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latin - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-22 17:50

2024-11-20 Wed

#5686. B&C の第60節 "Latin Influence of the Second Period" の第1段落を対談精読実況生中継しました [bchel][latin][borrowing][christianity][link][voicy][heldio][anglo-saxon][st_augustine][history][bede]



 今朝配信された Voicy heldio にて「#1270. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (60-1) Latin Influence of the Second Period --- 対談精読実況中継」をお届けしています.英語史の古典的名著を読むシリーズはゆっくりと続いており,第60節まで進んできました.全部で264節ある本なので,まだまだ序盤戦ではあります.バックナンバー一覧は「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) よりご覧いただけます.
 ニッチなシリーズなので通常は Voicy heldio の有料配信としてお届けしているのですが,たまに一緒に精読してくださる方をお招きして「対談精読実況中継」をフリーでお届けしています.今回の精読会は,金田拓さん(帝京科学大学)に仕切っていただきまして,helwa リスナーを中心に7名の方々が対面で参加されました(lacolaco さんkagata さん藤原郁弥さんぷりっつさんLilimi さん小河舜さん).たいへん熱い読書会となりました.(なお,今回の精読会とほぼ同じメンバーで『英語語源辞典』の読書会もたまに開催しています.heldio より「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」をお聴きください.)
 今回の精読箇所は第60節 "Latin Influence of the Second Period: The Christianizing of Britain" です.古英語期におけるラテン語の影響について,イングランドのキリスト教化との関連で論じられています.3段落からなる節ですが,今回は1時間ほどかけて最初の1段落のみを超精読して終わりました(本シリーズの精度と速度のほどがわかるかと思います).以下に当該テキスト (Baugh and Cable, pp. 78--79) を掲載します.

60. Latin Influence of the Second Period: The Christianizing of Britain The greatest influence of Latin upon Old English was occasioned by the conversion of Britain to Roman Christianity beginning in 597. The religion was far from new in the island, because Irish monks had been preaching the gospel in the north since the founding of the monastery of Iona by Columba in 563. However, 597 marks the beginning of a systematic attempt on the part of Rome to convert the inhabitants and make England a Christian country. According to the well-known story reported by Bede as a tradition current in his day, the mission of St. Augustine was inspired by an experience of the man who later became Pope Gregory the Great. Walking one morning in the marketplace at Rome, he came upon some fair-haired boys about to be sold as slaves and was told that they were from the island of Britain and were pagans. "Alas! what pity," said he, "that the author of darkness is possessed of men of such fair countenances, and that being remarkable for such a graceful exterior, their minds should be void of inward grace?" He therefore again asked, what was the name of that nation and was answered, that they were called Angles. "Right," said he, "for they have an angelic face, and it is fitting that such should be co-heirs with the angels in heaven. What is the name," proceeded he, "of the province from which they are brought?" It was replied that the natives of that province were called Deiri. "Truly are they de ira," said he, "plucked from wrath, and called to the mercy of Christ. How is the king of that province called?" They told him his name was Ælla; and he, alluding to the name, said "Alleluia, the praise of God the Creator, must be sung in those parts." The same tradition records that Gregory wished himself to undertake the mission to Britain but could not be spared. Some years later, however, when he had become pope, he had not forgotten his former intention and looked about for someone whom he could send at the head of a missionary band. Augustine, the person of his choice, was a man well known to him. The two had lived together in the same monastery, and Gregory knew him to be modest and devout and thought him well suited to the task assigned him. With a little company of about forty monks Augustine set out for what seemed then like the end of the earth.


 本節と関連の深い hellog 記事や heldio コンテンツを数多く公開してきたので,以下にリンクを張っておきます.

[ hellog 記事 ]

 ・ 「#2902. Pope Gregory のキリスト教布教にかける想いとダジャレ」 ([2017-04-07-1])
 ・ 「#5526. Pope Gregory のダジャレの現場を写本でみる」 ([2024-06-13-1])
 ・ 「#5444. 古英語の原文を読む --- 597年,イングランドでキリスト教の布教が始まる」 ([2024-03-23-1])
 ・ 「#5450. heldio の人気シリーズ復活 --- 「ゼロから学ぶはじめての古英語 --- Part 4 with 小河舜さん and まさにゃん」」 ([2024-03-29-1])
 ・ 「#5476. 「ゼロから学ぶはじめての古英語」 Part 5 with 小河舜さん and まさにゃん」 ([2024-04-24-1])
 ・ 「#5497. 「ゼロから学ぶはじめての古英語」 Part 6 with 小河舜さん and まさにゃん」 ([2024-05-15-1])
 ・ 「#5514. 「ゼロから学ぶはじめての古英語」 Part 7 with 小河舜さん and まさにゃん」 ([2024-06-01-1])
 ・ 「#5527. 「ゼロから学ぶはじめての古英語」 Part 8 with 小河舜さん and まさにゃん and 五所万実さん」 ([2024-06-14-1])

[ heldio コンテンツ ]

 ・ 「#1030. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む」
 ・ 「#1057. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (2)」
 ・ 「#1078. 「はじめての古英語」生放送 with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (3)」
 ・ 「#1093.「はじめての古英語」生放送(第7弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (4)」
 ・ 「#1107. 「はじめての古英語」生放送(第8弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (5)」

 今後もこの精読シリーズは続いていきます.ぜひ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013. を入手して,お付き合いいただければ.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2024-11-11 Mon

#5677. 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』の接辞リスト(129種) [etymology][prefix][suffix][vocabulary][hel_education][lexicology][word_formation][derivation][derivative][morphology][latin][greek][review]


池田 和夫 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』 研究社,2019年.



 昨日の記事「#5676. 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』の300語根」 ([2024-11-10-1]) に引き続き,同書の付録 (344--52) に掲載されている主要な接辞のリストを挙げたいと思います.接頭辞 (prefix) と接尾辞 (suffix) を合わせて129種の接辞が紹介されています.

【 主な接頭辞 】
a-, an- ない (without)
ab-, abs- 離れて,話して (away)
ad-, a-, ac-, af-, ag-, al-, an-, ap-, ar-, as-, at- …に (to)
ambi- 周りに (around)
anti-, ant- 反… (against)
bene- よい (good)
bi- 2つ (two)
co- 共に (together)
com-, con-, col-, cor- 共に (together);完全に (wholly)
contra-, counter- 反対の (against)
de- 下に (down);離れて (away);完全に (wholly)
di- 2つ (two)
dia- 横切って (across)
dis-, di-, dif- ない (not);離れて,別々に (apart)
dou-, du- 2つ (two)
en-, em- …の中に (into);…にする (make)
ex-, e-, ec-, ef- 外に (out)
extra- …の外に (outside)
fore- 前もって (before)
in-, im-, il-, ir-, i- ない,不,無,非 (not)
in-, im- 中に,…に (in);…の上に (on)
inter- …の間に (between)
intro- 中に (in)
mega- 巨大な (large)
micro- 小さい (small)
mil- 1000 (thousand)
mis- 誤って (wrongly);悪く (badly)
mono- 1つ (one)
multi- 多くの (many)
ne-, neg- しない (not)
non- 無,非 (not)
ob-, oc-, of-, op- …に対して,…に向かって (against)
out- 外に (out)
over- 越えて (over)
para- わきに (beside)
per- …を通して (through);完全に (wholly)
post- 後の (after)
pre- 前に (before)
pro- 前に (forward)
re- 元に (back);再び (again);強く (strongly)
se- 別々に (apart)
semi- 半分 (half)
sub-, suc-, suf-, sum-, sug-, sup-, sus- 下に (down),下で (under)
super-, sur- 上に,越えて (over)
syn-, sym- 共に (together)
tele- 遠い (distant)
trans- 越えて (over)
tri- 3つ (three)
un- ない (not);元に戻して (back)
under- 下に (down)
uni- 1つ (one)

【 名詞をつくる接尾辞 】
 
-age 状態,こと,もの
-al こと
-ance こと
-ancy 状態,もの
-ant 人,もの
-ar 人
-ary こと,もの
-ation すること,こと
-cle もの,小さいもの
-cracy 統治
-ee される人
-eer 人
-ence 状態,こと
-ency 状態,もの
-ent 人,もの
-er, -ier 人,もの
-ery 状態,こと,もの;類,術;所
-ess 女性
-hood 状態,性質,期間
-ian 人
-ics 学,術
-ion, -sion, -tion こと,状態,もの
-ism 主義
-ist 人
-ity, -ty 状態,こと,もの
-le もの,小さいもの
-let もの,小さいもの
-logy 学,論
-ment 状態,こと,もの
-meter 計
-ness 状態,こと
-nomy 法,学
-on, -oon 大きなもの
-or 人,もの
-ory 所
-scope 見るもの
-ship 状態
-ster 人
-tude 状態
-ure こと,もの
-y こと,集団

【 形容詞をつくる接尾辞 】
-able できる,しやすい
-al …の,…に関する
-an …の,…に関する
-ant …の,…の性質の
-ary …の,…に関する
-ate …の,…のある
-ative …的な
-ed …にした,した
-ent している
-ful …に満ちた
-ible できる,しがちな
-ic …の,…のような
-ical …の,…に関する
-id …状態の,している
-ile できる,しがちな
-ine …の,…に関する
-ior もっと…
-ish ・・・のような
-ive ・・・の,・・・の性質の
-less ・・・のない
-like ・・・のような
-ly ・・・のような;・・・ごとの
-ory ・・・のような
-ous ・・・に満ちた
-some ・・・に適した,しがちな
-wide ・・・にわたる

【 動詞をつくる接尾辞 】
-ate ・・・にする,させる
-en ・・・にする
-er 繰り返し・・・する
-fy, -ify ・・・にする
-ish ・・・にする
-ize ・・・にする
-le 繰り返し・・・する

【 副詞をつくる接尾辞 】
-ly ・・・ように
-ward ・・・の方へ
-wise ・・・ように


 ・ 池田 和夫 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』 研究社,2019年.

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2024-11-10 Sun

#5676. 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』の300語根 [etymology][prefix][suffix][vocabulary][hel_education][lexicology][word_formation][derivation][derivative][morphology][latin][greek][review]


池田 和夫 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』 研究社,2019年.



 英語ボキャビルのための本を紹介します.研究社から出版されている『語根で覚えるコンパスローズ英単語』です.300の語根を取り上げ,語根と意味ベースで派生語2500語を学習できるように構成されています.研究社の伝統ある『ライトハウス英和辞典』『カレッジライトハウス英和辞典』『ルミナス英和辞典』『コンパスローズ英和辞典』の辞書シリーズを通じて引き継がれてきた語根コラムがもとになっています.
 選ばれた300個の語根は,ボキャビル以外にも,英語史研究において何かと役に立つリストとなっています.目次に従って,以下に一覧します.

cess (行く)
ceed (行く)
cede (行く)
gress (進む)
vent (来る)
verse (向く)
vert (向ける)
cur (走る)
pass (通る)
sta (立つ)
sist (立つ)
sti (立つ)
stitute (立てた)
stant (立っている)
stance (立っていること)
struct (築く)
fact (作る,なす)
fic (作る)
fect (作った)
gen (生まれ)
nat (生まれる)
crease (成長する)
tain (保つ)
ward (守る)
serve (仕える)
ceive (取る)
cept (取る)
sume (取る)
cap (つかむ)
mote (動かす)
move (動く)
gest (運ぶ)
fer (運ぶ)
port (運ぶ)
mit (送る)
mis (送られる)
duce (導く)
duct (導く)
secute (追う)
press (押す)
tract (引く)
ject (投げる)
pose (置く)
pend (ぶら下がる)
tend (広げる)
ple (満たす)
cide (切る)
cise (切る)
vary (変わる)
alter (他の)
gno (知る)
sent (感じる)
sense (感じる)
cure (注意)
path (苦しむ)
spect (見る)
vis (見る)
view (見る)
pear (見える)
speci (見える)
pha (現われる)
sent (存在する)
viv (生きる)
act (行動する)
lect (選ぶ)
pet (求める)
quest (求める)
quire (求める)
use (使用する)
exper (試みる)
dict (言う)
log (話す)
spond (応じる)
scribe (書く)
graph (書くこと)
gram (書いたもの)
test (証言する)
prove (証明する)
count (数える)
qua (どのような)
mini (小さい)
plain (平らな)
liber (自由な)
vac (空の)
rupt (破れた)
equ (等しい)
ident (同じ)
term (限界)
fin (終わり,限界)
neg (ない)
rect (真っすぐな)
prin (1位)
grade (段階)
part (部分)
found (基礎)
cap (頭)
medi (中間)
popul (人々)
ment (心)
cord (心)
hand (手)
manu (手)
mand (命じる)
fort (強い)
form (形,形作る)
mode (型)
sign (印)
voc (声)
litera (文字)
ju (法)
labor (労働)
tempo (時)
uni (1つ)
dou (2つ)
cent (100)
fare (行く)
it (行く)
vade (行く)
migrate (移動する)
sess (座る)
sid (座る)
man (とどまる)
anim (息をする)
spire (息をする)
fa (話す)
fess (話す)
cite (呼ぶ)
claim (叫ぶ)
plore (叫ぶ)
doc (教える)
nounce (報じる)
mon (警告する)
audi (聴く)
pute (考える)
tempt (試みる)
opt (選ぶ)
cri (決定する)
don (与える)
trad (引き渡す)
pare (用意する)
imper (命令する)
rat (数える)
numer (数)
solve (解く)
sci (知る)
wit (知っている)
memor (記憶)
fid (信じる)
cred (信じる)
mir (驚く)
pel (追い立てる)
venge (復讐する)
pone (置く)
ten (保持する)
tin (保つ)
hibit (持つ)
habit (持っている)
auc (増す)
ori (昇る)
divid (分ける)
cret (分ける)
dur (続く)
cline (傾く)
flu (流れる)
cas (落ちる)
cid (落ちる)
cease (やめる)
close (閉じる)
clude (閉じる)
draw (引く)
trai (引っ張る)
bat (打つ)
fend (打つ)
puls (打つ)
cast (投げる)
guard (守る)
medic (治す)
nur (養う)
cult (耕す)
ly (結びつける)
nect (結びつける)
pac (縛る)
strain (縛る)
strict (縛られた)
here (くっつく)
ple (折りたたむ)
plic (折りたたむ)
ploy (折りたたむ)
ply (折りたたむ)
tribute (割り当てる)
tail (切る)
sect (切る)
sting (刺す)
tort (ねじる)
frag (壊れる)
fuse (注ぐ)
mens (測る)
pens (重さを量る)
merge (浸す)
velop (包む)
veil (覆い)
cover (覆う;覆い)
gli (輝く)
prise (つかむ)
cert (確かな)
sure (確かな)
firm (確実な)
clar (明白な)
apt (適した)
due (支払うべき)
par (等しい)
human (人間の)
common (共有の)
commun (共有の)
semble (一緒に)
simil (同じ)
auto (自ら)
proper (自分自身の)
potent (できる)
maj (大きい)
nov (新しい)
lev (軽い)
hum (低い)
cand (白い)
plat (平らな)
minent (突き出た)
sane (健康な)
soph (賢い)
sacr (神聖な)
vict (征服した)
text (織られた)
soci (仲間)
demo (民衆)
civ (市民)
polic (都市)
host (客)
femin (女性)
patr (父)
arch (長)
bio (命,生活,生物)
psycho (精神)
corp (体)
face (顔)
head (頭)
chief (頭)
ped (足)
valu (価値)
delic (魅力)
grat (喜び)
hor (恐怖)
terr (恐れさせる)
fortune (運)
hap (偶然)
mort (死)
art (技術)
custom (習慣)
centr (中心)
eco (環境)
circ (円,環)
sphere (球)
rol (回転;巻いたもの)
tour (回る)
volve (回る)
base (基礎)
norm (標準)
ord (順序)
range (列)
int (内部の)
front (前面)
mark (境界)
limin (敷居)
point (点)
punct (突き刺す)
phys (自然)
di (日)
hydro (水)
riv (川)
mari (海)
sal (塩)
aster (星)
camp (野原)
mount (山)
insula (島)
vi (道)
loc (場所)
geo (土地)
terr (土地)
dom (家)
court (宮廷)
cave (穴)
bar (棒)
board (板)
cart (紙)
arm (武装,武装する)
car (車)
leg (法律)
reg (支配する)
her (相続)
gage (抵当)
merc (取引)


 ・ 池田 和夫 『語根で覚えるコンパスローズ英単語』 研究社,2019年.

Referrer (Inside): [2024-11-11-1]

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2024-10-29 Tue

#5664. 初期近代のジェスチャーへの関心の高まり [gesture][emode][gesture][paralinguistics][history_of_linguistics][latin][lingua_franca][vernacular]

 西洋の初期近代では普遍言語や普遍文字への関心が高まったが,同様の趣旨としてジェスチャー (gesture) へも関心が寄せられるようになった.Kendon (73) によれば,その背景は以下の通り.

The expansion of contacts between Europeans and peoples of other lands, especially in the New World, led to an enhanced awareness of the diversity of spoken languages, and because explorers and missionaries had reported successful communication by gesture, the idea rose that gesture could form the basis of a universal language. The idea of a universal language that could overcome the divisions between peoples brought about by differences in spoken languages was longstanding. However, interest in it became widespread, especially in the sixteenth and seventeenth centuries, in part because, as Latin began to be replaced with vernaculars, the need for a new lingua franca was felt. There were philosophical and political reasons as well, and there developed the idea that a language should be created whose meanings were fixed, which could be written or expressed in forms that would be comprehensible, regardless of a person's spoken language. The idea that humans share a 'universal language of the hands,' mentioned by Quintilian, was taken up afresh by Bonifaccio. In his L'arte dei cenni ('The art of signs') of 1616 (perhaps the first book ever published to be devoted entirely to bodily expression) . . . , he hoped that his promotion of the 'mute eloquence' of bodily signs would contribute to the restoration of the natural language of the body, given to all mankind by God, and so overcome the divisions created by the artificialities of spoken languages.


 西洋の初期近代におけるジェスチャーへの関心は,新世界での見知らぬ諸言語との接触,リンガフランカとしてのラテン語の衰退,哲学的・政治的な観点からの普遍言語への関心,「自然な肉体言語」の再評価などに裏付けられていたという解説だ.関連して「#5128. 17世紀の普遍文字への関心はラテン語の威信の衰退が一因」 ([2023-05-12-1]) の議論も思い出される.

 ・ Kendon, Adam. "History of the Study of Gesture." Chapter 3 of The Oxford Handbook of the History of Linguistics. Ed. Keith Allan. Oxford: OUP, 2013. 71--89.

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2024-10-15 Tue

#5650. 朝カルシリーズ講座の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」をマインドマップ化してみました [asacul][oe][latin][mindmap][notice][kdee][etymology][hel_education][lexicology][vocabulary][heldio][link]

 9月28日に開講した,標記のシリーズ講座第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」について,その要旨を markmap というウェブツールによりマインドマップ化しました(画像としてはこちらからどうぞ).受講された方は復習用に,そうでない方は講座内容を垣間見る機会としてご活用ください.



 シリーズ第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」については hellog と heldio の過去回でも取り上げていますので,ご参照ください.

 ・ hellog 「#5619. 9月28日(土)の朝カル新シリーズ講座第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」のご案内」 ([2024-09-14-1])
 ・ heldio 「#1210. 9月28日(土)の朝カル講座「英語,ヴァイキングの言語と交わる」に向けて」 (2024/09/21)

 シリーズ過去回のマインドマップについては,以下を参照.
 
 ・ 「#5625. 朝カルシリーズ講座の第1回「英語語源辞典を楽しむ」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-20-1])
 ・ 「#5629. 朝カルシリーズ講座の第2回「英語語彙の歴史を概観する」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-24-1])
 ・ 「#5631. 朝カルシリーズ講座の第3回「英単語と「グリムの法則」」をマインドマップ化してみました」 ([2024-09-26-1])
 ・ 「#5639. 朝カルシリーズ講座の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-04-1])
 ・ 「#5646. 朝カルシリーズ講座の第5回「英語,ラテン語と出会う」をマインドマップ化してみました」 ([2024-10-11-1])

 次回の朝カル講座から,秋期クールに入ります.10月26日(土)17:30--19:00に開講予定です.第7回「英語,フランス語に侵される」と題し,いよいよ英語語彙史上に強烈なインパクトを与えたフランス語の登場です.ご関心のある方は,ぜひ朝日カルチャーセンター新宿教室の「語源辞典でたどる英語史」のページよりお申し込みください.

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2024-10-14 Mon

#5649. いつ <l> の綴字を重ねるか? [spelling][orthography][latin][greek][french][prefix][etymology][l]

 昨日の記事「#5648. <l> の綴字を重ねるか否かの問題」 ([2024-10-13-1]) に続き,<ll> の話題.今回はイギリス英語では <ll> と重ね,アメリカ英語では <l> と1つのみ,という既知の傾向は別として,どのような単語において <ll> が現われるか,その分布をみてみたい.
 昨日,次のように述べた.

<ll> はもともと古典語にゆかりのある綴字だったが,そこへ非古典語であるフランス語が混乱要因として参入してきた.フランス語は古典語由来の重ねた <ll> をそのまま受け継がず,1重化した <l> で継承することがしばしばあったために,それらが混在している英語語彙は正書法上 <l> を重ねるか否かについての厄介な問題を抱え込むことになったのだ.


 <ll> の分布について,Carney (250) の説明と単語例の列挙を引用しよう.

Normally, <l> would double after a short vowel in a monosyllable (bell, cell, doll, mill, etc.), but there are some exceptions. There are all marginal in various ways, usually by abbreviation: technical loan col ('gap between hills' < French); gal (< girl), pal (< Romany); technical abbreviations bet (< the name '(A. G.) Bell', = 'unit of power comparison'), cel (< celluloid . . .), gel (< gelatine), mel ('perpetual unit of pitch'), mil (< millimetre), nil (contraction of Latin nihil); short names Hal (< Henry), Sal (< Sally) . . . .
   Examples of <-ll-> with prefixes . . .:

- (reduced vowel): alleviate, alliteration, allude, allusion, ally (v.); collate, collateral, collect (v.), collide, collision.
- (unreduced vowel): Allocate, ally (n.); collect (n.), colleague, college, collimate, colloquy; illegal, illegible, illicit, illimitable, illuminate, illusion, illustrate; pellucid.

There are quite a few words which resemble the above and in which the <-ll-> is not covered by other doubling conventions: allegory, allergy, alligator. There is some etymological uncertainty about allot, allow, and allure. Allay has come to have a §Latinate appearance in spite of its Old English origin (a + lecgan). To the average reader these spellings must seem to belong with the §Latinate prefixes.
   A good many words . . . have <-ll-> in the third syllable from the end of a free-form after a stressed short vowel. The ending <-ion> seems to require this spelling, but not in all instances: billion, bullion, galleon, million, mullion, pillion, postillion, stallion, but also battalion, pavilion, verlion. Compare doubled and single <r> in carrion--clarion.
   Other examples of <-ll-> unaccounted for are: ballerina, ballistic, balloon, bellicose, brilliant, bulletin, calligraphy, calliopsis, camellia, colliery, ebullient, ellipse, embellish, fallacious, fallacy, fallible, gallery, gallium, halleluja, hallucinate, hellebore, intellect, intelligent, mellifluous, miscellany, palliate, pallium, parallel, pollute, shallot, shillelagh, tellurium.
   Pseudo-compounds are: ballyhoo, bulldozer, hullaballoo, lollipop, scallywag.


 <ll> をめぐる少々の傾向と諸々の混沌がつかめるのではないか.英語の正書法はかくも複雑である.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

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2024-10-13 Sun

#5648. <l> の綴字を重ねるか否かの問題 [spelling][orthography][ame_bre][latin][greek][french][l]

 英語の正書法では,<l> を重ねるかどうかが問題となるケースが少なからずある.
 まず思い浮かぶのは travelertraveller かの違いである.「#240. 綴字の英米差は大きいか小さいか?」 ([2009-12-23-1]) でみたように,典型的にアメリカ綴字では <l> は1つにとどまるが,イギリス綴字では <l> を重ねるのが規則である.しかし,そうかと思えば,アメリカ綴字の fulfill はむしろ <l> を重ね,イギリス綴字の fulfil は重ねないので,気が狂いそうになる.
 <l> を重ねるか否かの綴字のヴァリエーションは古英語期よりあるといえばあり,問題としては歴史も深いし根も深いといってよいだろう.綴字として <l> が1つでも2つでも,結果として周囲の発音には影響を与えないので,役割不明であるという点においてたちが悪い.
 私自身は,重ねた <ll> の綴字の本質は,直前の母音が「歴史的に」短母音であることを積極的に示すことにあると考えているが,現実にはそれほどたやすく片付けられる話題ではなさそうだ.現代英語の正書法を精査した Carney (250) は,"Distribution of <ll>" と題する1節にて,この問題を論じている.その節の冒頭部分を引用する.

There is more difficulty in accounting for the occurrence of double <-ll-> than for the double spelling of any other consonant. This is partly due to the frequency of <-ll-> in Latin and Greek stems and partly because §Latinate words borrowed by way of French may no longer have recognizable constituents.


 <ll> はもともと古典語にゆかりのある綴字だったが,そこへ非古典語であるフランス語が混乱要因として参入してきた.フランス語は古典語由来の重ねた <ll> をそのまま受け継がず,1重化した <l> で継承することがしばしばあったために,それらが混在している英語語彙は正書法上 <l> を重ねるか否かについての厄介な問題を抱え込むことになったのだ.なるほど,英語らしいといえば英語らしい結果といってよい.残念でもありながら面白くもある.
 ただし,現代英語の正書法の原則としていうならば,おおよそ次の規則が成立するのも確かである (Carney 251fn) .

In the Hanna (1966) spelling rules, <l> is the default spelling and:

1 <ll> word-final accented after /ɔː/ or a short vowel (tall, mill, bell, pull, hull).


 <ll> の話題については,Voicy heldio で取り上げたことがある.「#456. -l なのか -ll なのか問題 ー till/until, travel(l)er, distil(l)」をお聴きいただければ.



 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

Referrer (Inside): [2024-10-14-1]

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2024-09-18 Wed

#5623. 「英語史ライヴ2024」で B&C の第57節 "Chronological Criteria" を対談精読実況生中継しました [bchel][latin][borrowing][methodology][sound_change][palatalisation][loan_word][oe][chronology][lexicology][phonetics][hellive2024]



 一昨日の Voicy heldio にて「#1205. Baugh and Cable 第57節を対談精読実況生中継 --- 「英語史ライヴ2024」より」をアーカイヴ配信しました.これは「#5607. 「英語史ライヴ2024」で B&C の第57節 "Chronological Criteria" を対談精読実況生中継します」 ([2024-09-02-1]) で予告したとおり,9月8日(日)に開催された「英語史ライヴ2024」の早朝枠にて生配信された番組がもとになっています.
 金田拓さん(帝京科学大学)がメインMCを務め,小河舜さん(上智大学)と私が加わる形での対談精読実況生中継でした.ヘルメイト(helwa リスナー)や khelf メンバーも数名がギャラリーとして収録現場に居合わせ,生配信でお聴きになったリスナーものべ81名に達しました.たいへんな盛況ぶりです.皆さん,日曜日の朝から盛り上げてくださり,ありがとうございました.
 今回取り上げたセクションは,実はテクニカルです.古英語期のラテン借用語について,それぞれの単語が同時期内でもいつ借りられたのか,いわば借用の年代測定に関する方法論が話題となっています.取り上げられているラテン借用語の例はすこぶる具体的ではありますが,音変化の性質や比較言語学の手法に光を当てる専門的な内容となっています.
 しかし,今回の対談精読会にそってに丁寧に英文を読み解いていえば,必ず理解できますし,歴史言語学研究のエキサイティングな側面を体験することもできるでしょう.本編48分ほどの長尺ですが,ぜひお時間のあるときにゆっくりお聴きください.
 Baugh and Cable の精読シリーズのバックナンバー一覧は「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) に掲載しています.ぜひこの機会にテキストを入手して,第1節からお聴きいただければ.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2024-09-15 Sun

#5620. study の第1音節母音が短母音であることについて [senbonknock][sobokunagimon][phonetics][phonology][french][latin][loan_word][syllable][monophthong][hellive2024][heldio]

 「#5618. 早朝の素朴な疑問「千本ノック」 with 小河舜さん --- 「英語史ライヴ2024」より」 ([2024-09-13-1]) で紹介した,Voicy heldio の「早朝の素朴な疑問「千本ノック」 with 小河舜さん」にて,本編の40分30秒くらいから「study と student で <u> の部分の発音の仕方が異なるのはなぜですか?」という問いが取り上げられています.「#3295. study の <u> が短母音のわけ」 ([2018-05-05-1]) の説明では不十分ではないか,という指摘がありました.
 上記「千本ノック」では手元に詳しい情報がない状態での即興の回答だったのですが,その後,詳しく調べてみると,いろいろと込み入った事情があるようです.study の第1音節母音が短母音であるのは,この単語がもともとはラテン語由来でありながら,フランス語を経由してきたという経緯が関与していそうです.
 これについては,英語音韻史を書いた中尾 (339) に手がかりがあった.

F [= French] 借入語の音量:OF [= Old French] の母音は CL [= Classical Latin] の音量ではなく,VL [= Vulgar Latin] の閉音節では短く,開音節では長いという原則を受け継いだ.ME [= Middle English] の音組織は F 借入語を通してこの新しい型の音量をしばしば反映する.


 ここで短母音になる具体的な音環境が3点ほど挙げられているのだが,その1つに「3音節動詞,名詞,形容詞の第1音節」がある(中尾,p. 340).動詞 study の中英語形 studien が,この項目の多数の例の1つとして挙げられている(赤字で示した).

(3) 3音節動詞,名詞,形容詞の第1音節:banisshen (=banish)/ravisshen (=ravish)/vanisshen (=vanish)/perishen (=perish)/finishen (=finish)/florisshen (=flourish)/norishen (=nourish)/publisshen (=publish)/punisshen (=punish)/travailen (=travail)/honouren (=honour)/visiten (=visit)/governen (=govern)/studien (=study)/family/salary/memory/remedy/misery/chalaundre (=calendar)/chapitre (=chapter)/sepulcre/oracle/miracle/ministre (=minister)/vinegre (=vinegar)/covenant/rethorik (=rhetoric)/bacheler (=bachelor)/charitee (=charity)/vanite (=vanity)/jolitee (=jollity)/povertee (=poverty)/libertee (=liberty)/trinitee (=trinity)/facultee (=faculty)/vavasour/amorous/casuel (=casual)/natural/general/lecherous/seculer (=secular)/diligent


 動詞 study は,中英語では stud・ī・en のように3音節語でした.この場合,現代の2音節語 stu・dent とは異なり,第1音節が閉音節となるために問題の母音が短く保たれる,といった理屈となります.

 ・ 中尾 俊夫 『音韻史』 英語学大系第11巻,大修館書店,1985年.

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2024-09-02 Mon

#5607. 「英語史ライヴ2024」で B&C の第57節 "Chronological Criteria" を対談精読実況生中継します [bchel][latin][borrowing][methodology][sound_change][palatalisation][loan_word][oe][chronology][lexicology][phonetics][hellive2024]


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 Baugh and Cable による英語史の古典的名著を Voicy heldio にて1節ずつ精読していくシリーズをゆっくりと進めています.昨年7月に開始した有料シリーズですが,たまの対談精読回などでは通常の heldio にて無料公開しています.
 9月8日(日)に12時間 heldio 生配信の企画「英語史ライヴ2024」が開催されますが,当日の早朝 8:00-- 8:55 の55分枠で「Baugh and Cable 第57節を対談精読実況生中継」を無料公開する予定です.金田拓さん(帝京科学大学)と小河舜さん(上智大学)をお招きし,日曜日の朝から3人で賑やかな精読回を繰り広げていきます.
 テキストをお持ちでない方のために,当日精読することになっている第57節 "Chronological Criteria" (pp. 73--75) の英文を以下に掲載しておきます.古英語期のラテン借用語の年代測定に関するエキサイティングな箇所です.じっくりと予習しておいていただけますと,対談精読実況生中継を楽しく聴くことができると思います.

57. Chronological Criteria. In order to form an accurate idea of the share that each of these three periods had in extending the resources of the English vocabulary, it is first necessary to determine as closely as possible the date at which each of the borrowed words entered the language. This is naturally somewhat difficult to do, and in the case of some words it is impossible. But in a large number of cases it is possible to assign a word to a given period with a high degree of probability and often with certainty. It will be instructive to pause for a moment to inquire how this is done.
   The evidence that can be employed is of various kinds and naturally of varying value. Most obvious is the appearance of the word in literature. If a given word occurs with fair frequency in texts such as Beowulf, or the poems of Cynewulf, such occurrence indicates that the word has had time to pass into current use and that it came into English not later than the early part of the period of Christian influence. But it does not tell us how much earlier it was known in the language, because the earliest written records in English do not go back beyond the year 700. Moreover, the late appearance of a word in literature is no proof of late adoption. The word may not be the kind of word that would naturally occur very often in literary texts, and so much of Old English literature has been lost that it would be very unsafe to argue about the existence of a word on the basis of existing remains. Some words that are not found recorded before the tenth century (e.g., pīpe 'pipe', cīese 'cheese') can be assigned confidently on other grounds to the period of continental borrowing.
   The character of the word sometimes gives some clue to its date. Some words are obviously learned and point to a time when the church had become well established in the island. On the other hand, the early occurrence of a word in several of the Germanic dialects points to the general circulation of the word in the Germanic territory and its probable adoption by the ancestors of the English on the continent. Testimony of this kind must of course be used with discrimination. A number of words found in Old English and in Old High German, for example, can hardly have been borrowed by either language before the Anglo-Saxons migrated to England but are due to later independent adoption under conditions more or less parallel, brought about by the introduction of Christianity into the two areas. But it can hardly be doubted that a word like copper, which is rare in Old English, was nevertheless borrowed on the continent when we find it in no fewer than six Germanic languages.
   The most conclusive evidence of the date at which a word was borrowed, however, is to be found in the phonetic form of the word. The changes that take place in the sounds of a language can often be dated with some definiteness, and the presence or absence of these changes in a borrowed word constitutes an important test of age. A full account of these changes would carry us far beyond the scope of this book, but one or two examples may serve to illustrate the principle. Thus there occurred in Old English, as in most of the Germanic languages, a change known as i-umlaut. (Umlaut is a German word meaning 'alteration of sound', which in English is sometimes called mutation.) This change affected certain accented vowels and diphthongs (æ, ā, ō, ū, ēa, ēo , and īo) when they were followed in the next syllable by an ī or j. Under such circumstances, æ and a became e, and ō became ē, ā became ǣ, and ū became ȳ. The diphthongs ēa, ēo, īo became īe, later ī, ȳ. Thus *baŋkiz > benc (bench), *mūsiz > mȳs, plural of mūs (mouse), and so forth. The change occurred in English in the course of the seventh century, and when we find it taking place ina word borrowed from Latin, it indicates that the Latin word had been taken into English by that time. Thus Latin monēta (which became *munit in Prehistoric OE) > mynet (a coin, Mod. E. mint) and is an early borrowing. Another change (even earlier) that helps us to date a borrowed word is that known as palatal diphthongization. By this sound change ǣ or ē in early Old English was changed to a diphthong (ēa and īe, respectively) when preceded by certain palatal consonants (ċ, ġ, sc). OE cīese (L. cāseus, chesse) mentioned earlier, shows both i-umlaut and palatal diphthongization (cāseus > *ċǣsi > *ċēasi > *ċīese). In many words, evidence for date is furnished by the sound changes of Vulgar Latin. Thus, for example, an intervocalic p (and p in the combination pr) in the Late Latin of northern Gaul (seventh century) was modified to a sound approximating a v, and the fact that L. cuprum, coprum (copper) appears in OE as copor with the p unchanged indicates a period of borrowing prior to this change (cf. F. cuivre). Again Latin ī changed to e before A.D. 400 so that words like OE biscop (L. episcopus), disc (L. discus), sigel 'brooch' (L. sigillum), and the like, which do not show this change, were borrowed by the English on the continent. But enough has been said to indicate the method and to show that the distribution of the Latin words in Old English among the various periods at which borrowing took place rests not upon guesses, however shrewd, but upon definite facts and upon fairly reliable phonetic inferences.


 Baugh and Cable の精読シリーズのバックナンバー一覧は「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) に掲載しています.ぜひこの機会にテキストを入手して,第1節からお聴きいただければ.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2024-08-17 Sat

#5591. 8月24日(土)の朝カル新シリーズ講座第5回「英語,ラテン語と出会う」のご案内 [asacul][notice][kdee][etymology][hel_education][helkatsu][link][lexicology][vocabulary][oe][latin][voicy][heldio]


asacul_20240427.png



 1週間後の8月24日(土)17:30--19:00に朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第5回となる「英語,ラテン語と出会う」を開講します.
 前回,7月27日の第4回では「現代の英語に残る古英語の痕跡」と題して,古英語の語彙,語形成,ケルト語からの僅少な影響に注目しました.そこでは古英語が純度の高いゲルマン系の語彙を保っており,造語能力も豊かであったことを解説しました.
 しかし,古英語にも諸言語からの借用語は確かにありました.少数のケルト借用語の存在についてはすでに触れましたが,その他にもラテン語語や古ノルド語からの借用語が各々数百語(以上)の規模で古英語に入ってきていたのです.数百語ほどの数では語彙全体のなかではさほど目立たないのも確かですが,その後の豊富な語彙借用の歴史を念頭におけば,古英語期が英語史上重要な位置づけにあることが理解できるでしょう.
 今回の講座では,古英語期(あるいはそれ以前の時代)におけるラテン語の語彙的影響に注目します.また,ラテン語の影響が語彙的・言語的なレベルにとどまらず文化的な次元にまで及んだことにも触れます.
 本シリーズ講座は各回の独立性が高いので,第5回からの途中参加などでもまったく問題なく受講できます.新宿教室での対面参加のほかオンライン参加も可能ですし,その後1週間の「見逃し配信」もご利用できます.奮ってご参加ください.
 なお,本シリーズ講座は「語源辞典でたどる英語史」と題しているとおり,とりわけ『英語語源辞典』(研究社)を頻繁に参照します.同辞典をお持ちの方は,講座に持参されると,より楽しく受講できるかと思います(もちろん手元になくとも問題ありません).


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2024-08-15 Thu

#5589. 古英語の間投詞 eala [oe][interjection][me][onomatopoeia][doe][latin]

 現代英語の oh におおよそ相当する古英語の間投詞 (interjection) として ēalā というものがある.この語は初期中英語へも ealā として引き継がれたが,後期中英語までには死語となったようだ.一般的に間投詞はそういうものだと思われるが,見るからに(聞くからに)叫び声そのものに基づくとおぼしきオノマトペだ.ラテン語の間投詞 o に対する古英語の注釈としても用いられており,古英語では汎用的な間投詞だったといってよい.
 もう少し細かくいえば,このオノマトペは2つの部分からなっており,実際にそれぞれが独立した間投詞としても用いられる.ēa である.組み合わせ方や重複のさせ方も様々にあったようで,The Dictionary of Old English (DOE) によると eala ea, eala ... la, eala ... ea, eala eala, ealaeala など豊かなヴァリエーションを示す.他の間投詞と組み合わさって eala nu "oh now" のような使い方もあった.
 使い方としては,古英語の例文を眺める限り,呼びかけ,懇願,祈り,嘆き,誓言,疑問,皮肉などに広く用いられており,やはり現代英語の oh に相当するといってよい.勢いとしても強めの用法から弱めの用法まであり,上記のように繰り返して用いれば感情が強くこもったのだろう.
 古英語よりくどめの例文を選んでみた.

 ・ Lit 4.6 1: æla þu dryhten æla ðu ælmihtiga God æla cing ealra cyninga & hlaford ealra waldendra.
 ・ Sat 161: . . . eala drihtenes þrym! eala duguða helm! eala meotodes miht! eala middaneard! eala dæg leohta! eala dream Godes! eala engla þreat! eala upheofen!
 ・ HomU 38 18: eala, eala, fela is nu ða fracodra getrywða wide mid mannum.

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2024-07-21 Sun

#5564. 古英語のラテン語からの借用語はせいぜい数百語 [oe][loan_word][borrowing][latin][old_norse][celtic][latin][germanic][lexicology][link]

 古英語の語彙は相当程度にピュアなゲルマン系の語彙といってよく,借用語は限られている.しかも,その限られた借用語の大部分がラテン語 (latin) からのものである.ほかには古ノルド語 (old_norse),ケルト語 (celtic),ゲルマン諸語 (germanic), フランス語 (french) からの借用語もないではないが,あくまで影は薄い.
 これらの言語から古英語への借用語は,むしろ例外的だからこそ気になるのだろう.数が少ないので,古英語を読んでいるときに出くわすとやけに目立つのである.英語史研究でもかえってよく注目されている.Hogg は,古英語期の語彙と語彙借用について次のように評している.

. . . there are words of non-native origin in Old English, the vast majority of which are from Latin. It has been estimated only about 3 per cent of Old English vocabulary is taken from non-native sources and it is clear that the strong preference in Old English was to use its native resources in order to create new vocabulary. In this respect, therefore, and as elsewhere, Old English is typically Germanic. (102--03)


. . . there was in Old English only a very limited use of words taken from other language, i.e. borrowed or loan words, and those words were primarily from Latin. Apart from Latin, Old English borrowed words from the Scandinavian languages after the Viking invasions, from the celtic languages mostly at a very early date, and there was also a scattering of forms from the other Germanic languages. At the very end of the period we begin to see the first loan words from Norman French. (109)


 古英語期の各言語からの語彙借用については,以下の記事を参照.

 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#1437. 古英語期以前に借用されたラテン語の例」 ([2013-04-03-1])
 ・ 「#1619. なぜ deus が借用されず God が保たれたのか」 ([2013-10-02-1])
 ・ 「#1945. 古英語期以前のラテン語借用の時代別分類」 ([2014-08-24-1])
 ・ 「#2578. ケルト語を通じて英語へ借用された一握りのラテン単語」 ([2016-05-18-1])
 ・ 「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1])
 ・ 「#3788. 古英語期以前のラテン借用語の意外な日常性」 ([2019-09-10-1])
 ・ 「#3789. 古英語語彙におけるラテン借用語比率は1.75%」 ([2019-09-11-1])
 ・ 「#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧」 ([2019-09-12-1])
 ・ 「#3829. 650年以後のラテン借用語の一覧」 ([2019-10-21-1])
 ・ 「#3830. 古英語のラテン借用語は現代まで地続きか否か」 ([2019-10-22-1])

 ・ 「#1216. 古英語期のケルト借用語」 ([2012-08-25-1])

 ・ 「#3821. Old Saxon からの借用語」 ([2019-10-13-1])

 ・ 「#302. 古英語のフランス借用語」 ([2010-02-23-1])

 ・ Hogg, Richard. An Introduction to Old English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2002.

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2024-07-21 Sun

#5564. 古英語のラテン語からの借用語はせいぜい数百語 [oe][loan_word][borrowing][latin][old_norse][celtic][latin][germanic][lexicology][link]

 古英語の語彙は相当程度にピュアなゲルマン系の語彙といってよく,借用語は限られている.しかも,その限られた借用語の大部分がラテン語 (latin) からのものである.ほかには古ノルド語 (old_norse),ケルト語 (celtic),ゲルマン諸語 (germanic), フランス語 (french) からの借用語もないではないが,あくまで影は薄い.
 これらの言語から古英語への借用語は,むしろ例外的だからこそ気になるのだろう.数が少ないので,古英語を読んでいるときに出くわすとやけに目立つのである.英語史研究でもかえってよく注目されている.Hogg は,古英語期の語彙と語彙借用について次のように評している.

. . . there are words of non-native origin in Old English, the vast majority of which are from Latin. It has been estimated only about 3 per cent of Old English vocabulary is taken from non-native sources and it is clear that the strong preference in Old English was to use its native resources in order to create new vocabulary. In this respect, therefore, and as elsewhere, Old English is typically Germanic. (102--03)


. . . there was in Old English only a very limited use of words taken from other language, i.e. borrowed or loan words, and those words were primarily from Latin. Apart from Latin, Old English borrowed words from the Scandinavian languages after the Viking invasions, from the celtic languages mostly at a very early date, and there was also a scattering of forms from the other Germanic languages. At the very end of the period we begin to see the first loan words from Norman French. (109)


 古英語期の各言語からの語彙借用については,以下の記事を参照.

 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#1437. 古英語期以前に借用されたラテン語の例」 ([2013-04-03-1])
 ・ 「#1619. なぜ deus が借用されず God が保たれたのか」 ([2013-10-02-1])
 ・ 「#1945. 古英語期以前のラテン語借用の時代別分類」 ([2014-08-24-1])
 ・ 「#2578. ケルト語を通じて英語へ借用された一握りのラテン単語」 ([2016-05-18-1])
 ・ 「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1])
 ・ 「#3788. 古英語期以前のラテン借用語の意外な日常性」 ([2019-09-10-1])
 ・ 「#3789. 古英語語彙におけるラテン借用語比率は1.75%」 ([2019-09-11-1])
 ・ 「#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧」 ([2019-09-12-1])
 ・ 「#3829. 650年以後のラテン借用語の一覧」 ([2019-10-21-1])
 ・ 「#3830. 古英語のラテン借用語は現代まで地続きか否か」 ([2019-10-22-1])

 ・ 「#1216. 古英語期のケルト借用語」 ([2012-08-25-1])

 ・ 「#3821. Old Saxon からの借用語」 ([2019-10-13-1])

 ・ 「#302. 古英語のフランス借用語」 ([2010-02-23-1])

 ・ Hogg, Richard. An Introduction to Old English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2002.

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2024-06-23 Sun

#5536. 接頭辞 en- と in- の揺れについて OED の解説を読む [prefix][latin][french][spanigh][loan_word][word_formation][spelling][etymological_respelling][lexicography][analogy]

 昨日の記事「#5535. 接頭辞 en- と in- の揺れを Chancery English でみる」 ([2024-06-22-1]) で取り上げた話題について,もっと調べてみたくなり OEDen- PREFIX1 を引いた.語源欄の Note 3 に,この揺れについて詳しい歴史的経緯が記されている.勉強になったので,その箇所をすべて引用しておく.

3. From 14th cent. onwards the prefix in- (im-) has been frequently substituted for en- (em-); and, conversely, en- (em-) has been substituted for the prefix in- (im-) of words of Latin or Italian origin, and for the native English in- prefix1. Nearly every word, of long standing in the language, which is formed with en- has at some period been written also with in-. Hence it is often impossible to determine whether in a particular word of English formation the prefix en- or in- is due to the analogy of words of French, Latin, or purely English origin; in many instances it must have been applied merely as a recognized English formative, without reference to the analogy of any individual word. In 17th cent. the form in- (im-) was generally preferred; the now prevailing tendency is to use en- (em-) in English formations, and where the prefix represents French en-; and in modern reprints of 17th cent. books, and in dictionaries, the in- (im-) of the original texts is often replaced by en- (em-). In some words, however, as em-, imbed, en-, inclose, the form with in- still occurs, but in most cases less frequently than the en- forms; in a few instances in- has entirely superseded en-, even where the latter is etymologically more correct, as in imbrue, impair, inquest. In a few words (e.g. ensure v., insure v.) the alternative forms have (in very modern times) been appropriated to express different senses. As a general rule the en- and in- forms are in this Dict. treated as belonging to one and the same word. A word still surviving in use is treated in the alphabetical place of its now more frequent form. In the case of obsolete words, where there is no decided preponderance in usage, the choice of the typical form has been determined by etymological considerations: thus the adapted words from French or Spanish with en-, and new formations apparently on the analogy of these, are by preference placed under E; while words apparently formed on Latin analogies, or probably originating as compounds of the English preposition in n.2, will appear under I.

The substitution of in- for en- has in part been due to notions of etymological fitness, the Romanic en- having been regarded as a corrupt and improper form of the Latin in-, while the English formations in en- were either referred to Latin analogies or treated as compounds of the native preposition. The phenomenon seems, however, to be partly of phonetic origin. Tendency to reduce and slightly raise the vowel in this prefix results in homophonic pronunciations of word pairs such as embed and imbed, enclose and inclose. Occurrence of spellings such as inbassed for embassade in the fourteenth century may suggest this phenomenon has existed from an early period.


 揺れの要因についての議論が詳しいが,数々の要因が作用しているようで現実はきわめて複雑だ.語源がフランス語かラテン語かという要因はもちろん重要だ.しかし,個々の単語においては各々の語形が互いに乗り入れしており,緩い傾向があるような,ないようなという状況だ.さらに,英語内部での語形成の場合には,フランス語やラテン語は,類推のモデルとしてあくまで間接的に作用しているにすぎず,結局いずれの接頭辞かを決める主要因が何なのかが,しばしば分からない.これは似非的なヴァージョンを含む語源的綴字 (etymological_respelling) をめぐる議論にも近似してくる.
 最初の段落の終わりにかけては,この揺れが辞書編纂者の視点からも悩ましい問題であることが示されている.OED では接頭辞 en- と in- を原則として同一物として扱うが,では,どちらの接頭辞で主見出しを立てるべきか,という実際的な悩みがここに吐露されているものと読める.
 英語綴字の歴史的深み(闇?)をもう1つ知ってしまった.

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2024-06-22 Sat

#5535. 接頭辞 en- と in- の揺れを Chancery English でみる [prefix][latin][french][loan_word][chancery_standard][etymology][spelling]

 英語には ensure/insureencase/incase, entitle/intitle, embed/imbed, enclose/inclose, enwrap/inwrap など,接頭辞が en- と in- で揺れるペアがある.意味や用法が異なる場合もあれば,形態上の英米差を示す場合もあるし,単なる異形・異綴字である場合もある.それもそのはず,この接頭辞の起源は一つなのだ.ラテン語 in- に由来するフランス語の形態が en- なのである.
 この2つの異形態は,歴史的には,現代以上に揺れていたようだ.目下私が注目している15世紀の Chancery English では,相当の揺れがみられる.Fisher et al. (33) を引用する.

   Since prefixes were unaccented, they were subject to the same kinds of irregularities and inconsistencies as the inflectional endings. Adding to the confusion was the lack of standardization of often competing Latin- and French-derived prefixes such as in, im, en, and em.
   Many words with prefixes beginning in in/im in MnE were written with en/em prefixes in Chancery documents. One explanation for this is the continuing French influence; another is the drift towards e as the regular vowel in unaccented syllables, noted above. But the relative strength of each explanation is difficult to determine. In any case, en prefixes where MnE requires in are sometimes preferred in Chancery writing. There are, for example, 33 instances of entent(e) as opposed to one of intent, and that in an ecclesiastical petition (153.8) where the Latin in would be expected. Likewise we have endenture and its plurals 25 times and indenture/indentures only six times, five of them in non-Chancery items (238 and 239). Informed is found once (as a past participle, 146.9), while variants of the infinitive enforme are the clear preference, with 27 listings. Other cases where the en form is preferred include enheritaunce and endented. Prefixes beginning with im in MdE show the same kind of variation, with preferences for empechment and enprisoned.


 Chancery English は現代標準綴字の萌芽を示すと評価されることが多いが,このようにいまだ揺れは相当に大きい.今回は en-/in- をもつ語彙に限ってみたが,他の一般の語彙についても事情はおおよそ同じだ.英語史における綴字標準化の道のりは長かったのである.今回取り上げた接頭辞と関連して,以下の記事も要参照.

 ・ 「#1877. 動詞を作る接頭辞 en- と接尾辞 -en」 ([2014-06-17-1])
 ・ 「#4241. なぜ語頭や語末に en をつけると動詞になるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-12-06-1])
 ・ 「#3510. 接頭辞 en- をもつ動詞は品詞転換の仲間?」 ([2018-12-06-1])

 ・ Fisher, John H., Malcolm Richardson, and Jane L. Fisher, comps. An Anthology of Chancery English. Knoxville: U of Tennessee P, 1984. 392.

Referrer (Inside): [2024-06-27-1] [2024-06-23-1]

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2024-06-19 Wed

#5532. ノルマン征服からの3世紀半のイングランドにおける話し言葉と書き言葉の言語 [me][norman_conquest][latin][french][reestablishment_of_english][bilingualism][diglossia][signet][writing][standardisation]

 中英語期のイングランドはマルチリンガルな社会だった.ポリグロシアな社会といってもよい.この全時代を通じて,イングランドの民衆の話し言葉は常に英語だったが,書き言葉は,書き手やレジスターや時期により,ラテン語,フランス語,英語のいずれもあり得た.しかし,書き言葉としての英語は,中英語後期にかけてゆっくりとではあるが,着実に存在感を示すようになってきた.
 Fisher et al. (xiii) は,イングランドにおけるこの3世紀半の言語事情を,1段落の文章で要領よくまとめている.以下に引用する.

Until the 14th century there was little association between Chancery and Westminster. Like the rest of his household, Chancery followed the King in his peregrinations about the country, and correspondence up to the time may be dated from York, Winchester, Hereford, or wherever the court happened to pause (as the King's personal correspondence---the Signet correspondence---continued to be throughout the 15th century). It is important to observe that in its movement about the country, the court as a whole must have reinforced the impression of an official class dialect , in contrast to the regional dialects with which it came in contact. For two centuries this court dialect was spoken French and written Latin; after 1300 it gradually became spoken English and written French. The English spoken in court then and for a long time afterward was quite varied in pronunciation and structure. But written Latin had been standardized in classical times, and by the 13th century written French had begun to be standardized in form and to achieve the lucid idiom that English prose was not to achieve until the 16th century. Increasingly as the 14th century progressed, this Latin and French was written by clerks whose first language was English. Latin was the essential subject in school, but the acquisition of French was more informal, and by the end of the century we have Chaucer's satire on the French of the Prioress, Gower's apologies for his own (quite acceptable) French, and the errors in legal briefs which betoken Englishmen trying to compose in a foreign language. By 1400 the use of English in speaking Latin and French in administrative writing had established a clear dichotomy between colloquial speech and the official written language, which must have made it easier to create an artificial written standard independent of the spoken dialects when the royal clerks began to use English for their official writing after 1417.


 なお,最後に挙げられている1417年とは,「#3214. 1410年代から30年代にかけての Chancery English の萌芽」 ([2018-02-13-1]) で触れられている通り,Henry V の書簡が玉璽局 (Signet Office) により英語で発行され始めた年のことである.

 ・ Fisher, John H., Malcolm Richardson, and Jane L. Fisher, comps. An Anthology of Chancery English. Knoxville: U of Tennessee P, 1984. 392.

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2024-06-17 Mon

#5530. -(i)tude [word_formation][etymology][latin][french][suffix][noun][adjective][morphology][kdee]



 一昨日の heldio で「#1111. latitude と longitude,どっちがどっち? --- コトバのマイ盲点」を配信した.latitude (緯度)と longitude (経度)の区別が付きにくいこと,それでいえば日本語の「緯度」と「経度」だって区別しにくいことなどを話題にした.コメント欄では数々の暗記法がリスナーさんから寄せられてきているので,混乱している方は必読である.
 今回は両語に現われる接尾辞に注目したい.『英語語源辞典』(寺澤芳雄(編集主幹),研究社,1997年)によると,接尾辞 -tude の語源は次の通り.

-tude suf. ラテン語形形容詞・過去分詞について性質・状態を表わす抽象名詞を造る;通例 -i- を伴って -itude となる:gratittude, solitude. ◆□F -tude // L -tūdin-, -tūdō


 この接尾辞をもつ英単語は,基本的にはフランス語経由で,あるいはフランス語的な形態として取り込まれている.比較的よくお目にかかるものとしては altitude (高度),amplitude (広さ;振幅),aptitude (適正),attitude (態度),certitude (確信)などが挙げられる.,fortitude (不屈の精神),gratitude (感謝),ineptitude (不適当),magnitude (大きさ),multitude (多数),servitude (隷属),solicitude (気遣い),solitude (孤独)などが挙げられる.いずれも連結母音を含んで -itude となり,この語尾だけで2音節を要するため,単語全体もいきおい長くなり,寄せ付けがたい雰囲気を醸すことになる.この堅苦しさは,フランス語のそれというよりはラテン語のそれに相当するといってよい.
 OED の -tude SUFFIX の意味・用法欄も見ておこう.

Occurring in many words derived from Latin either directly, as altitude, hebetude, latitude, longitude, magnitude, or through French, as amplitude, aptitude, attitude, consuetude, fortitude, habitude, plenitude, solitude, etc., or formed (in French or English) on Latin analogies, as debilitude, decrepitude, exactitude, or occasionally irregularly, as dispiritude, torpitude.


 それぞれの(もっと短い)類義語と比較して,-(i)tude 語の寄せ付けがたい語感を味わうのもおもしろいかもしれない.

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2024-06-07 Fri

#5520. -ester 語尾をもつ中英語の職業名ベースの姓 [onomastics][personal_name][name_project][by-name][occupational_term][suffix][etymology][word_formation][agentive_suffix][latin][productivity]

  標記の行為者接尾辞 (agentive_suffix) について「#2188. spinster, youngster などにみられる接尾辞 -ster」 ([2015-04-24-1]) や「#3791. 行為者接尾辞 -er, -ster はラテン語に由来する?」 ([2019-09-13-1]) で取り上げてきた.-ster はもともと女性の行為者接尾辞だったといわれるが,実はこれについては論争もあり,問題含みの形態素である (Fransson 42--45) .
  中英語の職業名ベースの姓を広範に調査した Fransson もこの件について議論している.問題の核心に迫るには,まずは記述が重要であるとして,Fransson はイングランド各地より -ester 語尾をもつ42個の姓を集めた.列挙すると以下の通り (41) .

Bakestere, Blacchester, Blakestere, Bleykestere, Blextere, Bredmongestere, Brewstere, Kallemakestere, Capiestere, Cardestere, Kembestere, Combestere, Corklittster, Cuppestere, Deyster, Dreyster, Fullester, Girdelester, Heustere, Huckestere, Litester, Lokyestere, Madster, Maltestere, Mongestere, Quernestere, Ridelestere, Ropestere, Scherestere, Semester, Sewstere, Sheppestere, Sopestere, Tannestere, Thakestere, Touestre, Upholdestere, Wadester, Webbester, Whelster, Wyggester, Wollestere


 もちろん議論の本番はこれからなのだが,これらの姓の分布が地域によって異なっていたり,名前の主が男性か女性かの比率も異なっているという事情があるようだ.単なる語源や語形成の話しにとどまらず,職業と姓と性という社会的な次元のトピックへと展開していきそうな匂いがプンプンしてきた.深みにはまらないように注意しなければと自身をいさめつつ.

 ・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.

Referrer (Inside): [2024-08-07-1] [2024-06-28-1]

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2024-06-06 Thu

#5519. 前置詞 pace 「○○さんには失礼ながら」 [oed][latin][preposition]

 本ブログでは今週はちょっとした前置詞ウィークとなっています.「#947. 現代英語の前置詞一覧」 ([2011-11-30-1]) でみたように,英語の前置詞は実に豊富です.ヘンテコな前置詞,見たことのない前置詞,高頻度だけれども使い方の難しい前置詞など,一覧を眺めているだけで圧倒されます.
 今回紹介したいレアな前置詞の1つが pace です.「歩調;ペース」を意味する名詞の pace /peɪs/ ではなく,「~には失礼ながら」 (= with due deference to, by the leave of) を意味する前置詞としての pace です.発音は /ˈpeɪsi, ˈpɑːʧeɪ, ˈpɑːkeɪ/ などとなります.人と意見が異なるときに持論を述べる際に「~さんのお許しをいただきまして」と前置きする表現です.これによって口調が柔らかくなることもあれば,かえって皮肉が効いて辛口になることもあるので,使用には注意が必要です.I do not, pace my rival, hold with the ideas of the reactionists.The evidence suggests, pace Professor Jones, that the world is becoming warmer. などと挿入的に用いられることが多いようです.
 この前置詞はラテン語の pāx (平和,安寧,好意,恩恵,許可)の奪格 pāce を借りたものです.ラテン語では(代)名詞の属格が後続し,pāce tuā (あなたの許可により)などと用いられました.これが英語にもそのまま pace tua として入ってきています.同様に pace tanti viri [or tantorum virorum] 「高名なお方のお許しを得て,僭越ながら」も英語表現として受け入れられています.
 OED によると,初出は1863年と英語史上では新しく,以下の5例文が挙げられていました.

1863 Mendelssohn was an artist passionately devoted to his art, who (pâce Dr. Trench) regarded art as virtù. (Fraser's Magazine November 662/1)
1883 Pace the late Sir George Cornewall Lewis, Mr. Scofield is right. (Standard 1 September 2/2)
1911 The colour [of fruit]..is a tacit invitation (pace the gardener) to the feast. (Chambers's Journal November 720/1)
1955 Nor, pace Mr. Smith, was I for one moment defending immorality in the journalist. (Times 7 July 9/6)
1995 I do not believe, pace Peirce and Derrida, that it is signs all the way down, and that, pace Dennett, there is no distinctive human intentionality, and that, pace almost everyone, thinking is fundamentally linguistic. (Computers & Humanities vol. 29 404/1)


 この前置詞,皆さんも機会があったら使ってみてください.

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