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loan_word - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-11-20 09:36

2019-11-19 Tue

#3858. 「和製○語」も「英製△語」も言語として普通の現象 [waseieigo][contact][borrowing][loan_word][japanese][lexicology]

 「和製英語」の話題について,本ブログで waseieigo の各記事で取り上げてきた.関連して「和製漢語」,さらに「英製羅語」や「英製仏語」についても話題を提供してきた.以下の記事を参照.

 ・ 「#1624. 和製英語の一覧」 ([2013-10-07-1])
 ・ 「#3793. 注意すべきカタカナ語・和製英語の一覧」 ([2019-09-15-1])
 ・ 「#1629. 和製漢語」 ([2013-10-12-1])
 ・ 「#1493. 和製英語ならぬ英製羅語」 ([2013-05-29-1])
 ・ 「#1927. 英製仏語」 ([2014-08-06-1])

 一般に現代の日本では「和製英語」はいくぶん胡散臭い響きをもって受け取られているが,日本語と英語の比較的長い言語接触の結果として,極めて自然な語形成上の現象だと私は考えている.同じ見方は,ずっと長い歴史のある「和製漢語」にも当てはまる.「和製漢語」のほとんどはすっかり日本語語彙に定着しているために違和感を感じさせないだけであり,語形成論や語彙論という観点からみれば「和製英語」も何ら異なるところがない.佐藤 (115--16) も,このことを示唆している.

漢語・外来語は,本来,借用語であるが,中には,借用した要素を日本語で組み合わせ,本来の漢語・外来語に似せて作ったものもある.これを,それぞれ,「和製漢語」「和製外来語」という.和製漢語は,古くから見られるが(「火事」「大根」「尾籠」「物騒」など),特に,江戸末期から明治にかけて西洋の近代的な事物や概念の訳語として多く作られた(「引力」「映画」「汽車」「酸素」「波動」「野球」など).「イメージ・アップ」「サラリー・マン」「ノー・カット」「ワンマン・バス」などの和製外来語は,本来の外来語が単語の要素として用いられているわけで,漢語の日本語化に共通するものがある.


 英語史の観点からいえば,上と同じことが「英製羅語」「英製仏語」にも当てはまる.ある言語との接触がそれなりに長く濃く続けば,「◇製☆語」という新語は自然と現われるものである.そして,他種の新語と異ならず,それらが導入された当初こそ,多少なりとも白い目で見られたとしても,一般的に用いられるようになれば自言語に同化していくし,流行らなければ廃れていくのである.他の語形成による新語のたどるパターンと比べて,特に異なるところはない.

 ・ 佐藤 武義(編著) 『展望 現代の日本語』 白帝社,1996年.

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2019-11-07 Thu

#3846. 黄道十二宮・星座名の語彙階層 [lexical_stratification][latin][lexicology][astrology][loan_word]

 『英語便利辞典』 (178--79) より,黄道十二宮と星座に関する一覧表を掲げよう(星座名については「#3707. 88星座」 ([2019-06-21-1]) も参照).

Signs of the Zodiac (黄道十二宮)
宮 (house)獣帯星座 (zodiacal constellations)太陽が通過する期間運勢・性格
spring signs (春の星座宮)
Aries (白羊宮)*the Ram (おひつじ座)3月21日〜4月20日energetic, ambitious, generous, aggressive
Taurus (金牛宮)*the Bull (おうし座)4月21日〜5月22日charming, witty, kind, restless
Gemini (双子宮)*the Twins (ふたご座)5月23日〜6月21日strong, loyal, determined, quiet
summer signs (夏の星座宮)
Cancer (巨蟹宮)*the Crab (かに座)6月22日〜7月22日sensitive, materialistic, careful, humorous
Leo (獅子宮)the Lion (しし座)7月23日〜8月22日dignified, honest, vain
Virgo (処女宮)the Virgin (おとめ座)8月23日〜9月22日perfectionist, dependable, gentle, efficient
autumn signs (秋の星座宮)
Libra (天秤宮)the Balance [*Scales] (てんびん座)9月23日〜10月22日gracious, harmonious, logical, fair
Scorpio (天蠍宮)the Scorpion (さそり座)10月23日〜11月21日courageous, intense, secretive, intelligent
Sagittarius (人馬宮)the Archer (いて座)11月22日〜12月22日truthful, friendly, optimistic, adventurous
winter signs (冬の星座宮)
Capricorn (磨羯宮)*the Goat (やぎ座)12月23日〜1月20日hardworking, kind, determined, disciplined
Aquarius (宝瓶宮)*the Water Bearer [Carrier] (みずがめ座)1月21日〜2月19日loyal, wise, creative, aloof
Pisces (双魚宮)*the Fish (うお座)2月20日〜3月20日kind, quiet, romantic, easygoing


Signs of the Zodiac

 この表から気づくのは,1列目の占星術・天文学上の名称と,2列目の星座を表わす動物・人などの名前とが,しばしば似ていないことだ.Leo/the Lion, Virgo/Virgin, Scorpio/Scorpion は明らかに類似しているが,それ以外はすべて似ていないようにみえる.前者は学問的な用語としてすべてラテン語(さらに遡ってギリシア語)由来だが,後者はすべてとは言わずとも多くが英語本来語の庶民的な単語である.表中で * を付しているものがそれである(Scales については,厳密には英語由来ではなく古ノルド語由来だが,少なくともゲルマン系の単語ではある).* の付されていない2列目の5つの名前については,確かにラテン語かフランス語に由来するものの,古英語期や中英語期など比較的早い段階に借用されており,早々に英語化していた語といってよい.
 全体としていえば,1列目はラテン語の威厳を背負った学問用語,2列目は(事実上)英語的な庶民性を帯びた動物・人などの一般名といってよい.これは有名な「動物と肉の語彙」の話題にも比較される.例の ox/beef, swine/pork, sheep/mutton, fowl/poultry, deer/venison, calf/veal の語彙階層の対立である.これについては,以下の記事を参照.

 ・ 「#331. 動物とその肉を表す英単語」 ([2010-03-24-1])
 ・ 「#332. 「動物とその肉を表す英単語」の神話」 ([2010-03-25-1])
 ・ 「#1583. swine vs pork の社会言語学的意義」 ([2013-08-27-1])
 ・ 「#1603. 「動物とその肉を表す英単語」を最初に指摘した人」 ([2013-09-16-1])
 ・ 「#1604. 「動物とその肉を表す英単語」を次に指摘した人たち」 ([2013-09-17-1])
 ・ 「#2352. 「動物とその肉を表す英単語」の神話 (2)」 ([2015-10-05-1])

 ・ 小学館外国語辞典編集部(編) 『英語便利辞典』 小学館,2006年.

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2019-11-06 Wed

#3845. 講座「英語の歴史と語源」の第5回「キリスト教の伝来」を終えました [asacul][notice][slide][link][christianity][alphabet][latin][loan_word][bible][religion]

 「#3833. 講座「英語の歴史と語源」の第5回「キリスト教の伝来」のご案内」 ([2019-10-25-1]) で案内した朝日カルチャーセンター新宿教室講座を11月2日(土)に終えました.今回も大勢の方に参加していただき,白熱した質疑応答が繰り広げられました.多岐にわたるご指摘やコメントをいただき,たいへん充実した会となりました.
 講座で用いたスライド資料をこちらに置いておきますので,復習等にご利用ください.スライドの各ページへのリンクも張っておきます.

   1. 英語の歴史と語源・5 「キリスト教の伝来」
   2. 第5回 キリスト教の伝来
   3. 目次
   4. 1. イングランドのキリスト教化
   5. 古英語期まで(〜1066年)のキリスト教に関する略年表
   6. 2. ローマ字の採用
   7. ルーン文字とは?
   8. 現存する最古の英文はルーン文字で書かれていた
   9. ルーン文字の遺産
   10. 古英語のアルファベット
   11. 古英語文学の開花
   12. 3. ラテン語の借用
   13. 古英語語彙におけるラテン借用語比率
   14. キリスト教化以前と以後のラテン借用
   15. 4. 聖書翻訳の伝統
   16. 5. 宗教と言語
   17. 外来宗教が英語と日本語に与えた言語的影響の比較
   18. 日本語における宗教語彙
   19. まとめ
   20. 補遺:「主の祈り」の各時代のヴァージョン
   21. 参考文献

 次回の第6回は少し先の2020年3月21日(土)の15:15〜18:30となります.「ヴァイキングの侵攻」と題して英語史上の最大の異変に迫る予定です.

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2019-10-22 Tue

#3830. 古英語のラテン借用語は現代まで地続きか否か [lexicology][latin][loan_word][oe][borrowing]

 古英語に借用されたラテン単語について,以下の記事で取り上げてきた.

 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#1895. 古英語のラテン借用語の綴字と借用の類型論」 ([2014-07-05-1])
 ・ 「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1])
 ・ 「#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧」 ([2019-09-12-1])
 ・ 「#3829. 650年以後のラテン借用語の一覧」 ([2019-10-21-1])

 これらのラテン借用語に関する1つの問題は,そのうちの少なからぬ数の語が確かに現代英語にもみられるが,それは古英語期から生き残ってきたものなのか,あるいは一度廃れたものが後代に再借用されたものなのかということだ.いずれにせよラテン語源としては共通であるという言い方はできるかもしれないが,前者であれば古英語期の借用語として英語における使用の歴史が長いことになるし,後者であれば中英語期や近代英語期の比較的新しい借用語ということになる.英語は歴史を通じて常にラテン語と接触してきたという事情があり,しばしばいずれのケースかの判断は難しい.前代と後代とで語形や語義が異なっているなどの手がかりがあれば,再借用と認めることができるとはいえ,常にそのような手がかりが得られるわけでもない.
 とりわけ650年以後の古英語期のラテン借用語に関して,判断の難しいケースが目立つ.昨日の記事 ([2019-10-21-1]) で眺めたように,一般的なレジスターに入っていなかったとおぼしき専門語な語彙が少なくない.これらの多くは地続きではなく後代の再借用ではないかと疑われる.
 Durkin (131) は,650年以前のラテン借用語について,現代まで地続きで生き残ってきた可能性の高いものを次のように一覧している.

abbot; alms; anthem; ass; belt; bin; bishop; box; butter; candle; chalk; cheap; cheese; chervil; chest; cock; cockle (plant name); copper; coulter; cowl; cup; devil; dight; dish; fennel; fever; fork; fuller; inch; kiln; kipper; kirtle; kitchen; line; mallow; mass (= Eucharist); mat; (perhaps) mattock; mile; mill; minster; mint (for coinage); mint (plant name); -monger; monk; mortar; neep (and hence turnip); nun; pail; pall (noun); pan (if borrowed); pear; (probably) peel; pepper; pilch (noun); pile (= stake); pillow; pin; to pine; pipe; pit; pitch (dark substance); (perhaps) to pluck; (perhaps) plum; (perhaps) plume; poppy; post; (perhaps) pot; pound; priest; punt; purple; radish; relic; sack; Saturday; seine; shambles; shrine; shrive (and shrift, Shrove Tuesday); sickle; (perhaps) silk; sock; sponge; (perhaps) stop; street; strop (and hence strap); tile; toll; trivet; trout; tun; to turn; turtle-dove; wall; wine


 このリストに,やや可能性は低くなるが,地続きと考え得るものとして次を追加している (131) .

anchor; angel; antiphon; arch-; ark; beet and beetroot; capon; cat; crisp; drake (= dragon, not duck); fan; Latin; lave; master; mussel; (wine-)must; pea; pine (the tree); plant; to plant; port; provost; psalm; scuttle; table; also (where the re-borrowing would be from early Scandinavian) kettle


 続いて,650年以後のラテン借用語について,現代まで地続きであると根拠をもっていえる少数の語を次のように挙げている (132) .

aloe; cook; cope (= garment); noon; pole; pope; school; (if borrowed) fiddle; (in some of these cases re-borrowing in very early Middle English could also be possible)


 そして,根拠がやや弱くなるが,650年以後のラテン借用語として現代まで地続きの可能性のあるものは次の通り (132) .

altar; canker; cap; clerk; comet; creed; deacon; false; flank; hyssop; lily; martyr; myrrh; to offer; palm (tree); paradise; passion; peony; pigment; prior; purse; rose; sabbath; savine; sot; to spend; stole; verse; also (where the re-borrowing would be from early Scandinavian) cole


 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-10-21 Mon

#3829. 650年以後のラテン借用語の一覧 [lexicology][latin][loan_word][oe][borrowing]

 「#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧」 ([2019-09-12-1]) に続き,今回は反対の650年「以後」のラテン借用語を,Durkin (116--19) より列挙しよう.ただし,こちらは先の一覧と異なり網羅的ではない.あくまで一部を示すものなので注意.
 650年以前と以後の借用語の傾向について比較すると,後者は学問・宗教と結びつけられる語彙が目立つことがわかるだろう.「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1]) も参照.

[ Religion and the Church ]

 ・ acolitus 'acolyte' [L acoluthus, acolitus]
 ・ altare, alter 'altar' [L altare]
 ・ apostrata 'apostate' [L apostata]
 ・ apostol 'apostle' [L apostrolus]
 ・ canon 'canon, rule of the Church; canon, cleric living under a canonical rule' [L canon]
 ・ capitol 'chapter, section; chapter, assembly' [L capitulum]
 ・ clauster 'monastic cell, cloister, monastery' [L claustrum]
 ・ cleric, also '(earlier) clīroc 'clerk, clergyman' [L clericus]
 ・ crēda, crēdo 'creed' [L credo]
 ・ crisma 'holy oil, chrism; white cloth or garment of the newly baptized; chrismatory or pyx' [L chrisma]
 ・ crismal 'chrism cloth' [L chrismalis]
 ・ crūc 'cross' [L cruc-, crux]
 ・ culpa 'fault, sin' [L culpa]
 ・ decan 'person who supervises a group of (originally) ten monks or nuns, a dean' [L decanus]
 ・ dēmōn 'devil, demon' [L aemon]
 ・ dīacon 'deacon' [L diaconus]
 ・ discipul 'disciple; follower; pupil' [L discipulus]
 ・ eretic 'heretic' [L haereticus]
 ・ graþul 'gradual (antiphon sung between the Epistle and the Gospel at Mass)' [L graduale]
 ・ īdol 'idol' [L idolum]
 ・ lētanīa 'litany' [L letania]
 ・ martir, martyr 'martyr' [L martyr]
 ・ noctern 'nocturn, night office' [L nocturna]
 ・ nōn 'ninth hour (approximately 3 p.m.); office said at this time' [L nona (hora)]
 ・ organ 'canticle, song, melody; musical instrument, especially a wind instrument'
 ・ orgel- (in orgeldrēam 'instrumental music') [L organum]
 ・ pāpa 'pope' [L papa]
 ・ paradīs 'paradise, Garden of Eden, heaven' [L paradisus]
 ・ passion 'story of the Passion of Christ' [L passion-, passio]
 ・ prīm 'early morning office of the Church' [L prima]
 ・ prior 'superior office of a religious house or order, prior' [L prior]
 ・ sabat 'sabbath' [L sabbata]
 ・ sācerd 'priest; priestess' [L sacerdos]
 ・ salm, psalm, sealm 'psalm, sacred song' [L psalma]
 ・ saltere, sealtere 'psalter, also type of stringed instrument' [L psalterium]
 ・ sanct 'holy person, saint' [L sanctus]
 ・ stōl, stōle 'long outer garment; ecclesiastical vestment' [L stola]
 ・ tempel 'temple' [L templum]

[ Learning and scholarship ]

 ・ accent 'diacritic mark' [L accentus]
 ・ bærbære 'barbarous, foreign' [L barbarus]
 ・ biblioþēce, bibliþēca 'library' [L bibliotheca]
 ・ cālend 'first day of the month; (in poetry) month' [L calendae]
 ・ cærte, carte '(leaf or sheet of) vellum; piece of writing, document, charter' [L charta, carta]
 ・ centaur 'centaur' [L centaurus]
 ・ circul 'circle, cycle' [L circulums]
 ・ comēta 'comet' [L cometa]
 ・ coorte, coorta 'cohort' [L cohort-, cohors]
 ・ cranic 'chronicle' [L chronicon or chronica]
 ・ cristalla, cristallum 'crystal; ice' [L crystallum]
 ・ epistol, epistola, pistol 'letter' [L epistola, epistula]
 ・ fers, uers 'verse, line of poetry, passage, versicle' [L versus]
 ・ gīgant 'giant' [L gigant- gigas]
 ・ grād 'step; degree' [L gradus]
 ・ grammatic-cræft 'grammar' [L grammatica]
 ・ legie 'legion' [L legio]
 ・ meter 'metre' [L metrum]
 ・ nōt 'note, mark' [L nota]
 ・ nōtere 'scribe, writer' [L notarius]
 ・ part 'part (of speech)' [L part-, pars]
 ・ philosoph 'philosopher' [L philosophus]
 ・ punct 'quarter of an hour' [L punctum]
 ・ tītul 'title, superscription' [L titulus]
 ・ þēater 'theatre' [L theatrum]

[ Plants, fruit, and products of plants ]

 ・ alwe 'aloe' [L aloe]
 ・ balsam, balzam 'balsam, balm' [L balsamum]
 ・ berbēne 'vervain, verbena' [L verbena]
 ・ cāl, cāul, cāwel (or cawel) 'cabbage' [L caulis]
 ・ calcatrippe 'caltrops, or another thorny or spiky plant' [L calcatrippa]
 ・ ceder 'cedar' [L cedrus]
 ・ coliandre, coriandre 'coriander' [L coliandrum, coriandrum]
 ・ cucumer 'cucumber' [L cucumer-, cucumis]
 ・ cypressus 'cypress' [L cypressus]
 ・ fēferfuge (or feferfuge), fēferfugie (or feferfugie) 'feverfew' [L febrifugia, with substitution of Old English fēfer or fefer for the first element]
 ・ laur, lāwer 'laurel, bay, laver' [L laurus]
 ・ lilie 'lily' [L lilium]
 ・ mōr- (in mōrberie, mōrbēam) 'mulberry' [L morus]
 ・ murre 'myrrh' [L murra, murrha, mytrrha]
 ・ nard 'spikenard (name of a plant and of ointment made from it)' [L nardus]
 ・ palm, palma, pælm 'palm (tree)' [L palma]
 ・ peonie 'peony' [L paeonia]
 ・ peruince, perfince 'periwinkle' [L pervinca]
 ・ petersilie 'parsley' [L ptetrosilenum, petrosilium, petresilium]
 ・ polente (or perhaps polenta) 'parched corn' [L polenta]
 ・ pyretre 'pellitory' (a plant) [L pyrethrum]
 ・ rōse (or rose) 'rose' [L rosa]
 ・ rōsmarīm, rōsmarīnum 'rosemary' [L rosmarinum]
 ・ safine 'savine (type of plant)' [L sabina]
 ・ salfie, sealfie 'sage' [L salvia]
 ・ spīce, spīca 'aromatic herb, spice, spikenard' [L spica]
 ・ stōr 'incense, frankincense' [probably L storax]
 ・ sycomer 'sycamore' [L sycomorus]
 ・ ysope 'hyssop' [L hyssopus]

[ Animals ]

 ・ aspide 'asp, viper' [L aspid-, aspis]
 ・ basilisca 'basilisk' [L basiliscus]
 ・ camel, camell 'camel' [L camelus]
 ・ *delfīn 'dolphin' [L delfin]
 ・ fenix 'phoenic; (in one example) kind of tree' [L phoenix]
 ・ lēo 'lion' [L leo]
 ・ lopust 'locust' [L locusta]
 ・ loppestre, lopystre 'lobster' [probably L locusta]
 ・ pndher 'panther' [L panther]
 ・ pard 'panther, leopard' [L pardus]
 ・ pellican 'name of a bird of the wilderness' [L pellicanus]
 ・ tiger 'tiger' [L tigris]
 ・ ultur 'vulture' [L vultur]

[ Medicine ]

 ・ ātrum, atrum, attrum 'black vitriol; atrament; blackness' [L atramentum]
 ・ cancer 'ulcerous sore' [L cancer]
 ・ flanc 'flank' [L *flancum]
 ・ mamme 'teat' [L mamma]
 ・ pigment 'drug' [L pigmentum]
 ・ plaster 'plaster (medical dressing), plaster (building material)' [L plastrum, emplastrum]
 ・ sċrofell 'scrofula' [L scrofula]
 ・ tyriaca 'antidote to poison' [L tiriaca, theriaca]

[ Tools and implements ]

 ・ pāl 'stake, stave, post, pole; spade' [L palus]
 ・ (perhaps) paper '(probably) wick' [L papirus, papyrus]
 ・ pīc 'spike, pick, pike' [perhals L *pic-]
 ・ press 'press (specifically clothes-press)' [L pressa or French presse]

[ Building and construction; settlements ]

 ・ castel, cæstel 'village, small town; (in late manuscripts) castle' [L castellum]
 ・ foss 'ditch' [L fossa]
 ・ marman-, marmel- (in marmanstān, marmelstān 'marble' [L marmor]

[ Receptacles ]

 ・ purs, burse 'purse' [L bursa]

[ Money; units of measurement ]

 ・ cubit 'cubit, measure of length' [L cubitum]
 ・ mancus 'a money of account equivalent to thirty pence, a weight equivalent to thirty pence' [L mancus]
 ・ talente 'talent (as unit of weight or of money)' [L talentum]

[ Clothing ]

 ・ cæppe, also (in cantel-cāp 'cloak worn by a cantor') cāp 'cloak, hood, cap' (with uncertain relationship to cōp in the same meaning) [L cappa]
 ・ tuniċe, tuneċe 'undergarment, tunic, coat, toga' [L tunica]

[ Roles, ranks, and occupations (non-religious or not specifically religious) ]

 ・ centur, centurio, centurius 'centurion' [L centurion-, centurio]
 ・ cōc 'cook' [L *cocus, coquus]
 ・ consul 'consul' [L consul]
 ・ fiþela 'fiddler' (also fiþelere 'fiddler', fiþelestre '(female) fiddler') [probably L vitula]

[ Warfare ]

 ・ mīlite 'soldiers' [L milites, plural of miles]

[ Verbs ]

 ・ acordan 'to reconcile' [perhaps L accordare, although more likely a post-Conquest borrowing from French]
 ・ acūsan 'to accuse (someone)' [L accusare]
 ・ ġebrēfan 'to set down briefly in writing' [L breviare]
 ・ dēclīnian 'to decline or inflect' [L declinare]
 ・ offrian 'to offer, sacrifice' [L offerre]
 ・ *platian 'to make or beat into thin plates' (implied by platung 'metal plate' and ġeplatod and aplatod 'beaten into thin plates') [L plata, noun]
 ・ predician 'to preach' [L predicare, praedicare]
 ・ prōfian 'to assume to be, to take for' [L probare]
 ・ rabbian 'to rage' [L rabiare]
 ・ salletan 'to sing psalms, to play on the harp' [L psallere]
 ・ sċrūtnian, sċrūdnian 'to examine' [L scrutinare]
 ・ *spendan 'to spend' (recorded in Old English only in the derivatives spendung, aspendan, forspendan) [L expendere]
 ・ studdian 'to look after, be careful for' [L studere]
 ・ temprian 'to modify; to cure, heal; to control' [L temperare]
 ・ tonian 'to thunder' [L tonare]

[ Adjectives ]

 ・ fals 'false' [L falsus]
 ・ mechanisċ 'mechanical' [L mechanicus]

[ Miscellaneous ]

 ・ fals 'fraud, trickery' [L falsum]
 ・ rocc (only in stānrocc) 'cliff or crag' [L rocca]
 ・ sott 'fool', also adjective 'foolish' [L sottus]
 ・ tabele, tabul, tabule 'tablet, board; writing tablet; gaming table' [L tabula]

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

Referrer (Inside): [2019-10-22-1]

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2019-10-13 Sun

#3821. Old Saxon からの借用語 [loan_word][borrowing][lexicology][old_saxon][germanic][dutch][flemish][german]

 英語史において,英語と同じ西ゲルマン語群の姉妹言語である Old Saxon の存在感は薄い.しかし,ゼロではない.昨日の記事「#3819. アルフレッド大王によるイングランドの学問衰退の嘆き」 ([2019-10-11-1]) で触れた,アルフレッド大王の教育改革に際して,John という名の古サクソン人が補佐を務めていたという記録がある.また,Genesis B として知られる古英詩には,9世紀の Old Saxon から翻訳された1節が含まれていることも知られている.
 Genesis B には,hearra (lord), sima (chain), landscipe (region), heodæg (today) を含む少数の Old Saxon に由来するとおぼしき語が確認される.いずれも後代に受け継がれなかったという点では,英語史上の意義は小さいといわざるを得ない.しかし,必要とあらばありとあらゆる単語を多言語から借りるという,後に発達する英語の雑食的な特徴が,古英語期にすでに現われていたということは銘記しておいてよい (Crystal 27) .
 一般に,英語史において「遺伝的」関係が近い西ゲルマン語群からの借用語は多くはない.遺伝的関係が近いのであれば,現実の言語接触も多かったはずではないかと想像されるが,そうでもない.たとえば,(高地)ドイツ語からの借用語は「#2164. 英語史であまり目立たないドイツ語からの借用」 ([2015-03-31-1]),「#2621. ドイツ語の英語への本格的貢献は19世紀から」 ([2016-06-30-1]) でみたように,全体としては目立たない.それなりの規模で英語に影響を与えたといえるのは,オランダ語やフラマン語くらいだろう.これらの低地諸語からの語彙的影響については,「#149. フラマン語と英語史」 ([2009-09-23-1]),「#2645. オランダ語から借用された馴染みのある英単語」 ([2016-07-24-1]),「#2646. オランダ借用語に関する統計」 ([2016-07-25-1]),「#3435. 英語史において低地諸語からの影響は過小評価されてきた」 ([2018-09-22-1]),「#3436. イングランドと低地帯との接触の歴史」 ([2018-09-23-1]) を参照されたい.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. Cambridge: CUP, 2019.

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2019-09-12 Thu

#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧 [lexicology][latin][loan_word][oe][borrowing]

 過去3日間の記事(「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1]),「#3788. 古英語期以前のラテン借用語の意外な日常性」 ([2019-09-10-1]),「#3789. 古英語語彙におけるラテン借用語比率は1.75%」 ([2019-09-11-1]))でも触れたように,650年辺りより前にラテン語から英語へ流入した単語には,意外と日常的なものが多く含まれている.
 これを確認するには,具体的な単語一覧を眺めてみるのが一番だ.Durkin (107--16) を参照して,以下に,意味の分野ごとに,各々の単語について古英語の借用形,現代の対応語(あるいは語義),ラテン語形を示す.先頭に "?" を付している語は,早期の借用語であると強い根拠をもっては認められない語である.

[ Religion and the Church ]

 ・ abbod, abbot 'abbot' [L abbat-, abbas]
 ・ abbodesse 'abbess' [L abbatissa]
 ・ antefn, also (later) antifon, antyfon 'antiphon (type of liturgical chant)' [L antifona, antefona]
 ・ ælmesse, ælmes 'alms, charity' [L *alimosina, variant of elemosina]
 ・ bisċeop 'bishop' [probably L episcopus]
 ・ cristen 'Christian' [L christianus]
 ・ dēofol, dīofol 'devil' [perhaps Latin diabulus]
 ・ draca 'dragon, monstrous beast; the devil' [L draco]
 ・ engel, angel 'angel' [probably L angelus]
 ・ mæsse, messe 'mass' (the religious ceremony) [L missa]
 ・ munuc 'monk' [L monachus]
 ・ mynster 'monastery; importan church' [L monasterium]
 ・ nunne 'nun' [L nonna]
 ・ prēost 'priest' [probably L *prebester, presbyter]
 ・ senoð, seonoð, sinoð, sionoð 'council, synod, assembly' [L synodus]
 ・ ? ancra, ancor 'anchorite' [L anachoreta, perhaps via Old Irish anchara]
 ・ ? ærċe-, erċe-, arce- 'arch-' (in titles) [L archi-]
 ・ ? relic- (in relicgang (probably) 'bearing of relics in a procession') [clipping of L reliquiae or OE reliquias]
 ・ ? reliquias 'relics' [L reliquiae]

[ Learning and scholarship ]

 ・ Læden 'Latin; any foreign language', also (later) lātin [L Latina]
 ・ sċolu, also (later) scōl 'troop, band; school' [L schola]
 ・ ? græf 'stylus' [L graphium]
 ・ ? stǣr (or stær) 'history' [probably ultimately L historia, perhaps via Celtic]
 ・ ? traht 'text, passage, commentary' [L tractus]
 ・ ? trahtað 'commentary' [L tractatus]

[ Plants, fruit, and products of plants ]

 ・ bēte 'beet, beetroot' [L beta]
 ・ billere denoting several water plants [L berula]
 ・ box 'box tree', later also 'box, receptable' [L buxus]
 ・ celendre, cellendre 'coriander' [L coliandrum]
 ・ ċerfille, ċerfelle 'chervil' [L caerefolium]
 ・ *ċiċeling 'chickpea' [L cicer]
 ・ ċīpe 'onion' [L cepe]
 ・ ċiris-(bēam) 'cherry tree' [L *ceresia, cerasium]
 ・ ċisten-, ċistel-, ċist-(bēam) 'chestnut tree' [L castinea or castanea]
 ・ coccel 'corn cockle, or other grain-field weed' [L *cocculus < coccum]
 ・ codd-(æppel) 'quince' [L cydonium, cotoneum, or cotonium]
 ・ consolde '(perhaps) daisy or comfrey' [L consolida]
 ・ corn-(trēo) 'cornel tree' [L cornus]
 ・ cost 'costmary' [L constum]
 ・ cymen 'cumin' [L cuminum]
 ・ cyrfet 'gourd' [L cucurbita]
 ・ earfe plant name, probably vetch [L ervum]
 ・ elehtre '(probably) lupin' [L electrum]
 ・ eofole 'dwarf elder, danewor' [L ebulus]
 ・ eolone, elene 'elecampane' (a plant) [L inula, helenium]
 ・ finol, finule, finugle 'fennel' [L fenuculum]
 ・ glædene a plant name (usually for a type of iris) [L gladiola]
 ・ humele 'hop plant' [L humulus]
 ・ lāser 'weed, tare' [L laser]
 ・ leahtric, leahtroc, also (later) lactuce 'lettuce' [L lactuca]
 ・ *lent 'lentil' [L lent-, lens]
 ・ lufestiċe 'lovage' [L luvesticum]
 ・ mealwe 'mallow' [L malva]
 ・ *mīl 'millet' [L milium]
 ・ minte, minta 'mint' [L mentha]
 ・ næp 'turnip' [L napus]
 ・ nefte 'catmint' [L nepeta]
 ・ oser or ōser 'osier' [L osaria]
 ・ persic 'peach' [L persicum]
 ・ peru 'pear' [L pirum, pera]
 ・ piċ 'pitch' (the resinous substance) [L pic-, pix]
 ・ pīn 'pine' [L pinus]
 ・ pipeneale 'pimpernel' [L pipinella]
 ・ pipor 'pepper' [L piper]
 ・ pieir 'pear tree' [L *pirea]
 ・ pise, *peose 'pea' [L pisum]
 ・ plūme 'plum; plum tree' and plȳme 'plum; plum tree' [both perhaps L pruna]
 ・ pollegie 'penny-royal' [L pulegium]
 ・ popiġ, papiġ 'poppy' [L papaver]
 ・ porr 'leek' [L porrum]
 ・ rǣdiċ 'radish' [L radic-, radix]
 ・ rūde 'rue' [L ruta]
 ・ syrfe 'service tree' [L *sorbea, sorbus]
 ・ ynne- (in ynnelēac) 'onion' [L unio]
 ・ ? æbs 'fir tree' [L abies]
 ・ ? croh, crog 'saffron; type of dye; saffron colour' [L crocus]
 ・ ? fīċ 'fig tree, fig' [L ficus]
 ・ ? plante 'young plant' [L planta]
 ・ ? sæðerie, satureġe 'savory (plant name)' [L satureia]
 ・ ? sæppe 'spruce fir' [L sappinus]
 ・ ? sōlsēċe 'heliotrope' [L solsequium, with substitution of a derivative of OE sēċan 'to seek' for the second element]

[ Animals ]

 ・ assa 'ass' [L asinum perhaps via Celtic]
 ・ capun 'capon' [probably L capon-, capo]
 ・ cat, catte 'cat' [L cattus]
 ・ cocc 'cock, rooster' [L coccus]
 ・ *cocc (in sǣcocc) 'cockle' [perhaps L *coccum]
 ・ culfre 'dove' [perhals L columbra, columbula]
 ・ cypera 'salmon at the time of spawning' [L cyprinus]
 ・ elpend, ylpend 'elephant', also shortend to ylp [L elephant-, elephans]
 ・ eosol, esol 'ass' [L asellus]
 ・ lempedu, also (later) lamprede 'lamprey' [L lampreda]
 ・ mūl 'mule' [L mulus]
 ・ muscelle 'mussel' [L musculus]
 ・ olfend 'camel' [probably L elephant-, elephans, with the change in meaning arising from semantic confusion]
 ・ ostre 'oyster' [L ostrea]
 ・ pēa 'peafowl' [L pavon-, pavo]
 ・ *pine- (in *pinewincle, as suggested emendation of winewincle) 'wincle' [perhals L pina]
 ・ rēnġe 'spider' [L aranea]
 ・ strȳta 'ostrich' [L struthio]
 ・ trūht 'trout' [L tructa]
 ・ turtle, turtur 'turtle dove' [L turtur]

[ Food and drink (see also plants and animals) ]

 ・ ċȳse, ċēse 'cheese' [L caseus]
 ・ foca 'cake baked on the ashes of the hearth' (only attested with reference to Biblical contexts or antiquity) [L focus]
 ・ must 'wine must, new wine' [L mustum]
 ・ seim 'lard, fat' (only attested in figurative use) [L *sagimen, sagina]
 ・ senap, senep 'mustard' [L sinapis]
 ・ wīn 'wine' [L vinum]

[ Medicine ]

 ・ butere 'butter' [L butyrum, buturum]
 ・ ċeren 'wine reduced by boiling for extra sweetness' [L carenum]
 ・ eċed 'vinegar' [L acetum]
 ・ ele 'oil' [L oleum]
 ・ fēfer or fefer 'fever' [L febris]
 ・ flȳtme 'lancet' [L fletoma]

[ Transport; riding and horse gear ]

 ・ ancor, ancra 'anchor (also in figurative use)' [L ancora]
 ・ cæfester 'muzzle, halter, bit' [L capistrum, perhaps via Celtic]
 ・ ċæfl 'muzzle, halter, bit' [L capulus]
 ・ ċearricge (meaning very uncertain, perhaps 'carriage') [perhaps L carruca]
 ・ punt 'punt' [L ponton-, ponto]
 ・ sēam 'burden; harness; service which consisted in supplying beasts of burden' [L sauma, sagma]
 ・ stǣt 'road; paved road, street' [L strata]

[ Tools and implements ]

 ・ cucler 'spoon' [L coclear]
 ・ culter 'coulter; (once) dagger' [L culter]
 ・ fæċele 'torch' [L facula]
 ・ fann 'winnowing fan' [L vannus]
 ・ forc, forca 'fork' [L furca]
 ・ *fossere or fostere 'spade' [L fossorium]
 ・ inseġel, insiġle 'seal; signet' [L sigillum]
 ・ līne 'cable, rope, line, cord; series, row, rule, direction' [probably L linea]
 ・ mattuc, meottuc, mettoc 'mattock' [perhaps L *matteuca]
 ・ mortere 'mortar' [L mortarium]
 ・ panne 'pan' [perhaps L panna]
 ・ pæġel 'wine vessel; liquid measure' [L pagella]
 ・ pihten part of a loom [L pecten]
 ・ pīl 'pointed object; dart, shaft, arrow; spike, nail; stake' [L pilum]
 ・ pīle 'mortar' [L pila]
 ・ pinn 'pin, peg, pointer; pen' [probably L penna]
 ・ pīpe 'tube, pipe; pipe (= wind instrument); small stream' [L pipa]
 ・ pundur 'counterpoise; plumb line' [L ponder-, pondus]
 ・ seġne 'fishing net' [L sagena]
 ・ sicol 'sickle' [L *sicula, secul < secare 'to cut']
 ・ spynġe, also (later) sponge 'sponge' [L spongia, spongea]
 ・ timple instrument used in weaving [L templa]
 ・ turl 'ladele' [L trulla]
 ・ ? stropp 'strap' [L stroppus or struppus]
 ・ ? trefet 'trivet, tripod' [L tripes]

[ Warware and weapons ]

 ・ camp 'battle; war; field' [L campus]
 ・ cocer 'quiver' [perhaps L cucurum]

[ Buildings and parts of buildings; construction; towns and settlements ]

 ・ ċeafor-(tūn), cafer-(tūn) 'hall, court' [L capreus]
 ・ ċealc, calc 'chalk, plaster' [L calc-, calx]
 ・ ċeaster, ċæster 'fortification; city, town (especially one with a wall)' [L castra]
 ・ ċipp 'rod, stick, beam (especially in various specific contexts)' [probably L cippus]
 ・ clifa, cleofa, cliofa 'chamber, cell, den, lair' [perhaps L clibanus 'oven']
 ・ clūse, clause 'lock; confine, enclosure; fortified pass' [L clausa]
 ・ clūstor 'lock, bolt, bar, prison' [L claustrum]
 ・ cruft 'crypt, cave' [L crupta]
 ・ cyċene 'kitchen' [L coquina]
 ・ cylen 'kiln, oven' [L culina]
 ・ *cylene 'town' (only as place-name element) [L colonia]
 ・ mūr 'wall' [L murus]
 ・ mylen 'mill' [L molina]
 ・ pearroc 'enclosure; fence that forms an enclosure' [perhaps L parricus]
 ・ pīsle or pisle 'warm room' [L pensilis]
 ・ plætse, plæce, plæse 'open place in a town, square, street' [L platea]
 ・ port 'town with a harbour; harbour, port; town (especially one with a wall or a market)' [L portus]
 ・ post 'post; doorpost' [L postis]
 ・ pytt 'hole in the ground; excavated hole; pit; grave; hell' [pherlaps L puteus]
 ・ sċindel 'roof shingle' [L scindula]
 ・ solor 'upper room; hall, dwelling; raised platform' [L solarium]
 ・ tīġle, tīgele, tigele 'earthen vessel; potshert; tile, brick' [L tegula]
 ・ torr 'tower' [L turris]
 ・ weall 'wall, rampart, earthwork' [L vallum]
 ・ wīċ 'dwelling; village; camp, fortress' [L visum]
 ・ ? port 'gate, gateway' [L porta]
 ・ ? prtiċ 'porch, portico, vestibule, chapel' [L poorticus]

[ Containers, vessels, and receptacles ]

 ・ amber 'vessel, dry or liquid measure' [L amphora, ampora]
 ・ binn, binne 'basket, bin; manger' [L benna]
 ・ buteruc 'bottle' [perhaps from a derivative of L buttis]
 ・ byden 'vessel, container; cask, tub; tub-shaped geographical feature' [probably L *butina]
 ・ bytt 'bottle, flask, cask, wine skin' [L *buttia]
 ・ ċelċ, cælc, calic 'drinking vessel, cup' [L calic-, calix]
 ・ ċist, ċest 'chest, box, coffer; reliquary; coffin' [L cista]
 ・ cuppe 'cup', also copp 'cup, beaker; gloss for Latin spongia sponge' [L cuppa]
 ・ cȳf 'large jar, vessel, or tub' [L cupia < cupa]
 ・ cȳfl 'tub, bucket' [L cupellus]
 ・ cyll, cylle 'leather bottle, leather bag; ladele; oil lamp' [L culleus]
 ・ disċ 'dish, bowl, plate' [L discus]
 ・ earc, earce, earca, also arc, arce, arca 'ark (especially Noah's ark or the ark of the covenent), chest, coffer' [L arca]
 ・ gabote, gafote kind of dish or platter [L gabata]
 ・ ġellet 'jug, bowl, or basin' [L galleta]
 ・ læfel, lebil 'spoon, cup, bowl, vessel' [L labellum]
 ・ orc 'pitcher, crock, cup' [L orca]
 ・ pott 'pot' [perhaps L pottus]
 ・ sacc, also sæcc 'sack, bag' [L saccus]
 ・ sester 'jar, vessel; a measure' [L sextarius]
 ・ spyrte 'basket' [probably L sporta, *sportea]
 ・ ? cæpse 'box' [L copsa]
 ・ ? sċrīn 'chest; shrine' [L scrinium]
 ・ ? sċutel 'dish, platter' [L scutella]
 ・ ? tunne 'cask, tun, barrel' [L tunna]

[ Coins, money; wights and measures, units of measurement ]

 ・ dīner, dīnor type of coin, denarius [L denarius]
 ・ mīl 'mile' [L milia]
 ・ mydd 'a measure' [L modius]
 ・ mynet 'a coin; coinage, money' [L moneta]
 ・ oma 'a liquid measure' [L ama]
 ・ pund 'pound (in weight or money); pint' [L pondo]
 ・ trimes 'unit of weight, a dracm; name of a coin' [L tremissis]
 ・ ynċe 'inch' [L uncia]
 ・ yntse 'ounce' [L uncia]

[ Transactions and payments ]

 ・ ċēap 'perchase, sale, transaction, market, possessions, price' [L cauō or caupōnārī]
 ・ toll, also toln, tolne 'toll, tribute, rent, duty' [L toloneum]
 ・ trifet 'tribute' [L tributum]

[ Clothing; fabric ]

 ・ belt 'belt, girdle' [L balteus]
 ・ bīsæċċ 'pocket' [L bisaccium]
 ・ cælis 'foot-covering', also (later) calc 'sandal' [L calceus]
 ・ ċemes 'shirt, undergarment' [L camisia]
 ・ ġecorded 'having cords, corded (or perhaps fringed)' [L corda]
 ・ cugele '(monk's) cowl' [L cuculla]
 ・ fifele 'broach, clasp' [L fibula]
 ・ mentel 'cloak' [L mantellum]
 ・ pæll, pell 'fine or rich cloth; purple cloth; altar cloth rich robe' [L pallium]
 ・ pyleċe 'fur robe' [L pellicia]
 ・ seolc 'silk' [perhaps L sericum]
 ・ sīde 'silk' [L seta]
 ・ *sīric 'silk' [perhals L sericum]
 ・ socc 'light shoe' [L soccus]
 ・ swiftlēre 'slipper' [L subtalaris]
 ・ ? orel, orl 'robe, garment, veil, mantle' [L orale, orarium]
 ・ ? purpure, purpur 'deep crimson garment; deep crimson colour (imperial purple)' [L purpura]
 ・ ? sabon 'sheet' [L sabanum]
 ・ ? tæpped, teped 'cloth wall or floor covering' [L tapetum, tappetum]

[ Furniture and furnishing ]

 ・ meatte, matte 'mat; underlay for a bed' [L matta]
 ・ mēse, mīse 'table' [L mensa]
 ・ pyle, pylu 'pillow, cushion' [L pulvinus]
 ・ sċamol, sċemol, sċeomol, sċeamol 'stool, footstool, bench' [L *scamellum]
 ・ strǣl, strēaġl 'curtain; quilt, matting, bed' [L stragula]
 ・ strǣt 'bed' [L stratum]

[ Precious stones ]

 ・ ġimm 'gem, precious stone, jewel; also in figurative use' [L gemma]
 ・ meregrot 'pearl' [L margarita, but showing folk-etymological alteration after an English word for 'sea' and (probably) an English word for 'fragment, particple']
 ・ pærl '(very doubtfully) pearl' [perhals L *perla]

[ Roles, ranks, and occupations (non-religious or not specifically religious) ]

 ・ cāsere 'emperor; ruler' [L caesar]
 ・ fullere 'fuller' [L fullo]
 ・ mangere 'merchant, trader' [L mango]
 ・ mæġester, also (later) māgister or magister 'leader, master, teacher' [L magister]
 ・ myltestre 'prostitute' [L meretrix, with remodelling of the ending after the Old English feminine agent noun suffix -estre]
 ・ prafost, also profost 'head, chief, officer' [L praepositus, propositus]
 ・ sūtere 'shoumaker' [L sutor]

[ Punishment, judgement, codes of behaviour ]

 ・ pīn 'pain, fortune, anguish, punishment' [L poena]
 ・ regol, reogol 'rule; principle; code of rules; wooden ruler' [L regula]
 ・ sċrift 'something decreed as a penalty; penance; absolution; confessor; judge' [L scriptum]

[ Verbs ]

 ・ *cōfrian 'to recover' (implied by acōfrian in the same meaning) [L recuperare]
 ・ *cyrtan 'to shorten' (implied by cyrtel 'garment, tunic, cloak, gown' and (probably) ġecyrted 'cut off, shortened') [L curtus, adjective]
 ・ dīligian 'to erase, rub out; to destroy, obliterate' [L delere]
 ・ impian 'to graft; to busy oneself with' [L imputare]
 ・ *mūtian (implied by bemūtian 'to exchange' and mūtung 'exchange') [L mutare]
 ・ *nēomian 'to sound sweetly' or *nēome 'sound' [L neuma, noun]
 ・ pinsian 'to weigh, consider, reflect' [L pensare]
 ・ pīpian 'to play on a pipe' [L pipare]
 ・ pluccian 'to pluck' [perhaps L *piluccare]
 ・ *pundrian (implied by apyndrian, apundrian 'to weigh, to adjudge') [L ponderare, if not a derivative of OE punduru]
 ・ pynġan 'to prick' [L pungere]
 ・ sċrīfan 'to allot, prescribe, impose; to hear confession; to receive absolution; to have regard to' [L scribere]
 ・ seġlian 'to seal' [L sigillare]
 ・ seġnian 'to make the sign of the cross; to consecrate, bless' [L signare, if not < OE seġn]
 ・ *-stoppian (implied by forstoppian) 'to obstruct, stop up' [perhaps L *stuppare]
 ・ trifulian 'to break, bruise, stamp' [L tribulare]
 ・ tyrnan, turnian 'to turn, revolve' [L turnare]
 ・ ? cystan 'to get the value of, exchange for the worth of' [L constare]
 ・ ? dihtan, dihtian 'to direct, command, arrange, set forth' [L dictare]
 ・ ? glēsan 'to gloss, explain' [L glossare (verb) or glossa (noun)]
 ・ ? lafian 'to pour water on, to bathe, wash' [L lavare]
 ・ ? *pilian 'to peel, strip, pluck' [L pilare]
 ・ ? plantian 'to plant' [L plantare, or < OE plante]
 ・ ? *pyltan 'to pelt' (implied by later pilt, pelt) [perhaps L *pultiare, alteration of pultare]
 ・ ? sealtian 'to dance' [L saltare]
 ・ ? trahtian 'to comment on, expound; to interpret' [L tractare, if not < OE traht]

[ Adjectives ]

 ・ cirps, crisp 'curly, curly haired' [L crispus]
 ・ cyrten 'beautiful' [perhals L *cortinus]
 ・ pīs 'heavy' [L pensus]
 ・ sicor 'sure, certain; secure' [L securus]
 ・ sȳfre 'clean, pure, sober' [L sobrius]
 ・ byxen 'of box wood' [probably L buxeus]
 ・ ? cūsc 'virtuous, chaste' [L conscius, perhaps via Old Saxon kusko]

[ Miscellaneous ]

 ・ candel, condel 'candle, taper', (in figurative contexts) 'source of light' [L candela]
 ・ ċēas, ċēast 'quarrel, strife; reproof' [L causa]
 ・ ċeosol, ċesol 'hut; gullet; belly' [L casula, casella]
 ・ copor 'copper' [L cuprum]
 ・ derodine 'scarlet' [probably L dirodinum]
 ・ munt 'mountain, hill' [L mont-, mons]
 ・ plūm-, in plmfeðer '(inplural) down, feathers' [L pluma]
 ・ sælmeriġe 'brine' [L *salmuria]
 ・ sætern- (in sæterndæġ 'Saturday') [L Saturnus]
 ・ seġn 'mark, sign, banner' [L signum]
 ・ tasul, teosol 'dice; small square of stone' [L tessella, *tassellus]
 ・ tæfl 'piece used in a board game, dice; type of game played on a board, game of dice; board on which this is played' [L tabula]
 ・ -ere, forming agent nouns [probably L -arius; if so, borrowed early]
 ・ -estre, forming feminine agent nouns [perhaps L -istria]
 ・ ? coron-(b&#275;ag) 'crown' [L corona]
 ・ ? diht 'act of directing or arranging; direction, arrangement, command' [L dictum]
 ・ ? *pill (perhaps shown by pillsāpe soap for removing hair, depilatory) [perhals L pilus 'hair']

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-09-11 Wed

#3789. 古英語語彙におけるラテン借用語比率は1.75% [latin][loan_word][borrowing][oe][lexicology][statistics]

 英語語源学の第一人者 Durkin によれば,古英語期までに英語に借用されたラテン単語の数は,少なくとも600語はあるという.650年辺りを境に,前期に300語ほど,後期に300語ほどという見立てである.この600という数字を古英語語彙全体から眺めてみると,1.75%という割合がはじき出される.しかし,これらのラテン借用語単体ではなく,それに基づいて作られた合成語や派生語までを考慮に入れると,古英語語彙における割合は4.5%に跳ね上がる.Durkin (100) の解説を引用しよう.

If we take an estimate of at least 600 words borrowed (immediately) from Latin, and a total of around 34,000 words in Old English, then, conservatively, around 1.75% of the total are borrowed from Latin. If we include all compounds and derivatives formed on Latin loanwords in Old English, then the total of Latin-derived vocabulary probably comes closer to 4.5% . . . , although this figure may be a little too high, since estimates of the total size of the Old English vocabulary (native and borrowed) probably rather underestimate the numbers of compounds and derivatives.


 この数値をどう評価するかは視点の取り方次第である.後の歴史における英語の語彙借用の規模とその影響を考えれば,この段階でのラテン借用語の割合など,取るに足りない数字にみえるだろう.一方,これこそが英語の語彙借用の歴史の第一歩であるとみるならば,いわば0%から出発した借用語の比率が,すでに古英語期中に1.75%(あるいは4.5%)に達しているというのは,ある程度著しい現象であるといえなくもない.さらにいえば,その多くが千数百年を隔てた現代英語にも残っており,日常語として用いられているものも目立つのである(昨日の記事「#3788. 古英語期以前のラテン借用語の意外な日常性」 ([2019-09-10-1]) を参照).
 古英語のラテン借用語については英語史研究においてもさほど注目されてきたわけではないが,見方を変えれば十分に魅力的なトピックになりそうだ.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

Referrer (Inside): [2019-09-12-1]

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2019-09-10 Tue

#3788. 古英語期以前のラテン借用語の意外な日常性 [latin][loan_word][oe][lexicology][lexical_stratification][statistics][borrowing]

 昨日の記事「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1]) で触れたように,古英語期以前,とりわけ650年より前に入ってきた最初期のラテン借用語には,現在でも日常的に用いられているものが多い.「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1]) などで見てきたように,ラテン借用語にはレベルの高い単語が多いのは事実だが,古英語期以前の借用語に関していえば,そのステレオタイプは必ずしも事実を表わしていない.
 Durkin (138--39) による興味深い数値がある.Durkin は,「#3400. 英語の中核語彙に借用語がどれだけ入り込んでいるか?」 ([2018-08-18-1]) でも示したとおり,"Leipzig-Jakarta list of basic vocabulary" と呼ばれる通言語的に最も基本的な意味を担う100語を現代英語から取り出し,そのなかにどれほど借用語が含まれているかを調査してみた.結果としては,ラテン借用語についていえば,そこには1語も含まれていなかった.
 しかし,別途 "the WOLD survey" による1,460個の基本的な意味項目からなる日常語リストで調査してみると,137語ほど(およそ10%)が古英語期以前に借用されたラテン借用語と認定されるものだった.しかも,それらの単語は,24個設けられている意味のカテゴリーのうち,"Kinship", "Quantity", "Miscellaneous function words" を除く21個のカテゴリーにわたって見出されるという.つまり,英語史上,最初期に入ってきたラテン借用語は,広い分野にわたり日常的に用いられる英語の語彙の少なからぬ部分を構成しているというわけだ.古英語の形で具体例をいくつか挙げておこう.

 ・ butere "butter"
 ・ ele "oil"
 ・ cyċene "kitchen"
 ・ ċȳse, ċēse "cheese"
 ・ wīn "wine" (and its compounds)
 ・ sæterndæġ "Saturday"
 ・ mūl "mule"
 ・ ancor "anchor"
 ・ līn "line, continuous length"
 ・ mylen (and its compounds) "mill"
 ・ scōl, sċolu (and the compound leornungscōl) "school"
 ・ weall "wall"
 ・ pīpe "pipe, tube"
 ・ pīle "mortar"
 ・ disċ "plate/platter/bowel/dish"
 ・ candel "lamp, lantern, candle"
 ・ torr "tower"
 ・ prēost and sācerd "priest"
 ・ port "harbour"
 ・ munt "mountain or hill"

 このようにラテン借用語のなかには意外と多く「基本語彙」もあることを銘記しておきたい.関連して,基本語彙の各記事も参照.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-09-09 Mon

#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質 [latin][loan_word][oe][chronology][lexicology][borrowing][link]

 英語史におけるラテン借用語といえば,古英語期のキリスト教用語,初期近代英語期のルネサンス絡みの語彙(あるいは「インク壺用語」 (inkhorn_term)),近現代の専門用語を中心とする新古典主義複合語などのイメージが強い.要するに「堅い語彙」というステレオタイプだ.本ブログでも,それぞれ以下の記事で取り上げてきた.

 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#296. 外来宗教が英語と日本語に与えた言語的影響」 ([2010-02-17-1])
 ・ 「#1895. 古英語のラテン借用語の綴字と借用の類型論」 ([2014-07-05-1])
 ・ 「#478. 初期近代英語期に湯水のように借りられては捨てられたラテン語」 ([2010-08-18-1])
 ・ 「#576. inkhorn term と英語辞書」 ([2010-11-24-1])
 ・ 「#1408. インク壺語論争」 ([2013-03-05-1])
 ・ 「#1410. インク壺語批判と本来語回帰」 ([2013-03-07-1])
 ・ 「#1615. インク壺語を統合する試み,2種」 ([2013-09-28-1])
 ・ 「#3157. 華麗なる splendid の同根類義語」 ([2017-12-18-1])
 ・ 「#3438. なぜ初期近代英語のラテン借用語は増殖したのか?」 ([2018-09-25-1])
 ・ 「#3013. 19世紀に非難された新古典主義的複合語」 ([2017-07-27-1])
 ・ 「#3179. 「新古典主義的複合語」か「英製羅語」か」 ([2018-01-09-1])

 俯瞰的にいえば,このステレオタイプは決して間違いではないが,日常的で卑近ともいえるラテン借用語も存在するという事実を忘れてはならない.大雑把にいえば紀元650年辺りより前,つまり大陸時代から初期古英語期にかけて英語(あるいはゲルマン諸語)に入ってきたラテン単語の多くは,意外なことに,よそよそしい語彙ではなく,日々の生活になくてはならない語彙を構成しているのである.この事実は「ラテン語=威信と教養の言語」という等式の背後に隠されているので,よく確認しておくことが必要である.
 650年というのはおよその年代だが,この前後の時代に入ってきたラテン借用語のタイプは異なっている.単純化していえば,それ以前は「親しみのある」日常語,それ以降は「お高い」宗教と学問の用語が入ってきた.Durkin (103) の要約文を引用しよう.

The context for most of the later borrowings is certain: they are nearly all words connected with the religious world or with learning, which were largely overlapping categories in the Anglo-Saxon world. Many of them are only very lightly assimilated into Old English, if at all. In fact it is debatable whether some of them should even be regarded as borrowed words, or instead as single-word switches to Latin in an Old English document, since it is not uncommon for words only ever to occur with their Latin case endings.
   The earlier borrowings include many more words that are of reasonably common occurrence in Old English and later, for instance names of some common plants and foodstuffs, as well as some very basic words to do with the religious life.


 では,具体的に前期・後期のラテン借用語とはどのような単語なのか.それについては今後の記事で紹介していく予定である.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-09-05 Thu

#3783. 大陸時代のラテン借用語 pound, kettle, cheap [latin][loan_word][germanic][etymology][history]

 英語(およびゲルマン諸語)が大陸時代にラテン語から借用したとされる単語がいくつかあることは,「#1437. 古英語期以前に借用されたラテン語の例」 ([2013-04-03-1]),「#1945. 古英語期以前のラテン語借用の時代別分類」 ([2014-08-24-1]) などで紹介してきた.ローマ時代後期の借用語とされる pound, kettle, cheap; street, wine, pit, copper, pin, tile, post (wooden shaft), cup (Durkin 55) などの例が挙げられるが,そのうち pound, kettle, cheap について Durkin (72--75) に詳しい解説があるので,それを要約したい.
 古英語 pund は,Old Frisian pund, Old High German phunt, Old Icelandic pund, Old Swedish pund, Gothic pund などと広くゲルマン諸語に文証される.しかし諸言語に共有されているというだけでは,早期の借用であることの確証にはならない.ここでのポイントは,これらの諸言語に意味変化が共有されていることだ.つまり,いずれも重さの単位としての「ポンド」の意味を共有している.これはラテン語の lībra pondō (a pound by weight) という句に由来し,句の意味は保存しつつ,形態的には第2要素のみを取ったことによるだろう.交易において正確な重量測定が重要であることを物語る早期借用といえる.
 次に古英語 ċ(i)etel もゲルマン諸語に同根語が確認される (ex. Old Saxon ketel, Old High German kezzil, Old Icelandic ketill, Gothic katils) .古英語形は子音が口蓋化を,母音が i-mutation を示していることから,早期の借用とみてよい.ラテン語 catīnus は「食器」を意味したが,ゲルマン諸語ではそこから発達した「やかん」の意味が共有されていることも,早期の借用を示唆する.ただし,現代英語の kettle という形態は,ċ(i)etel からは直接導くことができない.後の時代に,語頭子音に k をもつ古ノルド語の同根語からの影響があったのだろう.
 ラテン語 caupō (small tradesman, innkeeper) に由来するとされる古英語 ċēap (purchase or sale, bargain, business, transaction, market, possessions, livestock) とその関連語も,しばしば大陸時代の借用とみられている.現代の形容詞 cheap は "good cheap" (good bargain) という句の短縮形が起源とされる.ゲルマン諸語の同根語は,Old Frisian kāp, Middle Dutch coop, Old Saxon kōp, Old High German chouf, Old Icelandic kaup など.動詞化した ċēapian (to buy and sell, to make a bargain, to trade) や ċȳpan (to sell) もゲルマン諸語に同根語がある.ほかに ċȳpa, ċēap (merchant, trader) を始めとして,ċēapung, ċȳping (trade, buying and selling, market, market place) や ċȳpman, ċȳpeman (merchant, trader) などの派生語・複合語も多数みつかる.この語については「#1460. cheap の語源」 ([2013-04-26-1]) も参照.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-17 Sat

#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達 [suffix][-ate][adjective][participle][verb][word_formation][loan_word][latin][french][conversion][morphology][analogy]

 昨日の記事「#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-16-1]) に引き続き,接尾辞 -ate の話題.動詞接尾辞の -ate については「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) で取り上げたが,今回はその起源と発達について,OED -ate, suffix1 を参照しながら,もう少し詳細に考えてみよう.
 昨日も述べたように,-ate はラテン語の第1活用動詞の過去分詞接辞 -ātus, -ātum, -āta に遡るから,本来は動詞の語尾というよりは(過去分詞)形容詞の語尾というべきものである.動詞接尾辞 -ate の起源を巡る議論で前提とされているのは,-ate 語に関して形容詞から動詞への品詞転換 (conversion) が起こったということである.形容詞から動詞への品詞転換は多くの言語で認められ,実際に古英語から現代英語にかけても枚挙にいとまがない.たとえば,古英語では hwít から hwítian, wearm から wearmian, bysig から bysgian, drýge から drýgan が作られ,それぞれ後者の動詞形は近代英語期にかけて屈折語尾を失い,前者と形態的に融合したという経緯がある.
 ラテン語でも同様に,形容詞から動詞への品詞転換は日常茶飯だった.たとえば,siccus から siccāre, clārus から clārāre, līber から līberāre, sacer から sacrāre などが作られた.さらにフランス語でも然りで,sec から sècher, clair から clairer, content から contenter, confus から confuser などが形成された.英語はラテン語やフランス語からこれらの語を借用したが,その形容詞形と動詞形がやはり屈折語尾の衰退により15世紀までに融合した.
 こうした流れのなかで,16世紀にはラテン語の過去分詞形容詞をそのまま動詞として用いるタイプの品詞転換が一般的にみられるようになった.direct, separate, aggravate などの例があがる.英語内部でこのような例が増えてくると,ラテン語の -ātus が,歴史的には過去分詞に対応していたはずだが,共時的にはしばしば英語の動詞の原形にひもづけられるようになった.つまり,過去分詞形容詞的な機能の介在なしに,-ate が直接に動詞の原形と結びつけられるようになったのである.
 この結び付きが強まると,ラテン語(やフランス語)の動詞語幹を借りてきて,それに -ate をつけさえすれば,英語側で新しい動詞を簡単に導入できるという,1種の語形成上の便法が発達した.こうして16世紀中には fascinate, concatenate, asseverate, venerate を含め数百の -ate 動詞が生み出された.
 いったんこの便法が確立してしまえば,実際にラテン語(やフランス語)に存在したかどうかは問わず,「ラテン語(やフランス語)的な要素」であれば,それをもってきて -ate を付けることにより,いともたやすく新しい動詞を形成できるようになったわけだ.これにより nobilitate, felicitate, capacitate, differentiate, substantiate, vaccinate など多数の -ate 動詞が近現代期に生み出された.
 全体として -ate の発達は,語形成とその成果としての -ate 動詞群との間の,絶え間なき類推作用と規則拡張の歴史とみることができる.

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2019-08-16 Fri

#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達 [suffix][-ate][adjective][participle][word_formation][loan_word][latin][french][conversion][morphology]

 英語で典型的な動詞語尾の1つと考えられている -ate 接尾辞は,実はいくつかの形容詞にもみられる.aspirate, desolate, moderate, prostrate, sedate, separate は動詞としての用法もあるが,形容詞でもある.一方 innate, oblate, ornate, temperate などは常に形容詞である.形容詞接尾辞としての -ate の起源と発達をたどってみよう.
 この接尾辞はラテン語の第1活用動詞の過去分詞接辞 -ātus, -ātum, -āta に遡る.フランス語はこれらの末尾にみえる屈折接辞 -us, -um, -a を脱落させたが,英語もラテン語を取り込む際にこの脱落の慣習を含めてフランス語のやり方を真似た.結果として,英語は1400年くらいから,ラテン語 -atus などを -at (のちに先行する母音が長いことを示すために e を添えて -ate) として取り込む習慣を獲得していった.
 上記のように -ate の起源は動詞の過去分詞であるから,英語でも文字通りの動詞の過去分詞のほか,形容詞としても機能していたことは無理なく理解できるだろう.しかし,後に -ate が動詞の原形と分析されるに及んで,本来的な過去分詞の役割は,多く新たに規則的に作られた -ated という形態に取って代わられ,過去分詞(形容詞)としての -ate の多くは廃用となってしまった.しかし,形容詞として周辺的に残ったものもあった.冒頭に挙げた -ate 形容詞は,そのような経緯で「生き残った」ものである.
 以上の流れを解説した箇所を,OED の -ate, suffix2 より引こう.

Forming participial adjectives from Latin past participles in -ātus, -āta, -ātum, being only a special instance of the adoption of Latin past participles by dropping the inflectional endings, e.g. content-us, convict-us, direct-us, remiss-us, or with phonetic final -e, e.g. complēt-us, finīt-us, revolūt-us, spars-us. The analogy for this was set by the survival of some Latin past participles in Old French, as confus:--confūsus, content:--contentus, divers:--diversus. This analogy was widely followed in later French, in introducing new words from Latin; and both classes of French words, i.e. the popular survivals and the later accessions, being adopted in English, provided English in its turn with analogies for adapting similar words directly from Latin, by dropping the termination. This began about 1400, and as in -ate suffix1 (with which this suffix is phonetically identical), Latin -ātus gave -at, subsequently -ate, e.g. desolātus, desolat, desolate, separātus, separat, separate. Many of these participial adjectives soon gave rise to causative verbs, identical with them in form (see -ate suffix3), to which, for some time, they did duty as past participles, as 'the land was desolat(e by war;' but, at length, regular past participles were formed with the native suffix -ed, upon the general use of which these earlier participial adjectives generally lost their participial force, and either became obsolete or remained as simple adjectives, as in 'the desolate land,' 'a compact mass.' (But cf. situate adj. = situated adj.) So aspirate, moderate, prostrate, separate; and (where a verb has not been formed), innate, oblate, ornate, sedate, temperate, etc. As the French representation of Latin -atus is -é, English words in -ate have also been formed directly after French words in --é, e.g. affectionné, affectionate.


 つまり,-ate 接尾辞は,起源からみればむしろ形容詞にふさわしい接尾辞というべきであり,動詞にふさわしい接尾辞へと変化したのは,中英語期以降の新機軸ということになる.なぜ -ate が典型的な動詞接尾辞となったのかという問題を巡っては,複雑な歴史的事情がある.これについては「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) を参照(また,明日の記事でも扱う予定).
 接尾辞 -ate については,強勢位置や発音などの観点から「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]),「#3685. -ate 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い」 ([2019-05-30-1]),「#3686. -ate 語尾,-ment 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い」 ([2019-05-31-1]),「#1383. ラテン単語を英語化する形態規則」 ([2013-02-08-1]) をはじめ,-ate の記事で取り上げてきたので,そちらも参照されたい.

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2019-08-09 Fri

#3756. アイルランド語からの借用語の年代別分布 [loan_word][irish][celtic][statistics][lexicology]

 連日ケルト関係の話題を続けているが,「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]),「#3750. ケルト諸語からの借用語 (2)」 ([2019-08-03-1]),「#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ」 ([2019-08-02-1]),「#3753. 英仏語におけるケルト借用語の比較・対照」 ([2019-08-06-1]) に引き続き借用語の話題.
 Durkin の OED3 を用いた調査によれば,英語に少なからぬ語彙的影響を与えた上位25位の言語のなかで,ケルト系諸語としてはアイルランド語のみがランクインするという.そこで,借用元言語としてアイルランド語にターゲットを絞って,借用語数を年代別にプロットしたのが次のグラフである (Durkin 94) .OED3 の A--ALZ, M--RZ の部分のみを対象とした調査である.

Loanwords from Irish, as Reflected by OED3 (A-ALZ and M-RZ)

 19世紀前半に借用語数のピークが来ているが,同時期の全借用語における割合でみれば0.2%を越える程度であり,著しいわけではない.多少のデコボコはあるにせよ,アイルランド借用語は常に目立たない存在であったことがわかる.考察範囲をケルト諸語全体に広げてみても,事情は変わらないだろう.関連して他の言語からの借用語の分布も比べてもらいたい.

 ・ 「#114. 初期近代英語の借用語の起源と割合」 ([2009-08-19-1])
 ・ 「#117. フランス借用語の年代別分布」 ([2009-08-22-1])
 ・ 「#874. 現代英語の新語におけるソース言語の分布」 ([2011-09-18-1])
 ・ 「#2162. OED によるフランス語・ラテン語からの借用語の推移」 ([2015-03-29-1])
 ・ 「#2164. 英語史であまり目立たないドイツ語からの借用」 ([2015-03-31-1])
 ・ 「#2165. 20世紀後半の借用語ソース」 ([2015-04-01-1])
 ・ 「#2369. 英語史におけるイタリア語,スペイン語,ポルトガル語からの語彙借用の歴史」 ([2015-10-22-1])
 ・ 「#2385. OED による,古典語およびロマンス諸語からの借用語彙の統計 (2)」 ([2015-11-07-1])
 ・ 「#2646. オランダ借用語に関する統計」 ([2016-07-25-1])

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-06 Tue

#3753. 英仏語におけるケルト借用語の比較・対照 [french][celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][gaulish][language_shift][diglossia][sociolinguistics]

 昨日の記事「#3752. フランス語のケルト借用語」 ([2019-08-05-1]) で,フランス語におけるケルト借用語を概観した.今回はそれと英語のケルト借用語とを比較・対照しよう.
 英語のケルト借用語の数がほんの一握りであることは,「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]),「#3750. ケルト諸語からの借用語 (2)」 ([2019-08-03-1]) で見てきた.一方,フランス語では昨日の記事で見たように,少なくとも100を越えるケルト単語が借用されてきた.量的には英仏語の間に差があるともいえそうだが,絶対的にみれば,さほど大きな数ではない.文字通り,五十歩百歩といってよいだろう.いずれの社会においても,ケルト語は社会的に威信の低い言語だったということである.
 しかし,ケルト借用語の質的な差異には注目すべきものがある.英語に入ってきた単語には日常語というべきものはほとんどないといってよいが,フランス語のケルト借用語には,Durkin (85) の指摘する通り,以下のように高頻度語も一定数含まれている(さらに,そのいくつかを英語はフランス語から借用している).

. . . changer is quite a high-frequency word, as are pièce and chemin (and its derivatives). If admitted to the list, petit belongs to a very basic level of the vocabulary. The meanings 'beaver', 'beer', 'boundary', 'change', 'fear' (albeit as noun), 'to flow', 'he-goat', 'oak', 'piece', 'plough' (albeit as verb), 'road', 'rock', 'sheep', 'small', and 'sow' all figure in the list of 1,460 basic meanings . . . . Ultimately, through borrowing from French, the impact is also visible in a number of high-frequency words in the vocabulary of modern English . . . beak, carpentry, change, cream, drape, piece, quay, vassal, and (ultimately reflecting the same borrowing as French char 'chariot') carry and car.


 この質的な差異は何によるものなのだろうか.伝統的な見解にしたがえば,ブリテン島のブリトン人はアングロサクソン人の侵入により比較的短い期間で駆逐され,英語への言語交代 (language_shift) も急速に進行したと考えられている.一方,ガリアのゴール人は,ラテン語・ロマンス祖語の話者たちに圧力をかけられたとはいえ,長期間にわたり共存する歴史を歩んできた.都市ではラテン語化が進んだとしても,地方ではゴール語が話し続けられ,diglossia の状況が長く続いた.言語交代はあくまでゆっくりと進行していたのである.その後,フランス語史にはゲルマン語も参入してくるが,そこでも劇的な言語交代はなかったとされる.どうやら,英仏語におけるケルト借用語の質の差異は言語接触 (contact) と言語交代の社会的条件の違いに帰せられるようだ.この点について,Durkin (86) が次のように述べている.

. . . whereas in Gaul the Germanic conquerors arrived with relatively little disruption to the existing linguistic situation, in Britain we find a complete disruption, with English becoming the language in general use in (it seems) all contexts. Thus Gaul shows a very gradual switch from Gaulish to Latin/Romance, with some subsequent Germanic input, while Britain seems to show a much more rapid switch to English from Celtic and (maybe) Latin (that is, if Latin retained any vitality in Britain at the time of the Anglo-Saxon settlement).


 この英仏語における差異からは,言語接触の類型論でいうところの,借用 (borrowing) と接触による干渉 (shift-induced interference) の区別が想起される (see 「#1985. 借用と接触による干渉の狭間」 ([2014-10-03-1]), 「#1780. 言語接触と借用の尺度」 ([2014-03-12-1])) .ブリテン島では borrowing の過程が,ガリアでは shift-induced interference の過程が,各々関与していたとみることはできないだろうか.
 フランス語史の光を当てると,英語史のケルト借用語の特徴も鮮やかに浮かび上がってくる.これこそ対照言語史の魅力である.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

Referrer (Inside): [2019-09-07-1] [2019-08-09-1]

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2019-08-05 Mon

#3752. フランス語のケルト借用語 [french][celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][gaulish][hybrid]

 連日英語におけるケルト諸語からの借用語を話題にしているが,観点をかえてフランス語におけるケルト借用語の状況を,Durkin (83--87) に依拠してみていこう.
 ローマ時代のフランス(ガリア)では,ラテン語と並んで土着のゴール語 (Gaulish) も長いあいだ用いられていた.都市部ではラテン語や(ロマンス祖語というべき)フランス語の前身が主として話されていたが,地方ではゴール語も粘り強く残っていたようだ.この長期にわたる接触の結果として,後のフランス語には,英語の場合よりも多くのケルト借用語が取り込まれてきた.とはいっても,100語を越える程度ではある(見方によって50--500語までの開きがある).ただし,「#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ」 ([2019-08-02-1]) で英語の場合について議論を展開したように,借用の時期やルートの特定は容易ではないようだ.この数には,ラテン語時代に借用されたものや,いくつもの言語の仲介を経て間接的に借用されたものなども含まれており,フランス語話者とゴール語話者の直接の接触に帰せられるべきものばかりではない.
 上記の問題点に注意しつつ,以下に意味・分野別のケルト借用語リストの一部を挙げよう (Durkin 84) .

 ・ 動物:bièvre "beaver", blaireau "badger", bouc "billy goat", mouton "sheep", vautre "type of hunting dog"; chamois "chamois", palefroi "palfrey", truie "sow" (最後の3つは混種語)
 ・ 鳥:alouette "lark", chat-huant "tawny owl"
 ・ 魚:alose "shad", loche "loach", lotte "burbot", tanche "tench", vandoise "dace", brochet "pike"; limande "dab" (ケルト接頭辞を示す)

 これらの「フランス単語」のうち,後に英語に借用されたものもある.mutton, palfrey, loach, tench, chamois などの英単語は,実はケルト語起源だったということだ.しかし,英単語 buck, beaver などは事情が異なり,フランス語の bièvre, bouc との類似は借用によるものではなく,ともに印欧祖語にさかのぼるからだろう.brasserie (ビール醸造)や cervoise (古代の大麦ビール)などは,ゴール人の得意分野を示しているようでおもしろい.
 フランス語におけるケルト借用語のその他の候補をアルファベット順に挙げてみよう (Durkin 84) .

arpent'measure of land'
bec'beak'
béret'beret'
borne'boundary (marker)'
boue'mud'
bouge'hovel, dive' (earlier 'bag')
bruyère'heather, briar-root'
changer'to change'
char'chariot' (reflecting a borrowing which had occurred already in classical Latin, whence also charrue 'plough')
charpente'framework' (originally the name of a type of chariot)
chemin'road, way'
chêne'oak'
craindre (partly)'to fear'
crème'cream'
drap'sheet, cloth'
javelot'javelin'
lieue'league (measure of distance)'
marne'marl' (earlier marle, hence English marl)
pièce'piece'
ruche'beehive'
sillon'furrow'
soc'ploughshare'
suie'soot'
vassal'vassal'
barre'bar'
jaillir'to gush, spring, shoot out'
quai'quay'


 英仏語におけるケルト借用語の傾向の差異という話題については,明日の記事で.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-03 Sat

#3750. ケルト諸語からの借用語 (2) [celtic][loan_word][borrowing][lexicology][etymology][toponymy][onomastics][irish]

 昨日の記事「#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ」 ([2019-08-02-1]) で論じたように,英語におけるケルト借用語の特定は様々な理由で難しいとされる.今回は,「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]) のリストと部分的に重なるものの,改めて専門家による批評を経た上で,確かなケルト借用語とみなされるものを挙げていきたい.その専門家とは,英語語源学の第1人者 Durkin である.
 Durkin (77--81) は,古英語期のあいだ(具体的にその時期のいつかについては詳らかにしないが)に借用されたとされる Brythonic 系のケルト借用語をいくつかを挙げている.まず,brock "badger" (OE brocc) は手堅いケルト借用語といってよい.これは,「アナグマ」を表わす語として,初期近代英語期に badger にその主たる地位を奪われるまで,最も普通の語だった.
 「かいばおけ」をはじめめとする容器を指す bin (OE binn) も早い借用とされ,場合によっては大陸時代に借りられたものかもしれない.
 coomb "valley" (OE cumb) も確実なケルト借用語で,古英語からみられるが主として地名に現われた.地名要素としての古いケルト借用語は多く,古英語ではほかに luh "lake", torr "rock, hill", funta "fountain", pen "hill, promontory" なども挙げられる.
 The Downs に残る古英語の dūn "hill" も,しばしばケルト借用語と認められている.「#1395. up and down」 ([2013-02-20-1]) で見たとおり,私たちにもなじみ深い副詞・前置詞 down も同一語なのだが,もしケルト借用語だとすると,ずいぶん日常的な語が借りられてきたものである.他の西ゲルマン諸語にもみられることから,大陸時代の借用と推定される.
 「ごつごつした岩」を意味する crag は初例が中英語期だが,母音の発達について問題は残るものの,ケルト借用語とされている.coble 「平底小型漁船」も同様である.
 hog (OE hogg) はケルト語由来といわれることも多いが,形態的には怪しい語のようだ.
 次に,ケルト起源説が若干疑わしいとされる語をいくつか挙げよう.古英語の形態で bannuc "bit", becca "fork", bratt "cloak", carr "rock", dunn "dun, dull or dingy brown", gafeluc "spear", mattuc "mattock", toroc "bung", assen/assa "ass", stǣr/stær "history", stōr "incense", cæfester "halter" などが挙がる.専門的な見解によると,gafeluc は古アイルランド語起源ではないかとされている.
 古アイルランド語起源といえば,ほかにも drȳ "magician", bratt "cloak", ancra/ancor "anchorite", cursung "cursing", clugge "bell", æstel "bookmark", ċine/ċīne "sheet of parchment folded in four", mind "a type of head ornament" なども指摘されている.この類いとされるもう1つの重要な語 cross "cross" も挙げておこう.
 最近の研究でケルト借用語の可能性が高いと判明したものとしては,wan "pale" (OE wann), jilt, twig がある.古英語の trum "strong", dēor "fierce, bold", syrce/syrc/serce "coat of mail" もここに加えられるかもしれない.
 さらに雑多だが重要な候補語として,rich, baby, gull, trousers, clan も挙げておきたい (Durkin 91) .

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-08-02 Fri

#3749. ケルト諸語からの借用語に関連する語源学の難しさ [celtic][loan_word][borrowing][lexicology][contact][etymology]

 「#3740. ケルト諸語からの借用語」 ([2019-07-24-1]) を受け,より専門的な語源学の知見を参照しながら英語へのケルト借用語について考えておきたい.主として参照するのは,Durkin の第5章 "Old English in Contact with Celtic" (76--95) である.
 ケルト諸語から英語への借用語が少ないという事実は疑いようがないが,ケルト借用語とされている個々の単語については,語源や語史の詳細が必ずしも明らかになっていないものも多い.先の記事で挙げたような,一般の英語史書でしばしば取り上げられる一連の単語は比較的「手堅い」ものが多いが,その中にももしかすると怪しいものがあるかもしれない.本当にケルト語からの借用語なのかという本質的な問題から,どの時代に借用されたのか,あるいはいずれのケルト語から入ってきたのかといった問題まで,様々だ.
 背景には,英語の歴史とケルト諸語の語源の両方に詳しい専門家が少ないという現実的な事情もある.また,ケルト語源学やケルト語比較言語学そのものも,発展の余地をおおいに残しているという側面もある.たとえば,河川名などの地名に関して「#1188. イングランドの河川名 Thames, Humber, Stour」 ([2012-07-28-1]) でみたように,ケルト語源を疑う見解もあるのだ.
 さらに,時期の特定の問題も難しい.英語話者とケルト諸語の話者との接触は,前者が大陸にいた時代から現代に至るまで,ある意味では途切れることなく続いている.問題の語が,大陸時代にゲルマン語に借用されたケルト単語なのか,アングロサクソン人のブリテン島への渡来の折に入ってきたものなのか,その後の中世から近代にかけてのある時点において流入したものなのか,判然としないケースもある.
 いずれのケルト語から入ってきたかという問題については,その特定に際して,「#778. P-Celtic と Q-Celtic」 ([2011-06-14-1]) で触れた音韻的な特徴がおおいに参考になる.しかし,この音韻差の発達は紀元1千年紀中に比較的急速に起こったとされ,ちょうどアングロサクソン人の渡来と前後する時期なので,語源の特定にも微妙な問題を投げかける.
 今後ケルト言語学が発展していけば,上記の問題にも答えられる日が来るのだろう.今後の見通しについては,Durkin (80--81) の所見を参考にされたい.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-07-24 Wed

#3740. ケルト諸語からの借用語 [celtic][loan_word][borrowing][lexicology][welsh][scottish_gaelic][irish]

 歴史的に,アングロサクソン人とケルト人の関係は征服者と被征服者の関係である.通常,水が下から上に流れることがないように,原則としてケルト語から英語への語彙の流入もなかった.小規模な語彙の流入があったとしても,あくまで例外的とみるべきである.
 「#1216. 古英語期のケルト借用語」 ([2012-08-25-1]) で示したものと重なるが,大槻・大槻 (58) より,アングロサクソン時代に英語に借用され,かつ現在まで生き残っているものを挙げると,bin (basket), dun (gray), ass (ass < Latin asinus) 程度のものである.また,ケルトのキリスト教を経由して英語に入ってきたものとしては clugge (bell), drȳ (magician) などがある.
 中英語期以降にも散発的にケルト諸語からの借用がみられた.以下,世紀別にいくつか挙げてみよう(W = Welsh, G = Scottish Gaelic, Ir = Irish) .質も量も地味である.

 ・ 14世紀: crag 絶壁 (G/Ir), flannel フランネル (W), loch 湖 (G).
 ・ 15世紀: bard 吟遊詩人 (G), brog 小錐 (Ir), clan 氏族 (G), glen 峡谷 (G).
 ・ 16世紀: brogue 地方訛り (Ir/G), caber 丸太棒 (G), cairn ケルン (G), coracle かご船 (W), gillie 高地族長の従者 (G), plaid 格子縞の肩掛け (G), shamrock シロツメクサ (Ir), slogan スローガン (G), whisky ウィスキー (G), usquebaugh ウィスキー.
 ・ 17世紀: dun こげ茶の (G/Ir), tory トーリー党 (Ir), leprechaun レプレホーン (Ir).
 ・ 18世紀: claymore 諸刃の剣 (G).
 ・ 19世紀: colleen 少女 (Ir), ceilidh 集い (Ir/G), hooligan ちんぴら(Ir).
 ・ 20世紀: corgi コーギー犬 (W).
 (W).

 以上,大槻・大槻 (58--59) に拠った.関連して「#2443. イングランドにおけるケルト語地名の分布」 ([2016-01-04-1]),「#2578. ケルト語を通じて英語へ借用された一握りのラテン単語」 ([2016-05-18-1]) を参照.

 ・ 大槻 博,大槻 きょう子 『英語史概説』 燃焼社,2007年.

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2019-07-04 Thu

#3720. なぜ英語の make は日本語に借用されると語末に母音 /u/ のついた meiku /meiku/ となるのですか? [sobokunagimon][japanese][syllable][phonetics][phoneme][sonority][loan_word][sonority]

 昨日の記事「#3719. 日本語は開音節言語,英語は閉音節言語」 ([2019-07-03-1]) でみたように,音節タイプという観点からみると,日本語と英語は対照的な言語です.英語は子音で終わる閉音節 (closed syllable) を示す語が多数ありますが,日本語では稀です.そのため,閉音節をもつ英単語を日本語に受容するに当たって,閉音節に何らかの調整を加えて開音節 (open syllable) へと変換するのが好都合です.とりわけ語末音節は開音節に変換したいところです.そのような調整のうち最も簡単な方法の1つは,音節末子音に母音を加えることです.これで原語の閉音節は,たいてい日本語の自然な音節タイプに組み入れることができるようになります.
 標題の例で考えてみましょう.英語の make /meɪk/ は子音 /k/ で終わる閉音節の語です.これを日本語に組み入れるには,この /k/ のあとに母音を1つ添えてあげればよいのです.具体的には /u/ を加えて「メイク」 /meiku/ とします.結果として /mei.ku/ と2音節(3モーラ)となりますが,語末音節は無事に開音節となりました.
 問題は,なぜ挿入される母音が /u/ であるかという点です.map (マップ), lobe (ローブ), dog (ドッグ), tough (タフ), love (ラブ), rice (ライス), rose (ローズ), dish (ディッシュ), cool (クール), game (ゲーム), sing (シング) などでも,対応するカタカナ語を考えてみると,すべて語末に /u/ が付加されています.
 しかし,比較的古い時代の借用語では cake (ケーキ)や brush (ブラシ)のように /i/ を付加する例もみられますし,watch (ウォッチ), badge (バッジ),garage (ガレージ)なども同様です.調音音声学的には,原語の発音に含まれている硬口蓋歯擦音の /ʃ, ʒ, ʧ, ʤ/ と前舌高母音 /i/ とは親和性が高い,と説明することはできるだろうとは思います.
 /u/ か /i/ かという選択の問題は残りますが,なぜ他の母音ではなくこの2つが採られているのでしょうか.それは,両者とも高母音として聞こえ度 (sonority) が最も低く,かつ短い母音だからと考えられています(川越,pp. 55--56).原語にはない母音を挿入するのですから,受容に当たって変形を加えるとはいえ,なるべく目立たない変更にとどめておきたいところです.そこで音声学的に影の薄い /u/ か /i/ が選択されるということのようです.
 ただし,重要な例外があります.英単語の音節末に現われる /t/ や /d/ については,日本語化に当たり /i/, /u/ ではなく /o/ を加えるのが一般的です.cat (キャット),bed (ベッド)の類いです.これは,もし /u/ や /i/ を付加すると,日本語の音として許容されない [tu, ti, du, di] が生じてしまうため,/u/ の次に高い /o/ を用いるものとして説明されます.音節を日本語化して [tsu, tʃi, dzu, dʒi] とする道も理屈としてはあり得たかもしれませんが,その方法は採られませんでした.
 「メイク」も「ケーキ」も「キャット」も,日本語音韻論に引きつけた結果の音形ということだったわけです.

 ・ 川越 いつえ 「第2章 音節とモーラ」菅原 真理子(編)『音韻論』朝倉日英対照言語学シリーズ 3 朝倉書店,2014年.30--57頁.

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