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-ate - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-21 08:03

2019-08-31 Sat

#3778. 過去分詞を作る形態素の一部 -t を語幹に取り込んでしまった動詞 [etymology][verb][participle][-ate][analogy][reanalysis][metanalysis]

 何とも名付けにくい,標題の複雑な形態過程を経て形成された動詞がある.先に具体例を挙げれば,語末に t をもつ grafthoist のことだ.
 昨日の記事「#3777. set, put, cut のほかにもあった無変化活用の動詞」 ([2019-08-30-1]) とも関係するし,「#438. 形容詞の比較級から動詞への転換」 ([2010-07-09-1]),「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]),「#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-16-1]),「#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-17-1]) とも密接に関わる,諸問題の交差点である.
 graft (接ぎ木する,移植する)はフランス語 grafe に遡り,もともと語末の t はなかった.しかし,英語に借用されて作られた過去分詞形 graft が,おそらく set, put, cut などの語幹末に -t をもつ無変化動詞をモデルとして,そのまま原形として解釈されたというわけだ.オリジナルに近い graff という語も《古風》ではあるが,辞書に確認される.
 同様に hoist (揚げる,持ち上げる)も,オランダ語 hyssen を借用したものだが,英語に導入された後で,語末に t を付した形が原形と再解釈されたと考えられる.オリジナルに近い hoise も,現在,方言形として存在する.
 以上は Jespersen (38) の説だが,解説を直接引用しておこう.

graft: earlier graft (< OF grafe). The ptc. graft was mistakenly interpreted as the unchanged ptc of an inf graft. Sh has both graft and graft; the latter is now the only form in use; it is inflected regularly. || hoist: originally hoise (perhaps < Middle Dutch hyssen). From the regular ptc hoist a new inf hoist sprang into use. Sh has both forms; now only hoist as a regular vb. The old ptc occurs in the well-known Shakespearean phrase "hoist with his own petard" (Hml III. 4.207).


 冒頭で名付けにくい形態過程と述べたが,異分析 (metanalysis) とか再分析 (reanalysis) の一種として見ておけばよいだろうか.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part VI. Copenhagen: Ejnar Munksgaard, 1942.

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2019-08-30 Fri

#3777. set, put, cut のほかにもあった無変化活用の動詞 [verb][conjugation][inflection][-ate][analogy][conversion][adjective][participle][conversion]

 set, put, cut の類いの無変化活用の動詞について「#1854. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc.」 ([2014-05-25-1]),「#1858. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc. (2)」 ([2014-05-29-1]) の記事で取り上げてきた.そこでは,これらの動詞の振る舞いが,英語の音韻形態論の歴史に照らせば,ある程度説得力のある説明が与えられることをみた.
 語幹末に td が現われる単音節語である,というのがこれらの動詞の共通項だが,歴史的には,この条件を満たしている限りにおいて,ほかの動詞も同様に無変化活用を示していたことがあった.たとえば,fast, fret, lift, start, waft などである.Jespersen (36) から引用例を再現しよう.

   4.42. The influence of analogy has increased the number of invariable verbs. Especially verbs ending in -t tend in this direction. The tendency perhaps culminated in early ModE, when several words now regular had unchanged forms, sometimes side by side with forms in -ed:
   fast. Sh Cymb IV. 2.347 I fast and pray'd for their intelligense. || fret. More U 75 fret prt. || lift (from ON). AV John 8.7 hee lift vp himselfe | ib 8.10 when Iesus had lift vp himselfe (in AV also regular forms) | Mi PL 1. 193 With Head up-lift above the wave | Bunyan P 19 lift ptc. || start. AV Tobit 2.4 I start [prt] vp. || waft. Sh Merch. V. 1.11 Stood Dido .. and waft her Loue To come again to Carthage | John II. 1.73 a brauer choice of dauntlesse spirits Then now the English bottomes haue waft o're.


 Jespersen のいうように,これらは歴史的に,あるいは音韻変化によって説明できるタイプの無変化動詞というよりは,あくまで set など既存の歴史的な無変化動詞に触発された,類推作用 (analogy) の結果として生じた無変化動詞とみるべきだろう.その点では2次的な無変化動詞と呼んでもよいかもしれない.これらは現代までには標準英語からは消えたとはいえ,重要性がないわけではない.というのは,それらが新たな類推のモデルとなって,次なる類推を呼んだ可能性もあるからだ.つまり,語幹が -t で終わるが,従来の語のように単音節でもなければゲルマン系由来でもないものにすら,同現象が拡張したと目されるからだ.ここで念頭に置いているのは,過去の記事でも取りあげた -ate 動詞などである(「#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-17-1]) を参照).
 同じく Jespersen (36--37) より,この旨に関する箇所を引用しよう.

4.43. It was thus not at all unusual in earlier English for a ptc in -t to be = the inf. The analogy of these cases was extended even to a series of words of Romantic origin, namely such as go back to Latin passive participle, e. g. complete, content, select, and separate. These words were originally adopted as participles but later came to be used also as infinitives; in older English they were frequently used in both functions (as well as in the preterit), often with an alternative ptc. in -ed; . . . A contributory cause of their use as verbal stems may have been such Latin agent-nouns as corruptor and editor; as -or is identical in sound with -er in agent-nouns, the infinitives corrupt and edit may have been arrived at merely through subtraction of the ending -or . . . . Finally, the fact that we have very often an adj = a vb, e. g. dry, empty, etc . . ., may also have contributed to the creation of infs out of these old ptcs (adjectives).


 引用の後半で,類推のモデルがほかにも2つある点に触れているのが重要である.corruptor, editor タイプからの逆成 (back_formation),および dry, empty タイプの動詞・形容詞兼用の単語の存在である.「#1748. -er or -or」 ([2014-02-08-1]),「#438. 形容詞の比較級から動詞への転換」 ([2010-07-09-1]) も参照.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part VI. Copenhagen: Ejnar Munksgaard, 1942.

