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最終更新時間: 2022-12-02 14:05

2022-07-10 Sun

#4822. something of a(n) は後期近代英語に初出した口語表現 [lmode][clmet][corpus]

 昨日の記事「#4821. something of a(n) は「ちょっとした」なのか「かなりの」なのか?」 ([2022-07-09-1]) に続いて,この成句に関する話題.今回はその歴史に迫りたい.
 OED によると,something, n. (and adj.) and adv. の語義2cにこの用法が挙げられている.初出は1711年で,比較的新しい.

c. something of a(n), to a certain extent or degree a (person or thing of the kind specified).
   1711 J. Addison Spectator No. 106. ¶6 Sir Roger, amidst all his good Qualities, is something of an Humourist.
   1780 Mirror No. 70 As he was something of a sportsman, my guardians often permitted me to accompany him to the field.
   1801 M. Edgeworth Prussian Vase in Moral Tales III. 46 I am something of a judge of china myself.
   1826 B. Disraeli Vivian Grey I. ii. xiv. 195 Dormer, who was..something of an epicure, looked rather annoyed.
   1931 R. Campbell Georgiad iii. 55 Even the devil dwindles to a duiker, Who prides himself as something of a spiker.
   1939 R. G. Collingwood Autobiogr. iv. 27 I had become something of a specialist in Aristotle.
   1959 Listener 17 Dec. 1083/3 It had been, I admit, something of a party.
   1978 Lancashire Life Sept. 51/1 During the last war he became something of a legend, working incredible hours and doing general and orthopaedic surgery, as well as obstetrics.


 1711年の初出と分かった以上は,まさに1710--1920年の英語をカバーするコーパス CLMET3.0 の出番である.早速 CLMET で something of a(n) を検索し,こちらのコンコーダンスラインを得た.第1期 (1710--80) から24例,第2期 (1780-1850) から59例,第3期 (1850--1920) から80例と,時間とともに着実に用例が増加している.
 コンコーダンスラインをざっと眺めて,something of a(n) の意味が何ともいえずよく伝わってくる第1期からの例を見つけたので,挙げておこう

When we hear the Epithets of a fine Gentleman, a pretty Gentleman, much of a Gentleman, Gentlemanlike, something of a Gentleman, nothing of a Gentleman, and so forth; all these different Appellations must intend a Peculiarity annexed to the Ideas of those who express them; though no two of them, as I said, may agree in the constituent Qualities of the Character they have formed in their own Mind.


 ここでは,昨日の記事で論じたように,nothing of a(n) との対比を前提に something of a(n) が理解されていることがよく分かる.

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2022-05-02 Mon

#4753. 「英文法」は250年ほど前に規範的に作り上げられた! [prescriptivism][prescriptive_grammar][lmode][lowth][priestley][youtube][voicy]

 日本語なり英語なりの「文法」というものは,その話者集団が歴史のなかで暗黙裏に作り上げ,互いに従ってきた一種の慣習です.その意味では,日本語なり英語なりに歴史の当初から「文法」があったということはいうまでもありません.人間集団が作ったという点では厳密にいって人工的な文法であるには違いありませんが,さほど意識的にこしらえた文法ではなく,何となく慣習的に文法らしいものができあがってきたという点を考慮すれば,あくまで自然発生的な文法といえます.
 しかし,言語に対して意識が高まってきた西洋近代においては,文字通り人工的に文法をこしらえるという動きが出てきました.イギリスでは他国よりも若干遅れましたが,18世紀がまさにその時代でした.守るべき規範として意識的に作られた文法という意味で規範文法 (prescriptive_grammar) と呼ばれます.この時代にできあがった「規範英文法」は圧倒的に支持されることになり,現代に至るまで「英文法」といえば,デフォルトでこの時代にできあがって後に受け継がれた英文法を指すということになっています.日本の受験英文法も TOEIC の英文法もこれです.
 このような歴史的な事情があったことを踏まえ,私はあえて標題のように「『英文法』は250年ほど前に規範的に作り上げられた!」と述べることにしています.私たちがデフォルトで理解している「英文法」というものは,約250年ほど前にイギリスの知識人が有志で「英文法書」を上梓し,人々に受け入れられた瞬間に,生まれたといっても過言ではありません.つまり「英文法」とは,彼らが「英文法書」を書き上げた瞬間にできあがった代物ということになります.それ以前には「英文法」はなかったのです.
 昨晩公開された YouTube 番組「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の第19弾は「英文法が苦手なみなさん!苦手にさせた犯人は18世紀の規範文法家たちです.【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル # 19 】」というタイトルです.前回からの流れで関係代名詞の歴史から始め,18世紀の規範文法の時代に話が及びます.



 そして,この YouTube の内容を受けて,話し足りなかった部分を補足すべく,私の今朝の Voicy でも「18世紀半ばに英文法を作り上げた Robert Lowth とはいったい何者?」と題して,関連することをお話ししました.この規範文法の時代における最重要人物が Robert Lowth という人でした.



 詳しくは「#2583. Robert Lowth, Short Introduction to English Grammar」 ([2016-05-23-1]) を始めとして lowth あるいは prescriptive_grammar の各記事をご覧ください.

Referrer (Inside): [2022-07-19-1]

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2022-02-06 Sun

#4668. Lowth と Priestley --- 2人の規範文法家の本当の関係 [prescriptivism][prescriptive_grammar][lowth][priestley][history_of_linguistics][lmode]

 今世紀に入ってから,従来の英語史では盤石な定説とされていた「18世紀=規範主義の時代」が相対化されるようになってきた.「18世紀=規範主義の時代」という全体的な理解は変わらないが,当時の規範文法家たちの態度は,部分的には記述的な側面がかなりあったし,お互いの間に温度差もあった,といった具合に再評価が進んできたのである.この傾向については「#2815. 18世紀の規範主義の再評価について (1)」 ([2017-01-10-1]),「#2816. 18世紀の規範主義の再評価について (2)」 ([2017-01-11-1]) で触れた.
 伝統的には,Robert Lowth (1710--1787) は A Short Introduction to English Grammar (1762) で強い規範的な態度を示したのに対して,ライバル関係にあった Joseph Priestley (1733--1804) は The Rudiments of English Grammar; Adapted to the Use of Schools with Observations on Style (1761) で穏健で記述的な態度を示したとして対比されるのが常だった.
 しかし,先行研究を参照した山本 (100) によると「記述文法家に近い言語観を有していたとされる Priestley も,初版では,prescriptive comment はわずか 22 comments だけであったが,第2版では,238 comments,10倍以上の増加が確認されている」という.Lowth の成功を目の当たりにして,焦った Priestley が強めの規範文法家に転身した,という風にも見える.一般に「ライバル関係」にあったと言われるが,実は Priestley が Lowth を勝手にライバル視していたということのようだ(山本,p. 98).
 いくつかの文法項目を取り上げて Lowth と Priestley の扱いを比較対照した後,山本 (108) は次のように締めくくっている.

