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adverb - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2021-10-23 21:31

2021-08-17 Tue

#4495. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第6回「なぜ形容詞の比較級には -er と more があるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][comparison][adjective][adverb][suffix][periphrasis][link]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の9月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」も第6回となりましたが,今回の話題は「なぜ形容詞の比較級には -er と more があるの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2021年9月号



 これは素朴な疑問の定番といってよい話題ですね.短い形容詞なら -er,長い形容詞なら more というように覚えている方が多いと思いますが,何をもって短い,長いというのかが問題です.原則として1音節語であれば -er,3音節語であれば more でよいとして,2音節語はどうなのか,と聞かれるとなかなか難しいですね.同じ2音節語でも early, happy は -er ですが,afraid, famousmore を取ります.今回の連載記事では,この辺りの複雑な事情も含めて,なるべく易しく歴史的に謎解きしてみました.どうぞご一読を.
 定番の話題ということで,本ブログでも様々な形で取り上げてきました.連載記事よりも専門的な内容も含まれますが,こちらもどうぞ.

 ・ 「#4234. なぜ比較級には -er をつけるものと more をつけるものとがあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-11-29-1])
 ・ 「#3617. -er/-estmore/most か? --- 比較級・最上級の作り方」 ([2019-03-23-1])
 ・ 「#4442. 2音節の形容詞の比較級は -ermore か」 ([2021-06-25-1])
 ・ 「#3032. 屈折比較と句比較の競合の略史」 ([2017-08-15-1])
 ・ 「#2346. more, most を用いた句比較の発達」 ([2015-09-29-1])
 ・ 「#403. 流れに逆らっている比較級形成の歴史」 ([2010-06-04-1])
 ・ 「#2347. 句比較の発達におけるフランス語,ラテン語の影響について」 ([2015-09-30-1])
 ・ 「#3349. 後期近代英語期における形容詞比較の屈折形 vs 迂言形の決定要因」 ([2018-06-28-1])
 ・ 「#3619. Lowth がダメ出しした2重比較級と過剰最上級」 ([2019-03-25-1])
 ・ 「#3618. Johnson による比較級・最上級の作り方の規則」 ([2019-03-24-1])
 ・ 「#3615. 初期近代英語の2重比較級・最上級は大言壮語にすぎない?」 ([2019-03-21-1])
 ・ 「#456. 比較の -er, -est は屈折か否か」 ([2010-07-27-1])

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2021-06-25 Fri

#4442. 2音節の形容詞の比較級は -ermore [comparison][sobokunagimon][adjective][adverb][suffix][periphrasis][-ly]

 形容詞・副詞の比較 (comparison) の話題は,本ブログでも様々に扱ってきた.現代英語でも明確に決着のついていない,比較級が -er (屈折比較)か more (句比較)かという問題の歴史的背景については,「#2346. more, most を用いた句比較の発達」 ([2015-09-29-1]),「#2347. 句比較の発達におけるフランス語,ラテン語の影響について」 ([2015-09-30-1]),「#3032. 屈折比較と句比較の競合の略史」 ([2017-08-15-1]),「#3617. -er/-estmore/most か? --- 比較級・最上級の作り方」 ([2019-03-23-1]),「#3703.『英語教育』の連載第4回「なぜ比較級の作り方に -ermore の2種類があるのか」」 ([2019-06-17-1]),「#4234. なぜ比較級には -er をつけるものと more をつけるものとがあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-11-29-1]) などで取り上げてきた.
 短い語には -er 語尾をつけ,長い語には more を前置きするというのが原則である.しかし,短くもあり長くもある2音節語については,揺れが激しくてきれいに定式化できない.実際,辞書や文法書をいろいろ繰ってみると,単語ごとにどちらの比較級の形式を取るのか普通なのかについて記述が微妙に異なるのである.今回は,ひとまず LGSWE の §7.7.2 を参照して,2音節の形容詞について考えてみたい.
 2音節の形容詞がいずれの比較級の形式を採用するかは,その音韻形態的構成に大きく依存することが知られている.-y で終わるものについては,-er が普通のようだ.例を挙げると,

angry, bloody, busy, crazy, dirty, easy, empty, funny, gloomy, happy, healthy, heavy, hungry, lengthy, lucky, nasty, pretty, ready, sexy, silly, tidy, tiny


 -y で終わる形容詞ということでいえば,何らかの接頭辞がついて3音節になっても,比較級に -er をとる傾向がある (ex. unhappier) .英語史の観点からは,250年ほど前には状況が異なっていたらしいことが注目に値する (cf. 「#3618. Johnson による比較級・最上級の作り方の規則」 ([2019-03-24-1])) .
 一方 -ly で終わる形容詞は揺れが激しいようで,例えば early の比較級は earlier が普通だが,likely については more likely のほうが普通である.ほかに揺れを示す例としては,

costly, deadly, friendly, lively, lonely, lovely, lowly, ugly


などが挙げられる.同じく揺れを示し得るものとして,以下のように弱音節で終わる2音節の形容詞も挙げておこう.

mellow, narrow, shallow, yellow; bitter, clever, slender, tender; able, cruel, feeble, gentle, humble, little, noble, simple, subtle; sever, sincere; secure, obscure


 両方の形式で揺れを示しているということは,一方から他方へと乗り換えが進んでいるということ,つまり変化の最中であることを(確証するわけではないが,少なくとも)示唆する.両形式の競合・併存はかれこれ1000年ほど続いているわけだが,いまだに結論が見えない.

 ・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.

Referrer (Inside): [2021-08-17-1]

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2021-06-19 Sat

#4436. 形容詞のプロトタイプ [comparison][adjective][adverb][category][prototype][pos][comparison]

 品詞 (part of speech = pos) というものは,最もよく知られている文法範疇 (category) の1つである.たいていの言語学用語なり英文法用語なりは,文法範疇につけられたラベルである.主語,時制,数,格,比較,(不)可算,否定などの用語が出てきたら,文法範疇について語っているのだと考えてよい.
 英語の形容詞(および副詞)という品詞について考える場合,比較 (comparison) という文法範疇が話題の1つとなる.日本語などでは「比較」を文法範疇として特別扱いする慣習はなく,せいぜい格助詞「より」の用法の1つとして論じられる程度だが,印欧語族においては言語体系に深く埋め込まれた文法範疇として,特別視されることになっている.私はいまだにこの感覚がつかめていないのだが,英語学において比較という文法範疇が通時的にも共時的にも重要視されてきたことは確かである.
 比較はまずもって形容詞(および副詞)の文法範疇ということだが,ある語が形容詞であるからといって,必ずしもこの範疇が関与するわけではない.本当に形容詞らしい形容詞は比較の範疇に適合するが,さほど形容詞らしくない形容詞は比較とは相容れない.逆に見れば,ある形容詞を取り上げたとき,比較の範疇に適合するかどうかで,形容詞らしい形容詞か,そうでもない形容詞かが判明する.これは,とりもなおさず形容詞に関するプロトタイプ (prototype) の問題である.
 Crystal (92) が,形容詞のプロトタイプについて分かりやすい説明を与えてくれている.

   The movement from a central core of stable grammatical behaviour to a more irregular periphery has been called gradience. Adjectives display this phenomenon very clearly. Five main criteria are usually used to identify the central class of English adjectives:

(A) they occur after forms of to be, e.g. he's sad;
(B) they occur after articles and before nouns, e.g. the big car;
(C) they occur after very, e.g. very nice;
(D) they occur in the comparative or superlative form e.g. sadder/saddest, more/most impressive; and
(E) they occur before -ly to form adverbs, e.g. quickly.

We can now use these criteria to test how much like an adjective a word is. In the matrix below, candidate words are listed on the left, and the five criteria are along the top. If a word meets a criterion, it is given a +; sad, for example, is clearly an adjective (he's sad, the sad girl, very sad, sadder/saddest, sadly). If a word fails the criterion, it is given a - (as in the case of want, which is nothing like an adjective: *he's want, *the want girl, *very want, *wanter/wantest, *wantly).

 ABCDE
happy+++++
old++++-
top+++--
two++---
asleep+----
want-----


The pattern in the diagram is of course wholly artificial because it depends on the way in which the criteria are placed in sequence; but it does help to show the gradual nature of the changes as one moves away from the central class, represented by happy. Some adjectives, it seems, are more adjective-like than others.


 形容詞という文法範疇について,特にその比較という文法範疇については,以下の記事を参照.

 ・ 「#3533. 名詞 -- 形容詞 -- 動詞の連続性と範疇化」 ([2018-12-29-1])
 ・ 「#3835. 形容詞などの「比較」や「級」という範疇について」 ([2019-10-27-1])
 ・ 「#3843. なぜ形容詞・副詞の「原級」が "positive degree" と呼ばれるのか?」 ([2019-11-04-1])
 ・ 「#3844. 比較級の4用法」 ([2019-11-05-1])

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. Cambridge: CUP, 1995. 2nd ed. 2003. 3rd ed. 2019.

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2021-05-01 Sat

#4387. なぜ名詞(句)が副詞的に用いられることがあるのですか? [sobokunagimon][preposition][adverbial_accusative][adverbial_genitive][adverb][case][dative][japanese][khelf_hel_intro_2021]

 次の各文の赤字の部分をみてください.いずれもその形態だけみれば名詞(句)ですが,文中での働き(統語)をみれば副詞として機能しています.前置詞 (preposition) がついていれば分かりやすい気もしますが,ついていません.形式は名詞(句)なのに機能は副詞というのは何か食い違っているように思えますが,このような例は英語では日常茶飯で枚挙にいとまがありません.

 ・ I got up at five this morning.
 ・ Every day they run ten kilometers.
 ・ He repeated the phrase twice.
 ・ She lives just three doors from a supermarket.
 ・ We cook French style.
 ・ You are all twenty years old.
 ・ They travelled first-class.

 上記のような副詞的に用いられる名詞句は,歴史的には副詞的対格 (adverbial_accusative),副詞的与格 (adverbial dative),副詞的属格 (adverbial_genitive) などと呼ばれます.本ブログでも歴史的な観点から様々に取り上げてきた話題です.
 昨日大学院生により公表された「英語史導入企画2021」のためのコンテンツ「先生、ここに前置詞いらないんですか?」は,この問題に英語史の観点から迫った,読みやすい導入的コンテンツです.古英語の事例を提示しながら,最後は「名詞が副詞の働きをするというのは,格変化が豊かであった古英語時代の用法が現代にかすかに生き残ったものなのである」と締めくくっています.
 古英語期に名詞(句)が格変化して副詞的に用いられていたものが,中英語期以降に格変化を失った後も化石的に生き残ってきたという説明は,およそその通りだと考えています.一方で,それだけではないとも思っています.とりわけ時間,空間,様態に関わる副詞が,名詞(句)から発達するということは,歴史的な格変化を念頭におかずとも,通言語的にありふれているように思われるからです.日本語の,「昨日」「今日」「明日」「先週」「来年」はもとより「短時間」「半世紀」「未来永劫」や「突然」「畢竟」「誠心誠意」も形態的には典型的な名詞句のようにみえますが,機能的には副詞で用いられることも多いでしょう.
 上記コンテンツで例示されているように,古英語には名詞が対格・与格・属格に屈折して副詞として用いられている例は多々あります.しかし,例えば hwīlum ("sometimes, once"; > PDE whilom) などは,語源・形態的には語尾の -um は複数与格を表わすとはいえ,すでに古英語の時点で語彙化していると考えられます.名詞 hwīl (> PDE while) が格屈折したものであるという意識は,古英語話者にすら稀薄だったのではないかと想像されるのです.屈折の衰退を待たずして,古英語期にも名詞由来の hwīlum がすでに副詞として認識されていた(もし仮に認識されることがあったとして)のではないかと思われます.
 中英語期以降の格変化の衰退が,現代につながる「副詞的名詞(句)」の拡大に貢献したことは認めつつも,歴史的経緯とは無関係に,時間,空間,様態などを表わす名詞(句)が副詞化する傾向は一般的にあるのではないでしょうか.

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2021-01-17 Sun

#4283. many years ago などの過去の時間表現に用いられる ago とは何ですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hellog_entry_set][adjective][adverb][participle][reanalysis][be][perfect]

 標題は皆さんの考えたこともない疑問かもしれません.ago とは「〜前に」を表わす過去の時間表現に用いる副詞として当たり前のようにマスターしていると思いますが,いったいなぜその意味が出るのかと訊かれても,なかなか答えられないのではないでしょうか.そもそも ago の語源は何なのでしょうか.音声解説をお聴きください.



 いかがでしたでしょうか.ago は,動詞 go に意味の薄い接頭辞 a- が付いただけの,きわめて簡単な単語なのです.歴史的には "XXX is/are agone." 「XXXの期間が過ぎ去った」が原型でした.be 動詞+過去分詞形 agone の形で現在完了を表わしていたのですね.やがて agone は語末子音を失い ago の形態に縮小していきます.その後,文の一部として副詞的に機能させるめに,be 動詞部分が省略されました.XXX (being) ago のような分詞構文として理解してもけっこうです.
 この成り立ちを考えると,I began to learn English many years ago. は,言ってみれば I began to learn English --- many years (being) gone (by now). といった表現の仕方だということです.この話題について,もう少し詳しく知りたい方は「#3643. many years agoago とは何か?」 ([2019-04-18-1]) の記事をどうぞ.

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2021-01-16 Sat

#4282. -ly が2つ続く副詞 -lily の事例を ICAMET で検索 [corpus][icamet][adverb][suffix][-ly]

 標記の -lily 副詞の話題について,最近の記事「#4268. -ly が2つ続く副詞 -lily は稀である」 ([2021-01-02-1]),「#4270. 後期近代英語には -ly が2つ続く副詞 -lily がもっとあった」 ([2021-01-04-1]),「#4271. -ly が2つ続く副詞 -lily の事例を Helsinki Corpus で検索」 ([2021-01-05-1]) で取り上げてきた.今回は,昨日の記事「#4281. ICAMET --- 中英語散文コーパス」 ([2021-01-15-1]) で紹介した ICAMET から例を集めてみる.
 Perl 対応の正規表現として "\b\S+(?<!s)l[iy]l[yi](ch?)?(e(r|st)?)?\b" を検索式として与え,結果を取り出してみると111の例が挙がってきた.異綴字としてまとめると,以下の41種類である.

folily, folyly, holily, holyly, holyliche, seliliche, holili, hallyly, semlyly, lawlyly, iolily, hoolily, holylye, holylyche, fullyly, worldlyly, worldlily, wilyly, willyly, wilili, vnwortlily, vnreulili, semelily, selyly, selily, selili, sclyly, reulily, reulili, priuelyliche, li3tlyliche, iolyly, hoolyly, holilie, holiliche, hallily, folyliche, folyli, foliliche, folilich, folili


 語彙項目としてまとめると,folily (40), fullyly (2), holily (41), iolily (3), lawlyly (2), li3tlyliche (1), priuelyliche (1), reulily (2), sclyly (1), seliliche (8), semlyly (3), vnreulili (1), vnwortlily (1), worldlily (2), wilili (3) となる.これまで集めてきたよりも多くの種類が出てきてくれたので,まずは今回の ICAMET の使用は成功としておきたい.
 コンコーダンスラインを眺めると,近くに別の -ly 副詞(-lily ではないもの)が現われるケースが散見された.散文テキストということもあり脚韻というほどではないにせよ,一種の統語的な語呂といった要因が作用している可能性がある.いくつか例を挙げておこう(括弧内は ICAMET のファイル名).

 ・ And with þis wurd þis knyght was confusid, & holilie and stronglie he tuke þe ordur and vttirly forsuke all þis werld. (Alpha2)
 ・ lyghtly and folyly to curse another. (Caxtdoc)
 ・ how after that they leued chastely, clenly, and holyly in thaire manere (Caxtkni)
 ・ pacyently and holyly without grudchyng (Caxtpro1)
 ・ Spoushod is a stat þet me ssel wel klenliche / and wel holylyche loki uor manie skeles (Danayen)
 ・ firste for to lyue holili, and after to preche trueli (Lollard)
 ・ Alle þat wolen lyue piteousli or holili in Crist schul suffre persecucyon. (Lollard)
 ・ Iff any man holily lyue & ri3twysly, Alsso warst synnars despise he nott. (Misfire)
 ・ whanne þei ben vnmesurably and vnreulili a3ens doom of resoun, (Pecdon1)
 ・ frely forgife vnto þe þinge þat þou has anese hym mysdone, folily & vnkyndely. (Rollebok)
 ・ þis wondyrful oned may nou3t be fulfilled parfitely, contynuelly, holyly in þis lyfe, (Rollhor1)
 ・ þat þay say to þame na wordes of myssawe ne vnhoneste ne of displesance vnauyssedly, / bot serue þame mekely and gladly and lawlyly; (Rollhor1)
 ・ and ther-for the preste muste go to that body holily and deuoutly with grete reuerence and drede, as mych as he may, (Specchri)
 ・ not to lyue worldlyly ne lustly ne proudely, but to lyue in bisy trauel to kepe þer sheep & wynne hem heuene; (Wyclif2)

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2021-01-05 Tue

#4271. -ly が2つ続く副詞 -lily の事例を Helsinki Corpus で検索 [corpus][hc][adverb][suffix][-ly][haplology]

 「#4268. -ly が2つ続く副詞 -lily は稀である」 ([2021-01-02-1]),「#4270. 後期近代英語には -ly が2つ続く副詞 -lily がもっとあった」 ([2021-01-04-1]) で取り上げてきた話題の続き.今回は Helsinki Corpus を利用して,通時的に -lily 副詞の用例を集めた.
 問題の接尾辞は,古い英語では現代的な -ly のみならず,-li, -lic, -lich, -liche など様々な綴字で現われていた(cf. 「#1773. ich, everich, -lich から語尾の ch が消えた時期」 ([2014-03-05-1]),「#1810. 変異のエントロピー」 ([2014-04-11-1]),「#40. 接尾辞 -ly は副詞語尾か?」 ([2009-06-07-1])).そこで,歴史的な異綴字を広くカバーする Perl 対応の正規表現として "\B(?<!s)l[iy]l[yi](ch?)?(e(r|st)?)?\b" を設定した.これで Helsinki Corpus に検索をかけたところ,古英語からは該当例が1つも挙がってこなかったが,中英語以降からいくつかの用例が得られた.

[ M1 (1150--1250) ]

 ・ CMSAWLES(14658): ter hire; turne+d <P 178> ham treowliliche to wit hare lauerd. & to +teos fowr sus

[ M2 (1250--1350) ]

 ・ CMAYENBI(7376): te+t +tet we loki ine oure herte holylyche +tane holy gost +tet is oure wytnesse.

