hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     1 2 3 4 5 6 7 8 9 次ページ / page 1 (9)

standardisation - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-03-19 07:57

2024-02-03 Sat

#5395. 2月24日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第4回「近代英語の綴字 --- 標準化を目指して」 [asacul][notice][writing][spelling][orthography][mode][standardisation][etymological_respelling][link][voicy][heldio][chancery_standard][spelling_reform]

 3週間後の2月24日(土)の 15:30--18:45 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第4回となる「近代英語の綴字 --- 標準化を目指して」が開講されます.


2月24日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第4回「近代英語の綴字 --- 標準化を目指して」



 今回の講座は,全4回のシリーズの第4回となります.シリーズのラインナップは以下の通りです.

 ・ 第1回 文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり(春・4月29日)
 ・ 第2回 古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ(夏・7月29日)
 ・ 第3回 中英語の綴字 --- 標準なき繁栄(秋・10月7日)
 ・ 第4回 近代英語の綴字 --- 標準化を目指して(冬・2月24日)

 今度の第4回については,先日 Voicy heldio にて「#971. 近代英語の綴字 --- 2月24日(土)の朝カルのシリーズ講座第4回に向けて」として概要を紹介していますので,お聴きいただければ幸いです.



 これまでの3回の講座では,英語綴字の標準化の前史を眺めてきました.今回はいよいよ近現代における標準化の実態に迫ります.まず,15世紀の Chancery Standard に始まり,16世紀末から17世紀にかけての Shakespeare,『欽定訳聖書』,初期の英語辞書の時代を経て,18--19世紀の辞書完成に至るまでの時期に注目し,英単語の綴字の揺れと変遷を追います.その後,アメリカ英語の綴字,そして現代の綴字改革の動きまでをフォローして,現代英語の綴字の課題について論じる予定です.各時代の英単語の綴字の具体例を示しながら解説しますので,迷子になることはありません.
 本講座にご関心のある方は,ぜひこちらのページよりお申し込みください.講座当日は,対面のほかオンラインでの参加も可能です.また,参加登録されますと,開講後1週間「見逃し配信」を視聴できます.ご都合のよい方法でご参加いただければと思います.シリーズ講座ではありますが,各回の内容は独立していますので,今回のみの単発のご参加でもまったく問題ありません.なお,講座で用いる資料は,当日,参加者の皆様に電子的に配布される予定です.
 本シリーズと関連して,以下の hellog 記事,および Voicy heldio 配信回もご参照ください.

[ 第1回 文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり ]

 ・ heldio 「#668. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」(2023年3月30日)
 ・ hellog 「#5088. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」 ([2023-04-02-1])
 ・ hellog 「#5119. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」の第1回を終えました」 ([2023-05-03-1])

[ 第2回 古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ ]

 ・ hellog 「#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」」 ([2023-07-17-1])
 ・ heldio 「#778. 古英語の文字 --- 7月29日(土)の朝カルのシリーズ講座第2回に向けて」(2023年7月18日)
 ・ hellog 「#5207. 朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」を終えました」 ([2023-07-30-1])

[ 第3回 中英語の綴字 --- 標準なき繁栄 ]

 ・ hellog 「#5263. 10月7日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第3回「中英語の綴字 --- 標準なき繁栄」」 ([2023-09-24-1])
 ・ heldio 「#848. 中英語の標準なき綴字 --- 10月7日(土)の朝カルのシリーズ講座第3回に向けて」(2023年9月26日)

[ 第4回 近代英語の綴字 --- 標準化を目指して ]

 ・ heldio 「#971. 近代英語の綴字 --- 2月24日(土)の朝カルのシリーズ講座第4回に向けて」(2024年1月27日)

 多くの方々のご参加をお待ちしております.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2024-01-11 Thu

#5372. 「標準語」は近代ヨーロッパの発明品である [standardisation][sociolinguistics][prestige][history_of_linguistics][vernacular][renaissance][romanticism][gengo_no_hyojunka]

 昨日の記事「#5371. 言語学史のハンドブックの目次」 ([2024-01-10-1]) で紹介した The Oxford Handbook of the History of Linguistics の第15章 "Vernaculars and the Idea of a Standard Language" を開いてみた.私の研究テーマの1つに(主に近代における)英語の標準化 (standardisation) があり,本ブログでも様々に論じてきたが,言語の標準化や標準語について,こちらのハンドブックではどのような扱いがなされているかを確かめたかった.
 冒頭の1段落だけですでにおもしろい.「標準語」という概念は近代ヨーロッパの発明品であり,現代ヨーロッパでは常に注目され続けてきた論題であるという.

   The greatest and most important phenomenon of the evolution of language in historic times has been the springing up of the great national common languages---Greek, French, English, German, etc.---the 'standard' languages.

So wrote Otto Jespersen . . . , and the idea of a standard language has undoubtedly been one of the most seductive in the history of European linguistic thought. It has resulted in some of the most heated of debates on language matters, drawing in both academic and non-academic actors, and ranging from the learned Questione della Lingua in Italy around the turn of the sixteenth century . . . to nineteenth-century debates on how best to standardise a newly independent Norwegian . . . , to the ongoing and often passionate discussions in homes and in bars throughout the modern world about 'right' and 'wrong' usage. The notion of a standard language has underpinned language teaching and learning since the Middle Ages, based as language teaching is on the acceptance that there is a right form of a language and a wrong form. The belief in a standard has motivated much of the grammar and dictionary writing, and has also been a central ideology in the emergence and reinforcement of the modern European nations. In the period following the Renaissance, national pride was expressed through the notion that the European vernaculars were as rich and as ordered as the Classical languages. Under the influence of Romanticism this idea of the richness of the 'national common languages' was increasingly linked to a sense of there being some sort of natural relationship between a people and their language, and indeed the perceived link between language and nation, for better or for worse, remains a strong one . . . . (359--60)


 英語史における近代の標準化については「#4093. 標準英語の始まりはルネサンス期」 ([2020-07-11-1]) を参照.諸言語の標準化については,私も編著者として関与した『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)を手に取っていただければ (本書についての関連記事は gengo_no_hyojunka より) .

standardisation_front_cover_small



 ・ Linn, Andrew. "Vernaculars and the Idea of a Standard Language." Chapter 15 of The Oxford Handbook of the History of Linguistics. Ed. Keith Allan. Oxford: OUP, 2013. 359--74.
 ・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-10-05 Thu

#5274. 19世紀のイングランド英語を研究する意義 [lmode][sociolinguistics][world_englishes][variety][standardisation][enl][esl]

 19世紀のイングランド英語を研究するというのはどういうことか.確かに100年以上前の英語ではあるにせよ,歴史と呼ぶには新しい感じがするし,実際ほぼ普通に読むことができる.19世紀の英文学や英国文化に関心があるというのであれば分かるが,19世紀の英語そのものに関心が湧くというのはどういうことか.
 先日,逝去された英語史の大家 Manfred Görlach は,上記のように評価されることが多い19世紀のイングランド英語に真っ向から立ち向かい,1999年に一冊の本を著わした.ずばり English in Nineteenth-Century England: An Introduction である.この本の冒頭の節は "Motivations for the present book" である.まず前口上を引用しよう (1) .

