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rensai - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-04-27 09:58

2024-04-25 Thu

#5477. なぜ仏英語には似ている単語があるの? --- 月刊『ふらんす』の連載記事第2弾 [hakusuisha][french][loan_word][notice][rensai][furansu_rensai][norman_conquest][borrowing][voicy][heldio]


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  *

 今年度,白水社の月刊誌『ふらんす』に「英語史で眺めるフランス語」というシリーズタイトルで連載記事を寄稿しています.一昨日『ふらんす』5月号が刊行されました.シリーズ第2回の記事は「なぜ仏英語には似ている単語があるの?」です.今回の記事は以下の小見出しで構成しています.

 ・ 単語が似ているのにはワケがある
 ・ 借用の方向に基づく3つのパターン
 ・ 言語学的な観点に基づく3つのパターン
 ・ 似ている単語を見つけたときには要注意

 仏英語には似ている単語が多く見られます.背景には1066年のノルマン征服とその後の歴史があります.しかし,理由はこれに尽きません.歴史的および言語学的に検討すると,両言語に類似単語が存在する背景には6つのパターンがあるのでス.今回の記事では,具体例を交えつつ,この点を解説しています.
 新年度に新しい外国語としてフランス語を学び始めている方も多いかと思います.そのなかには,すでに英語について知識のある方も少なくないはずです.英語とフランス語の学習は,連動させるのが吉です.その上で英語史の知見も連動させると,学び全体に何倍もの相乗効果が生み出されることを強調したいと思います.この観点から,以下の Voicy 配信回もお聴きいただければ.

 ・ 「#26. 英語語彙の1/3はフランス語!」
 ・ 「#329. フランス語を学び始めるならば,ぜひ英語史概説も合わせて!」
 ・ 「#327. 新年度にフランス語を学び始めている皆さんへ,英語史を合わせて学ぶと絶対に学びがおもしろくなると約束します!」

 シリーズの初回記事については,hellog 記事「#5449. 月刊『ふらんす』で英語史連載が始まりました」 ([2024-03-28-1]) で取り上げていますので,そちらもご覧ください.

 ・ 堀田 隆一 「英語史で眺めるフランス語 第2回 なぜ仏英語には似ている単語があるの?」『ふらんす』2024年4月号,白水社,2024年4月23日.62--63頁.

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2024-03-28 Thu

#5449. 月刊『ふらんす』で英語史連載が始まりました [hakusuisha][french][loan_word][notice][rensai][furansu_rensai][voicy][heldio][false_friend]


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  *

 「日本で唯一のフランス語・フランス文化専門の総合月刊誌」という謳い文句で白水社より刊行されている『ふらんす』.先日発行された『ふらんす』2024年4月号(新年度開始号)より,12ヶ月にわたり「英語史で眺めるフランス語」というシリーズタイトルで2ページの連載記事をお届けします.
 初回となる今回は「英語にはフランス語風味がたくさん」と題して,次のような小見出しで構成しています.

 ・ なぜ英語の歴史?
 ・ 1066年の衝撃
 ・ 英語語彙のなかのフランス語単語
 ・ 語彙以外へのフランス語の影響

 『ふらんす』の誌上で英語(史)とは何事か,とみる向きもあるかと思います.そもそも白水社の編集者の方より連載執筆のお声がけをいただいた際の私自身の感想が「なぜ?」でした.私は,本ブログでもその他の媒体でも英語とフランス語の密接な関わりについて,主に英語史の観点から様々に発信してきました.試しに本ブログの french タグをクリックしてみると,実に313の記事がヒットします.それくらい英仏語の歴史的関係を強調してきたわけですが,まさかフランス語(文化)を専門とする雑誌に英語史に関する文章を載せられる日が来るとは思いも寄りませんでした.お話しをいただいたときには,上記のようにやや狼狽しつつも「チャンス!」と叫びつつ,謹んでお引き受けした次第です.
 ご関心のある方々には,ぜひ1年間お付き合いいただければと存じます.初回はとりわけ最初の小見出し「なぜ英語の歴史?」にご注目ください.
 この連載を機に,私自身もフランス語とフランス語史をもっと勉強しなければと気を引き締めています.フランス語史といえば,「三省堂のことばのコラム」より「歴史で謎解き!フランス語文法(フランス語教育 歴史文法派)」がお薦めです.現時点で第46回まで続いている長寿シリーズです.そちらにも英語(史)とフランス語(史)の関係に注目したコラムがいくつかあります.例えば,第18回「なぜ英語とフランス語は似ているの?」は,今回の『ふらんす』に掲載した記事と見事にシンクロします(cf. 「#4175. 「なぜ英語とフランス語は似ているの?」の記事紹介」 ([2020-10-01-1])).
 1年間続く連載「英語史で眺めるフランス語」では,英語史とフランス語はとにかく相性がよいということを力説し続けようと思っています.「英語(史)とフランス語はペアでとらえるのが吉」,このことを訴えていきます.
 年度替わりの時期で,新年度からフランス語学習に挑戦しようという方も少なくないかと思います.そのような方には,上記連載のみならず,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より以下の3本をお薦めしておきましょう.ぜひこちらもお聴きいただければ.

 ・ 「#26. 英語語彙の1/3はフランス語!」
 ・ 「#329. フランス語を学び始めるならば,ぜひ英語史概説も合わせて!」
 ・ 「#327. 新年度にフランス語を学び始めている皆さんへ,英語史を合わせて学ぶと絶対に学びがおもしろくなると約束します!」

(以下,後記:2024/04/02(Tue))
 4月1日に heldio で「#1036. 月刊『ふらんす』で英語史の連載を始めています」を配信しました.



 ・ 堀田 隆一 「英語史で眺めるフランス語 第1回 英語にはフランス語風味がたくさん」『ふらんす』2024年4月号,白水社,2024年3月23日.62--63頁.

Referrer (Inside): [2024-04-25-1]

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2023-06-15 Thu

#5162. 井上・堀田の YouTube でスポーツ英語の多々良直弘さんをゲストに [youtube][notice][rensai]

 昨晩公開された「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回は「#136. 多々良直弘さん(桜美林大学)登場! --- スポーツ実況は国ごとにぜんぜんちがう!」です.



 桜美林大学の多々良直弘さんをゲストに迎えての対談回です.多々良さんはスポーツ実況中継における言語行動の日英比較を研究されており,向こう3週の水曜日回に配信される対談の続編でも,スポーツ英語や実況英語の話題が多くなってくると思います.
 多々良さんによるスポーツ英語の話題といえば,2019年度に大修館書店の『英語教育』で連載された「知っておきたいスポーツの英語」が思い出されます.2019年4月号から2020年度3月号まで,12回にわたり次のタイトルでスポーツ英語読み物が掲載されました(こちらに公式案内があります).

 ・ 4月号 「"the ball game" から始めよう」
 ・ 5月号 「Let's get the ball rolling!」
 ・ 6月号 「The ball is in your court」
 ・ 7月号 「Let's Play Cricket!」
 ・ 8月号 「Don't give up, keep paddling!」
 ・ 9月号 「One for all and all for one!」
 ・ 10月号 「Touch down!!」
 ・ 11月号 「They are in neck-and-neck.」
 ・ 12月号 「Beautiful shot!」
 ・ 1月号 「It's your move.」
 ・ 2月号 「Go for it!!」
 ・ 3月号 「Experiencing Sports Events Through Media」

 ついでに言いますと,同じ年度の『英語教育』で,私自身も「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」と題する連載を書いており,多々良さんとは同じタイミングで締切に追われる同志でした.

Referrer (Inside): [2023-08-28-1]

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2023-02-15 Wed

#5042. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第24回(最終回)「アルファベット最後の文字 Z のミステリー」 [notice][sobokunagimon][rensai][z][ame_bre][alphabet][voicy][heldio]

 昨日『中高生の基礎英語 in English』の3月号が発売となりました.今回で丸2年続いた連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」も第24回で,最終回となります.取り上げる話題は,最終回にふさわしく「アルファベット最後の文字 Z のミステリー」です.よろしければ手に取っていただければと思います.

『中高生の基礎英語 in English』2023年3月号



 冒頭の節「Z はもっとも出番の少ない文字」では,Z が英語のアルファベット26文字中最も頻度の低い文字であることが述べられます.続く「Z を含む英単語を挙げてみると」では,Z を含む英単語が列挙されていきますが,パッとしないものばかりです.S と Z の守備範囲についても触れられます.次の「日陰者の人生」では,いよいよ Z の悲哀の歴史が明らかにされます.最終節「発音は「ズィー」か「ゼッド」か」の節では,この文字をどう呼ぶかに関する混乱と競合の歴史が描かれ,英語の英米差に話が及びます.
 24回続いた連載は今回の Z の話題で幕を閉じます.読者より寄せられた疑問にお答えする回もあり,毎月,執筆者としても楽しみながら筆を執ることができました.編集者さんの丁寧なお仕事に助けられ,そしてイラストレーターさんの確立した探偵スタイルにも元気づけられ,24回を完走できました.関係の皆様に感謝致します.2年間のご愛読,ありがとうございました.
 振り返りの意味も込め,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で昨年10月22日で公開した放送回「#509. 毎月,中高生のために英語史連載を書いています」もお聴きいただければとと思います.



 連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」はこれにて終了となりますが,英語の歴史の謎解き自体は,この hellog でも,その他の媒体でも,続けていきます.引き続きよろしくお願いいたします.

Referrer (Inside): [2023-10-10-1]

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2023-01-14 Sat

#5010. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第23回「なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][participle][gerund][progressive][polysemy][suffix][heldio]

 本日『中高生の基礎英語 in English』の2月号が発売となります.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第23回は「なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2023年2月号



 英語の -ing 語尾は多義ですね.現在分詞 (present participle) は,be と組み合わさって進行形 (progressive) を形成したり,形容詞として名詞を修飾・叙述したり,分詞構文を作ることもできます.動名詞 (gerund) としては,動詞を名詞に転換させる生産的な方法を提供しています.つまり,-ing は動詞を形容詞にしたり,副詞にしたり,名詞にしたりと八面六臂の活躍を示しているのです.
 しかし,現在分詞の -ing と動名詞の -ing は起源がまったく異なります.古くは形態も異なっていたのですが,歴史の過程で -ing という同じ形に合わさってしまっただけです.今回の連載記事では,この辺りの事情を易しく丁寧に解説しています.また,進行形は近代英語期に確立した比較的新しい文法事項なのですが,なぜどのように成立したのか,その歴史的過程もたどっています.いつものように謎解き風の記事となっています.ぜひご一読ください.
 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の関連する放送回として「#375. 接尾辞 -ing には3種類あるって知っていましたか?」を紹介しておきます.連載記事と合わせて -ing への理解が深まると思います.


Referrer (Inside): [2024-01-01-1]

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2022-12-15 Thu

#4980. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第22回「なぜヨーロッパの人は英語が上手なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][indo-european][comparative_linguistics][reconstruction][germanic][italic][french][latin][german][dutch][spanish][italian][heldio]

 『中高生の基礎英語 in English』の1月号が発売されました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第22回として「なぜヨーロッパの人は英語が上手なの?」に答えています.

『中高生の基礎英語 in English』2023年1月号



 この素朴な疑問は,大雑把でナイーヴな問いに響くかもしれません.ヨーロッパ人がみな英語が上手なわけではありませんし,アジアやアフリカを含めた世界の各地に英語が上手な人はたくさんいます.このことは承知の上で,今回の記事をなるべく多くの中高生に届けたいという思いから,あえてこのような表題を掲げた次第です.
 中高生に英語学習の早い段階でぜひとも知ってもらいたい重要なことがあります.それは,英語とヨーロッパの主要言語との関係です.将来大学などに進学して英語以外の言語を学ぶことになったとき,あるいは独学で他言語に挑んでみようと思い立ったとき,もしヨーロッパの諸言語を念頭においているのであれば,ぜひ英語,ドイツ語,オランダ語,フランス語,スペイン語,イタリア語などの相互関係について言語学・言語史的な観点から理解しておいてください.学習言語を選択する上で,とても大事な知識だからです.
 大学教員である私は日常的に大学生と付き合っていますが,彼らのなかには,英語史の授業などで英語とヨーロッパの諸言語との関係を初めて知ると,第2外国語として○○語ではなくフランス語/ドイツ語を選択しておけばよかった,などと口にする学生がいます.もう1年か2年早く諸言語間の関係を知っていたら△△語を選んでいたのに,と後悔しているようなのです.
 中高生の皆さんは,いずれ英語以外の言語を学ぶ可能性があるのであれば,英語と他の言語との関係について知っていたほうが得です.主体的に学習言語を選択できることになるからです.最終的にどの言語を選ぶにせよ,事前に多くの情報をもっておくに越したことはありません.
 英語やヨーロッパの主要言語は,いずれもインドヨーロッパ語族と呼ばれる言語家族の一員です.おおまかにいえば言語が互いに似ているのです.しかし,英語と比較してどの点でどのくらい似ているのか,あるいは似ていないのかは,言語ごとに異なります.
 ドイツ語とオランダ語は,英語とともにインドヨーロッパ語族のなかでもゲルマン語派という派閥に属しており,文法や発音において互いに似ているところがあります.しかし,実際にドイツ語やオランダ語に触れてみると,英語と同じ派閥に属しているわりには,それほど似ていないという印象を受けるかもしれません.似ているけれども似ていない,似ていないけれども似ている,といった妙な距離感です.
 一方,フランス語,スペイン語,イタリア語などは,長らくヨーロッパの共通語だったラテン語とともにインドヨーロッパ語族のなかでもイタリック語派という派閥に属しています.英語とは大きく異なる派閥なのですが,英語は歴史を通じてフランス語やラテン語から多くの単語を借りてきた経緯があるため,語彙に関しては実は共通しているものが非常に多いのです.したがって,これらの言語を学んでみると,表面的には英語とよく似ているという印象を受けます.
 英語は,ゲルマン語派にルーツをもつけれどもイタリック語派の影響を大きく受けながら発展してきた言語なのです.単純化していえば,英語はヨーロッパのいくつかの言語を混ぜ合わせたような混合言語といってよいでしょう.皆さんが英語の次に学ぶ言語を選択する際には,ぜひこのことを参考にしてみてください.
 今回の話題と関連する Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の放送回としては「#486. 英語と他の主要なヨーロッパ言語との関係 ー 仏西伊葡独語」がお勧めです.ぜひお聴きください.


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2022-11-14 Mon

#4949. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第21回「「マジック e」って何?」 [notice][sobokunagimon][rensai][final_e][spelling][vowel][terminology][silent_letter][pronunciation][spelling_pronunciation_gap]

 本日は『中高生の基礎英語 in English』の12月号の発売日です.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第21回では「「マジック e」って何?」という疑問を取り上げています.

『中高生の基礎英語 in English』2022年12月号



 綴字上 matemat は語末に <e> があるかないかの違いだけですが,発音はそれぞれ /meɪt/, /mæt/ と母音が大きく異なります.母音が異なるのであれば,綴字では <a> の部分に差異が現われてしかるべきですが,実際には <a> の部分は変わらず,むしろ語尾の <e> の有無がポイントとなっているわけです.しかも,その <e> それ自体は無音というメチャクチャぶりのシステムです.多くの英語学習者が,学び始めの頃に一度はなぜ?と感じたことのある話題なのではないでしょうか.
 一見するとメチャクチャのようですが,類例は多く挙げられます.Pete/pet, bite/bit, note/not, cute/cut などの母音を比較してみてください.ここには何らかの仕組みがありそうです.少し考えてみると,語末の <e> の有無がキューとなり,先行する母音の音価が定まるという仕組みになっています.いわば魔法のような「遠隔操作」が行なわれているわけで,ここから magic e の呼称が生まれました.
 今回の連載記事では,なぜ magic e という間接的で厄介な仕組みが存在するのか,いかにしてこの仕組みが歴史の過程で生まれてきたのかを易しく解説します.本ブログでもたびたび取り上げてきた話題ではありますが,連載記事では限りなくシンプルに説明しています.ぜひ雑誌を手に取ってみてください.
 関連して以下の hellog 記事を参照.

 ・ 「#1289. magic <e>」 ([2012-11-06-1])
 ・ 「#979. 現代英語の綴字 <e> の役割」 ([2012-01-01-1])
 ・ 「#1827. magic <e> とは無関係の <-ve>」 ([2014-04-28-1])
 ・ 「#1344. final -e の歴史」 ([2012-12-31-1])
 ・ 「#2377. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (1)」 ([2015-10-30-1])
 ・ 「#2378. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (2)」 ([2015-10-31-1])
 ・ 「#3954. 母音の長短を書き分けようとした中英語の新機軸」 ([2020-02-23-1])
 ・ 「#4883. magic e という呼称」 ([2022-09-09-1])

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2022-10-16 Sun

#4920. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第20回「なぜ英語の文には主語が必要なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][word_order][syntax][impersonal_verb][hellog_entry_set]

 『中高生の基礎英語 in English』の11月号が発売されました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」も第20回となります.今回はなかなか本質的な問い「なぜ英語の文には主語が必要なの?」を取り上げています.

『中高生の基礎英語 in English』2022年11月号



 素朴な疑問であるからこそ,きれいに答えるのが難しいですね.特に日本語は主語がなくて済む場合のほうが多いので,それと比較対照すると,英語の「主語は絶対に存在しなければならない」という金科玉条は理解しにくいですし説明もしにくいわけです.なぜ英語はそんなに主語の存在にうるさいのか,と.
 ところが,英語史を振り返ってみると,古英語や中英語という古い時代には,必ずしも主語が存在しない文もあったのです.しかも,存在すべきなのに省略されているというケースだけでなく,そもそも主語の存在が想定されていない(つまり省略しようにも省略すべきものがない)ケースすらあったのです.
 今回の連載記事では,その辺りの事情を語りました.記事の最後では,疑問文で主語と動詞をひっくり返したり,命令文で主語を省略する統語規則についても言及しました.ぜひ11月号を手に取ってみてください!

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2022-09-17 Sat

#4891. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第19回「なぜ単語ごとにアクセントの位置が決まっているの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][stress][prosody][french][latin][germanic][gsr][rsr][contact][borrowing][lexicology][hellog_entry_set]

 『中高生の基礎英語 in English』の10月号が発売となりました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第19回は「なぜ単語ごとにアクセントの位置が決まっているの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2022年10月号



 英単語のアクセント問題は厄介です.単語ごとにアクセント位置が決まっていますが,そこには100%の規則がないからです.完全な規則がないというだけで,ある程度予測できるというのも事実なのですが,やはり一筋縄ではいきません.
 例えば,以前,学生より「naturemature は1文字違いですが,なんで発音がこんなに異なるのですか?」という興味深い疑問を受けたことがあります.これを受けて hellog で「#3652. naturemature は1文字違いですが,なんで発音がこんなに異なるのですか?」 ([2019-04-27-1]) の記事を書いていますが,この事例はとてもおもしろいので今回の連載記事のなかでも取り上げた次第です.
 英単語の厄介なアクセント問題の起源はノルマン征服です.それ以前の古英語では,アクセントの位置は原則として第1音節に固定で,明確な規則がありました.しかし,ノルマン征服に始まる中英語期,そして続く近代英語期にかけて,フランス語やラテン語から大量の単語が借用されてきました.これらの借用語は,原語の特徴が引き継がれて,必ずしも第1音節にアクセントをもたないものが多かったため,これにより英語のアクセント体系は混乱に陥ることになりました.
 連載記事では,この辺りの事情を易しくかみ砕いて解説しました.ぜひ10月号テキストを手に取っていただければと思います.
 英語のアクセント位置についての話題は,hellog よりこちらの記事セットおよび stress の各記事をお読みください.

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2022-08-15 Mon

#4858. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第18回「なぜ英語には類義語が多いの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][lexicology][synonym][loan_word][borrowing][french][latin][lexical_stratification][contact][hellog_entry_set][japanese]

 昨日『中高生の基礎英語 in English』の9月号が発売となりました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第18回は「なぜ英語には類義語が多いの?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2022年9月号



 英語には ask -- inquire -- interrogate のような類義語が多く見られます.多くの場合,語彙の学習は暗記に尽きるというのは事実ですので,類義語が多いというのは英語学習上の大きな障壁となります.本当は英語に限った話しではなく,日本語でも「尋ねる」「質問する」「尋問する」など類義語には事欠かないわけなので,どっこいどっこいではあるのですが,現実的には英語学習者にとって高いハードルにはちがいありません.
 英語に(そして実は日本語にも)類義語が多いのは,歴史を通じて様々な言語と接触してきたからです.英語にとってとりわけ重要な接触相手はフランス語とラテン語でした.英語は,ある意味を表わす語をすでに自言語にもっていたにもかかわらず,同義のフランス語単語やラテン語単語を借用してきたという経緯があります.結果として,類義語が積み重ねられ,地層のように層状となって今に残っているのです.この語彙の地層は,典型的に下から上へ「本来の英語」「フランス語」「ラテン語」と3層に積み上げられてきたので,これを英語語彙の「3層構造」と呼んでいます.
 3層構造については,hellog でも繰り返し取り上げてきました.こちらの記事セットおよび lexical_stratification の各記事をお読みください.
 雑誌の連載記事では,この話題を中高生にも分かるように易しく解説しています.ぜひ手に取っていただければと思います.

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2022-07-15 Fri

#4827. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第17回「なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形?」 [notice][sobokunagimon][rensai][subjunctive][verb][tense][link][conditional][be][mood][future]

 『中高生の基礎英語 in English』の8月号が発売となりました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第17回は「なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形?」です.

『中高生の基礎英語 in English』2022年8月号



 If it is fine tomorrow, I will go shopping. のような文で,明らかに「明日」という未来のことなのに,*If it will be fine tomorrow, . . . . のように will は用いないことになっています.これは,学校文法のヘンテコな規則の最たるものの1つでしょう.英語は一般に現在・過去・未来と時制 (tense) にうるさい言語なのですが,その割には「時・条件を表す副詞節」だけが特別扱いされているようで理解に苦しみます.
 しかし,この疑問は,英語史の観点から迫ると見方が変わります.古くは「時制」の問題というよりは「法」 (mood) の問題だったからです.近代英語までは上記の文は If it be fine tomorrow, . . . . のように「仮定法現在」を用いていました.その後,仮定法(現在)の衰退が進み,直説法(現在)で置き換えられた結果 If it is fine tomorrow, . . . . となっている,というのが歴史的経緯です.この経緯には,もともと時制の考慮が入ってくる余地はなかったということです.
 この問題は以下の通り,著書,hellog, heldio などでも繰り返し取り上げてきましたが,今回の連載記事では初めて中高生にも理解しやすいよう易しく解説してみました.現代の文法問題に英語史の観点から迫るおもしろさを味わってもらえればと思います.

 ・ hellog 「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」 ([2016-11-20-1])
    - 拙著の4.1.1節にて「時・条件の副詞節では未来のことでも will を用いない」という話題を取り上げています.
 ・ hellog 「#2189. 時・条件の副詞節における will の不使用」 ([2015-04-25-1])
 ・ hellog 「#4408. 未来のことなのに現在形で表わすケース」 ([2021-05-22-1])
 ・ heldio 「#33. 時・条件の副詞節では未来でも現在形を用いる?」(2021年7月04日放送)

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2022-06-15 Wed

#4797. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第16回「なぜ仮定法では if I were a bird となるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][subjunctive][verb][link][conditional][tense][be][mood]

 『中高生の基礎英語 in English』の7月号が発売となりました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」が続いています.今回の第16回は,英語学習者より頻繁に寄せられる質問「なぜ仮定法では if I were a bird となるの?」を取り上げます.

『中高生の基礎英語 in English』2022年7月号



 この素朴な疑問は,英語史関連の本などでも頻繁に取り上げられてきましたし,私自身も hellog やその他の媒体で繰り返し注目してきました.拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』(研究社,2016年)でも4.2節にて「なぜ If I were a bird となるのか?――仮定法の衰退と残存」として解説を加えています.
 しかし,これまで明示的に「中高生」の読者層をターゲットに据えた解説にトライしたことはなかったので,何をどこまで述べるべきか,○○には触れないほうがよいのかなど,なかなか腐心しました.そんななか,今回は少し挑戦的に踏み込み,そもそも「仮定法」とは何ぞや,という本質に迫ってみました.はたしてうまくいっているでしょうか.皆様にご判断していただくよりほかありません.
 以下は,これまで公表してきた if I were a bird 問題に関する hellog や音声・動画メディアでのコンテンツです.様々なレベルや視点で書いていますので,今回の連載記事と合わせてご覧ください(そろそろこの話題については出し尽くした感がありますね).

 ・ 「#2601. なぜ If I WERE a bird なのか?」 ([2016-06-10-1])
 ・ 「#3812. waswere の関係」 ([2019-10-04-1])
 ・ 「#3983. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (1)」 ([2020-03-23-1])
 ・ 「#3984. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (2)」 ([2020-03-24-1])
 ・ 「#3985. 言語学でいう法 (mood) とは何ですか? (3)」 ([2020-03-25-1])
 ・ 「#3989. 古英語でも反事実的条件には仮定法過去が用いられた」 ([2020-03-29-1])
 ・ 「#3990. なぜ仮定法には人称変化がないのですか? (1)」 ([2020-03-30-1])
 ・ 「#3991. なぜ仮定法には人称変化がないのですか? (2)」 ([2020-03-31-1])
 ・ 「#4178. なぜ仮定法では If I WERE a bird のように WERE を使うのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-04-1])
 ・ 「#4718. 仮定法と直説法の were についてまとめ」 ([2022-03-28-1])

 ・ 「#30. なぜ仮定法では If I WERE a bird のように WERE を使うのですか?」(hellog-radio: 2020年10月4日放送)
 ・ 「#36. was と were --- 過去形を2つもつ唯一の動詞」(heldio: 2021年7月7日放送)
 ・ 「#301. was と were の関係について整理しておきましょう」(heldio: 2022年3月28日放送)
 ・ 「#102. なぜ as it were が「いわば」の意味になるの?」(heldio: 2021年9月11日放送)
 ・ 「I wish I were a bird. の were はあの were とは別もの!?--わーー笑【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル #9 】(YouTube: 2022年3月27日公開)

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2022-05-15 Sun

#4766. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第15回「なぜ I は大文字で書くの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][minim][spelling][orthography][punctuation][capitalisation][alphabet][hel_contents_50_2022][hellog_entry_set]

 『中高生の基礎英語 in English』の6月号が発売となりました.連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」の第15回は,英語史上の定番ともいえる素朴な疑問を取り上げています.なぜ1人称単数代名詞 I は常に大文字で書くのか,というアノ問題です.

『中高生の基礎英語 in English』2022年6月号



 関連する話題は,本ブログでも「#91. なぜ一人称単数代名詞 I は大文字で書くか」 ([2009-07-27-1]) をはじめ様々な形で取り上げてきましたが,背景には中世の小文字の <i> の字体に関する不都合な事実がありました.上の点がなく <ı> のように縦棒 (minim) 1本で書かれたのです.これが数々の「問題」を引き起こすことになりました.連載記事では,このややこしい事情をなるべく分かりやすく解説しましたので,どうぞご一読ください.
 実は目下進行中の khelf イベント「英語史コンテンツ50」において,4月15日に大学院生により公開されたコンテンツが,まさにこの縦棒問題を扱っています.「||||||||||←読めますか?」というコンテンツで,これまでで最も人気のあるコンテンツの1つともなっています.連載記事と合わせて,こちらも覗いてみてください.
 連載記事では,そもそもなぜアルファベットには大文字と小文字があるのかという,もう1つの素朴な問題にも触れています.これについては以下をご参照ください.

 ・ hellog-radio: #1. 「なぜ大文字と小文字があるのですか?」
 ・ heldio: 「#50. なぜ文頭や固有名詞は大文字で始めるの?」
 ・ heldio: 「#136. 名詞を大文字書きで始めていた17-18世紀」
 ・ 関連する記事セット

 ほぼ1年ほど前のことになりますが,2021年5月14日(金)に NHK のテレビ番組「チコちゃんに叱られる!」にて「大文字と小文字の謎」と題してこの話題が取り上げられ,私も監修者・解説者として出演しました(懐かしいですねぇ).  *

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2022-04-15 Fri

#4736. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第14回「なぜ child の複数形は children になるの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][number][plural][double_plural][oe][vowel][homorganic_lengthening]

 昨日『中高生の基礎英語 in English』の5月号が発売となりました.テキストで英語史に関する連載を担当していますが,今回の第14回の話題は,不規則複数形の定番の1つ children について.-ren という語尾はいったい何なのだ,という素朴な疑問に詳しく,しかし易しく答えています.

『中高生の基礎英語 in English』2022年5月号



 children は不規則複数のなかでも相当な変わり者の類いですが,連載記事を読めば,千年ほど前の古英語の時代からすでになかなかの変わり者だったことが分かります.時を経ても性格は変わりませんね.child -- children と似ている brother -- brethren の話題にも触れていますし,さらには単数形が「チャイルド」なのに複数形では「チルドレン」と発音が変わる件についても解説しています.children の謎解きには,英語の先生も英語の学習者の皆さんも,オオッとうなること間違いなしです!
 英語学習には暗記すべき不規則形がつきものですが,どんな不規則形にも歴史的な理由があります.ひとまず暗記してしまった後は,ぜひ英語史の観点から振り返り,「伏線回収」の知的快感を味わってみてください.英語史の魅力にとりつかれると思います.
 関連する話題として「#145. childchildren の母音の長さ」 ([2009-09-19-1]),「#146. child の複数形が children なわけ」 ([2009-09-20-1]),「#4181. なぜ child の複数形は children なのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-10-07-1]) もご覧ください.

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2022-03-15 Tue

#4705. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第13回「なぜ one, two はこの綴字でこの発音なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][numeral][spelling][pronunciation][spelling_pronunciation_gap][hellog-radio]

 この新年度も,1年間続いてきたNHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」での連載「英語のソボクな疑問」が継続されることになりました.読者の方々に毎月ご愛読いただいたおかげと感謝しております.ありがとうございました.ソボクな疑問を歴史的な観点からなるべくわかりやすく解説するというのが連載の趣旨です.引き続きご愛読のほど,よろしくお願いいたします.
 昨日発売された4月号テキストに,連載の第13回が掲載されました.新年度に向けての一発目は「なぜ one, two はこの綴字でこの発音なの?」という綴字と発音の乖離に関する話題です.皆さん,すでに見慣れ,読み慣れている単語ですので不思議など感じないかと思いますが,普通であれば one で「ワン」,two で「トゥー」などとはひっくり返っても読めないはずです.なぜ素直に「オネ」や「トゥウォー」などとならないのでしょうか.そこには,あっと驚く歴史的な理由があったのです.

『中高生の基礎英語 in English』2022年4月号



 one, two に限らず,英語には発音と綴字がかみ合っていない単語がごまんとあります.実のところ基本的な単語であればあるほどチグハグなケースが多いので,初学者にとっては特にキツいのです.規則から入るのではなく,いきなり不規則から入るに等しいわけですから.
 連載記事ではできる限り丁寧な説明を心がけました.同じ問題について本ブログや音声メディアでも取り上げたことがありますので,そちらも合わせて参照し,理解を深めていただければと思います.関連する記事セットよりどうぞ.音声メディアについては,以下より直接お聴きください.


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2022-02-15 Tue

#4677. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第12回「単数の they って何?」 [notice][sobokunagimon][rensai][singular_they][number][agreement][personal_pronoun][gender]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の3月号のテキストが発売されました.今回で連載「英語のソボクな疑問」も第12回となります.この1年間で読者の皆さんからも反響をいただきました.ありがとうございます.年度の締めとして,少々変わり種の話題を用意しました.「単数の they って何?」です.
 「みんな,自分が正しいと思っている」という意味で Everyone thinks they are right. という英文は可能ですが,何か違和感を感じませんか? そう,everyone は意味こそ「みんな」でも,文法的には単数扱いと習いましたね.とすれば,Everyone thinks he is right. とすればよいでしょうか.しかし,「みんな」は男性だけではないはずですので,he の使用にも違和感があります.であれば,Everyone thinks he or she is right. ほどが妥当でしょうか.ただ,まどろっこしくて舌をかみそうですね.結局,単複の問題は残りますが,ぐるっと一周して Everyone thinks they are right. 辺りに戻るのがよいのでは,という方向で落ち着きつつあります.「単数の they」 (singular_they) と呼ばれる用法です.

『中高生の基礎英語 in English』2022年3月号



 連載記事では,この「単数の they」について英語史の観点からできるかぎり分かりやすく解説しました.単なる文法の問題にとどまらず,社会的なテーマであり歴史的なトピックでもあることが理解ます.言葉の話題は,思いのほか広くて深いのですね.
 「単数の they」を深掘りしたいという方は,singular "they" に関する一連の記事セットをご参照ください.

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2022-01-15 Sat

#4646. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第11回「なぜ eleven, twelve というの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][numeral][metathesis]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の2月号のテキストが発売されました.本年度連載中の「英語のソボクな疑問」の第11回の話題は「なぜ eleven, twelve というの?」です.13から19までは X-teen という語形成で「X + 10」という構成原理がわかりやすいのですが,11と12については期待される *oneteen, *twoteen とはなりません.これはなぜなのでしょうか.

『中高生の基礎英語 in English』2022年2月号



 本ブログでは「#3279. 年度初めの「素朴な疑問」を3点」 ([2018-04-19-1]) にて,この問題に簡単に触れました.わからないことも多々あるのですが,そこでの説明を膨らませたのが今回の連載記事です.記事では,その他 thirteenfifteen についての謎にも迫っています.なぜ素直に *threeteen や *fiveteen とならないのか,という素朴な疑問です.ぜひテキストを手に取っていただければと思います.
 数詞というのは非常に身近な語彙ですが,eleven, twelve の問題に関わらず謎が多い語群でもあります.むしろ日常的で頻度が高すぎるからこそ,イレギュラーなことが多いのだろうと思われます.数詞の不思議については,本ブログでも numeral の各記事で取り上げてきましたので,そちらもご覧ください.

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2021-12-15 Wed

#4615. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第10回「なぜ英語には省略語が多いの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][abbreviation][shortening][blend][word_formation][morphology][japanese]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の1月号のテキストが発売となりました.連載中の「英語のソボクな疑問」の第10回は「なぜ英語には省略語が多いの?」です.piano, bus, cute, sport, Paralympics, AI, CEO, GDP, EU, USA などの英単語は,ほぼそのまま日本語にも入ってきている日常語といってよいですが,なんといずれも何らかの点で省略されている語なのです.それぞれオリジナルの長い形を復元できるでしょうか.かなり難しいのではないでしょうか.

『中高生の基礎英語 in English』2022年1月号



 英語にも日本語にもその他の言語にも省略語は存在します.すべてを口にするには長ったらしいけれども情報量が詰まっていて有用な表現というものは,たくさんあるものですね.そのような表現をぐっと約めて簡潔な1単語に省略できれば,便利に違いありません.言語には省略語が付きものです.
 省略の方法についていえば種類は限られています.連載記事で詳しく述べていますが,基本となるのは「切り落とし」「切り貼り」「イニシャル取り」の3種です.それぞれの例をたくさん挙げていますので,どうぞご覧ください.
 言語には省略語が付きものとは述べましたが,英語に関する限り,とりわけ20世紀以降におびただしい省略語が生み出されてきたという事情があります.過去にもまして現代は省略語の時代といってもよいほどです.なぜなのでしょうか.連載記事では,この謎解きも披露しています.

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2021-11-13 Sat

#4583. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第9回「なぜ英語の語順は SVO なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][word_order][syntax][japanese]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の12月号のテキストが発売となりました.連載中の「英語のソボクな疑問」の第9回は「なぜ英語の語順は SVO なの?」について取り上げました.

『中高生の基礎英語 in English』2021年12月号



 6節からなる今回の連載記事の小見出しはそれぞれ以下の通りです.

 1. 「私」「話します」「英語」
 2. 世界の言語の語順
 3. 基本語順とは?
 4. 昔の英語は SVO ばかりではなかった!
 5. 「助詞」に相当するものが消えてしまって
 6. 語順というのは,割とテキトー!?

 英語は語順の言語ですね.日本語についての文法用語は多く知らずとも,英語について「5文型」や「SVO」などの用語を聞いたことのない人はいないのではないでしょうか.英文法といえば語順の文法のことだといって大きな間違いはありません.語の並べ方がしっかり決まっているのが英語という言語の著しい特徴です.
 しかし,です.確かに現代の英語は語順の言語といってよいのですが,歴史を遡って古い英語を覗いてみると,実は語順は比較的自由だったのです.英語のおよそ千年前の姿である古英語 (Old English) でも SVO 語順は確かに優勢ではあったものの,SOV も普通にみられましたし VSO などもありました.現代ほどガチガチに語順が決まっている言語ではなかったのです.
 私も初めてこの事実を知ったときには腰を抜かしそうになりましたね.英語は最初から語順の言語だったわけではなく,歴史を通じて語順の言語へ変化してきたということなのです.
 では,いつ,どのようにして,なぜ語順の言語となったのか.これは英語史における最も重要な問題の1つであり,その周辺の問題と合わせて今なお議論が続いています.
 今回の連載記事では,英語史におけるこの魅力的な問題をなるべく易しく紹介しました.どれくらい成功しているかは分かりませんが,少なくとも p. 132 の古英語の叙事詩『ベーオウルフ』にちなんだ主人公ベーオウルフと怪物グレンデルのイラストは必見!?(←イラストレーターのコバタさん,いつもありがとうございます)

Referrer (Inside): [2022-06-11-1]

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2021-10-15 Fri

#4554. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第8回「なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なの?」 [notice][sobokunagimon][rensai][link][gvs]

 NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の11月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」は第8回となっています.今回は英語の母音字の読みに関する,きわめて素朴な疑問「なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なの?」を取り上げています.

『中高生の基礎英語 in English』2021年11月号



 本ブログの読者の多くの方々は,この疑問が英語史でいうところの「大母音推移」 (gvs) に関わるものであることがお分かりかと思います.しかし,連載は中高生を対象読者とするものですので,この用語を持ち出すことは控えたいと考えました.そして,もちろん音声学の用語や概念なども前提とすることはできません.ということで,真正面から大母音推移の伝統的な説明を施すことはせず,なるべく易しく噛み砕いて伝えようと努めました.結果として,前舌母音のみの説明にとどめて後舌母音については触れないでおくなど,理解しにくくなりそうな部分を思い切って割愛しました.このような次第で,今回は私にとって1つの挑戦となりました(どのくらい成功しているかは分かりませんねえ).
 大母音推移の教科書的な説明としては本ブログの「#205. 大母音推移」 ([2009-11-18-1]) をどうぞ.もう少し詳しくは,拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』の1.3節と2.5節をご参照ください.専門的には gvs の各記事で扱っています.

 ・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.

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