[ M3 (1350--1420) ]

 ・ CMBOETH(11516): , "see now how thou mayst proeven holily and withoute corrupcioun this that I ha
 ・ CMBOETH(49069): is, or elles thei scholden fleten folyly. "For whiche it es that alle thingis se
 ・ CMCLOUD(50919): peke +tus childly, & # as it were folily and lackyng kyndly discrecion; for I do
 ・ CMCTPROS(21119): surably, <P 234.C1> for they that folily wasten and despenden the goodes that th
 ・ CMCTVERS(35881): at moste I thynke. I have my body folily despended; Blessed be God that it shal
 ・ CMWYCSER(2866): eth herynne +tat God may not iuge folily ony man; and so, as oure wille ha+t ned
 ・ CMWYCSER(45437): kyng, he wolde not +tus reigne worldlily, ne # hym was owed no sych rewme, si+t

[ M4 (1420--1500) ]

 ・ CMGAYTRY(5492): +tat Haly Kirke, oure modire, es hallyly ane thorow-owte +te werlde, that es, #
 ・ CMGAYTRY(8961): +te thre +tat ere firste, awe vs hallyly to halde anence oure Godd, and +te Seue
 ・ CMROLLPS(48489): . bot be ware that +ge deme # not folily him that is goed, wenand that he be ill
 ・ CMROLLTR(3701): erue +tam mekely, and gladly and lawlyly, +tat +tay may wyn +tat Godde hyghte to

[ E1 (1500--1569) ]

 ・ CEFICT1A(24697): that some curatys that loke full holyly be but desemblers & ypocrytis. <S SAMPL

[ E2 (1570--1639) ]

 ・ CEBOETH2(7618): Looke how proonest thou that most holyly & without spot, that we say God is the

[ E3 (1640--1710) ]

   用例なし

 以上のように,Helsinki Corpus で確認する限り,歴史的にも -lily 副詞は低頻度だったようにみえるが,この段階で一般的なことを結論づけるのは控えておきたい.各時代に注目したもっと大規模なコーパスを利用し,頻度をとった上で結論づける必要があるだろう.
 これまで数回にわたって「-ly が2つ続く副詞 -lily」問題について考えてきたが,語源・語形成の観点から1つ留意しておくべき点がある.今回あるいはこれまでの記事で例示してきた副詞のうち follily, holily, jollily, melancholily, oilily, sillily 等については,外側の -ly を取り除いた後に基体形容詞の末尾に残る -ly は,実は形容詞を作る接尾辞 -ly そのものではなく,語幹の一部だったり,あるいはそれに別の接尾辞 -y が付随したものだったりする.このような語源的組成も -lily 副詞の許容可能性に影響してくるものと疑われるが,どうだろうか.今後も考え続けていきたい.

Referrer (Inside): [2021-01-16-1]

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2021-01-04 Mon

#4270. 後期近代英語には -ly が2つ続く副詞 -lily がもっとあった [corpus][clmet][lmode][adverb][suffix][-ly][haplology]

 「#4268. -ly が2つ続く副詞 -lily は稀である」 ([2021-01-02-1]) の記事で,接尾辞 -ly が2つついて -lily の形態を示す副詞が,現代英語においては稀であることを確認した.調音上の都合による haplology (重音脱落)の効果とみてよいだろう.
 しかし,古い英語においても同じ「調音上の都合」が効いていたかどうかは別途調べなければならない.というのは,中英語テキストを読んでいると,-lily のような副詞に出会うことがままあるからだ.歴史の過程で haplology を経た形態が一般的になってきたのではないかと,私は疑っている.
 まずは,現代の直近の時代である後期近代英語について調べてみたい.同時期のコーパス CLMET3.0 に登場してもらおう.このコーパスに対して,(いろいろ試行錯誤した挙げ句にたどりついた)"\B(?<!s)l[iy]l[yi](ch?)?(e(r|st)?)?\b" という Perl 対応の正規表現にて検索をかけてみた.その結果を,3つの時期ごとに整理したのが以下である.

 ・ 第1期(1710--1780年): surlily (11 times), livelily (3), sillily (2), immortalily (1), jollily (1) --- total 18 examples
 ・ 第2期(1780--1850年): surlily (13), holily (3), jollily (2), sillily (2), lovelily (1) --- total 21 examples
 ・ 第3期(1850--1920年): sillily (2), surlily (2), jollily (1), melancholily (1), lovelily (1), oilily (1), statelily (1) --- total 9 examples

 前回の記事 ([2021-01-02-1]) で示した現代英語の BNCweb から取り出した事例と比べてみると分かるように,後期近代英語期にも -lily として現われる副詞の種類には緩い傾向がありそうだ.jollily, sillily, surlily などは低頻度ながらも,どの時期にも現われている.
 約1億語からなる BNCweb から取り出せたのは実質的に15例,約3,400万語からなる CLMET から取り出せたのは48例.この単純な調査と比較だけで一般的に結論づけることはできないが,後期近代英語期では現代英語期よりも -lily 副詞が現われていた(許容されていた?)ようにみえる.

Referrer (Inside): [2021-01-16-1] [2021-01-05-1]

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2021-01-02 Sat

#4268. -ly が2つ続く副詞 -lily は稀である [bnc][adverb][suffix][adjective][productivity][-ly][haplology]

  接尾辞 -ly の周辺については -ly の多くの記事で扱ってきた.歴史的にみても話題が豊富な接尾辞で,「#1032. -e の衰退と -ly の発達」 ([2012-02-23-1]) や「#1189. 初期近代英語における -ly 副詞の規則化の背景」 ([2012-07-29-1]) などで,そのおもしろさを紹介してきた.
 「#40. 接尾辞 -ly は副詞語尾か?」 ([2009-06-07-1]) で解説してきたように,現在では生産的な副詞語尾と考えられている接尾辞 -ly は,もともとは形容詞を作る接尾辞だった.その証拠に friendly, scholarlywomanly, daily, weekly, yearly などは主に形容詞として用いられる.しかし,これらの -ly 形容詞から対応する副詞を作るにはどうすればよいかと問われたら,答えられるだろうか.副詞語尾としての -ly をさらに加えて,friendlily などとするのだろうか.
 きわめて生産的な副詞を作る接尾辞 -ly のことである,理屈上は確かに friendlily 等の形はあり得るし,事実,辞書に登録されているものもある.しかし,実際上は滅多にお目にかからない稀な語形である.形容詞と同形の friendly で代用したり,in a friendly manner などと迂言的に表現するのが普通だ./-lɪli/ と類似音が続くと調音的に語呂が悪い (cacophony) のが理由と思われる.結果として,haplology (重音脱落)が生じ,1つの -ly にまとめられてしまうのだろう(cf. 「#2362. haplology」 ([2015-10-15-1])).
 -lily が稀であることは現代英語コーパスでも簡単に確認できる.例えば,BNCweb で "*l[i,y]ly_{ADV}" として単純検索してみると,106件が挙がってくる.各語形と頻度を列挙すると,slyly (90), jollily (4), sillily (4), surlily (2), beastlily (1), ghostlily (1), oilily (1), possiblily (1), seemlily (1), uglily (1) となる.最も頻度の高い slily の基体となる形容詞は sly /slaɪ/ であり,その ly はあくまで語幹の一部にすぎないため,今回の関心の対象から外してよい.2位タイの jollily, sillily についても,基体の形容詞 jolly, silly に含まれる -ly は,共時的にはおそらく接尾辞と感じられていないのではないか(語源的にいえば silly の -ly は確かに目下注目している接尾辞に由来するのだが).possiblily については,文脈を確認すると名詞 possibility のミススペリングであることが分かり,これも考慮から外してよい.結果として,-lily 副詞はきわめて稀であることがわかるだろう.

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2020-12-12 Sat

#4247. quite の「完全に」から「そこそこ」への意味変化 [semantic_change][intensifier][adverb][semantics]

 quite が意味論的に厄介な副詞であることについて,「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]),「#4235. quite a few は,下げて和らげおきながら最後に皮肉で逆転?」 ([2020-11-30-1]),「#4236. intensifier の分類」 ([2020-12-01-1]) で取り上げてきた.ある場合には「完全に」 (fully, absolutely) の意味で,別の場合には「そこそこ」 (fairly, rather) の意味で用いられるからだ.強意語の類型でいえば,Maximizer としても Compromizer としても用いられることになり,混乱は必至である.
 本来 quite は Maximizer として「完全に」のみを意味していたが,19世紀に Compromizer としての「そこそこ」の語義が発達した.OED で quite, adv., adj., and int. を引いてみると,大区分の第III項に後者が取り上げられており,初出は1805年となっている.
 Room の辞典に,この意味変化とその機微について次のような解説があったので,引用する.

quite (fully, absolutely; fairly, rather)
This word is notoriously tricky for foreign learners of English, who find it difficult to decide which sense to use, or which is meant. 'I was quite alone' means that I was absolutely alone, but 'I am quite tired' means that I am fairly tired, not very. And if she is 'quite ill', is she very ill or only slightly indisposed? The original meaning of 'quite' in English was the 'absolutely' one, which dates from the fourteenth century. As John Skelton wrote in his charming poem Phyllyp Sparowe (1529):

   Comfort had he none
   For she was quyte gone.

And as Robert K. Douglas wrote in his Non-Christian Religious Systems (1879): 'A man should be quite certain what he knows and what he does not know'. Quite. Yet it was in the nineteenth century that the now common sense of 'fairly' for 'quite' arose. It developed out of a special usage of the word, from the eighteenth century, that meant 'actually', 'really', implying that what the writer or speaker said was really so. For example, Fielding, in Tom Jones (1749), wrote that a certain widow was 'quite charmed with her new lodger', meaning that she really was charmed (not simply satisfied), and in one of his essays (1848), the astronomer Sir John Herschel wrote that: 'A ship sailing northwards passes quite suddenly from cold into hot water', meaning that the change really was sudden, not gradual, as one might expect. So when Thoreau, in his narrative account Walden (1854), wrote: 'Perhaps I have owed to this employment and to hunting, when quite young, my closest acquaintance with Nature', which did he mean, 'surprisingly young' (as in the earlier sense) or 'fairly young' (as in the new sense)? It is not always so easy! What has actually happened is that the earlier use of 'quite' (meaning 'really') has come to be associated with certain adjectives, such as 'different', 'separate', 'right', 'wrong', 'sure' and so on, while with other, less 'definite' adjectives the modern sense is the commoner. But it is still quite difficult to determine on occasions, and one needs to be quite certain which of the two senses is meant.


 先日から問題になっている quite a few も19世紀前半の初出だった.quite の上記の意味変化と関係しているのだろうか,いないのだろうか.

 ・ Room, Adrian, ed. NTC's Dictionary of Changes in Meanings. Lincolnwood: NTC, 1991.

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2020-12-05 Sat

#4240. oddly enough, interestingly enough などの表現における enough (3) [adverb]

 連日の記事 ([2020-12-03-1], [2020-12-04-1]) で扱っている話題だが,この表現に関する解説が Quirk et al. にあった.その §8.127 で,副詞が enough で修飾される件の表現を,価値判断を表わす "disjuncts" の一種として位置づけている.以下のすべてが enough により後置修飾され得るわけではないが,価値判断の "disjuncts" の副詞として一覧しておこう.

 ・ 驚き・奇妙タイプ(しばしば enough を伴う): amazingly, astonishingly, curiously, funnily, incredibly, ironically, oddly, remarkably, strangely, suspiciously, unexpectedly
 ・ 適切・予期タイプ: appropriately, inevitably, naturally, not unnaturally, predictably, understandably
 ・ 満足・不満タイプ: annoyingly, delightfully, disappointingly, disturbingly, pleasingly, refreshingly, regrettably
 ・ 幸運・不運タイプ: fortunately, unfortunately, happily, unhappily, luckily, unluckily, sadly, tragically
 ・ その他: amusingly, conveniently, hopefully, mercifully, preferably, significantly, thankfully

 驚き・奇妙タイプが enough を取る典型的なタイプということになるが,このタイプには bizarrely, eerily などの類義語も含めることができるだろう.
 また Quirk et al. (§8.131) の注では enough の意味が稀薄であることが言及されている.

Enough as a modifier of disjuncts does not so much intensify as draw attention to the meaning of the item. Thus, oddly enough is paraphrasable by 'odd though it may seem'.


 先の記事でも示唆したように,この enough にはそれ自体での意味論的な意味はほとんどないといってよく,あくまで前置された副詞が文修飾として用いられていることを補助的に示す統語意味論的な役割を担っているとみておくのが妥当だろう.

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

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2020-12-04 Fri

#4239. oddly enough, interestingly enough などの表現における enough (2) [clmet][corpus][adverb][eurhythmy]

 昨日の記事 ([2020-12-03-1]) に引き続き,文副詞となる oddly enough などの表現について.OED によると1704年に whimsically enough として初出したことが確認されるので,およそ後期近代英語期にかけて生まれ,育まれた表現である可能性が高い.とすれば,まず当たるべきコーパスは CLMET3.0 である.約3,400万語からなる,1710--1920年のイギリス英語のバランスコーパスだ.第1期 (1710--1780),第2期 (1780--1850),第3期 (1850--1929) と3期に分けて,関連する例を収集してみた.コンコーダンスラインはこちらからどうぞ(ただし,今回注目している用法ではなく「十分に〜に」を意味する通常の用法の例も多く混じっているので精査する必要がある).
 コンコーダンスラインをざっと眺めて気づくことは,18世紀の大半を含む第1期から,そこそこの数の例が挙がってくることだ.enough に前置される副詞として generously, gracefully, humorously などが散見される.いくつかランダムに例を示そう.