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2019-08-17 Sat

#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達 [suffix][-ate][adjective][participle][verb][word_formation][loan_word][latin][french][conversion][morphology][analogy]

 昨日の記事「#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-16-1]) に引き続き,接尾辞 -ate の話題.動詞接尾辞の -ate については「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) で取り上げたが,今回はその起源と発達について,OED -ate, suffix1 を参照しながら,もう少し詳細に考えてみよう.
 昨日も述べたように,-ate はラテン語の第1活用動詞の過去分詞接辞 -ātus, -ātum, -āta に遡るから,本来は動詞の語尾というよりは(過去分詞)形容詞の語尾というべきものである.動詞接尾辞 -ate の起源を巡る議論で前提とされているのは,-ate 語に関して形容詞から動詞への品詞転換 (conversion) が起こったということである.形容詞から動詞への品詞転換は多くの言語で認められ,実際に古英語から現代英語にかけても枚挙にいとまがない.たとえば,古英語では hwít から hwítian, wearm から wearmian, bysig から bysgian, drýge から drýgan が作られ,それぞれ後者の動詞形は近代英語期にかけて屈折語尾を失い,前者と形態的に融合したという経緯がある.
 ラテン語でも同様に,形容詞から動詞への品詞転換は日常茶飯だった.たとえば,siccus から siccāre, clārus から clārāre, līber から līberāre, sacer から sacrāre などが作られた.さらにフランス語でも然りで,sec から sècher, clair から clairer, content から contenter, confus から confuser などが形成された.英語はラテン語やフランス語からこれらの語を借用したが,その形容詞形と動詞形がやはり屈折語尾の衰退により15世紀までに融合した.
 こうした流れのなかで,16世紀にはラテン語の過去分詞形容詞をそのまま動詞として用いるタイプの品詞転換が一般的にみられるようになった.direct, separate, aggravate などの例があがる.英語内部でこのような例が増えてくると,ラテン語の -ātus が,歴史的には過去分詞に対応していたはずだが,共時的にはしばしば英語の動詞の原形にひもづけられるようになった.つまり,過去分詞形容詞的な機能の介在なしに,-ate が直接に動詞の原形と結びつけられるようになったのである.
 この結び付きが強まると,ラテン語(やフランス語)の動詞語幹を借りてきて,それに -ate をつけさえすれば,英語側で新しい動詞を簡単に導入できるという,1種の語形成上の便法が発達した.こうして16世紀中には fascinate, concatenate, asseverate, venerate を含め数百の -ate 動詞が生み出された.
 いったんこの便法が確立してしまえば,実際にラテン語(やフランス語)に存在したかどうかは問わず,「ラテン語(やフランス語)的な要素」であれば,それをもってきて -ate を付けることにより,いともたやすく新しい動詞を形成できるようになったわけだ.これにより nobilitate, felicitate, capacitate, differentiate, substantiate, vaccinate など多数の -ate 動詞が近現代期に生み出された.
 全体として -ate の発達は,語形成とその成果としての -ate 動詞群との間の,絶え間なき類推作用と規則拡張の歴史とみることができる.

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2019-08-16 Fri

#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達 [suffix][-ate][adjective][participle][word_formation][loan_word][latin][french][conversion][morphology]

 英語で典型的な動詞語尾の1つと考えられている -ate 接尾辞は,実はいくつかの形容詞にもみられる.aspirate, desolate, moderate, prostrate, sedate, separate は動詞としての用法もあるが,形容詞でもある.一方 innate, oblate, ornate, temperate などは常に形容詞である.形容詞接尾辞としての -ate の起源と発達をたどってみよう.
 この接尾辞はラテン語の第1活用動詞の過去分詞接辞 -ātus, -ātum, -āta に遡る.フランス語はこれらの末尾にみえる屈折接辞 -us, -um, -a を脱落させたが,英語もラテン語を取り込む際にこの脱落の慣習を含めてフランス語のやり方を真似た.結果として,英語は1400年くらいから,ラテン語 -atus などを -at (のちに先行する母音が長いことを示すために e を添えて -ate) として取り込む習慣を獲得していった.
 上記のように -ate の起源は動詞の過去分詞であるから,英語でも文字通りの動詞の過去分詞のほか,形容詞としても機能していたことは無理なく理解できるだろう.しかし,後に -ate が動詞の原形と分析されるに及んで,本来的な過去分詞の役割は,多く新たに規則的に作られた -ated という形態に取って代わられ,過去分詞(形容詞)としての -ate の多くは廃用となってしまった.しかし,形容詞として周辺的に残ったものもあった.冒頭に挙げた -ate 形容詞は,そのような経緯で「生き残った」ものである.
 以上の流れを解説した箇所を,OED の -ate, suffix2 より引こう.

Forming participial adjectives from Latin past participles in -ātus, -āta, -ātum, being only a special instance of the adoption of Latin past participles by dropping the inflectional endings, e.g. content-us, convict-us, direct-us, remiss-us, or with phonetic final -e, e.g. complēt-us, finīt-us, revolūt-us, spars-us. The analogy for this was set by the survival of some Latin past participles in Old French, as confus:--confūsus, content:--contentus, divers:--diversus. This analogy was widely followed in later French, in introducing new words from Latin; and both classes of French words, i.e. the popular survivals and the later accessions, being adopted in English, provided English in its turn with analogies for adapting similar words directly from Latin, by dropping the termination. This began about 1400, and as in -ate suffix1 (with which this suffix is phonetically identical), Latin -ātus gave -at, subsequently -ate, e.g. desolātus, desolat, desolate, separātus, separat, separate. Many of these participial adjectives soon gave rise to causative verbs, identical with them in form (see -ate suffix3), to which, for some time, they did duty as past participles, as 'the land was desolat(e by war;' but, at length, regular past participles were formed with the native suffix -ed, upon the general use of which these earlier participial adjectives generally lost their participial force, and either became obsolete or remained as simple adjectives, as in 'the desolate land,' 'a compact mass.' (But cf. situate adj. = situated adj.) So aspirate, moderate, prostrate, separate; and (where a verb has not been formed), innate, oblate, ornate, sedate, temperate, etc. As the French representation of Latin -atus is -é, English words in -ate have also been formed directly after French words in --é, e.g. affectionné, affectionate.


 つまり,-ate 接尾辞は,起源からみればむしろ形容詞にふさわしい接尾辞というべきであり,動詞にふさわしい接尾辞へと変化したのは,中英語期以降の新機軸ということになる.なぜ -ate が典型的な動詞接尾辞となったのかという問題を巡っては,複雑な歴史的事情がある.これについては「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) を参照(また,明日の記事でも扱う予定).
 接尾辞 -ate については,強勢位置や発音などの観点から「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]),「#3685. -ate 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い」 ([2019-05-30-1]),「#3686. -ate 語尾,-ment 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い」 ([2019-05-31-1]),「#1383. ラテン単語を英語化する形態規則」 ([2013-02-08-1]) をはじめ,-ate の記事で取り上げてきたので,そちらも参照されたい.

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2019-05-31 Fri

#3686. -ate 語尾,-ment 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い [gvs][vowel][spelling][spelling_pronunciation_gap][stress][suffix][latin][diatone][-ate]

 昨日の記事「#3685. -ate 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い」 ([2019-05-30-1]) に引き続き,-ate 語尾をもつ語の発音が,動詞では /eɪt/ となり名詞・形容詞では /ɪt/ となる件について.
 Carney でもこの問題が各所で扱われており,特に p. 398 にこの現象を示す単語リストが挙げられている.以下に再現しておこう.網羅的ではないと思われるが,便利な一覧である.

aggregate, animate, appropriate, approximate, articulate, associate, certificate, co-ordinate, correlate, degenerate, delegate, deliberate, duplicate, elaborate, emasculate, estimate, expatriate, graduate, importunate, incorporate, initiate, intimate, moderate, postulate, precipitate, predicate, separate, subordinate, syndicate


 Carney がこのリストを挙げているのは,品詞によって発音を替える類いの単語があるという議論においてである.他の種類としては,強勢音節を替える名前動後 (diatone) も挙げられているし,接尾辞 -ment をもつ語も話題にされている.名前動後という現象とその歴史的背景についてについては,すでに本ブログでも diatone の各記事で本格的に紹介してきたが,「品詞によって発音を替える」というポイントで -ate 語とつながってくるというのは,今回の発見だった.
 -ment 語については,動詞であれば明確な母音で /-mɛnt/ となるが,名詞・形容詞であれば曖昧母音化した /-mənt/ となる.Carney (398) より該当する単語のリストを挙げておこう.complement, compliment, document, implement, increment, ornament, supplement.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

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2019-05-30 Thu

#3685. -ate 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い [gvs][vowel][spelling][spelling_pronunciation_gap][stress][analogy][suffix][latin][sobokunagimon][-ate]

 標記について質問が寄せられました.たとえば appropriate は動詞としては「私用に供する」,形容詞としては「適切な」ですが,各々の発音は /əˈproʊpriˌeɪt/, /əˈproʊpriˌɪt/ となります.語末音節の母音が,完全な /eɪt/ が縮減した /ɪt/ かで異なっています.これはなぜでしょうか.
 動詞の /eɪt/ 発音は,綴字と照らし合わせればわかるように,大母音推移 (gvs) の効果が現われています.<-ate> という綴字で表わされる本来の発音 /-aːt(ə)/ が,初期近代英語期に生じた大母音推移により /eɪt/ へと変化したと説明できます.しかし,同綴字で名詞・形容詞の -ate 語では,そのような発音の変化は起こっていません.そこで生じた変化は,むしろ母音の弱化であり,/ɪt/ へと帰結しています.
 この違いは,大母音推移以前の強勢音節のあり方の違いに起因します.一般的にいえば,appropriate のような長い音節の単語の場合,動詞においては後方の音節に第2強勢が置かれますが,形容詞・名詞においては置かれないという傾向があります.appropriate について具体的にいえば,動詞としては第4音節の -ate に(第2)強勢が置かれますが,名詞・形容詞としてはそれが置かれないということになります.
 ここで思い出すべきは,大母音推移は「強勢のある長母音」において作用する音過程であるということです.つまり,-ate 語の動詞用法においては,(第2強勢ではありますが)強勢が置かれるので,この条件に合致して /-aːt(ə)/ → /eɪt/ が起こりましたが,名詞・形容詞用法においては,強勢が置かれないので大母音推移とは無関係の歴史を歩むことになりました.名詞・形容詞用法では,本来の /-aːt(ə)/ が,綴字としては <-ate> を保ちながらも,音としては強勢を失うとともに /-at/ へと短化し,さらに /-ət/ や /-ɪt/ へと曖昧母音化したのです.
 このような経緯で,-ate 語は品詞によって発音を違える語となりました.いったんこの傾向が定まり,パターンができあがると,その後は実際の発音や強勢位置にかかわらず,とにかく確立したパターンが類推的に適用されるようになりました.こうして,-ate 語の発音ルールが確立したのです.
 関連して,「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]),「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) もご参照ください.-age 語などに関しても,ほぼ同じ説明が当てはまると思います.中尾 (310, 313) も要参照.

 ・ 中尾 俊夫 『音韻史』 英語学大系第11巻,大修館書店,1985年.

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2016-10-18 Tue

#2731. -ate 動詞はどのように生じたか? [suffix][conversion][latin][participle][analogy][adjective][verb][-ate]

 英単語には -ate 接尾辞をもつものが非常に多い.この接尾辞はラテン語の第1活用動詞の過去分詞の語尾に現われる -atus, -atum に由来し,英語では原義から予想される形容詞や名詞の接尾辞として機能しているばかりか,動詞の接尾辞としても機能している.品詞ごとに,いくつか例を挙げよう.これらの中なかには,複数の品詞を兼ねているものもあることに気づくだろう.

 ・ 名詞: advocate, legate, centrifugate, duplicate, mandate, vulcanizate; alcoholate, ferrate, acetate, carbonate; episcopate, pontificate, professorate, rabbinate
 ・ 形容詞: consummate, degenerate, inanimate, Italianate, temperate; branchiate, chordate, foliate
 ・ 動詞: activate, assassinate, camphorate, capacitate, chlorinate, concentrate, domesticate, evaporate, fractionate, hyphenate, locate, negotiate, orchestrate, pollinate, pontificate, substantiate, triangulate, ulcerate, vaccinate, venerate

 -ate 語はラテン語の過去分詞に由来するのだから,英語でも形容詞として,あるいはその名詞用法を経由して名詞として用いられるというのは理解しやすい.しかし,英語では -ate 語が動詞として用いられる例が非常に多い.むしろ,-ate 接尾辞をもつ英単語といえば,まず動詞の例が思い浮かぶのではないか.なぜ -ate が動詞となり得るのだろうか.
 この理由については,形容詞が動詞へ品詞転換 (conversion) することは英語において珍しくなく,-ate 形容詞もその傾向に乗って自由に動詞へと品詞転換し得たのだ,と言われている.確かに本来語でも white, warm, busy, dry, empty, dirty などで形容詞から動詞への品詞転換は見られるし,フランス借用語でも clear, humble, manifest などの例がある.ここから,ラテン語に由来する -ate 形容詞もそのまま動詞として用いられる道が開かれ,さらにこの過程が一般化するに及んで,もともとのラテン語第1活用動詞はとにかく -ate 接尾辞を伴い,動詞として英語に取り込まれるという慣習が定着したのだという (see 「#1383. ラテン単語を英語化する形態規則」 ([2013-02-08-1])) .
 上記の説明は,Baugh and Cable (222) でも採用されており,定説に近いものとなっている.OED の -ate, suffix3 でも同じ説明が施されているが,説明の最後に,次のようなコメントが括弧付きで付されており,興味深い.

