01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
2026 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2025 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2024 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2023 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2022 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2021 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2020 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2019 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2018 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2017 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2016 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2015 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2014 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2013 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2012 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2011 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2010 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2009 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
昨日の記事「#6205. Scots の歴史に注目すべき理由」 ([2026-04-23-1]) を受けて,今後 Scots の歴史についての話題を展開していくのに先だち,Scots の標準的な時代区分 (periodisation) を挙げておきたい.以下は,McClure (46) が,Scots 史研究の伝統を受け継ぎつつ掲げている区分である.
| Old English | to 1100 |
| Old Scots | to 1700 |
| Pre-literary Scots | to 1375 |
| Early Scots | to 1450 |
| Middle Scots | 1450--1700 |
| Early Middle Scots | 1450--1550 |
| Late Middle Scots | 1550--1700 |
| Modern Scots | 1700 onwards |
私たちが日頃英語と呼んでいるものは,たいていイングランド南部の方言に基づいて発展してきた標準英語 (Standard English) にほかなりません.しかし,一歩視点を北へ転じ,スコットランドで話されてきた/いる英語変種 (Scots or Scottish English) に目を向けると,そこには標準英語のパラレルワールドというべき世界と歴史が広がっています.
本記事では,スコットランドに暮らした/暮らしている経験のある私の贔屓目が効いていることを認めつつ,なぜ Scots とその歴史について知っておくとよいのか,ポイントを整理してみたいと思います.
Scots とその歴史に注目すべき第1の理由は,Scots が標準英語を相対化するための鏡になり得るという点です.Scots は,イングランドの英語変種を除けば,古英語に直接由来する唯一の英語変種です.ある角度から評すれば,Scots は比較言語学的に English と最も近い言語といえるのです.私たちが学習の目標としている英語が現在の姿になったのは,歴史の必然ではなく,偶然の結果にすぎません.例えば,Scots では大母音推移 (gvs) が部分的にしか起こっておらず,house を古英語以来の音に近い [huːs] と発音したり,長音を表すのに <i> の母音字を添える独自の綴字習慣を持っていたりします.また,現在形の動詞には,主語の人称に限らず軒並み -is が現われるなど,Scots は文法面でも独自の変化を遂げてきています.歴史が異なっていれば,標準英語もあるいはこうなっていたかもしれない,という仮の姿を Scots に見ることで,私たちは標準英語を絶対視せず,斜めから眺める視点を手に入れることができるのです.
第2に,Scots の歴史は English の歴史に負けず劣らず,言語接触の効果を評価する格好の材料である,という点です.Scots の語彙や表現には,8世紀後半から11世紀のヴァイキング侵攻と関連する古ノルド語の影響,13--14世紀のスコットランド独立運動と関係の深いフランスとの「古来の同盟」(Auld Alliance)がもたらした独自のフランス借用語,そして15世紀に花咲いたラテン語を駆使した華麗な文体 (aureate diction) が刻み込まれています.さらに古くは,ケルト語の基盤もあるわけで,Scots はこの土地における英語史の複雑さを体現する存在となっているのです.
第3に,Scots には豊かな文学的伝統があります.Robert the Bruce や William Wallace といった中世の英雄に関する物語から,近代の夜明けである15--16世紀の Robert Henryson や William Dunbar などのスコットランドにおけるチョーサーを信奉する詩人たち,そして後期近代の国民的詩人 Burns や作家 Scott に至るまで,Older/Modern Scots で書かれた珠玉の作品が残っています.Scots を学ぶことで,このような言葉の宝ものを直接味わうことができる喜びは格別です.Scots 特有の音楽的な響きは,単なる情報伝達の道具を超えた言語の魅力を,私たちに教えてくれます.
さらにいえば,Scots の歴史はスコットランドという枠を超えて世界史ともつながっています.Scots-Irish がアメリカ移民史に果たした役割は,いうまでもなく重要です.また,近代日本に計り知れない政治的・経済的影響を与えた,Thomas Blake Glover をはじめとするスコットランドの起業家たちの足跡を考えるとき,彼らの背景にあった言語的アイデンティティを無視することはできません.Scots という英語変種には,国家アイデンティティと言語の関係,あるいは書き言葉と話し言葉が異なるメディアとしていかに機能するかという社会言語学的諸問題が凝縮されてといってよいでしょう.
Scots とその歴史を学ぶことは,単に1つの非標準英語変種に詳しくなることではありません.それは,英語という言語が示し得た別の可能性,パラレルワールドに思いを馳せ,言語接触,言語交替,規範化の過程を批判的に捉え直す機会でもあるのです.
以上,スコットランド贔屓の目線から書きました.お目こぼしを.関連して「#1719. Scotland における英語の歴史」 ([2014-01-10-1]) も参照.
4月19日に配信された「いのほた言語学チャンネル」の回は,「#413. ニッチな英語史を人が集まるマーケットをにした男」です.内容としては,khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第13号発行のお知らせ,およびその1面記事で大々的に取り上げている新刊の『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)のご紹介となっています.
さて,今回の動画でご紹介した『英語史新聞』第13号は,実に9ヶ月ぶりの発行となりました.khelf のゼミ生たちが編集から企画まで主体的に関わって作り上げた力作です.
第1面では,2026年2月に研究社より新装復刊された名著,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を紹介しています.この本は90年以上前に書かれた原稿を下敷きにしており,途中で大きな改編がなされながらも,日本における古英語・中英語の入門書の先駆けとも言える存在です.最近の語学書のような手取り足取りの親切さはありませんが,自ら辞書(グロッサリー)を引いて読み解くという,質実剛健な独学自習のスタイルが貫かれています.この媚びない潔さが,若い世代の読者にはかえって新鮮に映り,没入感を生むという可能性があります.
第2面以降も,現役の学生たちによるフレッシュな記事が満載です.
・ foot の複数形がなぜ feet になるのかという素朴な疑問への歴史的アプローチ
・ 聖書翻訳の比較から見える言葉の意味の変遷
・ 福元広二先生(法政大学)へのインタビュー(英語研究者のキャリアパス紹介)
・ 英語の始まりは何年か,という問いに迫るクイズとその回答・解説
古英語や中英語という一見ニッチな分野であっても,そこには現代の英語を理解するためのヒントが驚くほど詰まっています.ぜひ直接『英語史新聞』第13号をお読みください.
今回の「#413. ニッチな英語史を人が集まるマーケットをにした男」という標題については,井上逸兵さんが,『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を激推ししている私のことをこのように評してくださっているということなのですが,実際上はマーケットになっているのかは分かりません.ただ,新聞作りに関わった学生たちの熱意や,伝説的入門書を復刊させた出版社のご尽力,そして何より日々ブログや動画をチェックして英語史分野に関心を寄せてくださる読者の皆さんの支持があってこそ,この分野が息づいているのだとは感じています.関心をお持ちの方が少ないながらもいらっしゃれば,一緒に楽しんで行ければよいな,というつもりで「hel活」している次第です.
ぜひ『英語史新聞』第13号にアクセスし,英語史の奥深い世界に触れてみてください.そして,関心を持たれた方はぜひ『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)で英語史や古英語・中英語への第一歩を踏み出していただければ幸いです.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
毎年度初めの恒例記事です.過年度のものに,何点かを付け加えた書誌の最新版を公表します.
初学者にお薦めの図書に◎を,初学者を卒業した段階のお薦めの図書に○を付してあります.各図書の巻末などには,たいてい解題書誌や参考文献一覧が含まれていますので,さらに学習を続けたい方は芋づる式にたどっていってください.
印刷用のPDFをこちらに用意しましたので,自由に閲覧・印刷・配布していただいて結構です.英語史の学習・研究に役立ててください.
関連して以下の記事,および bibliography の記事群もご参照ください.
・ 「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1])
・ 「#4731. 『英語史新聞』新年度号外! --- 英語で書かれた英語史概説書3冊を紹介」 ([2022-04-10-1])
・ 「#4870. 英語学入門書の紹介」 ([2022-08-27-1])
・ 「#5237. 大阪大学総合図書館発行の「英語史について調べる」」 ([2023-08-29-1])
・ 「#6150. 「英語史の塔」が建っています」 ([2026-02-27-1])
[英語史(日本語)]
◎ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 宇賀治 正朋 『英語史』 開拓社,2000年.
・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.
○ 唐澤 一友 『多民族の国イギリス --- 4つの切り口から英国史を知る』 春風社,2008年.
◎ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉,2026年.
○ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
◎ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 島村 宣男 『新しい英語史 --- シェイクスピアからの眺め ---』 関東学院大学出版会,2006年.
・ 宗宮 喜代子 『歴史をたどれば英語がわかる --- ノルマン征服からの復権と新生』 開拓社,2024年.
◎ 寺澤 盾 『英語の歴史』 中央公論新社〈中公新書〉,2008年.
○ 寺澤盾(著)『世界の英語 --- 5大陸に広がる多様な Englishes』〈中公新書〉,2026年.
・ 高橋 英光 『英語史を学び英語を学ぶ --- 英語の現在と過去の対話』 開拓社,2020年.
・ 中尾 俊夫,寺島 廸子 『図説英語史入門』 大修館書店,1988年.
・ 橋本 功 『英語史入門』 慶應義塾大学出版会,2005年.
◎ 堀田 隆一 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』 中央大学出版部,2011年.
○ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
○ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.
・ 松浪 有(編),小川 浩・小倉 美知子・児馬 修・浦田 和幸・本名 信行(著) 『英語の歴史』 大修館書店,1995年.
・ 柳 朋宏 『英語の歴史をたどる旅』 中部大学ブックシリーズ Acta 30,風媒社,2019年.
・ 渡部 昇一 『英語の歴史』 大修館,1983年.
[英語史(英語)]
○ Algeo, John, and Thomas Pyles. The Origins and Development of the English Language. 5th ed. Thomson Wadsworth, 2005.
◎ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.(7版も刊行されています)
・ Blake, N. F. A History of the English Language. Basingstoke: Macmillan, 1996.