 ・ Generously enough, indeed, were I to be his; and had given him to believe that I would.--But that I have not done.
 ・ gracefully enough, I cannot but say; an advantage which travelled gentlemen have over other people.
 ・ These my father, humorously enough, called his beds of justice;
 ・ Footnote 82: Philelphus, absurdly enough, derives this Greek or Oriental jealousy from the manners of ancient Rome.
 ・ This was hastened by a temporary coalition between Fox and Pitt, which was occasioned, naturally enough, by the ill-treatment they had both received from the Duke of Newcastle.

 第2期,第3期からも続々と例が挙がってくるが,現代的な oddly, strangely, curiously といった副詞との共起が目立ってくる.

 ・ Oddly enough, it happened. Mine honest friend Hector came in before dinner to ask a copy of my seal of Arms, with a sly kindliness of intimation that it was for some agreeable purpose.
 ・ Ha, ha, ha! [Taking Roope's arm.] Oddly enough---oddly enough, the story deals with the very subject we've been discussing.
 ・ His name was Agostino Mosti; and, strangely enough, he was the person who had raised a monument to Ariosto, of whom he was an enthusiastic admirer.
 ・ Strangely enough, Rogers was at first dissatisfied with the offer, holding that the sum should be paid for the new volumes alone.
 ・ Curiously enough, although Adam Smith was immersed in abstract speculations, his "homely sagacity" led him to the most practical results;
 ・ Curiously enough, this novel consists of two perfectly distinct narratives;

 このようにコーパスによる調査結果を概観してみるだけでも,18世紀以降,共起する副詞の種類においても頻度においても,順調に分布を拡げ定着してきた表現といってよさそうである.enough を付加することでリズムがよくなるという効果 (eurhythmy) のほか,文副詞であることを明示する機能があるのかもしれない.

Referrer (Inside): [2020-12-05-1]

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2020-12-03 Thu

#4238. oddly enough, interestingly enough などの表現における enough (1) [adverb][semantics][bnc][corpus][collocation][eurhythmy]

 以前より不思議に思っていた表現がある.enough という卑近な副詞を用いた表現なのだが,典型的に -ly 副詞に enough が後置され,文頭位置あるいは挿入句として生起するものだ.例をみるのが早い.BNCweb より挙げてみよう(問題の句はイタリック体にしてある).なお,検索窓には "*ly_{ADV} enough" と入力した.

 ・ Oddly enough, many parliaments expect to modify government plans, which takes time.
 ・ Her large grin and knotted black curls were, strangely enough, more memorable.
 ・ I had a dream last night funnily enough about Leeds (I dont normally --- honest!).
 ・ Interestingly enough, even hens and rats have been found to consume more calories when they are offered a varied diet than when they are fed `the same old thing' all the time.
 ・ Naturally enough, those who commit crimes will tend to conceal their actions and protect themselves.

 それぞれ「妙なことに」「奇妙なことに」「滑稽なことに」「興味深いことに」「当然のことに」を意味する,いわゆる文修飾の副詞句である.文修飾であるから,統語的には文頭に現われたり,挿入的に用いられたりすることは不思議ではない.理解しかねるのは,enough の役割である.なぜ「十分に」が添えられているのだろうか.enough が省略されたところで,前置されている副詞単体でも文修飾として同じように機能するのだ.副詞単体ではやや寂しく感じられ,たいした強調ともならない enough を添えることでリズムを良くする程度の効果 (eurhythmy) はありそうだが.
 enough に前置されることの多い副詞の種類としては,ヒット数の多い順に20個を挙げると oddly, quickly, strangely, funnily, interestingly, early, easily, naturally, curiously, clearly, appropriately, only, seriously, barely, ironically, nearly, surprisingly, badly, reasonably, hardly となる.しかし,quickly, early, easily などは,今回注目する用法としてではない例(つまり「十分に素早く」などの通常の用法)によって頻度が高くなっているにすぎない.注目する用法で現われる最も典型的な10語を選べば,oddly, strangely, funnily, interestingly, naturally, curiously, appropriately, ironically, surprisingly, reasonably あたりとなる.
 この用法が生起する分布に注意すると,書き言葉にも話し言葉にも現われており,メディアによる違いはないといってよい(いずれも 18 wpm 程度).使用者の男女差や世代差でみても,特に目立った分布上の特徴ははない.テキストタイプとしては Fiction and verse で相対的に高い値 (27.01 wpm) を示すが,際立っているわけでもない.多くの異なるレジスターで用いられているのが実態である.
 改めて enough の意味の問題に立ち戻ろう.この enough は意味論的にはかなり薄いものと言わざるを得ない.実際『ジーニアス英和大辞典』によれば,この enough には「十分に」の意味はほどんどない旨,言及がある.また,OED の enough, adj., pron., and n., and adv.C. adv. 2 にも "With the idea of satisfying a requirement reduced or absent." とあり,何のために「十分な」のかについて「何」の前提が薄くなってしまった語義が立てられている.その下位区分 (b) として与えられているのが,まさに今問題にしている用法で,次のように説明がある.

(b) With a sentence adverb, as in aptly enough.

   See also funnily enough at FUNNILY adv. 2, oddly enough at ODDLY adv. 5b.

   1704 W. Nicolson Diary 22 Nov. in London Diaries (1985) 231 The Text of the Book (whimsically enough) in Vermilion-Letters, instead of an Italic Character.
   1783 Ld. Hailes Disquis. Antiq. Christian Church ii. 15 Which, aptly enough, might be denominated the journals of the senate.
   1912 E. V. Baxter & L. J. Rintoul Rep. Sc. Ornithol. 3 Curiously enough, both the Common Nightingale .. and the Northern Nightingale .. were added in spring to the Scottish list.
   2015 H. Scales Spirals in Time ix. 249 A mollusc named, appropriately enough, the Windowpane Oyster.


 この用法での初例が1704年となっているので,はるばる古英語 geōg にさかのぼる古参の副詞とはいえ,別の副詞に前置される問題の表現は,なかなかモダンらしい.

Referrer (Inside): [2020-12-05-1] [2020-12-04-1]

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2020-12-01 Tue

#4236. intensifier の分類 [intensifier][adverb][semantics][terminology]

 intensifier は通常「強意語」と訳されるが,専門的に広義には,意味の緩和,つまりマイナス方向の「強意」をも含む用語としてとらえておく必要がある.Quirk et al. (§§8.104--115) によると,intensifier は意味論の観点から以下のように下位区分される.

INTENSIFIERS
 ・ AMPLIFIERS
  ・ Maximizers: absolutely, altogether, completely, entirely, extremely, fully, perfectly, quite, thoroughly, totally, utterly, in all respects, most
  ・ Boosters: badly, bitterly, deeply, enormously, far, greatly, heartily, highly, intensely, much, severely, so, strongly, terribly, violently, well, a great deal, a good deal, a lot, by far, very much
 ・ DOWNTONERS
  ・ Approximators: almost, nearly, practically, virtually, as good as, all but
  ・ Compromisers: kind of, sort of, quite, rather, enough, sufficiently, more or less
  ・ Diminishers: mildly, partially, partly, quite, slightly, somewhat, in part, in some respects, to some extent, a bit, a little, least (of all), only, merely, simply, just, but
  ・ Minimizers: barely, hardly, little, scarcely, in the least, in the slightest, at all, a bit

 この数日間に「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]),「#4235. quite a few は,下げて和らげおきながら最後に皮肉で逆転?」 ([2020-11-30-1]) の記事で副詞 quite の用法に注目してきたが,上の分類によると quite は Maximizers と Compromizers の2つのリストのなかに現われる.一般に,程度の概念を伴わない語句と共起する場合には Maximizer として機能し,程度を有する語句と共起する場合には Compromiser として機能するとされる.それぞれ例文を挙げておこう.

[ Maximizer として ]

 ・ Flying is quite the best way to travel.
 ・ I quite forgot about her birthday.
 ・ I quite understand.
 ・ The bottle is quite empty.
 ・ You're quite right.

[ Compromizer として ]

 ・ He plays quite well.
 ・ I quite enjoyed the party, but I've been to better ones.
 ・ It is quite cold, isn't it?
 ・ She quite likes him, but not enough to marry him.
 ・ The food in the cafeteria is usually quite good.

 頻度の高い副詞だが,案外使い方は難しい.

 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

Referrer (Inside): [2021-06-10-1] [2020-12-12-1]

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2020-11-29 Sun

#4234. なぜ比較級には -er をつけるものと more をつけるものとがあるのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][comparison][adjective][adverb]

 短い形容詞・副詞を比較級・最上級にするには -er, -est を付す.しかし,長い形容詞・副詞を比較級・最上級にするには,その語の前に more, most を付す.これが,現代英語の規範文法が教える規則です.しかし,これは英語の歴史において比較的新しい規則というべきであり,古くから適用されていた規則ではありません.語の長さによっていずれの比較級・最上級の方法を取るかという規則は,せいぜい数世紀の歴史しかないのです.では,音声の解説をお聴きください.



 そもそも英語の比較級・最上級には -er, -est を付けるという方法しかありませんでした.more, most を前置する方法は,おそらくフランス語やラテン語という外来の方法として中英語期に取り入れられ,近代英語期において確立した新しい方法なのです.
 要するに英語の立場からみると,それまで -er, -est を用いて形態的に処理していたものを,歴史の途中でフランス語やラテン語からの影響により,more/most を用いて統語的に表現するようになったという点が重要です.
 今回の疑問に関連する個々の話題としては,##3617,3032,456,2346,403,2347,3349,3619,3618,3615,3703の記事セットを是非ご覧ください.

Referrer (Inside): [2021-08-17-1] [2021-06-25-1]

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2020-11-11 Wed

#4216. なぜ形容詞 friendly には副詞語尾のはずの -ly が付いているのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hel_education][suffix][adverb][adjective][productivity][-ly]

 最近,学生から寄せられた素朴な疑問です.-ly といえば形容詞から副詞を作る典型的な語尾と理解されていますが,実は名詞から形容詞を作る際にも利用されることがあります.標題の friendly はもちろん,beastlyfatherlyknightlyscholarlywomanly などが挙げられますし,時間を表す dailyhourlyweeklyyearly なども類例です.
 なぜ -ly が形容詞語尾にもなり得るのでしょうか.この謎は,この語尾の歴史をひもとけば解決します.では,音声解説をお聴きください.



 そう,実は -ly はもともとは副詞というよりも形容詞を作る語尾だったのです.したがって,friendly のような語形成は,むしろ由緒正しいものといえます.しかし,中英語期にかけて生じた音変化の結果,古英語の形容詞語尾 -līċ と副詞語尾 -līċe の両方の機能を兼ねるようになった中英語の -ly は,むしろ副詞語尾としてその生産力を発揮していくようになります.いつしか -ly は,本来の機能ともいうべき形容詞語尾としてではなく,副詞語尾として認識されるようになりました.
 この問題についてさらに英語史的な理解を深めたい方は,ぜひ##40,1032,1036の記事セットもご一読ください.

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2020-11-01 Sun

#4206. なぜ as にはあんなに多くの用法があるのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hel_education][sobokunagimon][preposition][conjunction][adverb][relative_pronoun][polysemy]

 as という語は,発音も綴字も単純です.短く,高頻度でもあります.しかし,気が遠くなるほど多くの用法があり,品詞としてでみても前置詞,接続詞,副詞,関係代名詞と多彩です.以下に様々な用法の例文をあげておきましょう.

 ・ They were all dressed as clowns.
 ・ I respect him as a doctor.
 ・ You're as tall as your father.
 ・ As she grew older, she gained in confidence.
 ・ Leave the papers as they are.
 ・ As you were out, I left a message.
 ・ Happy as they were, there was something missing.
 ・ I have never heard such stories as he tells.

 この多義性はいったい何なのでしょうか.では,語源から as の多義性の謎に迫ってみましょう.そうなのか!



 そう,そうなのです.so だったのです.「同じ」を原義に含む soall で強められたのが also で,also が弱まったのが as というわけでした.原義が広く一般的なので,そこから多方面に派生して,用法も多彩になってきたということです.詳しくは「#693. as, so, also」 ([2011-03-21-1]) をご覧ください.

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2020-10-05 Mon

#4179. 副詞「この頃」は these days なのに副詞「その頃,あの頃」は in those days [sobokunagimon][preposition][adverbial_accusative][adverb][clmet][oed]

 大学院生より標記の指摘を受けた(←ナイスな指摘をありがとう).副詞としての「この頃」は前置詞なしの these days が普通なのに対して,「その頃,あの頃」は in those days と前置詞 in を伴う.今までまったく意識したことがなかったが,確かにと唸らされた.このチグハグは何なのだろう.
 OEDthese days を調べてみると,前置詞を伴わないこの形式は,かなり新しいようだ.初例が1936年となっている.その1世紀足らずの歩みを OED からの4つの例文で示すと次のようになる.

1936 R. Lehmann Weather in Streets i. v. 97 An estate like this must be a terrible problem these days.
1948 M. Dickens Joy & Josephine i. iv. 132 'Play golf?' Mr. Gray asked George, who answered: 'Not these days,' as if he ever had.
1960 S. Barstow Kind of Loving ii. iii. 181 He looks as though he's walked out of an American picture. It's all Yankeeland these days.
1981 Woman 5 Dec. 5/1 These days women are educated to expect some choice in how they spend their lives.


 それより前の時代には in these days という前置詞付きの表現が普通だったようだ.後期近代英語コーパス CLMET3.0 でざっと検索してみたところ,次のような結果となった.

Period (subcorpus size)in these daysthese days
1710--1780 (10,480,431 words)100
1780--1850 (11,285,587)561
1850--1920 (12,620,207)939


 ここから,OED が初出年としている1936年よりも前に,前置詞なしの these days も一応使われていたことが分かる.その例文を挙げておこう.

 ・ (from 1780--1850): Mr. Williams has been here both these days, as usual;
 ・ (from 1850--1920): SHAWN. Aren't we after making a good bargain, the way we're only waiting these days on Father Reilly's dispensation from the bishops, or the Court of Rome.
 ・ (from 1850--1920): PEGEEN. If they are itself, you've heard it these days, I'm thinking, and you walking the world telling out your story to young girls or old.
 ・ (from 1850--1920): "I'm as busy as Trap's wife these days;
 ・ (from 1850--1920): "My predecessor," said the parson, "played rather havoc with the house. The poor fellow had a dreadful struggle, I was told. You can, unfortunately, expect nothing else these days, when livings have come down so terribly in value! He was a married man--large family!"
 ・ (from 1850--1920): "He has no right!" Father Wolf began angrily--"By the Law of the Jungle he has no right to change his quarters without due warning. He will frighten every head of game within ten miles, and I--I have to kill for two, these days."
 ・ (from 1850--1920): "That is because we make you fisherman, these days. If I was you, when I come to Gloucester I would give two, three big candles for my good luck."
 ・ (from 1850--1920): I have literally not had time to write a line of my diary all these days.
 ・ (from 1850--1920): "One gets to know that birds have shadows these days. This is a bit open. Let us crawl under those bushes and talk."
 ・ (from 1850--1920): I do not love to think of my countrymen these days; nor to remember myself.


 bothall が先行していると前置詞が不要となる等の要因はあったかもしれない.全体的には,口語的な文脈が多いようだ.in が脱落して現在の形式が現われ始めたのは19世紀後半のこととみてよさそうだ.

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2020-07-05 Sun

#4087. なぜ現在完了形は過去を表わす副詞と共起できないのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hel_education][perfect][verb][aspect][tense][adverb][present_perfect_puzzle]

 日曜日なので気軽に英語史ネタを.ということでhellog ラジオ版の第4弾です.今回は学校文法でも必ず習う,現在完了形と yesterday のような時の副詞との相性の悪さについて,なぜなのかを考えてみました.
 英語の(現在)完了というのは,イマイチ理解しにくい文法事項の代表格ですね.現在完了は「〜した」とか「〜してしまった」と訳すことが多いので,過去と区別がつきにくいのですが,両者は時制・相としてまったく異なるのだと説諭されるわけです.だから,過去の世界に属する yesterday のような時の副詞は,現在完了と同居してはいけないのだと説明を受けるわけですが,やはりよく理解できません.
 この問題は,理論的にも厄介で "Present Perfect Puzzle" とも呼ばれています.私たちがピンと来ないのも無理はないといえます.今回の音声でも,スッキリと解決ということにはなりませんので,あしからず.その上で,以下の音声をどうぞ.



 今回の内容を含め,そもそも完了形とは何かという問題について詳しく知りたいという方は,ぜひ##2633,2492,2749,534,2750,2763,2747,2490,2634,2635の記事セットをご覧ください.

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2020-06-05 Fri

#4057. stay at homestay home か --- 静的な語義への拡張が遅いイギリス英語 [adverb][ame_bre][semantic_change][preposition]

 標題のタイムリーな話題については,すでに「#4035. stay at homestay home か --- 英語史の観点から」 ([2020-05-14-1]),「#4036. stay at homestay home か --- コーパス調査」 ([2020-05-15-1]),「#4037. stay home の初例 --- EEBO Online corpus より」 ([2020-05-16-1]) で取り上げてきた.今更ながらも,両者の使い分けについて Fowler's および Usage and Abusage の見解をそれぞれ確認しておこう.

home (adv.). Idiomatic uses are very numerous, esp. when home is accompanied by a verb of movement (come, go home; I'll see you home; my son will be home soon; drive the nail home; pressed his advantage home; etc.). When the sense is 'in his or her own home' the British preference is to use at home (he stayed at home; is Jane at home?) and the American home by itself.


home, be. To say that a person 'is home' for 'is at home' is American rather than British usage. The British use the expression, though, where movement is involved: 'We're nearly home.'


 先の記事群で確認した歴史的な経緯と,上記の共時的な記述とはよく呼応している(両書とも規範的な色彩が強いのだが,ここではなかなかに記述的である).イギリス英語では home が単独で副詞として用いられるに場合にしても,動的な語義が基本であり,静的な語義では使いにくいということだろう.歴史的にみれば近代英語期以降,副詞 home は動的な語義から静的な語義へと意味を拡張させてきたのだが,その傾向はイギリス英語ではいまだに鈍いということになろうか.
 ただし,「#4036. stay at homestay home か --- コーパス調査」 ([2020-05-15-1]) でもみたように,アメリカ英語でも stay home の伸張はあくまで20世紀半ばに始まったものであり,比較的新しい特徴であるには違いない.

 ・ Burchfield, Robert, ed. Fowler's Modern English Usage. Rev. 3rd ed. Oxford: OUP, 1998.
 ・ Partridge, Eric. Usage and Abusage. 3rd ed. Rev. Janet Whitcut. London: Penguin Books, 1999.

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