Interest in the history of English has recently focused on more modern periods than the traditionally favoured ones of OE and ME. However, whereas EModE is becoming a well-researched field, the investigation of the language after 1700 has been more patchy. The 18th century has, for various reasons, received more attention than the period between 1800 and 1900.
   No comprehensive description of 19th-century English --- in particular that of England --- has ever been attempted. And yet such a study promises to yield important insights, for the following reasons:


 そして19世紀のイングランド英語に注目すべき3つの理由が続く (1--5) .

(1) The sociolinguistic foundations of PDE were laid in a period when the population expanded tremendously, especially in the industrial urban centres . . . , when the standard form of the language (St E) spread from the limited number of 'refined' speakers in the 18th century to a considerable section of the Victorian middle classes, and when general education began to level speech forms to an extent that is impossible to imagine for earlier periods.
(2) Comparisons between varieties of English in England and overseas are likely to provide evidence of the drifting apart of the colonial Englishes in spite of the retarding influences of British administration, the schools, and the influence of the high prestige of London English on educated speakers world-wide. Moreover, a description of the BrE of the time is a necessary precondition for evaluating the British linguistic input in overseas Englishes --- in regions where English is a native language (= ENL), like the American West, Upper Canada, Australia and New Zealand, the Cape and Natal, and in the great number of varieties of English used as a second language (= ESL) in Africa and Asia.
(3) A comparison of English in England with standard languages on the continent may well permit interlinguistic insights into parallels and differences in development within the framework of an increasingly similar West European material culture. Such comparisons might also prompt new questions and the application of new methods in cases where it has proved fruitful to look at sociolinguistic conditions in one culture which have been neglected in another.


 この3つの視点はざっくり次のような趣旨と読めるだろう.

 (1) 20世紀以降のイングランド英語を生み出した土壌を知る
 (2) 世界に拡散した ENL や ESL の種を知る
 (3) ヨーロッパの諸言語の社会言語学的事情と比較対照する

 ・ Görlach, Manfred. English in Nineteenth-Century England: An Introduction. Cambridge: CUP, 1999.

Referrer (Inside): [2023-10-06-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-09-24 Sun

#5263. 10月7日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第3回「中英語の綴字 --- 標準なき繁栄」 [asacul][notice][writing][spelling][orthography][me][standardisation][me_dialect][norman_conquest][link][voicy][heldio]

 約2週間後の10月7日(土)の 15:30--18:45 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第3回となる「中英語の綴字 --- 標準なき繁栄」が開講されます.


10月7日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第3回「中英語の綴字 --- 標準なき繁栄」



 今回の講座は,全4回のシリーズの第3回となります.シリーズのラインナップは以下の通りです.

 ・ 第1回 文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり(春・4月29日)
 ・ 第2回 古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ(夏・7月29日)
 ・ 第3回 中英語の綴字 --- 標準なき繁栄(秋・10月7日)
 ・ 第4回 近代英語の綴字 --- 標準化を目指して(冬・未定)

 これまでの2回の講座では,まず英語史以前の文字・アルファベットの起源と発達を確認し,次に古英語期(449--1100年)におけるローマ字使用の実際を観察してきました.第3回で注目する時期は中英語期(1100--1500年)です.この時代までに英語話者はローマ字にはすっかり馴染んでいましたが,1066年のノルマン征服の結果,「標準英語」が消失し,単語の正しい綴り方が失われるという,英語史上でもまれな事態が展開していました.やや大げさに言えば,個々の英語の書き手が,思い思いに好きなように単語を綴った時代です.これは秩序崩壊とみればネガティヴとなりますが,自由奔放とみればポジティヴです.はたしてこの状況は,後の英語や英語のスペリングにいかなる影響を与えたのでしょうか.英語スペリング史において,もっともメチャクチャな時代ですが,だからこそおもしろい話題に満ちています.講座のなかでは中英語原文も読みながら,この時代のスペリング事情を眺めてみたいと思います.
 講座の参加にご関心のある方は,ぜひこちらのページよりお申し込みください.対面のほかオンラインでの参加も可能です.また,参加登録された方には,後日見逃し配信としてアーカイヴ動画へのリンクも送られる予定です.ご都合のよい方法でご参加ください.全4回のシリーズものではありますが,各回の内容は独立していますので,単発でのご参加も歓迎です.
 本シリーズと関連して,以下の hellog 記事,および Voicy heldio 配信回もご参照ください.

[ 第1回 文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり ]

 ・ heldio 「#668. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」(2023年3月30日)
 ・ hellog 「#5088. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」 ([2023-04-02-1])
 ・ hellog 「#5119. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」の第1回を終えました」 ([2023-05-03-1])

[ 第2回 古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ ]

 ・ hellog 「#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」」 ([2023-07-17-1])
 ・ heldio 「#778. 古英語の文字 --- 7月29日(土)の朝カルのシリーズ講座第2回に向けて」(2023年7月18日)
 ・ hellog 「#5207. 朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」を終えました」 ([2023-07-30-1])

[ 第3回 中英語の綴字 --- 標準なき繁栄 ](以下,2023/09/26(Tue)の後記)

 ・ heldio 「#848. 中英語の標準なき綴字 --- 10月7日(土)の朝カルのシリーズ講座第3回に向けて」(2023年9月26日)

Referrer (Inside): [2024-02-03-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-07-30 Sun

#5207. 朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」を終えました [asacul][writing][grammatology][alphabet][notice][spelling][oe][literature][beowulf][runic][christianity][latin][alliteration][distinctiones][punctuation][standardisation][voicy][heldio]

 先日「#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」」 ([2023-07-17-1]) でご案内した通り,昨日,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回となる「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」を開講しました.多くの方々に対面あるいはオンラインで参加いただきまして感謝申し上げます.ありがとうございました.
 古英語期中に,いかにして英語話者たちがゲルマン民族に伝わっていたルーン文字を捨て,ローマ字を受容したのか.そして,いかにしてローマ字で英語を表記する方法について時間をかけて模索していったのかを議論しました.ローマ字導入の前史,ローマ字の手なずけ,ラテン借用語の綴字,後期古英語期の綴字の標準化 (standardisation) ,古英詩 Beowulf にみられる文字と綴字について,3時間お話ししました.
 昨日の回をもって全4回シリーズの前半2回が終了したことになります.次回の第3回は少し先のことになりますが,10月7日(土)の 15:00~18:45 に「中英語の綴字 --- 標準なき繁栄」として開講する予定です.中英語期には,古英語期中に発達してきた綴字習慣が,1066年のノルマン征服によって崩壊するするという劇的な変化が生じました.この大打撃により,その後の英語の綴字はカオス化の道をたどることになります.
 講座「文字と綴字の英語史」はシリーズとはいえ,各回は関連しつつも独立した内容となっています.次回以降の回も引き続きよろしくお願いいたします.日時の都合が付かない場合でも,参加申込いただけますと後日アーカイブ動画(1週間限定配信)にアクセスできるようになりますので,そちらの利用もご検討ください.
 本シリーズと関連して,以下の hellog 記事をお読みください.

 ・ hellog 「#5088. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」 ([2023-04-02-1])
 ・ hellog 「#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」」 ([2023-07-17-1])

 同様に,シリーズと関連づけた Voicy heldio 配信回もお聴きいただければと.

