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2026-03-15 Sun
■ #6166. sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズが第3弾,第4弾と快進撃 --- 中高生のための英語史 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][helwa][silent_letter][onomastics][proverb][hypocorism]


本ブログでも2月より「#6125. heldio/helwa リスナー sorami さんによる『英語語源ハンドブック』のクイズ・シリーズが開始 --- 中高生のための英語史」 ([2026-02-02-1]) と「#6132. sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第2弾 --- 中高生のための英語史」 ([2026-02-09-1]) の2回にわたりお知らせしてきました.heldio/helwa コアリスナーの sorami さんが,協力者の方とともに繰り広げる『英語語源ハンドブック』をベースとした,中学生に向けての英語史クイズのシリーズです.その後もクイズを公開し続けられ,上記の通り第3回と第4回にもアクセスできるようになっています.
中学校などの「授業で使える」と謳っているからでしょうか,シリーズ初回公開から1ヶ月半で,早くも note 上で人気シリーズとなっています.問題の質が高く,ヒントも中学生にとって親切で,解説も必要十分な詳しさ.実際に授業で活用されることを念頭に,コンテンツが磨き込まれているという印象です.
第3回は,日本語になっている身近な英単語を参照して,語源で種明かしするという趣旨のクイズが多く出されています.最後の問題で黙字 (silent_letter) に注目している辺りにも,出題センスが光ります.
第4回は,英語の諺と英語の人名と愛称形に関する興味深い話題です.ここにもやはり,日本語になっている諺や,日本でも馴染みのある英語人名をとっかかりに,その語源に踏み込んでいくという見事な構成が仕組まれています.解説は情報量が多いものの,皆が親しみやすい話題なので,知識が頭にスルスルと入ってきますね.
すでに読者の方々からも感想が寄せられてきている通り,「中学生向け」と題しているものの,大人も楽しんで学べてしまう良質のコンテンツとなっています.
sorami さんは,今回も結びで「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです」と述べられています.全国の英語教員の皆さん,ぜひこのクイズを授業などで活用してみてください.出題や解説にあたっては,原則として『英語語源ハンドブック』に依拠しているということですので,その点もご安心ください.
そして,慣れてきたら,皆さんご自身が『英語語源ハンドブック』からおもしろい話題を引き抜いて,クイズを作問してみてください.その折りには,ぜひ一般にも公開していただければ.「英語史を教室に」の輪が広がっていくことを期待しています!
sorami さんのクイズシリーズについては,先日の heldio 配信回「#1748. sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズが絶好調」でもご紹介しています.ぜひそちらもお聴きください.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
2026-03-14 Sat
■ #6165. 月刊誌『英語教育』にて「いのほた連載」がスタート [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze]

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昨日3月13日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の4月号が発売されました.今月号より,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」が始まっています.
本連載は,2人で配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」から派生した連載企画です.早いもので YouTube での活動も4年を超えましたが,動画でお届けしてきた言葉のダイナミズムや楽しさを,今度は誌面を通じてもお届けしたいと考えています.
連載の趣旨としては,英語教員の方々はもちろん,英語を学ぶすべての読者の皆さんに,社会言語学と英語史という2つのレンズを通して,英語という言語の奥深い魅力を再発見していただくことにあります.見開き2ページというコンパクトな形式ですが,2人の対談回もあれば,片方がトピックを提供してもう片方がコメントを寄せる回もあるなど,バラエティに富んだコンテンツとなっていく予定です.
第1回は「言語学・英語学の世界にようこそ」と題し,2人の自己紹介とともに本シリーズの狙いについてお話ししています.社会言語学がどのように私たちのコミュニケーションに関わるのか,あるいは英語史がいかにして現代英語の「なぜ?」に光を当てるのか,そのエッセンスを詰め込みました.
また,「いのほた」コンビによる出版物としては,昨年10月に『言語学でスッキリ解決! 英語の「なぜ?」』(ナツメ社)も刊行されています.こちらも連載と合わせてお読みいただけますと幸いです.
英語という言語を,単なる暗記の対象としてではなく,人間が作り上げてきた生き生きとした文化装置として捉え直す.そんな知的な冒険を,毎月の連載を通じて読者の皆様と共有できればと願っています.
新年度にむけて,英語(史)の世界を深めていきたいという方は,ぜひ毎月13日前後の『英語教育』の連載をお見逃しなく!
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第1回 言語学・英語学の世界にようこそ」『英語教育』2026年4月号,大修館書店,2019年3月13日.42--43頁.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.
2026-03-13 Fri
■ #6164. -ought と -aught の発音 [gh][spelling][pronunciation][vowel][orthography][onomastics][spelling_pronunciation_gap]
昨日の記事「#6163. 中学生が発見した「teach の法則」 --- 原形に a が含まれる動詞の不規則過去形は -ought ではなく -aught となる」 ([2026-03-12-1]) について,今後,英語綴字史の観点から深掘りしていきたいと考えているが,手始めに,動詞の過去形に限らず,<ough(t)> と <augh(t)> の綴字について,発音の対応を語例とともに見ておこう.
まず,<ought> について Carney (345--46) より.
O.15 <ought>≡/ɔː/ | _ <t>
Examples: bought, brought, fought, nought, ought, sought, thought, wrought.
Exceptions with /aʊ/ --- doughty, drought. Names such as Boughton, Broughton, Houghton, Oughton, Oughtred, Stoughton have /ɔː/ --- /aʊ/ variation and occasionally /u;ː/ or /əʊ/. Some are only given with one variant by EPD --- Loughton /aʊ/, Moughton /əʊ/, but with the pronunciation of a name one can never be fully certain.
続いて Carney (285) より,<augh(t)> について読んでみよう.
A.9 <augh>≡/ɔː/
Examples: aught, caught, daughter, distraught, fraught, haughty, naught, naughty, slaught, slaughter, taught; Baugh, Bradlaugh, Connaught, Haughtn, Laughton, McNaught, Shaughnessy, Waugh. The names Baughan, Maugham, Vaughan are single syllables (/bɔːn/, etc.). This correspondence is one straightforward part of the name Featherstonehaugh, pronounced /ˈfænʃɔː/.
Exceptions: with /ɑːf/ (AmE /æf/) in draught, laugh and derived forms.
Efficiency: in words 89 per cent; in names 77 per cent; a marginal rule with very strong bias toward high TF words and strong bias towards shorter words.
単語間で明らかに類推作用が働いていると疑われ,綴字と発音の関係の記述は一筋縄ではいかなそうだ.一般語のみならず名前にもよく現われていることにも注意したい.
・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.
2026-03-12 Thu
■ #6163. 中学生が発見した「teach の法則」 --- 原形に a が含まれる動詞の不規則過去形は -ought ではなく -aught となる [gh][verb][spelling][pronunciation][vowel][orthography][voicy][heldio][hel_education][gradation][i-mutation][analogy][spelling_pronunciation_gap]
3月7日の heldio にて「 #1742. 緊急対談 --- teach/taught に関する中学生の天才的指摘をめぐって」を配信しました.英語教育に携わる4者による特別回です.
今回取り上げる話題は,英語史研究を専門とする私にとっても大きな衝撃でした.発端は,中学校で英語を教えられている岩田先生のクラスの,ある生徒による発見でした.
英語学習において,いわゆる -ought 型の不規則変化動詞は学習者の悩みの種です.think --- thought,buy --- bought, bring --- brought, fight -- fought など,多くは o を含む綴字となります.一方,teach --- taught や catch --- caught のように,a を含む -aught 型の綴字になるものもあります.ほとんどの英語学習者は,これらを「そういうものだ」として丸暗記してきたことでしょう.私を含め対談した4者も同様でした.
ところが,その中学生はノートの中で,次の趣旨の驚くべき指摘をしたのです.原形の teach に a が含まれているから,過去形の taught も o ではなく a になるのではないか,と.
この指摘が驚異的なのは,単なる語呂合わせや記憶術の次元を超えて,英語綴字史研究に資する可能性がある点にあります.英語史の観点からこの -aught 過去形を再検討してみると,驚くべき事実が浮き彫りになります.taught や caught などの現存する動詞だけでなく,歴史の過程で規則化してきた動詞を掘り起こしてみると,この「teach の法則」が見事に当てはまる例がいくつか見つかるのです.
たとえば,現在は規則変化動詞となっている reach ですが,かつては不規則変化の raught という形態をもっていました.これも原形に a を含み,過去形は -aught です.また,latch にもかつて laught という過去形が存在しました.
さらに,reck という動詞に対しても raught という過去形がありました.原形に a こそ含まれていませんが,e は a と同じ前舌母音ではあります.法則を少し補正して,「原形に a あるいは e が含まれる動詞の不規則過去形は -ought ではなく -aught となる」とすれば事足ります.
歴史的にみれば,これらの綴字の差は,印欧祖語以来の母音交替 (gradation) や,ゲルマン語のウムラウト (i-mutation),その後の類推作用 (analogy) が複雑に絡み合った結果と考えられます.しかし,そうした専門知識をもたない中学生が,純粋な観察眼によってこの「法則」を見出したことは,きわめて驚くべきことです.
今回の緊急対談では,この中学生の指摘が,いかに深く英語綴字とその歴史の真実を射貫いている可能性があるかを語りました.おかげさまで,大人たちのほうがおおいに興奮し,大きなエネルギーを得ることができました.
英語史研究者として,長年当たり前だと思い込んで見過ごしてきた足元に,これほどまでに鮮やかな法則が隠れていたことに悔しさすら覚えますが,それ以上に,この中学生がもつフレッシュな視点の尊さに気付かされ,痛快ですらありました.「teach の法則」の歴史的裏付けについては,今後さらなる調査が必要ですが,エキサイティングな試みになると思います.
英語学習者の皆さん,身近な英語の「なぜ」を単なる暗記で済ませず,自分なりの仮説を立てて観察してみてください.そこには,専門家をも驚かせる法則が隠れているかもしれません.
興奮に満ちた対談の全容は,ぜひ上記の Voicy リンクよりお聴きください.
2026-03-11 Wed
■ #6162. 2025年度に提出された卒業論文題目 [hel_education][sotsuron][khelf][link]
今年度,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の英語史ゼミより16本の卒業論文が提出されました.各々の題目を一覧します.英語史ゼミでは,どんな研究がなされているのか.その広がりが伝わるのではないかと思います.
・ Grammatical Behavior of "WFH" in English before and after the COVID-19 Pandemic
・ The Pragmatic Effects of Initialisms and Acronyms in English-Language Social Media
・ The Pragmaticalization of Dude in American English: A Corpus-Based Analysis of Frequency and Positional Distribution (1990--2019)
・ Received Pronunciation in the Galaxy Far, Far Away: A Sociolinguistic Analysis of What RP Symbolises as Yakuwarigo in the Star Wars Films
・ Factors Influencing Variations in Information Ordering in Major League Baseball (MLB) Play-by-Play Commentary: An Analysis of Commentary Discourse Corresponding to Pitch Outcome
・ A Comparative Study of Linguistic Features in English and Japanese Sports Reporting: A Systemic Functional Grammar and Appraisal Theory Approach
・ Usage of the English Articles a and the: An Analysis of Established Usage and the Possibility of Emerging Usage Patterns in Strong-Form Pronunciation Based on Podcast Data
・ The Use of Relative which with Human Antecedents in Early Modern English: A Corpus-Based Analysis of Correspondence
・ The Comparison of How Gender Nouns are Used in Three English Bibles: King James Version, Good News Translation, and New Revised Standard Version Update Edition
・ Diachronic Change in Euphemistic Expressions of Death in English: A Comparative Analysis of Irish Newspaper Obituaries in the 1840s and the Present
・ Multiple Analysis of Expressions Meaning "Old Person," "Old Man," and "Old Woman"
・ Trailing Behind Reality: From Euphemism to Dysphemism in the Definition of "Retarded" in Japanese EFL Dictionaries
・ Plain English in UK Property Contracts: A Diachronic Analysis of Linguistic Features in Residential and Commercial Styles
・ Predicting FOMC Decisions from Communication Tone: LDA-EAL Topic-Tone Analysis of Federal Open Market Committee Press Conferences
・ Quotation as a Device in Framing the Representation of Korean Heritage: A Comparative Analysis of English-Language Korean Newspapers in 2015 and 2025
・ A Study on English Anxiety in Japan and Korea
今年度のラインナップを眺めると,英語史の伝統的なトピックから,現代的な社会言語学的課題,さらには英語と他言語との比較研究など,彩り豊かな顔ぶれとなっています.
まず目を引くのは,現代社会の写し鏡としての言語研究です.WFH (= work from home) の文法的振る舞い,SNS における頭字語の効果,現代アメリカ英語における dude の語用論的使用など,今の英語を捉えようとする試みが見られました.また,Star Wars における容認発音と役割語の論考や,MLB の実況解説や報道における情報提示順序の分析などは,メディアと言語の接点に注目しています.スポーツ報道の日英語の差に焦点を当てた研究もありました.Podcast をソースとして活用した冠詞の発音の研究も,手法が現代的でした.
一方で,古い文献や通時的な変化を重視する英語史・文献学らしい研究も健在です.初期近代英語の書簡における関係代名詞 which の先行詞に関するコーパス分析や,聖書の3つの版を比較したジェンダー研究などは,堅実なテキスト解釈に基づいた成果です.
また,言葉の影の部分,すなわち婉曲表現や不快表現に焦点を当てた研究も複数ありました.「死」の表現の通時的変化や,辞書における差別的用語の定義の変遷などは,言語が社会の価値観とどのように並走し,あるいは遅れてついていくのかを浮き彫りにしています.
不動産契約書の Plain English 化や,連邦公開市場委員会 (FOMC) の記者会見のトーン分析など,実社会のプロフェッショナルな領域に切り込んだ研究もありました.韓国の英語や日韓の英語観に切り込む論考も,ゼミ全体の関心の幅を広げてくれました.
これら 16 本の論文は,いずれも学生たちが自身の関心を英語史・英語学の枠組みのなかで育んでいった結晶です.どんな話題でも卒論のトピックに昇華させることができるのです.
過年度の卒業論文題目については,「#5768. 2024年度に提出された卒業論文と修士論文の題目」 ([2025-02-10]) や こちらの記事セット ,あるいは sotsuron のタグから辿ることができます.英語史分野のテーマ探しのヒントとなるかと思います.
ゼミ生はみな khelf (慶應英語史フォーラム)のメンバーです. khelf の英語史活動報告は以下で行なっていますので,ぜひ訪れてフォローなどしていただければ.
・ khelf 公式ホームページ
・ khelf 公式 X アカウント @khelf_keio
・ khelf 公式 Instagram アカウント @khelf_keio
2026-03-10 Tue
■ #6161. 『中央評論』の特集「アウトリーチ活動の多様な見方」を読んで [outreach][hel_education][halkatsu]

中央大学出版が発行する『中央評論』の最新号334号の特集「アウトリーチ活動の多様な見方」が気になっていた.本ブログを始めて17年弱の時間が流れ,そのほかいくつかのメディアでも英語史という分野の発信を行なってきた者として,この活動がどのような意味をもつのかは自分自身もイマイチよく分かっていないながらも,「アウトリーチ活動」と呼ばれるようなことはしてきたように思われるからだ.目下,私は海外にいるのだけれども,あまりに読みたかったので,冊子を入手して読んだ.以下は,特集を読んだ上での雑記である.
まず特集を構成する各記事の執筆者とタイトルを挙げておこう.いつもお世話になっている「ゆる言語学ラジオ」の水野太貴さんも寄稿されている.
・ 福田 純也[巻頭言]:アウトリーチ活動の多様な見方
・ 石井 雄隆/植木 美千子:科学コミュニケーションの観点から考える研究のアウトリーチ --- 外国語教育の研究成果を社会とつなぐために
・ 松浦 年男/浅原 正幸/占部 由子/黒木 邦彦/田川 拓海/中川 奈津子/矢野 雅貴:ぬるま湯のアウトリーチ --- 言語学フェスが照らす新たな可能性
・ 水野 太貴:「ゆる言語学ラジオ」はアウトリーチではない --- 理想のアウトリーチと映画『国宝』について
・ 平田 トキヒロ:あえて言おう、クソであると。 --- アウトリーチ活動の定義再検討
・ 石井 慶子:孤独と発信のあいだ --- アウトリーチ活動から考えたこと
特集を通して読んでみて,まず「アウトリーチ活動」やその考え方の多様性に驚いた.特集のタイトルが示す通り,そもそも「アウトリーチ活動」そのものが鵺のように捉えどころのないものらしいのだ.私自身はどこに位置づけたらよいのか,軽くめまいがしたほどだ.アウトリーチは自由であってよいし,制限されたらアウトリーチではない,そんな風に思えた.
それぞれの論考に学ぶところがあり,自分に引きつけて考えてみたくなる洞察が含まれていた.ここでは,松浦氏ほかによる「ぬるま湯のアウトリーチ」より,とりわけ琴線に触れた箇所を引きたい.
言語学フェスはコロナ禍によって生じた研究者間の交流の断絶を緩和する策のひとつとして生まれたという経緯がある (27)
言語学フェスは学会とは異なり,「研究とは何か」という問いを考えるきっかけとなる場を提供している (31)
「楽しさ」を起点としたアウトリーチ活動は,特定の課題の解決というよりもむしろ,参加者が「言語は(やっぱり)面白い」と感じられるような環境を作ることを目指している.そうした空間を作っていき,ゆるやかに続けることは,研究者として活動する人にとっても,未来の研究者やファンを作ることに繋がっていく.そしてこれは研究予算の縮小など先行きが不透明な学術界にとっても,言語に関心を持つ多くの人にとっても明るい光となる可能性が十分にあるだろう. (33)
私自身も Voicy heldio での英語史発信を始めたのは,コロナ禍によるコミュニケーションの断絶がきっかけだった.ただし,私の場合は「研究者間の交流の断絶」というよりは,どちらかといえば「教員・学生間の交流の断絶」に動機づけられていたという点での違いはある.
そして,本格的なアウトリーチ活動として「hel活」を始めてみるまでは気づかなかったが,「研究とは何か」「自分は何のために研究しているのか」を強く意識するようになった.明確な答えが出ているわけではないが,少なくとも自問自答する機会が非常に多くなった.
さらに,アウトリーチ活動を通じて,学びや研究は,本来はそれ自体が楽しいからするものであり,ほかの○○の目的ためにするわけではない,少なくとも第一義的にはそうではないということを,再認識する機会が増えた.おもしろいから研究するのだし,そのおもしろさを他の人々と分かち合いたいから伝えるのだ.それが結果的に「アウトリーチ活動」になっている,という順番で理解している.
また,特集を取りまとめた福田氏による編集後記 (164) の言葉も印象的だった.
その往復[=さまざまな立場の人々が互いに影響を与え合う往復]の中で,研究の意味や社会の側の問いかけが新たに立ち上がっているのを感じました.読者の皆さまにも,この特集を通じて,新しい往復を始めるきっかけを見つけていただければ幸いです.
「アウトリーチ活動」を通じて,はじめて可能となった交流がある.その交流を経てはじめて気づいた研究の意義がある.活動していなかったら決して気づかなかったと思われる研究の価値,予想もできなかったと思われる研究の可能性が,見えるようになってきた.これだけでも十分な大きな収穫だし,何よりも未来に向けて希望の光が差す.
「アウトリーチ活動」をうさんくさいと思われる方もいるかもしれない.ちょっと関心がある,やってみたい気がするという方もいるだろう.すでに実質的に活動しているという方もいるだろう.いずれの読者にとっても,この特集の各記事は,洞察を与えてくれるはずである.
・ 「特集 アウトリーチ活動の多様な見方」『中央評論』334号(77巻4号) 2026年2月3日.
2026-03-09 Mon
■ #6160. 研究社の公式 HP より「英語史関連・周辺テーマの本」一覧をどうぞ [kenkyusha][link][notice][hel_education][khelf][hellive2025][voice_review][kenkyusha][heldio][voicy]
2月25日に刊行された『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を,この1ヶ月半ほど推しに推しています.本書に関する研究社の公式HPには,本書の内容,目次,試し読みコーナーなどが設けられていますが,ページの下方には「関連記事」や「関連書籍」の案内もあります.本書を手に取る多くの方は広く英語史に関心があるのではないかと思われますので,これらはたいへん有用な情報となるはずです.
とりわけ「関連記事」の1つめとして挙げられている「英語史関連書籍の一覧をアップしました」(2月27日付けで公開)はお薦めです.そのリンク先からダウンロードできる PDF ファイルには,研究社から刊行されている15冊の英語史周辺書籍の一覧が収められています. *
この一覧は,広報の一環として研究社がまとめられたものですが,実はここには khelf(慶應英語史フォーラム)のhel活が関わっています.昨年9月13日に,khelf(慶應英語史フォーラム)および helwa の主催する音声配信イベント「英語史ライヴ2025」が開催され,おおいに盛り上がりました(cf. 「#5984. 昨日の「英語史ライヴ2025」おおいに盛り上がりました!」 ([2025-09-14-1])).イベント当日は,書籍展示のために研究社の担当の方々に会場にお越しいただいたのですが,イベントに先立って,展示するにふさわしい英語史関連書を選別すべく,khelf の大学院生メンバーも準備に関わっていたのです.英語史を専攻する大学院生の目利きが入っており,私自身も事前に確認させていただいた,その書籍の一覧がイベントで配布されたという次第です.
さて,このたび『古英語・中英語初歩』がめでたく新装復刊となりました.この機会を捉えて,半年前に準備されたあの一覧を再利用できないかと思い立ち,研究社の担当に打診したところ,このような形で公開されるに至ったという次第です.
なお,一覧に含まれている書籍のうち5冊については,khelf のメンバーを中心とする英語史を専攻する学徒たちが,Voicy heldio でその内容を紹介する「声の書評」 (voice_review) という新しい企画を,「英語史ライヴ2025」にて実施しました.その配信回はアーカイヴとして残っていますので,以下の hellog 記事を経由してお聴きいただければと思います.
・ 「#6005. khelf の新たなhel活「声の書評」が始まりました --- khelf 藤原郁弥さんが紹介する『市河三喜伝』」 ([2025-10-05-1])
・ 「#6006. 声の書評 --- khelf 木原桃子さんが紹介する『英語文化史を知るための15章』」 ([2025-10-06-1])
・ 「#6007. 声の書評 --- khelf 寺澤志帆さんが紹介する『聖書の英語の研究』」 ([2025-10-07-1])
・ 「#6008. 声の書評 --- khelf 泉類尚貴さんが紹介する『コーパスと英文法』」 ([2025-10-08-1])
・ 「#6012. 声の書評 --- 小河舜さんと khelf 疋田海夢さんが紹介する『英語固有名詞語源小辞典』」 ([2025-10-12-1])
選ばれた英語史関連書籍の一覧です.英語史の学びのために,ぜひご利用ください.一覧へのアクセスはこちらのページよりどうぞ.
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| 最終更新時間 | 2026-03-15 09:29 |
Copyright (c) Ryuichi Hotta, 2009--
















