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hellog〜英語史ブログ

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2026年6月10日,新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)が発売されました.Amazon 新着ランキングの「語学・辞事典・年鑑」「英語」「新書」の3部門で第1位を獲得.「発売前増刷」もかかりました.本書に関する情報をまとめた『なぜさんたんげん』著者公式HPもオープンし,最速レビュー掲載などで盛り上がっています.


堀田隆一(ほったりゅういち)による,英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログです(note のプロフィールはこちら)."History of the English Language Blog" ということで,略して "hellog".英語史と関連する英語学・言語学一般の話題も扱っています.本ブログで紹介・推薦する書籍などについて,特別に表記しない限り,すべて自主的な言及です.また,堀田は Amazon のアソシエイトとして適格販売により収入を得ています.

まずは,
  1. 英語史の学び始め/続けには,まず以下の記事からスタート!
  2. アクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事
  3. 英語に関する素朴な疑問に関する記事群
  4. 全記事の標題の一覧 (Archives)
  5. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio)
  6. Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」(heldio)
  7. 知識共有サービス「Mond」での,英語に関する素朴な疑問への回答
  8. 慶應英語史フォーラム (khelf) の X アカウント @khelf_keio
  9. The HEL Hub (= helhub):日々発信される英語史系コンテンツの新着情報が数時間に一度リアルタイムで更新されていく「hel活ポータル」
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をご覧ください.

その他のお知らせ

お知らせ 英語史トーク動画の第2弾です! 8月21日,YouTube 「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」にて,英語史トーク第2弾の前編が公開されました.「【英語の謎 goの過去形はなぜwentなのか】古英語時代は-edよりも不規則動詞がデフォルト|なぜ「あなた」も「あなたたち」もyouで表すのか|He likes...三単現にはなぜsを付ける?」および「【flower(花)とflour(小麦粉)は同じ語源!】help,aid,assistance…「助け」の類義語は何が違う?|同音異義語が多いのはなぜか|「イギリス英語は保守的」は本当か】」です.今回もフリーアナウンサーの近藤さや香さんとお話ししています.2025/08/21(Thu)

お知らせ 英語史トーク動画の前編が9.8万回視聴されています! 5月30日,YouTube 「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」にて,英語史トーク動画の前後編が公開されました.「【know の K はなぜ発音しない?「英語史」で英語のナゼがわかる】国内唯一慶應だけの必修科目|古代英語はもはや別言語|500通り以上の綴りがある英単語|憧れと威信が英語を変化させた」および「【ややこしい英語が世界的言語になるまで】文法が確立したのはたった250年前|an appleのanは「発音しやすくするため」ではない|なぜ複数形はsばかりなのか|言語の"伝播"=権力」です.フリーアナウンサーの近藤さや香さんとともに,英語史入門を念頭にお話ししています.hellog の関連記事はこちら.2025/05/31(Sat)

再重版がかかっています! 皆さんにご好評,ご愛読いただいています!(2025年9月23日現在)

2025年6月18日(水),唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力)『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されました.5月21日以来,刊行日までの歴代最高記録として,Amazon 新着ランキングで「英語」部門にて第1位,「語学・辞事典・年鑑」部門にて第2位を獲得しています.また,刊行後の4日間で紀伊國屋書店新宿本店の語学部門の週間売り上げランキングで第1位,丸善丸の内本店では第4位を記録しました.リアル書店やこちらの Amazon ページ(あるいは以下のQRコード)より,ぜひご入手ください.英語学習・教育に関わる皆さんにとっての必携書!

合わせて本書のランディングページもご覧ください!

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『英語語源ハンドブック』の Amazon リンク


お知らせ ヘルメイト有志によるhel活を紹介する月刊 Helvillian の最新号2025年8月号が7月28日にウェブ公開されました.こちらよりご覧ください.2025/07/29(Tue)

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お知らせ 2025年6月18日(水)に,唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著)『英語語源ハンドブック』(研究社)が発売予定! 研究社公式HPの近刊紹介はこちらからどうぞ.hellog のこちらの記事,および heldio のこちらの配信回でも本書を紹介しています.2025/05/17(Sat)

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お知らせ 2025年7月7日に khelf による『英語史新聞』第12号がウェブ上に一般公開されました.こちらからPDFでご覧になれます.heldio のこちらの配信回,および hellog のこちらの記事でも第12号公開についてお知らせしています.公開後は khelf の X (旧ツイッター)アカウント @khelf_keio より関連情報をお伝えしますので,ぜひフォローをお願いします.2025/07/09(Wed)

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お知らせ Voicy でお届けしている「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の Video Podcast 版を開始しました.Spotify より,同名の Podcast チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」として視聴できます.フォローをよろしくお願いします.最新回はコチラです↓ 2025/03/13(Thu)

お知らせ 2025年2月28日に,私の所属する慶應義塾大学の 公式 YouTube チャンネル「慶應義塾 Keio University」内の「研究者紹介動画」というシリーズの1回として「英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」慶應義塾大学文学部・堀田隆一教授」が公開されました.4分22秒ほどの公式動画です.2025/03/01(Sat)

お知らせ 新年度2024年の4月より khelf による「英語史コンテンツ50+」が始まっています.休日を除く毎日,khelf メンバーより英語史の話題が1つ上がってきます).日々,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio からも関連情報を発信しています.2024/04/19(Fri)

お知らせ 知識共有サービス「Mond」にて英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています.最新の質問&回答はこちらよりご覧ください.2024/09/30(Mon)

Mond Latest

お知らせ 2023年7月より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にて「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズを展開しています.Baugh and Cable の A History of the English Language (6th ed.) を1回1セクションずつ精読していくというシリーズです.週に1,2回程度のペースで続けています.有料配信ですが冒頭チャプターは試聴可となっていますので,ぜひ聴いてみてください.バックナンバー一覧はこちらの記事よりどうぞ.2024/02/09(Fri)

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お知らせ 2022年2月26日に,同僚の井上逸兵さんと YouTube チャンネル「いのほた言語学チャンネル(旧:井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル)」 (inohota) を始めています.毎週(水)(日)の午後6時に更新予定です.チャンネルの趣旨としては,こちらの hellog 記事あるいは Voicy でのアナウンスをご一読・ご視聴ください.直下(↓)は最新の YouTube 放送となります.本ブログの関連記事もお読みください.2022/03/10(Thu)

お知らせ 2024年7月より,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の再放送という趣旨で,YouTube チャンネル「heltube」 にて日々配信しています.直下(↓)は最新公開の回となります.2024/08/10(Sat)

お知らせ 2025年3月6日より5月6日まで,heldio の前身である「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) として2020--2021年に配信していた62回の配信を,こちらの YouTube にて再放送していました.2025/05/07(Wed)

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お知らせ 2021年6月2日より,英語史の音声コンテンツを配信する「英語の語源が身につくラジオ」(通称 heldio)を始めています.本ブログの姉妹版という位置づけで,音声配信プラットフォーム Voicy を通じて,英語史に関する音声コンテンツを提供しています.企画の趣旨として,こちらの hellog 記事をご一読ください.直下(↓)は最新の Voicy 放送となります.2024/07/20(Sat)

お知らせ 2023年6月2日より,上記 heldio にプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) が加わりました.毎週火木土の18:00よりお届けしています.helwa は有料配信となりますが,開設趣旨としてこちらの hellog 記事をお読みください.直下(↓)は最新の helwa 放送となります.2023/09/09(Sat)

お知らせ 2023年10月6日より,stand.fm にて「英語史つぶやきチャンネル」 を始めています.英語史の話題を不定期でカジュアルにお届けします.直下(↓)は最新の配信回となります.2025/01/28(Tue)

お知らせ 2023年1月中旬に家入葉子先生(京都大学)と堀田の共著となる,英語史研究のハンドブック『文献学と英語史研究』が開拓社より発売となります.本書についてはこちらのページで,著者が様々に紹介しています.2023/01/05(Thu)

『文献学と英語史研究』

お知らせ 2022年11月8日に『ジーニアス英和辞典』第6版が発売となりました.新版で初めて導入されたコラム「英語史Q&A」を執筆させていただいていますので,ぜひ辞典手に取って開いてみていただければと思います.コラムについては hellog でもこちらの記事群で関連する話題を取り上げています.2022/11/15(Tue)

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お知らせ 堀田ゼミの紹介ページがゼミ生により立ち上げられました.入ゼミを希望する学生は必見です.堀田による公式のゼミ紹介はこちらの記事からどうぞ.2022/11/04(Fri)

お知らせ ご愛読ありがとうございます,9刷が発行されています.2022年9月より電子書籍としても配信開始です.本ブログの内容を多く取り込んだ拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』が2016年に研究社より出版されました.本の趣旨や補足情報のために,コンパニオン・サイト (naze) を用意していますので,そちらも是非ご覧ください.また,本ブログ内の「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」にも紹介があります.2024/08/10(Sat)

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お知らせ このたび様々な言語における標準化の歴史を題材とした本が出版されました.高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
本ブログ内でも本書の紹介記事をいくつか書いていますので,そちらもご覧ください.さらに,7月9日と8月1日には2回にわたって3編者対談を Voicy で配信しましたので,ぜひこちらこちらより各々お聴きください.

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お知らせ 本ブログベースの拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』の第4刷が出ています.本書のコンパニオン・ページ及び著者による紹介ページをご覧ください.また,本書の内容に沿ったブログ記事へのリンク (hogusu) はおすすめです.2018/09/02(Sun)hogusu_front_cover_small

お知らせ 「手軽に英語史を」というコンセプトで,地味に「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) を始めています.1つ数分以内のコンテンツです.これまでのコンテンツ一覧よりどうぞ.2020/07/09(Thu)

お知らせ 大修館『英語教育』の2020年3月号に,連載「英語指導の引出を増やす 英語史のツボ」の第12回(最終回)の記事が掲載されています.今回の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.どうぞご一読ください.2020/02/14(Fri)eigokyouiku_rensai_12_20200214_front_cover_small.jpg

お知らせ 1月5日発売の英語学習誌『CNN English Express』2月号に「歴史を知れば納得! 英語の「あるある大疑問」」と題する拙論が掲載されています.英語史の観点から素朴な疑問を解くという趣向の特集記事で,英語史の記事としては珍しく8頁ほどの分量を割いています.どうぞご一読ください.hellog 内の紹介記事もどうぞ.2019/01/07(Mon)cnn_ee_201902_front_cover_small

お知らせ 私も一部執筆している服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.が2018年3月に出版されました.日本語史と比較対照しながら英語史や英語の歴史的変化について学べます.本ブログ内の#3283の記事にも簡単な紹介がありますのでご覧ください.2018/04/23(Mon)

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お知らせ Simonn Horobin 著 Does Spelling Matter? の拙訳『スペリングの英語史』が早川書房よりより出版されました.紹介記事として,本ブログ内の「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」「#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要」もご覧ください.2017/10/01(Sun)

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お知らせ 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』に関連する研究社ベースの連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」が始まっています(そして12回で終わりました).2017/12/21(Thu)


最近 7 日分を以下に表示中 / 今月の一覧

2026-09-19 Sat

#6354. 英語綴字史に足跡を残した Shaw --- ダブリンの生家を訪ねて [shaw][dublin][tabihel][ireland][spelling][spelling_pronunciation_gap][orthography][spelling_reform]


Birthplace of George Bernard Shaw on Synge Street, Dublin



 ダブリン滞在中の早朝ジョギングで出会った1コマをお伝えする,ダブリンの「旅hel」 (tabihel) シリーズ.市南部の Synge Street まで足を延ばし,George Bernard Shaw (1856--1950) の生家とされる建物を訪ねてみた.今ではごく普通に誰かが暮らしている住宅で,うっかり通り過ぎてしまいそうなほど何の変哲もない建物なのだが,玄関脇にはダブリン市による銘板がしっかりと掲げられており,ここが Shaw の生誕地であることを物語っていた.
 Shaw の面影は,ダブリン市内の別の場所でも拝むことができる.Merrion Square West に面するアイルランド国立美術館 (National Gallery of Ireland) のホールに足を踏み入れると,Shaw その人がオーディオの案内とともに出迎えてくれるのだ.少年時代にこの美術館へ足繁く通って絵画を通じた美的感覚を養い,後年,自作の版権収入の一部を遺贈したのも Shaw 自身だった.生家の慎ましさとは対照的な,故郷ダブリンにおける Shaw のもう1つの居場所である.


George Bernard Shaw at the National Gallery of Ireland, Merrion Square West, Dublin



 Shaw といえば,綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) を痛烈に皮肉った ghoti = fish の小咄で広く知られている.もっとも,この例を発案したのは Shaw 自身ではなく,ある綴字改革者が挙げた例を Shaw が擁護したというのが実際の経緯らしいことは,「#15. Bernard Shaw が言ったかどうかは "ghotiy" ?」 ([2009-05-13-1]) で見た通りである.だが,Shaw にとって英語綴字の不合理は単なるジョークの種にとどまらず,生涯にわたる本気の問題意識だった.遺言のなかにまで綴字改革への企図を書き残し,多くの候補者から選ばれた Kingsley Read の手による新アルファベット Shavian Alphabet の考案を後押ししたことは,「#605. Shavian Alphabet」 ([2010-12-23-1]) で紹介した通りである.
 しかし,Shavian Alphabet は,後世にほとんど影響力を及ぼさなかった.一般の英語使用者の綴字習慣を変えるには至らず,今では英語綴字改革史上の1エピソードとして記憶されるにとどまっている(「#5030. 英語史における4種の綴字改革」 ([2023-02-03-1]),「#5009. なぜバーナード・ショーの綴字ネタ「ghoti = fish」は強引に感じられるのか?」 ([2023-01-13-1]) も参照).
 一方,本気ではなく皮肉として放たれた "ghoti" のほうは,時代を超えて今もなお世界中で語り継がれ,英語学習者が綴字と発音のギャップに感じる困惑を,多少誇張気味にではあるが,見事に代弁し続けている.
 真剣に企てた改革案よりも,軽い皮肉のほうが長く生き延びる.綴字と発音のいたちごっこを長年見つめてきた身として,このねじれもまた,英語史のおもしろいところだなと思う.

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2026-09-18 Fri

#6353. medium 「媒体」の語源は「真ん中のもの」 --- アウトリーチ活動における媒体の2つの意味 [outreach][helkatsu][etymology][semantic_change][borrowing][latin][medium]

 私は長らく「英語史をお茶の間に」をモットーに英語史のアウトリーチ活動,「hel活」(helkatsu) を続けてきている.活動を始めた当初は,このブログが事実上唯一の発信の媒体 (medium) だったが,やがて書籍,雑誌,音声配信,動画配信,講演会などの様々な媒体 (media) で発信するようになった.今回は medium という単語の語源に注目してみる.
 この単語は,ラテン語の形容詞 medius 「真ん中の」の中性形が名詞化したものに遡る.つまり「真ん中のもの」を意味した.このラテン単語は,ルネサンス期の16世紀後半に時代に似つかわしく学術用語として英語に入ってきた.幾何学用語として「平均」を,論理学用語として「中名辞」を意味し,堅めの語感をもっていたことが分かる.しかし,時を置かずに,すぐに非学術的な語義が展開していった.「真ん中」「媒体」「(情報伝達の)手段」などである.19世紀にはこの世とあの世を結びつける「霊媒(師)」の語義が加わり,20世紀にかけては新聞・ラジオ・テレビなどの大衆伝達手段が発達するに及んで,特に複数形 media が「マスメディア」を意味するようになった.
 私がhel活で日々頼っている様々な媒体 (media) は,発信者である私と受信者である人々の「真ん中」に立つもろもろの道具である,という見方ができる.しかし,別の見方をすれば,私自身が英語史の世界やその知見と世の中の人々の中間に入って,両者を結びつけようとしている1つの媒体 (medium) として位置づけられることに気付いた(英語史界のいたこか!).
 アウトリーチ活動において,その発信手段をブログにするのか YouTube にするのか,といった第1の意味での媒体について考えることは,もちろん大事である.しかし,どの手段でアウトリーチ活動を行なうかにかかわらず,発信している人自身が,実は第2の意味での媒体なのだ.自分自身が medium であることを認識し,その上で自分に合った media を見つければよいのではないか.ただし,「真ん中」というと華々しいセンターのイメージがあるものの,逆に「中途半端;良くも悪くもない,凡庸な」にも通じるので注意が必要である.
 なお,今回の単語は印欧語根としては *medhyo- に遡り,ここから様々に派生して,amid, middle; mean, mediaeval, median, mediocre, Mediterranean, meridian, intermediate; mse(o)- などの「真ん中」に関する単語が英語語彙に収まっている.

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2026-09-17 Thu

#6352. 比較級・最上級 の英語史 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第17弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][comparison][superlative][voicy][heldio]



 heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる,『英語語源ハンドブック』(研究社)に基づいた英語語源クイズ・シリーズが,隔週土曜日のペースで着実に更新を重ねています.9月5日に公開された最新回は,「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#17~比較級・最上級~」と題する第17弾です.今回は比較級という,英文法の授業で必ず扱われる基本文法事項を切り口にした構成になっています.
 全7問というボリュームです.早速中身に触れてみましょう.冒頭を飾るのは,nearnext の語源的な関係を問う問題です.near はもともと nigh「近い」の比較級でした.現代英語の私たちが単純な原級として使っている near は,実は由来をたどれば比較級だったのですね.そして next はその最上級形にあたります.同じ発想は,firstlast にも見られます.両語とも,古い時代には別語幹の最上級として機能していたものが,のちに独立した基本語として定着しました.
 中盤では,ラテン語由来の比較級表現に焦点が当てられます.seniormajorminorjunior といった語は,形こそ現代英語のなかでは原級のように使われていますが,もとをたどればラテン語の比較級語尾 -ior を伴う正真正銘の比較級です.また,音楽用語として日本語にもすっかり定着している fortissimopianissimo は,イタリア語の最上級語尾 -issimo を伴う語形であることも紹介されています.「とても強く」「とても弱く」という意味は,実は文法的には最上級だったというわけです.普段何気なく使っている外来語のなかに,比較級・最上級の化石が埋め込まれているとは,なんとも興味深い話ですね.
 後半では,Health is better than wealth. のような比較級を含むことわざの穴埋め問題や,futonhibachisatsuma といった,英語にそのまま取り込まれた日本語由来の語彙を扱う問題が並びます.日本語話者にとっては見慣れた単語が英語の辞書にそのまま載っているという事実に,改めて驚かされます.
 そして締めくくりには,「現代の不規則動詞は,かつては規則動詞だった」という,英語史ならではの逆説的な事実に触れる問いが用意されています! 規則・不規則という現代の分類は,あくまで現代英語の断面を切り取った結果に過ぎず,通時的にみれば,むしろ多くの「不規則」のほうが,古い規則性の生き残りであることも少なくないのです.
 sorami さんは今回も,「これからも『英語語源ハンドブック』をもとにした英語クイズを少しずつ投稿していきます.(隔週土曜日更新予定)」と結ばれています.全国の英語教員の皆さん,ぜひこのクイズを授業の小ネタやウォームアップにご活用ください.比較級・最上級という身近な文法事項の背後に,これほど豊かな歴史が眠っているとわかれば,生徒たちの英文法に対する見方もきっと変わるのではないでしょうか.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2026-09-16 Wed

#6351. 英語史でも著名な Jonathan Swift --- St Patrick's Cathedral のお墓を訪ねて [swift][tabihel][dublin][academy][prescriptive_grammar][shortening][prescriptivism][lmode][history][ireland][clipping][complaint_tradition]


St Patrick's Cathedral, Dublin, seen from the adjoining park



 ダブリンにゆかりのある文人を取り上げる「旅hel」 (tabihel) シリーズ.今回は,文人,政治家,そして主席司祭でもあった Jonathan Swift (1667--1745) に注目する.Gulliver's Travels 『ガリバー旅行記』の著者として世界的に知られる人物だが,英語史上重要なのは,むしろ別の顔のほうである.
 一雨さっと降ったあと,急に日差しが戻ってポカポカ陽気になった午後,ダブリンの St Patrick's Cathedral に隣接する公園のベンチに腰掛けながら,この建築物の威容を眺めていた.この大聖堂は,アイルランドを代表する "National" を冠された,アイルランド国教会のなかでも別格の位置づけを与えられている教会だ.
 名前の由来である St Patrick は5世紀にアイルランドへキリスト教をもたらした聖人で,アイルランドで最も愛され,尊ばれている人物である.大聖堂そのものは,1190年に,彼の布教にゆかりのあるダブリンのこの地に建てられた.すでに800年以上の歴史を数える.
 この大聖堂と結びつけられる著名人が,もう1人いる.Jonathan Swift である.1713年に,この大聖堂の主任司祭に就任した.イギリス政界に深く関わっていた Swift が聖職者としてこの座に収まることには反対の声もあったというが,最終的にはこの職を務め上げた.大聖堂のなかには彼の墓があり,彼との関係がいまだ謎に包まれたままの女性 Stella とともに眠っている.大聖堂内は半ば Swift 博物館のような様相を呈しており,オーディオガイド付きの展示となっていた.
 Swift は英語史の観点からも位置づけられる人物だ.英語史的には,1712年に英語アカデミーの設立を提案した政治家としての顔が重要である.すでにイタリアやフランスでは早々と母語を統制するアカデミーが設立されていたのに対し,イギリスにはいまだ存在しなかった.Swift は A Proposal for Correcting, Improving and Ascertaining the English Tongue と題する提案書を著し,英語を統制する公的機関の設立を訴えた.これは17世紀以来くすぶり続けてきたイギリスにおけるアカデミー設立運動の,事実上最後にして最大の試みだったといってよい(「#134. 英語が民主的な言語と呼ばれる理由」 ([2009-09-08-1]),「#141. 18世紀の規範は理性か慣用か」 ([2009-09-15-1]) を参照).
 だが,この提案は結局は通らなかった.政敵による反発に加え,提案の理解者だった Anne 女王が1714年に急逝し,後ろ盾を失ってしまったことが大きいとわれる(「#2759. Swift によるアカデミー設立案が通らなかった理由」 ([2016-11-15-1]),「#3602. アン女王と英語史」 ([2019-03-08-1]) を参照).結果として,英語はついに中央集権的なアカデミーをもたない言語となったのである.フランス語における l'Académie française のような「上から」の統制機関が存在しないまま,18世紀後半にかけては文人・知識人による「下から」の慣用重視の規範が形成されていくことになる.18世紀初頭の時点では,英語はまだ国際的にはフランス語の後塵を拝していたが,後に世界中に広がっていく英語が,ついぞ1つの機関に統制されることのない野放しの言語として育っていく分岐点が,まさにこの1712年にあったのだと思うと感慨深い.
 なお,Swift には英語史上もう1つのおもしろい顔がある.大の「短縮語」嫌いで,clipping を非難する文章まで書いているのだ(「#1947. Swift の clipping 批判」 ([2014-08-26-1]) を参照).
 大聖堂のすぐ裏手にはアイルランド最古の公開図書館 Marsh's Library (1701年)があり,そこへは Swift, Joyce, Stoker もかつて通ったという.私が図書館に訪れたとき,そこでも Swift 展が開かれていた.大聖堂と図書館を合わせて「Swift 博物館」をめぐった感がある.Gulliver's Travels の作者,大聖堂の主任司祭,という以外の顔として,英語史における Swift の存在感を,多くの方に知っていただきたい.

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2026-09-15 Tue

#6350. routine は「切り開かれた後に踏み固められていった道」 --- 日課ということ [outreach][helkatsu][etymology][semantic_change][french]

 アウトリーチ活動に関連する英単語について語源小咄を展開するシリーズ.hel活として日々 hellog を更新し,heldio を配信する.これはすっかり私の routine 「日課,日常業務」となっている.今回は「ルーチン」として日本語でも使われるようになった英単語の語源に迫る.
 routine は17世紀半ばにフランス語から借用された語で,route 「道,ルート」に接尾辞 -ine が付いた語形成である.route 自体は,さらにラテン語の rupta (via) 「切り開かれた(道)」に行き着く.rupta は動詞 rumpere 「破る,切り開く」の過去分詞(rupture 「破裂」や bankrupt 「破産した」にも同根が見える)であり,route とは,「(森や荒れ地を)切り開いてできた(道)」を意味したようだ.
 今回注目している routine は,この「切り開かれた」道がたどった末路を体現している語と考えられる.当初は切り開かなければならない道だっが,いったん切り開かれると,そこは人々が頻繁に便利に行き交う道に化ける.むしろ,踏み固められた道,決められた道になくのだ.荒々しくも勇ましい原初の rupta の語感が,すっかり牙を抜かれてしまったかのようだ.
 この routine の語源は,日課,そしてそれを身につけることの本質を表わしているように思われる.あることを日課として習慣化することは,道を切り開くがごとき困難を伴う.しかし,一旦最初の困難を乗り越えれば,むしろ水や空気のような存在に近づき,さほどの困難を感じずにこなせるようになる.しかし,だからといって大幅に楽になるかというと,必ずしもそうでもない.半ば自然にできるようになるかもしれないが,おもしろいかどうかば別問題だからだ.ルーチンワークは,えてして,つまらない,味気ない,甲斐がない.踏み固められた道であっても,少なくとも「歩く」ことはしなければならないが,歩く行為はたいていの場合それ自体が愉快なわけでもない.
 私は,いくつかのhel活を日課として定着させようとしてきたが,そのたびごとに最初は道を切り開く困難を感じた.今では踏み固められた道を歩むことができるようになり,ぐんと困難は減ったように思う.しかし,歩みを続けていくこと自体は,それはそれで大変なことである.油断すればすぐに荒れ地に戻ってしまうのではないかという懸念がある.

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2026-09-14 Mon

#6349. Samuel Beckett Bridge とアイルランドの箴言 [tabihel][dublin][ireland][beckett][literature][translation][harp][heldio]


Samuel Beckett Bridge, Dublin



 先日の記事「#6341. ha'penny 「半ペニー」 --- ダブリンの Ha'penny Bridge より」 ([2026-09-06-1]) で「明日も明後日もこの橋を渡ることにしよう」と書いたが,実際には毎朝のジョギングのコースは日によって変わる.すでに定番コースの1つでもあるのだが,今朝は Ha'penny Bridge からさらに下流方面に走り,Liffey 川が海へと近づいていく Docklands 地区で,異彩を放つ橋を横目に走った.Samuel Beckett Bridge である.2009年に竣工の比較的新しい橋だ.アイルランドの国章でもあるアイリッシュ・ハープ (Irish harp) を横倒しにした形そのものの橋だ.橋は北岸と南岸の通りを結ぶ交差点も兼ねており,信号待ちがてら,ここでひと息つくことが多い.
 この橋の形が象るハープは,アイルランド共和国の紋章やギネスビールのロゴにも用いられる国民的な象徴だが,橋のたもとに立つと,その意匠の大胆さに見とれる.ちなみに,最近の heldio は,この早朝ジョギングの復路にて,この橋の付近で屋外収録を行なうことが増えている.川の風にあおられながらの収録は,臨場感があってなかなか気に入っている.
 さて,この橋の名の由来となった Samuel Beckett (1906--89) は,ダブリン近郊 Foxrock の生まれ.Waiting for Godot (原題は仏語 En attendant Godot, 1952年)をはじめとする不条理演劇の傑作で知られ,1969年にノーベル文学賞を受賞したアイルランド出身の作家である.英語史の観点からも見逃せないのは,Beckett はフランス在住作家だったが,英語とフランス語の両言語で創作し,しかも自作を自ら他方の言語へと訳し直す自己翻訳を生涯にわたって実践した稀有な作家だという点だ.削ぎ落とすように言葉を切り詰めていく彼の作風は,2つの言語のあいだを往還するなかで,いっそう研ぎ澄まされていったのだろうか.
 Beckett のよく知られた箴言の1つに,次の文句がある.晩年の散文作品 Worstward Ho (1983) の冒頭の表現だ.

Ever tried. Ever failed. No matter. Try again. Fail again. Fail better.


 「やってみた.失敗した.それがどうした.また挑戦せよ.また失敗せよ.もっとうまく失敗せよ.」今日では Fail better. の部分だけが自己啓発やビジネスの文脈で独り歩きし,すっかり紋切り型のスローガンと化している.しかし,やはり味わいがある.
 この教訓は,あらゆる失敗に等しく当てはまるわけではないだろう.取り返しのつかないほど大きな失敗をしてしまうと,そう簡単には次の挑戦に向けて立ち上がれないものだ.しかし,やり直しのきく小さな失敗であれば,この箴言はそのまま生きた指針になる.失敗そのものをいちいち気に病まず,成功するまで淡々と続けよ,ということだ.
 ただし,実践する側にとって本当に難しいのは,まさにそこである.次の挑戦が実るのが1週間後なのか,1ヶ月後なのか,1年後なのか,それとも10年後なのか,誰にも前もっては分からない.No matter. と割り切れるだけの余裕は,見通しの立たない時間の長さの前で,しばしば試される.
 思えば,アイルランド出身の作家には,Beckett にせよ Swift にせよ,寸鉄人を刺す箴言の名手が数多く出ている.先日立ち寄った土産物屋の店先にも,アイルランド出身作家たちの箴言をあしらった「箴言マグネット」なるものがたくさん並んでいた.1つ1つ手にとって読むたびに思わずウームとうなってしまい,買って帰って冷蔵庫にでも貼ろうかと,本気で悩んでしまうほどだ.

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2026-09-13 Sun

#6348. B&C の第65節 "The Application of Native Words to New Concepts" (4) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][borrowing][semantic_change][christianity][lexicology][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][helwa][loan_translation]



 キリスト教の中核をなす概念を,ラテン語からの借用に頼らず,本来語の意味を巧みに転用することで表現していく.そんな古英語期の言語的創意工夫を物語るテーマを,Baugh and Cable の名著 A History of the English Language, 6th ed. を通じて Taku さんと読み進める「超精読会」の最新回でお届けします.
 今朝の heldio 最新回は,「#1932. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (65-4) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」です.今回もナビゲーターは,helwa/heldio ではお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)が務めてくださいました.
 今回は前回に引き続きキリスト教に関連する動詞や名詞が本来語で表現される例が挙げられています.具体的には「洗礼」「聖餐」「捧げ物」という,キリスト教の教義の核心に触れる単語群です.借用語ではなく,本来語の意味の拡張・応用によってどう表現されたかが読みどころです.
 fullian(清める)から派生した fulluht(洗礼)は,fulluht-bæþ(洗礼盤)や fulluht-fæder(名付け親)など,数々の複合語を生み出しました.また,ゲルマン語本来の hūsl(聖餐)や lāc(捧げ物)が,キリスト教の儀式を指す語として転用されている点も要注目です.異教の語彙が新しい宗教的な意味の器として再利用される --- ここに,古英語話者たちの言語的な戦略が見て取れます.今回精読した英文を以下に掲げましょう (Baugh and Cable, p. 86) .

For baptize (L. baptizāre), the English adapted a native word fullian (to consecrate), while its derivative fulluht renders the noun baptism. The latter word enters into numerous compounds, such as fulluht-bæþ (font), fulwere (baptist), fulluht-fæder (baptizer), fulluht-hād (baptismal vow), fulluht-nama (Christian name), fulluht-stōw (baptistry), fulluht-tīd (baptism time), and others. Even so individual a feature of the Christian faith as the sacrament of the Lord's Supper was expressed by the Germanic word hūsl (modern housel), while lāc, the general word for sacrifice to the gods, was also sometimes applied to the Sacrifice to the Mass.


 1文ずつ丁寧に読み解いていくこの営みは,地味に見えて,実は英語史のおもしろさの核心に触れる時間でもあります.過去回のアーカイブは「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) からたどれます.ご興味を持たれた方は,Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へもぜひ.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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最終更新時間2026-09-19 05:00

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