 ・ heldio 「#668. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」(2023年3月30日)
 ・ heldio 「#778. 古英語の文字 --- 7月29日(土)の朝カルのシリーズ講座第2回に向けて」(2023年7月18日)


Referrer (Inside): [2024-02-03-1] [2023-09-24-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-06-28 Wed

#5175. 言語の標準化と方言の死の関係 [standardisation][dialect][dialectology][prestige][language_death]

 言語の標準化 (standardisation) は,1つの変種(方言)が社会的に威信のある変種とみなされて,その言語社会に広く受け入れられていく過程である.すると,他のすべての変種は,相対的に社会的価値が低くなり,使用範囲が狭まっていくことになりがちだ.結果として,それらの非標準変種は死に至ることもあるだろう.
 ただし,上記の言語の標準化と方言の死の関係は必然的なものではない.標準化が進行しても方言が生き残り続けることはあり得るし,実際に英語史や日本語史からも分かる通り,方言は生き残っている.また,言語の標準化とは独立して,方言が死んでいくというケースもあるかもしれない.
 とはいえ,言語の標準化と方言の死の間に何らかの因果関係があるケースも多いに違いない.Jones and Singh (100) が,両者の精妙な関係について次のように議論している.

It should be pointed out, of course, that the standardisation of a language does not automatically entail the loss of its associated dialects: English dialects are still spoken today, many centuries after the emergence of standard English. However, we will see that the rise of a standard is mainly the result of sociopolitical and cultural factors and that its purpose is to unite the speech community, through knowledge of a codified, uniform variety. The rise of a standard is therefore likely to have a hand in dialect death for although the elevation on one variety to the standard leaves the other dialects intact, the fact that the standard language is the only one deemed appropriate for 'official' functions such as the media, education and government and is ultimately regarded as a symbol of loyalty for the whole community means that its associated dialects are often felt to be 'inferior' by their speakers and come to be reserved for non-official functions, such as for use with family and friends. As upward mobility comes to be attached to the standard language, dialects cease to be transmitted to the next generation and eventually stop being spoken.


 関連して次の記事も参照されたい.

 ・ 「#1786. 言語権と言語の死,方言権と方言の死」 ([2014-03-18-1])
 ・ 「#3457. 日本の消滅危機言語・方言」 ([2018-10-14-1])
 ・ 「#3666. 方言を捨てて標準語を採用するのは美容整形するのと同じか?」 ([2019-05-11-1])
 ・ 「#4256. 「言語の死」の記事セット」 ([2020-12-21-1])

 ・ Jones, Mari C. and Ishtla Singh. Exploring Language Change. Abingdon: Routledge, 2005.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-06-10 Sat

#5157. なぜ dialect という語が16世紀になって現われたのか [terminology][dialect][standardisation][stigma][prestige][vernacular][voicy][heldio]

 dialect という用語について,今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で取り上げた.「#740. dialect 「方言」の語源」をお聴きください.



 この用語をめぐっては hellog でも「#2752. dialect という用語について」 ([2016-11-08-1]) や「#2753. dialect に対する language という用語について」 ([2016-11-09-1]) で考えてきた.
 英語史の観点からおもしろいのは,1つの言語の様々な現われである諸「方言」の概念そのものは中世から当たり前のように知られていたものの,それに対応する dialect という用語は,初期近代の16世紀半ばになってようやく現われ,しかもそれが(究極的にはギリシア語に遡るが)フランス語・ラテン語からの借用語であるという点だ.既存のものと思われる中世的な概念に対して,近代的かつ外来の皮を被った専門用語ぽい dialect が当てられたというのが興味深い.
 16世紀半ばといえば,英国ルネサンス期のまっただなかである.言葉についても,ラテン語やギリシア語などの古典語を規範として仰ぎ見ていた時代である.一方,同世紀後半にかけて,国語意識が高まり,ヴァナキュラーである英語を古典語の高みへ少しでも近づけたいという思いが昂じてきた.英語の標準化 (standardisation) の模索である.
 威信 (prestige) のある英語の標準語を生み出そうとする過程においては,対比的に数々の威信のない非標準的な英語に対して傷痕 (stigma) のレッテルが付されることになる.こうしてやがて「偉い標準語」と「卑しい諸方言」という対立的な構図が生じてくる.
 実はこの構図自体は,中世より馴染み深かった.「偉いラテン語・ギリシア語」対「卑しいヴァナキュラーたち」である.ところが,英語やフランス語などの各ヴァナキュラーが国語として持ち上げられ,その標準語が整備されていくに及び,対立構図は「偉い標準語」対「卑しい諸方言」へとスライドしたのである.ここで,対立構図の原理はそのままであることに注意したい.そして,新しい対立の後者「卑しい諸方言」に当てられた用語が dialect(s) だった,ということではないか.新しい対立に新しい用語をあてがいたかったのかもしれない.
 諸「方言」は中世からあった.しかし,それに dialect という新しい名前を与えようという動機づけが生じたのは,あくまでヴァナキュラーの国語意識の高まった初期近代になってから,ということではないかと考えている.
 関連して「#2580. 初期近代英語の国語意識の段階」 ([2016-05-20-1]) および vernacular の各記事を参照.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-03-31 Fri

#5086. この30年ほどの英語歴史綴字研究の潮流 [spelling][orthography][sociolinguistics][historical_pragmatics][history_of_linguistics][emode][standardisation][variation]

 Cordorelli (5) によると,直近30年ほどの英語綴字に関する歴史的な研究は,広い意味で "sociolinguistic" なものだったと総括されている.念頭に置いている中心的な時代は,後期中英語から初期近代英語にかけてだろうと思われる.以下に引用する.

The first studies to investigate orthographic developments in English within a diachronic sociolinguistic framework appeared especially from the late 1990s and the early 2000s . . . . The main focus of these studies was on the diffusion of early standard spelling practices in late fifteenth-century correspondence, the development of standard spelling practices, and the influence of authors' age, gender, style, social status and social networks on orthographic variation. Over the past few decades, book-length contributions with a relatively strong sociolinguistic stance were also published . . . . These titles have touched upon different aspects of spelling patterns and change, providing useful frameworks of analysis and ideas for new angles of research in English orthography.


 一言でいえば,綴字の標準化 (standardisation) の過程は,一本線で描かれるようなものではなく,常に社会的なパラメータによる変異を伴いながら,複線的に進行してきたということだ.そして,このことが30年ほどの研究で繰り返し確認されてきた,ということになろう.
 英語史において言語現象が変異を伴って複線的に推移してきたことは,何も綴字に限ったことではない.ここ数十年の英語史研究では,発音,形態,統語,語彙のすべての側面において,同趣旨のことが繰り返し主張されてきた.学界ではこのコンセンサスがしっかりと形成され,ほぼ完全に定着してきたといってよいが,学界外の一般の社会には「一本線の英語史」という見方はまだ根強く残っているだろう.英語史研究者には,この新しい英語史観を広く一般に示し伝えていく義務があると考える.
 過去30年ほどの英語歴史綴字研究を振り返ってみたが,では今後はどのように展開していくのだろうか.Cordorelli はコンピュータを用いた量的研究の新たな手法を提示している.1つの方向性として注目すべき試みだと思う.

 ・ Cordorelli, Marco. Standardising English Spelling: The Role of Printing in Sixteenth and Seventeenth-Century Graphemic Developments. Cambridge: CUP, 2022.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-03-29 Wed

#5084. 現代英語の綴字は初期近代英語期の産物である [spelling][orthography][emode][standardisation][link]

 現代英語の標準綴字はいつ成立したか.英語の標準化 (standardisation) の時期をピンポイントで指摘することは難しい.言語の標準化の過程は,多かれ少なかれ緩慢に進行していくものだからだ(cf. 「#2321. 綴字標準化の緩慢な潮流」 ([2015-09-04-1])).
 私はおおよその確立を1650年辺りと考えているが,研究者によってはプラスマイナス百数十年の幅があるだろうことは予想がつく.「#4093. 標準英語の始まりはルネサンス期」 ([2020-07-11-1]) で見たように,緩く英国ルネサンス期 (renaissance),あるいはさらに緩く初期近代英語期 (emode) と述べておくのが最も無難な答えだろう.
 実際,Cordorelli による英語綴字の標準化に関する最新の研究書の冒頭でも "the Early Modern Era" と言及されている (1) .

