FIFA World Cup の次なる相手はデンマーク.ということで,今回はタイムリーに「デンマークと英語の関係」について.古代から現代にかけてデンマーク(語)と英語(学)とは,何かにつけて関わりが深い.以下は要点のみで詳しい解説は載せていないが,主に hellog 内の記事へのジャンプを豊富に含めているので参照を.以下と同じ内容をPDFスライドにしたもののほうが見やすいかもしれないので,そちらもどうぞ.
1. デンマーク語と英語はともにゲルマン系
2. ジュート人はデンマークに分布
3. 古代ゲルマン文化・文学を共有
4. 古代デンマーク語は英語に多大な影響を与えた
5. 著名な英語・ゲルマン語学者が輩出
6. 現在のデンマークは ESL 国へ
1. デンマーク語と英語はともにゲルマン系
・ See [2009-10-26-1] for Germanic languages
・ Danish = a mod. lang. of North Germanic
・ English = a mod. lang. of West Germanic
・ Old Norse = a common ancestor of modern Danish, Swedish, Norwegian, Icelandic, etc.
2. ジュート人はデンマークに分布
・ The Angles, Saxons, Jutes の故地 ([2010-05-21-1])
・ Hengist and Horsa がブリテン島へ第一歩を ([2009-05-31-1])
・ Kent や the Isle of Wight へ比較的小規模な定住
3. 古代ゲルマン文化・文学を共有
・ ルーン文字 ( the Runic Alphabet ) ( see http://www.omniglot.com/writing/runic.htm )
・ ゲルマン神話
・ 古英語で書かれた最高の英雄詩 Beowulf の舞台はデンマーク
4. 古代デンマーク語は英語に多大な影響を与えた
・ 8世紀後半?11世紀前半,ヴァイキングによるイングランド侵略
・ 基本語や機能語の高頻度語を中心に約900語が英語に入った
・ 英語の人名 ・地名に大きく貢献 ex. Derby; Johnson
・ 言語接触により英語の屈折の衰退が加速した ([2009-06-26-1])
・ その他,多くの計り知れない影響を与えた (old_norse)
5. 著名な英語 ・ゲルマン語学者が輩出
・ Rasmus Rask (1787--1832) cf. Grimm's Law ([2009-08-07-1])
・ Karl Verner (1846--96) cf. Verner's Law ([2009-08-09-1])
・ Otto Jespersen (1860--1943) ([2010-04-02-1])
6. 現在のデンマークは ESL 国へ
・ デンマーク人は英語が得意
・ 国内コミュニケーションのための英語
・ EFL → ESL への language shift ([2009-06-23-1])
似たような記事としては「アイスランド語と英語の関係」と題する記事を[2010-04-20-1]で書いたので,そちらも参照.
以下の国名リストから何が連想されるだろうか.
・Argentina
・Belgium
・Costa Rica
・Denmark
・Ethiopia
・Honduras
・Lebanon
・Myanmar
・Nepal
・Netherlands
・Nicaragua
・Norway
・Panama
・Somalia
・Sudan
・Suriname
・Sweden
・Switzerland
・United Arab Emirates
これは国内での英語の位置づけが EFL ( English as a Foreign Language ) から ESL ( English as a Second Language ) の地位へと変化しつつある国のリストである ( Graddol 11 ).こうした国では,専門職や高等教育といった領域を中心に,国内コミュニケーションのために英語が用いられる機会が増えているという.
北欧人の英語が上手なことはよく知られているが,私がデンマークを訪れたときに,ある印象的な出来事があった.Shakespeare の Hamlet の舞台となった Kronborg Castle の観光ツアーに参加したときのこと.10名以上いた参加者のうち,私が唯一の外国人であり,残りは皆デンマーク人だった.そこでツアー開始時にツアーガイドから自然に発せられた一言,「これからの観光案内は英語でいたします」.参加者の一人で中学生くらいとおぼしき若者がジェスチャーで「英語は苦手だよ」と冗談めかしていたが,その後ツアーはごく自然に英語で進行した.英語が国内でも広く受け入れられている証拠だろう.
英語が ESL の地位を得つつあるデンマークのような国が増えてきていることは,英語の未来を考える上で重要な意味をもつだろう.
・Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm.
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