(It is possible that the analogy of native verbs in -t, with the pa. pple. identical in form with the infinitive, as set, hit, put, cut, contributed also to the establishment of verbs like direct, separat(e, identical with their pa. pples.)


 この最後の見解と関連して,「#1860. 原形と同じ形の過去分詞」 ([2014-05-31-1]),「#1854. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc.」 ([2014-05-25-1]) と「#1858. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc. (2)」 ([2014-05-29-1]) も参照されたい.
 また,-ate 語の別の側面の話題を「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]),「#1748. -er or -or」 ([2014-02-08-1]),「#1880. 接尾辞 -ee の起源と発展 (1)」 ([2014-06-20-1]) で扱っているので,そちらもどうぞ.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2014-06-20 Fri

#1880. 接尾辞 -ee の起源と発展 (1) [suffix][loan_word][french][register][anglo-norman][law_french][etymology][-ate][agentive_suffix][french_influence_on_grammar]

 emplóyer (雇い主)に対して employée (雇われている人)というペアはよく知られている.appóinter/appointée, exáminer/examinée, páyer/payée, tráiner/trainée などのペアも同様で,それぞれの組で -er をもつ前者が能動的に動作主を,-ee をもつ後者が受動的に被動作主を表わす.
 しかし,absentee (欠席者), escapee (脱走者), patentee (特許権所有者), refugee (避難民), standee (立見客)など,意味的に受け身とは解釈できない例も存在する.実際,standeestander は同義ではないとしても,少なくとも類義ではある.-ee という接頭辞の働きはどのようなものだろうか.
 -er は本来的な接尾辞(古英語 -ere)だが,-ee はフランス語から借用した接尾辞である.フランス語 -é(e) は動詞の過去分詞接尾辞であり,他動詞に接続すれば受け身の意味となった.これ自体はラテン語の第1活用の動詞の過去分詞接辞 -ātus に遡るので,communicatee, dedicatee, educatee, legatee, relocatee などでは同根の2つの接尾辞が付加されていることになる(-ate 接尾辞については,「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]) や「#1748. -er or -or」 ([2014-02-08-1]) を参照).
 接尾辞 -ee の基本的な機能は,動詞語幹から人や有生物を表わす被動作主名詞を作ることである.他の特徴としては,接尾辞 -ee /ˈiː/ に強勢が落ちること,意志性の欠如という意味上の制約があること,法律用語として用いられる傾向が強いこと,などが挙げられる.法律という使用域 (register) についていえば,Anglo-Norman の法律用語 apelour/apelé から英語に入った appellor/appellee (上訴人/被上訴人)などのペアが嚆矢となり,後期中英語以降,基体の語源にかかわらず -or (or -er) と -ee による法律用語ペアが続々と生まれた.
 被動作主とひとくくりにいっても,統語的には基体の動詞の直接目的語,間接目的語,前置詞目的語に相当するもの,さらに主語に相当するものや,動詞とは直接に関連しないものを含めて,様々な種類がある (Isozaki 5--6).examinee は "someone who one examines" で直接目的語に相当,payee は "someone to whom one pays something" で間接目的語に相当,laughee は "someone who one laughs at" で前置詞目的語に相当, standeeattendee は "someone who stands" と "someone who attends something" で主語に相当する.その他,変則的な種類として,amputee は "someone whose limb was amputated" と複雑な統語関係を示し,patentee, redundantee, biographee は名詞や形容詞を基体としてもつ.
 この接尾辞について後期近代英語から現代英語へかけての通時的推移をみると,ロマンス系語幹ではなく本来語幹に接続する傾向が生じてきていること,standee のような動作主(主語)タイプが増えてきていることが指摘される.この潮流については,明日の記事で.

 ・ Isozaki, Satoko. "520 -ee Words in English." Lexicon 36 (2006): 3--23.

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2014-02-08 Sat

#1748. -er or -or [suffix][morphology][morpheme][phonotactics][spelling][word_formation][-ate][agentive_suffix]

 「#1740. interpretorinterpreter」 ([2014-01-31-1]) で話題にした -er と -or について.両者はともに行為者接尾辞 (agentive suffix, subject suffix) と呼ばれる拘束形態素だが,形態,意味,分布などに関して,互いにどのように異なるのだろうか.今回は,歴史的な視点というよりは現代英語の共時的な視点から,両者の異同を整理したい.
 Carney (426--27), Huddleston and Pullum (1698),西川 (170--73),太田など,いくつかの参考文献に当たってみたところを要約すると,以下の通りになる.

 -er-or
語例非常に多い比較的少ない
生産性生産的非生産的
接辞クラスClass IIClass I
接続する基体の語源Romance 系に限らないRomance 系に限る
接続する基体の自由度自由形に限る自由形に限らない
強勢移動しないしうる
接尾辞自体への強勢落ちない落ちうる
さらなる接尾辞付加ないClass I 接尾辞が付きうる


 それぞれの項目についてみてみよう.-er の語例の豊富さと生産性の高さについては述べる必要はないだろう.対する -or は,後に示すように数が限られており,一般的に付加することはできない.
 接辞クラスの別は,その後の項目にも関与してくる.-er は Class II 接辞とされ,自由な基体に接続し,強勢などに影響を与えない,つまり単純に語尾に付加されるのみである.自由な基体に接続するということでいえば,New Yorkerdouble-decker などのように複合語の基体にも接続しうる.自由な基体への接続の例外のように見えるものに,biographer, philosopher などがあるが,これらは biography, philosophy からの2次的な形成だろう.基体の語源も選ばず,本来語の fisher, runner もあれば,例えばロマンス系の dancer, recorder もある.一方,-or は Class I 接辞に近く,原則として基体に Romance 系を要求する(ただし,sailor などの例外はある).また,-or には,alternator, confessor, elevator, grantor, reactor, rotator のように自由基体につく例もあれば,author, aviator, curator, doctor, predecessor, spectator, sponsor, tutor のように拘束基体につく例もある.強勢移動については,-or も -er と同様に移動を伴わないのが通例だが,ˈexecute/exˈecutor のような例も存在する.
 接尾辞自体に強勢が落ちる可能性については,通常 -or は -er と同様に無強勢で /ə/ となるが,少数の語では /ɔː(r)/ を示す (ex. corridor, cuspidor, humidor, lessor, matador) .特に humidor, lessor の場合には,同音異義語との衝突を避ける方略とも考えられる.
 さらなる接尾辞付加の可能性については,ambassador ? ambassadorial, doctor ? doctoral など,-or の場合には,さらに Class I 接尾辞が接続しうる点が指摘される.
 上記の他にも,-or については,いくつかの特徴が指摘されている.例えば,法律に関する用語,あるいは専門的職業を表す語には,-or が付加されやすいといわれる (ex. adjustor, auditor, chancellor, editor, mortgagor, sailor, settlor, tailor) .一方で,ときに意味の区別なく -er, -or のいずれの接尾辞もとる adapter--adaptor, adviser--advisor, convener--convenor, vender--vendor のような例もみられる.
 また,西川 (170) は,基体の最後尾が [t] で終わるものに極めて多く付き,[s], [l] で終わるものにもよく付くと指摘している.さらに,-or に接続する基体語尾の音素配列の詳細については,太田 (129) が Walker の脚韻辞書を用いた数え上げを行なっている.辞書に掲載されている581の -or 語のうち,主要な基体語尾をもつものの内訳は以下の通りである.基体が -ate で終わる動詞について,対応する行為者名詞は -ator をとりやすいということは指摘されてきたが,実に過半数が -ator だということも判明した.

EndingWord typesExamples
-ator291indicator, navigator
-ctor63contractor, predictor
-itor29inheritor, depositor
-utor16contributor, prosecutor
-essor15successor, professor
-ntor14grantor, inventor
-stor12investor, assistor


 最後に,-er, -or とは別に,行為者接尾辞 -ar, -ier, -yer, -erer の例を挙げておこう.beggar, bursar, liar; clothier, grazier; lawyer, sawyer; fruiterer.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.
 ・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.
 ・ 西川 盛雄 『英語接辞研究』 開拓者,2006年.
 ・ 太田 聡  「「?する人[もの]」を表す接尾辞 -or について」『近代英語研究』 第25号,2009年,127--33頁.

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2013-02-08 Fri

#1383. ラテン単語を英語化する形態規則 [morphology][latin][loan_word][neo-latin][romancisation][-ate]

 [2013-01-05-1]の記事「#1349. procrastination の生成過程」で,ラテン単語が英語に取り込まれる際に適用される形態音韻規則について,Bloomfield に拠って議論した.この規則は,近代英語期までに至るラテン語との長い接触を通じて通時的に育まれ,共時的に定着したものである.規則というよりは半ば自然に発達してきた慣習と言い換えてもよいかもしれないが,これをあたかも意識的に制定した規則であるかのように解説した記述がある.Thomas Blount の Glossographia (1656) である(Glossographia を含む記事を参照).Brengelman (353) に,その Blount の記述がまとまっているので,それを再現する.

LATINENGLISHEXAMPLES
-io-ioninquisition, ablution, abortion
-or-oragressor
-tura-tureabbreviature
-ista-istagonist
-isma, -ismus-istagonism, aphorism
Verb + o-ateabdicate, adumbrate
Verb + o (generally with long vowel)-#abduce, adjure, allude
Adj + is, us-#abject, abortive, angular, annual
-abilis-ablearable
-ibilis-ibleplausible
-us, -osus-ousabstemious, pernicious
Noun + a, um, us-#abysse, accent, alphabet
(rum, ra, rus)-eramber, alabaster
-ul--leangle
-i + us, um, a, as-yarbitrary, anatomy, adultery, acclivity
-entia-encyadolescency
-ans-antadjutant
-ens-entadjacent


 上の規則は,Brengelman (353) によれば,3点に要約できるという.

(1) retain and Anglicize derivational endings; (2) delete purely inflectional endings; (3) leave prefixes and bases unchanged.


 この規則に沿わない例があることは18世紀にも指摘されているが (ex. explain, proceed, labour) ,そのような語は,すでに辞書において固定化してしまっていたのだろう.
 なお,Blount の規則は,原則的に現代英語の Neo-Latin 造語にも適用されている.Neo-Latin 造語については,「#392. antidisestablishmentarianism にみる英語のロマンス語化」 ([2010-05-24-1]) を参照.

 ・ Bloomfield, Leonard. Language. 1933. Chicago and London: U of Chicago P, 1984.
 ・ Brengelman, F. H. "Orthoepists, Printers, and the Rationalization of English Spelling." JEGP 79 (1980): 332--54.

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2012-12-30 Sun

#1343. 英語の英米差を整理(主として発音と語彙) [ame_bre][pronunciation][stress][-ate]

 英語の英米差については ame_bre ほか,多くの記事で触れてきた.文法と綴字については「#312. 文法の英米差」 ([2010-03-05-1]) と「#244. 綴字の英米差のリスト」 ([2009-12-27-1]) で少しくまとめたが,今回は主として発音と語彙における変異について,Schmitt and Marsden (185--92) に従って一覧したい.言うまでもなく,英米差というときには,標準アメリカ英語と標準イギリス英語の変異を念頭に置いている.

1. Pronunciation

 ・ Words spelled with the vowel a: /æ/ for AmE and /ɑː/ for BrE as in bath, class, last, mask, past, rather.
 ・ Words spelled with -er: /əː/ for AmE and /ɑː/ for BrE as in clerk, Derby (see 「#211. spelling pronunciation」 ([2009-11-24-1]))
 ・ Words ending with -ile: /(ə)l/ for AmE and /aɪl/ for BrE as in agile, docile, fertile, missile
 ・ Words spelled alike but typically pronounced differently (z については「#964. z の文字の発音 (1)」 ([2011-12-17-1]) および「#965. z の文字の発音 (2)」 ([2011-12-18-1]) を参照)
WordAmEBrE
asthma/ˈæzma//ˈæsma/
clique/klɪk//kliːk/
vase/veɪs//vɑːz/
schedule/ˈskɛʤəl//ˈʃɛdjuːl/
leisure/ˈliːʒəː//ˈlɛʒəː/
lieutenant/luːˈtɛnənt//lɛfˈtɛnənt/
z (the letter)/ziː//zɛd/
tomato/tʌˈmeɪtəʊ//tʌˈmɑːtəʊ/


2. Word Stress

 ・ Words derived from French (garage については「#1318. 言語において保守的とは何か?」 ([2012-12-05-1]) を参照)
AmEBrE
balLETBALlet
blaSÉBLAse
bufFETBUFfet
garAGEGARage
perFUMEPERfume
debuTANTEDEButante
vaLETVAlet

 ・ Three- and four-syllable words
AmEBrE
comPOSiteCOMposite
subALternSUBaltern
arIStocratARistocrat
priMARilyPRImarily

 ・ Words ending in -ary, -ery, -ory and -mony
WordAmEBrE
military/ˈmɪləˌtɛri//ˈmɪlɪtri/
arbitrary/ˈərbəˌtrɛri//ˈɑːbɪtri/
cemetery/ˈsɛməˌtɛri//ˈsɛmətri/
monastery/ˈmɒnəsˌtɛri//ˈmɒnəstri/
mandatory/ˈmændəˌtɔri//ˈmændətri/
category/ˈkætəˌgɔri//ˈkætəgri/
testimony/ˈtɛstəˌməʊni//ˈtɛstəməni/
matrimony/ˈmætrəˌməʊni//ˈmætrɪməni/

 ・ Days of the week
WordAmEBrE
Sunday/ˈsʌndɛɪ//ˈsʌndi/
Monday/ˈmʌndɛɪ//ˈmʌndi/
Tuesday/ˈˈtuːzdɛɪ//ˈtjuːzdi/
Thursday/ˈθəːzdɛɪ//ˈθəːzdi/
Friday/ˈfraɪdɛɪ//ˈfraɪdi/
Saturday/ˈsætəːdɛɪ//ˈsætəːdi/

 ・ Place-names
NameAmEBrE
Lancaster/ˈlæŋˌkæstər//ˈlæŋkəstə/
Rochester/ˈrɒʧɛstər//ˈrɒʧəstə/
Worcester/ˈwʊəsɛstər//ˈwʊstə/
Nottingham/ˈnɒtɪŋˌhæm//ˈnɒtɪŋəm/
Birmingham/ˈbəːmɪŋˌhæm//ˈbəːmɪŋəm/

 ・ Verbs ending in -ate (「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]) を参照)
AmEBrE
DICtatedicTATE
FIXatefixATE
ROtateroTATE
VIbratevibRATE

 ・ Miscellaneous word-stress differences (「#321. controversy over controversy」 ([2010-03-14-1]) を参照)
WordAmEBrE
advertisement/ˈædvəːˌtaɪzmənt//ædˈvəːtəzmənt/
controversy/ˈkɒntrəˌvəːsi//kɒnˈtrɒvəsi/
corollary/ˈkʊrəˌlɛri//kɒˈrɒləri/
inquiry/ˈɪnkwəri//ɪnˈkwaɪri/
laboratory/ˈlæbrəˌtʊəri//ləˈbɒrətri/


3. Vocabulary (「#1331. 語彙の英米差を整理するための術語」 ([2012-12-18-1]) を参照)

 ・ synonymic variables
AmEBrE
railroadrailway
engineerdriver
conductorguard
baggageluggage
trucklorry
hood (car)bonnet
trunk (car)boot
fender (car)bumper
gasolinepetrol
subwayunderground
counterclockwiseanticlockwise
thumbtackdrawing pin
flashlighttorch
elevatorlift
apartmentflat
mailpost
vacationholiday
garbage candustbin
barpub
druggistchemist
French frieschips
potato chipscrisps
cookiebiscuit
trailercaravan
round-trip ticketreturn ticket
one-way ticketsingle ticket

 ・ lexical classes of variables
AmEBrE
underwearpants
pantstrousers
vestwaistcoat
diapernappy
first floorground floor
second floorfirst floor
sidewalkpavement
pavementroad


4. Idioms

AmEBrE
a home away from homea home from home
leave well enough aloneleave well alone
sweep under the rugsweep under the carpet


5. Grammar

 ・ Prepositions
AmEBrE
on a streetin a street
fill out a formfill in a form
check out somethingchuck up on something
on the weekendat the weekend
of two mindsin two minds
to all tastesfor all tastes

 ・ Definite article
AmEBrE
in the hospitalin hospital
in the futurein future
go to the universitygo to university


 ・ Schmitt, Norbert, and Richard Marsden. Why Is English Like That? Ann Arbor, Mich.: U of Michigan P, 2006.

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2012-09-20 Thu

#1242. -ate 動詞の強勢移行 [frequency][lexical_diffusion][stress][suffix][-ate]

 [2012-09-17-1]の記事「#1239. Frequency Actuation Hypothesis」で,接尾辞 -ate をもつ動詞の強勢が移動してきているという言語変化に触れた.名前動後 (diatone と同様に現在も進行中の強勢移行であり,語彙拡散 (lexical_diffusion) の例としても注目に値する.
 この移行については Phillips が語彙拡散の観点から研究しているが,OED の "contemplate, v" にまとまった解説があるので,それを紹介しよう.Danielsson (271--72) でも,OED のこの箇所が触れられている.

In a few rare cases (Shakes., Hudibras) stressed 'contemplate in 16--7th c.; also by Kenrick 1773, Webster 1828, among writers on pronunciation. Byron, Shelley, and Tennyson have both modes, but the orthoepists generally have con'template down to third quarter of 19th c.; since that time 'contemplate has more and more prevailed, and con'template begins to have a flavour of age. This is the common tendency with all verbs in -ate. Of these, the antepenult stress is historical in all words in which the penult represents a short Latin syllable, as ac'celerate, 'animate, 'fascinate, 'machinate, 'militate, or one prosodically short or long, as in 'celebrate, 'consecrate, 'emigrate; regularly also when the penult has a vowel long in Latin, as 'alienate, 'aspirate, con'catenate, 'denudate, e'laborate, 'indurate, 'personate, 'ruinate (L. aliēno, aspīro, etc.). But where the penult has two or three consonants giving positional length, the stress has historically been on the penult, and its shift to the antepenult is recent or still in progress, as in acervate, adumbrate, alternate, compensate, concentrate, condensate, confiscate, conquassate, constellate, demonstrate, decussate, desiccate, enervate, exacerbate, exculpate, illustrate, inculcate, objurgate, etc., all familiar with penult stress to middle-aged men. The influence of the noun of action in -ation is a factor in the change; thus the analogy of ,conse'cration, 'consecrate, etc., suggests ,demon'stration, 'demonstrate. But there being no remonstration in use, re'monstrate, supported by re'monstrance, keeps the earlier stress.


 つまり,3音節以上の語においては,歴史的には penult の構成に応じて強勢が penult か antepenult に落ちた.具体的には,penult に子音群が現われる場合には,歴史的にはその音節に強勢が落ちた.ところが,近現代英語において,対応する名詞形 -ation の強勢パターンにもとづく類推が働くためか,該当する語の強勢がさらに一つ左へ,antepenult へと移行してきているというのである.
 Danielsson や OED には3音節以上の語についての言及しかないが,Phillips は2音節語についても調査した.興味深いことに,2音節語の -ate 動詞(ただし penult が閉音節のもの)では,正反対の方向の強勢移行が起こっているという.frustrate, dictate, prostrate, pulsate, stagnate, truncate などの語では,歴史的には penult に強勢が落ちたが,現代英語にかけて ultima に強勢が落ちる異形が現われてきている(最初の3語については定着した).そして,いずれの方向の強勢移行についても,Phillips は頻度の高いものから順に変化してきているという事実を突き止めた (226--28) .
 これは頻度の低いものから順に変化してきたと Phillips の主張する名前動後の例と,対立する結果である.頻度と語彙拡散の進行順序との問題に,新たな一石が投じられている.

 ・ Phillips, Betty S. "Word Frequency and Lexical Diffusion in English Stress Shifts." Germanic Linguistics. Ed. Richard Hogg and Linda van Bergen. Amsterdam: John Benjamins, 1998. 223--32.
 ・ Danielsson, Bror. Studies on the Accentuation of Polysyllabic Latin, Greek, and Romance Loan-Words in English. Stockholm: Almqvist & Wiksell, 1948.

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2012-09-17 Mon

#1239. Frequency Actuation Hypothesis [frequency][phonetics][language_change][lexical_diffusion][stress][diatone][-ate]

 語彙拡散 (lexical diffusion) として進行する音韻変化の道筋や順序が語の頻度と相関しているらしいことは,古くは19世紀末から指摘されてきた.実際に,Phillips (1984: 321) に挙げられているように,頻度の高い語から順に変化を遂げるという音韻変化は数々例証されてきた.一方で,頻度の低い語から順に変化を遂げる例も確認されており,頻度と語彙拡散の順序の関係については,いまだに疑問が多い.この問題について,Phillips は,南部アメリカ英語における glide deletion ,中英語の unrounding ,近代英語の名前動後(diatonic stress shift; diatone の記事を参照)という,頻度の低い順に進行するとされる3つの音韻変化を取り上げて,"Frequency Actuation Hypothesis" を提唱した.これは,"physiologically motivated sound changes affect the most frequent words first; other sound changes affect the least frequent words first" (1984: 336) というものである(前者は surface phonetic form に働きかける変化,後者は underlying phonetic form に働きかける変化を指す).
 しかし,Phillips は1998年の -ate で終わる動詞の強勢位置の移動に関する研究において,この生理的に動機づけられていない音韻変化が,予想されるように頻度の低い順には進まず,むしろ頻度の高い順に進んでいることを明らかにした.そこで,改訂版 Frequency Actuation Hypothesis を唱えた.

[F]or segmental changes, physiologically motivated sound changes affect the most frequent words first; other sound changes affect the least frequent words first. For suprasegmental changes, changes which require analysis (e.g., by part of speech or by morphemic element) affect the least frequent words first, whereas changes which eliminate or ignore grammatical information affect the most frequent words first. (1998: 231)


 つまり,強勢の移動のような超分節の音韻変化に関しては,話者による分析が入るか入らないかで,頻度と順序の関係が逆転するというわけである.なぜそうなるのかについて,Phillips は Bybee (117--19) の "lexical strength" という考え方を持ち出している.
 私は必ずしもこの議論に納得していない.また,Phillips の主張とは異なり,名前動後が頻度の高い順に進行したことを示すデータも独自に得ている.頻度と変化の順序についての研究は緒に就いたばかりであり,研究の余地は多分に残されている.

 ・ Phillips, Betty S. "Word Frequency and the Actuation of Sound Change." Language 60 (1984): 320--42.
 ・ Phillips, Betty S. "Word Frequency and Lexical Diffusion in English Stress Shifts." Germanic Linguistics. Ed. Richard Hogg and Linda van Bergen. Amsterdam: John Benjamins, 1998. 223--32.
 ・ Bybee, Joan L. Morphology: A Study of the Relation between Meaning and Form. Amsterdam: John Benjamins, 1985.

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2011-07-20 Wed

#814. 名前動後ならぬ形前動後 [stress][diatone][statistics][derivation][prefix][suffix][phonaesthesia][-ate]

 同綴りで品詞によって強勢位置の交替する語 (diatone) の典型例である「名前動後」については,[2009-11-01-1], [2009-11-02-1], [2011-07-07-1], [2011-07-08-1], [2011-07-10-1], [2011-07-11-1]の一連の記事で論及してきた.主に名詞と動詞の差異を強調してきたが,形容詞もこの議論に関わってくる([2011-07-07-1]の記事では関連する話題に言及した).強勢位置について,形容詞は原則として名詞と同じ振る舞いを示し,動詞と対置される.いわば「形前動後」である.
 形前動後の事実は,まず統計的に支持される.Bolinger (156--57) によれば,3万語の教育用語彙集からのサンプル調査によると,多音節語について,形容詞の91%が non-oxytonic (最終音節以外に強勢がある)だが,動詞の63%が oxytonic (最終音節に強勢がある)であるという.単音節語については,強勢の位置が前か後ろかを論じることはできないしその意味もないが,単純に動詞と形容詞の個数の比率を取ると動詞が60.7%を占める.単音節語の強勢は通常 oxytonic と解釈されるので,この比率は形容詞に比して動詞の oxytonic な傾向を支持する数値といえよう.
 形前動後という強勢位置の分布に関連して,Bolinger は両品詞の語形成上の差異に言及している.形容詞は接尾辞によって派生されるものが多いが (ex. -ant, -ent, -ean, -ial, -al, -ate, -ary, -ory, -ous, -ive, -able, -ible, -ic, -ical, -ish, -ful) ,動詞は接頭辞による派生が多い (ex. re-, un-, de-, dis-, mis-, pre-) .例外的にそれ自身に強勢の落ちる -ose のような形容詞接尾辞もあるが,例外的であることによってかえって際立ち,音感覚性 (phonaesthesia) に訴えかける 増大辞 ( augmentative ) としての機能を合わせもつことになっている(増大辞については[2009-08-30-1]の記事「投票と風船」も参照).bellicose, grandiose, jocose, otiose, verbose などの如くである.
 当然のことながら,強勢のない接尾辞により派生された多くの形容詞は必ず non-oxytonic となるし,強勢のない接頭辞により派生された多くの動詞は強勢が2音節目以降に置かれることになり oxytonic となる可能性も高い.この議論を発展させるには,各接辞の生産性や派生語の実例数を考慮する必要があるが,接辞による派生パターンの相違が形前動後の出現に貢献したということであれば大いに興味深い.また,名詞の派生も,形容詞の派生と同様に,接頭辞ではなく接尾辞を多用することを考えれば,名前動後の説明にも同じ議論が成り立つのではないだろうか.

 ・ Bolinger, Dwight L. "Pitch Accent and Sentence Rhythm." Forms of English: Accent, Morpheme, Order. Ed. Isamu Abe and Tetsuya Kanekiyo. Tokyo: Hakuou, 1965. 139--80.

Referrer (Inside): [2012-06-29-1]

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2011-07-07 Thu

#801. 名前動後の起源 (3) [stress][diatone][germanic][-ate]

 [2009-11-01-1], [2009-11-02-1]の記事で「名前動後」の起源に関連して,ゲルマン語としての背景を説明した.関連する話題は,[2011-04-15-1]の記事「英語の強勢パターンは中英語期に変質したか」でも扱った.
 英語の多くの多音節語(主としてラテン・フランス借用語)で強勢の分布が名前動後となるこの現象について,Bolinger は名詞(および形容詞)と動詞の文中での位置の差異という観点から論じている.以下に関連する箇所を引用する.

. . . stress patterns are apt to congeal in the way position in the sentence may predispose them, which means that nouns and adjectives will tend to be forestressed, verbs to be end-stressed, and ultimately, in many cases, to carry this stress with them regardless of position. (164)

English seems to be more averse to postponing the first of the two major accents than to anticipating the second. While nouns and adjectives are certainly free to occur in terminal positions, their somewhat greater frequency early in the sentence brings them under the influence of this more consistent pull to the left. The pull to the right at the end is weaker, except in emphatic utterances, but since verbs are less free to roam they are more apt to it. (164fn)


 この Bolinger の議論を補足しながら発展させると次のようになろうか.本来的に第1強勢と第2強勢をもつ多音節語は,デフォルトでは語頭に第1強勢が配される.これは,英語(というよりもゲルマン語)の強勢の癖を反映したものである (see [2009-10-26-1]) .特に名詞や形容詞がこの癖を強く反映するのは,文の比較的早い段階で現われる確率が高いからである.もちろん,名詞や形容詞は他の語類に比べれば文中での位置に制限の少ない語類であり,文の末尾にかけて現われることが少ないというわけではない.ただ,例えば動詞に比べれば文頭にかけて現われることが多いということである.
 一方,動詞は上述の癖に相対的に従いにくい.動詞の文中での位置は名詞や形容詞ほど自由ではなく,文末にかけて生起する確率が高い.英語の抑揚パターンでは文の最後にくる強勢音節が核となるので,文末に置かれやすい動詞の語末に配される第2強勢が弱化する確率は低い.名詞や形容詞に対して,第2強勢が保たれやすいのはこのためである.( associate, duplicate, estimate などの -ate をもつ語の多くは,名詞では最終音節の母音が曖昧母音となるが,動詞では第2強勢が保たれていることに注意.)
 文中のどの位置に相対的に現われやすいかという点での名詞・形容詞と動詞の差異が,それぞれの品詞における第2強勢の振る舞いの差異につながっているという視点は興味深い.ここまでの議論を受け入れるとすれば,名前動後の分布にたどりつくまであと一歩である.名詞は前寄りの強勢で固まったが,動詞はまだ語末に第2強勢が残っている.これが第1強勢に格上げされさえすれば「動後」となる.では,この格上げの動機づけは何だったのだろうか.Bolinger はそこまでは述べていない.

 ・ Bolinger, Dwight L. "Pitch Accent and Sentence Rhythm." Forms of English: Accent, Morpheme, Order. Ed. Isamu Abe and Tetsuya Kanekiyo. Tokyo: Hakuou, 1965. 139--80.

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2010-07-09 Fri

#438. 形容詞の比較級から動詞への転換 [conversion][suppletion][comparison][-ate]

 英語の品詞転換 ( see [2009-11-03-1] ) には,様々な方向があり得る.動詞→名詞,形容詞→名詞,名詞→動詞,形容詞→動詞,名詞→形容詞の例が比較的多い.形容詞→動詞の例では,「?にする」あるいは「?になる」の意へと転換した calm, dirty, humble; dry, empty, narrow などが挙げられる.広い意味では,ラテン語動詞の過去分詞形 -atus に由来する -ate をもつ多くの借用語動詞も,形容詞→動詞の転換の例と考えることができるだろう ( ex. assassinate, fascinate, separate ) .
 先日,授業で英文テキストを読解中に,学生が形容詞の比較級として用いられている lower を動詞として読み違えるという状況が生じた.そこで気づいたのだが,比較級の形態から動詞へ転換するという例は非常に珍しいのではないか.「低くする」という動詞へ転換させるのであれば,比較級ではなく原級のままの low ではいけないのだろうか.実のところ,OED によると動詞のとしての low は現在では廃用だが,1200年頃に現れ,18世紀まで使われていた.一方で,動詞としての lower は「下ろす」の意味で17世紀に初めて現れている.
 形容詞の比較級から動詞に転換した他の例を探そうとしたら,better を思いついた.こちらは古英語から使われている.worse も古英語から動詞として使われていたが,19世紀に廃用となっている(動詞派生語尾がついているので転換ではないが,13世紀に初出の worsen も比較されよう).どうも補充法 ( suppletion ) による「不規則比較級」が怪しいぞと目をつけて OED をさらに引いてゆくと,less も現在は廃用だが13?17世紀まで動詞として用いられていたとわかったし,more も14?15世紀に使用例があった.
 補充法による比較級は,対応する原級との形態的な結びつきが弱いので,いずれも別個の語として語彙のなかに登録されている,つまり語彙化されていると考えられる.例えば bettergood からの派生という形態過程によって生じたものではなく,good と独立した語彙として登録されているからこそ,動詞への転換が起こりうるのではないか.逆にいえば,補充法によらない一般の形容詞の -er をもつ比較級形態は,原級形態と強く結びついているので,転換を起こしにくいということなのではないか.だが,この仮説を採ると lower がその例外となってしまう.
 しかし,考えてみると形容詞 lower は単なる low の比較級ではないことに気づいた.lower は「より低い」という( than が後続できる)文字通りの意味の他に「(分類上)下位の」「劣った」という比喩的に発展した意味をもっている.後者の意味での初出は1590年で,その頃から lowerlow とは別個の語として語彙化したと考えることができるのではないか.lowlower は形態こそ -er の有無により密接に結びついているが,意味の上では少し「距離が開いた」と考えられる.これは,転換による動詞 lower が17世紀に現れ始めたことと時間的にも符合するように思える.

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