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2026-05-21 Thu
■ #6233. 『なぜさんたんげん』応援記事集 --- note マガジンを公開しました [notice][nazesantangen][nhkpb][note]
note 上に,来たる6月10日に発売予定の『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)に関連する話題が少しずつ集まってきています.本書やその内容に関連する記事を書き,本書の公式統一ハッシュタグ #なぜさんたんげん (すべて平仮名で)を付して,note 上で応援してください,との先日の私の呼びかけに応じてくださった方々が多くいらっしゃり,感激しております.ありがとうございます.
各記事を広くお読みいただきたいので,私としてはできる限りコメントを加えたり,X 上で記事を紹介するなどしております.そして,もう1つ,皆さんによるこの記事群そのものが,本書を広める役割を果たし,さらには活発なhel活 (helkatsu) を体現するものとなっているという観点から,note 上のマガジンとして「『なぜさんたんげん』応援記事集」を開設することにしました.一昨日これを公開していますので,本記事はそのお知らせとなります.まずは訪れてみていただければ.『なぜさんたんげん』の盛り上がりを感じられると思います.

マガジンの巻頭では,「新刊『なぜさんたんげん』を応援していただいている記事を集めたマガジンを始動!英語史をお茶の間に届ける「hel活」の輪」と題して私自身がマガジン開設の趣意について書いていますので,そちらもご一読ください.
まだ発売前ですので,応援してくださる note クリエーターの方々にとっても,本書の内容に踏み込むことができずに,書きづらいかと思います.しかし,第1章第5節のまさに「3単現の s」に関する文章については,NHK出版デジタルマガジンより「紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか【英語史で解く英文法の謎】」という記事として事実上公開されています(おかげさまで,非常に多くの方々にお読みいただいています).現時点では,今のところ,この記事と関連づけてお書きいただいている方が多いようです.
マガジン企画は始まったばかりです.ますます多くの note クリエーターの方に,発売前でも発売後でも本書に直接・間接に関わる記事をお書きいただければ幸いです.とりわけ発売前のテーマについては「本書の目次を見て気になったトピック」「私が抱いている英語に関する素朴な疑問」「英語史に興味を持ったきっかけ」「こんな『なぜさんたんげん』関連グッズがほしい」など何でもかまいません.私としても皆さんの記事を積極的に紹介していきたいと思います.
本書を広める活動を通じて,hel活全体が広がっていき,クリエーター同士がつながっていくようになるとよいなと考えています.ぜひ皆さんのお力をお貸しください.どうぞよろしくお願いいたします.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
2026-05-20 Wed
■ #6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ [voicy][heldio][inohota][kenkyusha][notice][link][kdee][hel_education][khelf][helwa][asakaru]

昨日の記事「#6231. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」の第2弾と第3弾が公開されています」 ([2026-05-19-1]) でご案内した研究社ロケ回の第3弾では,『英語語源辞典』の読みこなしについても話題となりました.
編集者の星野龍さん,中川京子さん,青木奈都美さんとのお話しのなかで,『英語語源辞典』(や OED の語源関係欄)は,情報がぎっしり詰め込まれており,専門的な記号や略称も多いので,一般読者は読みこなすのが難しい.一般の英語学習者が,同辞典の良さを本格的に味わおうと思えば,読み解き方の手ほどきが必要なほどだ.そのための講座やガイドブックがあるとよい,という趣旨のお話しも出ました.
一般の方々にとって『英語語源辞典』を使いこなすのが容易ではないことは,同辞典を激推ししてきた私自身も気付いており,そのためにいくつかの活動もしてきました.1つは,動画内で私自身も触れている通り,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のなかで,まさに『英語語源辞典』読み解き講座に近い配信回をしばしばお届けしてきました.英語史を専攻する大学院生などとともに,同辞典の読み方を解説したり,議論したりしています.以下に主だった回を一覧します.
・ 2023年10月23日 heldio にて「#875. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (1) --- 藤原くんと foot を語る」が配信され,藤原郁弥さんとの画期的なシリーズの幕開きとなる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第2位に入った.
・ 2023年10月26日 heldio にて「#878. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (2) --- 藤原くんと foot を語る」が配信される.
・ 2023年11月8日 heldio にて「#891. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (3) --- khelf 藤原くんと marble を語る第1弾」が配信される.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第9位に入った.
・ 2023年11月11日 heldio にて「#894. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (4) --- khelf 藤原くんと marble を語る第2弾」が配信される.
・ 2023年11月14日 heldio にて「#897. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (5) --- khelf 藤原くんと marble を語る第3弾」が配信される.
・ 2023年12月15日 heldio にて「#928. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (6) --- khelf 藤原くんと2重語 compute/count を語る」が配信される.
・ 2024年1月31日 heldio にて「#975. 『英語語源辞典』の収録語彙」が公開される.
・ 2024年2月2日 heldio にて「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」が配信される.
・ 2024年2月3日 heldio にて「#978. 『英語語源辞典』の語義・初出年代 --- khelf 藤原くんと凡例を読もう」が配信される.凡例を熟読するという稀代な企画がスタート.
・ 2024年6月6日 heldio にて「#1101. 『英語語源辞典』凡例読みシリーズ with 藤原郁弥さん&青木輝さん」が配信される.
・ 2024年07月26日 heldio で「#1153. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (8) --- khelf 藤原くんと king の項を精読する」が公開される.
・ 2024年08月24日 heldio で「#1182. 【緊急のご報告】研究社『英語語源辞典』新装版が重版決定!」が公開される.
・ 2024年09月23日 heldio で「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」が公開される.
・ 2024年10月21日 heldio で「#1240. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (2) --- KDEE の編集方針を理解しよう」が公開される.
・ 2024年10月26日 heldio で「#1236. mine を『英語語源辞典』で読み解く」が公開される.
・ 2024年11月14日 heldio で「#1264. 『英語語源辞典』通読はキツい,無理!」が公開される.
・ 2024年11月16日 heldio で「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」が公開される.
・ 2024年12月26日 heldio で「#1306. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (3) --- 印欧語比較言語学の学史をたどる」が公開される.
・ 2025年04月25日 heldio で「#1426. 『英語語源辞典』をランダム読み --- khelf メンバーとの思いつき企画」が公開される.
また,私は数年来朝日カルチャーセンター新宿教室にて定期的に英語史関連の講座を開いてきましたが,とりわけ2024年度の毎月の講座では,「語源辞典でたどる英語史」をシリーズタイトルとして掲げて,事実上の『英語語源辞典』読み解き講座を展開していました.現行の毎月講座でも,『英語語源辞典』は常に参照し,その一部を精読するということを続けています.今週土曜日に予定されている5月回でも,もちろん参照する予定です(先日の hellog 記事「#6228. 「again を探って中英語原文の世界へ」 --- 今年度の朝カル英語史シリーズ第2回」([2026-05-16-1]) をご参照ください).
ほかには,上記 Voicy heldio から派生したプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーによる,『英語語源辞典』をめぐる様々な活動も,『英語語源辞典』の読みこなしに貢献しています.とりわけ同辞典の通読に挑戦されているお2人 lacolaco さんによる note 上の「英語語源辞典通読ノート」や寺澤志帆さんの連載企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」は要注目です.ari さんによる『英語語源辞典』で一人遊びするアプリ「#266【KQ2】ゴラクエを update して遊ぶ!!」も参照ください.
上記のように,これまでにも仲間たちと私とで様々な活動を展開してきましたが,『英語語源辞典』を読みこなせるようになるための「体系的」な講座やガイドブックなどは,確かに存在しませんでした.どのくらいの需要があるのか,という問題はありますが,今回のいのほた動画で触れている通り,一考の余地はあるかもしれません.
読者の皆さん,需要はありますか?
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
2026-05-19 Tue
■ #6231. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」の第2弾と第3弾が公開されています [kenkyusha][inohota][notice][lexicography][kdee][hee]
5月1日に「#6213. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」が公開されました」 ([2026-05-01-1]) で第1弾をご案内した研究社ロケシリーズが,第2弾,第3弾と続いています.
【第2弾】 「最後の活版印刷の『英語語源辞典』(研究社)の編集に辞書作りプロたちはどう挑んだか?」(5月6日公開)
【第3弾】 「世界一の『英語語源辞典』はどのようにできあがったかー研究社さんロケ第3弾!」(5月17日公開)
飯田橋の研究社のビルにお邪魔しての,いのほたとしては初のロケのシリーズとなっています.私が各所で激推ししている,寺澤芳雄(編)『英語語源辞典』(研究社,1997年;新装版2024年)の編集・印刷の様子を,出版社の中の方々に直接うかがう貴重な機会となりました.