Lowth と Priestly が執筆した文法書は,ともに規範的であり,記述的であったことは言うまでもないが〔中略〕,規範的な姿勢については,相対的なものであることが確認された.彼らの文法書は,文法項目によって異なる規範が適用されていただけでなく,その規範は時に積極的に,時には消極的であったことを本稿では提示した.Lowth は,関係代名詞の省略について,明確性の欠如の観点から推奨されない,つまり強い規範的態度を示し,Priestley は関係代名詞 that の使用について,Lowth よりも更に強い規範的立場をとっていた.動名詞については,両者ともに積極的に規範的なコメントを発しているが,二重比較に対しては,Lowth は,規範的立場を,Priestley は,記述的立場をそれぞれとった.このように,Lowth と Priestley の文法書には,各文法項目に対して more proscriptive か more descriptive か,だけではなく,more proscriptive か less proscriptive といったより詳細な態度まで反映されていた.18世紀の規範文法書の研究の興味深さの1つは,各文法家の言語観の微妙な相違を探求することにあると言える.


 ・ 山本 史歩子 「2人の規範文法家:Robert Lowth と Joseph Priestley」『青山学院大学 教育人間科学部紀要』第10号,2019年,93--111頁.

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2022-01-13 Thu

#4644. Punch が生み出した単語 [punch][lexicology][neologism][lmode]

 昨日の記事「#4643. 19--20世紀の時事風刺漫画雑誌といえば Punch」 ([2022-01-12-1]) で,19--20世紀を代表する自自風刺画雑誌 Punch を紹介した.この雑誌は数々の新語を生み出した(あるいは既存のインパクトのある語を流行らせた)ことでも有名で,英語史上,無視することができない影響力を示してきた.
 OEDPunch を初例とする単語を粗々に検索してみると227語がヒットした.例えば,bi-monthly (adj., n,. adv.), brunch (v.), Chunnel (n.), gushy (adj.), hanky-panky (n.), punmanship (n.), snobbism (n.), thought control (n.), trendy (adj., n.), washerette (n.) など,馴染みのあるものも含めて数々の語が挙げられている.
 Punch におけるやりとりが語句の発祥となった例,つまり故事成語というべき例もある.curate's egg (玉石混淆,良いところも悪いところもあるもの)は,1895年11月9日の Punch より,次の会話から生まれたものとされる.(ただし OED によれば,この故事成語は実際のところ同年5月22日の Judy 誌が初例と判明しているようだ.Punch が後にその名誉をさらっていったという辺りも,影響力の大きさをうかがわせる.)

Right Reverend Host: I'm afraid you've got a bad Egg, Mr. Jones!
The Curate: Oh no, my Lord, I assure you! Parts of it are excellent!


 時代と新語を作り出してきた雑誌である.

 ・ Crystal, David. Evolving English: One Language, Many Voices. London: The British Library, 2010.

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2022-01-12 Wed

#4643. 19--20世紀の時事風刺画雑誌といえば Punch [punch][lmode]

 19世紀には英米でユーモアと風刺たっぷりの定期刊行物がはやった.そのなかでも飛び抜けて人気だったのが Punch である.創設者は Henry Mayhew, Mark Lemon, Joseph Stirling Coyne および版画家の Ebeneze Landells である.当時フランスで Charivari (語源不詳)という風刺雑誌が成功を収めており,これにあやかって副題を The London Charivari としたが,本題のほうは「ポンチのような混合物」となることを意図して Punch と定められた(cf. 「#35. finger の語源」 ([2009-06-02-1])).1841年の創刊から1992年まで休むことなく発行された.1996年から2002年まで復刊したが,時代の流れと財政難により,ついに廃刊となった.
 この雑誌は英語史的にも価値が高い.というのも,後期近代英語期から現代英語期にかけて,人々の英語(あるいは言語)に対する社会的態度がいかなるものであったかを,風刺を通じて教えてくれる貴重な資料だからだ.要するに,時代の言語習慣を写し出す鏡だったのである (Crystal 93) .
 Punch の記事を読むのは,実はとても難しい.風刺を理解するには,その時代の時事的な知識が必要だからだ.並の英語力では読み解けないことも多く,文字通り "philological" な知識が必要とされる.したがって,後期近代英語期(の英語史)の教材としてはうってつけということになる.
 以下は,1841年7月1日(木)の創刊号の表紙ページ第1ページ

Punch Title Page Punch First Page


 Punch の造語趣味は,第1ページの最初にある gaffawgraph だけからも感じられる.「しょーもないダジャレ;オヤジギャグ」ほどだろうか,普通の辞書にも OED にも載っていない!

 ・ Crystal, David. Evolving English: One Language, Many Voices. London: The British Library, 2010.

Referrer (Inside): [2022-01-13-1]

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2021-11-23 Tue

#4593. 語用論的な if you like 「こう言ってよければ」の発展 [pragmatics][discourse_marker][lmode][construction_grammar][politeness][comment_clause][syntax][constructionalisation]

 if you like/choose/prefer/want/wish/will という表現は,if you wish it to be so called 「こう言ってよければ」ほどの意味で,挿入句として口語でよく用いられる.形式的には if を用いた条件節だが,論理的に帰結節の内容と結びつくわけではなく,あくまでメタ言語的に用いられる.3つほど例文を挙げてみよう.

 ・ It was, if you like, an error of judgment.
 ・ He, or She, if you prefer, could do better than that.
 ・ Music, if you will, is medicine.

 このような語用論的な使い方の「if you + 選択動詞」構文を,Brinton (273) は "if-EC" (= if-elliptical clause) と呼んでいる.この構文の発生は比較的新しく,後期近代英語のことらしい.その原型として Call it cruelty if you like, not mercy. のような "call it X" 構文があったのではないかと提案している.構文化 (constructionalisation) を念頭に置いた議論だが,Brinton (290) の論考の結論部を引用しよう.

In conclusion, elliptical if-ECs --- if you choose/like/prefer/want/wish --- all serve metalinguistic and politeness functions in PDE; like and prefer are particularly common in these functions. The clauses make their appearance in the LModE period. Semantically the metalinguistic meanings of if-ECs can be seen as developing from the concrete propositional meaning 'if you choose to do X'. The syntactic derivation of these clauses is problematic, however, because it is impossible to trace their origin back to bipartite (protasis-apodosis) structures where the valency of the verbs is complete. Reconstruction of the complement of the verb in the if-clause proves difficult because of the varied complement structures found historically and the rarity of such structures with metalinguistic meaning. While if-ECs in their propositional meaning typically occur with an explicit apodosis (if you want, open the window), apodoses never occur when the if-ECs function metalinguistically (it's large, even gargantuan, if you wish [*you may say so]). Despite its rather late attestation, a more plausible source for the if-EC is the 'call it X' pattern, which is inherently metalinguistic. Metalinguistic if-ECs may result from constructionalisation of the 'call it X' pattern in conjunction with explicitly metalinguistic if you V- clauses.


 語用論と統語論の接点に関する問題の好例というべき話題である.

 ・ Brinton, Laurel. "If you choose/like/prefer/want/wish: The Origin of Metalinguistic and Politeness Functions." Late Modern English Syntax. Ed. Marianne Hundt. Cambridge: CUP, 2014. 271--90.

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2021-04-27 Tue

#4383. be surprised at ではなく be surprised by も実は流行ってきている [hel_education][link][khelf][passive][preposition][corpus][clmet][lmode][oed][khelf_hel_intro_2021]

 この4月を通じて宣伝してきた「英語史導入企画2021」も,そろそろ折り返し地点にたどり着きます.大学院と学部の英語史ゼミのメンバーが日々「英語史コンテンツ」を提供するという,年度初め限定のキャンペーンを展開しています.
 4月6日に公表された初回コンテンツは,「#4362. 「英語史導入企画2021」がオープンしました」 ([2021-04-06-1]) で紹介した「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(1)」でした.英語学習者の誰もが習う be surprised at ですが,最近では be surprised by も多くなっているという衝撃の事実(?)を指摘した大学院生によるコンテンツでした.
 それを受けて昨日アップされたのは,同院生による第2弾「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(2)」です.前回は現代英語の諸変種に焦点を当てた「共時的」な内容でしたが,今回はいよいよ英語史的の醍醐味ともいえる「通時的」なアプローチでの分析です.おお,そうなのか!という驚きの事実が明らかになります.英語史導入企画としてナイスです,ぜひどうぞ.
 私もその洞察に刺激を受け,18--19世紀辺りの分布はどうだったのだろうと,後期近代英語のコーパス CLMET3.0 でちらっと検索してみました.70年刻みの3期に分け,(be 動詞はあえて指定せず)surprised atsurprised by でヒット数を単純に比較してみました.

Periodsurprised atsurprised by
1710--178015840
1780--185018955
1850--192015730


 この時代には surprised by はまだ全体の2,3割程度だったということになります.上記のコンテンツによれば,その後 surprised by が20世紀後半から伸張してきたということで,ますます目を離せない追い上げといってよいですね.なお,コンテンツ内でも触れられている通り,この問題に関する本格的な研究として以下のものがありますので,改めて明記しておきます.

 ・ Taketazu, Susumu. Psychological Passives and the Agentive Prepositions in English: A Historical Study. Tokyo: Kaibunsha, 2019.

 今回のコンテンツは,英語史学習への導入としてはややハイレベルだったかもしれませんが,英語史研究への導入としては,基本的ながらもたいへん重要な指摘を多く含んでいると思いました.5点ほど挙げれば次のようになるでしょうか.

 ・ 英語史研究にはコーパス利用がたいへん有効であること
 ・ 同じく OED (= Oxford English Dictionary) の利用が不可欠であること
 ・ ただし,これらから得られた情報は,単純に結論につなげるのではなく,慎重に分析し議論することが必要であること
 ・ 言語は常に変化しているということ
 ・ 新しいと思っていた表現が,実は古くから用いられたということ

 「英語史導入企画2021」はまだまだ続きます.引き続きよろしくお願い致します.

Referrer (Inside): [2021-08-09-1]

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2021-01-14 Thu

#4280. 19世紀イギリス文学のオンラインコーパス --- CLiC [corpus][lmode][literature]

 先日,大学院生より教わった19世紀を中心とするイギリス文学のオンラインコーパス The CLiC web app を紹介.英文学史上,とりわけ英語小説史上とても重要な同世紀からの小説群が多く登録されている.主要な著者を挙げてみると,Anne Brontë, Anthony Trollope, Arthur Conan Doyle, Beatrix Potter, Benjamin Disraeli, Bram Stoker, Charles Dickens, Charlotte Brontë, Emily Brontë, George Eliot, Henry James, Jane Austen, John Ruskin, Joseph Conrad, Lewis Carroll, Mary Shelley, Oscar Wilde, Robert Louis Stevenson, Rudyard Kipling, Thomas Hardy, William Makepeace Thackeray と華々しい.
 文体論研究を念頭においたコーパスで,作品や著者ごとにサブコーパスを選択できる.まだ本格的に使っていないが,上記インターフェースや説明書きから推察するに,例えば次のようなこともできそう.

 ・ Texts タブにより,テキストそのものを表示できる
 ・ 引用符内外のテキスト(地の文と台詞)を区別して検索対象として指定できる
 ・ Keywords タブにより,参照コーパスを別途設定しつつ,ある作品(群)の keywords を収集・一覧できる
 ・ Clusters タブにより,n-gram による共起表現の検索や計算ができる

 本来は,研究テーマが先にあり,その研究に役立つコーパスが存在するか,あるいは入手可能か,という問いが生じ,その答えが Yes であれば,それをどのように使えるか具体的に考え,そして実際に使ってみるというのが基本的な手順となるだろう.一方,ある新しいコーパスを見つけたら,それはどんなコーパスで,何ができる(できない)のかを問うてみて,その上で○○な研究をする際には使えそうだな,と当たりを付けておく逆の手順も,エクササイズとして有効.

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2021-01-04 Mon

#4270. 後期近代英語には -ly が2つ続く副詞 -lily がもっとあった [corpus][clmet][lmode][adverb][suffix][-ly][haplology]

 「#4268. -ly が2つ続く副詞 -lily は稀である」 ([2021-01-02-1]) の記事で,接尾辞 -ly が2つついて -lily の形態を示す副詞が,現代英語においては稀であることを確認した.調音上の都合による haplology (重音脱落)の効果とみてよいだろう.
 しかし,古い英語においても同じ「調音上の都合」が効いていたかどうかは別途調べなければならない.というのは,中英語テキストを読んでいると,-lily のような副詞に出会うことがままあるからだ.歴史の過程で haplology を経た形態が一般的になってきたのではないかと,私は疑っている.
 まずは,現代の直近の時代である後期近代英語について調べてみたい.同時期のコーパス CLMET3.0 に登場してもらおう.このコーパスに対して,(いろいろ試行錯誤した挙げ句にたどりついた)"\B(?<!s)l[iy]l[yi](ch?)?(e(r|st)?)?\b" という Perl 対応の正規表現にて検索をかけてみた.その結果を,3つの時期ごとに整理したのが以下である.

 ・ 第1期(1710--1780年): surlily (11 times), livelily (3), sillily (2), immortalily (1), jollily (1) --- total 18 examples
 ・ 第2期(1780--1850年): surlily (13), holily (3), jollily (2), sillily (2), lovelily (1) --- total 21 examples
 ・ 第3期(1850--1920年): sillily (2), surlily (2), jollily (1), melancholily (1), lovelily (1), oilily (1), statelily (1) --- total 9 examples

 前回の記事 ([2021-01-02-1]) で示した現代英語の BNCweb から取り出した事例と比べてみると分かるように,後期近代英語期にも -lily として現われる副詞の種類には緩い傾向がありそうだ.jollily, sillily, surlily などは低頻度ながらも,どの時期にも現われている.
 約1億語からなる BNCweb から取り出せたのは実質的に15例,約3,400万語からなる CLMET から取り出せたのは48例.この単純な調査と比較だけで一般的に結論づけることはできないが,後期近代英語期では現代英語期よりも -lily 副詞が現われていた(許容されていた?)ようにみえる.

Referrer (Inside): [2021-01-16-1] [2021-01-05-1]

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2020-02-06 Thu

#3937. hospitalhumbleh も200年前には発音されていなかった? [walker][h][lmode][sociolinguistics]

 昨日の記事「#3936. h-dropping 批判とギリシア借用語」 ([2020-02-05-1]) に引き続き,Minkova (108) に依拠しながら h に関する話題を提供したい.
 現代標準英語で語頭の h が発音されないとされているのは heir, honest, honour, hour やその関連語など少数に限られているが,h の有無で揺れを示す例ということでいえば herb, historical, humour などが追加される.実際,「#461. OANC から取り出した発音されない語頭の <h>」 ([2010-08-01-1]),「#462. BNC から取り出した発音されない語頭の <h>」 ([2010-08-02-1]) で調べてみたところによると,揺れの事例は少なくない.
 共時的にこのような揺れがみられるということは,通時的にも様々な変異や変化があっただろうことを予想させる.実際,比較的最近ともいえる後期近代英語期に焦点を絞ってみても,現代とは異なる状況が浮かび上がってくる.200年ほど前の規範的な発音を映し出す John Walker の Critical Pronouncing Dictionary (46) を参照してみよう.語頭の h は常に発音されるということになっているが,次の語においては例外的に h が発音されないとして,15語が列挙されている.

heir, heiress, honest, honesty, honour, honourable, herb, herbage, hospital, hostler, hour, humble, humour, humorous, humoursome


 ここには現在 h の有無の揺れを示す語も含まれているが,全体としていえば当時と現代の規範が大きく異なるわけではない.しかし,このなかでも hospitalhumble に関しては,現代英語では /h/ で発音されるのが普通だろう.つまり,この200年ほどの間に,少なくともこの2語に関しては発音(の規範)が変わったということが示唆される(あくまで規範の変化であって,実際の英語話者の発音が変化したのかどうかは別途調べる必要があることに注意).
 この200年の間の緩やかな規範の変化が何を意味するのか,なぜ他の語ではなく hospitalhumble が変化したのかなど謎は残る.しかし,後期近代英語と現代英語とで変化していないのは,いずれの時代においても,<h> と綴られながら /h/ と発音されない一定数の語があること,そしてそれを知っていることが教養の証であるということだ.当時も今も,h の問題は Henry Sweet がいうところの "an almost infallible test of education and refinement" でもあり,Lynda Mugglestone の "symbol of the social divide" でもあり続けているのだ.

 ・ Minkova, Donka. A Historical Phonology of English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2014.
 ・ Walker, John. Critical Pronouncing Dictionary and Expositor of the English Language. London: Robinson and Cadell, 1971.

Referrer (Inside): [2020-02-07-1]

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2018-11-16 Fri

#3490. dreamt から dreamed [clmet][corpus][lmode][verb][conjugation][preterite][participle]

 Is it 'Dreamed' or 'Dreamt'? と題する Merriam-Webster の語法記事を読んだ.dream の過去形(および過去分詞形)が dreamt から dreamed へと規則化してきた近現史に焦点が当てられている.
 『メリアム・ウェブスター英英辞典』を含むいくつかの辞書では,dreamed の綴字のもとに /ˈdrɛmt, ˈdriːmd/ の2つの発音が記載されている.これは,動詞 dream の過去形・過去分詞形として dreamt/dreamed の両形態が交替可能であることを反映した併用・混用といえるだろうか.さすがに dreamt と綴って /ˈdriːmd/ と発音する旨の記述はない.(dreamt の発音の短母音については,「#2290. 形容詞屈折と長母音の短化」 ([2015-08-04-1]) を参照.)
 上の語法記事には,19世紀前半にはすでに dreamed が優勢となっていたとの記述があったので,これを確かめるべく後期近代英語コーパス CLMET3.0 で例文を集めてみた(検索結果のテキストファイルはこちら).頻度を集計した結果は次の通り.

Period (subcorpus size)dreamtdreamed
1710--1780 (10,480,431 words)5554
1780--1850 (11,285,587)75137
1850--1920 (12,620,207)71242


 18世紀の大半を含む第1期には両形は互角だったが,確かに19世紀前半を中心とする第2期に dreamed が大きく伸張している.そして,19世紀後半以降には dreameddreamt をさらに圧倒していった.
 とはいえ,現在に至るまで dreamt が「抹殺」されずにきたという事実を認識しておくことも重要である.言語変化は,個々の事例にもよるが,これほどゆっくり進むものである.
 動詞の「規則化」あるいは「強弱移行」については,「#178. 動詞の規則活用化の略歴」 ([2009-10-22-1]) ,「#527. 不規則変化動詞の規則化の速度は頻度指標の2乗に反比例する?」 ([2010-10-06-1]) ,「#528. 次に規則化する動詞は wed !?」 ([2010-10-07-1]),「#764. 現代英語動詞活用の3つの分類法」 ([2011-05-31-1]),「#1287. 動詞の強弱移行と頻度」 ([2012-11-04-1]) を参照.逆の「不規則化」「弱強移動」については「#3385. 中英語に弱強移行した動詞」 ([2018-08-03-1]) を参照.

Referrer (Inside): [2019-05-15-1] [2018-11-17-1]

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2018-07-01 Sun

#3352. scarveshooves [plural][lmode][speed_of_change]

「#3300. なぜ wolf の複数形が wolves なのか? (3)」 ([2018-05-10-1]) で,/f/ で終わる名詞をいくつか挙げ,その複数形が -f か -ves かのいずれを取るか,あるいは両者の示す揺れについて簡単にまとめた.
 先日 Mondorf による後期近代英語期の形態論に関する文章を読んでいて,この時期の間に「不規則形」の scarves, hooves が拡張し,「規則形」の scarfs, hoofs が相対的に減少してきているという記述に出会った.特に scarves は,18世紀には20%ほどの生起率だったが,20世紀中に80%近くまで大きく躍進した.hooves は18世紀の0%から19世紀の1桁台の比率を経て,20世紀中には30%強まで数値を延ばしてきたようだ.
 語幹を変形させずに単純に -s を付すことを「規則的」と見るのであれば,これらの名詞で起こっていることは「不規則化」となるが,語幹末の -f を -v とした上で -es というパターンは「小規則」として確かに存在するともいえる.つまり,この現象は見方によっては「不規則化」とも「小規則化」とも,場合によっては「規則化」とも解しうることになる.このような視点の問題は,分析者が共時・通時のいずれの観点をとるかによっても微妙な影響を受けるので,取り扱いが難しい.
 しかし,言語変化はこのような過程の繰り返しではある.1つの大規則に収められる方向で進んでいるかと思いきや,気づけば複数の小規則が林立している.ところが,だからといって言語体系が著しく無秩序になるかといえばそうもならず,むしろ互いの分布がある程度整理され,別の秩序が生み出される,等々.大規則と小規則の関係については,「#1596. 分極の仮説」 ([2013-09-09-1]) を参照されたい.

 ・ Mondorf, Britta. "Late Modern English: Morphology." Chapter 53 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 843--69.

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2018-06-30 Sat

#3351. アメリカ英語での "mandative subjunctive" の使用は "colonial lag" ではなく「復活」か? [subjunctive][ame_bre][colonial_lag][inflection][emode][lmode][americanisation][mandative_subjunctive]

 "mandative subjunctive" あるいは仮定法現在と呼ばれる語法について「#325. mandative subjunctiveshould」 ([2010-03-18-1]),「#326. The subjunctive forms die hard.」 ([2010-03-19-1]),「#345. "mandative subjunctive" を取り得る語のリスト」 ([2010-04-07-1]),「#3042. 後期近代英語期に接続法の使用が増加した理由」 ([2017-08-25-1]) などで扱ってきた.
 屈折の衰退,さらには「総合から分析へ」 (synthesis_to_analysis) という英語史の大きな潮流を念頭におくと,現代のアメリカ英語(および遅れてイギリス英語でも)における仮定法現在の伸張は,小さな逆流としてとらえられる.この謎を巡って様々な研究が行なわれてきたが,決定的な解答は与えられていない.また,一般的にアメリカ英語での使用は,アメリカ英語の保守的な傾向,すなわち colonial_lag を示す例の1つとしばしば解釈されてきたが,この解釈にも疑義が唱えられるようになってきた.すなわち,古語法の残存というよりは,初期近代英語期に一度は廃用となりかけた古語法の後期近代英語期における復活の結果ではないかと.
 先行研究を参照しながら,Mondorf (853) が次のように要約している.

[R]ecent empirical studies concur that the subjunctive had virtually become extinct in both varieties; rather than witnessing its delayed demise in AmE, we are observing its revival in AmE and --- though at a slower pace --- also in BrE . . . .
   The trajectory of change takes the form of a successive decline from Old English to Early Modern English, ranging from a relatively wide distribution in Old English, with competition between indicatives and modal periphrases (e.g. scolde + infinitive), via a reduction of formal marking in Middle English (when the indicative preterit plural -on and subjunctive preterit plural and past participle of strong verbs -en were fused and final unstressed -e was lost), to rare instances in Early Modern English. It is only at the end of the LModE period that the subjunctive re-established itself and "nothing less than a revolution took place" . . . .


 なぜ後期近代英語期のアメリカで接続法使用が復活してきたのかという問いについては,いくつかの議論がある.まず,「#3042. 後期近代英語期に接続法の使用が増加した理由」 ([2017-08-25-1]) でみたように,規範文法の影響力や社会言語学的な要因を重視する見解がある.一方,機能的な観点から,非現実 (irrealis) を表現したいというニーズそのものは変わっておらず,その形式が法助動詞から接続法現在屈折へシフトしたにすぎないとする見解もある.後者の見解では,アメリカ英語においていくつかの法助動詞の使用が減少したこととの関連が考えられる (Mondorf 853--54) .
 イギリス英語でもアメリカ英語に遅ればせながら,接続法現在の使用が増えてきているようだが,これは一般にはアメリカ英語の影響 (americanisation) と考えられている.しかし,もしかすると少なくとも部分的には,かつてのアメリカ英語で起こったのと同様に,イギリス英語での独立的な発達という可能性も捨てきれないという (Mondorf 854) .まだ研究の余地が十分に残っている領域である.
 いくつか最近の関連する研究の書誌を挙げておこう.

  ・ Crawford, William J. "The Mandative Subjunctive." One Language, Two Grammars: Grammatical Differences between British English and American English. Ed. Günter Rohdenburg and Julia Schlüter. Cambridge: CUP, 2009. 257--276.
  ・ Hundt, Marianne. "Colonial Lag, Colonial Innovation or Simply Language Change?" One Language, Two Grammars: Grammatical Differences between British English and American English. Ed. Günter Rohdenburg and Julia Schlüter. Cambridge: CUP, 2009. 13--37.
  ・ Kjellmer, Göran. "The Revived Subjunctive." One Language, Two Grammars: Grammatical Differences between British English and American English. Ed. Günter Rohdenburg and Julia Schlüter. Cambridge: CUP, 2009. 246--256.
  ・ Övergaard, Gerd. The Mandative Subjunctive in American and British English in the 20th Century. Stockholm: Almqvist & Wiksell, 1995.
  ・ Schlüuter, Julia. "The Conditional Subjunctive." One Language, Two Grammars: Grammatical Differences between British English and American English. Ed. Günter Rohdenburg and Julia Schlüter. Cambridge: CUP, 2009. 277--305.

 ・ Mondorf, Britta. "Late Modern English: Morphology." Chapter 53 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 843--69.

Referrer (Inside): [2021-02-26-1]

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2018-06-29 Fri

#3350. 後期近代英語期は新たな秩序を目指した時代 [lmode][morphology][synthesis_to_analysis]

 昨日の記事「#3349. 後期近代英語期における形容詞比較の屈折形 vs 迂言形の決定要因」 ([2018-06-28-1]) に続いて,後期近代英語期に形成されてきたという「新たな秩序」について.一般に,後期近代英語期は一応の英語の標準化が成し遂げられたものの,いまだ変異や揺れが観察され,現代英語に比べれば「混乱した状況」を呈していたと言われる.しかし,Mondorf (843) は,そのような表面的な混乱の背後には,新たな均衡を目指す機能的な動機づけが隠されており,むしろ後期近代英語から現代英語にかけて新たな秩序が形成されつつあるのだと説く.

When LModE morphology and morphosyntax are addressed, this is often done in reference to a "confused situation" (Poldauf 1948: 240), by portraying this period as undergoing regularization processes that are triggered by standardization or by relating the high degree of simplification of morphology achieved by that time . . . . The present overview sets out to show that what at first sight look like divergent developments of individual morphological structures can occasionally be shown to form part of a larger development towards a new equilibrium governed by functionally motivated requirements.


 後期近代英語期にも,古英語期(あるいはそれ以前)に始まった「総合から分析へ」 (synthesis_to_analysis) の大きな潮流が継続していたと単純に解釈するにとどまらず,機能的な側面という別の観点を持ち込むことで,一見したところ反例のように思われる事例がきちんと説明できるようになるということだ.新たな秩序や均衡が――これまでとはその種類こそ異なれ――後期近代英語期に芽生え,現代英語にかけて確立してきたとみることができる.

 ・ Mondorf, Britta. "Late Modern English: Morphology." Chapter 53 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 843--69.
 ・ Poldauf, Ivan. On the History of Some Problems of English Grammar before 1800. Prague: Nákladem Filosofické Fakulty University Karlovy, 1948.

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2018-06-28 Thu

#3349. 後期近代英語期における形容詞比較の屈折形 vs 迂言形の決定要因 [lmode][comparison][synthesis_to_analysis][variation]

 近代英語は,比較級や最上級を作るのに -er, -est などの屈折を用いるか,more, most などの迂言的方法に頼るかの選択について,一見して整理されていない様相を示していた.その余波は現代英語まで続いているといってよい.しかし,Mondorf (863) は,機能的な観点からみれば後期近代英語期の状況は「整理されていない」とみなすことはできず,むしろ新しい秩序が形成されつつあると主張する.

The distribution of comparative variants in Late Modern English reveals an emergent functionally-motivated division of labor, with the analytic form becoming the domain of cognitively complex environments (e.g. if the adjective is accompanied by a prepositional or infinitival complement or if it is poly- rather than monomorphemic, etc.), while the synthetic form increases its range of application in easier-to-process environments . . . .


 つまり,形容詞比較の変異は,単純に「総合から分析へ」 (synthesis_to_analysis) という英語史の大きな潮流のなかでとらえるべきではなく,認知的なプロセスの難易を含めた機能的な側面に注意して眺めるべき問題であるという.変異は混乱を表わすものではなく分業 ("division of labor") の結果であり,むしろそれは1つの秩序なのだ.Mondorf (864) の結論の要約部を引用する.

The system of comparison in Late Modern English develops a remarkably clear pattern of reorganization. Comparative alternation becomes more systematic by exploiting the options offered by the availability of morphosyntactic variants. As regards processing requirements it makes the best possible use of each variant: cognitively complex environments (such as adjectives accompanied by a complement) consistently increase their share of the analytic comparative to such an extent that the analytic form can even become obligatory. By contrast, easy-to-process environments can afford to use the synthetic comparative. What is at stake in the diachronic development of comparative alternation is an economically-motivated division of labor, in which each variant assumes the task it is best suited to. This division of labor emerges in the LModE period, around the 18th century . . . . The benefit of creating a typologically consistent, uniform synthetic or analytic language systems is outweighed by forces following functional motivations. The older synthetic form can stand its ground (or even reconquer formerly lost domains) in easy-to-process environments, while the analytic form prevails in cognitively-demanding contexts.


 関連して「#3032. 屈折比較と句比較の競合の略史」 ([2017-08-15-1]),「#403. 流れに逆らっている比較級形成の歴史」 ([2010-06-04-1]),「#2346. more, most を用いた句比較の発達」 ([2015-09-29-1]) も参照.

 ・ Mondorf, Britta. "Late Modern English: Morphology." Chapter 53 of English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Ed. Alexander Bergs and Laurel J. Brinton. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012. 843--69.

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2018-01-30 Tue

#3200. 後期近代英語期の主要な出来事の年表 [timeline][history][lmode][chronology][world_englishes][linguistic_imperialism]

 Algeo and Pyles の英語史年表シリーズのシメとなる第4弾は,後期近代英語期 (201--02) .著者たちのいう Late Modern English は,1800年以降の英語を指している.これより前の時代の年表は,「#3193. 古英語期の主要な出来事の年表」 ([2018-01-23-1]),「#3196. 中英語期の主要な出来事の年表」 ([2018-01-26-1]),「#3197. 初期近代英語期の主要な出来事の年表」 ([2018-01-27-1]) を参照.

1805A victory over the French at the battle of Trafalgar established British naval supremacy.
1806The British occupied Cape Colony in South Africa, preparing the way for the arrival in 1820 of a large number of British settlers.
1828Noah Webster's American Dictionary of the English Language was published.
1840In New Zealand, by the Treaty of Waitangi, native Maori ceded sovereignty to the British crown.
1857A proposal at the Philological Society of London led to work that resulted in the New English Dictionary on Historical Principles (1928), reissued as the Oxford English Dictionary (1933).
1858The Government of India Act transferred power from the East India Company to the crown, thus creating the British Raj in India.
1861--5The American Civil War established the indissolubility of the Union and abolished slavery in America.
1898The four-month Spanish-American War resulted in the United States becoming a world power with overseas possessions and thus a major participant in international politics.
1906The first radio broadcast, leading in 1920 to the first American commercial radio station in Pittsburgh.
1914--8World War I created an alliance between the United States and the United Kingdom.
1922The British Broadcasting Company (after 1927, Corporation) was established and became a major conveyor of information in English around the world.
1927The first motion picture with spoken dialog, The Jazz Singer, was released.
1936The first high-definition television service was established by the BBC, to be followed by cable service in the early 1950s and satellite service in the early 1960s.
1939--45World War II further solidified the British-American link.
1945The charter of the United Nations was produced at San Francisco.
1947British India was divided into India and Pakistan, and both became independent.
1952The Secretariat building of the United Nations was constructed in Manhattan.
1961The Merriam Webster's Third New International Dictionary was published.
1983The Internet was created.
1991The Union of Soviet Socialist Republics was dissolved, leaving the United States as the world's only superpower.
1992The first Web browser for the World Wide Web was released.


 年表をざっと眺めるだけでも,この時期に英語が世界へ拡大していく様子がわかる.拡大といっても地理的な側面に限らない.話者人口という側面においても拡大したし,使用される状況や場面の範囲,すなわち機能的にも拡大した.Algeo and Pyles (201) の記述が的を射ている.

The history of English since 1800 has been a story of expansion---in geography, in speakers, and in the purposes for which English is used. Geographically, English has been spread around the world, first by British colonization and empire-building, and more recently by the prominence of America in world affairs. The number of its speakers has undergone a population explosion, not alone of native speakers but also of nonnative speakers of English as an additional language. And the uses to which English is put have ramified with the growth of science, technology, and commerce.


 要するに,後期近代英語期は,地理,人口,機能という3面における同時的拡大の時代である.見方によれば,言語帝国主義への道をひた走っていたともいえる.

 ・ Algeo, John, and Thomas Pyles. The Origins and Development of the English Language. 5th ed. Thomson Wadsworth, 2005.

Referrer (Inside): [2018-02-04-1]

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2018-01-09 Tue

#3179. 「新古典主義的複合語」か「英製羅語」か [neo-latin][latin][greek][word_formation][lexicology][loan_word][compounding][derivation][lmode][scientific_english][scientific_name][neologism][waseieigo][terminology][register]

 新古典主義的複合語 (neoclassical compounds) とは,aerobiosis, biomorphism, cryogen, nematocide, ophthalmopathy, plasmocyte, proctoscope, rheophyte, technocracy のような語(しばしば科学用語)を指す.Durkin (346--37) によれば,この類いの語彙は早くは1600年前後から確認され,例えば polycracy (1581), pantometer (1597), multinomial (1608) がみられる.しかし,爆発的に量産されるようになったのは,科学が急速に発展した後期近代英語期,とりわけ19世紀になってからのことである(「#616. 近代英語期の科学語彙の爆発」 ([2011-01-03-1]),「#3013. 19世紀に非難された新古典主義的複合語」 ([2017-07-27-1]),「#3014. 英語史におけるギリシア語の真の存在感は19世紀から」 ([2017-07-28-1]),「#3166. 英製希羅語としての科学用語」 ([2017-12-27-1]) を参照).
 新古典主義的複合語について強調しておくべきは,それが借用語ではなく,あくまで英語(を始めとするヨーロッパの諸言語)において形成された語であるという点だ.確かにラテン語やギリシア語などの古典語をモデルとしてはいるが,決してそこから借用されたわけではない.その意味では英単語ぽい体裁をしていながらも英単語ではない「和製英語」と比較することができる.新古典主義的複合語の舞台は英語であるから,つまり「英製羅語」といってよい.しかし,英製羅語と和製英語とのきわだった相違点は,前者が主として国際的で科学的な文脈で用いられるが,後者はそうではないという事実にある.すなわち,両者のあいだには使用域において著しい偏向がみられる.Durkin は,新古典主義的複合語について次のように述べている.

. . . these formations typically belong to the international language of science and move freely, often with little or no morphological adaptation, between English, French, German, and other languages of scientific discourse. They are often treated in very different ways in different traditions of lexicography and lexicology; however, those terms that are coined in modern vernacular languages are certainly not loanwords from Latin or Greek, even though they may be formed from elements that originated in such loanwords. (347)


. . . Latin words and word elements have become ubiquitous in modern technical discourse, but frequently in new compound or derivative formations or with new meanings that have seldom if ever been employed in contextual use in actual Latin sentences. (349)


 これらの造語を指して「新古典主義的複合語」と呼ぶか「英製羅語」と呼ぶかは,たいした問題ではない.しかし,和製英語の場合には「英語主義的複合語」と呼ばないのはなぜだろうか.この違いは何に起因するのだろうか.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2018-01-08 Mon

#3178. 産業革命期,伝統方言から都市変種へ [lmode][industrial_revolution][history][sociolinguistics][dialect][dialectology][variety][koine][dialect_levelling][bre]

 18--19世紀の Industrial Revolution (産業革命)は,英国社会の構造を大きく変えた.その社会言語学的な帰結は,端的にいえば伝統方言 (traditional dialects) から都市変種 (urban varieties) への移行といってよい.交通・輸送手段の発達により,人々の行動様式や社会的ネットワークが様変わりし,各地域の内部における伝統的な人間関係が前の時代よりも弱まり,伝統方言の水平化 (dialect_levelling) と共通語化 (koinéization) が進行した.一方で,各地に現われた近代型の都市が地域社会の求心力となり,新しい方言,すなわち都市変種が生まれてきた.都市変種は地域性よりも所属する社会階級をより強く反映する傾向がある点で,伝統方言とは異なる存在である.
 Gramley (181) が,この辺りの事情を以下のように説明している.

[The Industrial Revolution and the transportation revolution] were among the most significant social changes of the eighteenth and nineteenth centuries. Partly as a prerequisite for and partly as an effect of industrialization there were fundamental changes in transportation. First, in the period after 1750 there was the establishment of turnpikes, then canals, and finally railroads. Among their consequences was the development of regional and supra-regional markets and, concomitant with this, greater labor force mobility in a money rather than barter economy with the potential for consumption. It hardly seems necessary to point out that this led to a weakening of the rural traditional dialects and an upsurge of new urban varieties in the process of dialect leveling or koinéization.
   As industrialization continued, new centers in the Northeast (mining) and in the Western Midlands (textiles in Manchester and Birmingham and commerce in Liverpool) began to emerge. Immigration of labor from "abroad" also ensured further language and dialect contact as Irish workers found jobs in the major projects of canal building in the eighteenth and nineteenth centuries and then in the building of the railways. Enclaves of Irish came into being, especially in Liverpool. Despite linguistic leveling the general distinctions were retained between the North (now divided more clearly than ever between the English North and Scotland), the East Midlands and the now industrializing West Midlands, and the South. The emergence of a new, mostly working-class, urban population in the North in the nineteenth century was accompanied by a literature of its own. Pamphlets, broadsides, and almanacs showed local consciousness and pride in vernacular culture and language. As the novels of Elizabeth Gaskel demonstrate, language --- be it traditional dialect or working-class koiné --- was a marker of class solidarity.


 このように,英国の近現代的な社会言語学的変種のあり方は,主として産業革命期の産物といってよい.
 関連する話題として,「#1671. dialect contact, dialect mixture, dialect levelling, koineization」 ([2013-11-23-1]),「#2028. 日本とイングランドにおける方言の将来」 ([2014-11-15-1]),「#2023. England の現代英語方言区分 (3) --- Modern Dialects」 ([2014-11-10-1]) も参照.

 ・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.

Referrer (Inside): [2020-03-12-1]

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2017-12-27 Wed

#3166. 英製希羅語としての科学用語 [waseieigo][latin][greek][scientific_name][compounding][compound][lmode][neo-latin][combining_form][neologism][lexicology][word_formation]

 昨日の記事「#3165. 英製羅語としての conspicuousexternal」 ([2017-12-26-1]) と関連して,再び「英製羅語」の周辺の話題.後期近代英語期には,科学の発展に伴いおびただしい科学用語が生まれたが,そのほとんどがギリシア語やラテン語に由来する要素 (combining_form) を利用した合成 (compounding) による造語である(「#552. combining form」 ([2010-10-31-1]),「#1694. 科学語彙においてギリシア語要素が繁栄した理由」 ([2013-12-16-1]),「#3013. 19世紀に非難された新古典主義的複合語」 ([2017-07-27-1]) を参照).
 Kay and Allan (20--21) が,次のようにコメントしている.

While borrowing continues to reflect contact with other cultures, many scientific words are not strictly speaking loanwords. Rather, they are constructed from roots adopted from the classical languages. This has the advantage of a degree of semantic transparency: if you know that tele, graph and phone come from Greek roots meaning respectively 'afar', 'writing' and 'sound', and vision from a Latin root meaning 'see, look', you can begin to understand telegraph, telephone and television. You can also coin other words using similar patterns, and possibly elements from other sources, as in telebanking.


 "neo-Hellenic compounds" や "neo-Latin compounds" とも呼ばれる上記のような語彙は,ある意味ではラテン語やギリシア語からの借用語ともみなしうるかもしれないが,より適切に「英製希語」あるいは「英製羅語」とみなすのがよいのではないか.ただし,いくつかの単語が単発で造語されたわけではなく,造語に体系的に利用された方法であるから「パターン化された英製希羅語」と呼ぶのがさらに適切かもしれない.

 ・ Kay, Christian and Kathryn Allan. English Historical Semantics. Edinburgh: Edinburgh UP, 2015.

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2017-12-06 Wed

#3145. 今,後期近代英語の研究がおもしろい [lmode][notice]

 私は後期近代英語の専門家ではないのですが,縁あって2017年度の『ヴィクトリア朝文化研究』(第15号)に,「Late Modern English 研究の潮流」と題するエッセイを寄稿する機会をいただきました(日本ヴィクトリア朝文化研究学会の会長の川端康雄先生,編集委員長の田中裕介先生,ありがとうございました).
 特に濃い内容ではないのですが,読みやすい文章となるようには心がけましたので,英語史の専門家ならずとも,英文学や英国史を専門とする方々にも何とか届く文章になっているとは思います.以下のようなセクションで書きました.

 1. 後期近代英語研究のブームきたる
 2. なぜ従来 LModE の評価が低かったのか
 3. なぜ今 LModE なのか
 4. どのような研究がなされているか
 5. LModE 研究とこれからの英語史

 実のところ,LModE のブームもすでに決して新しくないとも言えるほどに,英語史の分野は著しく発展しています.私の周辺でも LModE の研究を志す人は少なくありません.LModE は,確かに現代英語とその未来を考える際に,いろいろな点で魅力的な時代ではあります.今回のエッセイでは,このブームには理由があることを論じたわけですが,その最大のポイントとして指摘したのは20世紀後半からの社会言語学とコーパス言語学の発展でした.

社会言語学とコーパス言語学の発展により,英語史研究者にとって研究すべきことと研究できることが一気に増えた。そして,その効果が他の時代よりも強く感じられたのが LModE だったのである。


 詳細は,当エッセイをご覧ください.締めくくりの文章は,以下の通りです.

LModE は,しばらくの間,英語史研究に新鮮なエネルギーを注ぎ続けてくれるだろう。筆者は主に中世英語を専門としているが,時代に取り残されないよう LModE にアップデートしなければ,と感じる次第である。


 ・ 堀田 隆一 「Late Modern English 研究の潮流」 『ヴィクトリア朝文化研究』 第15号,2017年.207--16頁.

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