◎ Bradley, Henry. The Making of English. London: Macmillan, 1955.
○ Bragg, Melvyn. The Adventure of English. New York: Arcade, 2003.
○ Brinton, Laurel J. and Leslie K. Arnovick. The English Language: A Linguistic History. Oxford: OUP, 2006.
・ Bryson, Bill. Mother Tongue: The Story of the English Language. London: Penguin, 1990.
・ Crystal, David. The Stories of English. London: Penguin, 2005.
◎ Fennell, Barbara A. A History of English: A Sociolinguistic Approach. Malden, MA: Blackwell, 2001.
○ Gelderen, Elly van. A History of the English Language. Amsterdam, John Benjamins, 2006.
・ Görlach, Manfred. The Linguistic History of English. Basingstoke: Macmillan, 1997.
○ Gooden, Philip. The Story of English: How the English Language Conquered the World. London: Quercus, 2009.
・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.
・ Hogg, R. M. and D. Denison, eds. A History of the English Language. Cambridge: CUP, 2006.
○ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
◎ Horobin, Simon. How English Became English: A Short History of a Global Language. Oxford: OUP, 2016.
・ Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Chicago: U of Chicago, 1982.
○ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.
・ McCrum, Robert, William Cran, and Robert MacNeil. The Story of English. 3rd rev. ed. London: Penguin, 2003.
・ Mugglestone, Lynda, ed. The Oxford History of English. Oxford: OUP, 2006.
・ Smith, Jeremy J. An Historical Study of English: Function, Form and Change. London: Routledge, 1996.
○ Strang, Barbara M. H. A History of English. London: Methuen, 1970.
○ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006.
[英語史関連のウェブリソース]
・ 家入 葉子 「英語史全般(基本文献等)」 https://iyeiri.com/569 .
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「YouTube 井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」 2022年2月26日~,https://www.youtube.com/channel/UCth3mYbOZ9WsYgPQa0pxhvw .
・ 菊地 翔太 「菊地翔太 (Shota Kikuchi) のHP」 https://sites.google.com/view/shotakikuchi .
・ khelf (慶應英語史フォーラム) 「Keio History of the English Language Forum のHP」 https://sites.google.com/view/khelf-hotta .
・ 寺澤 志帆 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」 2025年5月1日~,https://sites.google.com/keio.jp/s-terasawa/contents/英語語源辞典でたどる英語綴字史 .
・ ヘルメイト 「月刊 Helvillian ハロー!英語史」 2024年10月8日~,https://note.com/helwa/m/m82eb39986f24 .
・ 堀田 隆一 「hellog~英語史ブログ」 2009年5月1日~,http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog .
・ 堀田 隆一 「連載 現代英語を英語史の視点から考える」 2017年1月~12月,http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/history_of_english/series.html .
・ 堀田 隆一 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 2021年6月2日~,https://voicy.jp/channel/1950 .
・ 堀田 隆一 YouTube 「heltube --- 英語史チャンネル」 2022年7月3日~,https://www.youtube.com/channel/UCG4a3V4jvVQ8ebujHeQzN6Q .
・ 三浦 あゆみ 「A Gateway to Studying HEL」 https://sites.google.com/view/gatewaytohel .
・ 矢冨 弘 「矢冨弘 homepage」 https://yadomi1989.wixsite.com/my-site-1 .
[英語史・英語学の参考図書]
・ 荒木 一雄・安井 稔(編) 『現代英文法辞典』 三省堂,1992年.
・ 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.
・ 石橋 幸太郎(編) 『現代英語学辞典』 成美堂,1973年.
・ 大泉 昭夫(編) 『英語史・歴史英語学:文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
・ 大塚 高信・中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
・ 小野 茂(他) 『英語史』(太田 朗・加藤 泰彦(編) 『英語学大系』 8--11巻) 大修館書店,1972--85年.
・ 佐々木 達・木原 研三(編) 『英語学人名辞典』,研究社,1995年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語史・歴史英語学 --- 文献解題書誌と文献目録書誌』 研究社,1997年.
・ 寺澤 芳雄(編) 『英語学要語辞典』 研究社,2002年.
・ 寺澤 芳雄・川崎 潔 (編) 『英語史総合年表 --- 英語史・英語学史・英米文学史・外面史 ---』 研究社,1993年.
・ 服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』 朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.
・ 松浪 有・池上 嘉彦・今井 邦彦(編) 『大修館英語学事典』 大修館書店,1983年.
・ Bergs, Alexander and Laurel J. Brinton, eds. English Historical Linguistics: An International Handbook. 2 vols. Berlin: Mouton de Gruyter, 2012.
・ Bergs, Alexander and Laurel J. Brinton, eds. The History of English. 5 vols. Berlin/Boston: Gruyter, 2017.
・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan, eds. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.
・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. Cambridge: CUP, 1995. 2nd ed. 2003.
・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. Cambridge: CUP, 1995. 2nd ed. 2003. 3rd ed. 2019.
・ Hogg, Richard M., ed. The Cambridge History of the English Language. 6 vols. Cambridge: CUP, 1992--2001.
・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum, eds. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.
・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.
・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
・ van Kemenade, Ans and Bettelou Los, eds. The Handbook of the History of English. Malden, MA: Blackwell, 2006.
古英語の be 動詞については「#2600. 古英語の be 動詞の屈折」 ([2016-06-09-1]) をはじめ,多くの記事で話題を取り上げてきた.古英語 be 動詞のパラダイムは,補充法 (suppletion) の典型例であり,様々な語根に基づく語形が並列的に用いられていたという事情がある.とりわけともに直説法現在時制を担っていた eom 系列と bēo 系列とが,用法の点でどのように異なるのかが問題となる.相 (aspect) の点で相違があると言われることが多いが,今回は Campbell (§768; p. 350--51) の記述を読んでみることにする.
The distinction of the pres. indic. tenses eom and bēo is fairly well preserved in OE: bēo expresses what is (a) an invariable fact, e.g. ne bið swylċ cwenliċ þeaw 'such is not a queenly custom', or (b) the future, e.g. ne bið þe wilna gad 'you will have no lack of pleasure', or (c) iterative extension into the future, e.g. biþ storma ȝehwylċ aswefed 'every storm is always allayed' (i.e. on all occasions of the flight of the Phoenix, past and to come); eom expresses a present state provided its continuance is not especially regarded, e.g.wlitiġ is se wong 'the plain is beautiful'.
基本的な用法としては,eom 系列は「特に継続を意識せずに捉えられている現在の状態」を表わすのに対し,bēo 系列は「不変の事実」「未来」「反復」を表わす.文脈上,この差が明確に出ない事例もあることは確かだが,概ね2つの系列の用法が区別されていたと捉えてよいだろう.
ほかに命令法や不定詞の形態についても,bēon 系列と他の系列が並んで行なわれていた.しかし,以下の Campbell (§768; p. 51) の説明の通り,用法の違いというよりは方言の差異と捉えるべきものだという.
The distinction of the imperatives bēo and wes is one of dialect, not of meaning. Broadly bēo is W-S and Merc., wes (woes, wæs) North.; but while bēo is never North., wes is found in W-S and Merc. . . .
Similarly inf. bēon (bīon, bīan) is W-S and Merc., wosa North.; but Ru.1 has once wesa, Li. once bīan.
The subj. forms bēo and sīe (sēo) are also dialectally distinguished: sīe is eW-S, Kt., VP, North., bēo is Ru.1 But already in eW-S bēo appears, and in lW-S it is the prevailing form (it does not appear, however, in KG). In North, it only appears in Li. (twice).
・ Campbell, A. Old English Grammar. Oxford: OUP, 1959.

*
4月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の5月号が発売されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.今回は連載第2回となり,井上さんがメインとなり「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」と題して,社会学の入門となる文章を書かれています.最後に,私も少しコメントしています.
前回の4月号(第1回)は,イントロとして「いのほた」対談形式でお届けしましたが,今月号からは交互にメインライターを務める趣向です.今月は井上さんが「社会言語学」 (sociolinguistics) のエッセンスを鮮やかに切り出しており,来月は私が「英語史」の観点から主筆を担当し,お互いに数行のコメントを寄せ合うという,まさに YouTube チャンネルの空気感を紙面に再現するような構成になっています.
今回の井上さんの記事の白眉は,「3つの扉」という切り口です.社会言語学という広大な領域を,(私流の解釈によれば) (1) 変異,(2) 人間関係,(3) 空気という3点で整理されています.人はことば「を」どう使うかという受動的な記述にとどまらず,副題にある通り,人はことば「で」何をしているのかという能動的・積極的な側面を強調されているのが,実に井上さんらしい視点だなと感じます.
とりわけ第1の扉である「変異」 (variation) は,言語変化を扱う歴史言語学や英語史と極めて親和性が高い領域です.歴史的に見れば,ある時代の「変異」が積み重なり,やがて「変化」へと結びついていくからです.この点については語りだすと止まらなくなるのですが,ぜひ本誌をお手に取っていただければと思います.
実をいえば,この連載は YouTube の「いのほた言語学チャンネル」と同様,あえてガチガチに12回分の計画を固めすぎないようにしています.もちろん大まかな構想はありますが,読者の皆さんの反応や,相方の出方を伺いながら,その都度フレキシブルにテーマを選んでいくという,ライブ感を大切にするスタイルをとっています.井上さんがこう来たならば,次は私はこう返そう……というインタラクションこそが,この連載の醍醐味と言えると思います.次回の6月号では私が主役を務める番ですが,今回の井上さんの「3つの扉」に触発されて,その英語史版をパロディとして書いてみようと思っています.社会言語学と英語史がどのように交差し,響き合うのか.まずは発売中の5月号にて,井上さんによる社会言語学の切り方を堪能してください.
本連載に関連して,heldio でも「#1783. 『英語教育』の「いのほた連載」第2弾」としてお話ししています.あわせてお聴きいただければ.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第2回 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」『英語教育』2026年5月号,大修館書店,2019年4月14日.44--45頁.

新年度が始まりました.今年度も「英語史をお茶の間に」広げていく活動「hel活」 (helkatsu) を精力的に展開してまいります.hellog 読者の皆様も,ぜひそれぞれの現場でhel活を推進していただければ幸いです.
昨年に引き続き,今年度の私のhel活の柱の1つとなるのが,恒例の朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座です.シリーズ全体のタイトルは昨年のものを継承し「歴史上もっとも不思議な英単語」のままですが,少なくともこの春期クールについては「語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」という副題を添えて,少々装いを新たにスタートします.
昨年度は,1つの単語を掘り下げることで英語史のパノラマを展望するというスタイルでした.今期もその精神は受け継ぎつつ,そこに「原文の味読」という付加価値を加えたいと考えています.具体的には,去る2月25日に研究社より刊行された伝説的入門書,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとして活用します.
春期クールの公式の案内文は以下の通りです.
「なぜこの英単語は,こんな意味や使い方をするのか」.その答えは,現代英語の外にあります.春期は,古英語・中英語の短い原文を入口として,英単語の不思議な歴史を探ります.名名文を丁寧に読み解いたうえで,そこから英語史の話題へと縦横に広げていきます.原文に構えず,英語史の物語として楽しめる講座です.(注:市河三喜・松浪有『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとし,そこから原文を選んで味読します.)
本講座の最大の特徴は,単なる語源解説にとどまらず,その語が実際に過去の文献でどのように息づいていたのかを,実際のテキストを通じて体験していただく点にあります.もちろん,これまで通り『英語語源辞典』や『英語語源ハンドブック』も頻繁に参照しながら,語源の深淵に迫っていきます.
春期クールは毎月1回,土曜日の 15:30--17:00 に開講されます.オンライン限定の講義ですので,全国どこからでもご参加いただけますし,2週間の見逃し配信もございます.予定されているラインナップは以下の通りです.
1. 4月25日(土):knight を探って中英語原文の世界へ
2. 5月23日(土):again を探って中英語原文の世界へ
3. 6月27日(土):ghost を探って古英語原文の世界へ
1週間後に開講される第1回は,中世騎士道でおなじみの knight を取り上げます.元々は「少年」や「従者」を意味していたこの語が,いかにして高貴な身分を指すようになったのか,中英語の原文に触れながらその意味変化を辿ります.
第2回は,日常語の again です.何の変哲もないように見えるこの語には,副詞や前置詞としての用法にとどまらず,多くの話題が隠されています.中英語期のテキストではどのように綴られ,用いられていたのでしょうか.
第3回は,現代では「幽霊」を指す ghost です.古英語期には「精神」や「魂」を意味していたこの語の変遷を,当時の格調高い原文とともに味わいましょう.
古英語や中英語の原文と聞くと,難しそうに聞こえるかもしれませんが,心配は無用です.「英語史の物語」を楽しむための材料として,私がナビゲートします.講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.
本シリーズの開講に向けて,Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1778. 4月25日(土)『古中初歩』による新年度の朝カルシリーズが始まります」をお聴きください.新年度,皆様と一緒に,原文とともに英語史の森を散策していくことを楽しみにしています.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーであり,英語綴字史を専門とする寺澤志帆さんから,なんとも喜ばしい,そして驚くべきニュースが届きました.
昨年5月1日からご自身のウェブサイトで公開されている連載企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」が,ついにアルファベットの最初の文字である A の項目をすべて読み終え,完走を果たしたとのことです.まずは寺澤さん,A のコンプリート,おめでとうございます!
この企画がどれほど希有で無謀(?)なものであるかは,以前の hellog 記事(末尾のリンク参照)でも示唆してきました.私が「世界一の英語語源辞典」と公言して推しに推している『英語語源辞典』 (kdee) を1ページ目から通読しようと試み,綴字史的に興味深いトピックを拾い上げて解説するという,まさに苦行ともいえるチャレンジです.
当初の予定では3年ほどで通読を目指していたとのことですが,蓋を開けてみれば A だけで約1年を要したという事実に,この辞典の奥深さと,寺澤さんの学究的な執念が象徴されています.ご自身が先日4月15日付の note 記事 「約1年かけて『英語語源辞典』のAで始まる語を通読してみた」でその道のりを振り返っていますが,A だけで 307 もの記事を積み上げてきたというのは,本当に驚きです.
私から寺澤さんの最新 note 記事に寄せたコメントを,ここでも共有したいと思います.
1年かかって A のコンプリート,おめでとうございます.hel活の新たな地平を築かれたことに感服です.何よりも,一つひとつの話題がおもしろいですね.副題に表れる「視点」にも,いつも注目しています.イニシャルごとの様々な風景も楽しみです.これからも日々のトピックを楽しみにしています.
寺澤さんの解説の魅力は,単なる辞典の要約にとどまらず,専門家としての視点,特に副題によく現わているスペリング観にあります.毎日の定点観測があるからこそ,一つひとつの記事に重みが出るのだと思います.
hellog 読者の皆さんには,ぜひこの稀有な連載を日々追いかけていただければと思います.更新頻度も高いですし,読むたびに新しい発見があるはずです.寺澤さんの連載サイト より RSS をフォローしていただければと思います.また,寺澤さんの note 記事 も合わせてチェックを!
『英語語源辞典』通読といえば,heldio/helwa のコアリスナーである lacolaco さんによる 「英語語源辞典通読ノート」 も要注目です.専門的な綴字史に特化した寺澤さんと,総合的なおもしろさを追求する lacolaco さん,このお2人の競演によって,現在『英語語源辞典』をめぐるhel活は,かつてない盛り上がりを見せています.お2人の対談回として,「#1718. 『英語語源辞典』を通読しているあの2人が初対談 --- helwa 新年会より」も,ぜひお聴きください.英語の見方が,大きく変わると思います.
辞典は「引く」ものではなく「読む」ものだ,という文化がこれほど根付いているコミュニティも珍しいと思います.出版元の研究社さんも,きっと草葉の陰ならぬ編集部で喜んでくださっているのではないでしょうか.
khelf や helwa を通じたhel活の輪がどんどん広がっています.読者の皆さんも,ぜひこれらの活動を応援したり,あるいは自ら参加したりして,英語史の世界をともに盛り上げていきましょう.
寺澤さんは,昨日より B の領域に突入していますね.B の初回は「308. B, b ―小文字ができるまで―」です.これからも楽しみです.
以下,関連する記事も合わせてお読みください.
・ 寺澤さん note 「helwaはまさに「英語史の輪」だった!~helwaオフ会潜入記~」(2025年5月18日公開)
・ 寺澤さん note 「約1年かけて『英語語源辞典』のAで始まる語を通読してみた」(2026年4月15日公開)
・ hellog 「#5861. khelf 寺澤志帆さんが「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」シリーズを開始しています」 ([2025-05-14-1])
・ hellog 「#6034. khelf 寺澤志帆さんの「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」が開始から半年」 ([2025-11-03-1])
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
先日公開された「いのほた言語学チャンネル」の動画では,「#411. 日本でピジン英語が話されていたのはあの島」と題して,小笠原群島の英語に焦点を当てた.関連する話題は,hellog としても「#2559. 小笠原群島の英語」 ([2016-04-29-1]),「#2596. 「小笠原ことば」の変遷」 ([2016-06-05-1]),「#3353. 小笠原諸島返還50年」 ([2018-07-02-1]) で取り上げてきたので,そちらも参照されたい.
動画で紹介した本では,小笠原群島の英語についての言及は軽くなされているのみだが,それに類する世界であまり知られていない英語母語変種 (lesser-know_varieties) が多く紹介されている.目次がそのままそれらの変種の一覧となっているので,それを挙げておきたい.
1. Introduction
Part I: The British Isles
2. Orkney and Shetland
3. Channel Island English
Part II: The Americas and the Caribbean
4. Canadian Maritime English
5. Newfoundland and Labrador English
6. Honduras/Bay Islands English
7. Euro-Caribbean English varieties
8. Bahamian English
9. Dominican Kokoy
10. Anglo-Argentine English
Part III: The South Atlantic Ocean
11. Falkland Islands English
12. St Helenian English
13. Tristan da Cunha English
Part IV: Africa
14. L1 Rhodesian English
15. White Kenyan English
Part V: Australasia and the Pacific
16. Eurasian Singapore English
17. Peranakan English in Singapore
18. Norfolk Island and Pitcairn varieties
英語は大言語であるとはいえ,母語変種に限っても広く知られていないものが多々あることがわかるだろう.

・ Schreier, Daniel, Peter Trudgill, Edgar W. Schneider, and Jeffrey P. Williams, eds. The Lesser-Known Varieties of English: An Introduction. Cambridge: CUP, 2010.

「#6188. heldio 2026年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 4月12日までオープン」 ([2026-04-06-1]) でご案内したとおり,2026年の第1四半期(1月--3月)における Voicy heldio のベスト配信回を決めるリスナー投票を実施しました.4月12日をもって締め切らせていただきましたが,年度初めのご多忙な時期にもかかわらず,多くのリスナーの皆さんに温かい1票(最大10票)を投じていただきました.ご協力いただき,ありがとうございました.
投票結果がまとまりましたので,ここに報告いたします.本日の heldio でも「 #1781. heldio 2026年第1四半期のリスナー投票の結果発表」として音声で解説していますので,あわせてお聴きください.
今回のランキングは,正直にいうと,たいへん驚きました.一言でまとめれば「『古英語・中英語初歩』祭り」でした.伝説の教科書の復刊という大きなニュースが,リスナーの皆さんの学習意欲と見事にシンクロした結果と言ってよいでしょうか.以下に上位(得票率19%以上)の配信回を掲載します.
【 第1位(44%)】
「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」
【 第2位(37%)】
「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」
【 第3位(33%)】
「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」
【 第4位(30%)】
「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」
「#1764. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (4)」
【 第7位(26%)】
「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
「#1720. 『英語のルーツ』文庫化記念 --- 唐澤一友さんとの対談 from 居酒屋KKH」
【 第9位(22%)】
「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」
「#1685. 表音文字,表語文字,表意文字」
「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」
「#1742. 緊急対談 --- teach/taught に関する中学生の天才的指摘をめぐって」
【 第14位(19%)】
「#1705. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」200回記念」
「#1706. 伝説の教科書『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊」
「#1717. 天野優未さんの『英語語源ハンドブック』『はじめての英語史』実況中継がおもしろすぎる」
「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
「#174. ten と -teen」6
「#1750. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第28弾」
2026年第1四半期の結果を振り返りますと,なんといっても目立つのは,2月25日に研究社より新装復刊された『古英語・中英語初歩』に関連する諸々の回でした.「精読シリーズ」を筆頭に,ベスト10の半分以上がこの伝説的な教科書に関連する内容でした.音声だけで古英語を精読するという,いささか「攻めた」企画ではありましたが,リスナーの皆さんが紙面を片手に熱心に食らいついてくださったことがうかがえます.特に,復刊の裏側にあるドラマを語った「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」や,通常はニッチと思われるような古英語の母音と子音を各々解説したシリーズも高い支持を得ており,単なる知識の習得にとどまらない「hel活」を評価していただいたものとして,受け取らせていただきました.
対談回も豊作でした.第7位には唐澤一友さんとの居酒屋対談「#1720. 『英語のルーツ』文庫化記念 --- 唐澤一友さんとの対談 from 居酒屋KKH」がランクイン.お酒の席ならではの(?)リラックスした雰囲気の中での英語史トークが,皆さんの耳に心地よく響いたのであれば,たいへん嬉しいです.また,第9位の「#1742. 緊急対談 --- teach/taught に関する中学生の天才的指摘をめぐって」は,中学生の鋭い観察眼に始まり英語史の深淵へと連なる,ワクワクの止まらない対談回として評価されました.
khelf(慶應英語史フォーラム)メンバーも活躍しており,「#1705. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」200回記念」が上位に入りました.また,「#1717. 天野優未さんの『英語語源ハンドブック』『はじめての英語史』実況中継がおもしろすぎる」も注目を集め,英語史の熱が周囲に広がっていることを感じます.
四半期の幕開けを飾った元旦の「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」も,支持をいただきました.そこで宣言した通り,この3ヶ月間はまさに飛躍の準備期間、あるいは助走期間であったように思います.古英語の精読に多くのリスナーが挑戦し始めたことは,今後のhel活にも大きな意味をもつことになりそうです.パーソナリティとしては感謝しかありません.
最後に,今回のリスナー投票に関する,コアリスナー ykagata さん の note 記事をご紹介します.投票期間の最終日の4月12日に「「heldio 2026年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票」に投票した」と題する記事を公開されました.パーソナリティとしてたいへん参考になり,かつ嬉しい記事でした.ありがとうございます.
2026年も早くも4分の1が過ぎました.今回のリスナー投票の結果をよくよく分析し,第2四半期も,リスナーの皆さんとともに様々な英語史の景色を眺めていければと思っています.引き続き heldio をよろしくお願いします!
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉,2026年.
英語史の古典的名著 Baugh and Cable の第6版の英文を,Voicy heldio という音声メディアを利用して,超精読していくシリーズです.
今朝の heldio にて,10日前にお届けした回の続編を配信しました.「#1780. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-4) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」です.お読みいただいている hellog 記事は,この音声配信と連動した記事となっています.
今回も,ヘルメイトの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に精読会をリードしていただきました.いつもありがとうございます.久しぶりに,対面でのライヴ感あふれる読書会となっていますので,楽しくお聴きいただけるかと思います.ノリに乗って長く収録することになったので,heldio でも前半・後半の2回に分けてお届けしています.今回は後半となります.
今回の精読対象の英文を掲載しましょう(Baugh and Cable, p. 83) .B&C の第63節の途中の3文のみですが,じっくりと精読しています.
So few were there that I cannot remember a single one south of the Thames when I came to the kingship." A century later, Ælfric, abbot of Eynsham, echoed the same sentiment when he said, "Until Dunstan and Athelwold revived learning in the monastic life no English priest could either write a letter in Latin, or understand one." It is hardly likely, therefore, that many Latin words were added to the English language during these years when religion and learning were both at such a low ebb.
古英語原文からの現代語訳引用があり,少々読みにくい箇所ですが,いかに巧みに本文に組み込まれているかを精読によって味わえる箇所となります.また,超精読のためには背後にある原文(今回の場合には古英語原文)を意識することの大切さも感じられると思います.今回もたいへん実りのある読書会となりました.
このB&C読書会の過去回については,すべてアーカイヴからアクセスできます.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧いただければ.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
3月28日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」最終回となる第12回(冬期クールとしては第3回)が開講されました.2025年度のシリーズの締めくくりに選んだ単語は,be 動詞でした.議論しがいのある英単語ですね.
be 動詞は,あまりに異常な英単語です.なぜ am, is, are, was, were, be, being, been が同一の動詞なのか? 語形,文法,意味,社会規範のあらゆる観点から注目すべき超高頻度語(第1位の the に次いで第2位)にして,英語史の不思議さとおもしろさが凝縮された単語です.90分の講義では案の定語りきれないほどでした.
今回の内容を,いつもの通り markmap によりマインドマップ化して整理しました.復習用にご参照いただければ.

これまで,2025年度のシリーズの第1回から第11回についても以下の通りマインドマップを作成しています.2025年度のマインドマップでのまとめシリーズはこれで完結となります.ご参加いただいた皆様,ありがとうございました.
・ 「#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-05-10-1])
・ 「#5887. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第2回「through --- あまりに多様な綴字をもつ語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-06-09-1])
・ 「#5915. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第3回「autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-07-07-1])
・ 「#5949. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第4回「but --- きわめつきの多義の接続詞」をマインドマップ化してみました」 ([2025-08-10-1])
・ 「#5977. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第5回「guy --- 人名からカラフルな意味変化を遂げた語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-09-07-1])
・ 「#6013. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第6回「English --- 慣れ親しんだ単語をどこまでも深掘りする」をマインドマップ化してみました」 ([2025-10-01-1])
・ 「#6041. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第7回「I --- 1人称単数代名詞をめぐる物語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-11-10-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6076. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第8回「take --- ヴァイキングがもたらした超基本語」をマインドマップ化してみました」 ([2025-12-15-1])
・ 「#6098. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第9回「one --- 単なる数から様々な用法へ広がった語」をマインドマップ化してみました」 ([2026-01-06-1])
・ 「#6139. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第10回「very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」をマインドマップ化してみました」 ([2026-02-16-1])
・ 「#6167. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第11回「that --- 指示詞から多機能語への大出世」をマインドマップ化してみました」 ([2026-03-16-1])
2025年度のシリーズは以上で終了ですが,2026年度も朝カルでの毎月の英語史講座は継続していきます.少なくとも年度の前半はオンライン講座として続け,かつこの春期クールのテーマは昨年度からの「歴史上もっとも不思議な英単語」を引き継ぎます.これまで通り,注目すべき1単語を選び,そこから始まるスケールの大きな英語史を描いていきます.ただし,新たな試みとして,新刊書『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を参照し,古英語や中英語からの短い原文を読み解きながら,当該の単語のナゾに迫っていきたいと考えています.春期クールの3回のラインナップは以下の通りです.
1. 4月25日(土)15:30--17:00 "knight" を探って中英語原文の世界へ
2. 5月23日(土)15:30--17:00 "again" を探って中英語原文の世界へ
3. 6月27日(土)15:30--17:00 "ghost" を探って古英語原文の世界へ
詳細やお申し込みはこちらの公式ページよりどうぞ.新年度の朝カル講座もよろしくお願いいたします!

4月6日(月),khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』シリーズの最新号となる第13号がウェブ上で公開されました.前号から約9ヶ月ぶりとなる最新号です.こちらよりPDF形式で自由に閲覧・ダウンロードいただけます.
新年度の開始とともに届けられたこの最新号を制作してくれた執筆陣,編集陣の khelf メンバーには,心から感謝します.
今号も読み応えのある4面構成です.各面のハイライトを紹介していきましょう.
第1面は,hellog でも推しに推している市河三喜・松浪有による名著『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を紹介する巻頭記事です.昭和の「オヤジみ」を感じさせつつも,現代の至れり尽くせりな参考書とは一線を画す,おおらかな語学学習のあり方を提案する書でもあります.文法事項の丸暗記に走るのではなく,まずは概略をつかんでからテキストに飛び込むという姿勢は,古英語・中英語を学び始めようとする読者にとって,力強いエールとなるはずです.
第2面では,身近な不規則変化名詞 foot --- feet の謎に迫ります.なぜ語幹の母音が変化するのか.その背景には,ゲルマン祖語にまで遡る i-mutation という規則的な音韻変化が潜んでいます.一見すると「不規則」に思える現象が,歴史的に紐解けばきわめて「規則的」であったことがわかるという,英語史の醍醐味を味わえる記事です.同面のもう1つの記事は聖書の翻訳比較を取り上げており,翻訳者の意図や時代の潮流が言葉選びにどう反映されるかが考察されています.
第3面は,恒例のインタビューコーナー「英語史ラウンジ」です.今回は,法政大学の福元広二先生に,khelf メンバーがお話しを伺っています.中学時代の恩師との出会いから,ケンブリッジ大学やマンチェスター大学での在外研究のエピソード,そして初期近代英語における文法化や歴史語用論の研究に至るまでの歩みが詳しく語られています.英語史研究者がどのような問題意識をもって英語と向き合っているのかを知る貴重な機会となります.本インタビュー記事についてはウェブ版もありますので,そちらからもお読みになれます.
第4面には,英語史の始まりを問うクイズの解説と解答の記事が掲載されています.クイズですのでここでは詳細は述べませんが,英語史上の重要な年代が複数挙げられており,それぞれに象徴される出来事が紹介されています.
今号も,khelf メンバーの「英語史の魅力を伝えたい」という熱意が随所に感じられる仕上がりとなっています.春の新生活の合間に,ぜひじっくりと紙面をめくってみてください.
最後になりますが,学校・大学の授業等で『英語史新聞』を活用される場合は,使用実績把握のため,こちらのフォームよりご一報いただけますと幸いです.「英語史をお茶の間に」を合言葉とする私たち khelf の活動(hel活)への励みとなりますので,よろしくお願い致します..
『英語史新聞』のバックナンバーも khelf 公式サイト内のこちらのページにて公開されています.第1号から第12号まで,あわせてお楽しみください.
・ 『英語史新聞』第1号(創刊号)(2022年4月1日)
・ 『英語史新聞』号外第1号(2022年4月10日)
・ 『英語史新聞』第2号(2022年7月11日)
・ 『英語史新聞』号外第2号(2022年7月18日)
・ 『英語史新聞』第3号(2022年10月3日)
・ 『英語史新聞』第4号(2023年1月11日)
・ 『英語史新聞』第5号(2023年4月10日)
・ 『英語史新聞』第6号(2023年8月14日)
・ 『英語史新聞』第7号(2023年10月30日)
・ 『英語史新聞』第8号(2024年3月4日)
・ 『英語史新聞』第9号(2024年5月12日)
・ 『英語史新聞』第10号(2024年9月8日)
・ 『英語史新聞』号外第3号(2024年9月8日)
・ 『英語史新聞』第11号(2024年12月30日)
・ 『英語史新聞』第12号(2025年7月7日)
連日 /l/ について話題にしている.RP での /l/ の異音の1つ「暗い [ɫ]」は,英語史上,先行する母音に対して主に質的な影響を与え続けてきた.また,そのように先行母音に影響を与えた後に,当の [ɫ] が母音化して消えていくことも珍しくなかった.現にこれは現代の RP や Estuary English でも多かれ少なかれ生じている過程でもある.Cruttenden (203) より,暗い [ɫ] の先行母音への影響と,それ自身の母音化・消失についての箇所を引用する.
The velarization of [ɫ] often has the effect of retracting and lowering slightly the articulation of a preceding front vowel, e.g. feel, fill, fell, canal; in the case of /iː/+[ɫ], a central glide between the vowel and [ɫ] is often noticeable, and the [ɪ] element of [eɪ, aɪ, ɔɪ] tends to be obscured, e.g. in pail, pile, oil. /uː/ before [ɫ] tends to be more monophthongal and nearer to C[u].
Variations in the quality of the back vowel resonance associated with [ɫ] are, however, to be found among RP
関連する話題は,「#2027. イングランドで拡がる miuk の発音」 ([2014-11-14-1]) でも触れた.また,「#3947. 子音群における l の脱落」 ([2020-02-16-1]) とも合わせて,l は周囲の音にも影響を与えるし,自分自身も消失しやすいという特徴がある点で,英語史上の音変化のキープレーヤーといってもよいのである.
・ Cruttenden, Alan. Gimson's Pronunciation of English. 6th ed. New York: OUP, 2001.
昨日の記事「#6191. 明るい l と暗い l」 ([2026-04-09-1]) に引き続き,側音 /l/ に関する話題.英語史における /l/ のルーツ,あるいは主なソースについて,Cruttenden (204) より引用する.
Chief sources---PresE /l/ derives from OE [l,ll] (land, climb, all, tell, apple), from OE [hl], [xl] or [l̥] (loaf, ladder)---since OE front vowels tended to be diphthongized before /l/, it seems likely that /l/ in such a position was velarized in OE as it is today; from OF [l] (lamp, close, colour, veal, able). In many cases pre-consonantal [ɫ], especially after back or open vowels, was vocalized to [ʊ] (walk, talk, half, folk) in the early fifteenth century, such a pronunciation being commonly shown by the seventeenth-century grammarians; but in some cases (halt, salt, malt), it has been retained; in others, an /l/ has been re-introduced in spelling and pronunciation (fault, falcon, emerald, soldier, realm) or merely in the spelling (calm, palm, balm). The loss of /l/ in could, should, would occurred in eModE.
古英語期に,少なくともある環境では暗い [ɫ] が行なわれていた間接的証拠があるということだが,明るい [l] についてはどうなのだろうか.古くから RP のような分布で,明るい [l] も実現していたのか,あるいは英語史の途中からある変種における異音として分布し始めたのか.現代フランス語の /l/ が基本的に明るい [l] であることも考え合わせると,ポライトな調音としての明るい [l] が英語に導入されたということは考えられないのか./l/ の調音ひとつをとってみても,おもしろく英語史できそうだ.
・ Cruttenden, Alan. Gimson's Pronunciation of English. 6th ed. New York: OUP, 2001.
RP (= Received Pronunciation) では,側音 /l/ に「明るい [l]」 (clear [l]) と「暗い [ɫ]」 (dark [ɫ]) が区別される.明るい [l] は,前舌面を硬口蓋の方向に持ち上げた調音で,前舌母音の音色となる.一方,暗い [ɫ] は後舌面を軟口蓋の方向に持ち上げた調音で,後舌母音の音色となる.
それぞれが生起する分布は明確である.母音あるいは /j/ の前位置では明るい [l] が実現され,それ以外のすべての位置では暗い [ɫ]が実現される.以下,いくつかの異音を単語例とともに挙げてみる.
・ 明るい [l]: leave, let, lock; blow, glad, splice; silly, yellow, alloy; medley, ugly, nobly; feel it, fall out, all over (最後の例のように語境界がある場合にも明るい [l] が生起する)
・ 強勢音節で無声破裂音の後位置では無声化した明るい [l] が生起する: play, please, plant, apply, aplomb, clean, close, climb
・ 無強勢音節で無声破裂音の後位置あるいは無声摩擦音の後位置では部分的に無声化した明るい [l] が生起する: placebo, aptly, butler, antler, ghastly; sloppy, slow, slink, fling, flow, earthly
・ 暗い [ɫ]: feel, fill, fell, help, bulb, salt; alpine, elbow, halter
・ 音節主音的 [ɫ̩]: table, middle, cudgel, camel, final
・ 無声子音の後位置では部分的に無声化した音節主音的 [ɫ̩] が生起する: apple, little, satchel, awful
語の切れ目の /l/ については,両語の緊密性が問題になってくるが,明るい [l] と暗い [ɫ] の最小対を示す話者がいるという.そのような話者においては,形態素の区切りに応じて coupling [ˈkʌplɪŋ] (connecting device) と coupling [ˈkʌpɫɪŋ] (joining) が区別されるという.
明るい [l] と暗い [ɫ] は RP でこそ区別されるが,それ以外の変種では区別されないことも多い.例えば,一般アメリカ英語,標準スコットランド英語,オーストラリア英語,ニュージーランド英語,イングランド北部英語,北ウェールズ英語では,すべての位置で暗い [ɫ] が現われる.一方,南部アイルランド英語,西インド諸島英語,南ウェールズ英語,Tyneside 方言では,すべての位置で明るい [l] が現われる.
以上,Cruttenden (200--05) に依拠して執筆した.関連して「#1817. 英語の /l/ と /r/ (2)」 ([2014-04-18-1]) も参照されたい.
・ Cruttenden, Alan. Gimson's Pronunciation of English. 6th ed. New York: OUP, 2001.
「#1834. 文字史年表」 ([2014-05-05-1]),「#2399. 象形文字の年表」 ([2015-11-21-1]),「#2414. 文字史年表(ロビンソン版)」 ([2015-12-06-1]) に続き,もう1つ詳しめの文字史年表として Powell (xvii--xx) のものを掲載したい.
| 9000 BC | |
| Widespread use of geometric tokens throughout Near East, c.8500 BC | |
| Appearance of complex tokens, c.4500--3400 BC | |
| 4000 BC | |
| Round clay bullae that enclose tokens, impressed with cylinder seals, c.3500--3400 BC | |
| Protocuneiform numerical flat clay tablets, sealed or unsealed, with impressions of three-dimensional tokens or imitations of token shapes by means of a stylus, c.3400--3300 BC; first logograms with numbers c.3300 BC | |
| ProtoElamite writing, c.3300(?)--3000 BC | |
| Egyptian hieroglyphic writing, Pharaonic civilization emerges, c.3250 BC | |
| 3000 BC | EARLY BRONZE AGE |
| Tokens disappear, c.3000 BC | |
| Sumerian cities flourish in Mesopotamia, c.2800--2340 BC | |
| Texts in Sumerian cuneiform that reflect order of words in speech; similar development in Egypt, c.2800--2400 BC | |
| Minoan civilization flourishes in Crete, c.2500--1450 BC | |
| Akkadian Empire in Mesopotamia, c.2334--2220 BC; Akkadian cuneiform | |
| Linear Elamite writing, c.2150 BC | |
| Third Dynasty of Ur, c.2120--2000 BC | |
| Cretan hieroglyphs, c.2100 BC--c.1700 BC | |
| 2000 BC | MIDDLE BRONZE AGE |
| Arrival of Indo-European Greeks in Balkan Peninsula, c.2000 BC | |
| Babylon's ascendance under Hammurabi, c.1810--1750 BC; Old Babylonian cuneiform | |
| Old Assyrian cuneiform, c.1800 BC | |
| Cretan Linear A, c.1800 BC--1450 BC | |
| 1600 BC | LATE BRONZE AGE |
| Hittite Empire rules in Anatolia, c.1600--1200 BC; Hittite cuneiform; Luvian Hieroglyphs | |
| 1500 BC | West Semitic syllabic writing invented, c.1500(?) BC |
| Destruction of Cretan palaces, c.1450 BC | |
| Destruction of the rebuilt Cnossus, c.1375 BC | |
| Amarna tablets in Middle Babylonian cuneiform, c.1350 BC | |
| Trojan War occurs, c.1250(?) BC | |
| Chinese script first attested in the Shang Dynasty on oracle bones, c.1200 BC | |
| 1100 BC | IRON AGE begins with destruction of Mycenaean cities in Greece and other sites in the Levant |
| Earliest Mesoamerican "writing," from Olmec territory, c.1140--400 BC | |
| 1000 BC | Greek colonies are settled in Asia Minor, c.1000 BC |
| NeoAssyrian cuneiform, c.1000--600 BC | |
| NeoBabylonian cuneiform, c.1000--500 BC | |
| 900 BC | NeoHittite cities flourish in northern Syria, c.900-700 BC |
| Earliest "Isthmian" writing, c.900 BC (?) | |
| 800 BC | GREEK ARCHAIC PERIOD begins with invention of Greek alphabet, c.800 BC |
| Illiad and the Odyssey, attributed to Homer, are written down, c.800--775 BC | |
| Greek colonies in southern Italy and Sicily, c.800--600 BC | |
| Olympic Games begin, 776 BC | |
| Hesiod's Theogony is written down, c.775--700(?) BC | |
| Rome, allegedly, is founded, 753 BC | |
| 600 BC | Formation of Hebrew Pentateuch (first "five books" of Bible) during Babylonian Captivity of the Hebrews, 586--538 BC |
| Cyrus the Great of Persia, c.600--529 BC | |
| "Zapotec" writing from the valley of Oaxaca in Mexico, c.600--400 BC | |
| Expulsion of the Estruscan dynasty at Rome and the foundation of the "Roman Republic," 510 BC | |
| 500 BC | Late Babylonian cuneiform, c.500 BC--AD 75 |
| Behistun inscriptions (Old Persian cuneiform, Late Babylonian cuneiform, Elamite cuneiform), c.500 BC | |
| CLASSICAL PERIOD begins with the end of Persian Wars, 480 BC | |
| Herodotus, c.484--420 BC | |
| Thucydides, c470--400 BC | |
| Plato, c.427--347 BC | |
| 400 BC | |
| Aristotle, c.384--322 BC | |
| Alexander the Great conquers the Persian Empire, founds Alexandria 336--323 BC | |
| HELLENISTIC PERIOD begins with death of Alexander in 323 BC | |
| 300 BC | |
| Earliest Mayan writing, c.250 BC | |
| Mouseion founded by Ptolemy II, ruled 285--246 BC | |
| 200 BC | |
| Ptolemy V carves the Rosetta Stone, 196 BC | |
| ROMAN PERIOD begins when Greece becomes Roman province, 146 | |
| 100 BC | |
| Diodorus of Sicily, c.80--20 BC | |
| Vergil, 70--19 BC | |
| Augustus defeats Antony and Cleopatra at battle of Actium and annexes Egypt, 30 BC | |
| Augustus Caesar reigns, 27 BC--AD 14 | |
| Year 0 | |
| Last Mesopotamian cuneiform, AD 75 | |
| AD 200 | Classic Maya Period, c.AD 250 until AD 900 |
| Plotinus, a NeoPlatonist Greek philosopher writes that the hieroglyphs are allegories, c.AD 250 | |
| Coptic phase of pharaonic Egyptian recorded in modified Greek alphabet called Coptic script, c.third century AD | |
| AD 300 | |
| Last hieroglyphs inscribed at Philae near Aswan, AD 396 | |
| AD 400 | European MEDIEVAL PERIOD begins with fall of Rome in AD 476 |
| Hieroglyphics, by Horapollo(?) c.fifth century AD | |
| AD 1500 | |
| Herná Cortés lands in Mexico, AD 1519 | |
| AD 1600 | Mesoamerican writing disappears, c.AD 1600 |
| Travelers' reports bring information about cuneiform to Europe | |
| AD 1700 | MODERN PERIOD |
| Rosetta stone found in Egypt, AD 1799 | |
| AD 1800 | |
| Jean François Champollion deciphers Egyptian hieroglyphs, AD 1822 | |
| Henry Rawlinson and others decipher Mesopotamian cuneiform, c.AD 1850 | |
| AD 1900 | |
| Micahel Ventris deciphers Linear B, AD 1951 | |
| Yuri Knorosov establishes the phonetic basis of some Mayan signs, AD 1952 |

新年度が幕を開けました.去る3月28日(土),英語史を愛する有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 4月号(第18号)』が公開されました.今号は記念すべき年度開始号ということで,春らしい勢いと,ますます研ぎ澄まされた知的好奇心が凝縮された号となっています.
今号の「表紙のことば」は,インド事情に精通した mozhi gengo さんが担当されています.インド中央部の崖の上に建つ櫓から眼下の川を望む印象的な1枚ですが,驚くべきはその構図です.最近,私が heldio 等で激推ししている『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の表紙デザインに酷似しているのです.「何の因果か」と感じさせる,新年度の始まりにふさわしい劇的な表紙ですね.
執筆陣の記事も,質・量ともに進化が止まりません.ari さんは,キャンセル界隈の語源から,hel活系統図のジョークまで,相変わらずの「ari 節」が炸裂しています.
編集委員のお1人 Grace さんは,私がジョークで提唱した「英語史の塔」建設を紹介してくださったほか,認知言語学の観点から文法に迫る本格的な書評も寄稿されています.lacolaco さんの「英語語源辞典通読ノート」は D ゾーンの深部に入っています.アルファベットの文字ごとに異なる語源の「景色」を語れるのは,通読者ならではの境地でしょう.
Lilimi さんは,仏検の振り返りとともに,NHK ラジオ『古典講読』への熱い思いを綴っています.ラジオ文化を愛する者として,非常に共感を覚える内容でした.mozhi gengo さんは,表紙に関連した記事のほか,valueless と priceless の意味論的な対比など,鋭い言語学的考察を展開されています.
教育現場や学習のヒントも充実しています.sorami さんによる中学生向け語源クイズは,もはや hel 活のインフラと言えるほどの完成度です.みーさんの「小学生と学ぶ英語史」シリーズは,実は大人こそが学ぶべき視点に溢れています.umisio さんによる川上さんの「プロの流儀」に迫る新シリーズ「愛などなくったって…」についても,今後の展開に目が離せません.
ykagata さんは,『古英語・中英語初歩』新装復刊を盛り上げる「30連発」の舞台裏や,ドイツ語を通じた比較言語学的な知見を共有してくれています.新星「あまねちゃん」の,古英語に初めて出会った際の瑞々しい違和感の記録も,ベテラン勢にはない(?)新鮮な視点を与えてくれており人気急上昇です.
しーさんによる『古英語・中英語初歩』のアンバサダー的活用術も要注目です,り~みんさんによる「明るい L と暗い L」の沼も思いのほか深いです,「無職さん」こと佐久間さんによるによる「歯・噛む」のアングロサクソン文化論,そして川上さんによる北欧語混交の歴史的詳述などは,どこを切り取っても英語史のロマンが溢れ出ることを証明しています.また,私も note 記事で「英語史の塔」の攻略法について少し触れさせていただき,今号の Helvillian で取り上げていただきました.
最後は Grace さんによる3月の helwa によるhel活の活動報告と,umisio さんによる編集後記で締めくくらています.
今月号を読んで感じるのは,このコミュニティの熱量と質の高さです.決して英語史だけを語るのではなく,お互いの学び合いを尊重し,高め合う居心地の良さが誌面から伝わってきます.
この春,新しい学びを始めてみたいと思っている皆さん,ぜひこの hel 活の輪に加わってみませんか? まずはプレミアムリスナー限定配信チャンネル 「英語史の輪 (helwa)」を覗いてみてください.初月無料となっておりますので,この月初に気軽にエントリーしていただければ!
Helvillian 4月号のご案内は,声でも「#1768. Helvillian 4月号が公開! --- この春,ことばのルーツをたどる旅をしよう。」としてお届けしています.ぜひそちらもお聴きくださいね.
heldio 2026年第1四半期のベスト回を決めるリスナー投票を,2026年4月6日(月)より4月12日(日) 23:59 までこちらの投票コーナーにて受け付けています(あるいは以下のQRコードよりどうぞ).ぜひ皆さんのマイベスト10を選んでいただければ幸いです.

上記の通り,本ブログの音声版・姉妹版ともいえる毎朝配信の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」より,2026年第1四半期にお届けしてきた配信回(全90回)のなかからベスト回を決めるリスナー投票イベントを開催します.1人10票まで投票できます.投票会場は本日4月6日(月)から4月12日(日)23:59 までオープンしていますので,この機会に聴き逃した過去配信回などを聴取いただき,マイベストとなる10件をじっくり選んでいただければと思います.
各配信回へのアクセスは,本記事末尾の一覧,あるいは音声コンテンツ一覧よりどうぞ.1月1日配信の「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」から3月31日配信の「#1766. early, ere, erewhile, erstwhile」までの90回分が投票の対象となります.
2026年の幕開けとともに,SNSでのバズりや伝説の名著『古英語・中英語初歩』の新装復刊など,英語史界隈は大いに盛り上がりました.この3ヶ月間の歩みを振り返る意味でも,ぜひ清き10票を投じてみてください.
過去のリスナー投票企画については,ranking の記事をご覧ください.
今朝,同じ投票を呼びかける heldio 配信回をお届けしました.そちらもお聴きいただきつつ,皆さん,奮ってご投票ください.
・ 「#1677. 2026年,英語史は飛躍します!」 (2026/01/01)
・ 「#1678. ヘルメイトといっしょに新年のご挨拶」 (2026/01/02)
・ 「#1679. 『はじめて of 英語史』第10刷プレゼントは誰の手に? --- 年末の「英語史小ネタ50連発」の引用リポストより」 (2026/01/03)
・ 「#1680. 【4.5Mの衝撃】バズの「熱」をデータから読み解く --- SNSと英語史の親和性」 (2026/01/04)
・ 「#1681. judge の綴字と発音をめぐる川上さんの考察」 (2026/01/05)
・ 「#1682. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第25弾」 (2026/01/06)
・ 「#1683. heldio 2025年第4四半期のベスト回を決めるリスナー投票 --- 1月13日までオープン」 (2026/01/07)
・ 「#1684. 擬古的スペリング」 (2026/01/08)
・ 「#1685. 表音文字,表語文字,表意文字」 (2026/01/09)
・ 「#1686. 「文字」と「文字遣い」」 (2026/01/10)
・ 「#1687. 漢字は表語文字か表意文字か」 (2026/01/11)
・ 「#1688. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 機能的観点から」 (2026/01/12)
・ 「#1689. 「スペリング=漢字」説を解説します --- 規範主義の観点から」 (2026/01/13)
・ 「#1690. mond での質問受付方針の変更について」 (2026/01/14)
・ 「#1691. tennis, recipe, permit --- 命令形に由来する変わった英単語たち」 (2026/01/15)
・ 「#1692. 言語カテゴリーはおおよそプロトタイプと配合の問題である」 (2026/01/16)
・ 「#1693. heldio 2025年第4四半期のリスナー投票の結果発表」 (2026/01/17)
・ 「#1694. 改めて年末バズった mond の「英語に仮名はないのか?」論争について」 (2026/01/18)
・ 「#1695. 文字の表語機能最強説 --- いや表意機能か?」 (2026/01/19)
・ 「#1696. 中英語にあった「男性化」の不思議なトレンド」 (2026/01/20)
・ 「#1697. rump steak --- メルボルンより食レポ英語史」 (2026/01/21)
・ 「#1698. 英語,音声に振り回されすぎ」 (2026/01/22)
・ 「#1699. すべての言語変種はフィクションである」 (2026/01/23)
・ 「#1700. OED の12月のアップデートで「先輩」「駅伝」など日本語から11語が追加」 (2026/01/24)
・ 「#1701. 『英語語源ハンドブック』を題材にしたコンテンツが次々に登場」 (2026/01/25)
・ 「#1702. 1月31日の朝カル講座は very --- 「本物」から大混戦の強意語へ」 (2026/01/26)
・ 「#1703. Austral English --- Edward Ellis Morris 編纂のオーストラリア英語辞書(1898年)」 (2026/01/27)
・ 「#1704. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第26弾」 (2026/01/28)
・ 「#1705. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」200回記念」 (2026/01/29)
・ 「#1706. 伝説の教科書『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊」 (2026/01/30)
・ 「#1707. Helvillian 2月号が公開! --- 特集は「裏切り」」 (2026/01/31)
・ 「#1708. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」 (2026/02/01)
・ 「#1709. khelf 寺澤志帆さんとの対談 --- 語源から遠ざかる語形 anthem」 (2026/02/02)
・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」 (2026/02/03)
・ 「#1711. カンガルーを食べました --- 食レポ英語史」 (2026/02/04)
・ 「#1712. lacolaco さんと helwa 新年会で対談 --- 「英語語源辞典通読ノート」の近況報告」 (2026/02/05)
・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」 (2026/02/06)
・ 「#1714. ykagata さんと情報発信論を語る --- helwa 新年会より」 (2026/02/07)
・ 「#1715. リスナー sorami さんによる『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズが始動 --- 中高生のための英語史」 (2026/02/08)
・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」 (2026/02/09)
・ 「#1717. 天野優未さんの『英語語源ハンドブック』『はじめての英語史』実況中継がおもしろすぎる」 (2026/02/10)
・ 「#1718. 『英語語源辞典』を通読しているあの2人が初対談 --- helwa 新年会より」 (2026/02/11)
・ 「#1719. カンガルーのたたきをショウガ醤油で --- 食レポ英語史」 (2026/02/12)
・ 「#1720. 『英語のルーツ』文庫化記念 --- 唐澤一友さんとの対談 from 居酒屋KKH」 (2026/02/13)
・ 「#1721. 『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第2弾が公開 --- sorami さんとの対談」 (2026/02/14)
・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」 (2026/02/15)
・ 「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」 (2026/02/16)
・ 「#1724. 「混種語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」 (2026/02/17)
・ 「#1725. オーストラリア先住民アボリジニーの諸言語」 (2026/02/18)
・ 「#1726. 読者の皆さんが作る『英語語源ハンドブック』の輪(前編) from 居酒屋KKH」 (2026/02/19)
・ 「#1727. 読者の皆さんが作る『英語語源ハンドブック』の輪(後編) from 居酒屋KKH」 (2026/02/20)
・ 「#1728. 『古英語・中英語初歩』アンバサダー,しーさんとの対談(前編) --- helwa 新年会より」 (2026/02/21)
・ 「#1729. 『古英語・中英語初歩』アンバサダー,しーさんとの対談(後編) --- helwa 新年会より」 (2026/02/22)
・ 「#1730. 「A→B」という言語変化の矢印のなかを覗き込むと,そこは魑魅魍魎のうごめく世界」 (2026/02/23)
・ 「#1731. 定説は受け入れるのではなく受け止める,そして定説の根拠を学べ」 (2026/02/24)
・ 「#1732. 本日,伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊」 (2026/02/25)
・ 「#1733. 2月28日の朝カル講座は that --- 指示詞から多機能語への大出世」 (2026/02/26)
・ 「#1734. 「偽装複合語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」 (2026/02/27)
・ 「#1735. 「英語史の塔」をご覧ください」 (2026/02/28)
・ 「#1736. この春は英語史を始めよう! --- 「英語史の塔」の登り方」 (2026/03/01)
・ 「#1737. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第27弾」 (2026/03/02)
・ 「#1738. 言語における数(すう) --- 基本編」 (2026/03/03)
・ 「#1739. 言語における数(すう) --- 応用編」 (2026/03/04)
・ 「#1740. Helvillian 3月号が公開! --- 春の陽気でいろんなキャラが登場」 (2026/03/05)
・ 「#1741. メルボルンの老舗 The Mytre Tavern よりお届け」 (2026/03/06)
・ 「#1742. 緊急対談 --- teach/taught に関する中学生の天才的指摘をめぐって」 (2026/03/07)
・ 「#1743. at が動詞化している? --- khelf 寺澤志帆さんとの対談」 (2026/03/08)
・ 「#1744. 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を手に取って皆さんは何を思いますか? --- helwa オフ会より」 (2026/03/09)
・ 「#1745. 広義と狭義の「表語文字」」 (2026/03/10)
・ 「#1746. There is a book on the table. --- 単数性を3回も繰り返して標示したいのはなぜ?」 (2026/03/11)
・ 「#1747. ヘルメイトOGさんとのhel活対談 --- 綴字と発音の乖離をめぐって」 (2026/03/12)
・ 「#1748. sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズが絶好調」 (2026/03/13)
・ 「#1749. 音位転換大喜利 --- たくさん集まってきました」 (2026/03/14)
・ 「#1750. 川上さんの「英語のなぜ5分版」やってます通信 --- 第28弾」 (2026/03/15)
・ 「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」 (2026/03/16)
・ 「#1752. 言語における数(すう) --- イベント編」 (2026/03/17)
・ 「#1753. 月刊誌『英語教育』にて新年度の「いのほた連載」がスタートしています」 (2026/03/18)
・ 「#1754. 3月28日の朝カル講座は be --- 英語の「存在」を支える超不規則動詞」 (2026/03/19)
・ 「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」 (2026/03/20)
・ 「#1756. 「周年」の語感が良化している --- 水野さんの投稿より」 (2026/03/21)
・ 「#1757. 意味の音色 --- semantic prosody」 (2026/03/22)
・ 「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」 (2026/03/23)
・ 「#1759. 比較級 -er と最上級 -est の語源的関係」 (2026/03/24)
・ 「#1760. furthermore --- 2重比較級を体現している語」 (2026/03/25)
・ 「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」 (2026/03/26)
・ 「#1762. furthermost --- 比較級の上に最上級を作っている語」 (2026/03/27)
・ 「#1763. 究極の「3重最上級」 --- firstmost, nexmost」 (2026/03/28)
・ 「#1764. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (4)」 (2026/03/29)
・ 「#1765. 英語綴字における <e> の役割」 (2026/03/30)
・ 「#1766. early, ere, erewhile, erstwhile」 (2026/03/31)


隔週土曜日は,heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズの新作が note 上で公開される日です.昨日は第6弾が公開されました.相変わらず楽しく学べる良質の教材です.2週間前に公開された第5弾とともに,ご紹介したいと思います.
まず3月21日に公開された第5弾ですが,相変わらずの良問揃いで,私自身も感激しつつ解いていました.取り上げられているトピックは多岐にわたります.偽装複合語 holiday の話題から始まり,続けて listen と hear の使い分けなど,学習者がつまずきやすいポイントが鮮やかにクイズ化されています.また,nice の意味変化の話題は英語史の鉄板のネタですが,これを「すごい」や「やばい」といった日本語の語義変化と対比させて解説する手際の良さには感心しました.
また,第5弾からはユーザーインターフェースが改善され,さらに pdf での配布まで始まっています.出血大サービスと言わざるを得ません.学校の授業の余興や,ちょっとした頭の体操に利用しない手はないですね.
続いて,昨日公開されたばかりの第6弾です.こちらは冒頭からギリシア語由来の単語に焦点を当てるという,なんとも心憎い構成になっています.現代の私たちにとって極めて身近な単語が,いかにして古代ギリシアの文化を背景に成立したのかが分かります.ギリシア語特有の高尚な響きも相まって,クイズとしての難易度も少し上がっているかもしれませんが,西洋文明の源流に触れる歴史学習としても非常に教育的です.
後半では right の多義性や,trip と travel の語源的な対比など,深く掘り下げた問題が続きます.travel がなんと「拷問器具」に由来するというエピソードには,答えを見て「え~,まさか!」と声を上げる挑戦者が続出すること間違いなしですね.
sorami さんのクイズは,単語の背後にある歴史や文化という人間の営みを感じさせてくれます.そして,「英語史をお茶の間に」をハイレベルで体現している素晴らしいコンテンツとなっていると思います..
両記事の冒頭には「このシリーズでは,研究社『英語語源ハンドブック』の中に詰まった「へぇーッ」をクイズにしてお届けしています.授業のネタに,親子の雑学タイムに,脳トレに,お役立てください.昔中学生だったあなたもぜひ!」という,ほっこりするメッセージが付されていますね.最後にはいつものように「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです」ともあります.とても嬉しい心遣いですね.
今回の新作紹介と合わせて,sorami さんのクイズ・シリーズの過去回をご紹介した,以下の hellog 記事もお読みいただければと思います.
・ 「#6125. heldio/helwa リスナー sorami さんによる『英語語源ハンドブック』のクイズ・シリーズが開始 --- 中高生のための英語史」 ([2026-02-02-1])
・ 「#6132. sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第2弾 --- 中高生のための英語史」 ([2026-02-09-1])
・ 「#6166. sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズが第3弾,第4弾と快進撃 --- 中高生のための英語史」 ([2026-03-15-1])
ぜひこちらのクイズ・シリーズを解いてみてください.そして,さらに広めていただければと思います.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
英語史の古典的名著である Baugh and Cable の第6版の英文を,Voicy heldio という音声メディアを利用して,「超」のつく精読でじっくりと解釈していく長期的な企画です.久しぶりの最新回となります.初回の配信は2023年7月17日だったので,かれこれ3年弱も続けていることになります.第63節に入っていますが,時代的にはまだまだ古英語期です.
最新回は,今朝の Voicy heldio にて「#1770. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-3) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」としてお届けしています.この hellog 記事も,heldio 配信と連動しています.
いつものようにヘルメイトの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)とともに精読を進めています.今回も古英語の原文を現代語に翻訳しながら引用している箇所が続いているため,「裏読み」を楽しめる部分となっています.以下に,今回の精読対象の英文を掲載します(Baugh and Cable, p. 83) .
By the time of Alfred, things had reached such a pass that he looked upon the past as a golden age which had gone, "when the Kings who ruled obeyed God and His evangelists," and when "the religious orders were earnest about doctrine, and learning, and all the services they owed to God"; and he lamented that the decay of learning was so great at the beginning of his reign "that there were very few on this side of the Humber who could understand their rituals in English, or translate a letter from Latin into English, and I believe not many beyond the Humber.
今回も前回に引き続き,背後にある古英語原文を予想しながら読み進めました.Taku さんも,この点を強く意識して解釈されていました.精読に伴走していただいている方も,見え隠れする古英語原文に関心をもたれるのではないかと思われます.
配信内でも触れられているように,この背後にある古英語テキストを読む回なども,近いうちに配信したいと思っています.B&Cの精読のためには,寄り道であり回り道になりますが,そのような読み方こそ真の精読です.同じ heldio では『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』での古英語講座シリーズも展開していますので,そちらも追いかけていただいている方には,問題の古英語原文も必ず読み解くことができます.それによってB&Cの精読の味わいが何倍も深くなることを保証します.ぜひお付き合いいただければ.
さて,このB&C読書会の過去回は,(初期のものは有料配信となっていますが)すべてアーカイヴからアクセスできます.「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.

・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
一度「#979. 現代英語の綴字 <e> の役割」 ([2012-01-01-1]) で取り上げた話題だが,そこで挙げた10件に尽きるわけではない.Carney を読んでいて分かったことだが,追加事項がある.まずは Carney より関連箇所を引用する (42) .
Empty letters are naturally a target for the spelling reformers, but one should not rush in with the scissors too hastily. A favourite target is final <-e>. The instances of <-e> at the end of copse, bottle, file, giraffe, are often referred to as 'silent' letters, but they are very different. The <-e> of copse marks the word as different from the plural cops. The word bottle cannot sensibly be spelt as *<bottl>, since syllabic consonants are always spelt with a vowel letter and a consonant letter, except for <sm> in sarcasm, prism. Similarly it might be thought that file could be spelt *<fil>. It would still be different from fill, as it is in filing, filling. However, some degree of redundancy is essential to human language and that justifies taking the unit of correspondence to be <i..e>≡/aɪ/. Even the <-e> at the end of giraffe has something to be said in its favour. It can be said to mark the unusual final stress of the noun as in the <-CCe> of brunette, cassette, corvette, largesse, bagatelle, gazelle.
bottle に関する解説が私にとっては目新しいものだった.この単語の音節主音の l について,音節主音的子音が用いられるときには,必ず <e> が付随するという.例外として <-sm> が挙げられているが,それ以外はどうやら <e> は必須のようだ.
もう1つ興味深いのが giraffe の語末の <e> である.brunette, cassette, corvette などの類例からもわかる通り,語末で <-VCCe> の綴字となる場合には,<V> を含む音節に強勢が落ちる.これは,<e> だけでというよりは <CCe> の全体で示唆されるというべきものだが,その一画に参与しているという点で,これを <e> の1つの役割と解釈することは可能である.
ほかには eye の語末の <e> のように,3文字規則 (three-letter_rule) を回避するためのダミーの <e> も,1つの役割としてリストに加えてよいだろう.
考え続けていくと,<e> の役割はもっと挙がってきそうだ.本記事と同じ趣旨で,3月30日の heldio にて「#1765. 英語綴字における <e> の役割」を配信しているので,そちらもお聴きいただければ.
・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

新年度が始まりました.英語史の学び始めにふさわしいこの時期,本日は数日後の英語史講座のご案内を致します.
来たる4月11日(土)と12日(日)2日間にわたり,オンラインにて東京言語研究所の春期講座が開講されます.同研究所は,私が学生の頃から憧れをもって仰ぎ見ていた伝統ある言語学の研究・教育機関であり,ここ数年は私も講師として登壇させていただく機会を得ております.
春期講座は,2日間にわたる単発講義のオムニバスです.今年度,私は2日目の4月12日(日)の1限目(10:00--11:20)にて「英語史入門」を担当します.内容は「80分で英語史」です.実は私にとってこれは大きな挑戦です.
普段の大学の講義や,同研究所で担当する10回ほどのシリーズとなる理論言語学講座では,時間をかけてじっくりと英語の歴史を紐解いていきます.しかし,今回はそれをギュッと凝縮した80分間のダイジェスト版となります.1600年以上にわたる英語のダイナミズムをこの短時間でどう描き切るか,現在も最終段階の構成を練りながら,私自身が緊張しつつもワクワクしているところです.
講義の核となるのは,外面史を用いて内面史を解説するという試みです.発音の変化,綴字の変遷,文法の転換,そして語彙の拡大など.これらをバラバラに扱うのではなく,現代英語に潜む「なぜ?」という素朴な疑問を入口に,英語史全体のパノラマが見えてくるような網羅的な内容を目指します.
今回の春期講座では,魅力的な講義が勢揃いしています.heldio にもご出演いただいた嶋田珠巳先生先生(社会言語学)の講座は1日目に予定されています.言語学ファンにとってはたまらない2日間となるはずです.
なお,今年度の秋のシーズンには,同研究所にてシリーズの英語史講座(10週)も担当する予定です.今回の80分間の講義は,そのエッセンスを味わっていただくためのジャンプ台として位置づけています.
いずれもオンライン開催ですので,全国どこからでも,あるいは目下の私のように海外からでも(時差には注意が必要ですが!)ご参加いただけます.後日配信はありませんが,リアルタイムでの充実した議論を楽しみましょう.
申込期限は4月6日(月)の午前10時までとなっています.詳細およびお申し込みは,東京言語研究所の公式HPよりどうぞ.
(以下,後記:2026/04/03(Fri))
本記事と同じ趣旨で,4月3日の heldio にて「#1769. 「80分で英語史」 --- 4月12日に東京言語研究所の春期講座で」をお届けしましたので,ぜひそちらもお聴きいただければ.
連日「#6181. 2重比較級というべき語 --- furthermore, nethermore」 ([2026-03-30-1]) および「#6182. 比較級ベースの最上級というべき語 --- furthermost, uttermost」 ([2026-03-31-1]) で,妙な語形成の比較級・最上級の単語に注目している.今回は OED で探しても2語しか見つからなかったレア中のレアの2重最上級の単語 firstmost と nextmost に注目したい.
firstmost の初例は次の通りである.
a1400 Þe science of elementis, whiche þat ben firstmoost force of natural þingis. (translation of Lanfranc, Science of Cirurgie (MS Ashmole) (1894) 9 (Middle English Dictionary))
その後,OED ではしばらく用例は途切れており,次に現われるのは1973年の例となっているので,事実上1度廃語になり,現代になって作り直されたと考えるのが妥当だろう.first and foremost という句の短縮形かとも思わされる.
次に nextmost については,OED に2例のみが挙げられている.
1576 Hir next most note (to note) I neede no helpe at al. (G. Gascoigne, Complaynt of Phylomene in Steele Glas sig. P.iiiiv
1866 Neistmost, the next; as, 'Dinna tack the ane neist ye, bit the neistmost.' (W. Gregor, Dialect of Banffshire (Philological Society) 228C)
2つめの例はスコットランドの Banffshire 方言に関する本から取られたものだという.
いずれの単語にしても,さすがにここまで余剰的だと最上級としてくどいということなのだろうか.現代ではほとんど使われていないようだ.
これらは2重最上級の語形成と述べたが,「#6175. first and foremost 「いの一番に,真っ先に」には最上級接尾辞が4つ含まれている!」 ([2026-03-24-1]) で触れたように -most 接尾辞は起源を探ると -m と -est/-ost の2種類の最上級接尾辞の合体形であるから,見方によれば3重最上級の語形成ともいえることになる.
2026 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2025 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2024 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2023 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2022 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2021 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2020 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2019 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2018 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2017 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2016 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2015 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2014 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2013 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2012 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2011 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2010 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2009 : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
最終更新時間: 2026-04-24 16:47
Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow