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hellog〜英語史ブログ

堀田隆一による,英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログです."History of the English Language Blog" ということで,略して "hellog".英語史と関連する英語学・言語学一般の話題も扱っています.まずは,

  1. 英語に関する素朴な疑問集
  2. アクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事
  3. 全記事の標題の一覧 (Archives)
をご覧ください.ツイッターもやってます

お知らせ 英語史を学ぶ(教える)ための hellog の活用法について「#4019. ぜひ英語史学習・教育のために hellog の活用を!」の記事に情報をまとめました.特にオンライン授業期の学びにご利用ください.2020/04/28(Tue)

お知らせ ご愛読ありがとうございます,4刷が発行されています.本ブログの内容を多く取り込んだ拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』が研究社より出版されました.本の趣旨や補足情報のために,コンパニオン・サイト (naze) を用意していますので,そちらも是非ご覧ください.また,本ブログ内の「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」にも紹介があります.2017/11/02(Thu)

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お知らせ 本ブログベースの拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』の第4刷が出ています.本書のコンパニオン・ページ及び著者による紹介ページをご覧ください.また,本書の内容に沿ったブログ記事へのリンク (hogusu) はおすすめです.2018/09/02(Sun)hogusu_front_cover_small

その他のお知らせ

お知らせ 大修館『英語教育』の2020年3月号に,連載「英語指導の引出を増やす 英語史のツボ」の第12回(最終回)の記事が掲載されています.今回の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.どうぞご一読ください.2020/02/14(Fri)eigokyouiku_rensai_12_20200214_front_cover_small.jpg

お知らせ 1月5日発売の英語学習誌『CNN English Express』2月号に「歴史を知れば納得! 英語の「あるある大疑問」」と題する拙論が掲載されています.英語史の観点から素朴な疑問を解くという趣向の特集記事で,英語史の記事としては珍しく8頁ほどの分量を割いています.どうぞご一読ください.hellog 内の紹介記事もどうぞ.2019/01/07(Mon)cnn_ee_201902_front_cover_small

お知らせ 私も一部執筆している服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.が2018年3月に出版されました.日本語史と比較対照しながら英語史や英語の歴史的変化について学べます.本ブログ内の#3283の記事にも簡単な紹介がありますのでご覧ください.2018/04/23(Mon)

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お知らせ Simonn Horobin 著 Does Spelling Matter? の拙訳『スペリングの英語史』が早川書房よりより出版されました.紹介記事として,本ブログ内の「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」「#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要」もご覧ください.2017/10/01(Sun)

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お知らせ 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』に関連する研究社ベースの連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」が始まっています(そして12回で終わりました).2017/12/21(Thu)


最近 7 日分を以下に表示中 / 今月の一覧

2020-06-04 Thu

#4056. deme, demere, demande [sawles_warde][suffix][manuscript]

 大学院の授業で初期中英語テキスト Sawles Warde を精読している.3つの写本に確認される1200年頃のテキストで,MS. Bodley 34 をもとに校訂された Bennett and Smithers 版で読み進めているが,写本間比較のために Tanabe and Scahill 版のパラレル・エディションも常に参照している.その3写本とは以下の通り.

 ・ B: Oxford, Bodleian Library, MS Bodley 34
 ・ R: London, British Library, Royal 17 A.xxvii
 ・ T: London, British Library, Cotton Titus D.xviii

 写本間比較をしながら読んでいて,語形成上とても興味深い例に出会ったので紹介しておきたい.「審判者」を意味する異形の競合である.この時代(のこの方言?)に用いられていた複数の行為者接尾辞 (agentive suffix, subject suffix) の競合について何かしら示唆を与えてくれる写本間の差異である.

B 73r14, R 2r17, T 106rb12

  B sit on hest as deme . & beateð þeo þe aȝul/teð .
  R sit on hest . as demere . & beateð þeo thorn_with_stroke a-/gulteð.
  T sit hon nest as de-/mande . Beateð þa thorn_with_stroke agulteð /


 行頭の sit の主語は,ここに示していないが直前に出てくる (B) þe feorðe suster rihtwis/nesse (the fourth sister Riteousness) である.彼女が審判者として高みに座っているわけだが,この「審判者」を表わす語が B では deme, R では demere, T では demande となっている.語幹 dēm- に各々 -e, -ere, -ande という接尾辞が付された形態である.いずれの接尾辞も古英語から引き継がれた行為者接尾辞である(古英語形は各々 -a, -ere, -end;語形は dēma, dēmere, dēmend).
 1つ目の古英語の行為者接尾辞 -a は,中英語では音声的に弱化して典型的に -e で綴られる.しかし,それもやがて消失していく.音形としてはゼロとなってしまうため当然ながら後世には残らなかったが,その亡霊というべきものが playwright, wheelwright などの wright (<OE wyrhta) のなかに残存している(cf. 「#2117. playwright」 ([2015-02-12-1])) .
 2つめの接尾辞 -ere は,現代英語で最も生産的な行為者接尾辞 -er の祖形であり,多くの説明を要しないだろう(ただし「#3791. 行為者接尾辞 -er, -ster はラテン語に由来する?」 ([2019-09-13-1]) の記事を参照).MED の例文から判断する限り,中英語期中に消えていった上記 deme とは対照的に,demere は存在感を強めていったようだ.
 3つめの接尾辞 -end は現在分詞語尾に由来する.すなわち,"the deeming (one)" ほどを表わし,全体として行為者を表わす名詞となる.この語形は中英語期では比較的まれだったようで,後世にも受け継がれなかった.
 英語史上,この3つの語形が共存したのは,おそらく Sawles Wardes が作られた前後を含む短期間かと推測される.すでに衰退の途についていた demedemande と,すでにメジャーとなっていたとおぼしき demere が写本間で競合しているというのは,意外とお目にかかれないレアな光景だったりするのかもしれない.

 ・ Bennett, J. A. W. and G. V. Smithers, eds. Early Middle English Verse and Prose. 2nd ed. Oxford: OUP, 1968.
 ・ Tanabe, Harumi, and John Scahill, eds. Sawles Warde and the Wooing Group: Parallel Texts with Notes and Wordlists. Frankfurt am Main: Peter Lang, 2015.

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2020-06-03 Wed

#4055. parasynthesis [parasynthesis][compounding][compound][derivation][derivative][word_formation][morphology][terminology][back_formation][conversion]

 parasynthesis(並置総合)は語形成 (word_formation) の1種で,複合 (compounding) と派生 (derivation) を一度に行なうものである.この語形成によって作られた語は,"parasynthetic compound" あるいは "parasyntheton" (並置総合語)と呼ばれる.その具体例を挙げれば,warm-hearted, demoralize, getatable, baby-sitter, extraterritorial などがある.
 extraterritorial で考えてみると,この語は extra-(territori-al) とも (extra-territory)-al とも分析するよりも,extra-, territory, -al の3つの形態素が同時に結合したものと考えるのが妥当である.結合の論理的順序についてどれが先でどれが後かということを決めるのが難しいということだ.この点では,「#418. bracketing paradox」 ([2010-06-19-1]),「#498. bracketing paradox の日本語からの例」 ([2010-09-07-1]),「#499. bracketing paradox の英語からの例をもっと」 ([2010-09-08-1]) の議論を参照されたい.そこで挙げた数々の例はいずれも並置総合語である.
 品詞転換 (conversion) あるいはゼロ派生 (zero-derivation) を派生の1種と考えるならば,pickpocketblockhead のような (subordinative) exocentric compound も,複合と派生が同時に起こっているという点で並置総合語といってよいだろう.
 石橋(編)『現代英語学辞典』 (p. 630) では並置総合語を要素別に5種類に分類しているので,参考までに挙げておこう.

(1) 「形容詞+名詞+接尾辞」 hot-tempered, old-maidish. (2) 「名詞+名詞+接尾辞」 house-wifely, newspaperdom. (3) 「副詞+動詞+接尾辞」 oncoming, half-boiled. (4) 「名詞+動詞+接尾辞」 shopkeeper, typewriting. (5) そのほか,matter-of-factness, come-at-able (近づきやすい)など.


 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
 ・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.

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2020-06-02 Tue

#4054. 与作は木を切る hew, hay, hoe〜♪ [etymology][youtube][germanic][indo-european][cognate]

 昨日の記事「#4053. 花粉症,熱はないのに hay fever?」 ([2020-06-01-1]) で hay fever の疑問を取り上げました.なぜ花粉症に「熱」が関係するのかは未解決のままですが,調べる過程で素晴らしい副産物を獲得しました.標題の3語のみごとな語源的共通性です.
 hay (干し草)は古英語にも hēġ, hīeġ として現われる古い語で「切られた/刈られた草」を意味しました.「(斧・剣などで)切る」という動詞は hēawan としてあり,これが現代英語の hew (たたき切る,切り倒す)に連なっています.一方,切る道具としての hoe 「根掘り,つるはし,くわ」は,古英語にこそ現われませんが,古高地ドイツ語から古仏語に入った houe が中英語期に借用されたもので,やはりゲルマン祖語の語根に遡ります.ゲルマン祖語の動詞として *χawwan が再建されています.ゲルマン語根からさらに遡れば,印欧祖語の語根 *kau- (to hew, strike) にたどり着きます.上記の3語は母音こそ変異・変化してきましたが,源は1つということになります.
 to hew hay (干し草を刈る)という表現もあるので,to hew hay with a hoe という表現も夢ではありません.となれば,思い出さずにいられないのがサブちゃんの名曲です.北島三郎「与作」に合わせて「ひゅーへいホウ」と歌ってみましょう.
 それにしても,語源的にうまくできた歌詞ですね.

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2020-06-01 Mon

#4053. 花粉症,熱はないのに hay fever [sobokunagimon]

 英語史の授業の掲示板で,次の質問をいただきました.

花粉症のことを英語で hay fever もしくは、pollen allergies などといいますが(後者はストレートで分かりやすい)、私の疑問は、花粉症と発熱がどうしても結びつかないことです。なぜ発熱または熱を表すfeverが付いたのでしょうか。昔は発熱を伴ったのでしょうか。もしくはfeverは熱以外の意味で使われているのでしょうか。
hayはもともと干し草が原因であったためということで理解できます。
今花粉症で鼻水とくしゃみに悩まされています。
よろしくお願いします。


 この質問について少し調べてみましたが,残念ながら解決には至っていません.一応の回答をしたので,それをこちらに再現しておきます.

 考えたこともなかったですが,確かに,と気付かされる質問でした.私もこの厄介なものを軽く発症することがあります.鼻や目が充血して熱く感じることはありますが,あくまで局所的な発熱で,体全体の発熱には至らないですね.ただし,医学的なことは分からないものの,発熱もマイナーな症状(微熱程度)としてはあるようです.重度の慢性的花粉症患者である家の者にきいてみても,微熱が出たことはあると言っていました.
 しかし,そうだとしても,あまりふさわしくない命名であることは確かですね.fever は古英語から一貫して「(発)熱」の意味を保持しており,意味変化の関与もなかったはずです.
 花粉が原因であると知られるようになったのは19世紀後半のことのようで,それ以前には誤って枯草熱と称されていました.干し草 (hay) の作業をしている人がよくかかるということから名付けられたようです.OED hay-fever, n. によると,1829年に hay-asthma (cf. フランス語 asthme de foin)とともに hay-fever が使われたとあります.

First described under the name of summer catarrh by Bostock in Trans. Medico-Chirurg. Soc. 1819, X. 161, and 1828, XIV. 437. Gordon in 1829 used the names hay-asthma, hay-fever.


 当時,発熱を伴う似たような病気と混同して用いられた可能性もあるかもしれませんが,知る術はありません.回答できるのはここまでです.
 どうぞお大事に.

Referrer (Inside): [2020-06-02-1]

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2020-05-31 Sun

#4052. 「今日の素朴な疑問」コーナーを設けました [notice][sobokunagimon][hel_education]

 「#4045. 英語に関する素朴な疑問を1385件集めました」 ([2020-05-24-1]) で紹介した通り,この年度初めに大学の英語史関連の授業を通じて,非常に多くの「英語に関する素朴な疑問」を寄せてもらいました.学生のみなさん,改めて協力に感謝します.改めて一覧はこちらです.
 これだけ集まったからには,皆さん回答を期待するでしょうし,私も回答する義務を感じています.ですが,さすがの数ではあります.なかには英語史にお任せという質問もあれば,逃げたくなるほどストレートで手強い質問もあります.今後は,限界はあるものの,授業を通じて,あるいは hellog を通じて,ゆっくりと回答していきたいと思っています.むしろ知的好奇心をそそるこれらの「素朴な疑問」を通じて,皆さんも私も一緒に学んでいきましょう,というのが疑問収集のそもそもの趣旨でした.(我慢できない方は,少なからぬ素朴な疑問に対して hellog ですでに回答していますのでこちらをご覧ください.)
 「回答する」というと偉そうな言い方ですが,実際にはそこで提案する「回答」らしきものは,すべて英語史・英語学の知見に基づこそすれ私の仮説にすぎません.比較的説得力のある仮説もあれば,根拠の弱い仮説もあるでしょう.私がここかしこでオープンにするのは,あくまでそのような意味での「回答」です.言葉の問題に関しては絶対的な正解などない,というのが私の考え方です.いつしかもっと良い視点や洞察が出ることを期待しての,当面の「回答」です.
 読者の皆さんにも私自身にも英語史思考を促すために,本ブログ右欄上部に「今日の素朴な疑問」コーナーを設けました.先の1385件からランダムに選び出された疑問が,毎日ここに掲載されます.ぜひ日々の英語(史)学習のインスピレーションに役立ててもらえればと思います.

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2020-05-30 Sat

#4051. 中英語方言における bury の綴字の方言地図 --- LAEME より [laeme][me_dialect][dialectology][vowel][map][isogloss][eme][lalme]

 中英語方言学でよく知られている方言間の母音変異の事例として,北部・東部方言の <i> = [i(ː)],中西部方言の <u> = [y(ː)],南東部方言の <e> = [e(ː)] というものがある.これは,古英語ウェストサクソン方言において典型的に <y> で綴られた母音(初期には [y(ː)],後期には [i(ː)] だったとされる)が,中英語の諸方言でどのような対応形を示しているかを図式的に整理したものである.
 現代英語の単語でいえば busy, merry, busy などが典型的に上記の方言分布と関連している. 関連する話題は以下の記事で扱ってきた.

 ・ 「#562. busy の綴字と発音」 ([2010-11-10-1])
 ・ 「#563. Chaucer の merry」 ([2010-11-11-1])
 ・ 「#570. bury の母音の方言分布」 ([2010-11-18-1])
 ・ 「#1341. 中英語方言を区分する8つの弁別的な形態」 ([2012-12-28-1])
 ・ 「#1434. left および hemlock は Kentish 方言形か」 ([2013-03-31-1])
 ・ 「#4048. much, shut, such, trust の母音と中英語方言学」 ([2020-05-27-1])

 今回はとりわけ bury に焦点を当て,初期中英語の諸方言における第1母音(字)の変異を LAEME の Dot Map により示したい.この問題は,上の 「#562. busy の綴字と発音」 ([2010-11-10-1]) や「#570. bury の母音の方言分布」 ([2010-11-18-1]) でも扱ってきたが,今回は専門的なツールを用いて信頼に足る証拠を示すことに重点を置く.以下,当該母音(字)として <i, y> を用いる分布図の Dot Map を最初に挙げ,続いて2つ目に <u>,3つ目に <e> に関する Dot Map を示す.



(1) BURY, BURIED: bir- and byr-. (Map No. 16255502)

BURY, BURIED: <em>bir</em>- and <em>byr</em>-. (Map No. 16255502)

(2) BURY, BURIED: bur-. (Map No. 16255503)

BURY, BURIED: <em>bur</em>-. (Map No. 16255503)

(3) BURY, BURIED: ber-. (Map No. 16255501)

BURY, BURIED: <em>ber</em>-. (Map No. 16255501)



 「#1262. The LAEME Corpus の代表性 (1)」 ([2012-10-10-1]),「#1263. The LAEME Corpus の代表性 (2)」 ([2012-10-11-1]) でみたように,LAEME の扱う(および初期中英語期一般についていえる)テキスト分布の事情により,全体として調査点 (dots) の数は多くはないものの,本記事の冒頭に示した伝統的な図式は,上の3つの地図により概ね支持されているといえよう.
 なお,続く後期中英語における状況は,LAEME の姉妹版 LALME の Dot Map で確認できるが,後期には諸方言形が互いに激しく「乗り入れ」しており,初期ほど明確な分布は現われない.

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2020-05-29 Fri

#4050. 言語における記述主義と規範主義 [terminology][prescriptivism][linguistics][hellog_entry_set][prescriptive_grammar][link]

 先日,Merriam-Webster のサイトで "A Word on 'Descriptive' and 'Prescriptive' Defining" と題する記事を読んだ.言語に関する記述主義 (descriptivism) と規範主義 (prescriptivism) の定義が,対比的に分かりやすく示されていた.日本語にせよ英語にせよ,このように的確に要点を押さえ,易しく,レトリカルな言葉使いを心がけたいものだと思わせる,すぐれた定義だと思う.原文に少しだけ手を加え,かつ対比点を目立たせると,次の通りである.

 ・ Descriptivism reflects how words are actually used.
 ・ Prescriptivism dictates how words ought to be used.


 大学生などに言語学や英語学の分野を導入する際に,いつも難しく感じるのだが,その難しさは,まさにこの記述主義と規範主義の区別をいかに伝えるかという点に存する.何年間も英文法を学んできて,国語でも現代文や古文の文法を学んできた学生(のみならず一般の人々)にとって,言語を規範主義の視点からみるということは自然であり,慣れ親しんでもいる.もっといえば,入試の英語でも資格試験の英語でも,言葉使いには,数学の答えと同様に,明確な正誤があるのだと信じ込んでいる.ある文法なり発音なりに出会うと,どうしてもそれが正しいか誤りかという目線で見てしまうのだ.このように規範主義的な見方にどっぷり浸かってしまっているために,それが邪魔となって,記述主義の視点から言葉をみるという,現代言語学が原則として採っている立場をすんなりと理解することが難しいのかもしれない.現代言語学は規範主義ではなく記述主義の立場に立っている.まずは,これをしっかり理解することが重要である.
 一方,近年の英語史のように,歴史社会言語学的な発想を積極的に取り込む言語学の分野においては,言葉に対する規範主義の発達や意義そのものを考察対象にするという傾向も目立ってきている.いわば規範主義そのものを記述していこうという試みだ.また,記述主義と規範主義とは実は連続体であり,程度の問題にすぎないという洞察も出されるようになってきた.
 記述主義と規範主義を巡る問題は,以下の記事でも考えてきた.以下の各々,あるいはこちらの記事セット経由で,改めて考察してもらいたい.

 ・ 「#747. 記述と規範」 ([2011-05-14-1])
 ・ 「#1684. 規範文法と記述文法」 ([2013-12-06-1])
 ・ 「#1929. 言語学の立場から規範主義的言語観をどう見るべきか」 ([2014-08-08-1])
 ・ 「#2630. 規範主義を英語史(記述)に統合することについて」 ([2016-07-09-1])
 ・ 「#2631. Curzan 曰く「言語は川であり,規範主義は堤防である」」 ([2016-07-10-1])
 ・ 「#3047. 言語学者と規範主義者の対話が必要」 ([2017-08-30-1])
 ・ 「#3323. 「ことばの規範意識は,変動相場制です」」 ([2018-06-02-1])

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最終更新時間2020-06-04 07:00

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