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hellog〜英語史ブログ

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2026年6月10日,新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)が発売されました.Amazon 新着ランキングの「語学・辞事典・年鑑」「英語」「新書」の3部門で第1位を獲得.「発売前増刷」もかかりました.本書に関する情報をまとめた『なぜさんたんげん』著者公式HPもオープンし,最速レビュー掲載などで盛り上がっています.


堀田隆一(ほったりゅういち)による,英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログです(note のプロフィールはこちら)."History of the English Language Blog" ということで,略して "hellog".英語史と関連する英語学・言語学一般の話題も扱っています.本ブログで紹介・推薦する書籍などについて,特別に表記しない限り,すべて自主的な言及です.また,堀田は Amazon のアソシエイトとして適格販売により収入を得ています.

まずは,
  1. 英語史の学び始め/続けには,まず以下の記事からスタート!
  2. アクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事
  3. 英語に関する素朴な疑問に関する記事群
  4. 全記事の標題の一覧 (Archives)
  5. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio)
  6. Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」(heldio)
  7. 知識共有サービス「Mond」での,英語に関する素朴な疑問への回答
  8. 慶應英語史フォーラム (khelf) の X アカウント @khelf_keio
  9. The HEL Hub (= helhub):日々発信される英語史系コンテンツの新着情報が数時間に一度リアルタイムで更新されていく「hel活ポータル」
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をご覧ください.

その他のお知らせ

お知らせ 英語史トーク動画の第2弾です! 8月21日,YouTube 「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」にて,英語史トーク第2弾の前編が公開されました.「【英語の謎 goの過去形はなぜwentなのか】古英語時代は-edよりも不規則動詞がデフォルト|なぜ「あなた」も「あなたたち」もyouで表すのか|He likes...三単現にはなぜsを付ける?」および「【flower(花)とflour(小麦粉)は同じ語源!】help,aid,assistance…「助け」の類義語は何が違う?|同音異義語が多いのはなぜか|「イギリス英語は保守的」は本当か】」です.今回もフリーアナウンサーの近藤さや香さんとお話ししています.2025/08/21(Thu)

お知らせ 英語史トーク動画の前編が9.8万回視聴されています! 5月30日,YouTube 「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」にて,英語史トーク動画の前後編が公開されました.「【know の K はなぜ発音しない?「英語史」で英語のナゼがわかる】国内唯一慶應だけの必修科目|古代英語はもはや別言語|500通り以上の綴りがある英単語|憧れと威信が英語を変化させた」および「【ややこしい英語が世界的言語になるまで】文法が確立したのはたった250年前|an appleのanは「発音しやすくするため」ではない|なぜ複数形はsばかりなのか|言語の"伝播"=権力」です.フリーアナウンサーの近藤さや香さんとともに,英語史入門を念頭にお話ししています.hellog の関連記事はこちら.2025/05/31(Sat)

再重版がかかっています! 皆さんにご好評,ご愛読いただいています!(2025年9月23日現在)

2025年6月18日(水),唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力)『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されました.5月21日以来,刊行日までの歴代最高記録として,Amazon 新着ランキングで「英語」部門にて第1位,「語学・辞事典・年鑑」部門にて第2位を獲得しています.また,刊行後の4日間で紀伊國屋書店新宿本店の語学部門の週間売り上げランキングで第1位,丸善丸の内本店では第4位を記録しました.リアル書店やこちらの Amazon ページ(あるいは以下のQRコード)より,ぜひご入手ください.英語学習・教育に関わる皆さんにとっての必携書!

合わせて本書のランディングページもご覧ください!

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『英語語源ハンドブック』の Amazon リンク


お知らせ ヘルメイト有志によるhel活を紹介する月刊 Helvillian の最新号2025年8月号が7月28日にウェブ公開されました.こちらよりご覧ください.2025/07/29(Tue)

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お知らせ 2025年6月18日(水)に,唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著)『英語語源ハンドブック』(研究社)が発売予定! 研究社公式HPの近刊紹介はこちらからどうぞ.hellog のこちらの記事,および heldio のこちらの配信回でも本書を紹介しています.2025/05/17(Sat)

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お知らせ 2025年7月7日に khelf による『英語史新聞』第12号がウェブ上に一般公開されました.こちらからPDFでご覧になれます.heldio のこちらの配信回,および hellog のこちらの記事でも第12号公開についてお知らせしています.公開後は khelf の X (旧ツイッター)アカウント @khelf_keio より関連情報をお伝えしますので,ぜひフォローをお願いします.2025/07/09(Wed)

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お知らせ Voicy でお届けしている「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の Video Podcast 版を開始しました.Spotify より,同名の Podcast チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」として視聴できます.フォローをよろしくお願いします.最新回はコチラです↓ 2025/03/13(Thu)

お知らせ 2025年2月28日に,私の所属する慶應義塾大学の 公式 YouTube チャンネル「慶應義塾 Keio University」内の「研究者紹介動画」というシリーズの1回として「英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」慶應義塾大学文学部・堀田隆一教授」が公開されました.4分22秒ほどの公式動画です.2025/03/01(Sat)

お知らせ 新年度2024年の4月より khelf による「英語史コンテンツ50+」が始まっています.休日を除く毎日,khelf メンバーより英語史の話題が1つ上がってきます).日々,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio からも関連情報を発信しています.2024/04/19(Fri)

お知らせ 知識共有サービス「Mond」にて英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています.最新の質問&回答はこちらよりご覧ください.2024/09/30(Mon)

Mond Latest

お知らせ 2023年7月より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にて「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズを展開しています.Baugh and Cable の A History of the English Language (6th ed.) を1回1セクションずつ精読していくというシリーズです.週に1,2回程度のペースで続けています.有料配信ですが冒頭チャプターは試聴可となっていますので,ぜひ聴いてみてください.バックナンバー一覧はこちらの記事よりどうぞ.2024/02/09(Fri)

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お知らせ 2022年2月26日に,同僚の井上逸兵さんと YouTube チャンネル「いのほた言語学チャンネル(旧:井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル)」 (inohota) を始めています.毎週(水)(日)の午後6時に更新予定です.チャンネルの趣旨としては,こちらの hellog 記事あるいは Voicy でのアナウンスをご一読・ご視聴ください.直下(↓)は最新の YouTube 放送となります.本ブログの関連記事もお読みください.2022/03/10(Thu)

お知らせ 2024年7月より,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の再放送という趣旨で,YouTube チャンネル「heltube」 にて日々配信しています.直下(↓)は最新公開の回となります.2024/08/10(Sat)

お知らせ 2025年3月6日より5月6日まで,heldio の前身である「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) として2020--2021年に配信していた62回の配信を,こちらの YouTube にて再放送していました.2025/05/07(Wed)

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お知らせ 2021年6月2日より,英語史の音声コンテンツを配信する「英語の語源が身につくラジオ」(通称 heldio)を始めています.本ブログの姉妹版という位置づけで,音声配信プラットフォーム Voicy を通じて,英語史に関する音声コンテンツを提供しています.企画の趣旨として,こちらの hellog 記事をご一読ください.直下(↓)は最新の Voicy 放送となります.2024/07/20(Sat)

お知らせ 2023年6月2日より,上記 heldio にプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) が加わりました.毎週火木土の18:00よりお届けしています.helwa は有料配信となりますが,開設趣旨としてこちらの hellog 記事をお読みください.直下(↓)は最新の helwa 放送となります.2023/09/09(Sat)

お知らせ 2023年10月6日より,stand.fm にて「英語史つぶやきチャンネル」 を始めています.英語史の話題を不定期でカジュアルにお届けします.直下(↓)は最新の配信回となります.2025/01/28(Tue)

お知らせ 2023年1月中旬に家入葉子先生(京都大学)と堀田の共著となる,英語史研究のハンドブック『文献学と英語史研究』が開拓社より発売となります.本書についてはこちらのページで,著者が様々に紹介しています.2023/01/05(Thu)

『文献学と英語史研究』

お知らせ 2022年11月8日に『ジーニアス英和辞典』第6版が発売となりました.新版で初めて導入されたコラム「英語史Q&A」を執筆させていただいていますので,ぜひ辞典手に取って開いてみていただければと思います.コラムについては hellog でもこちらの記事群で関連する話題を取り上げています.2022/11/15(Tue)

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お知らせ 堀田ゼミの紹介ページがゼミ生により立ち上げられました.入ゼミを希望する学生は必見です.堀田による公式のゼミ紹介はこちらの記事からどうぞ.2022/11/04(Fri)

お知らせ ご愛読ありがとうございます,9刷が発行されています.2022年9月より電子書籍としても配信開始です.本ブログの内容を多く取り込んだ拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』が2016年に研究社より出版されました.本の趣旨や補足情報のために,コンパニオン・サイト (naze) を用意していますので,そちらも是非ご覧ください.また,本ブログ内の「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」にも紹介があります.2024/08/10(Sat)

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お知らせ このたび様々な言語における標準化の歴史を題材とした本が出版されました.高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
本ブログ内でも本書の紹介記事をいくつか書いていますので,そちらもご覧ください.さらに,7月9日と8月1日には2回にわたって3編者対談を Voicy で配信しましたので,ぜひこちらとこちらより各々お聴きください.

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お知らせ 本ブログベースの拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』の第4刷が出ています.本書のコンパニオン・ページ及び著者による紹介ページをご覧ください.また,本書の内容に沿ったブログ記事へのリンク (hogusu) はおすすめです.2018/09/02(Sun)hogusu_front_cover_small

お知らせ 「手軽に英語史を」というコンセプトで,地味に「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) を始めています.1つ数分以内のコンテンツです.これまでのコンテンツ一覧よりどうぞ.2020/07/09(Thu)

お知らせ 大修館『英語教育』の2020年3月号に,連載「英語指導の引出を増やす 英語史のツボ」の第12回(最終回)の記事が掲載されています.今回の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.どうぞご一読ください.2020/02/14(Fri)eigokyouiku_rensai_12_20200214_front_cover_small.jpg

お知らせ 1月5日発売の英語学習誌『CNN English Express』2月号に「歴史を知れば納得! 英語の「あるある大疑問」」と題する拙論が掲載されています.英語史の観点から素朴な疑問を解くという趣向の特集記事で,英語史の記事としては珍しく8頁ほどの分量を割いています.どうぞご一読ください.hellog 内の紹介記事もどうぞ.2019/01/07(Mon)cnn_ee_201902_front_cover_small

お知らせ 私も一部執筆している服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.が2018年3月に出版されました.日本語史と比較対照しながら英語史や英語の歴史的変化について学べます.本ブログ内の#3283の記事にも簡単な紹介がありますのでご覧ください.2018/04/23(Mon)

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お知らせ Simonn Horobin 著 Does Spelling Matter? の拙訳『スペリングの英語史』が早川書房よりより出版されました.紹介記事として,本ブログ内の「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」と「#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要」もご覧ください.2017/10/01(Sun)

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お知らせ 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』に関連する研究社ベースの連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」が始まっています(そして12回で終わりました).2017/12/21(Thu)


最近 7 日分を以下に表示中 / 今月の一覧

2026-10-09 Fri

■ #6374. 10月16日,専修大学で「3単現の -s の英語史」をお話しします [notice][hel_education][hel_lecture][helkatsu][nazesantangen][3sp]


10月16日,専修大学で「3単現の -s の英語史」をお話しします



 来たる10月16日(金)の夕刻,専修大学文学部英語英米文学科主催の学術講演会にて,「3単現の -s の英語史」と題してお話しします.お招きくださったのは,khelf や heldio のhel活でも日頃からお世話になっている菊地翔太先生(専修大学)です.菊地先生は,講演会について10月1日に note 記事「堀田隆一先生のご講演「3単現の -s の英語史」(専修大学生田キャンパス)のご案内」を公開してくださっています.ありがとうございます.
 学科主催の講演会ではありますが,一般の方でもご参加いただる会となっています.英語史に関心をお持ちの方,中学校で「3単現の -s」を習って以来モヤモヤを抱え続けてきた方,英語を教えている先生方など,どなたも歓迎です.ぜひ生田キャンパスまで足をお運びください.開催概要は以下の通りです.

 ・ 日時:2026年10月16日(金)5限 (16:35--18:05)
 ・ 会場:専修大学生田キャンパス 2号館 地下1階 Active! Studio 202
 ・ 主催:専修大学文学部英語英米文学科
 ・ 演題:「3単現の -s の英語史」
 ・ 参加:一般の方も参加可です(詳細は上記の菊地先生の note 記事をご確認ください)

 今回の講演は,6月に刊行された拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書),通称『なぜさんたんげん』の第1章第5節「なぜ3単現の s をつけるのか」の内容を,さらに深掘りしていくものです.新書では一般読者向けにコンパクトにまとめましたが,講演会では,そこからさらに一歩も二歩も踏み込んだ論点にも触れていきます.
 講演では,まず3単現の -s に関する共時的な説明を確認します.そこでは「何を」「どのように」には答えてくれますが,「なぜ」には答えてくれません.そこで通時的な視点へと切り替えます.英語史の観点からみると,問うべきは「なぜ3単現に -s がつくのか」ではなく,むしろ「なぜ3単現以外では何もつかなくなってしまったのか」なのです.古英語の動詞 lufian (to love) の屈折表から出発し,屈折語尾の水平化の過程で3単現の語尾だけが生き残った経緯,さらに北部方言に由来する -s が本来の -th を置き換えていった経緯などをたどります.
 後半では,Northern Present Tense Rule,3複現の -s,-th から -s への置換という3つの問題を取り上げ,数あるパラダイムのなかから,なぜ「3単現の -s を唯一の屈折標示としてもつパラダイム」が標準英語に採用されたのかを議論します.そして,現在も世界の英語諸変種に見られる多様な -s の分布に目を向けながら,「正しい英語」という発想を相対化してみたいと思います.たった1文字の語尾に,屈折の水平化,方言接触,標準化,社会的評価といった英語史の主要テーマが凝縮されていることを,皆さんと一緒に味わえればと思います.
 なお,第1章第5節の内容は,NHK出版デジタルマガジンにて無料公開されています(「#6225. 近刊『なぜさんたんげん』の3単現の s を扱った節が公開されています」 ([2026-05-13-1]) を参照).そちらを予習としてお読みいただくと,当日の話がいっそう楽しめるはずです.同じ話題を授業向けにまとめたレジュメとしては「#6258. なぜ3単現にだけ s をつけるのか? --- 教室で使える『なぜさんたんげん』レジュメ」 ([2026-06-15-1]) もどうぞ.
 当日,生田キャンパスで皆さんにお会いできることを楽しみにしています.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-10-08 Thu

■ #6373. アイルランドの至宝『ケルズの書』を訪ねて --- The Book of Kells [book_of_kells][dublin][tabihel][ireland][christianity][manuscript][history][latin][link][tabihel_dublin]


Chi Rho Page of the Book of Kells



 ダブリンの英語史に関連する場所を訪ねて歩く「旅hel」 (tabihel) シリーズ.今回は,アイルランドが誇る至宝 The Book of Kells 『ケルズの書』を訪れたので,これを取り上げたい.上に掲げた写真は,同書のなかでもとりわけ有名な「Chi Rho ページ」である(実物写本は写真撮影不可で,これは展示パネルを撮影したもの).
 『ケルズの書』は,ラテン語で記された4福音書を収めた,西欧中世を代表する装飾写本である.紀元800年前後,アイオナ島の修道院で制作が始められたとされる.細密画の緻密さは尋常でなく,ケルト的な古代から伝わるtriskele(三脚ともえ紋)を含む繊細な意匠,アングロサクソン的な動物文様や組紐模様,ラテン的な動植物のモチーフや技術,ギリシア風の鍵模様,コプト的な点描の多用など,実に多様な芸術文化がひとつの写本のなかに織り込まれている.まさに,当時のヨーロッパの文化的交差点を凝縮したような写本だ.
 この至宝を所蔵しているのが,Trinity College Dublin の Old Library である.大学はは,『ケルズの書』と,後述する壮麗な書庫・閲覧室 Long Room の2つを,大学最高の至宝として位置づけている.
 先日,事前に予約をとったうえで,朝8時半,開館直後を狙って訪れた.5分前に入口に着くと,すでに驚くほどの訪問客が待機していた.入館してまず案内されるのは,『ケルズの書』の成立背景や意匠を解説する展示パネルの並ぶ一室で,上掲の写真はここで撮影したものである.オーディオガイドを聴きながらじっくりと時間をかけて学べる仕組みになっており,たいへん勉強になった.
 展示室を抜け,1段高いフロアに上がると,いよいよ写本の実物との対面である.ガラスケースのなかに大切に仕舞われ,とあるフォリオが開かれている.写真撮影は禁止,周りから覗き込むだけだが,ため息が漏れた.細密画そのものの芸術的価値はもちろんだが,紀元800年前後,うら寂しいアイオナ島の修道院で,修道僧たちがこれほど緻密な作業に長い時間をかけて取り組んでいたのかと思うと,畏れ多い気持ちになる.こうしてブリテン諸島にて小さくコツコツと育まれていったキリスト教文化が,歴史を通じて拡大し,今ではこの写本が国を代表する至宝として公開され,世界中から人々を引き寄せている.文化の力を目の当たりにした.
 2階へ上がると,今度は壮麗な Long Room が広がる.目下,大規模な改装中で,書棚の書籍は多く退避されていたが,この部屋の威容は十分に伝わった.こうした荘厳な雰囲気のなかで研究ができたら,さぞかし素晴らしいだろう.
 さらに,別館パビリオンでは,『ケルズの書』と Long Room をさらに掘り下げて紹介するデジタル展示が用意されており,これもまた見応えがあった.ショップを通り抜けて外に出たとき,私はすっかり満足していた.
 「#3680. 『ケルズの書』がオンラインに」 ([2019-05-25-1]) で紹介した,写本の精密画像を自由に閲覧できるオンラインサイトと並んで,今回聴きながら展示を見て回った Audio Guide --- the book of kells experience もお薦めしたい.
 英語史の観点からは,島嶼キリスト教文化の同じような文脈で,一足先の紀元700年頃にイングランド北部の島で制作されたとされる Lindisfarne Gospels が,しばしば『ケルズの書』と比較される.Lindisfarne Gospels もラテン語で書かれているが,10世紀頃のものとされる古英語の行間注釈が書き込まれており,早い段階の Northumbria 方言を伝える貴重な資料となっている点で一線を画す.こちらの写本の高精細画像は,こちらから閲覧できるので,あわせて見比べてみるとおもしろいだろう.

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2026-10-07 Wed

■ #6372. 道路標識における Peterborough の省略綴字 [spelling][apostrophe][pcchron][tabihel][borough][onomastics][toponymy][shortening][orthography][gh][heltabi_202608][tabihel202608][tabihel_england]

 昨日の記事「#6371. 少なく見積もって80通りの綴字 --- borough」 ([2026-10-06-1]) の記事と関連して,8月にイギリスの Peterborough をドライブで訪れたときのエピソードを1つ.
 ロンドンからスコットランドを目指して北上する途中,英語史上の貴重な資料 The Peterborough Chronicle と結びつけられるイングランド中東部の町 Peterborough に立ち寄った.近づくにつれてハイウェイの道路標識にその町の名前が現われる頻度が増すのだが,地名としては長めの綴字なためか,運転しながらいくつかのヴァリエーションがあることに気付いた.
 標準的綴字が定まっている現代における「道路標識の異綴字」の事例を発見し,興奮した.表記スペースに余裕がある場合には正式に Peterborough と綴られていたが,そうでない場合には略式の P'borough や Peterboro' が確認できた.運転していたので,あまり写真は撮れなかったのだが,最後の例について1枚撮ることができた.


Peterboro' on the road sign



 2つの省略形は,省略のための戦略が異なる.前者 P'borough は,複合語地名の前半要素 Peter- のイニシャル取りという形態論的な方策に訴えかけている.4文字減らしてアポストロフィを加え,計3.5文字ほどを浮かせていることになる.一方,後者 Peterboro' は,後半要素 -borough の,表音機能としての価値が低いと目される末尾の綴字をそぎ落とすという音韻論的な方策といってよい.3文字減らしてアポストロフィを加え,計2.5文字ほどを浮かせていることになる.
 省略効率としては前者が1文字分勝っているが,先に地名を知っていないかぎり P' から Peter- を復元できないという難点がある.一方,後者は,1文字分負けているが,フルの発音を復元できるという利点がある.などと考えているうちに,Peterborough の町に到着したのだった.
 イギリス地名 Marlborough に対してアメリカ地名(そしてタバコの商標) Marlboro という点も思い起こされる.

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2026-10-06 Tue

■ #6371. 少なく見積もって80通りの綴字 --- borough [spelling][scotland][england][onomastics][toponymy][anglo-saxon][oe][old_norse][tabihel][metathesis][i-mutation][through][med][oed][orthography][gh][tabihel_england]

 イギリスには borough (要塞;市,町)のつく地名が多い.Scarborough, Peterborough,そしてロンドンの観光地にもなっている市場 Borough Market のなかでは独立した1語として用いられている.語源としては,ゲルマン祖語の強変化女性名詞 *burg-s に遡り,「避難する」を意味する動詞 *berg-an と語根を共有するとされる.そこから「砦,城」さらには,その周辺に広がる「市,町」へと語義が発展したのだろう.ゲルマン諸語に同根語がみつかり,古英語では burg, burh などの形で文証される.現代イギリス英語での発音は,単体では /ˈbʌrə/ となるが,地名要素の一部となる場合には /-brə/ と1音節になる.
 ゲルマン諸語まで話しを広げず,英語内部の歴史に限っても,この語には異形・異綴字が非常に多い.各地で地名要素として埋め込まれることが多いので方言形が発達しやすく,また固有名詞の常として,とりわけ地元の人々の口にのぼる頻度が高いために省略形が生まれやすいのだ.歴史を通じて,多様な形で行なわれてきており,予想されるとおり中英語での綴字は百花繚乱である.
 初期近代に入ると burrough の綴字がいったん優勢となったが,後にイングランドやアイルランドでは borough が標準化し,スコットランドでは burgh が定着した (ex. Edinburgh) .一方,スコットランドでは burgh に加えて,broch, brogh, brough のような1音節の形態も見られる.これは同根の古ノルド語の形態 borg の音位転換を経た形態で,スコットランドでは軟口蓋無声摩擦音を伴って /brox, brʌx/ などと発音される.スコットランド北東部の町 Fraserburgh を訪れたとき,地元ではその町が the Broch と呼ばれていることを知った.
 古英語 burg/burh に話を戻そう.この語は古英語においては子音幹女性名詞であり,単数の属格・与格および複数の主格・対格にて,いわゆる i-mutation の効果が見られる.例えば地名として前置詞の後ろに現われやすい単数与格は byrig となる.y が出てくるとなれば,中英語では方言に従ってさらにこの母音が変異する.典型的には,イングランドの北部・東部では biri, 西部・南部では buri, 南東部では berie といった具合だ.結果として,現代でも各地の地名のなかに,こうした異形が分布していることになる.
 さらに,異形から発達して独立した別の語となったとおぼしき burrow (ウサギの穴;隠れ場),やはり同根のフランス借用語 bourgh (市場町)も,この混乱に拍車をかける.
 おかげで,Edinburgh や Peterborough を綴ろうとするとき,いつも悩むことになる.米国では Pittsburgh か Pittsburg かをめぐる綴字論争があったことも思い起こされる.
 OED の borough/burgh と MED の burgh に列挙されている異綴字をざっと取り出してみたところ,以下の80種類の綴字が得られた.これはあくまで控えめな数字である.調べれば他の綴字も掘り出せるだろう.516通りの through と似た状況であることは,決して驚くことではない.

beri, berie, beri3, biri, bor3, bor3e, birie, borc-, bord-, boreg-, boret-, borewe, borgh, borghe, borh, borogh, borou, borough, boroughe, borowe, borowgh, borrough, borrowe, bort-, boru, boru3, borugh, borughe, borw, borw3, borwe, borwgh, bour3, bourg, bourgh, bourh, broch, brog-, brogh, brough, browch, browght, bruch, brugh, brughe, brught, bur3, bur3e, burc, burch, burcht, buregh, bureh, burehg, burewe, burg, burg-, burge, burgh, burghe, burh, buri, burie, burow, burowe, burrh, burrough, burrow, burrowe, burrowghe, burug, buru3, buruh, burw, burwe, burwgh, burwhe, bwrch, byrg, byrig

Referrer (Inside): [2026-10-07-1]

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2026-10-05 Mon

■ #6370. 2026年度の「英語史」講義が始まります --- 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目 [hel_education][hellog][heldio][hellog_entry_set][link][helkatsu][notice]

 慶應義塾大学文学部英米文学専攻の必修科目の1つ「英語史」の秋学期の講義が開講しました.主に専攻の2年生が履修する科目です,今学期は英語史のなかでも特に中英語期以降に注目します.
 今学期の初回講義では,本ブログの記事を組み合わせることにより,改めて英語史の導入を図ります.以下のセクションには多くの情報が詰め込まれていますが,履修生の皆さんは,今回の講義ですべてを消化できなくても,いつでもこの記事に戻ってきてください.一般の hellog 読者の方々も,以下のリンクを通じて,今学期の初回講義を部分的・擬似的に体験できるかと思います.ぜひ以下のリンクを1つひとつたどっていただければ.



1. イントロ
   1.1. 不定冠詞 a と an について: 「#831. Why "an apple"?」 ([2011-08-06-1]),heldio 「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」
   1.2. 「英語史」講義担当者の紹介: note 「堀田隆一のプロフィール」,heldio 「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」,「#2. 自己紹介」 ([2009-05-01-2])
2. 英語史の世界へようこそ
   2.1. 英語史の魅力4点: 「#4546. 新学期の始まりに,英語史の学び方」 ([2021-10-07-1])
      (1) 英語の見方が180度変わる
      (2) 英語と歴史(社会科)がミックスした不思議な感覚の科目
      (3) 素朴な疑問こそがおもしろい
      (4) 現代英語に戻ってくる英語史
   2.2. 「#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」 ([2021-04-05-1]): 魅力 (2) に通じます
   2.3. 「なぜ英語史を学ぶのか」の記事セット: 様々な角度から「なぜ学ぶのか」を検討してみました(cf. heldio 「#444. 英語史を学ぶとこんなに良いことがある!」や heldio 「#112. 英語史って何のため?」でも取り上げています)
3. 英語に関する素朴な疑問
   3.1. 「#1093. 英語に関する素朴な疑問を募集」 ([2012-04-24-1]): 魅力 (3) に通じます
   3.2. 3166件の素朴な疑問
   3.3. これまで hellog で取り上げてきた素朴な疑問集
   3.4. 知識共有サービス「Mond」で英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています
   3.5. この講義で Slido (質疑応答サービス)を利用して英語に関する素朴な疑問を募集します(こちらからアクセスしてください)
4. 英語史を日常の風景に
   4.1. 「#5097. hellog の読み方(2023年度版)」 ([2023-04-11-1]): 2009年5月1日より毎日更新している英語史のブログです.この hellog の効果的な使い方の tips をどうぞ.
   4.2. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio): hellog の音声版というべき Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) .2021年6月2日より毎朝6時に1本10分ほどで英語史の話題をお届けしています.日々の英語史の学びのためにフォローしてください.英語史の話題が日常になります.「#5093. heldio の聴き方(2023年度版)」 ([2023-04-07-1]) および「#5098. 英語史を学び始めようと思っている方へ hellog と heldio のお薦め回一覧(2023年度版)」 ([2023-04-12-1]) も参照.
   4.3. 「#5091. khelf の沿革,活動実績,ミッションステートメント」 ([2023-04-05-1]): khelf HP,公式 X アカウント @khelf_keio,公式 Instagram アカウント @khelf_keio より情報を発信しています.
   4.4. 「#5917. 『英語史新聞』第12号が公開されました」 ([2025-07-09-1]): 世界初の英語史を主題とする新聞の第12号です.
   4.5. 「いのほた言語学チャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」): 2022年2月26日より同専攻の井上逸兵先生(英語学・言語学)と一緒に週2回(水)と(日)の午後6時に動画を公開しています
5. 講義の進め方
   5.1. 講義スライド,テキスト,課題,試験,評価
   5.2. 指定テキストは英語史の古典的名著 Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.:「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1])
   5.3. 英語史の読書案内:「#6203. 英語史概説書等の書誌(2026年度版)」 ([2026-04-21-1]),「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1]),heldio 「対談 英語史の入門書」
   5.4. 過年度に「英語史」を履修した先輩たちの言葉: 「#5393. 2023年度,1年間の「英語史」の講義を終えて」 ([2024-02-01-1]),heldio 「#974. 1年間の「英語史」の講義を終えて --- 2023年度版」
6. ライヴで寄せられた英語の素朴な疑問に即興で答える「千本ノック」も



 今学期も楽しい英語史ライフを!

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2026-10-04 Sun

■ #6369. Derrigimlagh Bog --- 100年ほど前の技術的最先端を象徴するアイルランド西部の沼沢地 [tabihel][ireland][morse_code][history][tabihel_ireland]


Foundations of the Marconi wireless station power plant, Derrigimlagh Bog, Connemara, Ireland



 9月半ば,アイルランド西部 Connemara の奥,大西洋に面した Derrigimlagh Bog という湿地を訪れた.目に入るのは,泥炭色の水をたたえた小さな湖沼と,荒涼とした大地だけ.アイルランドの英語史ゆかりの地をめぐってきた「旅hel」 (tabihel) シリーズだが,今回は思い切って西の果てまで足を延ばしてみた.
 何もないように見えるこの沼沢地こそ,20世紀初頭の技術史と英語史の双方にとって見逃せない場所である.1907年,ここに世界最大級の無線電信基地局が築かれ,大西洋を越えた初のモールス信号が発信された.築いたのは,イタリア人技術者 Guglielmo Marconi (1874--1937) である.現地の解説パネルによれば,彼はイタリアで生まれ育ったが,母 Annie Jameson はアイルランド人であり,Jameson ウィスキー一族の出身だという.親族が Dublin と Wexford に蒸留所を所有していたというから,Marconi はまさにイタリアとアイルランド,両国の血を引く科学者だったことになる.


Panel and Photo about Marconi



 1905年に建設が始まったこの基地局は,当時世界最大の無線局だった.受信用アンテナは,湖を挟んで約610メートルにわたって張られていたという.これほどの設備を動かすには莫大な電力が要る.そのため湿地のただなかに発電所が建てられ,昼夜を分かたず轟音を響かせていた.技師の住居,貯水池,受信室,発電施設,労働者の社交場まで備え,人里離れた泥炭地に小さな産業集落が出現していたというわけだ.今では,発電所や労働者住宅の土台部分だけが,草を食む羊たちそばでひっそりと残るのみである.
 この地はもう1つの歴史の舞台でもある.1919年6月15日,John Alcock と Arthur Whitten Brown が,カナダ東部 Newfoundland からの大西洋無着陸横断飛行を果たし,まさにこの Derrigimlagh の沼地に降り立ったのだ.上空から見た緑の湿地を平坦な野原と見誤っての着陸だったと伝えられている.
 今日,この湿地には5キロほどの周遊トレイルが整備されており,Marconi の基地局跡と Alcock and Brown の着陸地点の双方をめぐることができる.幸い大きく崩れることのない空模様のもと,荒涼としたループを存分に楽しむことができた.
 この荒涼たる湿地は,大西洋を挟み新旧大陸をつないだ,コミュニケーションと輸送・交通に関する2つの技術的快挙を象徴する歴史的に重要な場所だったのだ.そして,この事業に関わった人々の間で用いられていた言語も,その人々の仕事を通じて大西洋を渡った言語も,英語だった.英語史上にも銘記されるべき場所である.

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2026-10-03 Sat

■ #6368. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年10月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][open_mic]



 なぜフリーレンは Friezen ではないのか.銀行の bank と土手の bank はどこから来たのか.同じ話題に複数の寄稿者が別々の角度から切り込む,そんな響き合いの目立つ号が届きました.有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 10月号が,9月28日に公開されています.通算第24号となります.創刊から丸2年,素晴らしい継続力です!
 今号も Galois さんによる見出し画像,Lilimi さんによる目次作成に導かれて,本編が始まります.
 トップバッターは ari さんで,寄稿された多数の記事のなかなから7本が目次に上がっています.Don't be quiet. の do の謎に始まり,「フリーレン」をヴェルネルの法則 (verners_law) で読み解く一篇,bank 「銀行」の借用元をイタリア語とフランス語のあいだで考える一篇,on foot や toothbrush がなぜ単数形なのかを問う一篇など,今号も縦横無尽です.
 この「フリーレン」と bank の話題には,ykagata さんと mozhi gengo さんも呼応しています.ykagata さんはドイツ語 frieren の r がかつて s だったという文法的交替の話題を『新訂・中高ドイツ語小辞典』で掘り下げ,ドイツ語 Bank 「長椅子」の語源にも迫っています.mozhi gengo さんは,土手の bank が古ノルド語由来,銀行の bank がフランク語由来であるのに,なぜ古英語由来の bank がないのかと問います.同じ語をめぐって3人の視点が交差するのは,Helvillian ならではの醍醐味です.mozhi gengo さんはほかにも,中動態の行方,ウイスキーやウォッカが「命の水」と呼ばれる理由,yard と garden と「ちゅら海」の関係など,今号も多作です.
 辞典通読勢も着実に歩みを進めています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は diet, dig, dinner へ.あまねちゃんは通読シリーズを No.11 まで進めつつ,『英語語源ハンドブック』を用いた「日曜日」の語源クイズや,拙著『英語史で解く英文法の謎』に「載りそうで載らなかった」トピックの想像まで,遊び心あふれる5本を寄せています.
 教育の現場からは,sorami さんの中学生向け語源クイズが第16弾から第18弾まで順調に公開されています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」も日々絶好調で,今回目次に上がっているのは water から good までの7本です.川上さんは「時,条件を表す副詞節」で未来のことでも現在形を用いる理由を前後編で論じ,三条市での講座開講も報告しています.kendama_player さんは形態的生産性を整理する記事を寄稿しています.
 ほかにも,Grace さんのトイレ談義の再訪,Lilimi さんの DELF B2 合格の振り返り,しーさんのチャーハンと英語にかけられた「呪い」の話,umisio さんの「伏線回収」論その5,こじこじ先生のオリジナル曲など,多彩な顔ぶれが並びます.巻末は Grace さんによる編集後記で締めくくられています.
 寄稿者の皆さんが各々の持ち場で書き継ぎながら,ときに同じ語をめぐって自然と議論が交差していく.コミュニティとしての成熟を感じさせる号となっています.Helvillian 10月号はぜひ本編でお楽しみください.
 3年目に突入する次号では,どんな響き合いが生まれるのか,今から楽しみです.そして,この hel活の輪に加わりたいと思われた方は,活動拠点となっている Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.

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最終更新時間2026-10-09 05:00

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