hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新    

bl - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-12 07:24

2016-10-25 Tue

#2738. Book of Common Prayer (1549) と King James Bible (1611) の画像 [bible][book_of_common_prayer][popular_passage][hel_education][bl][history][literature][link][emode][printing]

 表題の2つの書は,英語史上大きな影響力をもった,初期近代英語で書かれた文献である.いつぞやか大英図書館で購入した絵はがきを見つけたので,各々より1葉のイメージを与えておきたい(画像をクリックすると文字も読める拡大版).

Book of Common Prayer (Of Matrimonie)King James Bible (Title-page)
Book of Common Prayer (Of Matrimonie)King James Bible (Title-page)


 Book of Common Prayer および King James Bible については,各々以下の記事やリンク先を参照.

 ・ 「#2597. Book of Common Prayer (1549)」 ([2016-06-06-1])
 ・ 「#745. 結婚の誓いと wedlock」 ([2011-05-12-1])
 ・ 「#1803. Lord's Prayer」 ([2014-04-04-1])

 ・ BL より Sacred Texts: King James Bible
 ・ The King James Bible - The History of English (4/10)

Referrer (Inside): [2018-11-27-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2016-10-19 Wed

#2732. British Library の提供する英語史学習サイト "English Timeline" と "Words for time travellers" [hel_education][link][bl][chaucer]

 The British Library"English Timeline" という英語史学習用コンテンツを提供している.「#1456. John Walker の A Critical Pronouncing Dictionary (1791)」 ([2013-04-22-1]) で関連するリンクを張った程度だが,眺めていくとなかなかおもしろい.写本画像などのイメージや各種メディアのコンテンツが豊富で,教材として役に立ちそうだ.
 同様に,関連するコンテンツとして Words for time travellers もある.画像,テキスト,演習問題のついているものもあり,教材として使えそうだ.例えば,Chaucer について4ページのコンテンツがあり,以下のような構成になっている.

 (1) Chaucer's English - page 1: Caxton 版の The Canterbury Tales よりテキストと写本画像を掲載
 (2) Chaucer - page 2: テキストを簡単な注解により解説
 (3) Chaucer - page 3: 単語に関する演習問題
 (4) Chaucer - page 4: その解答
 
 「#18. 英語史をオンラインで学習できるサイト」 ([2009-05-16-1]) で紹介した BBC の Ages of English Timeline とともに,英語史の学習・教育にどうぞ.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-05-18 Sun

#1847. BL サイトで閲覧できる中世英語写本の画像 [bl][link][manuscript]

 昨日の記事「#1846. Pearl のウェブ・リソース」 ([2014-05-17-1]) を書くために中世写本に関するオンライン・リソースを探している過程で,British Library の Digitised ManuscriptsSearch our Catalogue Archives and Manuscripts に行き当たった.関心のある中世英語の写本画像を検索してみると,あれもこれも画像化されていたのかと発見がある.
 BL によるもう1つの最新の写本画像へのリンク集としては,BL Medieval and Earlier Digitised Manuscripts Master List 10.04.13. (XLS) も有用.このリンク集から,とりわけ中世英語の写本として重要と思われるものへのリンクを抜き出したので,以下にまとめておく.

 ・ Add MS 40165 A, Cyprian epistles and Old English Martyrology fragments
 ・ Add MS 59678, Sir Thomas Malory, Le Morte Darthur
 ・ Add MS 60577, Miscellany of verse and prose (the 'Winchester Anthology')
 ・ Add MS 61823, The Book of Margery Kempe
 ・ Arundel MS 57, Michael of Northgate, Ayenbite of Inwyt
 ・ Cotton MS Claudius B IV, Old English Hexateuch (imperfect)
 ・ Cotton MS Cleopatra C VI, Ancrene Riwle; songs and prayers; a leaf from a Book of Hours
 ・ Cotton MS Nero D IV, Lindisfarne Gospels
 ・ Cotton MS Vespasian A I, The Vespasian Psalter
 ・ Cotton MS Vitellius A XV, Augustine of Hippo, Soliloquia; Marvels of the East; Beowulf; Judith, etc.
 ・ Harley MS 2253, Miscellany of English, French, and Latin works ('The Harley Lyrics')
 ・ Harley MS 4866, Thomas Hoccleve, The Regiment of Princes
 ・ Harley MS 7334, Geoffrey Chaucer, The Canterbury Tales
 ・ Royal MS 14 C IX, Ranulph Higden's Polychronicon
 ・ Royal MS 7 D X, The Prayerbook of Princess Elizabeth

