(territori-al) とも (extra-territory)-al とも分析するよりも,extra-, territory, -al の3つの形態素が同時に結合したものと考えるのが妥当である.結合の論理的順序についてどれが先でどれが後かということを決めるのが難しいということだ.この点では,「#418. bracketing paradox」 ([2010-06-19-1]),「#498. bracketing paradox の日本語からの例」 ([2010-09-07-1]),「#499. bracketing paradox の英語からの例をもっと」 ([2010-09-08-1]) の議論を参照されたい.そこで挙げた数々の例はいずれも並置総合語である.
 品詞転換 (conversion) あるいはゼロ派生 (zero-derivation) を派生の1種と考えるならば,pickpocketblockhead のような (subordinative) exocentric compound も,複合と派生が同時に起こっているという点で並置総合語といってよいだろう.
 石橋(編)『現代英語学辞典』 (p. 630) では並置総合語を要素別に5種類に分類しているので,参考までに挙げておこう.

(1) 「形容詞+名詞+接尾辞」 hot-tempered, old-maidish. (2) 「名詞+名詞+接尾辞」 house-wifely, newspaperdom. (3) 「副詞+動詞+接尾辞」 oncoming, half-boiled. (4) 「名詞+動詞+接尾辞」 shopkeeper, typewriting. (5) そのほか,matter-of-factness, come-at-able (近づきやすい)など.


 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
 ・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.

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2020-03-01 Sun

#3961. 3音節短化の事例 [sound_change][vowel][phonology][phonetics][shortening][shocc][trish][compound][meosl][homorganic_lengthening][gvs][drift]

 昨日の記事「#3960. 子音群前位置短化の事例」 ([2020-02-29-1]) で触れた SHOCC (= Shortening before Consonant Clusters) とおよそ同時期に生じたもう1つの母音短化として,3音節短化 (Trisyllabic Shortening (= TRISH)) という音変化がある.3音節語において強勢のある第1音節の長母音が短化するというものだ.定式化すると次のようになる.

V → [-long]/__C(C)σσ


 Ritt (99--100) より,初期中英語での形態により例を挙げよう.現代英語の形態と比較できるもののみを挙げる.

heafodu PL'head'
cicenu PL'chicken'
linenes GEN'linen'
æniȝe PL'any'
ærende'errand'
æmette'ant'
suþerne'southern'
westenne DAT'waste (desert)'
deorlingas PL'darling'
feorþinȝas PL'farthing'
feowertiȝ'forty'
freondscipe'friendship'
haliȝdaȝ'holiday'
alderman'alderman'
heringes PL'herring'
stiropes PL'stirrup'
Monenday'Monday'
Thuresday'Thursday'
seliness'silliness'
redili'readily'
bretheren PL'brethren'
evere'ever'
othere ACC'other''
redeles PL'riddle'
boseme ACC'bosom'
wepenes PL'weapon'


 もともとの3音節語に対して生じたほか,複合語で3音節になったもの,名詞の複数形などの屈折語尾が付されて3音節になったものにも生じることがあった.これにより,現代英語で south, holy, moon などが2重母音・長母音をもつのに対して,複合語 southern, holiday, Monday では短母音となっている理由が説明される.他の具体例については,以下の記事も参照されたい.

 ・ 「#1751. 派生語や複合語の第1要素の音韻短縮」 ([2014-02-11-1])
 ・ 「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1])
 ・ 「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1])
 ・ 「#1750. bonfire」 ([2014-02-10-1])

 ここ数日間の記事で,中英語開音節長化 (meosl),同器性長化 (homorganic_lengthening),子音群前位置短化 (shocc) など,後期古英語から初期中英語に生じた一連の母音の量に関する変化を扱ってきたが,これらが互いに補完しあう関係にあったことは注目に値する.さらにいえば,この駆流 (drift) は次の時代の「大母音推移」 (gvs) にもつながっていくものであり,数世紀にわたる長いスパンで俯瞰すべき話題だということが分かる.

 ・ 「#2048. 同器音長化,開音節長化,閉音節短化」 ([2014-12-05-1])
 ・ 「#2052. 英語史における母音の主要な質的・量的変化」 ([2014-12-09-1])
 ・ 「#2063. 長母音に対する制限強化の歴史」 ([2014-12-20-1])
 ・ 「#1402. 英語が千年間,母音を強化し子音を弱化してきた理由」 ([2013-02-27-1])
 ・ 「#3916. 強弱音節の区別と母音変化の関係」 ([2020-01-16-1])
 ・ 「#3914. Stenbrenden 曰く「大母音推移は長期の漂流の一部にすぎない」」 ([2020-01-14-1])

(後記 2020/03/02(Mon):大名力氏より moon は長母音をもつ点を指摘いただきまして,元の「現代英語で south, holy, moon などが2重母音をもつのに対して」を「現代英語で south, holy, moon などが2重母音・長母音をもつのに対して」に修正しました.ありがとうございます.)

 ・ Ritt, Nikolaus. Quantity Adjustment: Vowel Lengthening and Shortening in Early Middle English. Cambridge: CUP, 1994.

Referrer (Inside): [2020-03-02-1]

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2020-01-17 Fri

#3917. 『英語教育』の連載第11回「なぜ英語には省略語が多いのか」 [rensai][notice][sobokunagimon][shortening][abbreviation][blend][acronym][compound][compounding][derivation][derivative][conversion][disguised_compound][word_formation][lexicology][borrowing][link]

 1月14日に,『英語教育』(大修館書店)の2月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第11回となる今回は「なぜ英語には省略語が多いのか」という話題です.

『英語教育』2020年2月号


 今回の連載記事は,タイトルとしては省略語に焦点を当てているようにみえますが,実際には英語の語形成史の概観を目指しています.複合 (compounding) や派生 (derivation) などを多用した古英語.他言語から語を借用 (borrowing) することに目覚めた中英語.品詞転換 (conversion) あるいはゼロ派生 (zero-derivation) と呼ばれる玄人的な技を覚えた後期中英語.そして,近現代英語にかけて台頭してきた省略 (abbreviation) や短縮 (shortening) です.
 英語史を通じて様々に発展してきたこれらの語形成 (word_formation) の流れを,四則計算になぞらえて大雑把にまとめると,(1) 足し算・掛け算の古英語,(2) ゼロの後期中英語,(3) 引き算・割り算の近現代英語となります.現代は省略や短縮が繁栄している引き算・割り算の時代ということになります.
  英語の語形成史を上記のように四則計算になぞらえて大づかみして示したのは,今回の連載記事が初めてです.荒削りではありますが,少なくとも英語史の流れを頭に入れる方法の1つとしては有効だろうと思っています.ぜひ原文をお読みいただければと思います.
  省略や短縮について,連載記事と関連するブログ記事へリンクを集めてみました.あわせてご一読ください.

 ・ 「#631. blending の拡大」 ([2011-01-18-1])
 ・ 「#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか?」 ([2011-09-20-1])
 ・ 「#887. acronym の分類」 ([2011-10-01-1])
 ・ 「#889. acronym の20世紀」 ([2011-10-03-1])
 ・ 「#893. shortening の分類 (1)」 ([2011-10-07-1])
 ・ 「#894. shortening の分類 (2)」 ([2011-10-08-1])
 ・ 「#1946. 機能的な観点からみる短化」 ([2014-08-25-1])
 ・ 「#2624. Brexit, Breget, Regrexit」 ([2016-07-03-1])
 ・ 「#2982. 現代日本語に溢れるアルファベット頭字語」 ([2017-06-26-1])
 ・ 「#3075. 略語と暗号」 ([2017-09-27-1])
 ・ 「#3329. なぜ現代は省略(語)が多いのか?」 ([2018-06-08-1])
 ・ 「#3708. 省略・短縮は形態上のみならず機能上の問題解決法である」 ([2019-06-22-1])

 ・ 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第11回 なぜ英語には省略語が多いのか」『英語教育』2020年2月号,大修館書店,2020年1月14日.62--63頁.

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2019-10-10 Thu

#3818. 古英語における「自明の複合語」 [lexicology][word_formation][oe][kenning][compound][disguised_compound]

 「#3801. gan にみる古英語語彙の結合的性格」 ([2019-09-23-1]) では,主として古英語の派生語 (derivative) の広がりをみたが,古英語語彙の結合的性格は,複合語 (compound) によって一層よく示される.複合語とは,自立した2つ以上の単語をつなぎ合わせて新たに1つの単語を作ったもので,現代英語でも girlfriendconvenience store などでお馴染みのタイプの単語である.
 したがって,現代英語でも複合 (compounding) という語形成はおおいに活躍しているのだが,古英語ではその活躍の幅が広く,また天真爛漫,天衣無縫ですらある.複合語の各要素の意味を知っていれば,それらをつなぎ合わせた複合語自体の意味もおよそ容易に理解できることから,"self-explaining compounds" と呼ばれることもある.Crystal (22) より,古英語からの「自明の複合語」の例をいくつか挙げてみよう.

 ・ gōdspel < gōd 'good' + spel 'tidings': gospel
 ・ sunnandæg < sunnan 'sun's' + dæg 'day': Sunday
 ・ stæfcræft < stæf 'letters' + cræft 'crat': grammar
 ・ mynstermann < mynster 'monastery' + mann 'man': monk
 ・ frumweorc < frum 'beginning' + weorc 'work': creation
 ・ eorþcræft < eorþ 'earth' + cræft 'craft': geometry
 ・ rōdfæstnian < rōd 'cross' + fæstnian 'fasten': crucify
 ・ dægred < dæg 'day' + red 'red': dawn
 ・ lēohtfæt < lēoht 'light' + fæt 'vessel': lamp
 ・ tīdymbwlātend < tīd 'time' + ymb 'about' + wlātend 'gaze': astronomer


 もちろん「自明の」といっても程度の差はあり,最後の tīdymbwlātend などは本当に自明かどうかは疑わしい.また,形式的な変形により本来の自明度が失われた偽装複合語 (disguised_compound) なるものもあれば,あえて自明さを封じ込めることで文学的効果やナゾナゾ効果を醸し出す隠喩的複合語 (kenning) なるものもある(各々「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1]),「#472. kenning」 ([2010-08-12-1]) を参照).ただし,いずれも「自明の複合語」という基礎があった上での応用編ともいうべきものではあろう.「自明の複合語」は,古英語の語形成における際立った特徴の1つといってよい.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. Cambridge: CUP, 2019.

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2019-07-06 Sat

#3722. 混成語は右側主要部の音節数と一致する [blend][syllable][compound][phonology]

 混成語 (blend) について,「#630. blend(ing) あるいは portmanteau word の呼称」 ([2011-01-17-1]),「#631. blending の拡大」 ([2011-01-18-1]),「#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか?」 ([2011-09-20-1]) などの記事で取り上げてきた.
 音節数という観点から混成語をみてみると,おもしろい性質があることに気づく.混成語の音節数(モーラ数)は,そのもととなっている2単語のうち後半の語(右側主要部)の音節数(モーラ数)に一致するという事実である.
 西原・菅原 (102--03) による,日本語と英語からの例を挙げよう.

混成語音節数(モーラ数)
ダスト+ゾーキン → ダスキン3 + 4 → 4
ママ+アイドル → ママドル2 + 4 → 4
+シッポ → オッポ1 + 3 → 3
smoke+fog → smog1 + 1 → 1
breakfast+lunch → brunch2 + 1 → 1
lunch+supper → lupper1 + 2 → 2


 絶対的なルールではなく,Ebony + phonics → Ebonics, parallel + Olympics → Paralympics などの例外もみられるが,およそ当てはまるとはいえる.
 一般的に,複合語においては右側主要部が品詞や意味内容を決定するとされる.混成という現象において右側主要部が語の大きさを決定するということは,右側主要部が形態音韻論的にも重要な役割を担っていることを示す.

 ・ 西原 哲雄・菅原 真理子 「第4章 形態構造と音韻論」菅原 真理子(編)『音韻論』朝倉日英対照言語学シリーズ 3 朝倉書店,2014年.88--105頁.

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2018-09-19 Wed

#3432. イギリス議会の起源ともいうべきアングロ・サクソンの witenagemot [etymology][oe][anglo-saxon][parliament][history][monarch][compound]

 ウェセックスのアルフレッド大王の孫に当たるアゼルスタン(Athelstan; 在位 924--40年)は,ウェセックス王にとどまらず,事実上の最初のイングランド王と呼ぶべき存在である.彼は937年のブルナンブルフの戦いで軍功をあげたほか,アルフレッド大王が作った州制を発展させ,法典を編纂し,銀ペニー貨の鋳造権を獲得し,諸外国と同盟するなどの業績を重ねた.君塚 (20--21) によれば,

 しかしアゼルスタンにとって最大の功績は,のちの国王評議会や議会の起源ともいうべき機関を設置したことであろう.アゼルスタン以降の国王は「立法」に深く携わるようになり,そのために定期的に有力者たちとの会議を開くようになった.王が司教や伯(エアルダーマン)らに相談して立法を行う慣習は,ノーサンブリアのエドウィン王の時代(六二〇年代)やウェセックスのイネ王の時代(六九〇年代)にも見られたが,アゼルスタンはこれをさらに大規模なものとし,キリスト教の重要な行事であるキリスト降誕祭(一二月),復活祭(四月頃),聖霊降臨祭(五月頃)に定期的に開催するようになった.
 これが「賢人会議」(ウィテナイェモート)と呼ばれるものである.イングランド各地から代表者を集めた会議で,カンタベリーとヨークの大司教,多くの司教や大修道院長たち,伯(エアルダーマン)らの有力貴族,豪族(セイン)らが出席するようになり,地方的な問題よりも,イングランド全体に関わる外交や防衛問題,さらには律法や司法に関わる問題を主に協議した.そしてこの会議に集まるようになった有力者たちにとって大切な役割となったのが,先王の死から次王の継承までの間に問題が生じないよう調整するという,まさに王位継承規範に関わる事柄であった.
 賢人会議は,前期のキリスト教行事とは関わりのない時期にも召集されたが,復活祭の会議では春の軍事遠征に関わる相談も頻繁に行なわれた.また時代が下るとともに,出席者の席次(序列)も徐々に形成されるようになっていった.


 アゼルスタンの設置した「賢人会議」は,古英語では witenagemōt と言い表した.これは witena + gemōt の2語からなる複合語であり,前者 witena は「賢人;評議員」を意味する名詞 wita の複数属格形である.この名詞は,現代英語の名詞 wit (cf. 古英語動詞 witan 「知る」)や形容詞 wise と語源的に関連している.
 後者 gemōt は「会議」を意味する名詞だが,これ自体は接頭辞 ge- と名詞 mōt に分解される.ge- は集合を表わす接頭辞で,中英語以降に弱化し消失していったが,yclept, yclad, alike, among, enough, either, handicraft, handiwork などの母音に痕跡を残す.mōt は,語源的に meet (会う)と関係しており,現代では moot という語形で「議論の余地のある」を意味する形容詞として用いられている.
 したがって,witenagemōt の意味はまさに「賢人たちが集合する会議」である.なお,現代英語での歴史用語としての発音は /ˈwɪtnəgəˌmoʊt/ となる.
 ノルマン征服以降の議会 (parliament) については,「#2334. 英語の復権と議会の発展」 ([2015-09-17-1]) と「#2335. parliament」 ([2015-09-18-1]) を参照.また,アングロサクソン王朝の系図と年表について,「#2620. アングロサクソン王朝の系図」 ([2016-06-29-1]) と「#2547. 歴代イングランド君主と統治年代の一覧」 ([2016-04-17-1]) をどうぞ.

 ・ 君塚 直隆 『物語 イギリスの歴史(上下巻)』 中央公論新社〈中公新書〉,2015年.

Referrer (Inside): [2020-02-15-1]

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2018-04-10 Tue

#3270. mother tongue は複合語ではなく名詞句だった? [compound][genitive][inflection][oe][relationship_noun]

 「#2654. a six-foot mana ten-mile drive に残る(残っていない?)古英語の複数属格形」 ([2016-08-02-1]) で触れたように,現代英語では無屈折形にみえるものの,それはかつての屈折形が音の弱化・消失を経た結果の形態であるというような例が,ときに確認される.a six-foot manfootwhilom, seldom,そして Lady Chapel, ladybird などにおける第1要素 lady.いずれも一見すると屈折などしていない裸の形態とみえるが,それぞれかつての複数属格形,複数与格形,単数属格形に由来する.いずれも後に語尾が弱まったり失われたりして,結果的に無屈折形であるかのようにとらえられるようになったものである.
 最近,mother tongue (母語)もそのような例の1つらしいと知った.現代英語では複合語という認識だが,語源的には第1要素 mother はこのままで単数属格形だという.つまり,現代英語の発想で置き換えれば,まさに "mother's tongue" と言っているようなものだったのだ.「#703. 古英語の親族名詞の屈折表」 ([2011-03-31-1]) でみたように,mother は特殊な屈折をする女性名詞の1つで,単数主格形 mōdor と同形で単数属格形ともなりうる.mother tongue という表現の初例は,中英語後期の Wyclif に moder tonge として出現し,ほぼ同じ時期に modir langage も現われている.これらの形態が,遠く古英語の無屈折形を反映・踏襲しているというわけだ.また,近現代的な明確な属格語尾を伴った modiris langage も同時期に文証されていることを付け加えておこう.
 とはいうものの,気になる点がある.これらの "mother" が,古英語の無変化の属格形に遡ると言える積極的な根拠は何だろうか.中英語で初出した当初から,現代英語と同じ感覚で,複合語としてとらえられたという可能性はないのだろうか.上記のように modiris langage が併存していたということは,議論の1つのポイントになるかもしれないが,確言できるほど強い根拠はないようにも思われる.OED でも,属格形に由来するという解釈には "Probably" が添えられている.この辺りは,後期中英語の複合語形成のパターンについてよく学ばないと,判断できなさそうだ.

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2017-12-27 Wed

#3166. 英製希羅語としての科学用語 [waseieigo][latin][greek][scientific_name][compounding][compound][lmode][neo-latin][combining_form][neologism][lexicology][word_formation]

 昨日の記事「#3165. 英製羅語としての conspicuousexternal」 ([2017-12-26-1]) と関連して,再び「英製羅語」の周辺の話題.後期近代英語期には,科学の発展に伴いおびただしい科学用語が生まれたが,そのほとんどがギリシア語やラテン語に由来する要素 (combining_form) を利用した合成 (compounding) による造語である(「#552. combining form」 ([2010-10-31-1]),「#1694. 科学語彙においてギリシア語要素が繁栄した理由」 ([2013-12-16-1]),「#3013. 19世紀に非難された新古典主義的複合語」 ([2017-07-27-1]) を参照).
 Kay and Allan (20--21) が,次のようにコメントしている.

While borrowing continues to reflect contact with other cultures, many scientific words are not strictly speaking loanwords. Rather, they are constructed from roots adopted from the classical languages. This has the advantage of a degree of semantic transparency: if you know that tele, graph and phone come from Greek roots meaning respectively 'afar', 'writing' and 'sound', and vision from a Latin root meaning 'see, look', you can begin to understand telegraph, telephone and television. You can also coin other words using similar patterns, and possibly elements from other sources, as in telebanking.


 "neo-Hellenic compounds" や "neo-Latin compounds" とも呼ばれる上記のような語彙は,ある意味ではラテン語やギリシア語からの借用語ともみなしうるかもしれないが,より適切に「英製希語」あるいは「英製羅語」とみなすのがよいのではないか.ただし,いくつかの単語が単発で造語されたわけではなく,造語に体系的に利用された方法であるから「パターン化された英製希羅語」と呼ぶのがさらに適切かもしれない.

 ・ Kay, Christian and Kathryn Allan. English Historical Semantics. Edinburgh: Edinburgh UP, 2015.

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2017-09-12 Tue

#3060. 17世紀後半からの tea 用語 [pepys][compound][history]

 昨日の記事「#3059. ベンガル語の必修化を巡るダージリンのストライキ」 ([2017-09-11-1]) で Darjeeling について取り上げたので,関連して tea の話題を.「#2934. tea とイギリス」 ([2017-05-09-1]) で見たように,英語における tea の初出は1655年である.The Diary of Samuel Pepys より1660年9月25日の記録を引こう.tea が舶来の飲み物としてはやり始めた頃だったとわかる.

Tuesday 25 September 1660 . . . . To the office, where Sir W. Batten, Colonel Slingsby, and I sat awhile, and Sir R. Ford coming to us about some business, we talked together of the interest of this kingdom to have a peace with Spain and a war with France and Holland; where Sir R. Ford talked like a man of great reason and experience. And afterwards I did send for a cup of tee (a China drink) of which I never had drank before, and went away.


 17世紀後半から18世紀にかけて,tea は洗練された嗜みとして庶民にも拡がっていき,コーヒーを追い抜いていくことなる.tea の人気振りは,関連する食器や家具などを表わす複合語が次々と現われた事実からも見て取ることができるだろう.Crystal (370) から,例を初出年とともに拾ってみよう.

tea-pot (1662), tea-spoon (1666), tea-table (1688), tea-house (1689), tea-water (1693), tea-cup (1700), tea-room (1702), tea-equipage (1702), tea-dish (1711), tea-canister (1726), tea-tongs (1738), tea-time (1741), tea-shop (1745), tea-things (1747), tea-treats (1748), tea-box (1758), tea-saucer (1761), tea-visit (1765), teaware (1766), tea-cloth (1770), tea-tray (1773), tea-set (1786), tea-urn (1786)


 ・ Crystal, David. The Stories of English. London: Penguin, 2005.

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2017-07-28 Fri

#3014. 英語史におけるギリシア語の真の存在感は19世紀から [greek][compound][compounding][combining_form][lexicology][scientific_name][word_formation][lmode][neologism]

 昨日の記事「#3013. 19世紀に非難された新古典主義的複合語」 ([2017-07-27-1]) でも触れたように,19世紀は専門用語の造語のために,古典語に由来する要素が連結形 (combining_form) としておおいに利用された時代である.古典語とはラテン語とギリシア語を指す.前者は英語史を通じて多大な影響を及ぼしてきたものの,後者の存在感は中英語まではほとんど感じられない.ようやく初期近代英語期に入って,直接の語彙借用がなされるようになってきたにすぎず,その後もしばらく特に目立つところもなかった (cf. 「#516. 直接のギリシア語借用は15世紀から」 ([2010-09-25-1]),「#114. 初期近代英語の借用語の起源と割合」 ([2009-08-19-1])) .
 しかし,「#2385. OED による,古典語およびロマンス諸語からの借用語彙の統計 (2)」 ([2015-11-07-1]) のグラフや「#2357. OED による,古典語およびロマンス諸語からの借用語彙の統計」 ([2015-10-10-1]) の要約からわかるとおり,19世紀にギリシア語要素が著しく存在感を増した.通時的にみると,ギリシア語由来の英単語の圧倒的過半数が,19世紀以降の導入である.Beal (26) のコメントを参照しよう.

Whilst Greek had been recognized as a language of learning for centuries, it was not until the nineteenth century that large numbers of neologisms were formed from etymologically Greek words and elements. Indeed, Bailey (1996: 144 [= Bailey, R. W. Nineteenth-Century English. Ann Arbor: U of Michigan P, 1996]) points out that 70 per cent of the Greek words in the 80,000-word core vocabulary of English appeared after 1800.


 具体例としては当時の専門用語が多いが,現在までに一般化したものも含まれている.cyclosis (細胞質環流), creosote (防腐用・医療用クレオソート), eclecticism (折衷技法), ideograph (表意文字), phonograph (蓄音機), telephone (電話機)などだ.
 なお,これらの単語の多くは,厳密にいえばギリシア語からの借用語というよりもギリシア語に由来する要素による造語とみなすのが適切だろう.「#1694. 科学語彙においてギリシア語要素が繁栄した理由」 ([2013-12-16-1]) も参照されたい.

 ・ Beal, Joan C. English in Modern Times: 1700--1945. Arnold: OUP, 2004.

Referrer (Inside): [2018-01-09-1]

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2016-08-01 Mon

#2653. 形態論を構成する部門 [terminology][morphology][morpheme][compound][derivation][inflection]

 形態論 (morphology) という部門は,屈折形態論 (inflectional morphology) と派生形態論 (derivational morphology) に分けられるのが慣例である.この2分法は,「#456. 比較の -er, -est は屈折か否か」 ([2010-07-27-1]),「#1761. 屈折形態論と派生形態論の枠を取っ払う「高さ」と「高み」」 ([2014-02-21-1]) で触れたように,理論的な問題もなしではないが,現代言語学では広く前提とされている.
 この2分法を基準にさらに細分化してゆくことができるが,Bauer (33) が基本的な用語群を導入しつつ形態論を構成する部門や区分を概説してくれているので,それを引用しよう.ここには,昨日の記事「#2652. 複合名詞の意味的分類」 ([2016-07-31-1]) で紹介した区分も盛り込まれている.

Morphology deals with the internal structure of word-forms. In morphology, the analyst divides word-forms into their component formatives (most of which are morphs realizing roots or affixes), and attempts to account for the occurrence of each formative. Morphology can be divided into two main branches, inflectional morphology and word-formation (also called lexical morphology). Inflectional morphology deals with the various forms of lexemes, while word-formation deals with the formation of new lexemes from given bases. Word-formation can, in turn, be subdivided into derivation and compounding (or composition). Derivation is concerned with the formation of new lexemes by affixation, compounding with the formation of new lexemes from two (or more) potential stems. Derivation is sometimes also subdivided into class-maintaining derivation and class-changing derivation. Class-maintaining derivation is the derivation of new lexemes which are of the same form class ('part of speech') as the base from which they are formed, whereas class-changing derivation produces lexemes which belong to different form classes from their bases. Compounding is usually subdivided according to the form class of the resultant compound: that is, into compound nouns, compound adjectives, etc. It may also be subdivided according to the semantic criteria . . . into exocentric, endocentric, appositional and dvandva compounds.


 上の文章で説明されている形態論の分類のうち,主要な諸部門について図示しよう(Bauer (34) を少々改変して示した).

                                    [ The Basic Divisions of Morphology ]


                 ┌─── INFLECTIONAL                                                
                 │       (deals with forms                                   ┌─── CLASS-MAINTAINING
                 │       of individual lexemes)                              │
MORPHOLOGY ───┤                                ┌─── DERIVATION  ───┤
                 │                                │       (affixation)      │
                 │                                │                         └─── CLASS-CHANGING
                 └─── WORD-FORMATION ─────┤
                          (deals with              │                         ┌─── COMPOUND NOUNS
                          formation of             │                         │
                          new lexemes)             └─── COMPOUNDING ───┼─── COMPOUND VERBS
                                                            (more than one    │
                                                            root)             └─── COMPOUND ADJECTIVES

 形態論に関連する重要な術語については,「#700. 語,形態素,接辞,語根,語幹,複合語,基体」 ([2011-03-28-1]) も参照.

 ・Bauer, Laurie. English Word-Formation. Cambridge: CUP, 1983.

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2016-07-31 Sun

#2652. 複合名詞の意味的分類 [compound][word_formation][morphology][terminology][semantics][hyponymy][metonymy][metaphor][linguistics]

 「#924. 複合語の分類」 ([2011-11-07-1]) で複合語 (compound) の分類を示したが,複合名詞に限り,かつ意味の観点から分類すると,(1) endocentric, (2) exocentric, (3) appositional, (4) dvandva の4種類に分けられる.Bauer (30--31) に依拠し,各々を概説しよう.

 (1) endocentric compound nouns: beehive, armchair のように,複合名詞がその文法的な主要部 (hive, chair) の下位語 (hyponym) となっている例.beehivehive の一種であり,armchairchair の一種である.
 (2) exocentric compound nouns: redskin, highbrow のような例.(1) ように複合名詞がその文法的な主要部の下位語になっているわけではない.redskinskin の一種ではないし,highbrowbrow の一種ではない.むしろ,表現されていない意味的な主要部(この例では "person" ほど)の下位語となっているのが特徴である.したがって,metaphormetonymy が関与するのが普通である.このタイプは,Sanskrit の文法用語をとって,bahuvrihi compound とも呼ばれる.
 (3) appositional compound nouns: maidservant の類い.複合名詞は,第1要素の下位語でもあり,第2要素の下位語でもある.maidservantmaid の一種であり,servant の一種でもある.
 (4) dvandva: Alsace-Lorraine, Rank-Hovis の類い.いずれが文法的な主要語が判然とせず,2つが合わさった全体を指示するもの.複合名詞は,いずれの要素の下位語であるともいえない.dvandva という名称は Sanskrit の文法用語から来ているが,英語では 'copulative compound と呼ばれることもある.

 ・Bauer, Laurie. English Word-Formation. Cambridge: CUP, 1983.

Referrer (Inside): [2016-08-01-1]

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2016-04-24 Sun

#2554. 固有屈折と文脈屈折 [terminology][inflection][morphology][syntax][derivation][compound][word_formation][category][ilame]

 屈折 (inflection) には,より語彙的な含蓄をもつ固有屈折 (inherent inflection) と,より統語的な含蓄をもつ文脈屈折 (contextual inflection) の2種類があるという議論がある.Booij (1) によると,

Inherent inflection is the kind of inflection that is not required by the syntactic context, although it may have syntactic relevance. Examples are the category number for nouns, comparative and superlative degree of the adjective, and tense and aspect for verbs. Other examples of inherent verbal inflection are infinitives and participles. Contextual inflection, on the other hand, is that kind of inflection that is dictated by syntax, such as person and number markers on verbs that agree with subjects and/or objects, agreement markers for adjectives, and structural case markers on nouns.


 このような屈折の2タイプの区別は,これまでの研究でも指摘されることはあった.ラテン語の単数形 urbs と複数形 urbes の違いは,統語上の数の一致にも関与することはするが,主として意味上の数において異なる違いであり,固有屈折が関係している.一方,主格形 urbs と対格形 urbem の違いは,意味的な違いも関与しているが,主として統語的に要求される差異であるという点で,統語の関与が一層強いと判断される.したがって,ここでは文脈屈折が関係しているといえるだろう.
 英語について考えても,名詞の数などに関わる固有屈折は,意味的・語彙的な側面をもっている.対応する複数形のない名詞,対応する単数形のない名詞(pluralia tantum),単数形と複数形で中核的な意味が異なる(すなわち異なる2語である)例をみれば,このことは首肯できるだろう.動詞の不定形と分詞の間にも類似の関係がみられる.これらは,基体と派生語・複合語の関係に近いだろう.
 一方,文脈屈折がより深く統語に関わっていることは,その標識が固有屈折の標識よりも外側に付加されることと関与しているようだ.Booij (12) 曰く,"[C]ontextual inflection tends to be peripheral with respect to inherent inflection. For instance, case is usually external to number, and person and number affixes on verbs are external to tense and aspect morphemes".
 言語習得の観点からも,固有屈折と文脈屈折の区別,特に前者が後者を優越するという説は支持されるようだ.固有屈折は独自の意味をもつために直接に文の生成に貢献するが,文脈屈折は独立した情報をもたず,あくまで統語的に間接的な意義をもつにすぎないからだろう.
 では,言語変化の事例において,上で提起されたような固有屈折と文脈屈折の区別,さらにいえば前者の後者に対する優越は,どのように表現され得るのだろうか.英語史でもみられるように,種々の文法的機能をもった名詞,形容詞,動詞などの屈折語尾が消失していったときに,いずれの機能から,いずれの屈折語尾の部分から順に消失していったか,その順序が明らかになれば,それと上記2つの屈折タイプとの連動性や相関関係を調べることができるだろう.もしかすると,中英語期に生じた形容詞屈折の事例が,この理論的な問題に,何らかの洞察をもたらしてくれるのではないかと感じている.中英語期の形容詞屈折の問題については,ilame の各記事を参照されたい.

 ・ Booij, Geert. "Inherent versus Contextual Inflection and the Split Morphology Hypothesis." Yearbook of Morphology 1995. Ed. Geert Booij and Jaap van Marle. Dordrecht: Kluwer, 1996. 1--16.

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2015-08-14 Fri

#2300. 句動詞の品詞転換と名前動後 [conversion][phrasal_verb][compound][word_formation][diatone][stress][lexical_diffusion]

 「#1695. 句動詞の品詞転換」 ([2013-12-17-1]) の最後に示唆したが,breakaway, sellout, writeoff などの句動詞から転換 (verb-particle conversion) した名詞と,increase, project, record などの動詞兼用の名詞との間には,注目すべき共通点がある.それは,いわゆる名前動後の強勢パターンをもっていることである.
 名前動後については,「#803. 名前動後の通時的拡大」 ([2011-07-09-1]),「#804. 名前動後の単語一覧」 ([2011-07-10-1]),「#805. 将来,名前動後になるかもしれない語」 ([2011-07-11-1]) をはじめ,diatone の各記事で話題にしてきた(論文としても公表しているので,「#2. 自己紹介」 ([2009-05-01-73]) の書誌を参照).しかし,verb-particle conversion における名前動後の強勢パターンは扱ったことはなかった.品詞転換の研究では,上記の共通点については早くから気づかれていたようで,例えば本格的な品詞転換の研究書を著わした Biese (246) は,次のように指摘している.

It is of interest to note that the structural type so often characteristic of both simple conversion-substantives and verb-adverb combinations converted into nouns is the same, e.g. very often of a form ‿-́ . . .; the simple conv.-subst. showing a light, unstressed first syllable and a heavy, stressed second syllable, while in the adverb groups a (mostly) short verb is followed by an adverb having the main stress of the word-group.


 おもしろいのは,2音節語に関して,íncrease (n.) vs incréase (v.) のような通常の名詞・動詞ペアではロマンス系借用語が多いということもあり,第1音節が意味の軽い接頭辞で,第2音節が意味の重い語根という構成を示すが,brékawày (n.) vs brèak awáy (v.) では構成が逆となっていることだ.もっとも,句動詞に用いられる動詞は軽い意味のものが多いことは事実だが,名前動後という共通の強勢パターンを示すのは注目すべきである.これは,名前動後という韻律上の現象が,語形成という過程の関与する形態論の問題というよりは,むしろ品詞の決定に関わる統語論や語彙論の問題であることを示唆するのではないか.
 名前動後という韻律は,初期近代英語以降に発達した比較的新しい現象だが,句動詞に由来する名前動後の強勢パターンはさらに新しい現象と思われる.
 品詞転換一般と名前動後の関係については,最近の記事「#2291. 名動転換の歴史と形態音韻論」 ([2015-08-05-1]) で触れたので参照されたい.

 ・ Biese, Y. M. Origin and Development of Conversions in English. Helsinki: Annales Academiae Scientiarum Fennicae, B XLV, 1941.

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2014-02-26 Wed

#1766. a three-hour(s)-and-a-half flight [compound][adjective][plural][number][numeral][hyphen]

 標記のような数詞と単位を含む複合形容詞においては,単位を表わす名詞は複数形を取らないのが規則とされる.a four-power agreement, a five-foot-deep river, a ten-dollar bill, a twelve-year-old boy などの如くである.
 しかし,ときに複数形を取る例も散見され,a three-hours-and-a-half flight もあり得るし,a four years course もあり得る.Quirk et al. (Section 17.108) によれば,同種の表現として以下の4通りが可能である.

. . . in quantitative expressions of the following type there is possible variation . . .:
a ten day absence[singular]
a ten-day absence[hyphen + singular]
a ten days absence[plural]
a ten days' absence[genitive plural]


 同様に,「4年制課程」についても,"a four year course", "a four-year course", "a four years course", "a four years' course" のいずれもあり得ることになる.これらの変異形がいかにして生じてきたのか,使い分けの基準がありうるのかという問題は,通時的,理論的に興味深い問題だが,現段階では未調査である.
 この問題と関連しうる話題として注意しておきたいのは,やはりイギリス英語において,名詞の限定形容詞用法では,その名詞が複数形としてある程度語彙化している場合に,複数形の形態のままで実現されることが多いという事実だ.例えば,Quirk et al. (Section 17.109) によると,イギリス英語限定だが,次のような例がみられるという.parks department, courses committee, examinations board, the heavy chemicals industry, Scotland Yard's Obscene Publications Squad, Chesterfield Hospitals management Committee, the British Museum Prints and Drawings Gallery, an Arts degree, soft drinks manufacturer, entertainments guide, appliances manufacturer, the Watergate tapes affair.

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

Referrer (Inside): [2016-08-02-1]

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2014-02-11 Tue

#1751. 派生語や複合語の第1要素の音韻短縮 [phonetics][word_formation][compound][derivation][vowel][trish]

 昨日の記事「#1750. bonfire」 ([2014-02-10-1]) で触れたように,複合語の第1要素が音韻的につづまるという音韻過程は,英語史でもしばしば生じている.
 Skeat (490) の挙げている音韻規則によれば,"When a word (commonly a monosyllable) containing a medial long accented vowel is in any way lengthened, whether by the addition of a termination, or, what is perhaps more common, by the adjunction of a second word (which may be of one or two syllables), then the long vowel (provided it still retains the accent, as is usually the case) is very apt to become shortened." だという.つまり,基体に接尾辞を付した派生語や別の自由形態素を後続させた複合語において,第1要素となるもとの基体の長母音・重母音は短くなるということだ.派生語,複合語,その他の場合に分けて,Skeat (492--94) より,本来語の例をいくつか挙げてみよう.
 まずは,派生語の例.子音群が後続すると,基体の長母音・重母音は短化しやすい.

 ・ heather < heath
 ・ rummage < room
 ・ throttle < throat
 ・ harrier < hare
 ・ children < child (cf. 「#145. childchildren の母音の長さ」 ([2009-09-19-1]))
 ・ breadth < broad (cf. 「#16. 接尾辞-th をもつ抽象名詞のもとになった動詞・形容詞は?」 ([2009-05-14-1]))
 ・ width < wide (cf. 「#1080. なぜ five の序数詞は fifth なのか?」 ([2012-04-11-1]))
 ・ bliss < blithe
 ・ gosling < goose
 ・ led (pa., pp.) < lead (cf. 「#1345. read -- read -- read の活用」 ([2013-01-01-1]))
 ・ fed (pa., pp.) < feed
 ・ read (pa., pp.) < read (cf. 「#1345. read -- read -- read の活用」 ([2013-01-01-1]))
 ・ hid (pa., pp.) < hide
 ・ heard (pa., pp.) < hear

 次に,複合語の例.2子音が後続すると,とりわけ基体の母音の短化が著しい.

 ・ bonfire < bone (cf. 「#1750. bonfire」 ([2014-02-10-1]))
 ・ breakfast < break (cf. 「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1]))
 ・ cranberry < crane
 ・ futtocks < foot (+ hooks)
 ・ husband, hustings, hussif, hussy < house (cf. 「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1]))
 ・ Lammas < loaf (+ mass)
 ・ leman < lief (+ man)
 ・ mermaid < mere (cf. 「#115. 男の人魚はいないのか?」 ([2009-08-20-1]))
 ・ nostril < nose
 ・ sheriff < shire (+ reeve)
 ・ starboard < steer
 ・ Whitby, Whitchurch, whitster, whitleather, Whitsunday < white
 ・ Essex < East
 ・ Sussex, Suffolk < South

 その他のケースとして,後続する子音群によるものではなく,強勢に起因するとみられる例がある.
 
 ・ cushat < cow (+ shot)
 ・ forehead < fore (cf. 「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1]))
 ・ halyard < hale
 ・ heifer < high
 ・ knowledge < know
 ・ shepherd < sheep
 ・ stirrup < sty (+ rope)
 ・ tuppence < two (+ pence)
 ・ thrippence < three (+ pence)
 ・ fippence < five (+ pence)
 ・ holiday, halibut, hollihock < holy (cf. 「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1]))

 ・ Skeat, Walter W. Principles of English Etymology. 1st ser. 2nd Rev. ed. Oxford: Clarendon, 1892.

Referrer (Inside): [2020-03-01-1] [2015-05-31-1]

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2013-12-17 Tue

#1695. 句動詞の品詞転換 [conversion][phrasal_verb][compound][word_formation][diatone]

 近代英語以降,品詞転換 (conversion) が生産力を増してきた経緯については,「#190. 品詞転換」 ([2009-11-03-1]) や「#1414. 品詞転換はルネサンス期の精力と冒険心の現われか?」 ([2013-03-11-1]) などの記事で取り上げてきた.品詞転換のなかでも,特に現代英語になってはやり出したのが,句動詞の名詞への転換である.「#420. 20世紀後半にはやった二つの語形成」 ([2010-06-21-1]) では,sell-out, write-off, call-up, take-over, breakdown などの例を挙げ,複合による語形成という観点からこれらを headless compounds あるいは exocentric compounds と呼んだが,句動詞からの転換ととらえたほうがわかりやすいかもしれない.ただし,対応する句動詞がない love-in, think-in などの名詞もあるので,その場合には転換とは考えられず,直接の複合による語形成ということになる.
 ほとんどの場合,句動詞は本来語の要素を用いるので,ロマンス系形の派生語と比べると,直接的に心に響く.力強く感情的で,気取らない口語風といえばよいだろうか.Potter (171) も次のように述べている.

Among the commonest of recent shifts are those of Germanic-derived phrasal verbs into nouns. These new forms are felt to be more forceful and vigorous than those Latin-derived synonyms which they so often supplant.


 Potter (172--73) が挙げている例を列挙すると,breakaway, breakdown, breakout, breakthrough, breakup, buildup, dropout, followup, frameup, getaway, getby, getout, gettogether, getup, hideout, holdup, hookup, layout, leadin, leftover, letup, makeup, payoff, rakeoff, sellout, setback, setup, shakeup, shareout, showdown, stepup, takeoff, takeover, throwaway, walkout, walkover となるが,電子辞書で検索すると他にいくらでも出てくる.例えば,OALD8 で -away を後方一致検索すると,+breakaway, castaway, +cutaway, getaway, +giveaway, hideaway, layaway, +runaway, stowaway, takeaway, tearaway などがヒットする.+ を付したものは限定形容詞としても用いられ,他にも形容詞としてのみ用いられる flyaway, foldaway, soaraway, throwaway なども見つかる.句動詞→形容詞の転換例も少なくないようで,むしろ名詞への転換よりも時間的に先行しているものもある.
 away にとどまらずに主要な前置詞で同じように後方一致検索をかけて関連語の一覧を作ろうと思ったが,これは少々時間がかかりそうなので,今回は見送っておく.初出年代を逐一チェックする必要があるが,後期近代英語から現代英語にかけての時期に出現したものが多そうである.
 句動詞からの転換の生産力そのものが研究対象になるほか,名前動後 (diatone) の強勢パターンの観点からも,句動詞由来の名詞・形容詞は要注目である.

 ・ Potter, Simon. Changing English. London: Deutsch, 1969.

Referrer (Inside): [2015-08-14-1]

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2012-06-18 Mon

#1148. 古英語の豊かな語形成力 [oe][lexicology][derivation][compound][compounding][word_formation][productivity][kenning]

 古英語の語形成 (word formation) が,派生 (derivation) や複合 (compounding) により,著しく豊かであることは,古英語の文法書や英語史の概説書を通じてよく知られている.Baugh and Cable (64--65) では,印象的な例として,古英語 mōd "mood, heart, mind, spirit; boldness, courage, pride, haughtiness" という1つの語根から,100以上の語が形成されるという事実が紹介されている.100個とまではいかないが,そこで挙げられている語を,意味とともに列挙してみよう.

 ・ mōdig "spirited, bold, high-minded, arrogant, stiff-necked"
 ・ mōdiglic "magnanimous"
 ・ mōdiglīce "boldly; proudly"
 ・ mōdignes "magnanimity; pride"
 ・ mōdigian "to bear oneself proudly or exultantly; to be indignant, to rage"
 ・ gemōdod "disposed; minded"
 ・ mōdfull "haughty"
 ・ mōdlēas "spiritless"

 ・ mōdsefa "mind, thought, understanding"
 ・ mōdgeþanc "mind, thought, understanding"
 ・ mōdgeþoht "mind, thought, understanding"
 ・ mōdgehygd "mind, thought, understanding"
 ・ mōdgemynd "mind, thought, understanding"
 ・ mōdhord "mind, thought, understanding"

 ・ mōdcræft "intelligence"
 ・ mōdcræftig "intelligent"

 ・ glædmōdnes "kindness"
 ・ mōdlufu "affection"
 ・ unmōd "despondency"
 ・ mōdcaru "sorrow"
 ・ mōdlēast "want of courage"
 ・ mādmōd "folly"
 ・ ofermōd "pride"
 ・ ofermōdigung "pride"
 ・ ofermōdig "proud"
 ・ hēahmōd "proud; noble"
 ・ mōdhete "hate"

 ・ micelmōd "magnanimous"
 ・ swīþmōd "great of soul"
 ・ stīþmōd "resolute; obstinate"
 ・ gūþmōd "warlike"
 ・ torhtmōd "glorious"
 ・ mōdlēof "beloved"

 Hall の古英語辞書(第2版)で mōdig 周辺をのぞくと,ほかにも関連語のあることがわかる.

MOD in Hall's Dictionary

 確かに古英語の語形成の "resourcefulness" には驚く.複合に関しては,その延長線上に kenning という文飾的技巧のあることを指摘しておこう.
 ただし,この "resourcefulness" が古英語の共時的な生産性を表わすものかどうかという点については熟慮を要する.[2011-05-28-1]の記事「#761. 古英語の derivation は死んでいたか」で考察したように,この "resourcefulness" は,古英語以前からの通時的な派生・複合の結果が累々と蓄積され,豊かな語彙ネットワークとして古英語に共時的に現われているということではないか.synchronic productivity と diachronic productivity とを分けて考える必要があるのではないか.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 5th ed. London: Routledge, 2002.
 ・ Hall, John Richard Clark, ed. A Concise Anglo-Saxon Dictionary. 2nd ed. New York: Macmillan, 1916.

Referrer (Inside): [2020-03-24-1] [2016-08-25-1]

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2012-02-07 Tue

#1016. pangram の例を追加 [word_play][japanese][alphabet][etymology][compound][combining_form]

 [2012-01-29-1]の記事「#1007. Veldt jynx grimps waqf zho buck.」で,アルファベットの26字母すべてを用いて文を作る pangram ということば遊びを紹介した.
 その記事で,よく知られたものとして,タイピストがタイプ確認に利用したという The quick brown fox jumps over the lazy dog. を紹介したが,この pangram とその亜種は,現在,通信業界で "fox message" (FOXメッセージ)と呼ばれており,通信テストのために利用されているというから,pangram は単なることば遊びである以上に,実用性も兼ね備えているというべきだろう.
 pangram という語は,pan "all" + gram "letter" というギリシア語の combining form を組み合わせた neo-classical compound で,1933年が初出と新しいが,遊びそのものは古く,OED の "pangram" のもとに引用されている Medium Ævum からの例文を(文脈なしではあるが)一瞥したかぎりでは,13世紀よりずっと以前にさかのぼるようだ.
 英語の pangram の例について,『学研 日本語知識辞典』のミニ知識欄「英語版いろは歌」で新たに見つけたものを,以下に挙げておきたい.

The five boxing wizards jump quickly. (5人のボクシングの魔術師がすばやくジャンプする)
Mr. Jock, TV quiz Ph.D., bags few lynx. (テレビのクイズ博士ジョック氏は山猫をほとんど袋に入れない)
Quick wafting zephyrs vex bold Jim. (さやさやとそよぐそよ風が、大胆なジムを苛立たせる)
Waltz, nymph, for quick jigs vex Bud. (ワルツになさい、乙女よ、速いジグだとバドが苛立つから)


 日本語のいろは歌については,[2012-01-27-1]の記事「#1005. 平仮名による最古の「いろは歌」が発見された」で触れたが,いろは歌に先行する,同じく47字の「たゐに歌」を紹介しよう.

たゐにいでなつむわれをぞきみめすとあさりおひゆくやましろのうちゑへるこらもはほせよえふねかけぬ
(田居に出で菜摘む我をぞ君召すと 求食り追ひ行く山城の 打酔へる子ら藻は干せよ え舟繋けぬ)


 「たゐに歌」にさらに先行する平安初期の「あめつちの詞」についても触れておく.当時はまだ [e] と [je] が区別されており,47字ではなく48字からなる pangram だ.後半の「えのえお」の2つめの「え」は [je] を表わしたと考えられる.

あめ(天)つち(地)ほし(星)そら(空)やま(山)かは(川)みね(峰)たに(谷)くも(雲)きり(霧)むろ(室)こけ(苔)ひと(人)いぬ(犬)うへ(上)すゑ(末)ゆわ(硫黄)さる(猿)おふせよ(生ふせよ)えのを(榎の枝を)なれゐて(馴れ居て)


 また,『学研 日本語知識辞典』によると,明治時代に新聞「万朝報」が新いろは歌を募集したところ,「とりな歌」なる次のものが選ばれたという.

とりなくこゑすゆめさませみよあけわたるひんかしをそらいろはえておきつへにほふねむれゐぬもやのうち
(鳥鳴く声す 夢覚ませ 見よ明けわたる 東を 空色栄えて 沖つ辺に 帆船群れゐぬ 靄の中)

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2011-12-07 Wed

#954. 脚韻を踏む2項イディオム [binomial][rhyme][corpus][coca][collocation][euphony][n-gram][suffix][compound]

 昨日の記事「#953. 頭韻を踏む2項イディオム」 ([2011-12-06-1]) に引き続き,今回は,脚韻を踏む高頻度の binomial を COCA ( Corpus of Contemporary American English ) の n-gram データベースにより拾い出したい.昨日と同様に,3-gram を用い,"A and/but/or B" の形の共起表現で,かつ A と B が脚韻を踏んでいるような例を取りだした.検索結果を納めたテキストファイルはこちら
 検索結果を眺めていて今更ながら気付いたことなのだが,脚韻は頭韻に比べてパターンが見つけやすい.特に顕著なのは,脚韻の多くが,語幹の語尾に依存しているというよりは,接尾辞に依存していることだ.-ing, -ed, -ly, -al, -y, -ion, -er などの屈折接尾辞や派生接尾辞が活躍している.

positive and negative, national and international, internal and external, Friday and Saturday, teaching and learning, gifted and talented, elementary and secondary, hunting and fishing, personal and professional, presence or absence, reliability and validity, coming and going, winners and losers, physical and psychological, formal and informal, directly and indirectly, advantages and disadvantages, rising and falling, physically and mentally, buyers and sellers


 また,これも考えてみれば,さもありなんという事例なのだが,複合語の第2要素に同じ形態素を用いることにより韻を踏んでいる例も多い.一種の self-rhyme ではある.

Friday and Saturday, children and grandchildren, Saturday and Sunday, hardware and software, himself or herself, formal and informal, parents and grandparents, direct and indirect, buyers and sellers, mother and grandmother, father and grandfather, Afghanistan and Pakistan, anything and everything, football and basketball, indoor and outdoor, direct or indirect, servicemen and women, likes and dislikes, urban and suburban, indoor and outdoor


 接尾辞を多用する屈折や派生,そして right-headed な複合を好む英語においては,脚韻を利用した2項イディオムの形成が容易であり,頻繁であることは,自然に理解できそうだ.逆から見れば,語幹の語頭音を利用する頭韻の2項イディオムの形成は,相対的に難しいということになるのかもしれない.

Referrer (Inside): [2015-09-07-1] [2011-12-08-1]

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