第2弾では,『英語語源辞典』の編集を担当された中川京子さんと根本保行さんに主にお話しいただきました.お2人は,足掛け18年にも及ぶというこの壮大なプロジェクトの途中に,初校の段階から参加されていました.当時はまだ執筆された原稿を印刷所に回し,ゲラをやり取りするという伝統的な辞書作りの工程を踏んでいましたが,時代はアナログからデジタルへの過渡期に位置していました.根本さんによれば,かつては印刷所の方々が「最後の門番」として大きな判断力を持ち,全体のペースを調整する役割を担っていたとのことです.現場のプロ同士が呼吸を合わせながら,1996年夏という厳しいデッドラインに向けて一丸となって突き進んだ熱量は,今ではなかなか味わえない辞書編纂の醍醐味を感じさせます.辞書作りという知の集積がいかに泥臭く,かつ精緻な現場作業に支えられていたのかを物語る貴重な証言の数々です.
引き続き,第3弾では,編集者の青木奈都美さん,中川京子さん,星野龍さんにお話しをうかがっています.ここでは,1ユーザーとして私が本辞典をいかに愛用しているかという話から始まり,とりわけ青木さんがいかに語源や英語史と付き合ってきたかという話題に移りました.特に印象的だったのは,語源や英語史を学ぶ意義についての議論です.語源を学ぶことは,単に英単語を暗記するための手段ではありません.青木さんの言葉を借りれば,運用面ではネイティブに追いつくのが難しいとしても,語源に関しては学習者もネイティブも平等です.英語が世界語として勢力を拡大する以前の,イングランドの小さな島国の言語であった頃の姿が見えてくるという視点は,私たちが英語史を学ぶ意義を教えてくれます.『英語語源辞典』やそこから派生したといってよい『英語語源ハンドブック』の魅力は,そうした歴史の深みを,日常語から専門語まで一貫して提供してくれる点にあります.
良い語源辞典は,一度手に取れば一生の友となります.今回の動画を通じて,編纂者たちの情熱と,辞書の背後に広がる英語史の豊かさを感じ取っていただければ幸いです.語源や英語史のおもしろを再認識し,ぜひ皆さんの手元に1冊,この世界一の『英語語源辞典』を置いてみてください.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
2026-05-18 Mon
■ #6230. NHK出版公認『なぜさんたんげん』発売前見本プレゼント企画 --- X カウントダウン企画を盛り上げてくださった3名の方に [notice][nazesantangen][nhkpb][twitter][note][3sp]
6月10日,新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)が発売されます.関連して,すでに「#6224. 祝!近刊『英語史で解く英文法の謎』Amazon 2部門で第1位」 ([2026-05-12-1]) で触れた通り,先週5月11日より,私の X(旧Twitter)アカウント @chariderryu 上で,発売前のカウントダウン企画を実施しています.
本書に関する話題を毎日1つお届けするという企画で,これまでに7つ(7連)の投稿がポストされています.今のところ「3単現の s」のみで話題が持っており,まだしばらくはこの勢いで行けそうです.本書の公式統一ハッシュタグ #なぜさんたんげん (すべて平仮名で)や,本企画のハッシュタグ #なぜさんたんげんカウントダウン より訪れていただき,アカウントをフォローしていただけると嬉しいです.そして,私が本企画内外で本書と関連して投稿しているポストに対して,ぜひ皆さんも #なぜさんたんげん のハッシュタグを付けつつリプライなどしていただけますと幸いです.
さて,すでに走り出しているこのカウントダウン企画ではありますが,本日5月18日より,この企画に,NHK出版公認のプレゼント企画を掛け合わせたいと思います.本書の存在を広めるべく,本企画での私からの X 投稿に対して,リプライ等にて最も貢献くださった3名の各々に,発売前に見本を1部差し上げるい,というプレゼント企画です.
このカウントダウン企画については,当初よりNHK出版のいくつかの X アカウントが公認・応援してくださっています.そして,今回追加する見本プレゼント企画についても,NHK出版公認です.プレゼントに当選された方には,本書の見本1部をNHK出版から直接送らせていただくことになっています.お名前や宛先は当選後に私から直接DMなどでお伺いし,送付のみの目的でNHK出版と共有させていただきます.
「リプライ等での貢献」は,表示数やいいね数で機械的に測るわけではなく,あくまで著者である私が,独断と偏見も入れつつ,本書やその内容の注目度アップに貢献していただいたと,総合的に判断するものとさせていただきます.また,企画のプラットフォームは直接的には X となりますが,例えば note 上で本書の関連記事をお書きになり,そのリンクを X に張るという間接的な形であっても,実質的な貢献をいただいているようであれば,そのように積極的に判断させていただきます.いずれにせよ,記事に気づきやすくなるよう,ぜひ #なぜさんたんげん のハッシュタグを添えていただければ.
カウントダウン企画はすでに走り出していますが,プレゼント企画の対象期間としては,本日5月18日よりスタートし,見本ができあがる予定の今月末辺りまでを目処に設定したいと思います(予定ですので前後数日ほどの変動は念頭においていただければ).本日より,カウントダウン企画の過去のポストも含めて,ぜひ積極的にご反応ください.対象期間後,当選者3名を公表させていただき,発売前に見本1部をプレゼントとして送付いたします.
ぜひ1人でも多くの方に,X 上でのカウントダウン・プレゼント企画にご参加いただけますと幸いです.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
2026-05-17 Sun
■ #6229. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第3回 --- 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze][comparative_linguistics][philology][historical_linguistics][language_change][voicy][heldio]

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5月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の6月号が発売されました.今年度,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」をベースとして,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.
連載第3回となる今回は,私がメイン執筆者として「英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」を書いています.前号の井上さんによる「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」への返答のような形になります.井上さんからの温かいコメントも最後に付いた文章です.
今回の記事タイトルは,前号の井上さんの記事タイトルへのオマージュ(いや,パロディというべきでしょうか)として生まれたものです.井上さんがそう来るなら,私としては「英語史の3つの扉」しかない,と直感し,先にタイトルが決まりました.では,その3つとは何か.それは後から考え出すという,いかにも「いのほた」らしいライブ感のある記事執筆です.
記事では,英語史への3つの入口として,「比較言語学」 (),「文献学」 (philology),「歴史言語学」 (historical_linguistics) を取り上げています.第1の扉「比較言語学」では,文献に残らない祖語の姿を「再建」 )という手法によって浮かび上がらせる営みを論じました.第2の扉「文献学」では,1文字・1語に宿る言語的・社会的文脈を丁寧に読み解くことの醍醐味を述べています.そして第3の扉「歴史言語学」では,言語変化 (language_change) のメカニズムを体系的に追う視点を紹介しました.3者はそれぞれ異なる分野でありながらも「社会と言語の接点」という点で通底しています.この締めくくりによって,社会言語学を専門とされる井上さんとのコラボ的なエッセイとして仕上げることができたかな,と感じています.
なお,本連載は月々メイン執筆者を交代するスタイルをとっており,サブの側がコメントを数行添える形式をとっています.今回,井上さんからは「英語史ってロマンですねー」という言葉をいただきました.「いのほた言語学チャンネル」のゆるいライブ感を,誌面でも少しずつ体現できているとすれば,望外の喜びです.
本連載記事と関連して,heldio でも先日「#1812. 英語史の3つの扉 --- 『英語教育』の「いのほた連載」第3弾より」としてお話ししました.あわせてお聴きください.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第3回 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」『英語教育』2026年6月号,大修館書店,2026年5月14日.44--45頁.
2026-05-16 Sat
■ #6228. 「again を探って中英語原文の世界へ」 --- 今年度の朝カル英語史シリーズ第2回 [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][heldio][me][oe][kochushoho][pchron][adverb][preposition][link][voicy]

1週間後の5月23日(土) 15:30--17:00 に,今年度の2回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の通算第14弾ということで,今回は「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,日常的な副詞 again とその双子の兄弟である前置詞 against に注目します.
講座では,『英語語源辞典』や『英語語源ハンドブック』を参照しつつ,この単語の語源や意味・形態上の発達を追いかけ,副詞 again と前置詞 against とで棲み分けがなされるようになった背景に迫ります.本来は接頭辞にすぎなかった形態素が,独立した単語となっていくという興味深い歴史をもっているのです.関連して,古英語の前置詞全体についても概観する予定です.
この単語の発音やスペリングの変化・変異にも注目します.異形が非常に多く,古英語や中英語の辞書ではどの形が見出し語に上がっているのかを予想するのが困難なほどです.
また,この春期クールでは,2月25日に研究社より刊行された伝説的入門書,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとして活用します.今回はこの入門書に収載されている初期中英語のテキスト Peterborough Chronicle より,again を含む,中世の拷問をおどろおどろしく描写する箇所を少々読んでみたいと思います.
中英語の原文が初めてという方も心配は要りません.上記参考テキストについても,講座で読む部分については配付資料内で引用しますので,受講に必須ではありませんが,テキストには現代英語訳や辞書も付属していますので,あれば学びが深まると思います.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.See you again!
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
2026-05-15 Fri
■ #6227. World Englishes の新書が登場 --- 寺澤盾(著)『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』〈中公新書〉 [world_englishes][notice][heldio][review][nazesantangen]

「#6211. 寺澤盾先生が PIVOT TALK に出演して【世界の英語と日本人】をお話しされています」 ([2026-04-29-1]) で少し触れましたが,英語史界隈で待望の新書が上梓されました.英語史研究者の寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)による『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』〈中公新書〉です.3月25日に刊行されました.
本書は,『英語の歴史:過去から未来への物語』(2008年),『英単語の世界 --- 多義語と意味変化から見る』(2016年)に次ぐ,寺澤先生の新書3部作の3冊目となります.
本書の最大の特徴は,タイトルに「歴史」や「英語史」という言葉こそ冠していませんが,その実体はきわめて濃密な(特に近現代の)英語史の本である,という点にあります.17世紀以降の大英帝国の拡大とともに,英語がどのように世界へ拡散し,各地の土着の言語と接触しながら変容を遂げてきたのでしょうか.その動的なプロセスを「5大陸」という壮大なスケールで描き出したのが本書です.「世界英語」 (world_englishes) をめぐる議論の現在地を把握するための決定版といえます.
寺澤先生は本書の中で,英語を単なる言語の枠組みに閉じ込めていません.むしろ,英語を軸とした優れた「社会科の本」になっているものと,私は読みました.世界各地の英語を論じることは,その地域の歴史,地理,政治,そして文化そのものを論じることにほかなりません.世界史的な大事件がどのように言語に刻印されているのか,あるいは地理的な条件がいかに変種間の差異を生み出してきたのか.本書を読み進めることは,英語というフィルターを通して,複雑な現代世界を読み解くようなものです.
構成の妙も見逃せません.全編を通して,専門的な知見に基づきながらも,一般の読者が興味を持ち続けられるようなエピソードが随所に散りばめられています.写真,グラフ,表,地図などの図版も豊富で,コラムや「豆知識」コーナーも工夫が凝らされています.本文に続く付きものとしては,文献案内,世界英語対照年表,用語解説,人名・作品名・事項索引,語句索引などが丁寧に編集されています.学術的な厳密さを一切妥協することなく,それでいて新書というフォーマットにふさわしい,語りかけるような平易な文体や構成で作られていることに驚嘆せざるを得ません.
本書は日本における英語のあり方についても鋭い示唆を与えてくれます.「世界の英語」を知ることは,私たちの多くが学んできた「標準英語」という概念がいかに限定的なものであるかを気づかせてくれます.多様な Englishes の存在を認めることは,英語学習において完璧主義に陥りがちな日本人英語学習者にとって,ある種の救いになるのではないでしょうか.多層的な歴史背景を持つ各国の英語の姿を鏡として,ひるがえって,日本人がいかに英語と向き合い,共生していくべきかという未来志向の問いが,本書の底流には流れています.
私個人としても,本ブログでご案内している通り,来たる6月10日に初めての新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』を上梓します.寺澤先生が長年培ってこられた「英語史×新書」の熟練には遠く及びませんが,身が引き締まる次第です.寺澤先生の三部作を並べて読むことで,英語史という学問が持つ懐の深さと,現代社会におけるその意義を存分に味わうことができるはずです.英語に関わるすべての人に読んでもらいたい3冊です.
新刊書『世界の英語』については,先日 Voicy heldio にて「#1805. 寺澤盾(著)『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』〈中公新書〉」としても取り上げました.本記事よりも詳細にご紹介していますので,そちらも合わせてお聴きいただければと思います.
・ 寺澤 盾 『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』 中央公論新社〈中公新書〉,2026年.
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