9月8日(日)に12時間の公開収録生配信として開催された「英語史ライヴ2024」(hellive2024) の目玉企画の1つとして,人気シリーズ「はじめての古英語」(hajimeteno_koeigo) の第10弾「#1219. 「はじめての古英語」第10弾 with 小河舜さん&まさにゃん --- 「英語史ライヴ2024」より」が実現しました.講師はいつものように,小河舜さん(上智大学),「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学),そして堀田隆一の3名です.
多くのギャラリーの方々を前にしての初めての公開収録となり,3名とも興奮のなかで34分ほどの古英語講座を展開しました.冒頭のコールを含め,これほど古英語で盛り上がる集団なり回なりは,かつて存在したでしょうか? おそらく歴史的なイベントになったのではないかと思います(笑).
今回の第10弾は,小河さん主導で古英詩の傑作 Beowulf の冒頭にほど近い ll. 24--25 の1文に注目しました(以下 Jack 版より).
lofdǣdum sceal in mǣgþa gehwǣre man geþēon.
忍足による日本語訳によれば「いかなる民にあっても,人は名誉ある/行いをもって栄えるものである」となります.古英語の文法や語彙の詳しい解説は,上記配信回をじっくりお聴きください.
実は上記の公開収録は Voicy heldio のほか,khelf(慶應英語史フォーラム)の公式 Instagram アカウント @khelf_keioでインスタ動画としても生配信・収録しております.ヴィジュアルも欲しいという方は,ぜひこちらよりご覧ください.会場の熱気が感じられると思います.
シリーズ過去回は hajimeteno_koeigo よりご訪問ください.
・ Jack, George, ed. Beowulf: A Student Edition. Oxford: Clarendon, 1994.
・ 忍足 欣四郎(訳) 『ベーオウルフ』 岩波書店,1990年.
先週の木曜日,6月20日(木)の夜に,堀田研究室に4名の英語史学徒が集結しました.そこで Voicy heldio にて「はじめての古英語」シリーズの第9弾を収録し,それを一昨日「#1124. 「はじめての古英語」第9弾 with 小河舜さん&まさにゃん&村岡宗一郎さん」としてお届けしました.生配信ではありませんでしたが,ライヴ感のある充実した内容となっているかと思います.ぜひお聴きいただければ.
今回の収録は,レギュラーメンバーの小河舜さん(上智大学),「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学)に加え,村岡宗一郎さん(日本大学)をお呼びして収録しました.今回は古英語のある1文に集中しましたが,それだけで十分に堪能することができました.
上記のシリーズ回の翌日には「#1125. 「はじめての古英語」第9弾のアフタートーク」で,さらに4人が盛り上がる様子をお届けしています.個々のメンバーによる音読もあり,こちらも必聴です.
シリーズを重ねるにつれ,お聴きの皆さんの古英語への関心が高まってきているように感じます.さらにいえば,hel活 (helkatsu) 全般が活気づいてきています.リスナーの Grace さんによる A to Z の「英語史研究者紹介」というべき note,lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート」,Lilimi さんによる古英語ファンアートを含む「Lilimiのオト」,り~みんさんによる X 上での古英語音読の試みなど,さまざまに盛り上がってきています
「はじめての古英語」シリーズ (hajimeteno_koeigo),これからも続けていければと思います.
6月6日(木)の夜,Voicy heldio の生放送で「#1107. 「はじめての古英語」生放送(第8弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (5)」をお届けしました.ライヴでお聴きいただいた方々には,盛り上げていただきましてありがとうございました.
シリーズも第8弾となり安定感が出てきましたが,今回は普段の3人に加え,古英語を専攻していない五所万実さん(目白大学)に生徒役・聞き手役として出演していただきました.五所さんにリスナー代表として素朴な疑問を投げかけていただいたので,普段以上に学べる回となっています.結果として,これまでとは異なるおもしろさをお届けできたと思います.
今回も引き続き Bede 著『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳の1節を読み進めました.古英語原文は hellog 「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載していますが,その第1段落の最後の "Þæt wīf" で始まる1文を超精読しました.語順,接続法(仮定法),関係代名詞などの統語的な観点からも,助動詞や動詞の意味変化の観点からも,英語史的に話題豊富な1文となっています.韻文から散文への文学史的な流れについても議論しています.
1時間弱にわたる文献学的な対談精読実況中継となっています.「古英語を楽しむ」という趣旨でお届けしていますので,ぜひリラックスして楽しみながらお聴きください.生放送に引き続き,4人で「#1108. 「はじめての古英語」第8弾のアフタートーク」も収録しました.恒例の3人の各々による古英語音読コーナーもあります.ぜひご聴取ください.
今後もシリーズを続けていきますが,今回で Bede のキリのよいところまで終えられたので,次回は別の古英語テキストに切り替えようと思っています.どうぞご期待ください.
昨日,heldio/helwa リスナーさんの Lilimi さんによる「hel活」 (helkatsu) note 「Lilimiのオト」 の最新記事が公開された.「Procreate で古英語を書いてみた」と題して,イラストアプリを用いて古英語の文字を描かれている.hel活ならぬ古英語活に資する「古英語ファンアート」だ.
再現されている古英語テキストは「#2902. Pope Gregory のキリスト教布教にかける想いとダジャレ」 ([2017-04-07-1]) で紹介した1節の一部である.第2段落の第6文,中程より少し上の "Eft hē āxode . . . ȝefēran bēon." という部分だ.この箇所は,実は Lilimi さんも参加された長崎オフ会にて,参加メンバー一同で音読練習したことがある.「#1048. コアリスナーさんたちと古英語音読」をお聴きいただければ.
さて,上記で取り上げた古英語テキストの一部の写本画像を掲げたい.同テキストの典拠は,後期古英語の散文作家 Ælfric による Catholic Homilies: 2nd Series の "IX, St Gregory the Great" だ.このテキストが収められている写本とその folio は MS Ii.1.33, fol. 140v(Cambridge Univ. Digital Library)である(クリックで拡大).
ぜひ写本そのものも味わっていただければ.
5月23日(木)の夜,Voicy heldio にて「#1093.「はじめての古英語」生放送(第7弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (4)」をお届けしました.ライヴでお聴きの方々には,投げ込みのコメントや質問をいただきましてありがとうございました.
今回もお相手は小河舜先生(上智大学)および「まさにゃん」こと森田真登先生(武蔵野学院大学)です.毎回3人で元気に配信しています.
精読対象テキストは,前回に引き続き,Bede によりラテン語で著わされた『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳の1節です.原文は,hellog の「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載しています.
今回は,音読練習,統語的呼応と語順,仮定法を含む動詞屈折のおさらい,散文の発達に関する話題等で議論が盛り上がりました.収録後,3人のくだけた振り返り回として「#1094. 「はじめての古英語」第7弾のアフタートーク」も公開していますので,ぜひお聴きください.
これまでの「はじめての古英語」シリーズ回を一覧しておきます.
(1) 「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」
(2) 「#829. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 2 with 小河舜さん and まさにゃん」
(3) 「#836. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 3 with 小河舜さん and まさにゃん」
(4) 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」
(5) 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」
(6) 「#1078. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (3)」
(7) 「#1093.「はじめての古英語」生放送(第7弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (4)」
次回もお楽しみに!
5月9日(木)の夜,Voicy heldio にて「#1078. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (3)」をお届けしました.ライヴでお聴きの方々には,投げ込みのコメントや質問をいただきましてありがとうございました.
精読対象テキストは,前回に引き続き,Bede によりラテン語で著わされた『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳の1節です.原文は,hellog の「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載していますので,そちらをご覧になりながらお聴きください.
著者の Bede については,heldio 「#1029. 尊師ベーダ --- The Venerable Bede」にて解説していますので,そちらもお聴きください.
今回は,古英語の動詞屈折の話題,とりわけ過去形や仮定法の話題に触れる機会が多くありました.また,定冠詞 the に相当する語の屈折についても議論しました.事後に出演者の1人「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学)が,ご自身の note 上で復習となる記事「ゼロから学ぶ はじめての古英語(#6 生放送3回目)」を公開されているので,そちらも合わせてご参照ください.
これまでの「はじめての古英語」シリーズ回を一覧しておきます.
(1) 「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」
(2) 「#829. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 2 with 小河舜さん and まさにゃん」
(3) 「#836. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 3 with 小河舜さん and まさにゃん」
(4) 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」
(5) 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」
(6) 「#1078. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (3)」
目下,次回 Part 7 に向けて3人とも鋭意準備中です.
4月18日(木)の夜,Voicy heldio にて「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」をお届けしました.ライヴでお聴きいただいたリスナーの方々には,盛り上げていただき感謝いたします.
前回に引き続き,精読対象となったテキストは,Bede によりラテン語で著わされた『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) の古英語訳からの1節です.3人で60分ほどかけてわずか1.5文しか進みませんでしたが,それだけ「超」精読・解説したということでお許しいただければと思います.同テキストは hellog の「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載しています.
Bede については,heldio 「#1029. 尊師ベーダ --- The Venerable Bede」にて解説していますので,そちらもお聴きください.
復習のために,これまでの「はじめての古英語」シリーズ回を一覧しておきます.
(1) 「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」
(2) 「#829. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 2 with 小河舜さん and まさにゃん」
(3) 「#836. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 3 with 小河舜さん and まさにゃん」
(4) 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」
(5) 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」
今回の第5弾の収録の舞台裏については,プレミアム限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) のほうで「【英語史の輪 #111】「はじめての古英語」生放送の反省会&アフタートーク」としてお話ししていますので,ご関心のある方はぜひ helwa へお入りください.
最後に,本シリーズ出演者の小河舜さん(上智大学)と「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学)については,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5445. 小河舜さんとのhel活(まとめ)」 ([2024-03-24-1])
・ 「#5446. まさにゃんとのhel活(まとめ)」 ([2024-03-25-1])
今後も応援のほどよろしくお願い致します! 本シリーズ第6弾もお楽しみに!
3月25日(月)に Voicy heldio の生放送としてお届けした「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」に対して,多くの反響をいただいています.本ブログでも「#5450. heldio の人気シリーズ復活 --- 「ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 4 with 小河舜さん and まさにゃん」」 ([2024-03-29-1]) にて振り返った通りです.
上記配信回では「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) で公開した古英語テキストの一部を,小河舜先生(上智大学)および「まさにゃん」こと森田真登先生(武蔵野学院大学)と3人で精読・解説しました.
その後,復習用のオマケ・遊びとして,問題の古英語原文を音読・収録し,X(旧ツイッター)上に投稿する "The First Take" の企画を展開しました.3人による一発録り音読を投稿した後,熱心なお2人のリスナーさんにバトンを継いでいただきました.
(1) まさにゃんによる音読投稿
(2) 小河舜さんによる音読投稿
(3) 堀田隆一による音読投稿
(4) リスナーのり~みんさんによる音読投稿
(5) リスナーのりりみさんによる音読投稿
学びのための遊び企画として,ぜひ他の方々にもバトンを継いでいただければ幸いです.何度か音読を練習した上で,本番として動画録音し,その動画を X 上で投稿していただくだけです.その際に,上記の既存の投稿への引用ポストとしていただくか,あるいは #はじめての古英語 とハッシュタグを付けて投稿していただければ,皆さんがすぐに認識できます.
この古英語音読投稿企画は,今後の同シリーズでも継続していきたいと思っています.年度初めの「hel活」 (helkatsu) の一環として,一人でも多くの方に乗っていただければ.
去る3月25日(月)13:30より予定通り Voicy heldio にて「「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん」をお届けしました.平日のお昼過ぎという時間帯ではありましたが,ライヴで参加し,盛り上げていただいたリスナーの皆さんに感謝いたします.生放送を収録したものを,翌朝の通常回にて「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」として配信しました.精読の対象となった古英語テキストは,「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1]) に掲載しています.本編53分の長尺配信ですが,聴き応えのある回となっていますので,お時間のあるときにでもどうぞ.
「シリーズ復活」と述べましたが,過去に3回ほどお届けしてきました.いずれも昨年の8月から9月にかけての配信です.
・ 「#822. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 1 with 小河舜さん and まさにゃん」
・ 「#829. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 2 with 小河舜さん and まさにゃん」
・ 「#836. ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 3 with 小河舜さん and まさにゃん」
今回も含め本シリーズに出演していただいている2人と,その heldio 出演歴については,以下の記事をご覧ください.
・ 「#5445. 小河舜さんとのhel活(まとめ)」 ([2024-03-24-1])
・ 「#5446. まさにゃんとのhel活(まとめ)」 ([2024-03-25-1])
今回の配信回の復習には,まさにゃんが自身の note のなかで公開している「ゼロから学ぶ はじめての古英語(#4 生放送)」もご覧ください.
ちなみに生放送の日の朝6時の heldio では「#1029. 尊師ベーダ --- The Venerable Bede」と題して,古英語テキストの究極のソースを表わしたアングロサクソンの大学者を紹介しています.
さらに生放送の日の夜には,プレミアム限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) のほうで「【英語史の輪 #111】「はじめての古英語」生放送の反省会&アフタートーク」もお届けしています.
最後に,昨日付でコアリスナーの umisio さんが,今回の配信回のまとめノートを作り,それをこちらのページにて公開されています.
本シリーズをさらに続けていけますよう,皆さん,応援をよろしくお願い致します!
731年,ビード (あるいはベーダ;Bede [673--735]) によりラテン語で著わされた『英国民教会史』 (Historia Ecclesiastica Gentis Anglorum [= Ecclesiastical History of the English People]) は,古代イングランド史を記した貴重なテキストである.後にアルフレッド大王 (849--99) の指示のもとで古英語に翻訳されている.
597年,ローマの修道士で,後にカンタベリの初代大司教となる St. Augustine (?--604) が,イングランドに布教にやってきた.イングランド史上きわめて重大なこの年に起こった出来事について,Bede の古英語版より読んでみたい.以下,英語史の古典的名著 Baugh and Cable (pp. 58--60) に掲載されている古英語原文を再現する.
Ða wæs on þā tīd Æþelbeorht cyning hāten on Centrīce, and mihtig: hē hæfde rīce oð gemǣru Humbre strēames, sē tōscādeþ sūðfolc Angelþēode and norðfolc. Þonne is on ēasteweardre Cent micel ēaland, Tenet, þæt is siex hund hīda micel æfter Angelcynnes eahte. . . . On þyssum ēalande cōm ūp sē Godes þēow Augustinus and his gefēran; wæs hē fēowertiga sum. Nāmon hīe ēac swelce him wealhstodas of Franclande mid, swā him Sanctus Gregorius bebēad. And þā sende to Æþelbeorhte ǣrendwrecan and onbēad þæt hē of Rōme cōme and þæt betste ǣrende lǣdde; and sē þe him hīersum bēon wolde, būton twēon he gehēt ēcne gefēan on heofonum and tōweard rīce būton ende mid þone sōþan God and þone lifigendan. Ðā hē þā sē cyning þās word gehīerde, þa hēt hē hīe bīdan on þæm ēalande þe hīe ūp cōmon; and him þider hiera þearfe forgēaf, oð þæt hē gesāwe hwæt hē him dōn wolde. Swelce ēac ǣr þǣm becōm hlīsa tō him þǣre crīstenan ǣfæstnesse, forþon hē crīsten wīf hæfde, him gegiefen of Francena cyningcynne, Beorhte wæs hāten. Þæt wīf hē onfēng fram hiere ieldrum þǣre ārǣdnesse þæt hēo his lēafnesse hæfde þæt hēo þone þēaw þæs crīstenan gelēafan and hiere ǣfæstnesse ungewemmedne healdan mōste mid þȳ biscope, þone þe hīe hiere tō fultume þæs gelēafan sealdon, þæs nama wæs Lēodheard.
Ðā wæs æfter manigum dagum þæt sē cyning cōm tō þǣm ēalande, and hēt him ūte setl gewyrcean; and hēt Augustinum mid his gefērum þider tō his sprǣce cuman. Warnode hē him þȳ lǣs hīe on hwelc hūs tō him inēoden; brēac ealdre hēalsunga, gif hīe hwelcne drȳcræft hæfden þæt hīe hine oferswīðan and beswīcan sceolden. . . . Þā hēt sē cyning hīe sittan, and hīe swā dydon; and hīe sōna him līfes word ætgædere mid eallum his gefērum þe þǣr æt wǣron, bodedon and lǣrdon. Þā andswarode sē cyning and þus cwæð: "Fæger word þis sindon and gehāt þe gē brōhton and ūs secgað. Ac forðon hīe nīwe sindon and uncūðe, ne magon wē nū gēn þæt þafian þæt wē forlǣten þā wīsan þe wē langre tīde mid ealle Angelþēode hēoldon. Ac forðon þe gē hider feorran elþēodige cōmon and, þæs þe mē geþūht is and gesewen, þā þing, ðā ðe [gē] sōð and betst gelīefdon, þæt ēac swelce wilnodon ūs þā gemǣnsumian, nellað wē forðon ēow hefige bēon. Ac wē willað ēow ēac fremsumlīce on giestlīðnesse onfōn and ēow andleofne sellan and ēowre þearfe forgiefan. Ne wē ēow beweriað þæt gē ealle, ðā þe gē mægen, þurh ēowre lāre tō ēowres gelēafan ǣfæstnesse geðīeden and gecierren."
目下,Baugh and Cable の英語史書 A History of the English Language を1節ずつ丁寧に読んでいくオンライン読書会シリーズを Voicy heldio で展開中です(有料配信ですが第1チャプターは試聴可).上に引用した古英語原文が含まれているのは第47節で,これを扱った回は「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (47) The Language Illustrated」です.ただし,そこでは上記の古英語原文は,かなり長いために解説するのを割愛していました.
これを補うべく,明後日3月25日(月)の午後1時30分より heldio の生放送による解説を配信します.小河舜さん(フェリス女学院大学ほか)および「まさにゃん」こと森田真登さん(武蔵野学院大学)とともに,「はじめての古英語」シリーズの一環としての特別企画です.上記の古英語原文は,その予習用として掲げた次第です.お楽しみに!
Bede の古英語訳の原文としては,ほかにも「#2900. 449年,アングロサクソン人によるブリテン島侵略」 ([2017-04-05-1]) を参照.
・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
「#2893. Beowulf の冒頭11行」 ([2017-03-29-1]) と「#2915. Beowulf の冒頭52行」 ([2017-04-20-1]) で,古英詩の傑作 Beowulf の冒頭を異なるエディションより紹介しました.今回は Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」と連動させ,この詩の冒頭11行を Jack 版から読み上げてみたので,ぜひ聴いていただければと思います.「#789. 古英詩の傑作『ベオウルフ』の冒頭11行を音読」です.以下に,Jack 版と忍足による日本語訳のテキスト,および写本画像を掲げておきます.
1 Hwæt, wē Gār-Dena in geārdagum, いざ聴き給え,そのかみの槍の誉れ高きデネ人の勲,民の王たる人々の武名は, 2 þēodcyninga þrym gefrūnon, 貴人らが天晴れ勇武の振舞をなせし次第は, 3 hū ðā æþelingas ellen fremedon. 語り継がれてわれらが耳に及ぶところとなった. 4 Oft Scyld Scēfing sceaþena þrēatum, シェーフの子シュルドは,初めに寄る辺なき身にて 5 monegum mǣgþum meodosetla oftēah, 見出されて後,しばしば敵の軍勢より, 6 egsode eorl[as], syððan ǣrest wearð 数多の民より,蜜酒の席を奪い取り,軍人らの心胆を 7 fēasceaft funden; hē þæs frōfre gebād, 寒からしめた.彼はやがてかつての不幸への慰めを見出した. 8 wēox under wolcnum, weorðmyndum þāh, すなわち,天が下に栄え,栄光に充ちて時めき, 9 oðþæt him ǣghwylc þ[ǣr] ymbsittendra 遂には四隣のなべての民が 10 ofer hronrāde hȳran scolde, 鯨の泳ぐあたりを越えて彼に靡き, 11 gomban gyldan. Þæt wæs gōd cyning! 貢を献ずるに至ったのである.げに優れたる君王ではあった.
Beowulf については,本ブログでも beowulf の各記事で取り上げてきました.また,この作品については,先日 Voicy heldio で専門家との対談を収録・配信したので,そちらもお聴き下さい.「#783. 古英詩の傑作『ベオウルフ』 (Beowulf) --- 唐澤一友さん,和田忍さん,小河舜さんと飲みながらご紹介」です.
古英語の響きに関心を持った方は,ぜひ Voicy heldio より以下もお聴きいただければ.
・ 「#326. どうして古英語の発音がわかるのですか?」
・ 「#321. 古英語をちょっとだけ音読 マタイ伝「岩の上に家を建てる」寓話より」
・ 「#735. 古英語音読 --- マタイ伝「種をまく人の寓話」より毒麦の話」
・ 「#766. 古英語をちょっとだけ音読 「キャドモンの賛歌」」
・ Jack, George, ed. Beowulf: A Student Edition. Oxford: Clarendon, 1994.
・ 忍足 欣四郎(訳) 『ベーオウルフ』 岩波書店,1990年.
古英語テキストを原文で読むシリーズ.新約聖書のマタイ伝より13章の「種をまく人の寓話」より24--30節の毒麦の話を,古英語版で味わってみよう.以下,Sweet's Anglo-Saxon Primer (9th ed.) の校訂版より引用する.あわせて,1611年の The Authorised Version (The King James Version [KJV]) の近代英語訳と日本語口語訳も添えておく.
[ 古英語 ]
Heofona rīċe is ġe·worden þǣm menn ġe·līċ þe sēow gōd sǣd on his æcere. Sōþlīċe, þā þā menn slēpon, þā cōm his fēonda sum, and ofer·sēow hit mid coccele on·middan þǣm hwǣte, and fērde þanon. Sōþlīċe, þā sēo wyrt wēox, and þone wæstm brōhte, þā æt·īewde se coccel hine. Þā ēodon þæs hlāfordes þēowas and cwǣdon: 'Hlāford, hū, ne sēowe þū gōd sǣd on þīnum æcere? Hwanon hæfde hē coccel?' Þā cwæþ hē; 'Þæt dyde unhold mann.' Þā cwǣdon þā þēowas 'Wilt þū, wē gāþ and gadriaþ hīe?' Þā cwæþ hē: 'Nese: þȳ·lǣs ġē þone hwǣte ā·wyrtwalien, þonne ġē þone coccel gadriaþ. Lǣtaþ ǣġþer weaxan oþ rīp-tīman; and on þǣm rīptīman iċ secge þǣm rīperum: "Gadriaþ ǣrest þone coccel, and bindaþ scēaf-mǣlum tō for·bærnenne; and gadriaþ þone hwǣte in-tō mīnum berne."'
[ 近代英語 ]
[24] . . . The kingdom of heaven is likened unto a man which sowed good seed in his field: [25] But while men slept, his enemy came and sowed tares among the wheat, and went his way. [26] But when the blade was sprung up, and brought forth fruit, then appeared the tares also. [27] So the servants of the householder came and said unto him, Sir, didst not thou sow good seed in thy field? from whence then hath it tares? [28] He said unto them, An enemy hath done this. The servants said unto him, Wilt thou then that we go and gather them up? [29] But he said, Nay; lest while ye gather up the tares, ye root up also the wheat with them. [30] Let both grow together until the harvest: and in the time of harvest I will say to the reapers, Gather ye together first the tares, and bind them in bundles to burn them: but gather the wheat into my barn.
[ 日本語口語訳 ]
[24] ………「天国は,良い種を自分の畑にまいておいた人のようなものである.[25] 人々が眠っている間に敵がきて,麦の中に毒麦をまいて立ち去った.[26] 芽がはえ出て実を結ぶと,同時に毒麦もあらわれてきた.[27] 僕たちがきて,家の主人に言った,『ご主人様,畑におまきになったのは,良い種ではありませんでしたか.どうして毒麦がはえてきたのですか』.[28] 主人は言った,『それは敵のしわざだ』.すると僕たちが言った『では行って,それを抜き集めましょうか』.[29] 彼は言った,『いや,毒麦を集めようとして,麦も一緒に抜くかも知れない.[30] 収穫まで,両方とも育つままにしておけ.収穫の時になったら,刈る者に,まず毒麦を集めて束にして焼き,麦の方は集めて倉に入れてくれ,と言いつけよう』」.
今回は Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」との連動企画として,上記の古英語テキストを「#735. 古英語音読 --- マタイ伝「種をまく人の寓話」より毒麦の話」で読み上げています.ぜひお聴きください.
加えて,マタイ伝の同章の少し前の箇所,3--8節のくだりについて,関連する「#2906. 古英語聖書より「種をまく人の寓話」」 ([2017-04-11-1]) も参照.ほかに古英語聖書のテキストとしては「#2895. 古英語聖書より「岩の上に家を建てる」」 ([2017-03-31-1]),「#1803. Lord's Prayer」 ([2014-04-04-1]),「#1870. 「創世記」2:18--25 を7ヴァージョンで読み比べ」 ([2014-06-10-1]) も参照されたい.
・ Davis, Norman. Sweet's Anglo-Saxon Primer. 9th ed. Oxford: Clarendon, 1953.
古英語の詩 (Old English poetry) は,現存するテキストを合わせると3万行ほどのコーパスとなる古英語文学の重要な構成要素である.古英詩の「1行」は「半行+休止+半行」からなり,細かな韻律規則,とりわけゲルマン語的な頭韻 (alliteration) に特徴づけられる.
現存する古英詩の大半は以下の4つの写本に伝わっており,その他のものを含めた古英詩のほとんどが,校訂されて6巻からなる The Anglo-Saxon Poetic Records (=ASPR) に収められている.
・ The Bodleian manuscript Junius II (ASPR I): Genesis, Exodus, Daniel, Christ and Stan などを所収.
・ The Vercelli Book, capitolare CXVII (ASPR II): The Dream of the Room,Andreas と Elene の聖人伝などを所収.
・ The Exeter Book (ASPR III) (ASPR III): 宗教詩,Guthlac と Juliana の聖人伝,説教詩,The Wanderer, The Seafarer, The Ruin, The Wife's Lament, The Husband's Message, riddles (なぞなぞ)などを所収.
・ The British Library Cotton Vitellius A.xv (ASPR IV): Judith, Beowulf などを所収.
Mitchell (75) によれば,古英詩を主題で分類すると次の8種類が区別される.
1. Poems treating Heroic Subjects
Beowulf. Deor. The Battle of Finnsburgh. Waldere. Widsith.
2. Historic Poems
The Battle of Brunanburh. The Battle of Maldon.
3. Biblical Paraphrases and Reworkings of Biblical Subjects
The Metrical Psalms. The poems of the Junius MS; note especially Genesis B and Exodus. Christ. Judith.
4. Lives of the Saints
Andreas. Elene. Guthlac. Juliana.
5. Other Religious Poems
Note especially The Dream of the Rood and the allegorical poems --- The Phoenix, The Panther, and The Whale.
6. Short Elegies and Lyrics
The Wife's Lament. The Husband's Message. The Ruin. The Wanderer. The Seafarer. Wulf and Eadwacer. Deor might be included here as well as under 1 above.
7. Riddles and Gnomic Verse
8. Miscellaneous
Charms. The Runic Poem. The Riming Poem.
この中では目立たない位置づけながらも,7 に "Riddles" (なぞなぞ)ということば遊び (word_play) が含まれていることに注目したい.古今東西の言語文化において,なぞなぞは常に人気がある.古英語にもそのような言葉遊びがあった.古英語版のなぞなぞは内容としてはおよそラテン語のモデルに基づいているとされるが,古英語の独特のリズム感と,あえて勘違いさせるようなきわどい言葉使いの妙を一度味わうと,なかなか忘れられない.
10世紀後半の写本である The Exeter Book に収録されている "Anglo-Saxon Riddles" は,95のなぞなぞからなる.その1つを古英語原文で覗いてみたいと思うが,古英語に不慣れな多くの方々にとって原文そのものを示されても厳しいだろう.そこで,昨日「英語史導入企画2021」のために大学院生より公表されたコンテンツ「古英語解釈教室―なぞなぞで入門する古英語読解」をお薦めしたい.事実上,古英詩の入門講義というべき内容になっている.
・ Mitchell, Bruce. An Invitation to Old English and Anglo-Saxon England. Blackwell: Malden, MA, 1995.
449年,Hengest と Horsa というジュート人の兄弟がブリトン人を助けるためにイングランドに渡り,その後むしろイングランドを征服してしまうという事件が起こった.このくだりは,The Anglo-Saxon Chronicle に詳しいが,以下では古英語初学者向けに改編された Smith (158--59) より,関連する古英語[2018-05-31-1]原文箇所を引用する.年代記の449年,455年,457年の記述より抜粋したものである.現代英語訳も付いているので,古英語読解の学習にもどうぞ.(別の関連する記述は「#389. Angles, Saxons, and Jutes の故地と移住先」 ([2010-05-21-1]) および「#2900. 449年,アングロサクソン人によるブリテン島侵略」 ([2017-04-05-1]) を参照.)
Anno 449. Hēr Martiānus and Valentīnus onfēngon rice, and rīcsodon seofon winter. And on hiera dagum Hengest and Horsa, fram Wyrtgeorne gelaþode, Bretta cyninge, gesōton Bretene on þǣm stede þe is genemned Ypwinesflēot, ǣrest Brettum tō fultume, ac hīe eft on hīe fuhton. Se cyning hēt hīe feohtan ongēan Peohtas; and hīe swā dydon, and sīge hæfdon swā hwǣr swā hīe cōmon. Hīe þā sendon tō Angle, and hēton him sendan māran fultum. Þā sendon hīe him māran fultum. Þā cōmon þā menn of þrim mǣgþum Germānie: of Ealdseaxum, of Englum, of Iotum.
455. Hēr Hengest and Horsa fuhton wiþ Wyrtgeorne þǣm cyninge in þǣre stōwe þe is genemned Æglesþrep; and his brōþor Horsan man ofslōg. And æfter þǣm Hengest fēng tō rīce, and Æsc his sunu.
457. Hēr Hengest and Æsc fuhton wiþ Brettas in þǣre stōwe þe is genemned Crecganford, and þǣr ofslōgon fēower þūsend wera. Þā forlēton þā Brettas Centland, and mid micle ege flugon tō Lundenbyrig.
Anno 449. In this year [lit. here] Martianus and Valentinus succeeded to [lit. received] kingship, and ruled seven years. And in their days Hengest and Horsa, invited by Vortigern, king of [the] Britons, came to Britain at the place which is called Ebbsfeet, first as a help to [the] Britons, but they afterwards fought against them. The king commanded them to fight against [the] Picts; and they did so, and had victory wherever they came. Then they sent to Angeln, and told them to send more help. They then sent to them more help. Then the men came from three tribes in Germany: from [the] Old Saxons, from [the] Angles, from [the] Jutes.
455. In this year Hengest and Horsa fought against Vortigern the king in the place which is called Aylesford; and his brother Horsa was slain [lit. one slew his brother Horsa]. And after that Hengest and Æsc his son succeeded to kingship [lit. Hengest succeeded to kingship, and Æsc his son].
457. In this year Hengest and Æsc fought against [the] Britons in the place which is called Crayford, and there slew four thousand men [lit. of men]. The Britons then abandoned Kent, and with great fear fled to London.
Hengest と Horsa のブリテン島侵攻については,anglo-saxon の記事のほか,とりわけ以下を参照.
・ 「#33. ジュート人の名誉のために」 ([2009-05-31-1])
・ 「#389. Angles, Saxons, and Jutes の故地と移住先」 ([2010-05-21-1])
・ 「#1013. アングロサクソン人はどこからブリテン島へ渡ったか」 ([2012-02-04-1])
・ 「#2353. なぜアングロサクソン人はイングランドをかくも素早く征服し得たのか」 ([2015-10-06-1])
・ 「#2443. イングランドにおけるケルト語地名の分布」 ([2016-01-04-1])
・ 「#2493. アングル人は押し入って,サクソン人は引き寄せられた?」 ([2016-02-23-1])
・ 「#2900. 449年,アングロサクソン人によるブリテン島侵略」 ([2017-04-05-1])
・ 「#3094. 449年以前にもゲルマン人はイングランドに存在した」 ([2017-10-16-1])
・ 「#3113. アングロサクソン人は本当にイングランドを素早く征服したのか?」 ([2017-11-04-1]) を参照.
・ Smith, Jeremy J. Essentials of Early English. 2nd ed. London: Routledge, 2005.
「#3139. 講座「スペリングでたどる英語の歴史」のお知らせ」 ([2017-11-30-1]) でお知らせしたように,朝日カルチャーセンター新宿教室で,5回にわたる講座「スペリングでたどる英語の歴史」が始まっています.1月27日(土)に開かれた第2回「英語初のアルファベット表記 --- 古英語のスペリング」で用いたスライド資料を,こちらに上げておきます.
今回は,アルファベットの系譜を確認しつつ,古英語がどのように表記され綴られいたかを紹介する内容でした.ポイントは以下の3点です.
・ 英語の書記はアルファベットの長い歴史の1支流としてある
・ 最古の英文はルーン文字で書かれていた
・ 発音とスペリングの間には当初から乖離がありつつも,後期古英語には緩い標準化が達成された
以下,スライドのページごとにリンクを張っておきます.多くのページに,本ブログ内へのさらなるリンクが貼られていますので,リンク集として使えると思います.
1. 講座『スペリングでたどる英語の歴史』第2回 英語初のアルファベット表記 --- 古英語のスペリング
2. 要点
3. (1) アルファベットの起源と発達 (#423)
4. アルファベットの系統図 (#1849)
5. アルファベットが子音文字として始まったことの余波
6. (2) 古英語のルーン文字
7. 分かち書きの成立
8. (3) 古英語のローマン・アルファベット使用の特徴
9. Cædmon's Hymn を読む (#2898)
10. 当初から存在した発音とスペリングの乖離
11. 後期古英語の「標準化」
12. 古英語スペリングの後世への影響
13. まとめ
14. 参考文献
昨日の記事「#2928. 古英語で「創世記」11:1--9 (「バベルの塔」)を読む」 ([2017-05-03-1]) で「バベルの塔」の古英語版を読んだが,「#1870. 「創世記」2:18--25 を7ヴァージョンで読み比べ」 ([2014-06-10-1]) にならって中英語以降のテキストも含めた7ヴァージョンを並べてみた.(1), (2), (3), (4), (7) の5つは寺澤先生の著書の第8章より,(5), (6) は聖書サイトより持ってきた現代英語版である.
(1) 1000年頃の古英語訳 Old English Heptateuch より.
Wæs þā ān gereord on eorþan, and heora ealre ān sprǣc. Hī fērdon fram ēastdēle oð þæt hī cōmon tō ānum felde on þām lande Sennar, and þēr wunedon. Ðā cwǣdon hī him betwȳnan, “Vton wyrcean ūs tigelan and ǣlan hī on fȳre.” Witodlīce hī hæfdon tigelan for stān and tyrwan for weall-līm. And cwǣdon, “Cumað and utan wircan ūs āne burh and ǣnne stȳpel swā hēahne ðæt his rōf ātille þā heofonan, and uton mǣrsian ūrne namon, ǣr þan wē bēon tōdǣlede tō eallum landum.” God þā nyþer āstāh, þæt hē gesēga þā burh and þone stȳpel þe Adames sunus getimbroden. God cwæð þā, “Efne þis his ān folc and gereord him ealum, and hī ongunnon þis tō wircenne; ne hī ne geswīcað heora geþōhta, ǣr þan þe hī mid weorce hī gefyllan. Cumað nū eornostlīce and uton niþer āstīgan and heora gereord þēr tōwendon, þæt heora nān ne tōcnāwe his nēxtan stemne.” And God þā hī tōdǣlde swā of þǣre stōwe tō eallum landum, and hī geswicon tō wyrcenne þā buruh. And for þī wæs sēo burh gehāten Babel, for þan þe ðǣr wæs tōdǣled þæt gereord ealre eorþan. God þā hī sende þanon ofer brādnesse ealra eorðan.
(2) 1388--95年の Wycliffite Bible (Later Version) より.
Forsothe the lond was of o langage, and of the same speche. And whanne thei ȝeden forth fro the eest, they fonden a feeld in the lond of Sennaar, and dwelliden ther ynne. And oon seide to his neiȝbore, "Come ȝe, and make we tiel stonys, and bake we tho with fier," and thei hadden tiel for stonus, and pitche for morter; and seiden, "Come ȝe, and make we to vs a citee and tour, whos hiȝnesse stretche `til to heuene; and make we solempne oure name bifor that we be departid in to alle londis." Forsothe the Lord cam down to se the citee and tour, which the sones of Adam bildiden. And he seide, "Lo! the puple is oon, and o langage is to alle, and thei han bigunne to make this, nethir thei schulen ceesse of her thouȝtis, til thei fillen tho in werk; therfor come ȝe, go we doun, and scheende we there the tunge of hem, that ech man here not the voys of his neiȝbore." And so the Lord departide hem fro that place in to alle londis; and thei cessiden to bielde a cytee. And therfor the name therof was clepid Babel, for the langage of al erthe was confoundide there; and fro thennus the Lord scaterede hem on the face of alle cuntrees.
(3) 1611年の The Authorised Version (The King James Version)より.
And the whole earth was of one language, and of one speach. And it came to passe as they iourneyed from the East, that they found a plaine in the land of Shinar, and they dwelt there. And they sayd one to another; Goe to, let vs make bricke, and burne them thorowly. And they had bricke for stone, and slime had they for morter. And they said; Goe to, let vs build vs a city and a tower, whose top may reach vnto heauen, and let vs make vs a name, lest we be scattered abroad vpon the face of the whole earth. And the LORD came downe to see the city and the tower, which the children of men builded. And the LORD said; Behold, the people is one, and they have all one language: and this they begin to doe: and now nothing will be restrained from them, which they haue imagined to doe. Goed to, let vs go downe, and there cōfound their language, that they may not vnderstand one anothers speech. So the LORD scattered them abroad from thence, vpon the face of all the earth: and they left off to build the Citie. Therefore is the name of it called Babel, because the LORD did there confound the language of all the earth: and from thence did the LORD scatter them abroad vpon the face of all the earth.
(4) 1989年の The New Revised Standard Version より.
Now the whole earth had one language and the same words. And as they migrated from the east, they came upon a plain in the land of Shinar and settled there. And they said to one another, "Come, let us make bricks, and burn them thoroughly." And they had brick for stone, and bitumen for mortar. Then they said, "Come, let us build ourselves a city, and a tower with its top in the heavens, and let us make a name for ourselves; otherwise we shall be scattered abroad upon the face of the whole earth." The Lord came down to see the city and the tower, which mortals had built. And the Lord said, "Look, they are one people, and they have all one language; and this is only the beginning of what they will do; nothing that they propose to do will now be impossible for them. Come, let us go down, and confuse their language there, so that they will not understand one another's speech." So the Lord scattered them abroad from there over the face of all the earth, and they left off building the city. Therefore it was called Babel, because there the Lord confused the language of all the earth; and from there the Lord scattered them abroad over the face of all the earth.
(5) 基礎語彙のみを用いた Basic English(The Holy Bible --- Bible in Basic English) より.
And all the earth had one language and one tongue. And it came about that in their wandering from the east, they came to a stretch of flat country in the land of Shinar, and there they made their living-place. And they said one to another, Come, let us make bricks, burning them well. And they had bricks for stone, putting them together with sticky earth. And they said, Come, let us make a town, and a tower whose top will go up as high as heaven; and let us make a great name for ourselves, so that we may not be wanderers over the face of the earth. And the Lord came down to see the town and the tower which the children of men were building. And the Lord said, See, they are all one people and have all one language; and this is only the start of what they may do: and now it will not be possible to keep them from any purpose of theirs. Come, let us go down and take away the sense of their language, so that they will not be able to make themselves clear to one another. So the Lord God sent them away into every part of the earth: and they gave up building their town. So it was named Babel, because there the Lord took away the sense of all languages and from there the Lord sent them away over all the face of the earth.
(6) 平易な米口語訳 Good News Translation (BibleGateway.com) より.
At first, the people of the whole world had only one language and used the same words. As they wandered about in the East, they came to a plain in Babylonia and settled there. They said to one another, "Come on! Let's make bricks and bake them hard." So they had bricks to build with and tar to hold them together. They said, "Now let's build a city with a tower that reaches the sky, so that we can make a name for ourselves and not be scattered all over the earth." Then the Lord came down to see the city and the tower which they had built, and he said, "Now then, these are all one people and they speak one language; this is just the beginning of what they are going to do. Soon they will be able to do anything they want! Let us go down and mix up their language so that they will not understand each other." So the Lord scattered them all over the earth, and they stopped building the city. The city was called Babylon, because there the Lord mixed up the language of all the people, and from there he scattered them all over the earth.
(7) 新共同訳より.
世界中は同じ言葉を使って,同じように話していた.東の方から移動してきた人々は,シンアルの地に平野を見つけ,そこに住み着いた.彼らは,「れんがを作り,それをよく焼こう」と話し合った.石の代わりにれんがを,しっくいの代わりにアスファルトを用いた.彼らは,「さあ,天まで届く塔のある町を建て,有名になろう.そして,全地に散らされることのないようにしよう」と言った.主は降って来て,人の子らが建てた,塔のあるこの町を見て,言われた.「彼らは一つの民で,皆一つの言葉を話しているから,このようなことをし始めたのだ.これでは,彼らが何を企てても,妨げることはできない.我々は降って行って,直ちに彼らの言葉を混乱させ,互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう.」主は彼らをそこから全地に散らされたので,彼らはこの町の建設をやめた.こういうわけで,この町の名はバベルと呼ばれた.主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ,また,主がそこから彼らを全地に散らされたからである.
・ 寺澤 盾 『聖書でたどる英語の歴史』 大修館書店,2013年.
東京都美術館でブリューゲル「バベルの塔」展が開かれている.24年ぶりの来日だそうで,たいへん盛り上がっている.
「バベルの塔」 (The Tower of Babel) の話は「創世記」11:1--9 に記されている.この世に様々な言語が存在することを「聖書なりに」説明づけた箇所とされ,言語起源論においてもしばしば引き合いに出される,極めて著名なくだりである.
今回は,「バベルの塔」の古英語の文章を,寺澤盾先生の『聖書でたどる英語の歴史』第8章から,Old English Heptateuch 版によって示そう.
Wæs þā ān gereord on eorþan, and heora ealre ān sprǣc. Hī fērdon fram ēastdēle oð þæt hī cōmon tō ānum felde on þām lande Sennar, and þēr wunedon. Ðā cwǣdon hī him betwȳnan, “Vton wyrcean ūs tigelan and ǣlan hī on fȳre.” Witodlīce hī hæfdon tigelan for stān and tyrwan for weall-līm. And cwǣdon, “Cumað and utan wircan ūs āne burh and ǣnne stȳpel swā hēahne ðæt his rōf ātille þā heofonan, and uton mǣrsian ūrne namon, ǣr þan wē bēon tōdǣlede tō eallum landum.” God þā nyþer āstāh, þæt hē gesēga þā burh and þone stȳpel þe Adames sunus getimbroden. God cwæð þā, “Efne þis his ān folc and gereord him ealum, and hī ongunnon þis tō wircenne; ne hī ne geswīcað heora geþōhta, ǣr þan þe hī mid weorce hī gefyllan. Cumað nū eornostlīce and uton niþer āstīgan and heora gereord þēr tōwendon, þæt heora nān ne tōcnāwe his nēxtan stemne.” And God þā hī tōdǣlde swā of þǣre stōwe tō eallum landum, and hī geswicon tō wyrcenne þā buruh. And for þī wæs sēo burh gehāten Babel, for þan þe ðǣr wæs tōdǣled þæt gereord ealre eorþan. God þā hī sende þanon ofer brādnesse ealra eorðan.
・ 寺澤 盾 『聖書でたどる英語の歴史』 大修館書店,2013年.
「#2893. Beowulf の冒頭11行」 ([2017-03-29-1]) で挙げた11行では物足りなく思われたので,有名な舟棺葬 (ship burial) の記述も含めた Beowulf 冒頭の52行を引用したい.舟棺葬とは,6--11世紀にスカンディナヴィアとアングロサクソンの文化で見られた高位者の葬法である.
原文は Jack 版で.現代英語訳は Norton Anthology に収録されているアイルランドのノーベル文学賞受賞詩人 Seamus Heaney の版でお届けする.
OE | PDE translation | ||
---|---|---|---|
a-verse | b-verse | ||
Hwæt, wē Gār-Dena | in geārdagum, | So. The Spear-Danes in days gone by | |
þēodcyninga | þrym gefrūnon, | and the kings who ruled them had courage and greatness. | |
hū ðā æþelingas | ellen fremedon. | We have heard of those princes' heroic campaigns. | |
Oft Scyld Scēfing | sceaþena þrēatum, | There was Shield Sheafson, scourge of many tribes, | |
5 | monegum mǣgþum | meodosetla oftēah, | a wrecker of mead-benches, rampaging among foes. |
egsode eorl[as], | syððan ǣrest wearð | This terror of the hall-troops had come far. | |
fēasceaft funden; | hē þæs frōfre gebād, | A foundling to start with, he would flourish later on | |
wēox under wolcnum, | weorðmyndum þāh, | as his powers waxed and his worth was proved. | |
oðþæt him ǣghwylc þ[ǣr] | ymbsittendra | In the end each clan on the outlying coasts | |
10 | ofer hronrāde | hȳran scolde, | beyond the whale-road had to yield to him |
gomban gyldan. | Þæt wæs gōd cyning! | and begin to pay tribute. That was one good king. | |
Ðǣm eafera wæs | æfter cenned | Afterward a boy-child was born to Shield, | |
geong in geardum, | þone God sende | a cub in the yard, a comfort sent | |
folce tō frōfre; | fyrenðearfe ongeat | by God to that nation. Hew knew what they had tholed, | |
15 | þ[e] hīe ǣr drugon | aldor[lē]ase | the long times and troubles they'd come through |
lange hwīle. | Him þæs Līffrēa, | without a leader; so the Lord of Life, | |
wuldres Wealdend | woroldāre forgeaf; | the glorious Almighty, made this man renowned. | |
Bēowulf wæs brēme | ---blǣd wīde sprang--- | Shield had fathered a famous son: | |
Scyldes eafera | Scedelandum in. | Beow's name was known through the north. | |
20 | Swā sceal [geong g]uma | gōde gewyrcean, | And a young prince must be prudent like that, |
fromum feohgiftum | on fæder [bea]rme, | giving freely while his father lives | |
þæt hine on ylde | eft gewunigen | so that afterward in age when fighting starts | |
wilgesīþas | þonne wīg cume, | steadfast companions will stand by him | |
lēode gelǣsten; | lofdǣdum sceal | and hold the line. Behavior that's admired | |
25 | in mǣgþa gehwǣre | man geþēon. | is the path to power among people everywhere. |
Him ðā Scyld gewāt | tō gescæphwīle, | Shield was still thriving when his time came | |
felahrōr fēran | on Frēan wǣre. | and he crossed over into the Lord's keeping. | |
Hī hyne þā ætbǣron | tō brimes faroðe, | His warrior band did what he bade them | |
swǣse gesīþas, | swā hē selfa bæd, | when he laid down the law among the Danes: | |
30 | þenden wordum wēold | wine Scyldinga; | they shouldered him out to the sea's flood, |
lēof landfruma | lange āhte. | the chief they revered who had long ruled them. | |
Þǣr æt hȳðe stōd | hringedstefna | A ring-whorled prow rode in the harbor, | |
īsig ond ūtfūs, | æþelinges fær; | ice-clad, outbound, a craft for a prince. | |
ālēdon þā | lēofne þēoden, | They stretched their beloved lord in his boat, | |
35 | bēaga bryttan | on bearm scipes, | laid out by the mast, amidships, |
mǣrne be mæste. | Þǣr wæs mādma fela | the great ring-giver. Far-fetched treasures | |
of feorwegum, | frætwa gelǣded; | were piled upon him, and precious gear. | |
ne hȳrde ic cȳmlīcor | cēol gegyrwan | I never heard before of a ship so well furbished | |
hildewǣpnum | ond heaðowǣdum, | with battle-tackle, bladed weapons | |
40 | billum ond byrnum; | him on bearme læg | and coats of mail. The massed treasure |
mādma mænigo, | þā him mid scoldon | was loaded on top of him: it would travel far | |
on flōdes ǣht | feor gewītan. | on out into the ocean's sway. | |
Nalæs hī hine lǣssan | lācum tēodan, | They decked his body no less bountifully | |
þēodgestrēonum, | þon þā dydon | with offerings than those first ones did | |
45 | þe hine æt frumsceafte | forð onsendon | who cast him away when he was a child |
ǣnne ofer ȳðe | umborwesende. | and launched him alone out over the waves. | |
Þā gȳt hie him āsetton | segen g[yl]denne | And they set a gold standard up | |
hēah ofer hēafod, | lēton holm beran, | high above his head and let him drift | |
gēafon on gārsecg. | Him wæs geōmor sefa, | to wind and tide, bewailing him | |
50 | murnende mōd. | Men ne cunnon | and mourning their loss. No man can tell, |
secgan tō sōðe, | selerǣden[d]e, | no wise man in hall or weathered veteran | |
hæleð under heofenum, | hwā þǣm hlæste onfēng. | knows for certain who salvaged that load. |
Ælfric の説教集の第3弾とされる The Lives of the Saints は,998年までに書かれたとされる.そのなかから Life of King Oswald の冒頭部分をサンプル・テキストとして取り上げよう.King Oswald は633--641年にノーサンブリアを治めた王で,その子孫とともに十字架を篤く崇拝した者として知られている.ルーン文字の刻まれたノーサンブリアの有名な Ruthwell Cross も,そのような十字架崇拝の伝統の所産だろう.
Ælfric の説教集は多くの写本で現存しているが,以下の Smith 版テキストは,MS London, British Library Cotton Julius E.vii のものである.現代英語訳も付けて示す (Smith 132--33) .
Æfter ðan ðe Augustīnus tō Engla lande becōm, wæs sum æðele cyning, Oswold gehāten, on Norðhumbra lande, gelȳfed swyþe on God. Sē fērde on his iugoðe fram his frēondum and māgum tō Scotlande on sǣ, and þǣr sōna wearð gefullod, and his gefēran samod þe mid him sīðedon. Betwux þām wearð ofslagen Eadwine his ēam, Norðhumbra cynincg, on Crīst gelȳfed, fram Brytta cyninge, Ceadwalla gecīged, and twēgen his æftergengan binnan twām gēarum; and se Ceadwalla slōh and tō sceame tūcode þā Norðhumbran lēode æfter heora hlāfordes fylle, oð þæt Oswold se ēadiga his yfelnysse ādwǣscte. Oswold him cōm tō, and him cēnlīce wið feaht mid lȳtlum werode, ac his gelēafa hine getrymde, and Crīst gefylste tō his fēonda slege. Oswold þā ærǣrde āne rōde sōna Gode tō wurðmynte, ǣr þan þe hē tō ðām gewinne cōme, and clypode tō his gefērum:`Uton feallan tō ðǣre rōde, and þone Ælmihtigan biddan þæt hē ūs āhredde wið þone mōdigan fēond þe ūs āfyllan wile. God sylf wāt geare þæt wē winnað rihtlīce wið þysne rēðan cyning tō āhreddenne ūre lēode.' Hī fēollon þā ealle mid Oswolde cyninge on gebedum; and syþþan on ǣrne mergen ēodon tō þām gefeohte, and gewunnon þǣr sige, swā swā se Eallwealdend heom ūðe for Oswoldes gelēafan; and ālēdon heora fȳnd, þone mōdigan Cedwallan mid his micclan werode, þe wēnde þaet him ne mihte nān werod wiðstandan.
After Augustine came to England, there was a certain noble king, called Oswald, in the land of the Northumbrians, who believed very much in God. He travelled in his youth from his friends and kinsmen to Dalriada ("Scotland in sea"), and there at once was baptised, and his companions also who travelled with him. meanwhile his uncle Edwin, king of the Northumbrians, who believed in Christ, was slain by the king of the Britons, named Ceadwalla, as were two of his successors within two years; and that Ceadwalla slew and humiliated the Northumbrian people after the death of their lord, until Oswald the blessed put an end to his evil-doing. Oswald came to him, and fought with him boldly with a small troop, but his faith strengthened him, and Christ assisted in the slaying of his enemies. Oswald then immediately raised up a cross in honour of God, before he came to the battle, and called to his companions: "Let us kneel to the cross, and pray to the Almighty that he rid us from the proud enemy who wishes to destroy us. God himself knows well that we strive rightly against this cruel king in order to redeem our people." They then all knelt with King Oswald in prayers; and then early on the morrow they went to the fight, and gained victory there, just as the All-powerful granted them because of Oswald's faith; and they laid low their enemies, the proud Ceadwalla with his great troop, who believed that no troop could withstand him.
・ Smith, Jeremy J. Old English: A Linguistic Introduction. Cambridge: CUP, 2009.
何回目かになる,古英語のテキストとその現代英語訳を挙げるシリーズ(oe_text) .今回は,The Anglo-Saxon Chronicle のE写本,いわゆる Peterborough Chronicle からのテキストで,ブリテン島の地理,民族,言語,歴史が述べられている部分を抜粋する.初学者用に綴字の標準化された市川・松浪版 (86--89) より,現代英語訳も合わせて示そう.
Brytene īeȝland is eahta hund mīla lang, and twā hund mīla brād. And hēr sind on þȳs īeȝlande fīf ȝeþēodu: Englisc, and Brytwilisc, and Scyttisc, and Pyhtisc, and Bōclæden. Ǣrest wǣron būend þisses landes Bryttas; þā cōmon of Armenia, and ȝesǣton sūðewearde Brytene ǣrest. Þā ȝelamp hit þæt Pyhtas cōmon sūþan of Scithian, mid langum scipum, nā manigum. And þā cōmon ǣrest on Norþ-Ibernia ūp, and þǣr bǣdon Scottas þæt hīe ðǣr mōsten wunian. Ac hīe noldon him līefan, for ðǣm hīe cwǣdon þæt hīe ne mihten ealle ætgædere ȝewunian þǣr. And þā cwǣdon þā Scottas, `Wē ēow magon þēah hwæðere rǣd ȝelǣran, wē witon ōþer īeȝland hēr bē ēastan, þǣr ȝē magon eardian ȝif ȝē willað, and ȝif hwā ēow wiðstent, wē ēow fultumiað þæt ȝē hit mæȝen ȝegān.'
ðā fērdon þā Pyhtas, and ȝefērdon þis land norþanweard, and sūþanweard hit hæfdon Bryttas, swā wē ǣr cwǣdon. And þā Pyhtas him ābǣdon wīf æt Scottas, on þā ȝerād þæt hīe ȝecuren hiera cynecynn ā on þā wīfhealfe. Þæt hīe hēoldon swā lange siððan. And þā ȝelamp hit ymbe ȝēara ryne þæt Scotta sum dǣl ȝewāt of Ibernian on Brytene, and þæs landes sumne dǣl ȝeēodon. And wæs hiera heretoga Reoda ȝehāten, from þǣm hie sind ȝenemnode Dǣl Reodi.
The island of Britain is eight hundred miles long, and two hundred miles broad. And here in this island are five languages: English, British, Pictish, and Latin. At first the inhabitants of this island were Britons; they came from Armenia, and first occupied Britain in the south (i.e. the southern part of Britain). Then it happened that the Picts came from the south from Scythia, with warships, not many. And they first landed in North Ireland, and there begged the Scots that they might dwell there. But they (= the Scots) would not allow them, because they said that they could not live there all together. And then the Scots said, `We can, however, give you advice: we know another island to the east from here, where you can dwell, if you wish; and if anyone resists you, we will help you that you may conquer it.'
Then the Picts went away, and conquered the northern part of this land, and the Britons had the southern part of it, as we have said before. And the Picts asked wives for them from the Scots, on the conditions that they should choose their royal line always on the female side. They kept it for a long time. And it happened then, in the course of years, that some portion of the Scots departed from Ireland to Britain, and conquered some part of the land, And their leader was called Reoda; from him they are named (the people) of Dal Rialda.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩』 研究社,1986年.
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