 類似するリンク集は「#1429. 英語史に関連する BL の写本等画像と説明」 ([2013-03-26-1]),「#1431. Gelderen の英語史概説書のリンク集」 ([2013-03-28-1]),「#1293. Sir Orfeo の関連サイト」 ([2012-11-10-1]),「#744. Auchinleck MS の重要性」 ([2011-05-11-1]) にも張っておいたので,合わせて参照されたい.

Referrer (Inside): [2014-05-19-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2014-05-17 Sat

#1846. Pearl のウェブ・リソース [pearl][bl][link][manuscript][sggk]

 今,中世英文学 Pearl を Andrew and Waldron 版で読んでいる.Cleanness, patience, Sir Gawain and the Green Knight とともに無名の詩人によって14世紀後半の北西イングランド方言で書かれた作品である.いずれも British Library MS Cotton Nero A.x にのみ現存する名品だ.
 校訂本や注釈書など関連書誌は多く挙げることができるが,以下では主としてウェブ上のリソースへリンクを張っておきたい.

[ 電子テキスト ]

 ・ Corpus of Middle English Prose and Verse より,1953年版 (Pearl. Ed. E. V. Gordon. Oxford: Clarendon Press, 1953) に基づいた Digitised Text of Pearl が閲覧可能.
 ・ TEAMS: Middle English Texts 提供のテキスト Pearl by Robbins Library Digital Projects では,本文とともに語注・脚注が付されている.Pearl: Introduction のページでは,イントロと関連書誌も得られる.
 ・ Pearl by Bill Stanton では,イントロのほか,原文と現代英語訳の電子テキストが閲覧できる.

[ 写本画像 ]

 ・ The Cotton Nero A.x Project のサイトの Browse the Manuscript Images より,Pearl Manuscript の画像をフルで閲覧することができる.

[ 関連情報・書誌 ]

 ・ Entry for "Pearl" in Middle English Compendium HyperBibliography
 ・ 上にも挙げた Cotton Nero A.x. Project より,Web Resources for Pearl-poet Study: A Vetted Selection がリンク集として有用.
 ・ Pearl (poem) by Wikipedia では,書誌が役立つ.

 最後に,オンラインの MED を利用して,Pearl からの引用を含む全エントリーへのリンクを整理した.行番号順に並べてあるので,テキストを読みながら一種の語注として使える.A Pearl Glossary Derived from MED Entries よりアクセスを.

 ・ Andrew, Malcolm and Ronald Waldron, eds. The Poems of the Pearl Manuscript. 3rd ed. Exeter: U of Exeter P, 2002.

Referrer (Inside): [2014-05-18-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-04-22 Mon

#1456. John Walker の A Critical Pronouncing Dictionary (1791) [orthoepy][pronunciation][dictionary][lexicography][rp][prescriptive_grammar][walker][bl]

 後期近代英語期,主として18世紀に英語の規範を作った個人名を挙げよと言われたら,辞書(綴字)は Samuel Johnson (1709--84),文法は Robert Lowth (1710-87),では発音は誰か.
 答えは,John Walker (1732--1807) である.彼の著わした A Critical Pronouncing Dictionary (1791) は,正しい権威ある発音を求めた18世紀のイギリス庶民たちに確かな道しるべを与えた.初版以降,100版以上を重ねて人気を博し,英米では "Elocution Walker" と呼ばれるまでに至った.18世紀末に Walker が定着させ方向づけた正音主義路線は,19世紀末から20世紀にかけて容認発音 (RP = Received Pronunciation) が生み出される基盤を提供し,現代標準英語にまで大きな影響を及ぼしている.
 辞書の表題は例によって長い."A Critical Pronouncing Dictionary and Expositor of the English Language: to which are prefixed Principles of English Pronunciation: Rules to be Observed by the Natives of Scotland, Ireland, and London, for Avoiding their Respective Peculiarities; and Directions to Foreigners for Acquiring a Knowledge of the Use of this Dictionary." 表題の表現が示すとおり,ロンドン中心の相当に凝り固まった規範主義である.序文でもロンドン発音こそが "undoubtedly the best" と断言しているが,ロンドンとはいっても Cockney 発音は例外であり,スコットランドやアイルランドの発音を引き合いに出しながら Cockney を "a thousand times more offensive and disgusting" と糾弾している.
 Walker の辞書の発音解説は実に詳細で,例えば drama の語義説明は22語ほどで終わっているが,発音説明は770語に及ぶ詳しさだ.収録語数36,600語は,ライバル辞書ともいえる Thomas Sheridan の A General Dictionary of the English Language (1780) の約38,000語には少々及ばないが,発音説明の詳細さは比較にならない.
 British Library の English Timeline にある Walker's correct pronunciation より,見出し語 "BACK" で始まる辞書のページ画像を閲覧できる.以上,Crystal (52) および寺澤 (19--20) を参照して執筆した.
 正音主義の伝統については,「#571. orthoepy」 ([2010-11-19-1]) を参照.

 ・ Crystal, David. Evolving English: One Language, Many Voices. London: The British Library, 2010.
 ・ 寺澤 芳雄(編) 『辞書・世界英語・方言』 研究社英語学文献解題 第8巻.研究社.2006年.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-04-04 Thu

#1438. Sumer is icumen in [manuscript][calendar][bl]

 春を告げる有名な中英語の歌 Sumer is icumen in について.この歌については,「#1221. 季節語の歴史」 ([2012-08-30-1]) でごく簡単に触れ,「#1429. 英語史に関連する BL の写本等画像と説明」 ([2013-03-26-1]) で BL 所有の写本画像と説明書きへリンクを張った程度だったが,今回はもう少し詳しく見てみたい.

Sumer is icumen in

 Spring has come の中英語版フレーズで始まるこの歌は,中英語で書かれた詩歌のなかでも最もよく知られている.Berkshire の Reading Abbey で修道士によって編まれた写本 (British Library Harley MS 978, f. 11v) の中に収められており,フランス語とラテン語のテキストに混じった唯一の英語テキストである.英語で知られる最古の輪唱 (rota or round) でもあり,写本の譜面のなかの赤い十字で示される部分から次の歌い手が歌い始める.最後の2行(赤字で pes と示されている部分)は低音パートを表わし,最多で6声により歌うことができる.黒字の英語の歌詞の下には赤字のラテン語でキリストの受難に関するテキストが記されているが,こちらは旋律にはうまく合っていない.また,下半分の枠内には黒字のラテン語で,輪唱の歌い方の指示が記されている.楽譜が示すとおり,旋律と歌詞を合わせて歌唱することが可能であり,現在ではCDも発売されている.
 歌詞のテキストは1225--50年の作とされ,旋律は1310年頃とされている.方言は定かではないが,動詞の屈折語尾 -þ により,少なくとも北部は除外される.LAEME 提供の詳細も参照.
 以下は,現代英語対訳付きの歌詞テキスト.

Sumer is icumen in·    Spring has come in.
Lhude sing cucu·    Loudly sing, cuckoo!
Groweþ sed and bloweþ med    Seed grows and meadow blooms
And springþ þe wde nu·    And the forest springs up now.
Sing cuccu    Sing, cuckoo!
      
Awe bleteþ after lomb·    Ewe bleats after lamb,
Lhouþ after calue cu·    Cow lows after calf,
Bulluc sterteþ· bucke uerteþ    Bullock leaps, buck farts.
Murie sing cuccu·    Merrily sing, cuckoo!
Cuccu cuccu    Cuckoo, cuckoo,
Wel singes þu cuccu.    You sing well, cuckoo.
Ne swik þu nauer nu·    Nor cease you never now!
      
Sing cuccu nu· sing cuccu·    Sing cuckoo now, sing cuckoo!
Sing cuccu· sing cuccu nu·    Sing cuckoo, sing cuckoo now!


 以上,Crystal (23) を参照しつつ執筆した.同じ British Library のサイトから,こちらでも拡大画像が閲覧できる.

 ・ Crystal, David. Evolving English: One Language, Many Voices. London: The British Library, 2010.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2013-03-26 Tue

#1429. 英語史に関連する BL の写本等画像と説明 [link][bl][manuscript][bible]

 The British LibraryOnline Gallery より,英語史に関連する写本等の画像(とその説明)へのリンクを集めてみた.およそ1枚画像だが,いくつかについては,ブラウザ上でページをめくるようにして写本や刊本の画像を次々に閲覧できるサービスも提供されている.Online Gallery からサーチ機能を利用すれば,いろいろと掘り出し物が出てきそうである.

 ・ Bede's History of the English Church and People の写本画像と説明.
 ・ Beowulf の写本画像と説明.
 ・ The Lindisfarne Gospels の写本画像と説明.写本をめくって読めるサービスもあり.
 ・ Anglo-Saxon Chronicle の写本画像と説明.
 ・ Magna Carta の画像と説明.(See also Treasures in Full: Magna Carta, as mentioned in [2011-06-08-1].)
 ・ 'Sumer is icumen in' の写本画像と説明.
 ・ Geoffrey Chaucer's 'The Canterbury Tales' の写本画像と説明.
 ・ Thomas Malory's 'Le Morte Darthur' の写本画像と説明.
 ・ William Caxton's Chaucer: 'The Canterbury Tales' の刊本画像と説明.
 ・ William Tyndale's New Testament の写本画像と説明.
 ・ Princess Elizabeth's letter の手記画像と説明.
 ・ King James Bible の刊本画像と説明.写本をめくって読めるサービスもあり.
 ・ Shakespeare's First Folio の刊本画像と説明.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2011-06-08 Wed

#772. Magna Carta [history][reestablishment_of_english][bl][retronym][magna_carta]

 英国は成文憲法を持たない.その代わりを務めるのが,Magna Carta大憲章」(1215年,The Great Charter),「権利請願」(1628年,The Petition of Right),「権利章典」(1689年,The Bill of Rights)の3つの基本法典だ.後者2つは近代期17世紀の産物だが,最初の大憲章は中世期13世紀とかなり早い.もっとも大憲章が基本法典として高い評価を与えられるのは17世紀のことであり,当時の「歴史の掘り起こし」の結果というべきである.それでも,13世紀イングランド国制史が Magna Carta をめぐって繰り広げられていたことは確かである.
 当時王位にあった John は,父王 Henry II,兄王 Richard I の保有していたフランスの広大な領土を戦争によって失った.1204年のノルマンディの喪失は特に手痛く,イングランドが大陸に足場をもつ帝国の一部から一島国へと回帰する歴史的契機となった(この出来事は,向こう2世紀にわたるイングランドでのフランス語の衰退と英語の復権の間接的な契機ともなっており,英語史にとっても大きい).その後も John はフランス王 Philip II へ領地奪還のための戦いを挑むが,1214年,ブーヴィーヌの戦いで大敗を喫する.兄王 Richard I から続く戦乱と戦費確保のための重税に苦しんでいた諸侯にとって,John の内外の失策は耐え難いものとなり,ついに1215年,貴族の一部が John を主君とみなさない旨を公言する.王はやむなく代理人を立てて不満分子と話し合い,協約文書を作成した.ラテン語で書かれたこの協約文書は,テムズ河畔 Runnymede の草原にて1215年6月15日に調印・発布された.
 「諸侯たちの要求事項」 (The Articles of the Barons) と呼ばれたこの協約の内容は63条からなる雑多な要求の羅列であり,全体的な統一や整備は感じられない.John への具体的で直接的な要求項目であり,後代に理解されたような立憲政治の礎という意図はなかった.したがって,近現代の大憲章の高い評価はある意味で過大であり時代錯誤的でもあるのだが,この文書によって被治者が王権に制限を加えようとしたこと,既得権や慣習が強調されたことの歴史的意義は大きい.
 John はこの協約文書に調印こそしたが,はなから遵守する意図はなく,直後にローマ教皇 Innocent III に頼み無効としてしまった.翌1216年には John が病死したため,貴族たちは継いだ Henry III のもとで協約文書を修正したうえで再発行した.1217年,1225年にも修正版が再発行され,以降,1225年版がたびたび確認されてゆくことになる.特に1297年の Edward I による確認は重要で,Magna Carta は制定法記録簿に収められることになった.しかし,この文書が中世期と初期近代期を通じて現実政治の場で大きな役割を果たしたということは,実はない.17世紀に忘却の淵から呼び覚まされ,新たな意義を付されたということである.
 さて,英語 The Great Charter,日本語「大憲章」はそれぞれラテン語 Magna Carta の訳語で,いかにも偉大な文書らしい響きだが,この Magna あるいは Great は,本来,質としての偉大さを表わすものではなく,量的な大きさを記述する形容詞にすぎなかった.1217年の修正版で,御料林に関する条項が切り離されて独立し「御料林憲章」 (The Charter of the Forest) とされたので,残る部分が「大憲章」という通称で呼ばれることになったにすぎない.この点では,[2011-05-01-1]の記事「pandaBritain」で指摘した giant pandaGreat Britain とまったく同種の来歴である.
 Magna Carta については,The British Library の Treasures in Full: Magna Carta が詳しい.Magna Carta をマルチメディアで学べる.

(後記 2013/03/28(Thu):同じ BL よりこちらの画像もすばらしい.)

 ・ 今井 宏 『ヒストリカル・ガイド イギリス 改訂新版』 山川,2000年.47--52頁.

Referrer (Inside): [2019-04-14-1] [2013-03-26-1]

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2010-12-07 Tue

#589. The Riot Act has been read. [history][idiom][bl]

 標記の慣用句がある.文字通りには「騒擾取締令が読み上げられた」だが,比喩的に「(親や先生が子供に対して)言うことをきかないと叱るぞと警告する」ほどの意味を表わす.
 この慣用句の起源はイギリスで The Riot Act 「騒擾取締令」が発布された1715年に遡る.James II 以降,Stuart 朝の復活を望むジャコバイト ( The Jacobites ) の起こした十五年反乱 ( the Fifteen Rebellion ) の直後に制定された法令で,12人以上の集まる不穏な集会を解散させる効力をもった.集会に対してこの法令が読み上げられると1時間の猶予が与えられ,その間に散会しないと重罪に処せられた.この法令は1973年に廃止されているが,比喩的な表現としての read the Riot Act は今も生き続けている.イディオムとしての初例は1819年: "She has just run out to read the riot act in the Nursery."
 こちらのポスターは19世紀のものではあるが,当局がこのようなポスターを貼り付けることで集会に解散命令を出した様子がうかがわれる.このポスターは,The British Library で開催中の Evolving English: One Language, Many Voices の呼び物の1つ.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

2010-11-20 Sat

#572. 現存する最古の英文 [history][runic][writing][archaeology][inscription][bl][direction_of_writing]

 英語で記された現存する最古の文は,金のメダルに Anglo-Frisian 系のルーン文字 ( the runic alphabet ) で刻まれた短文である.1982年に Suffolk の Undley で発見された直径2.3cmの金のメダル ( the Undley bracteate ) に刻まれており,年代は紀元450--80年のものとされる.西ゲルマンの Angles, Saxons, Jutes らが大陸からブリテン島へ移住してきた時期に,かれらと一緒に海峡を渡ってきたものと考えられる.メダルの画像と説明は,The British Museum のサイトで見ることができる.
 兜をかぶった頭の下で雌狼が二人の人間に乳を与えている.明らかに伝説のローマ建国者 Romulus と Remus の神話を想起させる図像だ.メダルの周囲,弧の半分ほどにかけてルーン文字が右から左に刻まれている.全体が3語からなる短い文で,語と語の区切りは小さな二重丸で示されている.ローマ字で転写すると以下のように読める.

The Runic Letters on the Undley Bracteate
( u d e m ・ æ g æ m ・ æg og æg )

= gægogæ mægæ medu
= ?she-wolf reward to kinsman
= This she-wolf is a reward to my kinsman


 上のような試訳はあるが,詳細は分かっていない.特に最初の語 gægogæ は意味不明であり,怪しげな音の響きからして何らかの呪術的な定型句とも想像され得る.
 これが,約1500年後に世界で最も重要となる言語の,現存する最古の記録である.
 David Crystal も初めて見たときに涙を流して感動したというこのメダルについては,Crystal による解説(動画)と関連記事もお薦め.The British Library で11月12日から来年4月3日まで開かれている英語史展覧会 Evolving English: One Language, Many Voices の呼び物の1つです.

 ・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002. 181.

[ 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow