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2026-05-03 Sun
■ #6215. Scots と Scottish English の区別について [scots][scots_engish][sociolinguistics][terminology][variety][world_englishes]
「#6207. 英語における Scots 「スコッツ語」の初例」 ([2026-04-25-1]) でも少し話題にしたが,標題の Scots と Scottish English の用語・概念上の区別は,ややこしい.この区別を理解するには,まずこれらの変種の歴史を学ばなければならないからだ.
言語学的な特徴に照らして2つの変種が異なるものである,と議論することはある程度可能だが,互いに類似している点や影響を与え合ってきた経緯もあり,必ずしもきれいに区別できるわけではない.むしろ,各変種が置かれてきた社会言語学的文脈を参照して,つまり時代性,標準の有無,話し言葉と書き言葉のメディアの違い,話者のアイデンティティなどの要因を参照して,2つの変種が区別されているものとして捉えるほうが,適切だろう.
MaClure (23) は,スコットランドにおける英語を概説する文章の冒頭で,この2つの区分を次のように導入している.
Insular West Germanic speech was first established in what is now Scotland in the sixth century. Two phases are clearly identifiable in its history: the first includes the emergence of a distinctively Scottish form, developing independently of the Northern dialect of England though like it derived from Northumbrian Old English, and its attainment to the rank of official language in an autonomous nation-state; and the second, the gradual adoption in Scotland of a written, and subsequently also a spoken, form approximating to those of the English metropolis, with consequent loss of status of the previously existing Scottish tongue. In the course of the linguistic history of Scotland, that is, first one and then two speech forms, both descended from Old English, have been used within the national boundaries. For convenience we will choose to designate the first Scots and the second Scottish English. This situation has no exact parallel in the English-speaking world.
最後に指摘されている通り,古英語に由来する2つの変種が,現代まで並び立って使い続けられている歴史をもつ地域は,世界を探してもほかにない.世界諸英語 (world_englishes) を視野に入れた歴史を考えるとき,スコットランドは特殊な事例を提供してくれるのである.
・ McClure, J. Derrick. "English in Scotland." The Cambridge History of the English Language. Vol. 5. Ed. Burchfield R. Cambridge: CUP, 1994. 23--93.
2026-05-02 Sat
■ #6214. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年5月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link]

4月28日(火),熱心なヘルメイトの皆さんによる月刊ウェブマガジン Helvillian 5月号(第19号)が公開されました.今号も,英語史を軸とした知的探究心が多方向に展開し,読み応えのあるラインナップとなっています.
今号の「表紙のことば」を担当されたのは ari さんです.桜島をめぐる地元民によるエッセイ,いかに桜島が身近な存在であるかが分かりました.その ari さんの記事群は,今月も ari 節が全開で絶好調です.セム語に由来する英単語から,「エイゴシーの塔」の攻略を経て,フランダース関連の話題まで,記事の守備範囲の広さにはいつも驚かされます.
Grace さんは,英語の「息づかい」というタイトルで寺澤盾先生の新刊書『世界の英語』(中公新書)を紹介されています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は,D ゾーンを走行中で,今回は demand から demesne までをカバーしています.lacolaco さんの継続的な試みが,「辞書を読む」という静かなムーブメントを呼んでいますね.実は,これこそが最も堅実で強力なhel活なのではないかと,最近,思い始めています.
mozhi_gengo さんは,今号でも圧巻の寄稿数です.scale の語源といった入りやすそうな話題から,ヒンディー語における be 動詞に相当する単語の語源に至るまで,相変わらずの縦横無尽ぶりです.
英語史教育・普及の観点からの記事も,ますます充実してきています.sorami さんの中学生向け語源クイズは,綴字の謎に迫る第7弾まで到達しています.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは,「小学生×英語史」という革命的な趣旨で始まり,100回に迫る(実際には本日までに優に100回を超えています)勢いで続いています.
umisio さんは,川上さんの名言「英語愛はありません」を深掘りするシリーズで続投されています.『英語史新聞』第13号への熱い暴走レポートも,読者の共感を呼ぶこと間違いなしですね!(khelf の応援,いつもありがとうございます.)
ykagata さんのブログも安定の継続で,ドイツ語を軸に『英語語源ハンドブック』をご紹介いただいたり,学びそのものについて考察する記事が公開されています.あまねちゃんの記事では,mark や zany の語源記事に始まり,最後にはついに『英語語源辞典』通読の挑戦へと禁断の一歩を踏み出されました.
また,川上さんによる古英詩に関する補遺は,異色の専門的な記事となっています.この記事を通じて,ぜひ古英詩の世界に触れてみてはいかがでしょうか.私自身も,微力ながら elvillian の前号の紹介記事を公開し,最新号の目次に名を連ねさせていただきました.
最後は Grace さんによる helwa のhel活の活動報告と,umisio さんによる『英語語源辞典』の流行に注目した暴走的編集後記で締めくくられています.
このように今号も,質量ともに充実したできあがりとなっています.ぜひ時間をかけてゆっくりと各コンテンツを味わっていただければ幸いです.
次号はいよいよ第20号の大台に乗ります.この Helvillian という媒体は,誰かに強制されたものではなく,英語史を愛し,学びを共有したいという有志の自発的なエネルギーによって継続しています.読者の皆さんにおかれましては,ぜひこの熱量を一緒に楽しんでいただき,温かい応援をいただければ幸いです.
また,「読むだけではなく,自分も書く側や編集側に回ってみたい」「このhel活の輪に直接貢献したい」という方は,ぜひプレミアムリスナー限定チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.ともに学び,ともに創る喜びが溢れている空間ですので.
2026-05-01 Fri
■ #6213. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」が公開されました [kenkyusha][inohota][notice][lexicography]
4月28日(火),「いのほた言語学チャンネル」の最新回として「ロケ!最後の活版印刷の英語辞書(『英語語源辞典』(研究社))をめぐる辞書編纂者たちの矜持」が公開されました.
今回は「いのほた」としては初となるロケ企画で,英語学習者・研究者なら誰もがお世話になっているであろう英語辞書作りの老舗,研究社さんにお邪魔してきました.私自身,学生時代より研究社の辞書をボロボロになるまで引いてきた人間ですので,飯田橋の本社ビルにお邪魔してのロケには感慨深いものがありました.
今回の動画の主役は,私が各所で激推ししている,寺澤芳雄(編)『英語語源辞典』(研究社,1997年)です.2024年には新装版も出ています.私が2023年7月18日に「ゆる言語学ラジオ」の動画「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」に出演した際,この辞典の魅力を熱弁したところ,1万円(+税)という高額な辞書にもかかわらず Amazon 等で爆発的に売れるという出来事が起こりました.それをきっかけに,研究社の公式 note 「研究社ノート」にて「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」という記事で,同辞典のメイキング秘話が公開されるなど,注目度が増してきました.今回のいのほた動画は,研究社の関係者にもご出演いただきまして,改めて同辞典のアツさを語ろうというロケ企画の第1弾です.
動画では,この辞典の編集に携わられた星野龍さん,中川京子さん,そして関連書として昨年出版された『英語語源ハンドブック』の編集担当である青木奈都美さん,さらに元研究社印刷社長の小酒井英一郎さんという,辞書作りのプロフェッショナルの方々にお集まりいただきました.
特筆すべきは,この『英語語源辞典』が「最後の活版印刷による英語辞書」であるという事実です.1980年の企画開始から1997年の刊行まで,実に17年という歳月が費やされました.その間,時代は急速にデジタル化へと舵を切っていましたが,本辞典は一貫して鉛の活字を 1本ずつ組み上げる活版印刷の手法で制作が進められました.
小酒井さんに見せていただいた実際の組版の重みには,言葉を失いました.1ページ分の文字を物理的な鉛の塊として並べ,それを約1,80ページ分も保管しておく必要があるのです.辞書特有の小さな8ポイント活字(4mm 弱)を,職人が1文字ずつ拾い,並べ,修正していくプロセスは,まさに職人芸です.
星野さんのお話によれば,初期のデジタル組版では,この活版印刷が持つ独特の文字の美しさや行の締まりを再現できず,新時代の波に直面した編集者たちは深い違和感を抱いたといいます.デジタルでは機械的に文字を並べることはできても,職人が長年の経験で培った読みやすさのための微調整までは再現できなかったのです.この辞典には,日本の印刷技術が到達した最高峰の輝きが,物理的に刻み込まれていると言えます.
現在は効率化とコストの観点から,このような贅沢な本作りは二度と不可能だというお話しでした.しかし,だからこそ,今私たちの手元にあるこの『英語語源辞典』は,単なる英語語源に関する情報の宝庫である以上に,20世紀後半の出版文化が残した金字塔としての価値を持っていると言えます.
辞書は引ければよい,という考え方もあります.しかし,その背後にある編纂者たちの矜持と,職人たちの果てしない手仕事の積み重ねを知ると,ページをめくる指先にも自然と力が入るというものです.研究社という出版社の,このプロフェッショナルなこだわりこそが,日本の英語教育と英語学を支えてきたのだと再確認しました.
このロケ動画は今後数週間にわたって続編が公開される予定です.皆さんもぜひ,動画を通じて辞書という小宇宙の奥深さに触れてみてください.そして,もし本棚にこの辞典がないのであれば,入手することをお勧めします.単なる買い物ではなく,歴史の証言者を手元に置くという意味を持ちます.
今回の動画内容と関連する過去の hellog 記事は多岐にわたります,以下の記事をリンク集への起点ととらえていただき,ジャンプしていただければと思います.
・ 「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1])
・ 「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1])
・ 「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1])
・ 「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1])
・ 「#5553. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の新装版 --- 「いのほた言語学チャンネル」でも紹介しました」 ([2024-07-10-1])
・ 「#5856. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2025年5月9日版」 ([2025-05-09-1])
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
2026-04-30 Thu
■ #6212. B&C の第63節 "The Benedictine Reform" (5) と (6) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate]
英語史の古典的名著 Baugh and Cable の第6版の英文を,helwa メンバーとともにゆっくりと超精読していく読書会を半定期的に開催しています.その毎回の読書会の様子を,Voicy heldio の音声メディアを通じて公開するシリーズを継続中です.2023年7月に開始してから3年弱が経ちましたが,第63節まで進んできています.
今朝の heldio にて,シリーズ最新回を配信しています.「#1796. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-5) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」です.明朝の heldio では,その続編となる「#1797. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-6) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」も配信予定ですので,合わせて2本に連動する形で本記事を公開します.
今回も,heldio/helwa コアリスナーでヘルメイトの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に精読会をリードしていただきました.いつもありがとうございます.数名のギャラリーとともに,いつもながらの深い読みを堪能することができました.
今回の精読対象の英文を以下に掲載します(Baugh and Cable, pp. 83--84) .B&C の第63節の第2段落の最初から,計1時間ほどかけて15文を読み進めました.
But abuses when bad enough have a way of bringing about their own reformation. What is needed generally is an individual with the zeal to lead the way and the ability to set an example that inspires imitation. King Alfred had made a start. Besides restoring churches and founding monasteries, he strove for twenty years to spread education in his kingdom and foster learning. His efforts bore little fruit. But in the latter half of the tenth century, three great religious leaders, imbued with the spirit of reform, arose in the church: Dunstan, archbishop of Canterbury (d. 988), Athelwold, bishop of Winchester (d. 984), and Oswald, bishop of Worcester and archbishop of York (d. 992). With the sympathetic support of King Edgar these men effected a genuine revival of monasticism in England. The true conception of the monastic life was inseparable from the observance of the Benedictine Rule. Almost everywhere in England this had ceased to be adhered to. As the first step in the reform, the secular clergy were turned out of the monasteries and their places filled by monks pledged to the threefold vow of chastity, obedience, and poverty. In their work of restoration the reformers received powerful support from the example of continental monasteries, notably those at Fleury and Ghent. These had recently undergone a similar reformation under the inspiring leadership of Cluny, where in 910 a community had been established on even stricter lines than those originally laid down by St. Benedict. Dunstan had spent some time at the Abbey of Blandinium at Ghent; Oswald had studied the system at Fleury; and Athelwold, although wanting to go himself, had sent a representative to Fleury for the same purpose. On the pattern of these continental houses a number of important monasteries were re-created in England, and Athelwold prepared a version of the Benedictine Rule, known as the Concordia Regularis, to bring about a general uniformity in their organization and observances. The effort toward reform extended to other divisions of the church, indeed to a general reformation of morals, and brought about something like a religious revival in the island.
このB&C読書会の過去回については,すべてアーカイヴからアクセスできます.各回へのリンクは「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.ご関心のある方は,ぜひ本書を入手して,この精読会の配信回をお聴きいただければ.また,精読会に対面・オンラインで直接参加されたい方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお入りください.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
2026-04-29 Wed
■ #6211. 寺澤盾先生が PIVOT TALK に出演して【世界の英語と日本人】をお話しされています [pivot][youtube][world_englishes][notice][model_of_englishes][variety][standardisation][lingua_franca][ai][sociolinguistics][notice]
4月25日(土),PIVOT TALK にて「【世界の英語と日本人】英語の始まりは5世紀半ば/20億人超まで広がった理由/英語は語彙が多い/英語が分裂していくシナリオ/標準化の挫折/AI時代にも英語学習は必要か?/10年後の英語と日本人」と題する YouTube 動画が配信されました.英語史研究者の寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)がゲストとしてお話しされている,50分ほどの貴重な対談です.
お話しの内容は,1ヶ月ほど前に寺澤先生が中公新書として上梓された『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』を紹介しつつ,日本の英語学習者の皆が尋ねたくなる質問群に,英語史や世界英語 (world_englishes) の観点から答えられています.
動画の内容は多岐にわたりますが,とりわけ重要なトピックをいくつかご紹介しましょう.
まず,英語がなぜこれほどまでに拡大したのかという問いに対し,寺澤先生は「言語的な特徴によるものではなく,あくまで社会的・歴史的な要因である」と明快に答えられています.5世紀半ばには数十万人規模のマイナー言語に過ぎなかった英語が,1600年頃(シェイクスピアの時代)には600万人,そして現代では20億人を超える話者を抱えるに至った背景には,大英帝国の覇権と,それに続く米国の台頭というパワーの基盤があったという指摘です.
また,現代の英語の状況を Kachru の「同心円モデル」を用いて解説し,非母語話者が母語話者を圧倒的に上回る(約8割が非母語話者!)という現状を浮き彫りにしています.これにより英語はもはや母語話者の独占物ではなくなっている,というパラダイム・シフトに言及されています.
英語をめぐる今後の展望についても刺激的なお話しがありました.英語が各地で独自に進化し分裂していく「遠心力」と,共通語 (lingua_franca) として標準化・簡略化を目指す「求心力」のせめぎ合いについて触れ,さらにはAI同時通訳の発展が英語の地位をどう変えるかという点にも踏み込んでいます.
最後に,日本人が英語とどう向き合うべきかという議論では,話し言葉に関しては特定のネイティブ英語に固執するのではなく,多様な複数形の Englishes を許容する姿勢の大切さを説いています.一方で書き言葉においては依然として標準的な文法や綴字の知識が信頼の指標となるという,現実的でバランスの取れた視点を提供してくれています.
今回の寺澤先生のご出演は,世界英語という現代的な話題も視野に収めた英語史という学問が単なる過去の記録ではなく,現代社会を読み解き,私たちの未来の指針を示すための生きた知恵であることを改めて実感させてくれるものです.50分という動画の時間は一見長く感じられるかもしれませんが,寺澤先生の落ち着いた,かつ情熱的な語り口に引き込まれ,あっという間に過ぎてしまうはずです.
そして,この動画で興味を持たれた方は,ぜひ中公新書より刊行されたばかりの『世界の英語』を手に取ってみてください.寺澤先生による『英語の歴史』,『英単語の歴史』に続く3部作の3番目となる本書は,世界各地で変容し続ける英語のダイナミズムを網羅的に描き出した決定版です.動画と合わせて読むことで,英語という言語がもつ4次元的な広がりが,より鮮明に見えてくることでしょう.hellog 読者の皆さんにも強くお薦めしたい1冊です.
・ 寺澤 盾 『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』 中央公論新社〈中公新書〉,2026年.
2026-04-28 Tue
■ #6210. 旅する英語史「旅hel」の動画シリーズが始まりました --- 第1回はアバディーン編 [tabihel][hel_education][youtube][helwa][heldio][helkatsu][notice][old_norse][scottish_english][scots]
新年度の私の「hel活」 (helkatsu) の新機軸として,「旅する英語史 旅hel」 (tabihel) という動画シリーズを立ち上げました.目下,私はスコットランドのアバディーンに滞在しているのですが,旅をし街歩きをしながら英語史に関係する話題を見つけ,ビデオカメラで撮影しつつ,自由にお話ししていこうという Vlog シリーズです.
シリーズ第1弾は,4月13日に半日をかけて撮影した「アバディーン編」です.こちらは一般公開はしておらず,Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお入りいただいているメンバーへの限定公開となっております.helwa メンバーの方は,4月16日配信の「【英語史の輪 #0433】旅する英語史「旅hel」アバディーン編をご視聴ください」を経由して,本編動画への URL にアクセスできます.
今回の動画の舞台は,スコットランド第3の都市 Aberdeen です.「花崗岩の街」 (Granite City) としても知られる美しい街並みを歩きながら,いくつかの英語史ポイントを拾い上げました.
例えば,Upperkirkgate という通りの名前です.この gate は,現代英語の「門」ではなく,北イングランドやスコットランドで「道,通り」を意味する古ノルド語に由来すると考えられます.南部の way や street に相当するもので,まさに北部的な語といえます.実は kirk ももう1つの北部ポイントです.
また,町の北を流れるドン川に架かる歴史的な橋 Brig o'Don にも訪れています.ここで注目したいのは橋を意味する brig という語形です.標準的な bridge の最後の子音が -dg- /dʒ/ ではなく -g /g/ となっているのは,やはり古ノルド語の影響を強く受けた北部方言の特徴を色濃く残している証拠です.
動画内では他にも,1593年創立の歴史ある Marischal College を眺めたり,最後には銀行の建物を改装したパブでエールを楽しんだりと,37分にわたる盛りだくさんの内容になっています.Osmo Pocket 3 という小型ビデオカメラを手に,慣れない動画編集に苦戦しながらも,楽しく英語史の視点から街の魅力を切り取ってみました.
この「旅hel」シリーズの立ち上げについては,一昨日の heldio でも「#1792. 旅する英語史「旅hel」アバディーン編の動画を helwa 経由で配信しています」としてお話ししましたが,そこではダイジェスト版となる5分ほどの「音声」もお聴きいただけます.本編動画の雰囲気を味わうことができるかと思います.
本編動画にご関心のある方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」にお越しください.helwa は初月無料となっておりますので,ぜひ4月分にお入りいただき,試し聴きしつつ,特に4月16日配信の「【英語史の輪 #0433】旅する英語史「旅hel」アバディーン編をご視聴ください」を経由して動画にアクセスしていただければ.
2026-04-27 Mon
■ #6209. 4月23日,研究社から英語語源本が2冊 --- 『コンパスローズ英単語〈新装版〉』と『医学英単語ハンドブック』 [notice][kenkyusha][review][hee][etymology][vocabulary][latin][greek][renaissance][heldio][combining_form][latin][greek][word_formation][lexicology][scientific_english][neologism]
4月23日に,研究社より英単語の語源に関する書籍が同時に2冊発売されました.研究社からは,昨年6月に,いまもご好評いただいている『英語語源ハンドブック』が出ていますので,この1年の間に3冊も「英語語源本」が上梓されたことになります.英語語源が活況を呈しているといってよいでしょう.
新しく刊行されたのは次の2冊です.いずれも公式ページから「試し読み」できます.
・ 『語根で覚える コンパスローズ英単語〈新装版〉』(試し読みあり)
・ 『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』(試し読みあり)
以下,各々について簡単にご紹介します.

まずは池田和夫氏による『語根で覚えるコンパスローズ英単語〈新装版〉』です.本書は2019年に刊行され好評を博した旧版の装いを新たにしたもので,その名の通り「語根」にフォーカスした単語集です.ベースとなっているのは同社の『コンパスローズ英和辞典』の語源コラムですが,本書ではそこに200以上の項目が大幅に加筆されており,計300の「(最)重要語根」が網羅されています.
特筆すべきは,語彙学習における語源の実用性を数値で示している点です.1001語レベル以上の単語の7割以上は語源知識が役立つとされており,とりわけ中上級者にとってのボキャビルには語根学習が極めて有効であることが強調されています.音声ダウンロードサービスや,お馴染みの「赤シート」も完備されており,受験対策から一般の学び直しまで幅広く対応する,まさに語源学習の完成版といえる一冊です.

続いて,木下晃吉氏(監修),野中泉氏・森田勝之氏(編著)による『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』です.一見すると専門的な医学徒向けの書に見えますが,英語史の観点からも興味深い一冊です.医学英単語は,ルネサンス期以降に大量に流入してきたラテン語・ギリシア語の要素の宝庫であり,いわば「連結形」 (combining_form) の見本市のような世界だからです.
本書の構成は言語学の観点からも医学の観点からも論理的です.「接頭辞+語根+接尾辞」というパーツ分解の解説に始まり,後半では「Body System 別」(脳神経,呼吸器など)」に語彙が整理されています.専門用語が多用される実用的で長めの例文も付されており,音声ダウンロードを活用することで,難解な合成語のアクセントも効率的に習得できるよう工夫されています.付録の「処方箋用語」などは,医学の門外漢の私にとっては,新鮮な切り口でした.また,編著者の目線に立ち,医学語彙を導入する複数の切り口を,本のなかにいかに配置していくかという問題について考えてみたのも,おもしろい体験となりました.医学については何も分からない私ですが,情報量の多い,密度の高い医学英単語ハンドブックであることは確認できました.
以上,2冊を簡単にご紹介しました.4月24日には,heldio でも「#1790. 研究社より2冊の英語語源本が出ました --- 『コンパスローズ英単語〈新装版〉』と『語源で学ぶ医学英単語ハンドブック』」と題する配信回でお話ししていますので,そちらも合わせてお聴きいただければ幸いです.また,とりわけ『医学英単語ハンドブック』については,近々に本書をめぐる対談も heldio 配信を予定していますので,ぜひご期待ください.
そして,『英語語源ハンドブック』もお忘れなく!
・ 池田 和夫 『語根で覚える コンパスローズ英単語〈新装版〉』 研究社,2026年.
・ 野中 泉(編著)・森田 勝之(編著)・木下 晃吉(監修) 『語源で学ぶ 医学英単語ハンドブック』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
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| 最終更新時間 | 2026-05-03 02:49 |
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