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pronunciation - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2023-06-04 11:37

2022-12-03 Sat

#4968. put, butcher, full, cuckoo, Beowulf [vowel][pronunciation][spelling][centralisation][phoneme]

 母音字 <u> の綴字が短母音 /ʊ/ の発音に対応するのは一見すると素直だが,英語では短母音に関する限り <u> ≡ /ʌ/ の対応のほうが普通である (ex. but, hundred, much, run, sung) .
 では,少数派である <u> ≡ /ʊ/ を示す例にはどのような単語があるのだろうか.すでに標題に挙げたものも含めて,音韻環境ごとに例を挙げてみよう(単語によっては /ʊ/ 以外の母音の発音もあり得る).Carney (145--46) を参照する.

 ・ /ʃ/ の前位置:push, bush, cushion, bushel, ambush, cushy
 ・ /tʃ/ の前位置:butcher
 ・ /s/ の前位置:pussy, brusque
 ・ /z/ の前位置:hussar
 ・ /f/ の前位置:buffet
 ・ /l/ の前位置:full (and suffix -ful), pull, bull, bullet, bulletin, bully, pulley, pullet, bullion

 音韻環境は別にして,その他 put, cuckoo, pudding などがある.また,古い,あるいは外来の固有名詞では Beowulf, Ethelwulf; Bruckner, Budda, Gluck, Grundig, Innsbruck, Irkutsk, Kuwait, Krupp, Lund, Mogul, Muslim, Mustapha, Uppsala などでも /ʊ/ を示す(あるいは示し得る).
 ちなみに今回話題になっている短母音 /ʊ/ は現代標準英語において最も生起頻度の低い音素であることを付け加えておく(see 「#1022. 英語の各音素の生起頻度」 ([2012-02-13-1])).この短母音に関する話題として,次の記事も参照.

 ・ 「#1866. putbut の母音」 ([2014-06-06-1])
 ・ 「#3822. 『英語教育』の連載第8回「なぜ bus, bull, busy, bury の母音は互いに異なるのか」」 ([2019-10-14-1])
 ・ 「#4048. much, shut, such, trust の母音と中英語方言学」 ([2020-05-27-1])

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

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2022-11-14 Mon

#4949. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第21回「「マジック e」って何?」 [notice][sobokunagimon][rensai][final_e][spelling][vowel][terminology][silent_letter][pronunciation][spelling_pronunciation_gap]

 本日は『中高生の基礎英語 in English』の12月号の発売日です.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第21回では「「マジック e」って何?」という疑問を取り上げています.

『中高生の基礎英語 in English』2022年12月号



 綴字上 matemat は語末に <e> があるかないかの違いだけですが,発音はそれぞれ /meɪt/, /mæt/ と母音が大きく異なります.母音が異なるのであれば,綴字では <a> の部分に差異が現われてしかるべきですが,実際には <a> の部分は変わらず,むしろ語尾の <e> の有無がポイントとなっているわけです.しかも,その <e> それ自体は無音というメチャクチャぶりのシステムです.多くの英語学習者が,学び始めの頃に一度はなぜ?と感じたことのある話題なのではないでしょうか.
 一見するとメチャクチャのようですが,類例は多く挙げられます.Pete/pet, bite/bit, note/not, cute/cut などの母音を比較してみてください.ここには何らかの仕組みがありそうです.少し考えてみると,語末の <e> の有無がキューとなり,先行する母音の音価が定まるという仕組みになっています.いわば魔法のような「遠隔操作」が行なわれているわけで,ここから magic e の呼称が生まれました.
 今回の連載記事では,なぜ magic e という間接的で厄介な仕組みが存在するのか,いかにしてこの仕組みが歴史の過程で生まれてきたのかを易しく解説します.本ブログでもたびたび取り上げてきた話題ではありますが,連載記事では限りなくシンプルに説明しています.ぜひ雑誌を手に取ってみてください.
 関連して以下の hellog 記事を参照.

 ・ 「#1289. magic <e>」 ([2012-11-06-1])
 ・ 「#979. 現代英語の綴字 <e> の役割」 ([2012-01-01-1])
 ・ 「#1827. magic <e> とは無関係の <-ve>」 ([2014-04-28-1])
 ・ 「#1344. final -e の歴史」 ([2012-12-31-1])
 ・ 「#2377. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (1)」 ([2015-10-30-1])
 ・ 「#2378. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (2)」 ([2015-10-31-1])
 ・ 「#3954. 母音の長短を書き分けようとした中英語の新機軸」 ([2020-02-23-1])
 ・ 「#4883. magic e という呼称」 ([2022-09-09-1])

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2022-10-29 Sat

#4933. wh の発音 [pronunciation][spelling][phonetics][phonology][phoneme][ame_bre][digraph][consonant]

 <wh> という2重字 (digraph) は疑問詞のような高頻度語に現われるので馴染み深い.しかし,この2重字に対応する発音についてよく理解している英語学習者は多くない.
 what, which を「ホワット」「フィッチ」とカタカナ書きしたり発音したりする人は多いかもしれないが,イギリス標準英語においては「ワット」「ウィッチ」である.つまり,Watt, witch とまったく同じ発音となる.音声学的にいえば無声の [ʍ] ではなく,あくまで有声の [w] ということだ.
 上記はイギリス標準英語の話しであり,アメリカ英語はその限りではなく what, which は各々 [ʍɑt], [ʍɪtʃ] が規範的といわれることもある.しかし,実際上は有声の [w] での発音が広まってきているようだ.
 <wh> の表わす子音の現状について Cruttenden を参照してみよう.

In CGB (= Conspicuous General British) and in GB speech in a more formal style (e.g. in verse-speaking), words such as when are pronounced with the voiceless labial-velar fricative [ʍ]. In such speech, which contains oppositions of the kind wine, whine, . . . /ʍ/ has phonemic status. Among GB speakers the use of /ʍ/ as a phoneme has declined rapidly. Even if /ʍ/ does occur distinctively in any idiolect, it may nevertheless be interpreted phonemically as /h/ + /w/ . . . . (Cruttenden 233)


 ちなみに上記引用文中の "CGB (= Conspicuous General British)" は Cruttenden (81) によると,"that type of GB which is commonly considered to be 'posh', to be associated with upper-class families, with public schools and with professions which have traditionally recruited from such families, e.g. officers in the navy and in some army regiments" とされる.いわゆる "RP" (= Received Pronunciation) に近いものと捉えてよいが,様々な理由から RP と呼ぶべきでないという立場があり,このような用語遣いをしているのである.
 他変種については,次の引用が参考になるだろう.

The only regional variation concerns the more regular use of [ʍ] in words with <wh> in the spelling. This happens in Standard Scottish English, in most varieties of Irish English and is often presented as the norm in the U.S., although the change from [ʍ] to /w/ seems to be more common than is thought by some. (Cruttenden 234)


 手元にあった Longman Pronunciation Dictionary (3rd ed.) の "wh Spelling-to-sound" も覗いてみた.

Where the spelling is the digraph wh, the pronunciation in most cases is w, as in white waɪt. An alternative pronunciation, depending on regional, social and stylistic factors, is hw, thus hwaɪt. This h pronunciation is usual in Scottish and Irish English, and decreasingly so in AmE, but not otherwise. (Among those who pronounce simple w, the pronunciation with hw tends to be considered 'better', and so is used by some people in formal styles only.) Learners of EFL are recommended to use plain w.


 引用の最後にある通り,私たち英語学習者は一般に <wh> ≡ /w/ と理解しておいてさしつかえないだろう.
 <wh> と関連して「#3870. 中英語の北部方言における wh- ならぬ q- の綴字」 ([2019-12-01-1]),「#3871. スコットランド英語において wh- ではなく quh- の綴字を擁護した Alexander Hume」 ([2019-12-02-1]) の記事も参照.

 ・ Cruttenden, Alan. Gimson's Pronunciation of English. 8th ed. Abingdon: Routledge, 2014.
 ・ Wells, J C. ed. Longman Pronunciation Dictionary. 3rd ed. Harlow: Pearson Education, 2008.

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2022-09-09 Fri

#4883. magic e という呼称 [oed][final_e][spelling][vowel][terminology][mulcaster][walker][silent_letter][pronunciation][spelling_pronunciation_gap]

 take, meme, fine, pope, cute などの語末の -e は,それ自体は発音されないが,先行する母音を「長音」で読ませる合図として機能する.このような用法の emagic e (マジック e)と呼ばれる.魔法のように他の母音の発音を遠隔操作してしまうからだろう.英語教育・学習上の用語としてよく知られている.
 magic e の働きや歴史の詳細は hellog より以下の記事を参照されたい.

 ・ 「#1289. magic <e>」 ([2012-11-06-1])
 ・ 「#979. 現代英語の綴字 <e> の役割」 ([2012-01-01-1])
 ・ 「#1827. magic <e> とは無関係の <-ve>」 ([2014-04-28-1])
 ・ 「#1344. final -e の歴史」 ([2012-12-31-1])
 ・ 「#2377. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (1)」 ([2015-10-30-1])
 ・ 「#2378. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (2)」 ([2015-10-31-1])
 ・ 「#3954. 母音の長短を書き分けようとした中英語の新機軸」 ([2020-02-23-1])

 今回は magic e という呼称そのものに焦点を当てたい.OED の magic, adj. (and int.) のもとに追い込み見出しが立てられている.

magic e n. (also with capital initials) (chiefly in primary school literacy teaching) a silent e at the end of a word or morpheme following a consonant, which lengthens the preceding vowel and consequently appears to transform its sound; as the e in hope, lute, casework, etc.
     Cf. silent adj. 3c.
   1918 Primary Educ. Mar. 183/2 Let us see how the a will sound after magic e is fastened on mat. (Write mate on board. Pronounce.) You see what trick he did. He changed short a into long a.
   2005 L. Wendon & L. Holt Letterland: Adv. Teacher's Guide (2009) ii. 58 It was recommended that children play-act the Magic e's function in tap and tape.


 初出は100年ほど前の教育学雑誌となっている.19世紀や18世紀には遡らない,比較的新しめの表現ではないかと予想していたが,当たったようだ.
 上記で Cf. として挙げられている silent, adj. and n. を参照してみると,3c の項に "silent e" に関する記述があった.

c. Of a letter: written but not pronounced. Cf. mute adj. 4b, magic e n. at magic adj. Compounds.
     Sometimes designating a letter whose absence would have no impact on the pronunciation of the word, as b in doubt, and sometimes designating a letter that has a diacritic function, as final e indicating the length of the vowel of a preceding syllable, as in mute or fate.
   1582 R. Mulcaster 1st Pt. Elementarie xvii. 113 Som vse the same silent e, after r, in the end, as lettre, cedre, childre, and such, where methink it were better to be the flat e, before r, as letter, ceder, childer.
   1775 J. Walker Dict. Eng. Lang. sig. 4Ov Persuade, whose final E is silent, and serves only to lengthen the sound of the A in the last syllable.
   1881 E. B. Tylor Anthropol. vii. 179 The now silent letters are relics of sounds which used to be really heard in Anglo-Saxon.
   2017 Hispania 100 286 The letter 'h' is silent in Spanish and is often omitted by those who are not familiar with the spelling of a word.


 magic e は "silent e" と同値ではない.前者は後者の特殊事例である.上の引用で Mulcaster からの初例は magic e のことを述べているわけではないことに注意が必要である.一方,2つ目の Walker からの例は,確かに magic e のことを述べている.
 さらに mute, adj. and n.3 の 4b の項を覗いてみると "mute e" という呼び方もあると分かる.これは "silent e" と同値である.この呼称の初例は次の通りで,そこでは実質的に magic e のことを述べている.

1840 Proc. Philol. Soc. 3 6 It gradually was established..that when a mute e followed a single consonant the preceding vowel was a long one.

Referrer (Inside): [2022-11-14-1]

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2022-03-20 Sun

#4710. <o> ≡ /u:/ となる例 [spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][vowel]

 英語の綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) の問題を取り上げ始めるとキリがなく,実際にキリなく本ブログでも記事を書いてきたが,ずっと気になっている未解決の問題がある.標題の <o> ≡ /u:/ となるケースである.これについては何度か質問も寄せられてきたし,私自身もおおいに関心があるのだが,自身として解決にも納得にも至っていない.そこで,まず関係する例を挙げるところから始め,今後の調査につなげたいと思う.
 最も身近な例は do, to, who, whose 辺りだろうか.ああ,と思ってしまうほど身近である.does, done については「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1]) で取り上げたのだが,肝心な do については考えてこなかった.who については「#3630. なぜ who はこの綴字でこの発音なのか?」 ([2019-04-05-1]) で取り上げたが,どうも煮え切らない答えだ.これらの仲間として two を挙げてもよいだろうか.これについては「#184. two の /w/ が発音されないのはなぜか」 ([2009-10-28-1]),「#1324. two の /w/ はいつ落ちたか」 ([2012-12-11-1]) で取り上げた.
 次に move, remove, removal; prove, approve, approval, improve などの <-ove> の仲間たちである.これも「#1882. moveprove にかつて見られた前母音とその影響」 ([2014-06-22-1]) で取り上げたが,ここでの <o> ≡ /u:/ の関係について,私自身もよく分かっていない.
 そして,lose という不可思議な例がある.OED によると,次のように解説がある.類義語や方言形の相互の影響により,通常の綴字と発音の対応関係が狂ったという説である.

The regular modern English pronunciation representing Old English losian would be /ləʊz/; the standard English pronunciation /luːz/ seems to be due to association with LOOSE v., which in some contexts (e.g. to loose hold) closely approaches this verb in meaning. Many dialects have the phonetic form normally descending from the Old English verb. The Scottish form loss is probably evolved from the past tense and past participle lost.


 他には,半ばランダムに shoe, canoe; tomb, womb 辺りを関連例として挙げておこう.
 そして,固有名詞として,イギリス首相を務めた Sir Alec Frederick Douglas-HomeHomethe Stone of SconeScone に見られるほか Brome, Scrome もある (Carney 353) .
 上記の諸例は <o> ≡ /u:/ を体現するが,この関係をなすに至った歴史的経緯は,おそらく個別に説明しなければならないだろう.一括して説明できないばかりか,一つひとつが難問である.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

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2022-03-15 Tue

#4705. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第13回「なぜ one, two はこの綴字でこの発音なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][numeral][spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][hellog-radio]

 この新年度も,1年間続いてきたNHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」での連載「英語のソボクな疑問」が継続されることになりました.読者の方々に毎月ご愛読いただいたおかげと感謝しております.ありがとうございました.ソボクな疑問を歴史的な観点からなるべくわかりやすく解説するというのが連載の趣旨です.引き続きご愛読のほど,よろしくお願いいたします.
 昨日発売された4月号テキストに,連載の第13回が掲載されました.新年度に向けての一発目は「なぜ one, two はこの綴字でこの発音なの?」という綴字と発音の乖離に関する話題です.皆さん,すでに見慣れ,読み慣れている単語ですので不思議など感じないかと思いますが,普通であれば one で「ワン」,two で「トゥー」などとはひっくり返っても読めないはずです.なぜ素直に「オネ」や「トゥウォー」などとならないのでしょうか.そこには,あっと驚く歴史的な理由があったのです.

『中高生の基礎英語 in English』2022年4月号



 one, two に限らず,英語には発音と綴字がかみ合っていない単語がごまんとあります.実のところ基本的な単語であればあるほどチグハグなケースが多いので,初学者にとっては特にキツいのです.規則から入るのではなく,いきなり不規則から入るに等しいわけですから.
 連載記事ではできる限り丁寧な説明を心がけました.同じ問題について本ブログや音声メディアでも取り上げたことがありますので,そちらも合わせて参照し,理解を深めていただければと思います.関連する記事セットよりどうぞ.音声メディアについては,以下より直接お聴きください.


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2022-03-11 Fri

#4701. スペリング <ae> に対応する音価 [spelling][ligature][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][greek][latin][loan_word][gvs][combining_form][mond]

 現代英語で <ae> というスペリングは稀である.この2文字を組み合わせて1文字とした合字 (ligature) である <æ> に至っては,(発音記号を除けば)ますます稀だ.稀どころか,通常はお目にかからないだろう.近代の印刷では encyclopædiamediæval などのスペリングが普通にみられたが,現在では合字ではなく2文字に分けて encyclopaediamediaeval と綴られるようになり,アメリカ式ではそもそも <ae> すら用いずに <e> で済ませて encyclopediamedieval のスペリングが一般的である.
 古英語以来,<æ> や <ae> のスペリングは盛衰を繰り返してきた.古英語では <æ> はアルファベットを構成する正規の文字であり,ごく普通に用いられた.ところが,12--13世紀には衰退し,対応する母音は単純に <a> で綴られるようになった(cf. 「#3998. なぜ applea は普通の「ア」ではなく「エァ」に近い発音なのですか?」 ([2020-04-07-1])).
 ところが,ギリシア語やラテン語から借用語が大量に流入した16世紀に,それらの古典語に含まれていた aiae が英語においては <æ> の文字で取り込まれることになり,リバイバルを果たした.しかし,上記のように近現代にかけて合字 <æ> は2文字の <ae> で綴りなおされることになり,さらに <e> に簡略化されることも多くなり,現在に至る.現在では <ae> も <æ> も日の目を見ないスペリングに成り果てている (Upward and Davidson 179--80) .
 稀に <ae> のスペリングを保持しているものは,ほぼすべてギリシア語 <ai> を含んだ借用語,あるいはそれがラテン語を経由して <ae> と変化したものに由来するといってよい.英語では古くは原則として <ae> ≡ /eː/ の対応関係があったが,大母音推移 (gvs) を経て,今では <ae> ≡ /iː/ の対応関係が一般的である.Carney (283) より,いくつか単語例を示そう.

 ・ in §Greek words --- aegis, aeon, aesthetic, anaemia, anaesthetist, archaeology, encyclopaedia, leukaemia, paean, etc.;
 ・ in classical names --- Aegean, Aeneas, Aesop, Athenaeum, Caesar, Judaea, Bacchae, Mycenae, Thermopylae;
 ・ the Latin feminine plural in scientific terms --- alumnae, aortae, lacunae,, lamellae, ulnae, etc.


 ところが,<ae> に <r> が後続する場合に関しては独自の事情があり,現在 <aer> ≡ /ɛə(r)/ が成立している.aeration, aerial, aerobic, aerodrome, aeronaut, aerosol, anaerobic などである.ほぼすべてがギリシア語に由来し,近代の借用語・造語として連結形 (combining_form) aero- を含んでいある (Carney 282) .語源的にも意味的にも air /ɛə(r)/ と関連するため, 互いの発音が結びつけられただろうことは容易に想像できる.ちなみに「飛行機」を意味する airplane について,イギリス英語では aeroplane の語形・綴字が根強い.
 なお本記事は,先日「Mond」に寄せられた aerobics などの接頭辞 aero- を,「エアロ」と発音するのはなぜでしょうか?という問いに焚きつけられて執筆した.そちらへの回答もどうぞ.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.
 ・ Upward, Christopher and George Davidson. The History of English Spelling. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2011.

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2022-01-31 Mon

#4662. 都立高入試の英語スピーキングテストを巡る問題 [elt][khelf][world_englishes][rp][walker][pronunciation]

 昨年末,12月27日のことになりますが,朝日新聞 Edua「どうなる中学・高校入試 都立高入試の英語スピーキングテスト 教員らが「導入反対」の記者会見」と題する記事が掲載されました.ゼミ生の1人がこの問題を紹介してくれまして,少々遅ればせながらもここ数日で内輪のフォーラム khelf で議論が活発化してきています.
 いろいろと論点はあるのですが,とりわけ注目すべきは以下の点です(同記事より引用).

評価の信頼性については,どのような間違いがどれだけ減点されるか不透明だとし,特に都教委が示している採点基準にある「音声」の項目(3点満点)について疑問を呈した.この項目は,「母語の影響を非常に強く受けている」だと1点,「母語の影響を強く受けている」だと2点,「母語の影響を受けている場合があるが,概(おおむ)ね正しい」だと3点としている.法政大講師で新英語教育研究会長の池田真澄さんは「厳密な区別がつくとは思えない.日本語話者は日本語の影響は必ず受けており,気にしていたらまともに話なんてできない.世界には多様な英語があるのに,入試は別というのはおかしいのではないか」と話す.


 ツッコミだしたらキリがないというのは,まさにこのことです.だからこそフォーラム内で盛り上がっているというわけで,ある意味でとてもよい論題となっています.(ただし,こちらのページより令和3年度のプレテスト採点基準では「母語の影響」に関する項目は削除されています.)
 英語史研究者の立場から言えることは,発音を中心とする話し言葉に関する強い規範化は,いまだかつて例がないということです.18世紀の規範主義の時代の発音辞書についても,19世紀後半からの RP についても,あくまで目指すべき発音を示したものであり,今回の「公的な試験での点数化」という強さの規範化には遠く及びません(cf. 「#768. 変化しつつある RP の地位」 ([2011-06-04-1]),「#1456. John Walker の A Critical Pronouncing Dictionary (1791)」 ([2013-04-22-1]),「#3356. 標準発音の整備は18世紀後半から」 ([2018-07-05-1])).話し言葉について標準化・規範化し得る水準は,せいぜい "focused" にとどまり "fixed" を目指すことは現実には不可能です (cf. 「#3207. 標準英語と言語の標準化に関するいくつかの術語」 ([2018-02-06-1])) .そのような目標を,せめて試験では何とか実現したいということなのでしょうか.
 また,現代世界の "World Englishes" では,多様な英語の発音が行なわれているという事実があります.教育上,参照すべき英語変種や発音を定めることは必要です.しかし,一方で他の変種や発音の存在を認めることも必要です.両方の必要性に目配りすべき状況において,上記の採点基準のような,一方にのみ振り切った方針を取るのは適切ではないと考えます.
 本ブログの読者の皆さんも,この問題について考えてみてはいかがでしょうか.

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2022-01-20 Thu

#4651. なぜ fire から派生した形容詞 fiery はこの綴字なのですか? [sobokunagimon][spelling][pronunciation][adjective][gvs][vowel][syllable][analogy][suffix]

 この素朴な疑問は私も長らくナゾだったのですが,最近ゼミの学生に指摘してもらう機会があり,改めて考え出した次第です.fire に派生接尾辞 -y を付すのであれば,そのまま *firy でよさそうなものですが,なぜ fiery となるのでしょうか.expireexpiry, miremiry, spirespiry, wirewiry などの例はあるのですが,firefiery のタイプは他に例がないようなので,ますます不思議です.
 暫定的な答え,あるいはヒントとしては,近代英語期に fire が1音節ではなく2音節で,fiery が2音節ではなく3音節で発音されたことが関係するのではないかと睨んでいます.
 教科書的にいえば,中英語の [fiːr], [ˈfiː ri] は大母音推移 (gvs) を経て各々 [fəɪr], [ˈfəɪ ri] へ変化しました.長母音が2重母音に変化しただけで,音変化の前後でそれぞれ音節数に変化はありませんでした.
 しかし,語幹末の r の影響で,その直前に渡り音として曖昧母音 [ə] が挿入され,それが独立した音節の核となるような発音が,初期近代英語期には変異形として存在したようなのです.要するに fi-er, fi-e-ry のようなプラス1音節の異形態があったということです.似たような音構成をもつ語について,その旨の報告が同時代からあります.Jespersen (§11.11)の記述を見てみましょう.

The glide before /r/ was even before that time [= 1588 or †1639] felt as a distinct vowel-sound [ə], especially after the new diphthongs that took the place of /iˑ, uˑ/. This is shown by the spelling in some cases after ow: shower < OE scūr bower < OE būr . cower < Scn kūra . lower by the side of lour < Scn lūra 'look gloomy'. tower < F tour; cf. on flower and flour 3.49. Thus also after i in brier, briar, frier, friar, ME brere, frere; fiery, fierie, fyeri (from the 16th c.) for earlier fyry, firy. The glide-vowel [ə] is also indicated by Hart's phonetic spellings 1569: [feiër/ fire (as /heiër/) higher) . /meier/ mire /oˑer/ oar . [piuër] pure . /diër/ dear . [hier/ here (hie r, which also occurs, many be a misprint).


 要するに,fire の形容詞形に関する限り,もともとは発音上2音節であり,綴字上も2音節にみえる由緒正しい firy もあったけれども,初期近代英語期辺りには発音上渡り音が挿入されて3音節となり,綴字上もその3音節発音を反映した fiery が併用されたということのようです.そして,もとの名詞でも同じことが起こっていたと.
 ところが,現代英語の観点から振り返ってみると,名詞では渡り音を反映していないかのような fire の綴字が標準として採用され,形容詞では渡り音を反映したかのような fiery の綴字が標準として採用されてしまったように見えます.どうやら,英語史では典型的な(というよりも,お得意の)「ちぐはぐ」が,ここでも起こってしまったということではないでしょうか.
 あるいは,意味上の「激しさ」つながりで連想される形容詞 fierce との綴字上の類推 (analogy) もあったかもしれないと疑っています.いかがでしょうか.
 上の引用でも触れられていますが,flowerflour が,同語源かつ同じ発音でありながらも,異なる綴字に分化した事情と,今回の話題は近いように思われます.「#183. flowerflour」 ([2009-10-27-1]),「#2440. flower と flour (2)」 ([2016-01-01-1]),および 「flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」 (heldio) も参照ください.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 1. Sounds and Spellings. London: Allen and Unwin, 1909.

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2022-01-06 Thu

#4637. 18世紀の非標準的な発音の復元法 [dialectology][standardisation][prescriptive_grammar][philology][ortheopy][prescriptivism][pronunciation][lexicography][methodology][walker][reconstruction]

 英語史研究では,近代英語期,とりわけ18世紀の非標準的発音の同定は難しいと信じられてきた.18世紀といえば「理性の時代」であり,言語についていえばまさに規範主義 (prescriptivism) の時代である.「#1456. John Walker の A Critical Pronouncing Dictionary (1791)」 ([2013-04-22-1]) を代表例として,標準的で規範的な発音を提示する辞書が次々と出版された時代だった.非標準的な地域方言や社会方言が記録される余地などないと信じられてきた.
 しかし,考えてみれば,規範主義の言語論というものは「○○という発音・語法を用いるべし」というだけではなく「△△という発音・語法は用いるべからず」と説くことも多い.つまり,禁止すべきとされる「△△」は当時の非標準的な言語項を表わしているものと解釈できるのである.何がダメだったのかを理解することは,すなわち当時の一般的な言語慣習を復元することにつながるのである.これは文献学上の証拠 (evidence) を巡るメソドロジーとして一種のどんでん返しといってよい.Beal の論文は,まさにこのどんでん返しを披露してくれている.Beal (345--46) の結論部を引用しよう.

I hope that I have demonstrated that, even though the authors of these works [= prescriptive works] were prescribing what they viewed as 'correct' pronunciation, a proto-RP used by educated, higher-class speakers in London, they were often acute observers of the variants which were proscribed. In telling their readers which pronunciations to avoid, they provide us with a record of precisely those non-standard features that were most salient at the time. Such evidence can fill in the gaps in the histories of dialects, provide answers to puzzles such as those surrounding the reversal of mergers, and, perhaps most importantly, can provide time-depth to the 'apparent-time' studies so prevalent in current variationist work.


 文献学においては証拠の問題が最重要であることを,再考させてくれる.

 ・ Beal, Joan C. "Marks of Disgrace: Attitudes to Non-Standard Pronunciation in 18th-Century English Pronouncing Dictionaries. Methods and Data in English Historical Dialectology. Ed. Marina Dossena and Roger Lass. Bern: Peter Lang,2003. 329--49.

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2021-12-10 Fri

#4610. marriage, carriage, verbiage [spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][noun][suffix][sound_change]

 ふと思いついた疑問.marriage/ˈmærɪʤ/ と carriage /ˈkærɪʤ/ は2音節で発音されるが,同じ <-iage> の綴字をもつ verbiage /ˈvəːbiɪʤ/ は3音節で発音される.なぜなのだろうか.
 -age はフランス語の名詞を作る接尾辞に由来する.さらに遡るとラテン語 -āticum (中性形容詞語尾)にたどりつく.英語では13世紀から見られ,14--15世紀以降,多用されるようになった.フランス語由来であるから,英語でも当初は強勢を伴って /-aːʒ/ と発音されていた.14世紀にフランス語から借用された中英語形の mariage, cariage も,フランス語にほど近い /mariˈaːʒ/, /kariˈaːʒ/ ほどの3音節の発音だったはずである.
 しかし,時とともにこの2語は「英語化」していった.音変化のルートを想像するに,(1) 強勢が第1音節に移り,(2) 第2,第3音節から強勢が奪われて -iage は /-iɪʤ/ となり,(3) 同部分がさらに弱化・短化・同化を経て /-ɪʤ/ となったのだろう.単語全体としてみれば3音節から2音節に短くなったことになる.
 一方,verbiage は3音節を保っている.上記のルートでいえば (1), (2) までは経たが (3) は経ていないという段階である.この単語は marriage, carriage よりもずっと遅く18世紀にフランス語から借用されてきたために「英語化」が十分に進んでいないということなのだろう.
 ちなみに同じ <-iage> をもつ triage /ˈtriːɑːʒ, triˈɑːʒ/ も18世紀にフランス語から借用された語だが,「英語化」のルートでは (1) の段階にあるか,あるいはまだルートに乗っていない段階にあるといえるだろう.
 <-iage> という綴字に対応する発音の種類は,借用年代と緩く連動しつつ,多様である.

Referrer (Inside): [2021-12-11-1]

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2021-09-24 Fri

#4533. OALD10 が注意を促している同音異綴語の一覧 [homonymy][homophony][lexicography][dictionary][lexicology][pronunciation]

 昨年出版された Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English の第10版に,以前の版にはなかった新タイプの注記が加えられている.同音異綴 (homophony) を示す2語(あるいは3語)の指摘である(cf. 「#286. homonymy, homophony, homography, polysemy」 ([2010-02-07-1])).
 同音異綴語 (homophone) は英語に多数ある.flour/flowerknight/night のように比較的意識に上りやすいものがある一方で,cymbal/symbolflew/flue など言われてみれば確かにそうだなという類いのものもある(ちなみに flour/flower については 「#183. flowerflour」 ([2009-10-27-1]),「#2440. flower と flour (2)」 ([2016-01-01-1]),および 「flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」 (heldio) を参照).
 「#2945. 間違えやすい同音異綴語のペア」 ([2017-05-20-1]) でいくつか例を挙げたが,OALD10 の注記を集めると93項目もの同音異綴語が指摘されている.以下に Takahashi et al. (78--80) にまとめられている一覧を引用しよう.

 ・ allowed/aloud
 ・ bare/bear
 ・ base/bass
 ・ berry/bury
 ・ blew/blue
 ・ board/bored
 ・ brake/break
 ・ buy/by/bye
 ・ cell/sell
 ・ chews/choose
 ・ chute/shoot
 ・ coarse/course
 ・ coward/cowered
 ・ crews/cruise
 ・ cue/queue
 ・ cymbal/symbol
 ・ days/daze
 ・ dear/deer
 ・ desert/dessert
 ・ dew/due
 ・ feat/feet
 ・ flour/flower
 ・ flew/flu
 ・ forth/fourth
 ・ grate/great
 ・ groan/grown
 ・ hear/here
 ・ heal/heel/he'll
 ・ air/heir
 ・ higher/hire
 ・ hole/whole
 ・ idle/idol
 ・ colonel/kernel
 ・ knight/night
 ・ lead/led
 ・ lessen/lesson
 ・ mail/male
 ・ meat/meet
 ・ miner/minor
 ・ missed/mist
 ・ muscle/mussel
 ・ knew/new
 ・ knows/nose
 ・ oar/or/ore
 ・ one/won
 ・ pain/pane
 ・ passed/past
 ・ peace/piece
 ・ pair/pare/pear
 ・ peak/peek/pique
 ・ plain/plane
 ・ praise/prays/preys
 ・ principal/principle
 ・ profit/prophet
 ・ key/quay
 ・ rap/wrap
 ・ raise/rays/raze
 ・ read/red
 ・ read/reed
 ・ rain/reign/rein
 ・ road/rode/rowed
 ・ role/roll
 ・ rose/rows
 ・ rouse/rows
 ・ sail/sale
 ・ scene/seen
 ・ cent/scent/sent
 ・ seas/sees/seize
 ・ cereal/serial
 ・ sight/site
 ・ soar/sore
 ・ sole/soul
 ・ sew/so/sow
 ・ stationary/stationery
 ・ steal/steel
 ・ storey/story
 ・ suite/sweet
 ・ son/sun
 ・ tail/tale
 ・ threw/through
 ・ tide/tied
 ・ toe/tow
 ・ vain/vein
 ・ wail/whale
 ・ waist/waste
 ・ war/wore
 ・ weak/week
 ・ ware/wear/where
 ・ wait/weight
 ・ weather/whether
 ・ whine/wine
 ・ which/witch
 ・ warn/worn

 眺めていると,各単語の綴字と発音のよい勉強になる.なかにはヘェ?と思うものもあるのでは?

 ・ Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English. 10th ed. Ed. A. S. Hornby. Oxford: Oxford UP, 2020.
 ・ Takahashi, Rumi, Yukiyoshi Asada, Marina Arashiro, Kazuo Dohi, Miyako Ryu, and Makoto Kozaki. "An Analysis of Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English, Tenth Edition." Lexicon 51 (2021): 1--106.

Referrer (Inside): [2022-06-06-1] [2021-10-24-1]

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2021-09-19 Sun

#4528. イギリス諸島の周辺地域に残る3つの発音 [pronunciation][h][r][rhotic][vowel][centralisation][phonology][phonetics][phoneme][substratum_theory][celtic_hypothesis][cockney]

 イギリス諸島全体のなかで中心的な英語といえば,ブリテン島のイングランドのロンドンを中心とするイングランド南部標準英語のことを指すのが普通である.これ以外のイングランドの南西部・中部・北部や,ウェールズ,スコットランド,アイルランド,その他の島嶼部などをまとめて周辺地域と呼ぶことにすると,この周辺地域の英語変種にはしばしば古い言語特徴 (relic features) が観察される.音韻論的な特徴として,Corrigan (355) より3つの有名な事例を挙げておこう.

(1) "FOOT/STRUT split"
 歴史的な /ʊ/ が,中心地域で /ʊ/ と /ʌ/ に分裂した音韻変化をさす.17世紀に生じた中舌化 (centralisation) と呼ばれる過程で,これにより母音音素が1つ増えたことになる.一方,周辺地域では分裂は起こっていないために footstrut は相変わらず /ʊt/ で脚韻を踏む.「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1]) で方言地図を示したように,分裂の有無の方言分布は明確である.

(2) "non-prevocalic /r/"
 この話題は本ブログでも rhotic の多くの記事で話題にしてきた.「#452. イングランド英語の諸方言における r」 ([2010-07-23-1]) に方言地図を掲載しているが,周辺部では母音前位置に来ない歴史的な r が実現され続けているが,中心部では実現されない.スコットランドやアイルランドも rhotic である(ただしウェールズでは一部を除き non-rhotic である).

(3) "h-dropping"
 Cockney 発音としてよく知られている h が脱落する現象.実は Cockney に限らず,初期近代英語期以降,中心地域で広く行なわれてきた.h-dropping は地域変種としての特徴ではなく社会変種としての特徴とみられることが多いが,周辺地域の変種ではあまり見られないという事実もあり,ことは単純ではない.ケルト系の基層をもつ英語変種では一般的に語頭の h が保持されている.

 このように周辺地域は古い特徴を保持していることが多いが,純粋に地理的な観点から分布を説明するだけで十分なのだろうか.これらの地域は,地理的な意味で周辺であるだけでなく,ケルト系言語・方言を基層にもつ英語変種が行なわれている地域として民族的な意味でも周辺である.Corrigan は上記の特徴がケルト語基層仮説によるものだと強く主張しているわけではないが,それを示唆する書き方で紹介している.

 ・ Corrigan, Karen P. "The Atlantic Archipelago of the British Isles." Chapter 17 of The Oxford Handbook of World Englishes. Ed. by Markku Filppula, Juhani Klemola, and Devyani Sharma. New York: OUP, 2017. 335--70.

Referrer (Inside): [2023-05-23-1]

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2021-09-15 Wed

#4524. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第7回「なぜ know や high には発音されない文字があるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][silent_letter][spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][link]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の10月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」も第7回となっています.今回の話題は「なぜ know や high には発音されない文字があるの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2021年10月号



 英語には綴字では書かれているのに発音されない文字というのがありますね.これは黙字 (silent_letter) と呼ばれ,英語に関する素朴な疑問の定番といってよい話題です.歴史的な由来としてはいろいろなパターンがあるのですが,最も多いのが,かつてはその文字がきちんと発音されていたというパターンです.昔の英語では,know は「クノウ」,high は「ヒーヒ」などとすべて文字通りに発音されていたのが,後に発音の変化により問題の音が消えてしまったというケースが多いのです.その一方で綴字は古いままに据え置かれ,現在までゾンビのように生き残っているというわけです.要するに,綴字が発音の変化に追いついていかなかったという悲劇ですね.
 今回の話題と関連して,以下の記事を発展編として読んでみてください.英語の綴字には,本当に黙字が多いです.

 ・ 「#4164. なぜ know の綴字には発音されない k があるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-09-20-1])
 ・ 「#122. /kn/ で始まる単語」 ([2009-08-27-1])
 ・ 「#1095. acknowledge では <kn> が /kn/ として発音される」 ([2012-04-26-1])
 ・ 「#3675. kn から k が脱落する音変化の過程」 ([2019-05-20-1])
 ・ 「#1290. 黙字と黙字をもたらした音韻消失等の一覧」 ([2012-11-07-1])
 ・ 「#210. 綴字と発音の乖離をだしにした詩」 ([2009-11-23-1])
 ・ 「#1195. <gh> = /f/ の対応」 ([2012-08-04-1])
 ・ 「#2085. <ough> の音価」 ([2015-01-11-1])
 ・ 「#2590. <gh> を含む単語についての統計」 ([2016-05-30-1])
 ・ 「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1])

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2021-08-21 Sat

#4499. いかにして Shakespeare の発音を推定するか [shakespeare][pronunciation][reconstruction][spelling][rhyme][pun]

 「#4482. Shakespeare の発音辞書?」 ([2021-08-04-1]) で論じたように,「Shakespeare の発音」というときに何を意味しているかに気をつける必要はあるが,一般的に Shakespeare のオリジナル発音を推定(あるいは再建 (reconstruction))しようと試みるときに,頼りになる材料が4種類ある.綴字 (spelling),脚韻 (rhyme),地口 (pun),同時代の作家のコメントである.Crystal (xx) が,分かりやすい例とともに,4つを簡潔に紹介しているので,ここに引用する.

- In RJ 1.4.66, when Mercutio describes Queen Mab as having a whip with 'a lash of film', the Folio and Quarto spellings of philome indicate a bisyllabic pronunciation, 'fillum' (as in modern Irish English).
- MND 3.2.118, Puck's couplet indicates a pronunciation of one that no longer exists in English: 'Then will two at once woo one / That must needs be sport alone'.
- In LLL 5.2.574, there is a pun in the line 'Your lion, that holds his pole-axe sitting on a close-stool, will be given to Ajax' which can only work if we recognize . . . that Ajax could also be pronounced 'a jakes' (jakes = 'privy').
- In Ben Johnson's English Grammar (1616), the letter 'o' is described as follows: 'In the short time more flat, and akin to u; as ... brother, love, prove', indicating that, for him at least, prove was pronounced like love, not the other way round.


 印欧祖語の再建などでも同様だが,これらの手段の各々について頼りとなる度合いは相対的に異なる.綴字の標準化が完成していないこの時代には,綴字の変異はかなり重要な証拠になるし,脚韻への信頼性も一般的に高いといってよい.一方,地口は受け取る側の主観が介入してくる可能性,もっといえば強引に読み込んでしまっている可能性があり,慎重に評価しなければならない(Shakespeare にあってはすべてが地口だという議論もあり得るのだ!).同時代の作家による発音に関するメタコメントについても,確かに参考にはなるが,個人的な発音の癖を反映したものにすぎないかもしれない.同時代の発音,あるいは Shakespeare の発音に適用できるかどうかは別途慎重に判断する必要がある.
 複数の手段による結論が同じ方向を指し示し,互いに強め合うようであれば,それだけ答えとしての信頼性が高まることはいうまでもない.古音の推定は,複雑なパズルのようだ.関連して「#437. いかにして古音を推定するか」 ([2010-07-08-1]),「#758. いかにして古音を推定するか (2)」 ([2011-05-25-1]),「#4015. いかにして中英語の発音を推定するか」 ([2020-04-24-1]) も参照.

 ・ Crystal, David. The Oxford Dictionary of Original Shakespearean Pronunciation. Oxford: OUP, 2016.

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2021-08-04 Wed

#4482. Shakespeare の発音辞書? [shakespeare][pronunciation][reconstruction][phonetics][phonology][rhyme][pun]

 Crystal による The Oxford Dictionary of Original Shakespearean Pronunciation をパラパラと眺めている.Shakespeare は400年ほど前の初期近代の劇作家であり,数千年さかのぼった印欧祖語の時代と比べるのも妙な感じがするかもしれないが,Shakespeare の「オリジナルの発音」とて理論的に復元されたものである以上,印欧祖語の再建 (reconstruction) と本質的に異なるところはない.Shakespeare の場合には,綴字 (spelling),脚韻 (rhyme),地口 (pun) など,再建の精度を高めてくれるヒントが圧倒的に多く手に入るという特殊事情があることは確かだが,それは質の違いというよりは量・程度の違いといったほうがよい.実際,Shakespeare 発音の再建・復元についても,細かな音価の問題となると,解決できないことも多いようだ.
 この種の「オリジナルの発音」の辞書を用いる際に,注意しなければならないことがある.今回の The Oxford Dictionary of Original Shakespearean Pronunciation の場合でいえば,これは Shakespeare の発音を教えてくれる辞書ではないということだ! さて,これはどういうことだろうか.Crystal (xi) もこの点を強調しているので,関連箇所を引用しておきたい.

The notion of 'Modern English pronunciation' is actually an abstraction, realized by hundreds of different accents around the world, and the same kind of variation existed in earlier states of the language. People often loosely refer to OP as an accent', but this is as misleading as it would be to refer to Modern English pronunciation as 'an accent'. It would be even more misleading to describe OP as 'Shakespeare's accent', as is sometimes done. We know nothing about how Shakespeare himself spoke, though we can conjecture that his accent would have been a mixture of Warwickshire and London. It cannot be be stated too often that OP is a phonology---a sound system---which would have been realized in a variety of accents, all of which were different in certain respects from the variety we find in present-day English.


 第1に,同辞書は,劇作家 Shakespeare 自身の発音について教えてくれるものではないということである.そこで提示されているのは Shakespeare 自身の発音ではなく,Shakespeare が登場人物などに語らせようとしている言葉の発音にすぎない.辞書のタイトルが "Shakespeare's Pronunciation" ではなく,形容詞を用いて少しぼかした "Shakespearean Pronunciation" となっていることに注意が必要である.
 第2に,同辞書で与えられている発音記号は,厳密にいえば,Shakespeare が登場人物などに語らせようとしている言葉の発音を表わしてすらいない.では何が表わされているのかといえば,Shakespeare が登場人物などに語らせようとしている言葉の音韻(論) (phonology) である.実際に当時の登場人物(役者)が発音していた発音そのもの,つまり phonetics ではなく,それを抽象化した音韻体系である phonology を表わしているのである.もちろん,それは実際の具現化された発音にも相当程度近似しているはずだとは言えるので,実用上,例えば役者の発音練習の目的のためには十分に用を足すだろう.しかし,厳密にいえば,発音そのものを教えてくれる辞書ではないということを押さえておくことは重要である.要するに,この辞書の正体は "The Oxford Dictionary of Original Shakespearean Phonology" というべきものである.
 Shakespeare に限らず古音を復元する際に行なわれていることは,原則として音韻体系の復元なのだろうと思う.その背後に実際の音声が控えていることはおよそ前提とされているにせよ,再建の対象となるのは,まずもって抽象的な音韻論体系である.
 音声学 (phonetics) と音韻論 (phonology) の違いについては,「#3717. 音声学と音韻論はどう違うのですか?」 ([2019-07-01-1]) および「#4232. 音声学と音韻論は,車の構造とスタイル」 ([2020-11-27-1]) を参照.

 ・ Crystal, David. The Oxford Dictionary of Original Shakespearean Pronunciation. Oxford: OUP, 2016.

Referrer (Inside): [2021-08-21-1]

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2021-01-10 Sun

#4276. なぜ say の過去形,3単現形は「セイド」「セイズ」ではなく「セッド」「セズ」と発音されるのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hellog_entry_set][diphthong][monophthong][vowel][phonetics][spelling][spelling_pronunciation_gap][pronunciation][sound_change][assimilation]

 動詞 say /seɪ/ は超高頻度の語で,初学者もすぐに覚えることになる基本語です.この動詞の過去形 said もきわめて高頻度なわけですが,綴字として不規則であるばかりか,実は発音においても不規則です.予想される2重母音をもつ /seɪd/ とはならず,短母音の /sɛd/ となるのです.同じような不規則性は3単現の -s を付けた形についてもいえます.綴字こそ says と規則的に見えますが,発音はやはり2重母音をもつ /seɪz/ とはならず,短母音の /sɛz/ となってしまいます.なぜ said, says はこのような発音なのでしょうか.これには歴史的な経緯があります.音声解説をどうぞ.



 実は,英語母語話者の発音を調査してみますと,先にダメ出しはしたものの,予想される通りの2重母音をもつ発音 /seɪd/, /seɪz/ も行なわれているのです.ただ,あくまで非標準的でマイナーな発音としてですので,私たちとしては不規則ながらもやはり短母音をもつ /sɛd/, /sɛz/ を確実に習得しておくのが無難でしょう.
 歴史的な音変化の経緯を要約すれば次のようになります.もともと動詞 say は,近代英語期の入り口までは,綴字が示す通り /saɪ/ でした.それに従って,過去形は /saɪ(ə)d/,3単現形は /saɪ(ə)z/ と規則的な発音を示していました.ところが,17世紀までに2重母音 /aɪ/ は長母音 /ɛː/ へと変化したのです.ちょうど日本語の「ヤバイ」が,ぞんざいな素早い発音で「ヤベー」となるのに似た,どの言語にもよく見られる音変化です.別の変化が起こらず,およそこの段階にとどまったまま現代に至っていたのであれば,めでたく規則的に say /seɪ/, said /seɪd/, says /seɪz/ となっていたでしょう(実のところ,後者2つもマイナーな発音としてあり得ることは上述しました).
 ところが,過去形と3単現形については,その後もう1つ別の音変化が生じました.長母音 /ɛː/ が短化して短母音 /ɛ/ となったのです.こうして say /seɪ/ に対して不規則にみえる /sɛd/, /sɛz/ が生じてしまったのです.同じ音変化に巻き込まれた別の単語として,againagainst を挙げておきましょう.短母音をもつ /əˈgɛn(st)/ が優勢ですが,2重母音をもつ /əˈgeɪn(st)/ も並行して聞かれるという状況になっています.
 なぜ過去形と3単現形でのみ母音が短化したのかというのは,必ずしも解明されていない謎です.said ˈhe, says ˈshe のような用いられ方が多く,主語代名詞に対して相対的に動詞が弱く発音されるので短化したという説明が提案されていますが,これも1つの仮説にすぎません.
 関連する話題と議論について,##541,543,2130の記事セットもお読みください.

Referrer (Inside): [2023-01-01-1]

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2020-12-27 Sun

#4262. なぜ have, has, had はこのような発音と綴字なのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][gvs][sound_change][vowel][spelling_pronunciation_gap][pronunciation][spelling][have][conjugation][3sp][verb][consonant][phonetics]

 動詞としても助動詞としても超高頻度語である have .超高頻度語であれば不規則なことが起こりやすいということは,皆さんもよく知っていることと思います.ですが,have の周辺にはあまりに不規則なことが多いですね.
 まず,<have> と綴って /hæv/ と読むことからして妙です.gave /geɪv/, save /seɪv/, cave /keɪv/ と似たような綴字ですから */heɪv/ となりそうなものですが,そうはなりません.have の仲間で接頭辞 be- をつけただけの behave が予想通り /biˈheɪv/ となることを考えると,ますます不思議です.
 次に,3単現形が *haves ではなく has となるのも妙です.さらに,過去(分詞)形が *haved ではなく had となるのも,同様に理解できません.なぜ普通に *haves や *haved となってくれないのでしょうか.では,この3つの疑問について,英語史の立場から答えてみましょう.音声解説をどうぞ.



 そうです,実は中英語期には /hɑːvə/ など長い母音をもつ have の発音も普通にあったのです.これが続いていれば,大母音推移 (gvs) を経由して現代までに */heɪv/ となっていたはずです.しかし,あまりに頻度が高い語であるために,途中で短母音化してしまったというわけです.
 同様に,3単現形や過去(分詞)形としても,中英語期には今ではダメな haveshaved も用いられていました.しかし,13世紀以降に語中の /v/ は消失する傾向を示し,とりわけ超高頻度語ということもあってこの傾向が顕著に表われ,結果として hashad になってしまったのです./v/ の消失は,head, lord, lady, lark, poor 等の語形にも関わっています(逆にいえば,これらの語には本来 /v/ が含まれていたわけです).
 一見不規則にみえる形の背景には,高頻度語であること,そして音変化という過程が存在したのです.ちゃんと歴史的な理由があるわけですね.この問題に関心をもった方は,##4065,2200,1348の記事セットにて詳しい解説をお読みください.

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2020-12-23 Wed

#4258. harassment の強勢はどこに置きますか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][stress][pronunciation][ame_bre]

 今回の hellog ラジオ版は,いきなり皆さんに質問です.英単語 harass(ment) のアクセントはどこに置きますか? 第1音節の hárass(ment) でしょうか,あるいは第2音節の haráss(ment) でしょうか.答えは,音声解説をどうぞ.実はここに英語史の魅力が隠されています.



 さあ,いかがでしたでしょうか.いずれの音節に強勢を置くかというのは,英米差という空間的な問題のようにも見え,それはそれで間違っていないのですが,一方で時間的な問題でもあるという興味深い側面があるのです.アメリカ英語では haráss(ment) が優勢で,イギリス英語では hárass(ment) が優勢であるという大きな傾向は確かに見られます.しかし,それよりもおもしろいのは,いずれの英語でも若年層で haráss(ment) の発音が顕著であることです.このことが示唆するのは,現世代から次世代にかけて,ますます haráss(ment) が増えていくのではないかということです.私たちは1つの言語変化をリアルタイムで目の当たりにしているのです.
 英語史といっても,常に古英語から現代英語にかけての1500年というスケールで起こっている言語変化を話題にしているわけではありません.ここ数十年という短期間の変化も,立派な英語史の話題です.今回のような単語の強勢位置の揺れなど,いま観察できる variation というものは,まさに言語変化が起こっていることを示唆しているのです.こう考えると,英語史が生きた分野であるということが分かるかと思います.古い歴史を扱うだけが英語史ではないのです!
 今回の話題を通じて単語の強勢位置の揺れに関心をもった方は,ぜひ##342,321,366,488の記事セットをご覧ください.

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2020-11-19 Thu

#4224. blood, flood だけでなく soot も? [vowel][pronunciation][centralisation][spelling][ame_bre]

 昨日の「#4223. なぜ同じ <oo> の綴字なのに bookfood では母音が異なるのですか? --- hellog ラジオ版」の音声解説で触れたように,<oo> の綴字でありながら中舌母音 /ʌ/ を示す稀な単語として bloodflood の2つを挙げた.この2語だけであると明言したが,実はもう1つの候補として soot という語もあり得る.とはいえ,マイナーな候補と言わざるを得ないが・・・.
 LPD によると,この語の発音はイギリス英語では,短母音を示す /sʊt/ が事実上唯一の発音であり,book, good, look, stood と同じタイプといってよい.ところが,アメリカ英語では事情が異なる.89%という圧倒的な比率で長母音の /suːt/ が優勢であり,短母音の /sʊt/ は10%にとどまる.さらに興味深いことに,わずか1%ほどが,なんと /sʌt/ を示すのである.



 なお,上では <oo> の綴字をもっていながら歴史的に /uː/ → /ʊ/ → /ʌ/ の音変化を経てきた語の例として,blood, flood のほかに soot も加えられるかもしれない,という議論を展開した.
 しかし,綴字こそ <oo> ではないが歴史的に同じ音変化を経たという語であれば,ほかにも少なからず認められる.「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1]) で触れた does, done, must, other, mother, Monday, nothing, none もそうだし,「#4098. 短母音に対応する <ou> について --- country, double, touch」 ([2020-07-16-1]) で挙げた語群もそうである.but, us も加えられるだろう.関連して「#1353. 後舌高母音の長短」 ([2013-01-09-1]) も参照.

 ・ Wells, J C. ed. Longman Pronunciation Dictionary. 3rd ed. Harlow: Pearson Education, 2008.

Referrer (Inside): [2020-11-20-1]

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