English spelling is in some ways a product of the Early Modern Era. The spelling forms that we use today are the result of a long process of conscious development and change, most of which occurred between the sixteenth and the seventeenth centuries. This portion of history is marked by a number of momentous events in England and the Continent, which had an immediate effect on English culture and language.


 初期近代英語期とその前後に生じた様々な歴史的出来事や社会的潮流が束になって,英語綴字の標準化を推し進めたといってよい.現代につらなる正書法は,この時代に,諸要因の複雑な絡み合いのなかから成立してきたものなのである.以下に関連する記事へのリンクを挙げておく.

 ・ 「#297. 印刷術の導入は英語の標準化を推進したか否か」 ([2010-02-18-1])
 ・ 「#871. 印刷術の発明がすぐには綴字の固定化に結びつかなかった理由」 ([2011-09-15-1])
 ・ 「#1312. 印刷術の発明がすぐには綴字の固定化に結びつかなかった理由 (2)」 ([2012-11-29-1])
 ・ 「#1384. 綴字の標準化に貢献したのは17世紀の理論言語学者と教師」 ([2013-02-09-1])
 ・ 「#1385. Caxton が綴字標準化に貢献しなかったと考えられる根拠」 ([2013-02-10-1])
 ・ 「#1386. 近代英語以降に確立してきた標準綴字体系の特徴」 ([2013-02-11-1])
 ・ 「#1939. 16世紀の正書法をめぐる議論」 ([2014-08-18-1])
 ・ 「#2321. 綴字標準化の緩慢な潮流」 ([2015-09-04-1])
 ・ 「#3243. Caxton は綴字標準化にどのように貢献したか?」 ([2018-03-14-1])
 ・ 「#3564. 17世紀正音学者による綴字標準化への貢献」 ([2019-01-29-1])
 ・ 「#4628. 16世紀後半から17世紀にかけての正音学者たち --- 英語史上初の本格的綴字改革者たち」 ([2021-12-28-1])

 ・ Cordorelli, Marco. Standardising English Spelling: The Role of Printing in Sixteenth and Seventeenth-Century Graphemic Developments. Cambridge: CUP, 2022.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-03-18 Sat

#5073. 15世紀 Chancery Standard の注目すべき3単語の異綴りを紹介 --- England, merchant, notwithstanding [spelling][me][chancery_standard][me_dialect][standardisation]

 「#193. 15世紀 Chancery Standard の through の異綴りは14通り」 ([2009-11-06-1]) で紹介した通り,中英語も終わりに近づいた15世紀の公的な文書ですら,綴字にはまだ相当の変異や揺れがあった.14世紀末に始まりかけていた綴字の標準化は,あくまでゆっくりと進行していたのである.An Anthology of Chancery English のグロッサリーを眺めていると,through 以外にも,異綴りの観点からおもしろい単語はいくつもある.目についた3単語 (England, merchant, notwithstanding) を取り上げ,異綴りを鑑賞してみよう.括弧内の数字は頻度である.

England (35), Englande (10), Engeland (7), Englond (28), Englonde (3), Engelond (1), Inglond (6), Ingelond (3), Ingland (1), Yngelond (2), Ynglond (1)


merchant (1), marchant (8), marchaunt (6), merchaunt (4); (pl.) marchauntȝ (10), merchauntȝ (6), marchaunts (4), merchauntes (3), marchantes (3), merchantes (2), marchantȝ (2), merchandes (1), marchandes (1), marchauntes (1), merchantȝ (1)


notwithstanding (3), notwithstondyng(e) (16), natwiþstandyng (6), notwiþstandyng(e) (3), notwiþstanding (2), notwithstonding (1), notwyþstandyng (1), notwythstondyng (1), notwistanding (1), natwithstandyng (1), naughtwithstandinge (1), nogthwithstondyng (1), nottewithstondyng (1), notwythstondyng (1)


 国号ですらこれだけ揺れているというのが興味深い.もちろんこの3語は氷山の一角である.他も推して知るべし.
 関連して England については「#1145. EnglishEngland の名称」 ([2012-06-15-1]) と「#2250. English の語頭母音(字)」 ([2015-06-25-1]) を,notwithstanding については「#5064. notwithstanding」 ([2023-03-09-1]) を参照.

 ・ Fisher, John H., Malcolm Richardson, and Jane L. Fisher, comps. An Anthology of Chancery English. Knoxville: U of Tennessee P, 1984. 392.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-02-03 Fri

#5030. 英語史における4種の綴字改革 [spelling_reform][spelling][webster][shaw][orthography][standardisation][orthoepy][johnson][diacritical_mark][digraph]

 英語綴字の改革や標準化への関心は,英語史の長きにわたって断続的に観察されてきた.古英語の "West-Saxon Schriftsprache" は正書法の策定の1例だし,初期中英語期にも "AB-language" の綴字や Ormulum, Laȝamon などの綴り手が個人レベルで正書法に関心を寄せた.16世紀以降には正音学 (orthoepy) への関心が高まり,それに伴って個性的な綴字改革者が立て続けに現われた.18世紀以降には Samuel Johnson や Noah Webster が各々正書法の確立に寄与してきたし,現代にかけても数々の新しい綴字改革の運動が旗揚げされてきた.hellog でも spelling_reform の多くの記事で触れてきた通りである.
 Crystal (288) によると,伝統的な正書法 (TO = traditional orthography) に対する歴史上の改革は数多く挙げられるが,4種類に分けられるという.

 ・ Standardizing approaches, such as New Spelling . . . , uses familiar letters more regularly (typically, by adding new digraphs . . .); no new symbols are invented.
 ・ Augmenting approaches, such as Phonotypy . . . add new symbols; diacritics and invented letters have both been used.
 ・ Supplanting approaches replace all TO letters by new symbols, as in Shavian . . . .
 ・ Regularizing approaches apply existing rules more consistently or focus on restricted areas of the writing system, as in Noah Webster's changes to US English . . . or those approaches which drop silent or redundant letters, such as Cut Spelling . . . .


 穏健路線から急進路線への順に並べ替えれば Regularizing, Standardizing, Augmenting, Supplanting となるだろう.これまで本格的に成功した綴字改革はなく,せいぜい限定的に痕跡を残した Hart や Webster の名前が挙がるくらいである.そして,限定的に成功した改革提案は常に穏健なものだった.英語史において綴字改革はそれほど難しいものだったのであり,今後もそうあり続ける可能性が高い.

 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2023-01-10 Tue

#5006. YouTube 版,515通りの through の話し [spelling][me_dialect][lme][scribe][youtube][standardisation][oed][med][laeme][lalme][hc][through]

 昨年2月26日に,同僚の井上逸兵さんと YouTube チャンネル「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」を開始しました.以降,毎週レギュラーで水・日の午後6時に配信しています.最新動画は,一昨日公開された第91弾の「ゆる~い中世の英語の世界では綴りはマイルール?!through のスペリングは515通り!堀田的ゆるさベスト10!」です.



 英語史上,前置詞・副詞の through はどのように綴られてきたのでしょうか? 後期中英語期(1300--1500年)を中心に私が調査して数え上げた結果,515通りの異なる綴字が確認されています.OEDMED のような歴史英語辞書,Helsinki Corpus, LAEME, LALME のような歴史英語コーパスや歴史英語方言地図など,ありとあらゆるリソースを漁ってみた結果です.探せばもっとあるだろうと思います.
 標準英語が不在だった中英語期には,写字生 (scribe) と呼ばれる書き手は,自らの方言発音に従って,自らの書き方の癖に応じて,様々な綴字で単語を書き落としました.同一写字生が,同じ単語を異なる機会に異なる綴字で綴ることも日常茶飯事でした.とりわけ through という語は方言によって発音も様々だったため,子音字や母音字の組み合わせ方が豊富で,515通りという途方もない種類の綴字が生じてしまったのです.
 関連する話題は hellog でもしばしば取り上げてきました.以下をご参照ください.
 
 ・ 「#53. 後期中英語期の through の綴りは515通り」 ([2009-06-20-1])
 ・ 「#54. through 異綴りベスト10(ワースト10?)」 ([2009-06-21-1])
 ・ 「#3397. 後期中英語期の through のワースト綴字」 ([2018-08-15-1])
 ・ 「#193. 15世紀 Chancery Standard の through の異綴りは14通り」 ([2009-11-06-1])
 ・ 「#219. eyes を表す172通りの綴字」 ([2009-12-02-1])
 ・ 「#2520. 後期中英語の134種類の "such" の異綴字」 ([2016-03-21-1])
 ・ 「#1720. Shakespeare の綴り方」 ([2014-01-11-1])

 今回,515通りの through の話題を YouTube でお届けした次第ですが,その収録に当たって「小道具」を用意しました.せっかくですので,以下に PDF で公開しておきます.

 ・ 横置きA4用紙10枚に515通りの through の綴字を敷き詰めた資料 (PDF)
 ・ 横置きA4用紙1枚に1通りの through の綴字を大きく印字した全515ページの資料 (PDF)
 ・ 堀田の選ぶ「ベスト(ワースト)10」の through の綴字を印字した10ページの資料 (PDF)

 ユルユル綴字の話題と関連して,同じ YouTube チャンネルより比較的最近アップされた第83弾「ロバート・コードリー(Robert Cawdrey)の英英辞書はゆるい辞書」もご覧いただければと(cf. 「#4978. 脱力系辞書のススメ --- Cawdrey さんによる英語史上初の英英辞書はアルファベット順がユルユルでした」 ([2022-12-13-1])).

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-10-06 Thu

#4910. 中英語と古英語の違い3点 --- 借用語の増加,標準の不在,屈折語尾の水平化 [oe][me][loan_word][standardisation][inflection][synthesis_to_analysis]

 古い Wardale の中英語入門書の復刻版を手に取っている.中英語 (Middle English) は古英語 (Old English or Anglo-Saxon) と何がどう異なるのか.Wardale (2--3) が明快に3点を挙げている.

   (a) One of these marked differences is that whereas the latter contained very little foreign element, only a limited number of Latin words and a very few from Celtic and other sources being found, the vocabulary of Middle English has been enormously enriched, especially from Old Norse and French.
   (b) Another point of distinction is that whereas in the O.E. period the West Saxon dialect under Ælfred's encouragement of learning had come to be the standard literary dialect, the others being relegated chiefly to colloquial use, in M.E. times no such state of affairs existed. In them all dialects were used for literary purposes and only towards the end of the period do we find that of Chaucer beginning to assume its position as the leading literary language.
   (c) But more important than these external points of difference, if perhaps less obvious, and more essential because inherent in the language itself, is the modification which gradually made itself seen in that language. English, like all Germanic tongues, has at all times been governed by what is known as the Germanic accent law, that is by the system of stem accentuation. By this law, except in a few cases, the chief emphasis of the word was thrown on the stem syllable, all others remaining less stressed or entirely unaccented. . . . But by [the M.E. period] all vowels in unaccented syllables have been levelled under one uniform sound e . . .


 つまり,古英語と比べたときの中英語の際立ちは3点ある.豊富な借用語,標準変種の不在,無強勢母音の水平化だ.とりわけ,3点目が言語内的で本質的な特徴であり,それは2つの重大な結果をもたらしたと,Wardale (3--4) は議論する.

   The consequences of this levelling of all unaccented vowels under one are twofold.
   (a) Since many inflectional endings had by this means lost their distinctive value, as when a nominative singular caru, care, an a nominative plural cara both gave a M.E. care, or a nominative plural limu, limbs, and a genitive plural lima both gave a M.E. lime, those few endings which did remain distinctive, such as the -es, of the nominative plural of most masculine nouns, were for convenience' sake gradually taken for general use and the regularly developed plurals care and lime were replaced by cares and limes. In the same way and for the same reason the -es of genitive singular ending of most masculine and neuter nouns came gradually to be used in other declensions as when for an O.E. lāre, lore's we find a M.E. lǫres
   (b) The second consequence follows as naturally. The older method of indicating the relationship between words in a sentence having thus become inadequate, it was necessary to fin another, and pronouns, prepositions, and conjunctions came more and more into use. Thus an O.E. bōca full, which would have normally given a M.E. bōke full was replaced by the phrase full of bōkes, and an O.E. subjunctive hie 'riden, which in M.E. would have been indistinguishable from the indicative riden from an O.E. ridon, by the phrase if hi riden. In short, English from having been a synthetic language, became one which was analytic.


 1つめの結果は,明確に区別される -es のような優勢な屈折語尾が一般化したということだ.2つめは,語と語の関係を標示するのに屈折に頼ることができなくなったために,代名詞,前置詞,接続詞といった語類に依存する度合が増し,総合的な言語から分析的な言語へ移行したことだ.
 以上,中英語と古英語の違いについて要を得た説明だったので紹介した.

 ・ Wardale, E. E. An Introduction to Middle English. Routledge and Kegan Paul, 1937. 2016. Abingdon: Routledge, 2016.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-09-15 Thu

#4889. 『言語の標準化を考える』の編者が綴る紹介文,第3弾(高田博行氏) [gengo_no_hyojunka][contrastive_language_history][notice][german][standardisation][notice]

 2日間の記事 ([2022-09-13-1], [2022-09-14-1]) に続き,近刊書『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)について編者自らが紹介するという企画の第3弾(最終回)です.
 ドイツ語史が専門の高田博行氏による本書紹介文です.英語に慣れてしまうと気づかなくなってしまいますが,英語はなかなか「変な」言語であるという議論です.ご本人の許可をいただき,こちらに掲載致します.

standardisation_front_cover_small





「ドイツ語史から見て英語史で不思議に思えること」

高田 博行


 言語はそれぞれ固有な構造をしていて、言語Aの話者から見ると任意の言語Bは常に「変な」言語に見えてきます。英語話者から見て、同じゲルマン系の言語であるドイツ語がどう変に見えるのかについては、マーク・トウェイン(1835~1910年)による古典的な見立てがあります。トウェインは、ドイツ、スイス、フランス、イタリアを旅したときの体験に基づいて Tramp Abroad(1880年、日本語訳『ヨーロッパ放浪記』彩流社 1999年)を書きましたが、その補遺のひとつとして The Awful German Language (「恐ろしいドイツ語」)というエッセイを残しています。トウェインは、ドイツ語のどこが「恐ろしい」と言っているのでしょうか。名詞に性があること(「木」は男性、「つぼみ」は女性、「葉」は中性なのはどうして?)、名詞と形容詞の語尾変化が複雑であること、parenthesis 「括弧入れ」(大事な要素が文の最後に置かれるために、結果的に文全体が枠で囲まれるようになること。現在のドイツ語文法でいう「枠構造」のこと)のために語順が英語と大きく異なること、そして Unabhängigkeitserklärung「独立宣言」 のような長々しい複合語が遠慮なく作られることが、トウェインの言う恐ろしいドイツ語の正体のようです。
 英語の歴史からすると、名詞の性、そして名詞・形容詞の語尾変化については、英語が時間の経過のなかでいわば「無駄な部分」をそぎ落としていった結果、元来のゲルマン語に近いドイツ語の姿が変に見えるわけです。「括弧入れ」語順については、I think that his father will come to Japan next year.という語順で話す英語話者にとって、同じ文がドイツ語では I think that my father next year to Japan come will. (Ich denke, dass sein Vater nächstes Jahr nach Japan kommen wird.) という並び方になってしまうのは、たしかに反転した鏡像を見ているようで 気持ちが悪いというのも共感できます。これは、ドイツ語の独自の展開の中で枠構造という遠隔配置的な文法規則が形成され、最終的に17世紀に確定したものです。
 このような文法に関わる部分とは異なり、語彙に関わる面については人為的介入の余地がありえます。Unabhängigkeitserklärung 「独立宣言」という複合語が長く見えるのは、Unabhängigkeits-erklärung のようにハイフンを入れたり、Unabhängigkeits Erklärung のように分けて綴ったりすれば可視性が高まるのにそうはしないからです。しかし、このドイツ語の書法上の習慣(規則)だけが、複合語を長々しくする理由ではありません。そもそもドイツ語母語話者たちが長年にわたって、概念を言い表すときにラテン語やフランス語などから語を借用することなく、ドイツ語の造語力を信じて本来の(ゲルマン系の)ドイツ語で言い切ろうとしてきた取り組みの結果が、この複合語の長さを生んでいるのです。「独立宣言」という概念は、英語では declaration of independence のように、近世初期にラテン語から借用された語を用いて分析的に言い表されます。それに対して、ドイツ語の Unabhängigkeitserklärung はその構成部分がすべてドイツ語(ゲルマン系の語)から成り立っています。Unabhängigkeitserklärung は、un(英 un)「否定の接頭辞」+ ab(英 off)「下方へ」+ häng(英 hang)「垂れる」+ ig(英 y)「性質を表す形容詞を派生する接尾辞」+ keit(英 hood)「抽象名詞を派生する接尾辞」+ s(英 s)「語をつなぐ接合辞(本来は所有を表す)」+ er 「獲得・創造を意味する動詞を派生する接頭辞」+ klär(英 clear)+ ung(英 ing)「抽象名詞を派生する接尾辞」から成っています。「独立」を「垂れ下がるような性質ではないこと」のように、「宣言」を「広く明確にすること」のように説明的に表現しています。これはちょうど日本のかつてローマ字主義者が作成した漢語のやまとことば化の提案(福永恭助・岩倉具実『口語辞典 Hanasikotoba o hiku Zibiki』森北出版 1951年)に従うと、「独立宣言」は「ひとりだち いいたて」のように説明的で長くなるのと平行的だと言うこともできるでしょう。
 上に述べたように母語による語彙形成(造語)という意識的な取り組みが際立っているドイツ語史から見ると、なぜ英語は母語の要素による語彙形成を放棄したのかが大変に気になってきます。ノルマン・コンケスト(1066年)のあとフランス語語彙が生活の基本部分に深く入ってきたことで、ゲルマン系言語としての英語のいわば自意識が弱まったことが大きな英語史上の原因であると推測しますが、きっとその後の英語史の展開においても相応の理由があって現在のような語彙の構造になっているものと思います。ちょうど12月10日(土)に日本歴史言語学会で、日中英独仏の5言語について「語彙の近代化」をめぐって言語史を対照するシンポジウムを開催します。そのときにこのあたりのお話を、われらが堀田先生から伺えればと思っています。




 Mark Twain の「英語からみるドイツ語の変なところ」,高田氏の「ドイツ語からみる英語の変なところ」,それぞれお互い様のようなところがあって,おもしろいですね.「日本語からみる諸外国語の変なところ」であれば,無数に指摘できそうです.言葉が異なるのだから変に決まっているという側面はもちろんありますが,言葉のたどってきた歴史がそれぞれ異なっていたからこそ余計に変なのだ,という側面もおおいにあると思います.変である理由を探れるというのも,対照言語史のおもしろさと可能性ではないでしょうか.
 最後の部分で私の名前を言及していただきましたが,12月10日(土)午後に編者3名を含む日中英独仏の5言語史の専門家5名が集まり,日本歴史言語学会にてシンポジウム「日中英独仏・対照言語史―語彙の近代化をめぐって」を開催します(学習院大学でハイブリッド開催予定.案内はこちらです).
 シンポジウムでは,本書で扱った言語標準化と関連させつつも,独立して議論できるテーマとして「語彙の近代化」が選ばれています.上で高田氏が指摘している英独語の語彙の「行き方」の違いについても,何かしら議論することになりそうです.この問題について,私自身もじっくり考えてみようと思います.

 以上,3日間にわたり編者による『言語の標準化を考える』の紹介文を掲載してきました.ぜひ本書を手に取っていただければ幸いです.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-09-14 Wed

#4888. 『言語の標準化を考える』の編者が綴る紹介文,第2弾(田中牧郎氏) [gengo_no_hyojunka][contrastive_language_history][notice][japanese][standardisation][notice]

 昨日の記事 ([2022-09-13-1]) に引き続き,近刊書『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)について,編者自らが紹介するという企画です.第2弾は日本語史が専門の田中牧郎氏による本書紹介文です.ご本人の許可をいただき,こちらに掲載致します.

standardisation_front_cover_small





「日本語史における「統一化」「規範化」「通用化」」

田中 牧郎


 日本語史において、「標準化」や「標準語」というと、近代(19~20世紀)に展開された、政府による標準語政策が強く想起される(本書の11章で、田中克彦氏が論じている)。私が執筆した第5章「書きことばの変遷と言文一致」においても、江戸時代までを標準化の前史と見て、言文一致が進む明治・大正期を標準化の時代と扱った。
 本書の第1章や、第6章・第7章などで取り上げられる、標準化を、「統一化」(言語の変種を統一していこうという動き)、「規範化」(あるべき言語の形に統制していく動き)、「通用化」(多くの人が通じ合える言語の形に共通化・簡略化していく動き)の3つに分ける見方を、日本語史にあてはめて、通史としての大きな流れを見出していこうという発想は、持ったことがなかった。
 しかしながら、本書の編集作業を通して、その枠組みから日本語史をとらえてみることもできるのではないかと考えるようになった。本書執筆中には十分整理ができず書けなかったその点について、少し記したい。
 「統一化」にあてはまりそうな出来事としては、まず、奈良時代(8世紀)に漢字による日本語表記法を編み出したこと、次いで、平安時代(10世紀)に仮名を発明して話し言葉に基づく日本語を自在に書けるようにしたこと、さらに、鎌倉時代(12世紀)までに、漢字と仮名を適度に交えて書く漢字仮名交じり文(和漢混淆文)を一般的なものにしたことが、指摘できる。この一連の「統一化」の過程で、外国語の文字だった漢字を自国語の文字として飼い慣らし、漢字から派生させた2種類の仮名(平仮名・片仮名)のいずれかと混ぜ用いる、日本語独自の表記法を確立させ、現代まで使われ続ける書き言葉のシステムを作ったのである。
 こうして作られた書き言葉を安定的に運用していくために、平安時代以降、漢字辞典(『色葉字類抄』『文明本節用集』など)や、実用文の模範文例集(『明衡往来』『庭訓往来』など)が盛んに編纂され、鎌倉時代以降には、仮名の使い方を論じる仮名遣い書(『仮名文字遣』『和字正濫鈔』など)も書かれるようになっていく。これらは、「規範化」の動きと見ることができ、その流れが、江戸時代までの日本語の書き言葉を高度に洗練させていく結果をもたらした。
 そして、「通用化」の出来事が、明治時代(19~20世紀)に進んだ言文一致運動による口語体書き言葉の確立である。国定教科書や出版・放送によって、国民各層に均質な日本語を広める動きや、日清・日露戦争や第一世界大戦で版図を拡大するなか植民地に日本語を広める動きが強まるのも、その流れを受け継いだものである。
 以上は、標準化の前史と扱った出来事(江戸時代まで)を「統一化」「規範化」、標準化(明治時代)と扱った出来事を「通用化」とする見方である。研究を進めれば、江戸時代以前にも「通用化」にあたる出来事を指摘したり、明治時代以降に「統一化」「規範化」にあたる出来事を見ることもできると予想され、それは、日本語史を立体的にとらえることにつながっていくと期待できる。




 ここでは,本書第7章「英語標準化の諸相――20世紀以降を中心に」(寺澤盾)で提示された英語標準化の3つの側面(統一化,規範化,通用化)を,日本語標準化歴史に当てはめてみるとどうなるか,というすぐれて対照言語史的なアプローチが示されていると思います.ある個別言語の歴史にみられるパターンやモデルを,異なる言語の歴史にも「あえて強引に」当てはめてみようとするところに,新たな気づきが生まれるということは,本書の企画段階から何度も経験していました.悪くいえば牽強付会,我田引水,引喩失義となり得ますが,ポジティヴにいえば豊かな創造性を生み出してくれます.もちろん編者たちの狙いは後者です.
 明日は第3弾をお届けします.

Referrer (Inside): [2022-09-15-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-09-13 Tue

#4887. 『言語の標準化を考える』の編者が綴る紹介文,第1弾(堀田隆一) [gengo_no_hyojunka][contrastive_language_history][notice][hellog_entry_set][standardisation][variety][genbunicchi][notice]

 近刊書『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)について,本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で,様々に紹介してきました(まとめてこちらの記事セットからどうぞ).

standardisation_front_cover_small



 本書は,5言語の標準化の歴史を共通のテーマに据えて「対照言語史」 (contrastive_language_history) という新たなアプローチを提示し,さらに脚注で著者どうしがツッコミ合うという特殊なレイアウトを通じて活発な討論を再現しようと試みました.この企てが成功しているかどうかは,読者の皆さんの判断に委ねるほかありません.
 このたび高田博行氏(ドイツ語史),田中牧郎氏(日本語史),堀田隆一(英語史)の編者3名が話し合い,各々の立場から本書を紹介する文章を作成し公開しようという話しになりました.そして,公開の場は,お二人の許可もいただき,この「hellog~英語史ブログ」にしようと決まりました.結果として,英語(史)に関心をもって本ブログをお読みの皆さんを意識した文章になったと思います.
 今日はその第1弾として,まず堀田の文章をお届けします.



「標準英語は揺れ動くターゲットである」

堀田 隆一


 私たちが学習・教育の対象としている「英語」は通常「標準英語」を指す。世界で用いられている英語にはアメリカ英語、イギリス英語、インド英語をはじめ様々な種類があるが、学習・教育のターゲットとしているのは最も汎用性の高い「標準英語」だろうという感覚がある。しかし、「標準英語」とは何なのだろうか。実は皆を満足させる「標準英語」の定義はない。比較的よく参照される定義に従うと、外国語として学習・教育の対象とされている類いの英語を指すものとある。明らかに循環論法に陥っている。
 つまり、私たちは「標準英語」というターゲットが何なのかを明確に理解しないままに、そこに突き進んでいることになる。とはいえ「標準英語」という概念・用語は便利すぎて、今さら捨てることはできない。私たちは「標準英語」をだましだまし理解し、受け入れているようなのである。
 実のところ、筆者は「標準英語」を何となくの理解で受け入れておくという立場に賛成である。それは歴史的にも「揺れ動くターゲット」だったし、静的な存在として定義できるようなものではないと見ているからだ。「標準英語」は1600年ほどの英語の歴史のなかで揺れてきたし、それ自身が消失と再生を繰り返してきた。そして、英語が世界化した21世紀の現在、「標準英語」は過去にもまして揺れ動くターゲットと化しているように思われるのである。
 歴史を通じて「標準英語」が揺れ動くターゲットだったことは、本書の第6章と第7章で明らかにされる。第6章「英語史における「標準化サイクル」」(堀田隆一)では、英語が歴史を通じて標準化と脱標準化のサイクルを繰り返してきたこと、標準英語の存在それ自体が不安定だったことが説かれる。さらに同章では、近現代英語期にかけての標準化の様相が、日本語標準化の1側面である明治期の言文一致の様相と比較し得ることが指摘される。これは、言語や社会や時代が異なっていても、標準化という過程には何か共通点があるのではないか、という問いにつながる。
 第7章「英語標準化の諸相――20世紀以降を中心に」(寺澤盾)では、まず標準化を念頭に置いた英語史の時代区分が導入され、続いて「標準化」が「統一化」「規範化」「通用化」の3種類に分類され、最後に20世紀以降の標準化の動きが概説される。過去の標準化では「統一化」「規範化」の色彩が濃かった一方、20世紀以降には「通用化」の流れが顕著となってきているとして、現代の英語標準化の特徴が浮き彫りにされる。
 本書は「対照言語史」という方法論を謳って日中英独仏5言語の標準化史をたどっている。英語以外の言語の標準化の歴史を眺めても「標準語」は常に揺れ動くターゲットだったことが繰り返し確認できる。各言語史を専門とする著者たちが、脚注を利用して紙上で「ツッコミ」合いをしている様子は、各自が動きながら揺れ動くターゲットを射撃しているかのように見え、一種のカオスである。しかし、知的刺激に満ちた心地よいカオスである。
 冒頭の「標準英語」の問題に戻ろう。「標準英語」が揺れ動くものであれば、標準英語とは何かという静的な問いを発することは妥当ではないだろう。むしろ、英語の標準化という動的な側面に注目するほうが有意義そうだ。英語学習・教育の真のターゲットは何なのかについて再考を促す一冊となれば、編著者の一人として喜びである。




 明日,明後日も編者からの紹介文を掲載します.

Referrer (Inside): [2022-09-15-1] [2022-09-14-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-08-02 Tue

#4845. Voicy で「言語の標準化」鼎談を生放送しました [voicy][heldio][gengo_no_hyojunka][contrastive_language_history][standardisation][notice]

 一昨日7月31日(日)の11:00~12:00に,表記の通り Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,近刊書『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)の編者3名による対談生放送をお届けしました.
 事前にリスナーの方々よりいただいていた質問にも答える形で議論を展開しましたが,日曜日午前中にもかかわらず全体として48名の方々に生で参加いただきました.ありがとうございます.
 録音したものを,鼎談の翌朝に「#427. 編者鼎談第2弾『言語の標準化を考える』 ― 60分生放送を収録しました」として昨日公開しました.対照言語史的な風味の詰まった議論となりました.60分の長丁場ですので,ぜひお時間のあるときにお聴きいただければ幸いです.



 生放送の司会としての緊張感はありましたが,実のところたいへん議論を楽しめましたし,勉強になりました.今回の対談を通じて「言語の標準化」および「対照言語史」という話題のおもしろさが皆様に伝われば,と思っています.
 本ブログを講読している皆様も,ぜひ上記をお聴きいただいた上で,ご意見やご質問がありましたら,Voicy のコメント機能などを経由してコメントいただければ幸いです.

standardisation_front_cover_small



 先日の7月28日(木)には「#4840. 「寺澤盾先生との対談 英語の標準化の歴史と未来を考える」in Voicy」 ([2022-07-28-1]) として,本書の執筆者の1人でもある寺澤盾先生とも対談しています.こちらの音声もぜひお聴きください.
 その他,この hellog でも本書に関連する記事を多く書いてきました.まとめてこちらからご覧いただければと思います.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-07-28 Thu

#4840. 「寺澤盾先生との対談 英語の標準化の歴史と未来を考える」in Voicy [voicy][heldio][standardisation][elf][wsse][world_englishes][elf][gengo_no_hyojunka]

 目下,最も広く読まれている英語史の本といえば,寺澤盾先生の『英語の歴史―過去から未来への物語 』(中公新書)かと思います.
 このたび,寺澤先生(東京大学名誉教授,青山学院大学教授)に,この Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にご出演いただけることになりました! その実といえば,昨日,私が青山学院大学の寺澤研究室に押しかけて,お話をうかがったという次第にすぎないのですが(^^;; 1時間近くにわたる長編となりましたので,時間のあるときにゆっくりお聴きください! 収録中に青学の振鈴(賛美歌ベース)なども入り,貴重な音源となっています(笑).



 昨日の記事「#4839. 英語標準化の様相は1900年を境に変わった」 ([2022-07-27-1]) で紹介したとおり,寺澤先生には『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)の第7章に寄稿していただきました.
 今回の Voicy 対談も,前半はこの第7章に基づきます.ただし,後半は本書で触れていない発展編の議論となっています.日本人にとって,これからの英語学習・教育はどうあるべきか,21世紀の英語の標準化の目指すべき方向は何なのかについて,寺澤先生のご意見を伺いました.
 収録の前後を合わせて数時間,久しぶりに寺澤先生とおしゃべりさせていただきましたが,おおいにインスピレーションを受けて帰ってきました.本当に楽しかったです.寺澤先生,お付き合いいただきまして,ありがとうございました!

 ・ 寺澤 盾 『英語の歴史:過去から未来への物語』 中公新書,2008年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-07-27 Wed

#4839. 英語標準化の様相は1900年を境に変わった [gengo_no_hyojunka][standardisation][notice][variety][world_englishes]

 hellog では,この5月に大修館書店より出版された『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)について,たびたび広報しています.
 今度の日曜日,7月31日(日)11:00--12:00 には編者3人の対談が,Voicy にて生放送される予定です.事前の質問なども受け付けていますので,こちらの Google Forms よりお寄せください.詳細は「#4836. 7月31日(日)11:00--12:00 に生放送!『言語の標準化を考える』をめぐる編者鼎談第2弾」 ([2022-07-24-1]) をご覧ください.

tweet



 本書では英語の標準化 (standardisation) の歴史を,6章と7章にわたって詳述しています.とりわけ7章では「英語標準化の諸相―20世紀以降を中心に」と題して,20--21世紀の英語の「標準化」,実質的には英語の世界的な「通用化」という私たちにとって直接関わりのある話題が議論されています.執筆者は寺澤盾先生(青山学院大学)です.
 この章の前半では,Norman Blake に依拠し,標準化を念頭に置いた英語史の流れが概説されます.そして,真骨頂の後半では,1900年以降の英語の標準化について,とりわけ現代と未来を見据えた英語のあり方について,Basic English, Special English, Globish, Nuclear English, World Standard Spoken English という具体的な「変種」を参照しながら議論がなされます.
 寺澤先生の議論の趣旨は,目安として1900年を境に英語の標準化のあり方が変容したということです.この年代以前の標準化は,書き言葉の「統一化」「規範化」というトップダウンの標準化が基本でした.一方,この年代以降は,話し言葉の「通用化」というボトムアップの標準化が進んできているということです.
 私自身が執筆した6章「英語史における「標準化サイクル」」と合わせて,今や世界的な言語となった英語の,広い意味での「標準化」について,様々な観点から議論が活性化してくるとおもしろいですね.

 ・ 寺澤 盾 「英語標準化の諸相―20世紀以降を中心に」『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著),大修館,2022年.

Referrer (Inside): [2022-07-29-1] [2022-07-28-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2022-07-21 Thu

#4833. 『言語の標準化を考える』で考えた標準化の切り口 [gengo_no_hyojunka][standardisation][toc][typology]

 hellog でも何度か宣伝していますが,この5月に 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)が上梓されました.

standardisation_front_cover_small



 私が執筆担当した箇所の1つに,第1章の「導入:標準語の形成史を対照するということ」の第2節「標準化の切り口(パラメータ)」 (6--15) があります.本書の出版企画につながった過去5年間の研究会活動のなかで検討してきた標準化のパラメータを列挙した部分です.小見出しがそのままパラメータに対応しているので,そちらを一覧しておきます.

2.1 統一化,規範化,通用化
2.2 標準化の程度
2.3 標準化と脱標準化
2.4 使用域
2.5 領域別の標準化とその歴史的順序
2.6 標準化のタイミングと要した時間
2.7 標準化の諸段階・諸側面
2.8 通用空間
2.9 標準化の目標となる変種の種類・数
2.10 標準化を推進する主体・方向
2.11 標準化に対する話者の態度
2.12 言語の標準化と社会の言語標準化


 時間をかけてブレストし,まとめてきたパラメータの一覧なので,対照言語史的に標準化 (standardisation) を検討する際のタイポロジーやモデルとして広く役立つのではないかと考えています.
 hellog では言語標準化の話題は standardisation の記事で頻繁に取り上げてきましたが,研究会での発表を念頭に作成した,英語の標準化の歴史についてのある程度まとまった資料としては「#3234. 「言語と人間」研究会 (HLC) の春期セミナーで標準英語の発達について話しました」 ([2018-03-05-1]) と「#3244. 第2回 HiSoPra* 研究会で英語史における標準化について話しました」 ([2018-03-15-1]) を参照ください.
 『言語の標準化を考える』の紹介についてはこちらの記事セットをどうぞ.とりわけ7月8日に音声収録した編者鼎談はお薦めです.本書の狙いや読みどころを編者3人で紹介しています.近々に編者鼎談第2弾も企画しています.本書について,あるいは一般・個別言語における標準化の話題について,ご意見,ご感想,ご質問等をこちらのコメントフォームお寄せください.第2弾で話題として取り上げられればと思っています.


[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow