hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新    

clmet - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-02-22 05:23

2018-11-16 Fri

#3490. dreamt から dreamed [clmet][corpus][lmode][verb][conjugation][preterite][participle]

 Is it 'Dreamed' or 'Dreamt'? と題する Merriam-Webster の語法記事を読んだ.dream の過去形(および過去分詞形)が dreamt から dreamed へと規則化してきた近現史に焦点が当てられている.
 『メリアム・ウェブスター英英辞典』を含むいくつかの辞書では,dreamed の綴字のもとに /ˈdrɛmt, ˈdriːmd/ の2つの発音が記載されている.これは,動詞 dream の過去形・過去分詞形として dreamt/dreamed の両形態が交替可能であることを反映した併用・混用といえるだろうか.さすがに dreamt と綴って /ˈdriːmd/ と発音する旨の記述はない.(dreamt の発音の短母音については,「#2290. 形容詞屈折と長母音の短化」 ([2015-08-04-1]) を参照.)
 上の語法記事には,19世紀前半にはすでに dreamed が優勢となっていたとの記述があったので,これを確かめるべく後期近代英語コーパス CLMET3.0 で例文を集めてみた(検索結果のテキストファイルはこちら).頻度を集計した結果は次の通り.

Period (subcorpus size)dreamtdreamed
1710--1780 (10,480,431 words)5554
1780--1850 (11,285,587)75137
1850--1920 (12,620,207)71242


 18世紀の大半を含む第1期には両形は互角だったが,確かに19世紀前半を中心とする第2期に dreamed が大きく伸張している.そして,19世紀後半以降には dreameddreamt をさらに圧倒していった.
 とはいえ,現在に至るまで dreamt が「抹殺」されずにきたという事実を認識しておくことも重要である.言語変化は,個々の事例にもよるが,これほどゆっくり進むものである.
 動詞の「規則化」あるいは「強弱移行」については,「#178. 動詞の規則活用化の略歴」 ([2009-10-22-1]) ,「#527. 不規則変化動詞の規則化の速度は頻度指標の2乗に反比例する?」 ([2010-10-06-1]) ,「#528. 次に規則化する動詞は wed !?」 ([2010-10-07-1]),「#764. 現代英語動詞活用の3つの分類法」 ([2011-05-31-1]),「#1287. 動詞の強弱移行と頻度」 ([2012-11-04-1]) を参照.逆の「不規則化」「弱強移動」については「#3385. 中英語に弱強移行した動詞」 ([2018-08-03-1]) を参照.

Referrer (Inside): [2018-11-17-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2015-09-26 Sat

#2343. 19世紀における a lot of の爆発 [clmet][corpus][lmode][agreement][3pp][syntax][reanalysis]

 「#2333. a lot of」 ([2015-09-16-1]) で,現代英語で極めて頻度の高いこの句限定詞 (phrasal determiner) の歴史が,たかだか200年余であることをみた.19世紀に入るまでは,この句における lot は「一山,一組;集団,一群」ほどの語義で用いられており,その後,ようやく「多数;多量」の語義が生じたということだった.そこで,後期近代英語期における a lot oflots of の例を確認すべく,CLMET3.0 で例文を拾ってみた.(検索結果のテキストファイルはこちら.)
 第1期 (1710--1780) のサブコーパス(10,480,431語)からは4例がヒットしたが,いずれも「多数の〜」を意味する句としては用いられていない.a lot of my own drawing では「多数」ではなく「一山」の語義として用いられており,"Annuities for lives have occasionally been granted in two different ways; either upon separate lives, or upon lots of lives" では明らかに「集団」の語義だろう.しかし,最初の例などでは,語義が「多数」へと発展していきそうな雰囲気は感じられる.
 第2期 (1780--1850) のサブコーパス(11,285,587語)からは22例が得られた.予想通り,問題の用法で使われているものがちらほらと現われ出す.いくつかの例文を挙げよう.

 ・ You know when a lot of servants gets together they like to talk about their betters; and some, for a bit of swagger, likes to make it appear as though they knew more than they do, and to throw out hints and things just to astonish the others. (Anne Brontë, The Tenant of Wildfell Hall (1848))
 ・ There’ll be lots to speak for her! (ibid.)
 ・ . . . there's a high fender, and an iron safe, and some cards about ships that are going to sail, and an almanack, and some desks and stools, and an inkbottle, and some books, and some boxes, and a lot of cobwebs, . . . (Charles Dickens, Dombey and Son (1844))
 ・ . . . I ran on through a lot of alleys and back-slums, until I got somewhere in St. Giles's, and here I took a cab. (Punch, Vol. 1 (1841))


 a lot of の数の一致が判断できる例文は少なかったが,上の第1の例文が興味深い.主語の a lot of servants に対して gets と受けているが,この動詞の -s 語尾は,後続する some . . . likes から判断しても,複数主語に一致する複数現在の -s と考えるのが妥当だろう(複現の -s については 3pp の各記事を参照).
 第3期 (1850--1920) のサブコーパス(12,620,207語)からは,表現の頻度自体が大幅に増え,384例がヒットした.lot(s) が旧来の語義で用いられている例も少々みられるが,基本的には現代英語並と疑われるほど普通に「多数の〜」の意味で用いられている.1800年前後に初出し,その後数十年で一気に広まった流行語法であることがわかる.

Referrer (Inside): [2016-01-22-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2015-01-19 Mon

#2093. <gauge> vs <gage> [spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][eebo][clmet][emode][lmode][coha][ame_bre][spelling_pronunciation]

 「#2088. gauge の綴字と発音」 ([2015-01-14-1]) を受けて,<gauge> vs <gage> の異綴字の分布について歴史的に調べてみる.まずは,初期近代英語の揺れの状況を,EEBO (Early English Books Online) に基づいたテキスト・データベースにより見てみよう

Period (subcorpus size)<gage> etc.<gauge> etc.
1451--1500 (244,602 words)0 wpm (0 times)0 wpm (0 times)
1501--1550 (328,7691 words)3.35 (11)0.00 (0)
1551--1600 (13,166,673 words)6.84 (90)0.076 (1)
1601--1650 (48,784,537 words)3.01 (147)0.35 (17)
1651--1700 (83,777,910 words)0.060 (5)0.19 (5)
1701--1750 (90,945 words)0.00 (0)0.00 (0)


 17世紀に <gauge> 系が少々生起するくらいで,初期近代英語の基本綴字は <gage> とみてよいだろう.次に,18世紀以後の後期近代英語に関しては,CLMET3.0 を利用して検索した.

Period (subcorpus size)<gage> etc.<gauge> etc.
1710--1780 (10,480,431 words)51
1780--1850 (11,285,587)1920
1850--1920 (12,620,207)249


 おそらく1800年くらいを境に,それまで非主流派だった <gauge> が <gage> に肉薄し始め,19世紀中には追い抜いていったという流れが想定される.現代英語では BNCweb で調べる限り <gauge> が圧倒しているから,20世紀中もこの流れが推し進められたものと考えられそうだ.
 一方,<gage> の使用も多いといわれるアメリカ英語について COHA で調べてみると,実際のところ現代的には <gauge> のほうが圧倒的に優勢であるし,歴史的にも <gauge> が20世紀を通じて堅調に割合を伸ばしてきたことがわかる.あくまで,現代アメリカ英語では <gage> 「も」使われることがあるというのが実態のようだ.この事実は,「#1739. AmE-BrE Diachronic Frequency Comparer」 ([2014-01-30-1]) により "(?-i)\bgau?g(e|es|ed|ings?)\b" として検索をかけて得られる以下の表からも示唆される.いずれの変種でも <gauge> 系は見られるものの,<gage> 系についてはイギリス英語ではゼロ,アメリカ英語では部分的に使用されるという違いがある.

IDWORD19611991--92ca 2006
Brown (AmE)LOB (BrE)Frown (AmE)FLOB (BrE)AmE06 (AmE)BE06 (BrE)
1gage401010
2gages200010
3gaging1010000
4gauge16151061621
5gauged252110
6gauges011012
7gauging011000


 「#2088. gauge の綴字と発音」 ([2015-01-14-1]) で触れたアメリカ英語での <gage> 綴字の歴史的連続性の問題については,まだ明らかにするところまで行っていないが,<gage> が少々使用されている背景は気になるところだ.アメリカ英語に多いとされる綴字発音 (spelling_pronunciation) の効果なのだろうか.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-12-28 Sun

#2071. <dispatch> vs <despatch> [spelling][johnson][corpus][clmet]

 標記の語の綴字は,前者の <dispatch> が標準的とされるが,特にイギリス英語では後者の <despatch> も用いられる.辞書では両方記載されているのが普通で,後者が特に非標準的であるという記述はない.しかし,規範家のなかには後者を語源的な観点から非難する向きもあるようだ.この問題について Horobin (230--31) は次のように述べている.

The preference for dispatch over despatch is similarly debatable, given that despatch is recorded as an alternative spelling for dispatch by the OED. The spelling dispatch is certainly to be preferred on etymological grounds, since its prefix derives from Latin dis-; the despatch spelling first appeared by mistake in Johnson's Dictionary. However, since the nineteenth century despatch has been in regular usage and continues to be widely employed today. Given this, why should despatch not be used in The Guardian? In fact, a search of this newspaper's online publication shows that occurrences of despatch do sneak into the paper: while dispatch is clearly the more frequent spelling (almost 14,000 occurrences when I carried out the search), there were almost 2,000 instances of the proscribed spelling despatch.


 引用にあるとおり,事の発端は Johnson の辞書の記述らしい.確かに Johnson は見出し語として <despatch> を掲げており,語源欄ではフランス語 depescher を参照している.しかし,この接頭辞の母音はロマンス諸語では <i> か <e> かで揺れていたのであり,Johnson の <e> の採用を語源に照らして "mistake" と呼べるかどうかは疑問である.もともとラテン語ではこの語は文証されていないし,イタリア語では dispaccio,フランス語では despeechier などの綴字が行われていた.英語の綴字を決める際にどの語源形が参照されたかの問題であり,正誤の問題ではない.また,Johnson は辞書以外の自らの著作においては一貫して <dispatch> を用いており,いわば二重基準の綴り手だったことを注記しておきたい.
 <despatch> の拡大の背景に Johnson の辞書があったということは,実証することは難しいものの,十分にありそうだ.後期近代英語コーパス CLMET3.0 で70年ごとに区切った3期における両系統の綴字の生起頻度を取ってみると,次のように出た.

Period (subcorpus size)<dispatch> etc.<despatch> etc.
1710--1780 (10,480,431 words)403354
1780--1850 (11,285,587)145267
1850--1920 (12,620,207)67263


 この調査結果が示唆するのは,当初は <dispatch> が比較的優勢だったものの,時代が下るにつれ相対的に <despatch> が目立ってくるという流れだ.すでに18世紀中に両綴字は肉薄していたようだが,同世紀半ばの Johnson の辞書が契機となって <despatch> がさらに勢いを得たという可能性は十分にありそうだ.
 20世紀の調査はしていないが,おそらく,いかにもラテン語風の接頭辞を示す <dispatch> の綴字を標準的とする規範意識が働き始め,<despatch> の肩身が狭くなってきたという顛末ではないだろうか.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.

Referrer (Inside): [2017-10-07-1] [2016-07-17-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-12-03 Wed

#2046. <pronunciation> vs <pronounciation> [pronunciation][spelling][emode][lmode][eebo][clmet]

 「#2043. 英語綴字の表「形態素」性」 ([2014-11-30-1]) の記事の後半で,動詞 <pronounce> に対して名詞 <pronunciation> と綴られる理由に触れた.近現代英語の綴字はより表語的(より正確には表「形態素」的)な体系へと発展してきたが,前時代的な表音性も多分に残っており,この例のように <ou> = /aʊ/, <u> = /ʌ/ の関係が守られているケースがある.
 しかし,派生関係にある動詞と名詞の語幹部分に異なる母音,異なる母音字があるというのは厄介なことには違いない.そこで,この不一致を是正しようという欲求,あるいは一種の類推作用が生じることは自然の成り行きである.名詞を <pronouciation> と綴ったり,/prəˌnaʊnsiˈeɪʃən/ と発音する試みが行われてきた.この試みはしばしば規範主義者から誤用とレッテルを貼られてきたが,逆にいえば,それほどよく用いられることがあるということだ.Horobin (247) にも,"commonly misspelled pronounciation" として言及がある.OED は次のように述べている.

The forms pronouncyacyon, pronounciacion, pronountiation, pronounciation show the influence of PRONOUNCE v. This influence is also seen in the pronunciation Brit. /prəˌnaʊnsɪˈeɪʃn/, U.S. /prəˌnaʊnsiˈeɪʃ(ə)n/, which has frequently been criticized in usage guides.


 名詞における /aʊ/ の発音は,Web3 では "substandard" とレーベルが貼られており,Longman Pronunciation Dictionary では注意が喚起されている.
 名詞形の問題の母音を表わす綴字については,この語がフランス語から借用された後期中英語より <u> が普通だったが,OED によれば <ou> をもつ異綴りが15世紀以来行われてきたという.そこで,EEBO (Early English Books Online) に基づいたテキスト・データベースで調べてみると,16--17世紀には確かにパラパラと <ou> の例が挙がる.多少の異形も含めて検索した結果は以下の通り.

Period (subcorpus size)<pronunciation> etc.<pronounciation> etc.
1451--1500 (244,602 words)0 wpm (0 times)0 wpm (0 times)
1501--1550 (328,7691 words)9.73 (32)0.30 (1)
1551--1600 (13,166,673 words)1.14 (15)0.30 (4)
1601--1650 (48,784,537 words)1.35 (66)0.12 (6)
1651--1700 (83,777,910 words)1.38 (116)0.19 (16)
1701--1750 (90,945 words)0 (0)0 (0)


 続く18世紀以後については,CLMET3.0 で調べてみた.後期近代英語では <pronouciation> 系列は非標準綴字としておよそ地下に潜ったようである.

Period (subcorpus size)<pronunciation> etc.<pronounciation> etc.
1710--1780 (10,480,431 words)312
1780--1850 (11,285,587)430
1850--1920 (12,620,207)640


 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.

Referrer (Inside): [2017-10-07-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-12-02 Tue

#2045. なぜ mayn't が使われないのか? (2) [auxiliary_verb][negative][clitic][corpus][emode][lmode][eebo][clmet]

 昨日の記事「#2044. なぜ mayn't が使われないのか? (1)」 ([2014-12-01-1]) に引き続き,標記の問題.今回は歴史的な事実を提示する.OED によると,短縮形 mayn't は16世紀から例がみられるというが,引用例として最も早いものは17世紀の Milton からのものだ.

1631 Milton On Univ. Carrier ii. 18 If I mayn't carry, sure I'll ne'er be fetched.


 OED に基づくと,注目すべき時代は初期近代英語以後ということになる.そこで EEBO (Early English Books Online) ベースで個人的に作っている巨大テキスト・データベースにて然るべき検索を行ったところ,次のような結果が出た(mainat などの異形も含めて検索した).各時期のサブコーパスの規模が異なるので,100万語当たりの頻度 (wpm) で比較されたい.

Period (subcorpus size)mayn'tmay not
1451--1500 (244,602 words)0 wpm (0 times)474.24 wpm (116 times)
1501--1550 (328,7691 words)0 (0)133.22 (438)
1551--1600 (13,166,673 words)0 (0)107.01 (1,409)
1601--1650 (48,784,537 words)0.020 (1)131.85 (6,432)
1651--1700 (83,777,910 words)1.03 (86)131.54 (11,020)
1701--1750 (90,945 words)0 (0)109.96 (10)


 短縮形 mayn't は非短縮形 may not に比べて,常に圧倒的少数派であったことは疑うべくもない.短縮形の16世紀からの例は見つからなかったが,17世紀に少しずつ現われ出す様子はつかむことができた.18世紀からの例がないのは,サブコーパスの規模が小さいからかもしれない.「#1948. Addison の clipping 批判」 ([2014-08-27-1]) で見たように,Addison が18世紀初頭に mayn't を含む短縮形を非難していたほどだから,口語ではよく行われていたのだろう.
 続いて後期近代英語のコーパス CLMET3.0 で同様に調べてみた.18--19世紀中にも,mayn't は相対的に少ないながらも確かに使用されており,19世紀後半には頻度もやや高まっているようだ.mayn'tmay not の間で揺れを示すテキストも少なくない.

Period (subcorpus size)mayn'tmay not
1710--1780 (10,480,431 words)33859
1780--1850 (11,285,587)21703
1850--1920 (12,620,207)68601


 19世紀後半に mayn't の使用が増えている様子は,近現代アメリカ英語コーパス COHA でも確認できる.



 20世紀に入ってからの状況は未調査だが,「#677. 現代英語における法助動詞の衰退」 ([2011-03-05-1]) から示唆されるように,may 自体が徐々に衰退の運命をたどることになったわけだから,mayn't の運命も推して知るべしだろう.昨日の記事で触れたように特に現代アメリカ英語では shan'tshall とともに衰退したてきたことと考え合わせると,否定短縮形の衰退は助動詞本体(肯定形)の衰退と関連づけて理解する必要があるように思われる.may 自体が古く堅苦しい助動詞となれば,インフォーマルな響きをもつ否定接辞を付加した mayn't のぎこちなさは,それだけ著しく感じられるだろう.この辺りに,mayn't の不使用の1つの理由があるのではないか.もう1つ思いつきだが,mayn't の不使用は,非標準的で社会的に低い価値を与えられている ain't と押韻することと関連するかもしれない.いずれも仮説段階の提案にすぎないが,参考までに.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-09-30 Tue

#1982. -ick or -ic (2) [suffix][johnson][webster][corpus][spelling][clmet][lmode]

 「#872. -ick or -ic」 ([2011-09-16-1]) の記事で,<public> と <publick> の綴字の分布の通時的変化について,Google Books Ngram ViewerGoogle Books: American English を用いて簡易調査した.-ic と -ick の歴史上の変異については,Johnson の A Dictionary of the English Language (1755) では前者が好まれていたが,Webster の The American Dictionary of the English Language (1828) では後者へと舵を切っていたと一般論を述べた.しかし,この一般論は少々訂正が必要のようだ.
 「#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査」 ([2013-10-20-1]) で紹介した CLMET3.0 を用いて,後期近代英語の主たる -ic(k) 語の綴字を調査してみた.1710--1920年の期間を3期に分けて,それぞれの綴字で頻度をとっただけだが,結果を以下に掲げよう.

Spelling pairPeriod 1 (1710--1780)Period 2 (1780--1850)Period 3 (1850--1920)
angelick / angelic6 / 500 / 680 / 50
antick / antic4 / 101 / 60 / 3
apoplectick / apoplectic0 / 101 / 190 / 14
aquatick / aquatic1 / 20 / 350 / 56
arabick / arabic2 / 1010 / 450 / 115
archbishoprick / archbishopric4 / 72 / 20 / 8
arctick / arctic1 / 50 / 200 / 93
arithmetick / arithmetic9 / 320 / 770 / 98
aromatick / aromatic4 / 140 / 290 / 36
asiatick / asiatic1 / 1010 / 480 / 76
attick / attic1 / 320 / 340 / 71
authentick / authentic4 / 1600 / 790 / 68
balsamick / balsamic1 / 10 / 50 / 1
baltick / baltic4 / 500 / 330 / 43
bishoprick / bishopric3 / 282 / 90 / 19
bombastick / bombastic1 / 20 / 30 / 4
cathartick / cathartic0 / 11 / 00 / 0
catholick / catholic7 / 2910 / 3420 / 296
caustick / caustic1 / 20 / 110 / 20
characteristick / characteristic8 / 920 / 3540 / 687
cholick / cholic1 / 130 / 20 / 1
comick / comic1 / 680 / 670 / 165
coptick / coptic1 / 110 / 30 / 35
critick / critic12 / 1530 / 1680 / 155
despotick / despotic9 / 660 / 510 / 65
dialectick / dialectic1 / 00 / 00 / 6
didactick / didactic0 / 101 / 200 / 23
domestick / domestic46 / 7330 / 7360 / 488
dominick / dominic4 / 110 / 141 / 3
dramatick / dramatic8 / 2140 / 2060 / 216
elliptick / elliptic1 / 10 / 80 / 2
emetick / emetic4 / 50 / 70 / 5
epick / epic1 / 680 / 831 / 38
ethick / ethic1 / 60 / 00 / 3
exotick / exotic2 / 70 / 200 / 38
fabrick / fabric15 / 1161 / 840 / 111
fantastick / fantastic9 / 450 / 1570 / 198
frantick / frantic5 / 882 / 1630 / 124
frolick / frolic19 / 440 / 460 / 32
gaelick / gaelic1 / 10 / 300 / 64
gallick / gallic1 / 750 / 110 / 10
gothick / gothic2 / 4980 / 1310 / 66
heretick / heretic2 / 310 / 370 / 24
heroick / heroic17 / 2012 / 2240 / 211
hieroglyphick / hieroglyphic2 / 40 / 70 / 8
hysterick / hysteric1 / 90 / 100 / 6
laconick / laconic2 / 130 / 140 / 7
lethargick / lethargic1 / 120 / 80 / 14
logick / logic4 / 620 / 3610 / 367
lunatick / lunatic2 / 320 / 340 / 77
lyrick / lyric3 / 150 / 260 / 37
magick / magic9 / 1100 / 2960 / 292
majestick / majestic4 / 730 / 1491 / 115
mechanick / mechanic6 / 790 / 470 / 58
metallick / metallic1 / 90 / 790 / 137
metaphysick / metaphysic1 / 20 / 110 / 9
mimick / mimic2 / 251 / 460 / 23
musick / music87 / 5493 / 12203 / 1684
mystick / mystic1 / 390 / 920 / 167
obstetrick / obstetric1 / 20 / 10 / 0
panegyrick / panegyric19 / 1210 / 430 / 16
panick / panic14 / 581 / 900 / 314
paralytick / paralytic1 / 150 / 410 / 14
pedantick / pedantic3 / 310 / 280 / 29
philippick / philippic2 / 20 / 30 / 2
philosophick / philosophic1 / 1400 / 800 / 155
physick / physic35 / 1574 / 513 / 38
plastick / plastic1 / 40 / 190 / 32
platonick / platonic5 / 480 / 300 / 22
politick / politic8 / 402 / 370 / 51
prognostick / prognostic2 / 180 / 50 / 1
publick / public767 / 33501 / 31712 / 2606
relick / relic1 / 264 / 560 / 65
republick / republic12 / 5150 / 1850 / 171
rhetorick / rhetoric26 / 1092 / 400 / 65
rheumatick / rheumatic1 / 70 / 330 / 30
romantick / romantic32 / 1910 / 3460 / 322
rustick / rustic3 / 1020 / 1570 / 80
sarcastick / sarcastic1 / 370 / 660 / 60
sceptick / sceptic3 / 260 / 190 / 26
scholastick / scholastic2 / 240 / 420 / 46
sciatick / sciatic1 / 10 / 10 / 3
scientifick / scientific2 / 160 / 4510 / 814
stoick / stoic5 / 341 / 150 / 26
sympathetick / sympathetic3 / 260 / 700 / 248
systematick / systematic1 / 130 / 640 / 104
topick / topic12 / 1280 / 1770 / 176
traffick / traffic80 / 671 / 1640 / 203
tragick / tragic4 / 650 / 650 / 209
tropick / tropic12 / 370 / 70 / 23


 第2期以降 (1780--1920) は,すべての語において事実上 -ic のみとなったとみてよいが,18世紀の大半を含む第1期 (1710--1780) については,ここかしこに保守的な -ick が散見される.語によっては <critick>, <frolick>, <heroick>, <musick>, <panegyrick>, <panick>, <physick>, <publick>, <rhetorick>, <romantick>, <tropick> など そこそこの頻度を示すものもあるし,<traffick> ではむしろ -ic 形よりも優勢だ(なお,屈折語尾としての -ic(k) ではないが,garlick/garlic は,第1期 17 / 7, 第2期 1 / 8, 第3期 0 / 11 を数え,最初期に -ick が優勢だったもう1つの例である).しかし,全体として -ick 形は散見されるにすぎず,すでに18世紀より -ic 形が幅を利かせていたことがわかる.つまり,18世紀半ばの Johnson の辞書では,すでに影の薄くなっていた保守的な -ic が,半ば意識的に採用されたという解釈が成り立ちそうだ.Webster の時代ではなく,Johnson の時代にすでに -ic 形は事実上の市民権を得ていたと考えられる.
 しかし,CLMET で得られた後期近代英語の趨勢を歴史の中に適切に位置づけて解釈するためには,先行する初期近代英語における異綴字の分布(変化)も押えておく必要があるだろう.それについては明日の記事で.

Referrer (Inside): [2014-10-01-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-04-15 Tue

#1814. 18--19世紀の be 完了の衰退を CLMET で確認 [perfect][clmet][corpus][syntax][be][auxiliary_verb][aspect][participle][lmode]

 「#1653. be 完了の歴史」 ([2013-11-05-1]) で,変移動詞 (mutative verb) は,18世紀末まで,通常 be + 過去分詞というかたちで完了形を作っていたことを見た.英語史では,この be 完了が18世紀末辺りを境に衰退の一途をたどることになったとされている.「#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査」 ([2013-10-20-1]) で紹介した CLMET3.0 は,1710--1920年をカバーする約3,400万語からなる大型バランスコーパスであり,この種の言語変化を追うには最適なリソースと思われるので,これを用いて be 完了の衰退を確認してみた.
 今回は,先の記事でも取り上げた7つの変移動詞 (arrive, become, come, fall, flee, grow; go) に限定し,CLMET3.0 の3つの時代区分 (1710--1780, 1780--1850, 1850--1920) と6つのジャンル分け (Narrative fiction, Narrative non-fiction, Drama, Letters, Treatise, Other) にしたがって,コーパスから用例を拾った.3つの時期のサブコーパスの規模はおよそ同程度だが,ジャンル別のサブコーパスは,[2013-10-20-1]の表で示したように,Narrative fiction に大きく偏っているので,その解釈には注意を要する.以下,(1)--(7) に各動詞に関する推移の積み上げ棒グラフ,(8), (9) に7動詞をひっくるめたジャンル別,動詞別のシェアを示す積み上げ棒グラフを示す.(1)--(6) については,比較のためにY軸の最大値を揃えてある.データファイルと頻度表はソースHTMLを参照されたい.

Be Perfect with Seven Verbs


 動詞によって衰退のスピードに若干の違いがみられるが,全体として急激に衰退したというよりは,比較的穏やかに,着実に衰退していったという印象を受ける.ただし,(7) の go は(現代英語でも be gone がイディオム化して残っていることから分かるように)後期近代英語期中にはそれほど落ち込んでおらず,しかも用例数が他の動詞よりも大きく上回っているために,(8) や (9) に示されるような be 完了の衰退の全体像を多少なりとも歪めていることには注意する必要がある.

Referrer (Inside): [2017-08-14-1] [2016-02-20-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-01-07 Tue

#1716. shewshow (3) [spelling][corpus][clmet][representativeness]

 「#1415. shewshow (1)」 ([2013-03-12-1]) と「#1416. shewshow (2)」 ([2013-03-13-1]) で扱った問題を,「#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査」 ([2013-10-20-1]) で紹介した The Corpus of Late Modern English Texts, version 3.0 (CLMET3.0) により再訪したい.具体的には,同タグ付きコーパスを "\bshow(s|n|ed|ing)?_VB" と "\bshew(s|n|ed|ing)?_VB" で検索して,3時代区分ごとに生起頻度数を比べた.以下の結果が出た.


shew 系列show 系列総語数
1710--17803351,54510,480,431
1780--18501593,10011,285,587
1850--1920925,11812,620,207


 前回「#1416. shewshow (2)」 ([2013-03-13-1]) で利用した PPCMBE (Penn Parsed Corpus of Modern British English) は100万語弱のコーパスだが,今回の CLMET3.0 は約3,400万語の巨大コーパスである.ほぼ同じ時代をカバーしているので比較には都合がよい.前回と同様に今回も showshew を着実に置き換えている様子がうかがえるが,前回と大きく異なるのは,1710--1780年の第1期においてすでに show が圧倒的に勝っていることである.これを信じるならば,後期近代英語期に入るまでに,すでに show は勝敗を決していたということになる.PPCMBE では shew は後期近代英語期中に「優勢→同列→劣勢」と推移したが,CLMET3.0 では「当初から劣勢→もっと劣勢→さらに劣勢」と推移している.2世紀にわたる通時的な視点からは両コーパスともに大雑把には似たような傾向を示すとはいえるものの,18世紀の共時的な分布については両コーパスの示す数値の差は大きすぎるように思われる.ここには「#1280. コーパスの代表性」 ([2012-10-28-1]) という問題が関わってきそうであり,慎重な解釈が求められることになろう.
 なお,1つの文脈で shewshow がともに用いられている興味深い例もいくつかあった.3例のみ挙げよう.

 ・ Why, you have shewn your wit upon the subject, and I mean to show your courage;
 ・ Mr. Wright, as well as Nadin, professed they were perfectly satisfied of this, and appeared to shew to me all the polite attention that they were capable of showing.
 ・ Assuredly I did not show him the face which I shewed Folderico.

Referrer (Inside): [2014-04-07-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-01-03 Fri

#1712. as regards [preposition][conjunction][impersonal_verb][corpus][clmet]

 標題の熟語は,形式張った文体で「〜に関しては,〜について(いうと)」の意味で用いられる.典型的には "As regards the result, you need not worry so much." のように新しい主題を導くのに用いられる.機能的には前置詞といってよいだろう.
 この複合前置詞は,歴史的には「#1201. 後期中英語から初期近代英語にかけての前置詞の爆発」 ([2012-08-10-1]) で示唆したように,近代英語で発達してきた.だが,細かくいえば as regards は初期近代英語ではなく後期近代英語での発達と考えられる.OED の regard, v. によると,語義 8b にこの用法が記述されており,初例としては1797年の "A distinction is made, as regards moral rectitude, in the minds of many individuals." という例文が挙げられている.

b. as regards, as regarded (now rare), †as regarding: with respect or reference to


 一方,同じ動詞の現在分詞から発展した regarding, prep. も同様に用いられるが,こちらの初例としては1779年から " The servant was called, and examined regarding the import of the answer he had brought from Madame la Comtesse." の例文が挙げられている.ただし,名詞句に後続する regarding については17世紀より例があり,これが現在分詞なのか前置詞なのかを決定することは難しい.
 初出年代の細かな問題はあるにせよ,as regardsregarding も後期近代英語期になって根付いた動詞由来の前置詞であると解釈することに大きな異論はないだろう.OED に記載のある †as regarding も含めて,動詞 regard から派生した前置詞の複数の異形が18世紀後半辺りに活躍しだしたと考えられる.
 それを確かめるべく,「#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査」 ([2013-10-20-1]) で紹介した The Corpus of Late Modern English Texts, version 3.0 (CLMET3.0) により,as regards を検索してみた(as regarding は2例ほどヒット).70年間ごとに区切った頻度をまとめると以下のようになった.

DecadeFrequencyCorpus size
1710--17805 (5)10,480,431 words
1780--185070 (18)11,285,587
1850--1920347 (6)12,620,207


 OED が示唆するよりも少し早く,18世紀半ばからの例が確認される.しかし,例文を眺めてみると,おもしろいことに第1期からの例はいずれも so [as] far as regards . . . という形で現れている(上の表でかっこ内に示した頻度は,(in) so [as] far as regards . . . の形で現れる内数)."so far as regards the present subject", "as far as regards your knowledge", "so far as regards our present purpose" の如くである.第2期にも同種の例が多いことを考えると,as regardsas far as regards の省略形として発展・定着してきたとも考えられるかもしれない.
 なお,現在 as regards は複合前置詞としてとらえられており,統語的に分析する意味はないだろうが,歴史的な関心からあえて統語的に分析すれば,as は従属接続詞であり,主語を取らない非人称構文を導いているということになる.regards に後続する名詞句はあくまで動詞の目的語と分析される.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-10-20 Sun

#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査 [corpus][lmode][preposition][clmet]

 今年3月に Leuven 大学の Hendrik De Smet により The Corpus of Late Modern English Texts, version 3.0 (CLMET3.0) が公開された.編者にメールで使用許可をもらえば無償でダウンロードし利用できる.1710--1920年のイギリス英語コーパスで,約3,400万語からなるジャンルを整理したバランスコーパスである(先行版 CLMETEV の1500万語から大幅に拡大).プレーンテキストとタグ付きテキストで配布されており,70年間で分けた3つの時代区分ごとにヒット数を数える Perl スクリプトが付属しており,とりあえず使うのに便利である.コーパスの構成は以下の通り.

Sub-periodNumber of authorsNumber of textsNumber of words
1710--1780518810,480,431
1780--1850709911,285,587
1850--19209114612,620,207
TOTAL21233334,386,225

Genre1710--17801780--18501850--1920
Narrative fiction4,642,670 words4,830,7186,311,301
Narrative non-fiction1,863,8551,940,245958,410
Drama407,885347,493607,401
Letters1,016,745714,343479,724
Treatise1,114,5211,692,9921,782,124
Other1,434,7551,759,7962,481,247


 現在関心をもっている betweenbetwixt の揺れについて,後期近代英語でそれぞれがどのような分布を示すか,CLMET3.0 で軽く調査してみた.付属の検索ツールで検索した結果は,以下の通り.

Sub-periodbetweenbetwixt
1710--17804,869 words (464.58 wpm)657 (62.69 wpm)
1780--18505,457 (483.54 wpm)109 (9.66 wpm)
1850--19207,672 (607.91 wpm)51 (4.04 wpm)


 18世紀中は,between (88.11%) と並んで betwixt (11.89%) が,まだある程度の比率で使われていた.しかし,19世紀以降に激減し,現代英語における影の薄い変異形となったことがわかる.
 なお,De Smet は同じサイトで The Corpus of English Novels (CEN) も公開している.こちらは1882--1922年という1世代の間に書かれた英米の小説を集めたもので,短期間の言語変化調査や作家間の語法比較を念頭に置いたコーパスだという.全体で2,600万語からなる(内訳はソースHTMLを参照).こちらで調べると,between が9,905例 (98.86%),betwixt が114例 (1.14%) であり,確かに後者はすでに影が薄い.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow