khelf(慶應英語史フォーラム)内で,以下のちぐはぐ案件が発生しました.
英語学習者用の文法参考書『Vintage 英文法・語法』(第2版,p. 295)には,something of a+名詞「ちょっとした〈名詞〉/かなりの〈名詞〉」と出ています.新英和中辞典にも同様なことが書いてあります.「ちょっとした」と「かなりの」は日本語的に異なりますが.なぜこのような違いがあるのでしょう.そもそも something の意味が分かっていないから違いが理解できないのでしょうか???
日本語としては確かに「ちょっとした」と「かなりの」は意味が異なるように思われます.原義で考えれば,前者は程度が低く,後者は程度が高いものと理解されており,むしろ対義の感があります.しかし「(意外なことにも)彼はちょっとした/かなりの音楽家なんですよ」という文を考えると,その語用論的意味は近似しているようにも思われます.英語の something of a(n) も日本語の「ちょっとした」も,意味論と語用論のキワに関わる微妙な問題のようです.
関連して quite が「完全に」「そこそこ」の両義をもつことが思い起こされます.「#4247. quite の「完全に」から「そこそこ」への意味変化」 ([2020-12-12-1]),「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]),「#4235. quite a few は,下げて和らげ最後に皮肉で逆転?」 ([2020-11-30-1]) をご参照ください.広く強意語 (intensifier) の語用論に関する話題ですので,「#4236. intensifier の分類」 ([2020-12-01-1]) も参考になるかと思います.
さて,something of a について『ジーニアス英和大辞典』では次のように記載されています.
▼ *sómething of a ...
((略式))[通例肯定文で] ちょっとした…;かなりの…?She is ~ of a musician. 彼女の音楽の才はかなりのものです《◆音楽家ではない人に用いる》/I found it ~ of a disappointment. それにはかなりがっかりしました(=I found it rather disappointing.)/Life has always been ~ of a puzzle. 人生はこれまで常に謎めいたところがあった.
「《◆音楽家ではない人に用いる》」という指摘は,きわめて重要で示唆に富んだ注だと思います.参照した他の辞書には,このような注はありませんでした.
次に学習者用英英辞書からいくつか例文を拾ってみましょう.
・ She found herself something of a (= to some degree a) celebrity.
・ Charlie's always been something of an expert on architecture.
・ The news came as something of a surprise.
・ The city proved to be something of a disappointment. . .
・ He has a reputation as something of a troublemaker.
ここで改めて something of a(n) は「ちょっとした」なのか「かなりの」なのかという問題に戻って考えてみましょう.この表現には anything of a(n) と nothing of a(n) という関連表現があります.some, any, no の3者の関係については「#679. assertion and nonassertion (1)」 ([2011-03-07-1]),「#680. assertion and nonassertion (2)」 ([2011-03-08-1]) で考察しました.
私は no(thing) の基本義が「無」であるのに対して some(thing) の基本義は「有」であると考えています.「無」の場合にはゼロですから無いものは無いと言っておしまいですが,「有」である場合には「ちょっとした」なのか「かなりの」なのかなど程度の問題が生じます.しかし,あくまで「無」ではなく「有」なのだというのが some(thing of a(n)) の「意味論」的な原義なのではないでしょうか.その程度については「意味論」としては限定せず,あくまで「語用論」的な解釈に任せるといったところではないかと睨んでいます.
「無」が前提とされているところに,その前提をひっくり返して「有」であることを主張するのが some(thing of a(n)) の基本的な働きだろうと考えます.結果として,程度の低い/高い意味になるのかは,文脈に依存する語用論的な判断に委ねられるのではないかと.とはいえ,一般的傾向としては,「無」に対して「有」であることをあえて主張する目的で用いられるわけですから,高めの程度が意図されているケースが多いのではないかと思われます.ただし,最終的な判断はやはり都度の文脈次第なのではないかと.
なかなか難しそうですね.
今日はクロスポスト的な記事で新味がなくてすみません.それでも意味変化 (semantic_change) の観点から大事な話題なので,こちらでも取り上げる次第です.
この2ヶ月ほど「Mond」という質問サイトにて,英語史に関連のある質問に回答するということを行なってきました.最近の質問として,次の興味深い問いが寄せられてきました.
凄い(すごい)という言葉には
・ぞっとするほど恐ろしい
・並外れている.たいそうな.
という2つの意味がありますが,後者の意味で主に用いられている印象です.英語や他の言語にも失われつつある意味を持つ単語はあるのでしょうか?
これは,まさに古今東西の言語に普遍的な意味変化のパターンに関する質問です.強意語 (intensifier) は,使われすぎると強意がすり減って逓減していくものなので,新たに強意を表わす表現が常に求められるのです.新たな強意語のソースは,いろいろとあるのですが,その典型の1つが「否定的な感情語」です.怖い,おぞましい,痛い,苦しい,というホラー用語は,どうしても強調語になりやすいのですね.それは,なぜか? 10秒ほど考えれば分かると思います.あの負の感情が10秒続いたら,ちょっと参りますよね・・・
上記の質問を受けて,こんな感じで回答しました.
とても身近でおもしろい指摘,ありがとうございます.「すごい」に2つの意味があるというのは,それぞれの用例をみれば明らかですね.例えば「すごい目つき」といえば「恐ろしい」の意味だとわかりますし,「すごい美人」といえば「並外れた」の意味だとわかります.この2つの意味をざっくり区別するならば,「恐ろしい」は感情の種類・質に関する意味で,「並外れた」は物事の程度・量に関する意味ということになります.歴史的には前者から後者が派生しているので,質から量への意味変化と言っておいてよいかと思います.
この「質から量への意味変化」というのは,かなり普遍的なようです.とりわけ「恐ろしい」「痛い」「ひどい」といった否定的な感情・知覚を表わす形容詞・副詞は,しばしば感情の質そのものよりも,その感情の程度の甚だしさが注目され,結果として単なる強調表現になり下がるということが,よくあるパターンのようです.
日本語の「恐ろしく優しい」「痛く感心した」「ひどく喜んだ」のような例から分かる通り,文字通りの否定的な質の意味で解釈すると,むしろ矛盾するような表現もありますね.すでに量の意味になり下がっているということだと思います.
英語からも類例がいくらでも挙がります.terrible/terribly の語幹は terror 「恐怖」と同一ですが,本来の「恐ろしい/恐ろしく」の意味で使われることは少ないです (ex. a terrible weapon 「恐ろしい武器」) .むしろ,程度の激しいことを示すだけの強調語として in a terrible hurry 「非常に急いで」のように使うことのほうが多いです.質から量への意味変化が生じたもう1つの例ですね.
ほかには amazingly, awfully, desperately, dreadfully, horribly, marvellously, sorelyなど感情に起因する副詞は,強調語になり下がる例が多いようです.
おっしゃるとおり,これらの語では,本来の質的な意味は希薄になってしまい,ほとんどの場合,量的な意味で強調語として用いられるに至ったのだと思います.
いずれの言語でも,並行的な現象が見られるというのは,たいへん面白いですね.ありがとうございました.
関連して,英語に関する話題ではありますが,筆者によるこちらの記事をご覧ください.
鋭い質問は学びの基本だと思います.よく答えるよりもよく問うほうが圧倒的に難しいです.もう1週間で新年度が始まりますが,とりわけ新大学生は大学生活のなかで「問う方法」こそを習得してください!
強意語に関しては,以下の記事や intensifier もご参照ください.
・ 「#992. 強意語と「限界効用逓減の法則」」 ([2012-01-14-1])
・ 「#1220. 初期近代英語における強意副詞の拡大」 ([2012-08-29-1])
・ 「#1219. 強意語はなぜ種類が豊富か」 ([2012-08-28-1])
・ 「#2190. 原義の弱まった強意語」 ([2015-04-26-1])
・ 「#4236. intensifier の分類」 ([2020-12-01-1])
昨日の記事で「#4426. hedge」 ([2021-06-09-1]) を取り上げた.英語についていえば sort of が hedge の代表例として挙げられることが多いが,実際のところ hedge の種類は多様である.
昨日の引用文で触れた Lakoff の論文を読んだ.p. 472 に "SOME HEDGES AND RELATED PHENOMENA" と題する表が掲げられている.英語の hedge (関連)表現の具体例として,以下に掲載しておこう.
sort of
kind of
loosely speaking
more or less
on the _____ side (tall, fat, etc.)
roughly
pretty (much)
relatively
somewhat
rather
mostly
technically
strictly speaking
essentially
in essence
basically
principally
particularly
par excellence
largely
for the most part
very
especially
exceptionally
quintessential(ly)
literally
often
more of a _____ than anything else
almost
typically/typical
as it were
in a sense
in one sense
in a real sense
in an important sense
in a way
mutatis mutandis
in a manner of speaking
details aside
so to say
a veritable
a true
a real
a regular
virtually
all but technically
practically
all but a
anything but a
a self-styled
nominally
he calls himself a ...
in name only
actually
really
(he as much as ...
-like
-ish
can be looked upon as
can be viewed as
pseudo-
crypto-
(he's) another (Caruso/Lincoln/ Babe Ruth/...)
_____ is the _____ of _____ (e,g., America is the Roman Empire of the modern world. Chomsky is the DeGaulle of Linguistics. etc.)
一覧して分かるように,「#4236. intensifier の分類」 ([2020-12-01-1]) で挙げた広い意味での強意語 (intensifier) は,いずれも hedge の一種とみなすことができる.これまで hedge を単純に「ぼかし言葉」くらいに認識していたが,そうでもないことが分かってきた.ある命題を真たらしめる条件を緩く指定・制限する方略と理解しておくのがよさそうだ.
・ Lakoff, G. "Hedges: A Study in Meaning Criteria and the Logic of Fuzzy Concepts." Journal of Philosophical Logic 2 (1973): 458--508.
quite が意味論的に厄介な副詞であることについて,「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]),「#4235. quite a few は,下げて和らげおきながら最後に皮肉で逆転?」 ([2020-11-30-1]),「#4236. intensifier の分類」 ([2020-12-01-1]) で取り上げてきた.ある場合には「完全に」 (fully, absolutely) の意味で,別の場合には「そこそこ」 (fairly, rather) の意味で用いられるからだ.強意語の類型でいえば,Maximizer としても Compromizer としても用いられることになり,混乱は必至である.
本来 quite は Maximizer として「完全に」のみを意味していたが,19世紀に Compromizer としての「そこそこ」の語義が発達した.OED で quite, adv., adj., and int. を引いてみると,大区分の第III項に後者が取り上げられており,初出は1805年となっている.
Room の辞典に,この意味変化とその機微について次のような解説があったので,引用する.
quite (fully, absolutely; fairly, rather)
This word is notoriously tricky for foreign learners of English, who find it difficult to decide which sense to use, or which is meant. 'I was quite alone' means that I was absolutely alone, but 'I am quite tired' means that I am fairly tired, not very. And if she is 'quite ill', is she very ill or only slightly indisposed? The original meaning of 'quite' in English was the 'absolutely' one, which dates from the fourteenth century. As John Skelton wrote in his charming poem Phyllyp Sparowe (1529):
Comfort had he none
For she was quyte gone.
And as Robert K. Douglas wrote in his Non-Christian Religious Systems (1879): 'A man should be quite certain what he knows and what he does not know'. Quite. Yet it was in the nineteenth century that the now common sense of 'fairly' for 'quite' arose. It developed out of a special usage of the word, from the eighteenth century, that meant 'actually', 'really', implying that what the writer or speaker said was really so. For example, Fielding, in Tom Jones (1749), wrote that a certain widow was 'quite charmed with her new lodger', meaning that she really was charmed (not simply satisfied), and in one of his essays (1848), the astronomer Sir John Herschel wrote that: 'A ship sailing northwards passes quite suddenly from cold into hot water', meaning that the change really was sudden, not gradual, as one might expect. So when Thoreau, in his narrative account Walden (1854), wrote: 'Perhaps I have owed to this employment and to hunting, when quite young, my closest acquaintance with Nature', which did he mean, 'surprisingly young' (as in the earlier sense) or 'fairly young' (as in the new sense)? It is not always so easy! What has actually happened is that the earlier use of 'quite' (meaning 'really') has come to be associated with certain adjectives, such as 'different', 'separate', 'right', 'wrong', 'sure' and so on, while with other, less 'definite' adjectives the modern sense is the commoner. But it is still quite difficult to determine on occasions, and one needs to be quite certain which of the two senses is meant.
先日から問題になっている quite a few も19世紀前半の初出だった.quite の上記の意味変化と関係しているのだろうか,いないのだろうか.
・ Room, Adrian, ed. NTC's Dictionary of Changes in Meanings. Lincolnwood: NTC, 1991.
intensifier は通常「強意語」と訳されるが,専門的に広義には,意味の緩和,つまりマイナス方向の「強意」をも含む用語としてとらえておく必要がある.Quirk et al. (§§8.104--115) によると,intensifier は意味論の観点から以下のように下位区分される.
INTENSIFIERS
・ AMPLIFIERS
・ Maximizers: absolutely, altogether, completely, entirely, extremely, fully, perfectly, quite, thoroughly, totally, utterly, in all respects, most
・ Boosters: badly, bitterly, deeply, enormously, far, greatly, heartily, highly, intensely, much, severely, so, strongly, terribly, violently, well, a great deal, a good deal, a lot, by far, very much
・ DOWNTONERS
・ Approximators: almost, nearly, practically, virtually, as good as, all but
・ Compromisers: kind of, sort of, quite, rather, enough, sufficiently, more or less
・ Diminishers: mildly, partially, partly, quite, slightly, somewhat, in part, in some respects, to some extent, a bit, a little, least (of all), only, merely, simply, just, but
・ Minimizers: barely, hardly, little, scarcely, in the least, in the slightest, at all, a bit
この数日間に「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]),「#4235. quite a few は,下げて和らげおきながら最後に皮肉で逆転?」 ([2020-11-30-1]) の記事で副詞 quite の用法に注目してきたが,上の分類によると quite は Maximizers と Compromizers の2つのリストのなかに現われる.一般に,程度の概念を伴わない語句と共起する場合には Maximizer として機能し,程度を有する語句と共起する場合には Compromiser として機能するとされる.それぞれ例文を挙げておこう.
[ Maximizer として ]
・ Flying is quite the best way to travel.
・ I quite forgot about her birthday.
・ I quite understand.
・ The bottle is quite empty.
・ You're quite right.
[ Compromizer として ]
・ He plays quite well.
・ I quite enjoyed the party, but I've been to better ones.
・ It is quite cold, isn't it?
・ She quite likes him, but not enough to marry him.
・ The food in the cafeteria is usually quite good.
頻度の高い副詞だが,案外使い方は難しい.
・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.
「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]) を受けて,この問題についてもう少し考えてみたい.各種の語法辞典を引いてみると,quite という副詞はとにかく使い方が難しいことが分かる.共起する形容詞の意味論的な特性などに応じて,「まったく;完全に」という強意を表わすかと思えば,「まずまず,そこそこ,割と」というむしろ程度を和らげるように用いられることもある.このような多義性をもち,かつ口語的な響きもをもつからだろう,意味論的に分析するだけでは埒が明かないことも多く,語用論やその他の観点からの考察も必要となってくる.厄介な副詞だ.
小西 (893) は,quite a/an の項目の最後で次のように述べている.
なお成句 quite a few/bit は quite a lot とほぼ同意の婉曲的な米国口語表現である.Quite a few people turned up.---CEED (非常に多くの人々が現れた).
ここでは「婉曲的」という用語が使われている.確かに quite には,上記の通り表現の勢いを和らげるという機能も認められる.具体的にいえば,quite が数量のように程度をもつ語句と共起すると,基本的には "downtoner" の役割,つまり程度を少し落として見せる役割を果たす.これによって程度が下げられ,同時に響きとしてのキツさも和らげられる.まさに婉曲表現 (euphemism) といってよい.
ところが,quite a few の場合,ここから予想外の発展を遂げたようだ.もともと数量の程度が低いことを意味する a few をさらに少なく見せるように quite を付け,下げて和らげて表現したところを,さらに「皮肉」効果によってまるまる反転させようなのである.当初は,ある口語的な文脈において particularized conversational implicature としてたまたま滲み出た皮肉的な意味にすぎなかったと思われるが,それが繰り返され常用化するに及んで,generalized conversational implicature へと昇格したものではないか.
もしこの筋書きが正しいならば,意味論・語用論界における「うっちゃり」の事例となる.
・ 小西 友七 編 『現代英語語法辞典』 三省堂,2006年.
quite という副詞は,用法が難しく厄介な語である.基本的には形容詞等の表わす程度を強調する副詞ととらえてよいが,コロケーション次第で様々な意味の陰影が生まれる.そのなかでも何とも理解しがたいフレーズが,標題の quite a few である.quite が程度の強調ということであれば「とても少ない」の意となりそうだが,実際には口語において「かなりの,相当数の」と予想外の意となる.quite a lot (of) が予想通り「とても多く(の)」を意味することを考えると,どうにも理解に困る.
OED を開いてみよう,quite a few は,few, adj., pron., and n. の見出しのもとで Phrases の1つとして立てられている.
d. Originally U.S. quite a few.
(a) Used adjectivally: a considerable number of.
1833 Nolan County (Sweetwater, Texas) News 26 Jan. Quite a few White Flat people attended the singing at Trent.
1939 L. Hughes Let. 9 Dec. in Remember me to Harlem (2001) 159 That phase of Harlem's rise to culture and neo-culture seems to be of historical importance and interest to quite a few people.
2014 Providence (Rhode Island) Jrnl. (Nexis) 22 July (News section) 1 I went fishing yesterday afternoon and caught quite a few spotted trout.
(Hide quotations)
(b) Used as noun: a considerable number; also with of-phrase as complement.
1844 Christian Advocate Apr. 139/5 We were glad to find 'honorable brethren', quite a few 'tis true, prepared to go with us.
1883 P. Robinson in Harper's Mag. Oct. 706/1 There's quite a few about among the rocks.
1933 L. Bloomfield Language xi. 172 Quite a few of the present-day Indo-European languages agree with English in using an actor-action form as a favorite sentence-type.
2006 S. M. Stirling Sky People ix. 204 Cries of welcome greeted them; quite a few had observed the shot from a distance, and fresh meat was always welcome.
これによると,19世紀前半にアメリカ英語で生まれた比較的新しい表現であることが分かる.しかし,なぜ予想外の意味が生じたかについては,特に解説はない.
考えられるのは,quite の語用論的な用法,たとえば緩和や皮肉を込めた言い方に由来する可能性である.日本語の「ちょっと(した)」を例にとろう.文字通りには「少量」を意味するが,「ちょっとマズい状況になってるなぁ」とか「それはちょっと値が張りますよ」という場合には「少量」では済まなさそうな含みがある.実質的に「多量」を意味するのに,表面上は「少量」の表現を用いる例だ.
quite a bit, quite a little などの表現も,原義が反転して「多い」を表わすという点で,quite a few と同じグループに入るだろう.quite a little については,OED では little, adj., pron., and n., and adv. のもとに "10. Used as an (ironic) intensifier in various constructions, as quite a little ---, quite the little ---, a nice little ---, etc." と言及があり,初出が1763年となっている.何とも厄介な表現である.
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